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特許7509502フレキシブルプリント配線板の製造方法及びフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板の製造方法及びフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240625BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240625BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240625BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H05K3/28 F
H01F17/00 B
H01F41/04 C
H05K1/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019557206
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(86)【国際出願番号】 JP2018043301
(87)【国際公開番号】W WO2019107289
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-08-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2017228276
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
(72)【発明者】
【氏名】上田 宏
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】馬場 慎
【審判官】寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047498(WO,A1)
【文献】特開2011-105811(JP,A)
【文献】特開2006-261383(JP,A)
【文献】特開2012-224713(JP,A)
【文献】特開2012-230977(JP,A)
【文献】特開2006-269615(JP,A)
【文献】実公昭49-42273(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H01F 17/00
H01F 41/04
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方または両方の面にある導電パターンと、このベースフィルム及び導電パターンを含む積層体の導電パターン側を被覆するカバー層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
第1樹脂層及びこの第1樹脂層の内面側に積層され、第1樹脂層より低温で軟化する第2樹脂層を備えるカバーフィルムを上記積層体の導電パターン側に重畳する重畳工程と、
上記積層体及び上記カバーフィルムを上記第2樹脂層の軟化温度より高温で真空圧着する圧着工程と
を備え、
上記導電パターンのアスペクト比が1.5以上5以下であり、
上記導電パターンの平均厚さが10μm以上80μm以下であり、
上記圧着工程で、上記第2樹脂層が、上記導電パターン間の隙間を充填し、
上記導電パターンの平均厚さに対する上記第2樹脂層の充填部分の平均厚さの割合を、50%以上100%未満とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
上記第1樹脂層の主ポリマーがポリイミド、上記第2樹脂層の主ポリマーがエポキシ樹脂である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
上記導電パターンの平均回路ピッチが5μm以上20μm以下である請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
上記導電パターンが平面コイル素子を形成する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方または両方の面にある導電パターンと、このベースフィルム及び導電パターンを含む積層体の導電パターン側を被覆するカバー層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記カバー層が、
上記積層体を被覆する第1樹脂層と、
上記第1樹脂層の内面側に積層され、上記積層体の導電パターン側に充填される第2樹脂層と
を備え、
上記第1樹脂層の主ポリマーがポリイミド、上記第2樹脂層の主ポリマーがエポキシ樹脂であり、
上記導電パターンのアスペクト比が1.5以上5以下であり、
上記導電パターンの平均厚さが10μm以上80μm以下であり、
上記第2樹脂層が、上記導電パターン間の隙間を充填しており、
上記導電パターンの平均厚さに対する上記第2樹脂層の充填部分の平均厚さの割合が、50%以上100%未満であるフレキシブルプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板の製造方法及びフレキシブルプリント配線板に関する。本出願は、2017年11月28日出願の日本出願第2017-228276号に基づく優先権を主張し、上記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化に伴い、電子機器を構成する平面コイル等の各電子部品がフレキシブルプリント配線板に搭載され、小型化されている(例えば特開2012-89700号公報参照)。
【0003】
上記公報に記載の平面コイルは、基板上に一次銅めっき層を形成し、さらにこの基板を除去した上、この一次銅めっき層の基板と当接していた側の面に二次銅めっき層を形成することで製造される。そのため、この平面コイルは、基板上に形成される一次銅めっき層のみからなる平面コイルよりもめっき層のアスペクト比を高めて一定程度小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-89700号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方または両方の面にある導電パターンと、このベースフィルム及び導電パターンを含む積層体の導電パターン側を被覆するカバー層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、第1樹脂層及びこの第1樹脂層の内面側に積層され、第1樹脂層より低温で軟化する第2樹脂層を備えるカバーフィルムを上記積層体の導電パターン側に重畳する重畳工程と、上記積層体及び上記カバーフィルムを上記第2樹脂層の軟化温度より高温で真空圧着する圧着工程とを備える。
【0006】
本開示の別の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方または両方の面にある導電パターンと、このベースフィルム及び導電パターンを含む積層体の導電パターン側を被覆するカバー層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記カバー層が、上記積層体を被覆する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の内面側に積層され、上記積層体の導電パターン側に充填される第2樹脂層とを備え、上記第1樹脂層の主ポリマーがポリイミド、上記第2樹脂層の主ポリマーがエポキシ樹脂である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造方法により製造されるフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図3図3は、図2のフレキシブルプリント配線板のA-A線断面図である。
図4図4は、図3とは異なるフレキシブルプリント配線板の模式的部分拡大断面図である。
図5図5は、フレキシブルプリント配線板の製造方法の重畳工程を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
上記公報に記載の平面コイルは、インナーコート樹脂層で埋められ、このインナーコート樹脂層上にオーバーコート樹脂層及び外側絶縁層がこの順に積層されて、フレキシブルプリント配線板が製造される。
【0009】
このように上記従来のフレキシブルプリント配線板では、搭載される電子部品の小型化は図られているが、求められているのは、フレキシブルプリント配線板全体の小型化である。この点、上記従来のフレキシブルプリント配線板では、電子部品を覆うカバー層の厚さに改善の余地がある。
【0010】
本開示は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、電子部品を覆うカバー層を薄くできるフレキシブルプリント配線板の製造方法及びフレキシブルプリント配線板を提供することを課題とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示のフレキシブルプリント配線板の製造方法により製造されるフレキシブルプリント配線板、及び本開示のフレキシブルプリント配線板は、電子部品を覆うカバー層を薄くできるので、フレキシブルプリント配線板全体の小型化を図ることができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方または両方の面にある導電パターンと、このベースフィルム及び導電パターンを含む積層体の導電パターン側を被覆するカバー層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、第1樹脂層及びこの第1樹脂層の内面側に積層され、第1樹脂層より低温で軟化する第2樹脂層を備えるカバーフィルムを上記積層体の導電パターン側に重畳する重畳工程と、上記積層体及び上記カバーフィルムを上記第2樹脂層の軟化温度より高温で真空圧着する圧着工程とを備える。
【0013】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法では、第1樹脂層及びこの第1樹脂層の内面側に積層される第2樹脂層を備える2層構造のカバーフィルムを用いる。当該フレキシブルプリント配線板の製造方法では、第2樹脂層の軟化温度が第1樹脂層より低く、かつ圧着工程で第2樹脂層の軟化温度より高温でカバーフィルムを真空圧着する。このため、第2樹脂層が選択的に軟化することで、ベースフィルムに積層された導電パターンが被覆され、第2樹脂層の外面側に積層される第1樹脂層が第2樹脂層を封止することでカバー層が形成される。従って、当該フレキシブルプリント配線板の製造方法を用いることで、第1樹脂層と第2樹脂層とを別々に積層する場合に比べ、カバー層の厚さを薄くしても導電パターンを確実に被覆できるので、フレキシブルプリント配線板全体の小型化を図ることができる。
【0014】
上記第1樹脂層の主ポリマーがポリイミド、上記第2樹脂層の主ポリマーがエポキシ樹脂であるとよい。このように第2樹脂層の主ポリマーをエポキシ樹脂とすることで、その軟化時の流動性により、確実に第2樹脂層により導電パターンを被覆できる。また、第1樹脂層の主ポリマーをポリイミドとすることで、第2樹脂層を選択的に軟化し易くできるので、第1樹脂層により確実に第2樹脂層を封止できる。
【0015】
上記導電パターンの平均回路ピッチとしては、5μm以上20μm以下であるとよい。上記導電パターンの平均回路ピッチを上記範囲内とすることで、導電パターンの密度を高め、電子部品の高密度実装を維持しつつ、第2樹脂層による被覆を確実に行うことができる。
【0016】
上記導電パターンが平面コイル素子を形成するとよい。平面コイル素子は、導電パターンが比較的厚く設計される素子であり、平面コイルを覆うカバー層を薄くすることによるフレキシブルプリント配線板全体の小型化効果が高い。
【0017】
本開示の別の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方または両方の面にある導電パターンと、このベースフィルム及び導電パターンを含む積層体の導電パターン側を被覆するカバー層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記カバー層が、上記積層体を被覆する第1樹脂層と、上記第1樹脂層の内面側に積層され、上記積層体の導電パターン側に充填される第2樹脂層とを備え、上記第1樹脂層の主ポリマーがポリイミド、上記第2樹脂層の主ポリマーがエポキシ樹脂である。
【0018】
当該フレキシブルプリント配線板は、第2樹脂層の主ポリマーをエポキシ樹脂とすることで、その軟化時の流動性により、確実に第2樹脂層により導電パターンを被覆できる。また、当該フレキシブルプリント配線板は、第1樹脂層の主ポリマーをポリイミドとすることで、第2樹脂層を選択的に軟化し易くできるので、第1樹脂層により確実に第2樹脂層を封止できる。従って、当該フレキシブルプリント配線板は、カバー層の厚さを薄くしても導電パターンを確実に被覆できるので、フレキシブルプリント配線板全体の小型化を図ることができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法及びフレキシブルプリント配線板の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0020】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法は、図1に示すようにベースフィルムに導電パターンを積層する積層体形成工程S1と、カバーフィルムを上記積層体の導電パターン側に重畳する重畳工程S2と、上記積層体及び上記カバーフィルムを真空圧着する圧着工程S3とを主に備える。
【0021】
〔フレキシブルプリント配線板〕
まず、当該フレキシブルプリント配線板の製造方法により製造されるフレキシブルプリント配線板について説明する。図3に示すフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の両面に積層される導電パターン2と、このベースフィルム1及び導電パターン2を含む積層体3の導電パターン2を被覆するカバー層4とを備える。また、ベースフィルム1の両面に積層される導電パターン2は、スルーホール5を介して接続されている。
【0022】
<ベースフィルム>
ベースフィルム1は、絶縁性及び可撓性を有する。ベースフィルム1の主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂が挙げられる。中でも、絶縁性、柔軟性、耐熱性等に優れるポリイミドが好ましい。なお、「主成分」とは、最も含有量が多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0023】
ベースフィルム1の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。一方、ベースフィルム1の平均厚さの上限としては、150μmが好ましく、100μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。ベースフィルム1の平均厚さが上記下限未満であると、絶縁性及び機械的強度が不十分となるおそれがある。逆に、ベースフィルム1の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板の小型化の要請に反するおそれがある。なお、「平均厚さ」とは、対象物の厚さ方向に切断した断面における測定長さ内の表面側の界面の平均線と、裏面側の界面の平均線との間の距離を指す。ここで、「平均線」とは、界面に沿って引かれる仮想線であって、界面とこの仮想線とによって区画される山の総面積(仮想線よりも上側の総面積)と谷の総面積(仮想線よりも下側の総面積)とが等しくなるような線を指す。
【0024】
<導電パターン>
導電パターン2は、電子部品、電気配線構造、グラウンド、シールドなどの構造を構成するものである。図2のフレキシブルプリント配線板では、導電パターン2が平面コイル素子を形成している。平面コイル素子は、導電パターン2が比較的厚く設計される素子であり、平面コイルを覆うカバー層4を薄くすることによるフレキシブルプリント配線板全体の小型化効果が高い。
【0025】
導電パターン2を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル等の金属が挙げられ、一般的には比較的安価で導電率が大きい銅が用いられる。また、導電パターン2は、表面にめっき処理が施されてもよい。
【0026】
導電パターン2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。一方、導電パターン2の平均厚さの上限としては、80μmが好ましく、60μmがより好ましい。導電パターン2の平均厚さが上記下限未満であると、導電パターン2の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン2の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板が不必要に厚くなり、当該フレキシブルプリント配線板の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0027】
導電パターン2の平均幅は、電子部品、電気配線構造、グラウンド、シールドなどの各構造に応じて適宜決定される。導電パターン2の平均幅の下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン2の平均幅の上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましい。導電パターン2の平均幅が上記下限未満であると、導電パターン2の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン2の平均幅が上記上限を超えると、導電パターン2の密度が下がるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。
【0028】
導電パターン2の平均回路ピッチの下限としては、5μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、導電パターン2の平均回路ピッチの上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。導電パターン2の平均回路ピッチが上記下限未満であると、後述するカバー層4の第2樹脂層7により導電パターン2を被覆することが困難となるおそれがある。逆に、導電パターン2の平均回路ピッチが上記上限を超えると、導電パターン2の密度が下がるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。なお、「導電パターンの平均回路ピッチ」とは、直線状に導電パターンを最密に積層した場合の隣接する導電パターンの中心軸間の距離を指す。
【0029】
導電パターン2のアスペクト比(導電パターン2の平均幅に対する平均厚さの比)の下限としては、1.5が好ましく、2がより好ましい。一方、導電パターン2のアスペクト比の上限としては、5が好ましく、4がより好ましい。導電パターン2のアスペクト比が上記下限未満であると、導電パターン2の抵抗を下げるためには平均幅を大きくとる必要が生じるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。逆に、導電パターン2のアスペクト比が上記上限を超えると、カバー層4の第2樹脂層7により導電パターン2を被覆することが困難となるおそれがある。
【0030】
<スルーホール>
スルーホール5は、ベースフィルム1の両面に積層される導電パターン2を導通させる。具体的には、スルーホール5は、ベースフィルム1及びこのベースフィルム1の両面に積層される導電パターン2を貫通し、両面に積層される導電パターン2の間を電気的に接続する。スルーホール5は、ベースフィルム1及び導電パターン2を積層した積層体3に貫通孔5aを形成し、この貫通孔5aに例えばメッキ5bを施すことで形成できる。上記メッキ5bとしては、特に限定されるものではなく、電気メッキ及び無電解メッキのいずれであってもよいが、電気メッキがより好ましい。また、上記メッキの種類としては、例えば銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ、これらの合金メッキ等が挙げられる。中でも、導電性を良好なものとできる観点及びコスト低減の観点から、銅メッキ又は銅合金メッキが好ましい。また、スルーホール5は、銀ペースト、銅ペースト等を貫通孔5aに注入して加熱硬化させることによっても形成できる。
【0031】
スルーホール5の平均径は、加工性、導通特性等を考慮して適宜選択されるが、例えば20μm以上2000μm以下とすることができる。当該フレキシブルプリント配線板は、スルーホール5を有することによって、ベースフィルム1の両面に積層される導電パターン2を容易かつ確実に電気的に接続して、高密度化を促進することができる。
【0032】
<カバー層>
カバー層4は、積層体3を被覆する第1樹脂層6と、第1樹脂層6の内面側に積層される第2樹脂層7とを備える。
【0033】
(第1樹脂層)
第1樹脂層6の主ポリマーとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等を挙げることができる。中でも軟化温度の高いポリイミドが好ましい。
【0034】
第1樹脂層6の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましい。一方、第1樹脂層6の平均厚さの上限としては、8μmが好ましく、6μmがより好ましい。第1樹脂層6の平均厚さが上記下限未満であると、第1樹脂層6の強度が不足し、第2樹脂層7を十分に被覆できないおそれがある。逆に、第1樹脂層6の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板が不必要に厚くなり、当該フレキシブルプリント配線板の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0035】
第1樹脂層6の軟化温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。第1樹脂層6の軟化温度が上記下限未満であると、当該フレキシブルプリント配線板の製造時に、後述する圧着工程S3において第2樹脂層7と共に軟化し、第2樹脂層7を十分に被覆できないおそれがある。一方、第1樹脂層6の軟化温度の上限は、特に限定されないが、例えば600℃である。
【0036】
(第2樹脂層)
第2樹脂層7は、第1樹脂層6の内面側に積層され、積層体3の導電パターン2に充填される。
【0037】
第2樹脂層7の主ポリマーとしては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等を挙げることができる。中でも軟化温度が比較的低いエポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
第2樹脂層7は、導電パターン2を被覆する。導電パターン2の頂面と第1樹脂層6との間に挟まれる第2樹脂層7の平均厚さ(図3のDの厚さ)の下限としては、0.2μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。一方、上記第2樹脂層7の平均厚さDの上限としては、1.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記第2樹脂層7の平均厚さDが上記下限未満であると、第1樹脂層6の密着性が不足し、カバー層4により導電パターン2を十分に保護できないおそれがある。逆に、上記第2樹脂層7の平均厚さDが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板が不必要に厚くなり、当該フレキシブルプリント配線板の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0039】
導電パターン2が積層されていない部分では、第2樹脂層7は導電パターン2間の隙間を充填し、ベースフィルム1を被覆する。この第2樹脂層7の充填部分の平均厚さは、図4に示すように導電パターン2の平均厚さより小さくともよいが、図3に示すように導電パターン2を被覆する部分と面一となる厚さが好ましい。このように第2樹脂層7の充填部分の平均厚さを導電パターン2を被覆する部分と面一となる厚さとすることで、第1樹脂層6が平板状に構成される。このため、カバー層4の導電パターン2の保護効果を高められると共に、ベースフィルム1上に導電パターン2により形成される電子部品等にカバー層4による張力や応力が加わることを抑止できる。
【0040】
また、図4のように第2樹脂層7の充填部分の平均厚さが導電パターン2の平均厚さより小さい場合、導電パターン2の平均厚さに対する第2樹脂層7の充填部分の平均厚さの割合の下限としては、50%が好ましく、75%がより好ましく、90%がさらに好ましい。上記第2樹脂層7の充填部分の平均厚さの割合が上記下限未満であると、カバー層4の凹凸により、導電パターン2の保護効果が不十分となるおそれがある。
【0041】
第2樹脂層7の軟化温度の下限としては、50℃が好ましく、70℃がより好ましい。一方、第2樹脂層7の軟化温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。第2樹脂層7の軟化温度が上記下限未満であると、電子部品の作動時の発熱等によりカバー層4が変形するおそれがある。逆に、第2樹脂層7の軟化温度が上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板の製造時に、後述する圧着工程S3において第2樹脂層7が十分に軟化せず、第2樹脂層7による導電パターン2間の隙間の充填が不十分となるおそれがある。
【0042】
第2樹脂層7は、第1樹脂層6より低温で軟化する。第1樹脂層6と第2樹脂層7との軟化温度の差の下限としては、50℃が好ましく、100℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。上記軟化温度差が上記下限未満であると、当該フレキシブルプリント配線板の製造時に、後述する圧着工程S3において第1樹脂層6が第2樹脂層7と共に軟化し、第2樹脂層7を十分に被覆できないおそれがある。一方、上記軟化温度差の上限としては、特に限定されず、例えば400℃である。
【0043】
当該フレキシブルプリント配線板は、カバー層4の厚さを薄くできるので、薄型化が可能である。当該フレキシブルプリント配線板の平均厚さの上限としては、160μmが好ましく、150μmがより好ましい。当該フレキシブルプリント配線板の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板の薄型化の要請に反するおそれがある。一方、当該フレキシブルプリント配線板の平均厚さの下限は、特に限定されず、導電パターン2に要求される抵抗値等により決まるが、例えば50μmである。
【0044】
〔フレキシブルプリント配線板の製造方法〕
以下、当該フレキシブルプリント配線板の製造方法の各工程について詳説する。
【0045】
<積層体形成工程>
積層体形成工程S1では、ベースフィルム1に導電パターン2を積層する。また、必要に応じてスルーホール5を形成する。具体的には以下の手順による。
【0046】
まず、ベースフィルム1の両方の面に導体層を形成する。
【0047】
導体層は、例えば接着剤を用いて箔状の導体を接着することにより、あるいは公知の成膜手法により形成できる。導体としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル等が挙げられる。接着剤としては、ベースフィルム1に導体を接着できるものであれば特に制限はなく、公知の種々のものを使用することができる。成膜手法としては、例えば蒸着、メッキ等が挙げられる。導体層は、ポリイミド接着剤を用いて銅箔をベースフィルム1に接着して形成することが好ましい。
【0048】
次に、この導体層をパターニングして導電パターン2を形成する。
【0049】
導体層のパターニングは、公知の方法、例えばフォトエッチングにより行うことができる。フォトエッチングは、導体層の一方の面に所定のパターンを有するレジスト膜を形成した後に、レジスト膜から露出する導体層をエッチング液で処理し、レジスト膜を除去することにより行われる。
【0050】
また、スルーホール5を形成する場合は、導電パターン2を形成した後に、ベースフィルム1及びこのベースフィルム1の両面に積層される導電パターン2を貫通する貫通孔5aを形成する。続いて、この貫通孔5aの周縁にメッキ5bを施す。
【0051】
なお、スルーホール形成は、上述のように貫通孔5aを形成した後、銀ペースト、銅ペースト等を貫通孔5aに注入して加熱硬化させることによって形成してもよい。
【0052】
<重畳工程>
重畳工程S2では、図5に示すように積層体形成工程S1で形成した積層体3の導電パターン2に、第1樹脂層6及びこの第1樹脂層6の内面側に積層される第2樹脂層7を備えるカバーフィルム8を重畳する。
【0053】
具体的には、カバーフィルム8の第2樹脂層7の外面が積層体3の導電パターン2及びスルーホール5の表面と接するように重ね合わせる。導電パターン2はベースフィルム1の両面に形成されているので、2枚のカバーフィルム8を用い、それぞれの面にカバーフィルム8を重畳させる。
【0054】
カバーフィルム8の第1樹脂層6は、上述のフレキシブルプリント配線板の第1樹脂層6を形成する。このカバーフィルム8の第1樹脂層6は、上述のフレキシブルプリント配線板の第1樹脂層6と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
カバーフィルム8の第2樹脂層7は、後述する圧着工程S3で軟化して、導電パターン2を被覆すると共に、導電パターン2間の隙間を充填することで、上述のフレキシブルプリント配線板の第2樹脂層7を形成する。
【0056】
カバーフィルム8の第2樹脂層7の平均厚さは、導電パターン2の被覆及び導電パターン2間の隙間の充填に必要となる樹脂量により決定される。カバーフィルム8の第2樹脂層7の平均厚さの下限としては、20μmが好ましく、30μmがより好ましい。一方、カバーフィルム8の第2樹脂層7の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。カバーフィルム8の第2樹脂層7の平均厚さが上記下限未満であると、圧着工程S3後に形成されるカバー層4に大きな凹凸が生じ、導電パターン2の保護効果が不十分となるおそれがある。逆に、カバーフィルム8の第2樹脂層7の平均厚さが上記上限を超えると、製造されるフレキシブルプリント配線板が不必要に厚くなり、当該フレキシブルプリント配線板の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0057】
カバーフィルム8の第2樹脂層7は、平均厚さを除き上述のフレキシブルプリント配線板の第2樹脂層7と同様であるので、他の説明を省略する。
【0058】
<圧着工程>
圧着工程S3では、積層体3及びカバーフィルム8を第2樹脂層7の軟化温度より高温で真空圧着する。
【0059】
真空圧着の温度の下限としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましい。一方、真空圧着の温度の上限としては、100℃が好ましく、90℃がより好ましい。真空圧着の温度が上記下限未満であると、第2樹脂層7が十分に軟化せず、第2樹脂層7による導電パターン2間の隙間の充填が不十分となるおそれがある。一方、真空圧着の温度が上記上限を超えると、ベースフィルム1に積層されている電子部品等の特性が劣化するおそれがある。
【0060】
真空圧着の圧力の下限としては、0.1MPaが好ましく、0.2MPaがより好ましい。一方、真空圧着の圧力の上限としては、0.5MPaが好ましく、0.4MPaがより好ましい。真空圧着の圧力が上記下限未満であると、製造コストが高くなり過ぎるおそれがある。逆に、真空圧着の圧力が上記上限を超えると、第2樹脂層7による導電パターン2間の隙間の充填が不十分となるおそれがある。
【0061】
真空圧着時間の下限としては、10秒が好ましく、15秒がより好ましい。一方、真空圧着時間の上限としては、30秒が好ましく、25秒がより好ましい。真空圧着時間が上記下限未満であると、第2樹脂層7による導電パターン2間の隙間の充填が不十分となるおそれがある。逆に、真空圧着時間が上記上限を超えると、製造効率が低下するおそれがある。
【0062】
なお、カバーフィルム8を感光性硬化樹脂で構成し、真空圧着後に紫外線を照射するとよい。このように紫外線を照射して硬化させることで、電子部品の作動時の発熱等によりカバー層4が変形することを抑止できる。
【0063】
〔利点〕
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法では、第1樹脂層6及びこの第1樹脂層6の内面側に積層される第2樹脂層7を備える2層構造のカバーフィルム8を用いる。当該フレキシブルプリント配線板の製造方法では、第2樹脂層7の軟化温度が第1樹脂層6より低く、かつ圧着工程S2で第2樹脂層7の軟化温度より高温でカバーフィルム8を真空圧着する。このため、第2樹脂層7が選択的に軟化することで、ベースフィルム1に積層された導電パターン2が被覆され、第2樹脂層7の外面側に積層される第1樹脂層6が第2樹脂層7を封止することでカバー層4が形成される。従って、当該フレキシブルプリント配線板の製造方法を用いることで、第1樹脂層6と第2樹脂層7とを別々に積層する場合に比べ、カバー層4の厚さを薄くしても導電パターン2を確実に被覆できるので、フレキシブルプリント配線板全体の小型化を図ることができる。
【0064】
また、当該フレキシブルプリント配線板は、第2樹脂層7の主ポリマーをエポキシ樹脂とすることで、その軟化時の流動性により、確実に第2樹脂層7により導電パターン2を被覆できる。また、当該フレキシブルプリント配線板は、第1樹脂層6の主ポリマーをポリイミドとすることで、第2樹脂層7を選択的に軟化し易くできるので、第1樹脂層6により確実に第2樹脂層7を封止できる。従って、当該フレキシブルプリント配線板は、カバー層4の厚さを薄くしても導電パターン2を確実に被覆できるので、フレキシブルプリント配線板全体の小型化を図ることができる。
【0065】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0066】
上記実施形態では、ベースフィルムの両面に導電パターンが積層される場合について説明したが、導電パターンは、ベースフィルムの一方の面側にのみ積層されてもよい。この場合、カバーフィルムは1枚でよく、カバーフィルムを上記積層体の導電パターン側にのみ重畳し、真空圧着すればよい。
【0067】
上記実施形態では、導電パターンが金属である場合について説明したが、導電パターンは他の構成であってもよい。他の構成の導電パターンとしては、例えばサブトラクティブ法又はセミアディティブ法により形成される芯体を備えると共に、この芯体の外面にメッキによって積層される拡幅層を備える構成を挙げることができる。このような構成とすることで、回路間隔を狭くして導電パターンの密度を高めることができるので、フレキシブルプリント配線板をさらに小型化できる。
【符号の説明】
【0068】
1 ベースフィルム
2 導電パターン
3 積層体
4 カバー層
5 スルーホール
5a 貫通孔
5b メッキ
6 第1樹脂層
7 第2樹脂層
8 カバーフィルム
図1
図2
図3
図4
図5