(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】高効率タンパク質沈殿生成のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/30 20060101AFI20240625BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C07K1/30
C07K1/16
(21)【出願番号】P 2022517967
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 US2020012961
(87)【国際公開番号】W WO2021054998
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-21
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518276450
【氏名又は名称】プラズマ テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PLASMA TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ズルロ、ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】カーティン、デニス
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ブリルハート、カート エル.
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-100321(JP,A)
【文献】特表2019-513119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液から所望のタンパク質を単離する方法であって、
前記所望のタンパク質を含む複数の溶媒和したタンパク質を含む水溶液を入手することと、
前記所望のタンパク質を含む沈殿物の形成をもたらさない沈殿剤濃度を提供するように前記水溶液に不揮発性沈殿剤を加えて第一の中間物溶液を形成することと、
前記沈殿剤を保持したまま前記沈殿剤の目標沈殿濃度に到達するまで前記第一の中間物溶液から
蒸発によって水を除去して、前記複数のタンパク質の中の第一のタンパク質を含む第一の沈殿物及び前記複数のタンパク質の中の第二のタンパク質を含む第一の上清を生成することと、
前記第一の上清から前記第一の沈殿物を分離することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記沈殿剤は、有機酸、有機酸塩、無機塩、親水性ポリマからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿剤はクエン酸ナトリウムである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸発は減圧下にて実施される、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記所望のタンパク質は前記第一のタンパク質である、請求項1から
4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記所望のタンパク質は前記第二のタンパク質である、請求項1から
4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液は、血液製剤、細胞培養液、発酵ブロス、及び細胞溶解物からなる群から選択される、請求項1から
6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記血液製剤は、血清、血漿、脱クリオ血漿、及び再溶解クリオプレシピテートからなる群から選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液は別のタンパク質分離プロセスからの中間物である、請求項1から
6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の上清をクロマトグラフィ工程にかけることをさらに含む、請求項1から
9のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の沈殿物を再可溶化して第一の再可溶化沈殿物を形成することをさらに含む、請求項1から
10のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の再可溶化沈殿物をクロマトグラフィ工程にかけることをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
第二の沈殿物及び第二の上清を生成させるために前記第一の上清からさらなる水が除去される、請求項1から
12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第二の上清を第一のクロマトグラフィ工程にかけることをさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の沈殿物を再可溶化して第二の再可溶化沈殿物を形成することをさらに含む、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第二の再可溶化沈殿物を第二のクロマトグラフィ工程にかけることを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のタンパク質は、フィブリノゲン、フィブロネクチン、凝固因子、フォン・ヴィレブランド因子、免疫グロブリン、アルファ-1アンチトリプシン、及びアルブミンのうち少なくとも一つを含む、請求項1から
16のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野はタンパク質精製であり、特に血清又は血漿からのタンパク質精製である。
【背景技術】
【0002】
背景技術の説明は、本発明を理解するために有用であり得る情報を含む。本明細書中に提供されるいずれの情報も本願の請求項に係る発明に対する先行技術又は関連技術であると認めるものではなく、あるいは明示的又は暗示的に参照されるいずれの刊行物も先行技術であると認めるものではない。
【0003】
ヒト血液の非細胞部分は、治療上の使用のためのヒトタンパク質の供給源として長い間使用されている(例えば免疫グロブリン、アルブミン、凝固因子、アルファ1アンチトリプシン等)。現在最も一般的な供給源は、商業献血センタから入手される血漿である。このようなタンパク質は、有用なものにするために、変性を最小限にしながら高純度に単離される必要がある。成功するためには、商業的努力により、規模を拡張可能なプロセスによって高収率でこれらのタンパク質を回収する必要がある。残念ながらこれらの要求は、大抵互いに対立する。
【0004】
タンパク質精製プロセスは、拡張可能で産業プロセスによく適合される一つ以上の沈殿工程を通常は含む。このような工程において、水溶液のタンパク質成分は、沈殿剤の添加によって選択的に沈殿される(すなわち不溶状態にされる)。例えばコーン分画法において、エタノールは、溶液中に他のタンパク質を残した状態で一つ以上のタンパク質種を沈殿させるのに十分な量で血漿に加えられる。このような沈殿プロセスは、不溶性タンパク質沈殿物及び溶媒和したタンパク質を含む水相上清を生成する。これらはその後分離される(例えば遠心分離又は濾過による)。目的タンパク質の性質及び沈殿剤濃度により、沈殿物又は上清のうち一方又は両方が、精製された目的タンパク質を得るためにさらに処理され得る。しかしながらこのような沈殿工程において、不溶性タンパク質と可溶性タンパク質との間の分離が完全であることはほとんどない。結果として出発材料中に存在する目的タンパク質のうちのいくらかは一般的に、回収されない画分に損失されるであろう。同様に、回収されない画分内に典型的に見られるいくらかの夾雑タンパク質は一般的に、回収される画分中に残存するであろう。時には沈殿剤(例えばエタノール)は、pHにおける変化、温度における変化、及びプロセス時間の延長に伴って、所望の目的タンパク質の一部の変性を引き起こし得る。
【0005】
このようなタンパク質沈殿工程の効率は、沈殿剤濃度及び目的タンパク質濃度の両方に応じて変化する。一般的に言えば目的タンパク質が沈殿させられる効率は、出発材料溶液中のその目的タンパク質の濃度に反比例する。結果として所望のタンパク質の沈殿としての回収は、所望のタンパク質が低濃度にて存在する場合に減少し得る。同様に上清中の潜在的に沈殿性の夾雑タンパク質は、開始濃度が比較的低いと沈殿剤によって取り除くことが困難であり得る。この問題は、貯蔵液としての沈殿剤を導入するという反応混合物のタンパク質濃度を必然的に低下させる一般的な行為によって深刻になる。沈殿剤濃度が上昇すると溶液から沈殿する所与のタンパク質のパーセンテージは上昇するが、沈殿剤濃度が低下すると選択性は低下する。
【0006】
従ってタンパク質沈殿効率を改善する単純かつ効果的な方法の必要性が残されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の主題は、低濃度にて沈殿剤を加えること、及び沈殿剤を保持したまま得られた溶液から水を除去し、それによってタンパク質及び沈殿剤の濃度を同時に上昇させることによって複合混合物からタンパク質を単離するための方法を提供する。
【0008】
本発明概念の一実施形態は、沈殿物の形成を生じさせない沈殿剤濃度を提供する量の不揮発性沈殿剤をタンパク質水溶液に加えることによって水溶液(例えば別のタンパク質分離プロセスからの中間物、血液製剤、細胞培養液、発酵ブロス、細胞溶解物、血清、血漿、脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)、再溶解クリオプレシピテート)からタンパク質を単離する方法である。水は、沈殿剤を保持したまま沈殿剤濃度がタンパク質を含む沈殿物及び上清(他のタンパク質を含む)を生成するのに十分な濃度に到達するまで、得られた溶液から除去され、続いて上清から沈殿物が分離される。目的タンパク質は、タンパク質の性質、沈殿剤の性質、及び/又は沈殿剤の量に依存して沈殿物又は上清から回収され得る。適切な沈殿剤は、限定されないが有機酸、有機酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、無機塩、及び親水性ポリマを含む。水は、蒸発(例えば減圧下)によって、限外濾過によって、又は任意の適切な方法によって除去され得る。いくつかの実施形態では、第二の沈殿物及び第二の上清を生成させるために上清からさらなる水が除去され得る。いくつかの実施形態では、本方法からの上清は、クロマトグラフィ工程にさらにかけられ得る。同様に本方法からの沈殿物は、再溶解されてクロマトグラフィにかけられ得る。本発明概念の方法は、限定されないがフィブリノゲン、フィブロネクチン、凝固因子、フォン・ヴィレブランド因子、免疫グロブリン、アルファ-1アンチトリプシン、及びアルブミンを含む様々なタンパク質を単離するために使用され得る。
【0009】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、同様の数字は同様の要素を表す付随する図面と共に、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明概念の方法の実施形態を概略的に示す。
【
図2】本発明概念の方法の代替実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、本発明を理解するために有用であり得る情報を含む。本明細書中に提供されるいずれの情報も本願の請求項に係る発明に対する先行技術又は関連技術であると認めるものではなく、あるいは明示的又は暗示的に参照されるいずれの刊行物も先行技術であると認めるものではない。
【0012】
いくつかの実施形態において、内容物の量、濃度等の特性、反応条件等を表す、本発明のある実施形態を説明したり特許請求するために使用される数字は、時には用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。結果としていくつかの実施形態では、記述された説明及び添付の特許請求の範囲にて説明される数値パラメータは、特定の実施形態によって入手されるように追求される所望の特性に依存して変更され得る近似値である。一実施形態では、数値パラメータは、記載された有効数字の数を考慮して通常の丸め方を適用することによって解釈されるのがよい。本発明の広範囲にわたるいくつかの実施形態を説明している数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の例において説明される数値は、可能な限り正確に記載されている。本発明のいくつかの実施形態において表される数値は、それぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する一定の誤差を含み得る。
【0013】
本明細書中の説明及び後に続く特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」、「an」及び「the」の意味には、文脈が明示的に別段の指示をしない限り複数形の参照が含まれる。また、本明細書中の説明において使用される場合、「in」の意味には、文脈が明示的に別段の指示をしない限り、「in」及び「on」が含まれる。
【0014】
明細書中の値の範囲の列挙は、その範囲内に存在する各個別の値を単独に言及するための短縮された方法として目的を果たすことを単に意図されている。明細書中に別段の指示がない限り、各個別の値は、明細書中に値が単独に列挙されているかのように明細書中に組み込まれる。明細書中に説明される全ての方法は、明細書中に別段の指示又は文脈による別段の明示的な否定がない限り、いかなる適切な順番においても実施され得る。明細書中のある実施形態に関して提供される例、又は例示的な言葉(例えば、「ような」)のうちいずれか及び全ての使用は、単に発明をより明らかにすることを意図しており、請求していない限り本発明の範囲に限定をもたらさない。いかなる明細書中の言葉も、発明の実施に必要不可欠な非請求の要素を指していると解釈されるべきでない。
【0015】
明細書中に開示される発明の代替要素又は実施形態の分類は、制限として解釈されるべきではない。各群の要素は単独に、あるいは群の他の要素又は明細書中に見られる他の要素との任意の組み合わせにて言及又は特許請求されてよい。群の一つ以上の要素は、利便性及び/又は特許性の理由により群に含まれるか、又は群から削除されてよい。任意のこのような包含又は削除が発生する場合、明細書は修正された群を含み、それ故に添付の特許請求の範囲内において使用される全てのマーカッシュグループの記載された説明を満たすと本明細書において見なされる。
【0016】
以下の詳解は、本発明の主題に関する多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は発明要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は開示される要素の全ての可能な組み合わせを含むと見なされる。故に一実施形態が要素A、B及びCを含み、第二の実施形態が要素B及びDを含むならば、本発明の主題は、たとえ明確に開示されなくともA、B、C又はDの他の残りの組み合わせも含むと見なされる。
【0017】
発明概念は、不揮発性沈殿剤(例えば硫酸塩、リン酸塩、有機酸塩、及び/又は可溶性ポリマ)が一つ以上の目的タンパク質及び一つ以上の夾雑タンパク質を含む水溶液に導入される、組成物及び方法を提供する。発明概念の方法の一例は、
図1に概略的に示される。沈殿剤は、目視可能な沈殿物の形成を生じさせない量又は濃度にて提供される。水はその後、タンパク質及び沈殿剤の両方の濃度を同時に上昇させるために、得られた反応混合物から除去される。タンパク質濃度及び沈殿剤濃度が所望の目標値に到達すると、タンパク質沈殿物が形成され、その後上清画分から分離される。
【0018】
目的タンパク質及び沈殿剤の性質により、目的タンパク質は、沈殿物内又は上清画分内に存在し得る。タンパク質濃度は、本プロセス中に沈殿剤濃度が上昇すると上昇するため、沈殿物と上清画分との間のタンパク質の配分は、沈殿剤濃度が上昇するとタンパク質濃度が低下するか又はせいぜい維持される従来の沈殿プロセスにて生産されたものとは異なり区別できる。いくつかの実施形態では、このような沈殿プロセスから入手された上清は、タンパク質濃度及び沈殿剤濃度をさらに上昇させ第二の沈殿物及び第二の上清画分を生成させるために、さらなる溶媒(すなわち水)除去を受けることがある。
【0019】
この方法によって沈殿剤濃度を上昇させながら同時にタンパク質濃度を上昇させることにより、沈殿効率が改善されるため目的タンパク質の収率の上昇がもたらされ得る。さらに目視可能な沈殿物を生じさせない濃度の沈殿剤の初期導入は、(従来のプロセスおける沈殿剤添加にて見られるような)局所的高濃度の沈殿剤による求めていないタンパク質沈殿物の形成を起こさないようにし、望ましくないタンパク質変性の機会を減少させ、このようなプロセスから回収される目的タンパク質の比活性度を改善する。
【0020】
上述のように発明概念の実施形態では、沈殿剤は、不揮発性(すなわち現在の環境条件下においてタンパク質水溶液の水よりも高い蒸気圧を有する)が選択される。使用される沈殿剤の量は、沈殿剤の性質に依存して変更され得る。適切な沈殿剤は、好ましくは不変性であり有機酸及び有機酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、無機塩(例えば硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム)及び親水性ポリマ(例えばPEG、デキストラン等)を含み得る。例えばクエン酸ナトリウムのような有機塩が使用されるなら、有機塩は約0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%又は20%(w/v)未満に及ぶ濃度にて提供されてよい。同様に硫酸アンモニウムのような無機塩が使用されるなら、無機塩は約0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%又は20%(w/v)未満に及ぶ濃度にて提供されてよい。PEGのような親水性ポリマが使用されるなら、親水性ポリマは約0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、0.7%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、7%又は10%(w/v)未満に及ぶ濃度にて提供されてよい。
【0021】
水は、沈殿剤を含むタンパク質水溶液から任意の適切な方法によって除去されてよい。使用される方法は、沈殿剤の性質に依存し得る。例えば沈殿剤が親水性ポリマであれば、親水性ポリマの分子量よりも低い分子量カットオフを有する膜を利用する濾過(例えば限外濾過、透析濾過)が、水溶液から水を除去するために使用されてよい。別の実施形態では、蒸発(大気圧力又は減圧にて)が、水溶液から水を除去するために使用されてよい。
【0022】
任意のタンパク質水溶液は、発明概念の方法及び組成物のための出発材料としての目的を果たし得る。適切なタンパク質水溶液は、血液製剤(例えば血清、血漿、脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)及び/又は再溶解クリオプレシピテート)、リンパ液、乳、尿及び/又は卵成分を含んでよい。他の実施形態では、細胞培養(例えば哺乳類、鳥類、昆虫、植物及び/又は真菌の細胞)及び/又は微生物培養(例えば細胞培養液、発酵ブロス、哺乳類、昆虫、鳥類、植物、真菌、細菌又は真菌の溶解細胞等)の生成物が、タンパク質水溶液として使用されてよい。いくつかの実施形態では、タンパク質水溶液は、クロマトグラフィカラム廃液、クロマトグラフィカラムから溶出されたピーク、及び/又は沈殿プロセスからの上清のような、タンパク質精製プロセスからの中間物であってよい。
【0023】
発明概念のいくつかの実施形態では、発明概念の方法によって生成される上清又は沈殿物は、一つ以上の目的タンパク質の回収及び/又は望ましくない夾雑物の除去のためにさらに処理され得る。このような実施形態では、本方法によって生成される沈殿物は、さらなる処理の前に再溶解され得る。適切なさらなる処理工程は、第二の沈殿物及び第二の上清を産出するための上清からのさらなる水の除去(
図2参照)、沈殿させる量の沈殿剤の追加による従来の沈殿、及び/又は前記方法によって生成された上清の(例えばイオン交換、疎水性相互作用、アフィニティ、混合モード、及び/又はサイズ排除クロマトグラフィ媒体を使用した)クロマトグラフィを含む(
図1参照)。
【0024】
このようなさらなるプロセスにおいて利用されるクロマトグラフィ媒体は、任意の適切な製法及び形態を有し得る。適切な媒体は、サイズ排除、イオン交換、疎水性相互作用、アフィニティ、及び/又は混合モード媒体であってよい。適切な媒体は、多孔質の顆粒又はビーズ、非多孔質の顆粒又はビーズ、フィルタ、繊維、及び/又は多孔質の膜として提供されてよい。クロマトグラフィ媒体の構造上の一部は、任意の適切な材料に基づき得る。例は、限定されないが多糖(例えば架橋されたデキストラン)、合成ポリマ、及び/又は無機材料(例えばヒドロキシアパタイト)を含む。クロマトグラフィ媒体は、任意の適切な形状にて提供されてよい。適切な形状は、開放又は密閉されたクロマトグラフィカラム、放射状クロマトグラフィカラム、カートリッジ、膜ハウジング等を含む。
【0025】
発明概念の方法の一例では、タンパク質水溶液(例えば血漿)を入手し、等量の8%(w/v)クエン酸ナトリウムと急速攪拌により混合して、非沈殿性クエン酸ナトリウム濃度が4%(w/v)のタンパク質水溶液を形成する。そのタンパク質水溶液を密封容器に移し、周囲温度における水の蒸気圧以下に空気圧力を低下させると、その溶液からの水の急速な蒸発がもたらされる。いくつかの実施形態では、密封チャンバ内における水蒸気と水溶液の平衡化を防止するために、少量の空気が本プロセス中に密封容器内に継続的に吹き込まれる。水溶液の体積が減少してタンパク質濃度を上昇させながらクエン酸ナトリウム濃度を約10%と12%との間にするまで水を除去することにより、目視可能な沈殿物の形成がもたらされる。沈殿物はその後、例えば濾過によって又は遠心分離によって、上清画分から分離されてよい。このような分離は、大気圧力下又は減圧下にて実施されてよい。
【0026】
発明概念の方法の別の例では、タンパク質水溶液(例えば血漿)が、入手され、5kDの平均分子量を有する等量の2%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG)と急速攪拌により混合されて、非沈殿性PEG濃度が1%(w/v)の状態のタンパク質水溶液を形成する。このタンパク質水溶液を、3kDの分子量カットオフを有する非汚染膜を使用する限外濾過にかけることにより、PEGを保持したまま水及び低分子量種が当該溶液から急速に除去される。限外濾過は、タンパク質水溶液の元の体積の約25%に水溶液の体積が減少するまで継続されることにより、タンパク質濃度を上昇させながらPEG濃度を約4%(w/v)にし目視可能な沈殿物の形成をもたらす。沈殿物はその後、例えば濾過によって又は遠心分離によって、上清画分から分離されてよい。
【0027】
血漿、血清又は他の血液製剤が出発材料である場合、様々な薬学的に有用なタンパク質が、発明概念の方法から高収率かつ高比活性度にて入手され得る。このようなタンパク質は、フィブリノゲン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、フォン・ヴィレブランド因子、フィブロネクチン、免疫グロブリン、アルファ-1アンチトリプシン、プロテインC、プロテインS、C1エステラーゼ阻害剤、アンチトロンビンIII、トロンビン及び/又はアルブミンを含む。
【0028】
すでに説明されたものの他にさらに多くの変更例が本明細書中の発明概念から逸脱することなく可能であることが、当業者にとって明らかであるはずである。それ故に発明の主題は、添付の特許請求の範囲の主旨以外に制限されるべきでない。さらに明細書及び特許請求の範囲の両方の解釈に関して、全ての用語は文脈と一致する最大限広範な意味に解釈されるのがよい。具体的には用語「含む」及び「含んでいる」は、非排他的な意味で要素、構成要素又は工程に言及するものとして解釈されるのがよく、言及される要素、構成要素又は工程が存在するか、利用されるか、又は明示的に言及されていない他の要素、構成要素又は工程と組み合わされ得ることを示す。明細書と請求項がA、B、C...及びNからなる群から選択されるもののうち少なくとも一つに言及する場合、その文言は、A及びN、又はB及びN等でなく、その群からの一つの要素のみを必要とすると解釈されるのがよい。