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特許7509486環境にやさしい難燃性断熱塗料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】環境にやさしい難燃性断熱塗料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20240625BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240625BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20240625BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20240625BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240625BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240625BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/02
C09D5/18
C09D7/43
C09D7/61
C09D7/63
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024048756
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524114283
【氏名又は名称】広東施彩新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Shicai New Material Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101, No. 35, Wanfeng Industrial Road, Qishi Town, Dongguan, Guangdong 523532, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】葉邦君
(72)【発明者】
【氏名】鐘小秋
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110964394(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113652123(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に重量百分率
スチレンアクリルエマルジョン 8~15%
付着促進剤 10~18%
断熱剤 10~20%
難燃剤 20~30%
湿潤分散剤 2~5%
粘度調整剤 3~6%
他の助剤 4~9%
が混合された難燃性断熱塗料であって
前記スチレンアクリルエマルジョンは、固形分含有量が49%であり、
前記付着促進剤は、固形分含有量が32±2%のシリカゾルであり、又は前記付着促進剤は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及び前記シリカゾルで構成され、前記2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと前記シリカゾルとの重量比は1:(12~14)であり、
前記断熱剤は、エアロゲル及び中空ガラスビーズで構成され、前記エアロゲルと前記中空ガラスビーズとの重量比は1:(6~8)であり、前記エアロゲルの固形分含有量は、10~30%であり、
前記難燃剤は、水酸化マグネシウム及びリン系難燃剤で構成され、水酸化マグネシウムとリン系難燃剤との重量比は1.5:0.5~1:1.5であり、又は前記難燃剤は、水酸化マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー、リン系難燃剤及び窒素系難燃剤で構成され、前記水酸化マグネシウムと、前記含水ケイ酸マグネシウムナノファイバーと、前記リン系難燃剤と、前記窒素系難燃剤との重量比は(3~4):1:(2~3):(0.5~1.5)であり、又は、前記難燃剤は変性難燃剤であり、前記変性難燃剤は重量部で
水酸化マグネシウム 15~20部
含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー 5部
リン系難燃剤 10~15部
窒素系難燃剤 2.5~7.5部
アリルグリシジルエーテル 0.75~1.7部
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 0.21~0.75部
ポリエチレングリコールジオレイン酸エステル 0.21~0.56部
で構成され、
前記湿潤分散剤は、ノニオン湿潤分散剤であり、又は前記湿潤分散剤は、第四級アンモニウム塩湿潤分散剤及びノニオン湿潤分散剤で構成され、前記第四級アンモニウム塩湿潤分散剤と前記ノニオン湿潤分散剤との重量比は1:(3~5)であり、
前記粘度調整剤は、メチルヒドロキシエチルセルロース又はケイ酸マグネシウムリチウムであり、
前記他の助剤は、凍結防止剤、シリコーン撥水剤、防腐剤及び消泡剤で構成され、前記凍結防止剤と、前記シリコーン撥水剤と、前記防腐剤と、前記消泡剤との重量比は(0.8~1):1:(0.1~0.3):(0.2~0.4)である
ことを特徴とする環境にやさしい難燃性断熱塗料。
【請求項2】
粘度調整剤を水に添加し、均一に撹拌し、混合液を調製するステップS1と、
付着促進剤及び湿潤分散剤を混合液に添加し、均一に撹拌し、分散液を調製するステップS2と、
難燃剤を分散液に添加し、均一に撹拌し、難燃性分散液を調製するステップS3と、
スチレンアクリルエマルジョン、断熱剤及び他の助剤を難燃性分散液に添加し、均一に撹拌し、環境にやさしい難燃性断熱塗料を製造するステップS4と、を含む、ことを特徴とする請求項に記載の環境にやさしい難燃性断熱塗料の製造方法。
【請求項3】
前記ステップS3における撹拌速度は800~1500r/minであり、撹拌時間は20~40minであり、前記ステップS4における撹拌速度は200~600r/minであり、撹拌時間は40~90minである、ことを特徴とする請求項に記載の環境にやさしい難燃性断熱塗料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は環境にやさしい建築用機能性塗料の分野に関し、より具体的には、それは環境にやさしい難燃性断熱塗料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物外壁の断熱及び保温技術の発展に伴い、建物壁体の断熱保温塗料も徐々に内壁から外壁へ変換し、建物壁体の断熱保温塗料は断熱及び保温などの性能を有する機能性塗料である。
【0003】
建物壁体の断熱保温塗料は優れた断熱及び保温の性能を有するが、難燃性が低く、火災に遭遇した場合に燃焼しやすく、人の生命安全に大きなリスクを有し、大きな経済的損失を引き起こしやすい。
【0004】
建物壁体の断熱保温塗料の難燃性能を改善するために、先行技術文献GB/T25261-2018に記載のように、断熱保温塗料に難燃剤を添加することが一般的であり、難燃剤は一般的に粉末充填材であり、断熱保温塗料に添加されると、保温断熱塗料の塗膜性能が低下しやすく、塗布して形成された建物壁体のコート層に割れ及び脱落の状況が発生しやすく、建物壁体における断熱保温塗料の使用安定性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、従来の難燃性断熱保温塗料は使用中に割れ及び脱落の状況が発生しやすく、難燃性断熱保温塗料の使用安定性が低下するという問題を解決するために、環境にやさしい難燃性断熱塗料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本願は環境にやさしい難燃性断熱塗料を提供し、以下の技術的解決手段を採用する。
【0007】
環境にやさしい難燃性断熱塗料は以下の重量百分率の原料で製造される。
スチレンアクリルエマルジョン 8~15%
付着促進剤 10~18%
断熱剤 10~20%
難燃剤 20~30%
湿潤分散剤 2~5%
粘度調整剤 3~6%
他の助剤 4~9%
水 残量
【0008】
上記技術的解決手段を採用することにより、スチレンアクリルエマルジョンは比較的高い耐温性、耐水性及び塗膜付着安定性を有し、付着促進剤と配合することができ、共存安定性に優れ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の付着性を向上させ、割れ及び脱落が発生しやすい状況を低減し、断熱剤は断熱及び保温の作用を有し、難燃剤は難燃の作用を有し、湿潤分散剤及び粘度調整剤の作用で、断熱剤及び難燃剤を体系に均一に分散させ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の難燃及び断熱の性能をさらに向上させ、また、大量の難燃剤を添加することにより、環境にやさしい難燃性断熱塗料が塗膜となった後、脱落及び割れが発生しやすいという問題を低減し、環境にやさしい難燃性断熱塗料の塗膜の付着安定性をさらに向上させ、本願にて製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は建物外壁に適用され、比較的高い環境へのやさしさ、難燃、断熱及び耐割れの性能を有し、火に当たると燃焼せず、比較的高い使用安定性を有し、建物の安全性を向上させる。
【0009】
好ましくは、前記付着促進剤は2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及びシリカゾルで構成され、前記2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールと前記シリカゾルとの重量比は1:(12~14)である。
【0010】
上記技術的解決手段を採用することにより、シリカゾルは接着力が強く、耐高温で、難燃であるという特徴を有し、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールはシリカゾルに対して比較的高い分散安定性を有し、好適な比率の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールとシリカゾルを付着促進剤とすると、スチレンアクリルエマルジョンと比較的良好な相乗効果を生成することができ、均一な分散エマルジョン体系を形成し、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の建築用材料における付着安定性を向上させ、割れ及び脱落が発生するという問題を低減し、また、難燃及び断熱の効果を向上させる。
【0011】
好ましくは、前記難燃剤は水酸化マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー、リン系難燃剤及び窒素系難燃剤で構成され、前記水酸化マグネシウムと、前記含水ケイ酸マグネシウムナノファイバーと、前記リン系難燃剤と、前記窒素系難燃剤との重量比は(3~4):1:(2~3):(0.5~1.5)である。
【0012】
上記技術的解決手段を採用することにより、上記難燃剤を配合すると、比較的良好な相乗効果を生成し、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の難燃性及び断熱性を向上させ、形成された塗膜の緻密性を向上させることができ、火に当たると燃焼せず、比較的高い低煙・難燃性を有する。
【0013】
好ましくは、前記難燃剤は変性難燃剤であり、前記変性難燃剤は以下の重量部の原料で製造される。
水酸化マグネシウム 15~20部
含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー 5部
リン系難燃剤 10~15部
窒素系難燃剤 2.5~7.5部
アリルグリシジルエーテル 0.75~1.7部
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 0.21~0.75部
ポリエチレングリコールジオレイン酸エステル 0.21~0.56部
【0014】
好ましくは、前記変性難燃剤は以下のステップで製造される。水酸化マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー、リン系難燃剤及び窒素系難燃剤を難燃剤の重量比率に従って撹拌装置に添加し、0.75~1.7部のアリルグリシジルエーテル、0.21~0.75部のγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び0.21~0.56部のポリエチレングリコールジオレイン酸エステルを添加し、温度が20~35℃の条件で30~60min撹拌し、変性難燃剤を製造する。
【0015】
上記技術的解決手段を採用することにより、環境にやさしい難燃性断熱塗料に使用される難燃剤の使用量が大きいため、湿潤分散剤及び粘度調整剤は難燃剤を分散させることができるが、一部の難燃剤が完全に分散しない状況が発生することがあり、塗膜の難燃安定性をも低下させ、塗膜が乾燥した後、一部の領域に付着が不安定な状況が発生し、そのため、難燃剤の体系における分散作用をさらに向上させるために、難燃剤を前処理する。
【0016】
本願においてアリルグリシジルエーテル、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びポリエチレングリコールジオレイン酸エステルを用いて難燃剤に対して表面処理を行い、そのうち、アリルグリシジルエーテルは柔軟な親水エーテルセグメント及び疎水性エポキシ基、ビニルセグメントを有し、難燃剤はアリルグリシジルエーテルの作用で、シランカップリング剤と安定的にグラフトし、塗料における難燃剤の相溶性を向上させ、難燃剤をシランカップリング剤及びアリルグリシジルエーテルで形成された分子絡合構造に均一に分散させ、ポリエチレングリコールジオレイン酸エステルは好適な潤滑及び分散安定性を有し、難燃剤の分散均一性及び安定性をさらに向上させることができ、これにより製造された変性難燃剤は比較的高い分散性を有し、粘度調整剤及び湿潤分散剤と比較的良好な相乗効果を生成することができ、また、断熱剤の分散性を向上させ、これにより製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は比較的高い難燃、断熱及び付着安定性を有し、割れ及び脱落しにくい。
【0017】
好ましくは、前記断熱剤はエアロゲル及び中空ガラスビーズで構成され、前記エアロゲルと前記中空ガラスビーズとの重量比は1:(6~8)である。
【0018】
上記技術的解決手段を採用することにより、エアロゲルは比較的良好な断熱保温の作用を有し、しかしながら、エアロゲルを単独で使用して断熱剤とする場合、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料はコストが比較的高く、且つ塗膜の厚さが比較的厚いとき、割れの状況が発生しやすく、中空ガラスビーズは質量が軽く、熱伝導率が低く、圧縮強度が高いという作用を有し、エアロゲルと配合すると、塗膜の緻密性を向上させることができ、塗膜に割れが発生しやすいという問題を低減し、また、湿潤分散剤、粘度調整剤の共同作用で、難燃剤と均一に分散し、これにより製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は付着性及び耐割れ性能が比較的高い。
【0019】
好ましくは、前記湿潤分散剤は第四級アンモニウム塩湿潤分散剤及びノニオン湿潤分散剤で構成され、前記第四級アンモニウム塩湿潤分散剤と前記ノニオン湿潤分散剤との重量比は1:(3~5)である。
【0020】
上記技術的解決手段を採用することにより、第四級アンモニウム塩湿潤分散剤は断熱剤及び難燃剤に対して比較的高い吸着性能を有し、難燃剤、断熱剤といった充填材の分子間の間隔を大きくすることができ、凝集が発生する状況を低減し、ノニオン浸潤剤は比較的高い浸潤分散性を有し、難燃剤及び断熱剤の表面エネルギーをさらに低下させることができ、両者は比較的良好な相乗効果を生成し、難燃剤及び断熱剤の体系における分散性能をさらに向上させ、環境にやさしい難燃性断熱塗料の塗膜性能を向上させる。
【0021】
好ましくは、前記粘度調整剤はケイ酸マグネシウムリチウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウムのうちの1種又は組み合わせである。
【0022】
上記技術的解決手段を採用することにより、上記粘度調整剤は比較的高い耐イオン性を有し、水に溶解すると一定の粘度を有する分散系を形成することができ、難燃剤、断熱剤、付着促進剤及びスチレンアクリルエマルジョンと均一な分散及び懸濁を行うことができ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の体系安定性を向上させ、さらに環境にやさしい難燃性断熱塗料の総合性能を向上させる。
【0023】
好ましくは、前記他の助剤は凍結防止剤、シリコーン撥水剤、防腐剤及び消泡剤で構成され、前記凍結防止剤と、前記シリコーン撥水剤と、前記防腐剤と、前記消泡剤との重量比は(0.8~1):1:(0.1~0.3):(0.2~0.4)である。
【0024】
上記技術的解決手段を採用することにより、凍結防止剤は環境にやさしい難燃性断熱塗料の凍結防止性能を向上させ、脱落及び割れの状況を低減することができ、シリコーン撥水剤は環境にやさしい難燃性断熱塗料の耐水性を向上させ、耐久性を向上させることができ、消泡剤は環境にやさしい難燃性断熱塗料の塗膜安定性を向上させ、塗膜の不均一が発生する状況を低減することができ、防腐剤は環境にやさしい難燃性断熱塗料中の微生物含有量を低減し、塗膜にカビ及び変質が発生する状況を低減することができ、上記助剤は環境にやさしい難燃性断熱塗料中の不可欠な部分である。
【0025】
第2の態様において、本願は環境にやさしい難燃性断熱塗料の製造方法を提供し、以下の技術的解決手段を採用する。
【0026】
環境にやさしい難燃性断熱塗料の製造方法は
粘度調整剤を水に添加し、均一に撹拌し、混合液を調製するステップS1と、
付着促進剤及び湿潤分散剤を混合液に添加し、均一に撹拌し、分散液を調製するステップS2と、
難燃剤を分散液に添加し、均一に撹拌し、難燃性分散液を調製するステップS3と、
スチレンアクリルエマルジョン、断熱剤及び他の助剤を難燃性分散液に添加し、均一に撹拌し、環境にやさしい難燃性断熱塗料を製造するステップS4と、を含む。
【0027】
上記技術的解決手段を採用することにより、まず粘度調整剤を水に溶解し、一定の粘度を有する混合液を形成し、続いて付着促進剤及び湿潤分散剤を混合液に添加し、比較的高い分散、湿潤及び懸濁安定性を有する分散液を調製し、続いて難燃剤を分散液に添加し、難燃剤を安定的に分散させ、均一に分散した難燃性分散液を形成し、難燃剤、湿潤分散剤及び粘度調整剤の共同作用で、スチレンアクリルエマルジョン、断熱剤及び他の助剤を添加し、スチレンアクリルエマルジョン、断熱剤及び他の助剤を均一に分散させ、これにより体系が均一に分散し、性能が安定的な環境にやさしい難燃性断熱塗料を製造する。
【0028】
好ましくは、前記ステップS3における撹拌速度は800~1500r/minであり、撹拌時間は20~40minであり、前記ステップS4における撹拌速度は200~600r/minであり、撹拌時間は40~90minである。
【0029】
上記技術的解決手段を採用することにより、高速撹拌の状態で、難燃剤を安定的に分散させ、続いて低速撹拌の状態で、スチレンアクリルエマルジョン、断熱剤を難燃性分散液系に均一に分散可能にし、撹拌速度及び撹拌時間を好適に制御すると体系が均一に分散する環境にやさしい難燃性断熱塗料を製造しやすい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本願は以下の少なくとも1つの有益な効果を実現することができる。
【0031】
1、本願の環境にやさしい難燃性断熱塗料は、スチレンアクリルエマルジョン及び付着促進剤で配合し、粘度調整剤及び湿潤分散剤の共同作用で、難燃剤及び断熱剤を均一に分散させ、これにより製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は比較的高い環境へのやさしさ、難燃性及び断熱性能を有し、塗膜の付着安定性が高く、割れ及び脱落の状況が発生しにくく、建物外壁に適用され、使用安定性が高い。
【0032】
2、アリルグリシジルエーテル、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びポリエチレングリコールジオレイン酸エステルを用いて難燃剤を前処理することにより、調製された変性難燃剤は、体系に均一で安定的に分散でき、粘度調整剤及び湿潤分散剤と比較的良好な相乗効果を生成し、断熱剤の分散均一性を向上させ、これにより製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は総合性能が高い。
【0033】
3、第四級アンモニウム塩湿潤分散剤及びノニオン湿潤分散剤を湿潤分散剤とし、ケイ酸マグネシウムリチウム/ケイ酸マグネシウムアルミニウムを粘度調整剤とすることにより、変性難燃剤と比較的良好な相乗効果を生成することができ、変性難燃剤及び断熱剤の分散安定性をさらに向上させ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の性能をさらに向上させる。
【0034】
4、本願の製造方法は簡単で操作しやすく、まず粘度調整剤、付着促進剤及び湿潤分散剤を水に添加して分散させ、続いて難燃剤を添加して分散させ、最後にスチレンアクリルエマルジョン、断熱剤及び他の助剤を添加して分散させ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は体系が安定的であり、塗膜性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例に合わせて、本願をさらに詳しく説明する。
【0036】
以下は本願の一部の原料の由来及び仕様であり、本願の製造例及び実施例における原料はいずれも市販により取得することができ、本願に使用される原料は以下に開示された具体的な型番及びメーカーを含むがそれらに限定されず、同じ仕様パラメータ及び性能を有する原料はいずれも使用することができる。
【0037】
1、スチレンアクリルエマルジョン:BATF837A、スチレン/アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、質量固形分含有量49%、粘度250~2250cps/25℃、
2、シリカゾル:BESNEW、乳白色半透明、pH=8-9、質量固形分含有量32±2%、粒径5~20nm、
3、水酸化マグネシウム:325メッシュ、
4、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー:浙江砥石、内径10~20nm、外径40~70nm、長さ200~1000nm、比表面積800~900m/g、
5、リン系難燃剤:東莞市宏泰基、マイクロカプセル化赤リン難燃剤、D100≦20μm、D50≦6μm、赤リン含有量>80%、
6、窒素系難燃剤:メラミンシアヌレート、CAS番号:37640-57-6、メラミンシアヌレート含有量>99.5%、粒径≦3μm、
7、ポリエチレングリコールジオレート:ポリエチレングリコール600ジオレイン酸エステル、酸価(mgKOH/g):≦10、含有量:≧99%、HLB値:10~11、ケン化価(mgKOH/g):85~105、
8、エアロゲル:安微科昂ナノテクノロジーKNF-Gシリカエアロゲル分散ペースト、熱伝導率0.017~0.023W/(m・K)、密度0.40~0.60g/cm、固形分含有量10~30%、
9、中空ガラスビーズ:鄭州Hollowlite、中空ガラスビーズHS60、平均粒径16μm。
(変性難燃剤の製造例)
【0038】
製造例1
製造例は以下のステップで製造される変性難燃剤を開示する。
1.5kgの水酸化マグネシウム、0.5kgの含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー、1kgのリン系難燃剤及び0.75kgの窒素系難燃剤を難燃剤の重量比率に従って撹拌機に添加し、0.075kgのアリルグリシジルエーテル、0.075kgのγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び0.056kgのポリエチレングリコールジオレイン酸エステルを添加し、温度が20℃の条件で30min撹拌し、変性難燃剤を製造した。
【0039】
製造例2~3
製造例2~3と製造例1との相違点は、原料使用量及び製造条件が異なることであり、具体的には下記表1を参照する。
【0040】
表1 製造例1~3の原料使用量及び製造条件の表
【0041】
製造比較例1
製造比較例1は、製造例1とは異なり、アリルグリシジルエーテルを等量のγ-アミノプロピルトリエトキシシランに切り替え、それ以外は製造例1と同様である。
【0042】
製造比較例2
製造比較例2は、製造例1とは異なり、ポリエチレングリコールジオレイン酸エステルを等量のγ-アミノプロピルトリエトキシシランに切り替え、それ以外は製造例1と同様である。
(実施例)
【0043】
実施例1
実施例1は以下のステップで製造される環境にやさしい難燃性断熱塗料を開示する。
S1において、0.3kgのメチルヒドロキシエチルセルロースを粘度調整剤として2kgの水に添加し、撹拌速度が300r/minの条件で20min撹拌し、混合液を調製し、
S2において、付着促進剤としての1.8kgのシリカゾル及び0.2kgのノニオン湿潤分散剤を混合液に添加し、撹拌速度が200r/minの条件で10min撹拌し、分散液を調製し、
S3において、1.5kgの水酸化マグネシウム及び0.5kgのリン系難燃剤を難燃剤として分散液に添加し、撹拌速度が800r/minの条件で20min撹拌し、難燃性分散液を調製し、
S4において、0.8kgのスチレンアクリルエマルジョンと、断熱剤としての0.286kgのエアロゲル及び1.714kgの中空ガラスビーズと、他の助剤としての0.342kgの凍結防止剤、0.429kgのシリコーン撥水剤、0.043kgの防腐剤及び0.086kgの消泡剤とを難燃性分散液に添加し、撹拌速度が200r/minの条件で40min撹拌し、環境にやさしい難燃性断熱塗料を製造し、
本実施例におけるノニオン湿潤分散剤はテゴTEGO 740Wであり、凍結防止剤はエチレングリコールであり、シリコーン撥水剤はワッカーBS 206であり、防腐剤はメチルイソチアゾリンケトン、MIT-50であり、消泡剤はエレメンティスDAPRO DF 7010消泡剤である。
【0044】
実施例2~3
実施例2~3と実施例1との相違点は、原料使用量及び製造条件が異なることであり、具体的には下記表2を参照する。
【0045】
表2 実施例1~3の原料使用量及び製造条件の表
【0046】
実施例4
実施例4と実施例1との相違点は難燃剤が異なることであり、実施例4における難燃剤は水酸化マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー、リン系難燃剤及び窒素系難燃剤で構成され、水酸化マグネシウムの使用量は0.923kgであり、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバーの使用量は0.308kgであり、リン系難燃剤の使用量は0.615kgであり、窒素系難燃剤の使用量は0.154kgであり、それ以外は実施例1と同様である。
【0047】
実施例5
実施例5と実施例4との相違点は、難燃剤の比率が異なることであり、実施例5における難燃剤は水酸化マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバー、リン系難燃剤及び窒素系難燃剤で構成され、水酸化マグネシウムの使用量は0.842kgであり、含水ケイ酸マグネシウムナノファイバーの使用量は0.21kgであり、リン系難燃剤の使用量は0.632kgであり、窒素系難燃剤の使用量は0.316kgであり、それ以外は実施例4と同様である。
【0048】
実施例6
実施例6と実施例4との相違点は付着促進剤が異なることであり、実施例6における付着促進剤は2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及びシリカゾルで構成され、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの使用量は0.138kgであり、シリカゾルの使用量は1.662kgであり、それ以外は実施例4と同様である。
【0049】
実施例7
実施例7と実施例6との相違点は付着促進剤の比率が異なることであり、実施例7における付着促進剤は2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及びシリカゾルで構成され、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの使用量は0.12kgであり、シリカゾルの使用量は1.68kgであり、それ以外は実施例6と同様である。
【0050】
実施例8
実施例8と実施例7との相違点は湿潤分散剤が異なることであり、実施例8における湿潤分散剤は第四級アンモニウム塩湿潤分散剤及びノニオン湿潤分散剤で構成され、第四級アンモニウム塩湿潤分散剤の使用量は0.05kgであり、ノニオン湿潤分散剤の使用量は0.15kgであり、第四級アンモニウム塩湿潤分散剤はクラリアントXW330であり、それ以外は実施例7と同様である。
【0051】
実施例9
実施例9と実施例8との相違点は湿潤分散剤の比率が異なることであり、実施例9における湿潤分散剤は第四級アンモニウム塩湿潤分散剤及びノニオン湿潤分散剤で構成され、第四級アンモニウム塩湿潤分散剤の使用量は0.033kgであり、ノニオン湿潤分散剤の使用量は0.167kgであり、それ以外は実施例8と同様である。
【0052】
実施例10
実施例10と実施例8との相違点は粘度調整剤が異なることであり、実施例10における粘度調整剤はケイ酸マグネシウムリチウムであり、ケイ酸マグネシウムリチウムの仕様は325メッシュであり、5%粘度は2000~2200mPa・s/25℃であり、それ以外は実施例8と同様である。
【0053】
実施例11~15
実施例11~15と実施例10との相違点は難燃剤の由来が異なることであり、具体的には下記表3を参照する。
【0054】
表3 実施例11~15の難燃剤の由来の表
(比較例)
【0055】
比較例1
比較例1は、実施例10とは異なり、付着促進剤を等量のスチレンアクリルエマルジョンに切り替え、それ以外は実施例10と同様である。
【0056】
比較例2
比較例2は、実施例10とは異なり、粘度調整剤の使用量が0.05kgであり、分散湿潤剤の使用量が0.45kgであり、それ以外は実施例10と同様である。
【0057】
比較例3
比較例3は、実施例10とは異なり、粘度調整剤の使用量が0.45kgであり、分散湿潤剤の使用量が0.05kgであり、それ以外は実施例10と同様である。
【0058】
性能検査試験
以下、実施例1~15及び比較例1~3で製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料に対して性能試験を行う。
【0059】
(1)難燃性試験:
GB/T 25261-2018『建築用反射断熱塗料』における6.3.3.3断熱における塗装試験板の製造方法を参照して試験板を製造し、続いて点火燃焼試験を行い、時間を30sとし、火が発生するか否かを観察し、GB/T 8627-2007『建築材料燃焼又は分解の煙密度試験方法』を参照して煙密度(SDR、単位:%)を試験し、試験データを試験し記録した。
【0060】
(2)熱伝導試験:
GB/T 25261-2018『建築用反射断熱塗料』における試験方法を参照し、熱伝導率(単位:W/(m・K))を試験し記録した。
【0061】
(3)付着試験:
GB/T 25261-2018『建築用反射断熱塗料』における試験方法を参照し、接着強度(単位:MPa)を試験し記録した。
【0062】
(4)耐割れ性試験:
GB/T 25261-2018『建築用反射断熱塗料』における試験方法を参照し、環境にやさしい難燃性断熱塗料が塗布された試験板を常温で24h放置し、割れがあるか否かを観察し、割れ状況を試験し記録し、割れがなければ、「正常」と記し、
その後、JG/T 25-2017の規定に従って、合計3回循環し、循環条件は、25℃の水に18h浸漬し、-20℃で3h冷凍し、50℃で3hベークすることであり、3回循環し試験した後、室温に戻し、白亜化、割れ、気泡及び剥離があるか否かを観察し、GB/T 1766-2008『着色塗料及びワニスコート層劣化の評価』に従って評価し記録した。
【0063】
以下は実施例1~15及び比較例1~3で製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の性能試験データであり、具体的には下記表4を参照する。
【0064】
表4 実施例1~15及び比較例1~3の性能試験データの表
【0065】
実施例1~3及び実施例4~5に合わせ、表4に合わせて分かるように、好適な比率の難燃剤を用いると、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の難燃性及び断熱性能を好適に向上させることができ、また、塗膜の接着強度及び塗膜の初期割れ状況を好適に向上させることができる。
【0066】
実施例4~5及び実施例6~7、比較例1に合わせ、表4に合わせて分かるように、本願の好適な比率の付着促進剤を用いると、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の難燃性及び断熱性能を好適に向上させることができ、また、塗膜の接着強度及び塗膜の初期割れ状況を好適に向上させることができ、塗膜が耐温性試験を経た後の耐割れ性能も向上し、比較例1において付着促進剤を等量のスチレンアクリルエマルジョンに切り替えて製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料は難燃性、断熱性能及び接着強度が顕著に低下し、耐割れ性能も顕著に低下することから、付着促進剤はスチレンアクリルエマルジョンと比較的良好な相乗効果を生成することができ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の総合性能を向上させることが示される。
【0067】
実施例6~7及び実施例8~10、比較例2~3に合わせ、表4に合わせて分かるように、本願の好適な使用量比の湿潤分散剤及び粘度調整剤を用いると、難燃剤及び断熱剤の体系における分散均一性を好適に向上させることができ、製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の性能が向上し、比較例2において粘度調整剤の使用量を低減し、比較例3において湿潤分散剤の使用量を低減して製造された環境にやさしい難燃性断熱塗料の総合性能はいずれも低下する。
【0068】
実施例10及び実施例11~15に合わせ、表4に合わせて分かるように、難燃剤を変性させると、環境にやさしい難燃性断熱塗料の難燃性能、熱伝導率及び接着強度をさらに向上させることができる。
【0069】
本具体的な実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではなく、当業者が本明細書を読んだ後に、必要に応じて本実施例に対して創造的な寄与をしない補正を行うことはできるが、本願の特許請求の範囲内にあれば、いずれも特許法に保護される。
【要約】      (修正有)
【課題】塗膜の付着性に優れ、脱落しにくく、比較的高い難燃、断熱保温及び耐割れの性能を有する、環境にやさしい難燃性断熱塗料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】難燃性断熱塗料は、重量百分率で、スチレンアクリルエマルジョン8~15%、付着促進剤10~18%、断熱剤10~20%、難燃剤20~30%、湿潤分散剤2~5%、粘度調整剤3~6%、他の助剤4~9%及び残量の水で構成された原料で製造され、製造方法は、S1において、粘度調整剤及び水を混合し、混合液を調製し、S2において、付着促進剤及び湿潤分散剤を混合液と混合し、分散液を調製し、S3において、難燃剤及び分散液を混合し、難燃性分散液を調製し、S4において、スチレンアクリルエマルジョン、断熱剤及び他の助剤を難燃性分散液と混合する。
【選択図】なし