(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法及びそれから収得される光触媒ビーズ
(51)【国際特許分類】
B01J 37/00 20060101AFI20240625BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240625BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240625BHJP
B01F 23/50 20220101ALI20240625BHJP
B01F 35/221 20220101ALI20240625BHJP
B01F 35/80 20220101ALI20240625BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240625BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240625BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240625BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B01J37/00 B
A61L9/00 C
A61L9/01 B
B01F23/50
B01F35/221
B01F35/80
B01J2/00 A
B01J2/00 B
B01J35/39
B01J37/02 301E
B01J37/08
(21)【出願番号】P 2023515102
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2020013642
(87)【国際公開番号】W WO2022055013
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0116596
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520029583
【氏名又は名称】エーピーシー テック カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン チン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0061826(KR,A)
【文献】特開2003-210995(JP,A)
【文献】特開2000-053447(JP,A)
【文献】国際公開第2011/071213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
A61L 9/00
A61L 9/01
B01F 23/50
B01F 35/221
B01F 35/80
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光体、ゼオライト、無機バインダー、二酸化チタンを混合して6~10時間ボールミリングする段階;
前記ボールミリングされた混合物100重量部に水10~50重量部を混合して練る段階;
前記練った物をビーズ充填機を通じてビーズ形態に製造する段階;
前記ビーズを100~110℃で1~3時間乾燥する段階;
前記乾燥されたビーズをSiO
2ゾル
に浸漬してコーティングする段階;
前記コーティングされたビーズを400~500℃で1~2時間第1熱処理する段階;
前記第1熱処理されたビーズを10%ケイ酸ナトリウム溶液で第1
浸漬する段階;
前記
浸漬されたビーズを100~150℃で1時間~2時間第2熱処理する段階;
前記第2熱処理されたビーズを10%ケイ酸ナトリウム溶液で第2
浸漬する段階;
前記第2
浸漬されたビーズを100~150℃で1時間~2時間第3熱処理する段階;
前記第3熱処理されたビーズをTiO
2ゾル
に浸漬してTiO
2をコーティングする段階;
前記TiO
2がコーティングされたビーズを400~500℃で1~2時間第4熱処理する段階を含んで構成されることを特徴とする、有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法。
【請求項2】
前記蓄光体は、CaAl
2O
4:Eu系、SrAl
2O
4:Eu系、BaAl
2O
4:Eu系、ZnS:Cu系、CaAl
2O
19:Eu系、SrAl
2O
19:Eu系、BaAl
2O
19:Eu系、BaMgAl
10O
17:Eu系、SrMgAl
10O
17:Eu系及びBaMg
2Al
16O
27:Eu系で構成される群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法。
【請求項3】
前記ボールミリング段階の混合物は、蓄光体30~50重量%、ゼオライト30~50重量%、無機バインダー10~20重量%、TiO
2 1~5重量%で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法。
【請求項4】
前記SiO
2ゾルは、オルトケイ酸テトラエチル(Tetraethyl Orsosilicate:TEOS):エタノール:蒸溜水:硝酸を2:13.5:11.5:0.3重量部の割合で混合し、混合物100重量部に対してポリジメチルシロキサン(Polydimethyl Siloxane:PDMS)0.8重量部を混合して30℃で1間撹拌した後、24時間エージングしたことを特徴とする、請求項1に記載の有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法。
【請求項5】
前記TiO
2コーティングは、チタニウムイソプロポキシド(Titanium Isopropoxide:TTIP):エタノール:硝酸:蒸溜水を2:13.5:0.3:11.5重量部の割合で混合して30℃で1時間撹拌したTiO
2ゾル
に浸漬してコーティングすることを特徴とする、請求項1に記載の有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気、土壌、水中に存在する有害物質又はウイルスを除去するための蓄光性光触媒ビーズの製造方法に関し、より詳しくは、蓄光性光触媒をビーズ形態に製造することによって、難分解性有機汚染混合物の分解除去はもちろん、ウイルス除去が効率的な蓄光性光触媒ビーズの製造方法及びそれから収得される蓄光性光触媒ビーズに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、大気汚染はもちろん黄砂により室内空気浄化に対する関心が増加しており、その結果、エアクリーナーの需要が増加している。自動車の排気ガス、有害性有機化合物、嫌悪性のにおい、最近のコロナによるウイルスなどにより汚染された室内空気を効果的に浄化し得る多様な研究が進行されている。
【0003】
一般的には、フィルターを利用する方法を主に用いて来たが、最近、光触媒を用いる光分解反応を通じて空気を浄化し得る方法がますます増加している。
【0004】
光触媒は、光エネルギーを吸収することによって触媒活性を有するものであって、触媒活性によって強力な酸化力で有機物質などのような環境汚染物質を酸化分解する。すなわち、光触媒は、バンドギャップ(band gap)以上のエネルギーを有する光(紫外線)を照射して価電子帯(Valence band)から伝導帯(conduction band)への電子遷移が起き、価電子帯でホールが形成される。この電子と正孔は、粉末の表面に拡散し、酸素及び水分に接触して酸化還元反応を起こすか再結合して熱を発生させる。すなわち、伝導帯の電子は、酸素を還元させてスーパーオキシド陰イオンを生成させ、価電子帯の正孔は、水分を酸化してヒドロキシラジカル(OH-)を形成させる。このような正孔により生成されるヒドロキシラジカルの強力な酸化力で光触媒の表面に吸着された気相又は液相の有機物、すなわち、難分解性有機物の分解、殺菌力、親水性などを示すことができる。
【0005】
二酸化チタン(TiO2)は、代表的な光触媒物質であって、人体に無害であり、光触媒活性が卓越であり、耐光腐食性に優れ、低価格であるという長所がある。二酸化チタンは、紫外線を受けると、強い酸化力を有したラジカルを生成するが、このようなラジカルが水中又は大気中に存在する各種環境汚染物質を無害な二酸化炭素と水などに分解させ得る。
【0006】
二酸化チタンは、388nm以下の紫外線を吸収して反応することで電子と正孔が生成されるが、このとき、光源として用いられる紫外線は、太陽光の他にランプ、白熱電灯、水銀ランプなどの人工照明、発光ダイオードなどが用いられ得る。前記反応で生成された電子と正孔は、10-12~10-9秒で再結合するが、再結合する前に汚染物質などが表面に吸着すれば、前記電子と正孔により分解される。しかし、二酸化チタン粉末のバンドギャップエネルギー(380nm以上の波長)を太陽光から獲得するが、その光の2%程度を利用できるので太陽光の主要波長である可視光領域(400~800nm)で円滑な触媒活性を有するのに困難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国特許登録第1918398号「悪臭及び有害空気汚染物質分解用光触媒」
【文献】大韓民国特許登録第1721027号「可視光感応型光触媒組成物及びこれを用いる照明装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたものであって、空気浄化器機などの製品に使用できる蓄光体を含量する光触媒ビーズの新規な製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、前記製造方法によって収得される蓄光体-ゼオライト-無機バインダー-二酸化チタンで構成されたビーズを提供するものであって、光触媒物質の二酸化チタン及び蓄光体を含む複合光触媒ビーズとして紫外線光だけではなく可視光線下でも光活性が活発な蓄光性光触媒ビーズを提供する。
【0010】
本発明による蓄光性光触媒ビーズは、光を備蓄して暗い状態でも蛍光物質から発生する光により光分解反応が起きるので、光のない環境でも空気浄化機能を行うことができ、ビーズ形態を有し空気浄化効能に優れる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による一実施例は、
【0012】
蓄光体、ゼオライト、無機バインダー、二酸化チタンを混合して6~10時間ボールミリングする段階;
【0013】
前記ボールミリングされた混合物100重量部に水10~50重量部を混合して練る段階;
【0014】
前記練った物をビーズ充填機を通じてビーズ形態に製造する段階;
【0015】
前記ビーズを100~110℃で1~3時間乾燥する段階;
【0016】
前記乾燥されたビーズをSiO2ゾルに浸漬してコーティングする段階;
【0017】
前記コーティングされたビーズを400~500℃で1~2時間第1熱処理する段階;
【0018】
前記第1熱処理されたビーズを10%ケイ酸ナトリウム溶液に第1浸漬する段階;
【0019】
前記浸漬されたビーズを100~150℃で1時間~2時間第2熱処理する段階;
【0020】
前記第2熱処理されたビーズを10%ケイ酸ナトリウム溶液に第2浸漬する段階;
【0021】
前記第2浸漬されたビーズを100~150℃で1時間~2時間第3熱処理する段階;
【0022】
前記第3熱処理されたビーズをTiO2ゾルに浸漬してTiO2をコーティングする段階;
【0023】
前記TiO2がコーティングされたビーズを400~500℃で1~2時間第4熱処理する段階を含んで構成される有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズの製造方法を提供する。
【0024】
本発明による無機バインダーは、アルギン酸ナトリウム(Sodium algina
te)、ケイ酸ナトリウム(Sodium silicate)から選択され得る。前記無機バインダーは、可視光透過率に優れるため、蓄光体を含有した光触媒ビーズにおいて活性を増大させ得るという長所がある。
【0025】
本発明による蓄光体は、CaAl2O4:Eu系、SrAl2O4:Eu系、BaAl2O4:Eu系、ZnS:Cu系、CaAl2O19:Eu系、SrAl2O19:Eu系、BaAl2O19:Eu系、BaMgAl10O17:Eu系、SrMgAl10O17:Eu系及びBaMg2Al16O27:Eu系で構成される群から選択されるものであって、本発明のために特に制限されるものではない。
【0026】
本発明によるゼオライトは、化学式(WmZnO2)n・20(Wは、Na、Ca、Ba、Srであり、Z=Si+Alである)からなる粉末原料である。
【0027】
本発明による蓄光体、ゼオライト、無機バインダー、二酸化チタンの混合割合は、蓄光体30~50重量%、ゼオライト30~50重量%、無機バインダー10~20重量%、TiO2 1~5重量%で構成されることが好ましく、前記範囲にあるとき、蓄光体を用いた光触媒活性効果を有するとともに光触媒効率を増加させ得る。
【0028】
ビーズ充填機を通じて製造されたビーズ形態の蓄光性光触媒ビーズを乾燥した後、SiO2ゾルに浸漬してコーティングを実施するが、本発明によるSiO2ゾルは、オルトケイ酸テトラエチル(Tetraethyl Orsosilicate:TEOS):エタノール:蒸溜水:硝酸を2:13.5:11.5:0.3重量部の割合で混合し、前記混合物100重量部に対してポリジメチルシロキサン(Polydimethyl Siloxane:PDMS)0.8重量部を混合して30℃で1時間撹拌した後、24時間エージングしたことを特徴とする。
【0029】
SiO2ゾルに浸漬してコーティングされた蓄光性光触媒ビーズは、2回にわたって10%ケイ酸ナトリウム溶液に浸漬した後、100~150℃で1~2時間乾燥する過程を経る。このように本発明で10%ケイ酸ナトリウム溶液に浸漬して乾燥する過程を2回にわたって進行する理由は、蓄光性光触媒ビーズの表面を堅くしてビーズ同士ぶつかっても壊れたり蓄光体が剥離したりする現象を防止し、光触媒の活性を発揮するにおいて問題がないようにするためである。
【0030】
次に、表面が堅く処理された蓄光性光触媒ビーズは、TiO2コーティングを実施することになるが、本発明によるTiO2コーティングは、チタニウムイソプロポキシド(Titanium Isopropoxide:TTIP):エタノール:硝酸:蒸溜水を2:13.5:0.3:11.5重量部の割合で混合して30℃で1時間撹拌したTiO2ゾルに浸漬してコーティングすることを特徴とする。
【0031】
前記のように、TiO2コーティングまで実施した本発明による蓄光性光触媒ビーズは、400~450℃で2~3時間焼成することによって、本発明による有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズを収得することになる。
【0032】
本発明の他の一実施例は、前記製造方法によって製造された有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズを提供する。
【0033】
本発明の他の一実施例は、本発明による製造方法によって収得された有害物質分解及び抗ウイルス用蓄光性光触媒ビーズを用いたモジュールを提供することによって、エアクリーナーなどに付着して用いられるものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一実施例によると、既存のゾル-ゲル法を改善して蓄光体と光触媒を混合してビーズを作った後、ビーズに堅固性を与えるために後処理コーティングする方法によって、光触媒及び蓄光体が容易に剥離せず効果が持続するという長所がある。
【0035】
本発明の一実施例よる蓄光体光触媒ビーズは、外部から照射される紫外線又は可視光線のみならず蓄光体が既に吸収した光が再放出されながら光触媒を活性化させる光源として作用することができるので、二酸化チタンによる光分解反応効率を向上させ得るという長所がある。
【0036】
本発明による蓄光性光触媒ビーズは、球形を帯びているので、光反応の比表面積を増加させることができ、これによって、光分解効率が向上するという効果がある。
【0037】
本発明の一実施例によるビーズを積層できるモジュールを製作してその内部に本発明によって製造された蓄光性光触媒ビーズを羅列させることによって、自動車内部の空気フィルターと結合して車両内の空気清浄効率を増加させることができ、一般家庭用又は工業用エアクリーナーの外部に結合して室内空気清浄及びウイルス殺菌の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による蓄光性光触媒ビーズの製造方法を概略的に示したフローチャートである。
【
図2】
図2は、一般的な光触媒と本発明による製造方法によって製造された蓄光性光触媒ビーズの形状を対比した写真である。
【
図3】
図3は、一般光触媒と本発明による蓄光性光触媒ビーズを用いた光分解実験結果を示したグラフである。
【
図4】
図4は、本発明による蓄光性光触媒ビーズを用いて製作したエアクリーナーの有害ガス除去効率に関する試験成績書である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明による好ましい実施例をより詳しく説明する。ただし、以下の特定の構造乃至機能的説明は、本発明の概念による実施例を説明するための目的で例示されたものに過ぎず、本発明の概念による実施例は、多様な形態で実施され得、本明細書に記載した実施例によって限定されて理解されるものではない。
【0040】
<実施例>
【0041】
蓄光体:ゼオライト:アルギン酸ナトリウム:ケイ酸ナトリウム:二酸化チタンを重量%37:37:8:17:1の割合で混合した後、6時間の間ボールミリングした。ボールミリングした混合物100kgに水20kgを入れて10分間練ってビーズ充填機で5mmサイズでビーズ形態に製造した。
【0042】
前記のように製造されたビーズを110℃で2時間乾燥させた。
【0043】
乾燥したビーズをSiO2ゾルに浸漬してコーティングをした後、400℃で2時間第1熱処理した。
【0044】
前記コーティングされたビーズを10%ケイ酸ナトリウム溶液で第1浸漬した後、110℃で1時間第2熱処理した後、再び10%ケイ酸ナトリウム溶液で第2浸漬した後、110℃で1時間第3熱処理した。
【0045】
前記熱処理されたビーズをTiO2ゾルに浸漬してTiO2コーティングをした後、450℃で2時間熱処理して、本発明による蓄光性光触媒ビーズを収得した。
【0046】
<比較例>
【0047】
金属板(SUS)に二酸化チタンをコーティングして光触媒板を製造して実験に用いた。
【0048】
<実験例>
【0049】
光分解実験
【0050】
0.3m3チャンバに酢酸を1滴を入れて30分間拡散させ、その後に2時間光分解を行った。
【0051】
図3に示したように、比較例による一般光触媒は、初期30分間約40%の光分解効果を示し、最終的に、50%の光分解効果を示すことが分かった。
【0052】
それに比べて、本発明によって製造された蓄光性光触媒は、30分間85%の光分解効果を示し、最終的に、95%の光分解効果を示した。
【0053】
実験結果から分かるように、本発明によって製造された蓄光性光触媒は、一般光触媒に比べて約2倍以上光触媒効果に優れていることが確認できた。
【0054】
また、
図4は、本発明によって製造された蓄光性光触媒を用いたエアクリーナーの有害ガス除去率を実験した結果であって、アンモニアガス、アセトアルデヒド、酢酸、ホルムアルデヒド、トルエンなどの除去率が平均95%以上であることが確認された。