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▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

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  • 特許-固形筆記体セット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】固形筆記体セット
(51)【国際特許分類】
   B43K 19/00 20060101AFI20240625BHJP
   B43K 19/02 20060101ALI20240625BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B43K19/00 E
B43K19/02 Z
B43K29/02 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019151602
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2020040396
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018166451
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年8月24日に大阪市中央区備後町2-6-8サンライズビル3Fにおいて行われた新製品発表会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月5日に三菱鉛筆株式会社プレスリリースで公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋根 信章
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06074115(US,A)
【文献】実開平04-038484(JP,U)
【文献】特開2015-051242(JP,A)
【文献】特開2014-040074(JP,A)
【文献】特開2015-051614(JP,A)
【文献】特開平09-327994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 19/00
B43K 19/02
B43K 19/14
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固形筆記体からなる固形筆記体セットであって、
前記複数の固形筆記体は、各々の外形が略同一であり、同一配向で隣接配置すると一体となるデザインが施され、前記固体筆記体の径方向での半周の範囲内の表面に少なくとも二箇所以上である複数の模様が施され、複数の模様は他の固形筆記体とは異なる位置かつ一つの固形筆記体内では大模様と小模様とで構成される異なる大きさに施され、軸色はマルセル系表色で明度4未満とし、前記複数の模様は金色の装飾であると共に、前記複数の固形筆記体の各々の表面には、自己修復性の転写フィルムが被覆され、前記転写フィルムは、基材シートと軟質樹脂層とを備え、前記基材シートが、ポリカーボネート系樹脂を主成分とし、帯電防止剤を含有する基材層と、前記基材層の表面側に積層され、ポリメチルメタクリレート系樹脂を主成分として含有する表面層と、前記基材層の裏面側に積層され、ポリメチルメタクリレート系樹脂を主成分として含有する裏面層とを有し、前記軟質樹脂層が、ポリウレタン系樹脂を主成分として含有することを特徴とする固形筆記体セット。
【請求項2】
前記複数の固形筆記体は、熱変色性の筆記芯であり、一端に摩擦部材を設けたことを特徴とする請求項に記載の固形筆記体セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛筆等の固形筆記体を複数収容するケースとの固形筆記体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固形筆記体の種類が多様化し、デザインに凝った固形筆記体や著名なキャラクターが付いた固形筆記体が現れ、固形筆記体としての性能を保った状態で、ファッション性やコレクション性を重要視した固形筆記体がある。このようなファッション性やコレクション性に重きを置く固形筆記体は、所有して他人に自慢する喜びや、親友や恋人とペアで所有する喜び、或いは著名なキャラクターのシリーズを全種類集める喜び等をユーザーに与える。このため、ファッション性やコレクション性に重きを置く固形筆記体は、ペアで購入されたり、キャラクター違いや色違い等で複数本購入されたりする場合が多い。
【0003】
特許文献1には、複数の鉛筆からなる鉛筆セットであって、鉛筆セットを形成する複数の硬度が異なる鉛筆の表面に、黒色以外の単色を用いてグラデーションをつけるようにして、芯の硬度の識別を容易とする鉛筆セットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-125760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の固形筆記体セットでは、複数の鉛筆軸を隣接配置した時に、全体が一体となるデザインにはなっておらず、複数本を揃えたいという需要を満たせなかった。
【0006】
本発明は、隣接配置した時にデザインに一体感があり、ユーザーに複数本セットにして購入したいという意欲を生じさせ、且つ、コンパクトな固形筆記体セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一様態によれば、複数の固形筆記体は、各々の外形が略同一であり、同一配向で隣接配置すると一体となるデザインが施されていることを特徴とする固形筆記体セットが提供される。
【0008】
また、複数の固形筆記体には、各固体筆記体の径方向での半周の範囲内の表面に少なくとも二箇所以上である複数の模様が施され、複数の模様は他の固形筆記体とは異なる位置かつ一つの固形筆記体内では異なる大きさに施されていることが好適である。ここでいう径方向とは、筆記体の伸びている長手方向とは垂直の方向を示すものである。
【0009】
また、複数の固形筆記体には、少なくとも一箇所の平面部を有し、前記平面部上の異なる位置に複数の模様を施されていることが好適である。
【0010】
複数の固形筆記体は、異なる濃度又は異なる色の描線を筆記可能とし、表面色は略同色に着色されたことが好適である。
【0011】
前記複数の固形筆記体は、熱変色性であり、一端に摩擦部材を設けることで、筆記と消色の繰り返しが容易であり、手軽に使用することができる。
【0012】
前記複数の固形筆記体の各々の表面には、転写フィルムが被覆され、転写フィルムには、基材シートと軟質樹脂層とを備え、基材シートが、ポリカーボネート系樹脂を主成分として含有する基材層と、前記基材層の表面側に積層され、ポリメチルメタクリレート系樹脂を主成分として含有する表面層と、基材層の裏面側に積層され、ポリメチルメタクリレート系樹脂を主成分として含有する裏面層とを有し、軟質樹脂層がポリウレタン系樹脂を主成分として含有することで、転写フィルムに自己修復性を持たせることができ、長期間の繰り返しの使用でも固形筆記体に施された模様に傷を付けにくくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、隣接配置した時にデザインに一体感があり、ユーザーに筆記具を複数本セットにして購入したいという意欲を生じさせるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による固形筆記体セットの筆記部側の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態を示す内ケースの平面図である。
図3】本発明の第2実施形態による固形筆記体セットの平面図である。
図4】本発明の第2実施形態による固形筆記体セットに収容される1本の固形筆記体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態による固形筆記体セットの筆記部側を示す斜視図であり、図2は、図1の固形筆記体セットを収容する内ケースの平面図である。
【0017】
第1の実施形態における固形筆記体セットは、固形筆記体としての複数の鉛筆10と、鉛筆10を収容する内ケース1と内ケース1を覆う外箱9で構成される。複数の鉛筆10は各鉛筆間では異なる濃度の鉛筆芯である。
【0018】
鉛筆10の各表面には径方向での半周以内の表面に複数の模様が二箇所以上で施され、第1実施形態では、視認可能な範囲で一つの大模様11と二つの小模様12が異なる位置に施されている。大模様11は、小模様12と異なる大きさや形状であり、各模様は、鉛筆10のマルセル系表色で明度4未満の略同じ軸色に対して、視認性を得るために金色の箔押しによる装飾が施されている。ここでの金色とは、波長400nm以上700nm未満の波長領域においてJIS Z 8722(物体色の測定方法)に従って分光反射率(反射スペクトル)を測定したとき、波長550nm以上における反射率は、60%以上であり、一方、波長450nm未満における反射率は、10%以上50%未満である範囲を示す。
【0019】
一つの鉛筆10の大模様11は、文字が表示されているが、同一配向で隣接配置すると一体となるデザインとなっており、第1実施形態では、発明者の性である「しまね・・・」というメッセージが表示されている。また、鉛筆10の筆記側とは他端の図示されていない後端には硬度等の表示を形成することが好ましい。
【0020】
鉛筆10の模様が施された表面には、透明の転写フィルムで被覆することにより耐摩耗性をより向上させることが好ましい。転写フィルムの平均厚さは、自己修復性の発揮と軸径が大きくなりケースへの収納性を確保することから50~200μmが好ましい。なお平均厚さとは、JIS-K-7130に準じて測定される値である。また、転写フィルム表面硬度は、耐擦傷性の観点から鉛筆10の固形筆記芯14以上の硬度であることが好ましい。
【0021】
転写フィルムは、少なくとも鉛筆10の軸芯側の基材シートと把持する表面側の軟質樹脂層から構成され、基材シートの表面にポリウレタン系樹脂で形成された軟質樹脂層を備えることにより、表面側から衝撃や擦過が加わった場合に基材シートに支持された軟質樹脂層に応力が働き、軟質樹脂の流動によって高い自己修復性を発揮する。また、基材シートは基材層と表面層及び裏面層で構成され、基材層がポリカーボネート系樹脂で形成され、表面層及び裏面層がポリメチルメタクリレート系樹脂で形成されることによって基材シートの硬度を保ちつつ膜厚を小さくすることができる。さらに、表面層がポリメチルメタクリレート系樹脂であるため耐溶剤性に優れ、軟質樹脂層を基材シートの表面に確実かつ容易に形成することができる。また、転写フィルムは、上記基材層がポリカーボネート系樹脂であることで高い耐衝撃性を有し、さらに各層に用いられるポリウレタン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂及びポリカーボネート系樹脂がそれぞれ高い透明度と自己修復性を有するため、鉛筆10に施された複数の模様を隠すことなく、かつ長期間の繰り返しの使用でも鉛筆10に施された模様に傷を付けにくくすることができる。
【0022】
転写フィルムの基材シートは、表面に軟質樹脂層が積層される転写フィルムの基材であり、表面層、基材層及び裏面層をこの順に積層して構成される。
【0023】
基材シートの平均厚さは、自己修復性の発揮と軸径が大きくなりケースへの収納性を確保することから50~140μmが好ましい。また、基材シートの表面の鉛筆硬度はB以上が好ましい。また、上記基材シートの引張強さとしては50MPa以上が好ましい。基材シートの表面の鉛筆硬度又は引張強さが上記範囲を満たさないと、基材シートが十分な硬度を有しないため、軟質樹脂層に傷が生じた場合に、内部で応力が発生せず、軟質樹脂の流動性が弱まって十分に傷が修復されないおそれがある。なお、「鉛筆硬度」とは、JIS-K-5600-5-4に準拠して測定される値である。「引張強さ」とは、JIS-K-7161に準拠して測定される値である。
【0024】
表面層は、基材シートの最表面、つまり上記軟質樹脂層の裏面に配設され、ポリメチルメタクリレート系樹脂で形成されている。ポリメチルメタクリレート系樹脂は、メチルメタクリレートを重合することにより製造される。具体的には、脱イオン水、架橋剤、乳化剤、重合開始剤、メチルメタクリレートモノマー、メタクリル酸を反応器に投入して、攪拌しながら昇温させた後、触媒等を投入して重合させることにより製造することができる。上記架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄、硫黄化合物、p-キノン、p-キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、アミノ樹脂、ポリオール、ポリアミン、トリアジン化合物、金属石鹸等を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。上記乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。これらの乳化剤は、単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。上記重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物、前記過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系触媒等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。表面層の平均厚さは、耐溶剤性の確保や自己修復性を得るために5~50μmが好ましい。
【0025】
基材層は、上記表面層の裏面に配設され、ポリカーボネート系樹脂で形成されている。このポリカーボネート系樹脂は、直鎖ポリカーボネート系樹脂と分岐ポリカーボネート系樹脂とからなるポリカーボネート樹脂とすることが好ましい。上記直鎖ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されるものではなく、ホスゲン法又は溶融法によって製造された直鎖の芳香族ポリカーボネート系樹脂を用いることができる。直鎖の芳香族ポリカーボネート系樹脂はカーボネート成分とジフェノール成分とからなる。このカーボネート成分を導入するための前駆物質としては、ホスゲン、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。また、上記ジフェノール成分としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジメシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-チオジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3-ジクロロジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。上記分岐ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されるものではなく、分岐剤を用いて製造したポリカーボネート系樹脂を用いることができる。この分岐剤としては、フロログルシン、トリメリット酸、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2-トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-ジヒドロキシ-2,5-ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。このような分岐ポリカーボネート系樹脂は、芳香族ジフェノール類、上記分岐剤およびホスゲンから誘導されるポリカーボネートオリゴマー、芳香族ジフェノール類および末端停止剤を、これらを含む反応混合液が乱流となるように撹拌しながら反応させ、反応混合液の粘度が上昇した時点で、アルカリ水溶液を加えると共に反応混合液を層流として反応させる方法により製造することができる。ポリカーボネート樹脂中の分岐ポリカーボネート系樹脂の含有量は5~80重量%の範囲であり、10~60重量%の範囲が好ましい。分岐ポリカーボネート系樹脂の含有量が10重量%より小さいと、伸長粘度が低下し押出成形での成形が困難となり、一方、60重量%を超えると、樹脂の剪断粘度が高くなり成形加工性が低下する。なお、直鎖ポリカーボネート系樹脂のみ、又は分岐ポリカーボネート系樹脂のみから基材層を形成することもできる。基材層の平均厚さは、基材シートの硬度の確保と自己修復性の確保から40~100μmが好ましい。
【0026】
さらに、基材層中に帯電防止剤を含有するとよい。このように帯電防止剤が混練されたポリマー樹脂から基材層を形成することで、当該転写フィルムに帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、他の部材との重ね合わせが困難になったりする等の静電気の帯電による不都合を防止することができる。また、帯電防止剤を当該転写フィルム表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このように基材層中に耐電防止剤を混練することでかかる弊害は低減される。この帯電防止剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、カチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。
【0027】
裏面層は、上記基材層の裏面に配設され、ポリメチルメタクリレート系樹脂で形成されている。ポリメチルメタクリレート系樹脂と平均厚さについては、表面層と同様のため省略する。
【0028】
なお、基材シートの各層には、上記の合成樹脂の他に、例えばフィラー、可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤等が配合されてもよい。また、基材シートの裏面には、即ち鉛筆10の表面側には接着剤等を塗布し、鉛筆10と密着する構造となる。
【0029】
前記軟質樹脂層は、ポリウレタン系樹脂から形成されている。この軟質樹脂層に用いるポリウレタン系樹脂としては、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いることができる。上記熱硬化性ポリウレタン樹脂は、ポリオール類とポリイソシアネートからなる主原料のうち、原料の少なくとも一部に官能基数が3以上である化合物を使用することによって得られるポリウレタン樹脂である。一方で、上記熱可塑性ポリウレタン樹脂は、官能基数が2である化合物のみを用いて得られるポリウレタン樹脂である。本発明においては、耐薬品性、耐汚染性、耐久性の観点から軟質樹脂層の材質として熱硬化性ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。ポリウレタン系樹脂の原料に用いるポリオール類としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等を挙げることができる。これらの中でも耐久性、コスト、強度、自己修復性のバランスが優れるポリエステル系のポリオールが好ましく、環状エステル(特にカプロラクトン)を開環して得られるポリエステル系ポリオールが特に好ましい。また、ポリオールの官能基数は、平均として1より大きいことを要するが、強度、伸張性、自己修復性のバランスの観点から、2~3であることが好ましい。また上記ポリオール類はトリオール単体、2種以上のトリオール混合物、又はトリオールとジオールの混合物が好ましい。また上記ポリオール類は、鎖延長剤を含んでいてもよい。この鎖延長剤としては、短鎖ポリオール、短鎖ポリアミン等を挙げることができる。これらの中でも、透明性、柔軟性、反応性の観点から短鎖ポリオールが好ましく、短鎖ジオールが特に好ましい。上記ポリオール類の水酸基価は特に限定されないが、原料ポリオール中の平均水酸基価としては100~600が好ましく、200~500がより好ましい。なお、上記平均水酸基価は鎖延長剤を含めて計算した平均水酸基価である。ポリウレタン系樹脂の原料に用いるポリイソシアネートとしては、耐久黄変性を有する無黄変性ポリイソシアネートが好ましい。無黄変性ポリイソシアネートは、芳香核に直接結合したイソシアネート基を有しないポリイソシアネートであり、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。上記ポリウレタン系樹脂の原料は、単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤、ウレタン化触媒、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加してもよい。軟質樹脂層の平均厚さは、自己修復性の発揮と軸径が大きくなりケースへの収納性を確保することから5~50μmが好ましい。
【0030】
内ケース1は、図2に示すように、内ケース1の外周を外枠2で囲み、縦方向(内箱の挿脱方向)に延びる外枠は縦方向の一端近傍(端部から全長の1/4程度の部分)に外枠分断部4を有している。内箱の中には縦方向に沿って、収納物の数に応じて内箱の底に仕切壁3を突設する。該各仕切壁は、高さが外枠より低く、外枠分断部4と同じ位置で分断されている以外は、縦方向の全長に渉って設けられる。内箱折り曲げ部6は、外枠、仕切壁とも同じ幅であり、従って、この部分は横方向にその分断幅の底板だけからなり、内箱はこの部分(内箱折り曲げ部6)で裏側に折り曲げることが出来、固形筆記体10の収納物を、極めて容易に取り出すことが出来る。この内ケースを外箱9に嵌挿する。外枠2で囲まれているので内箱の型が保たれ、出し入れは容易である。
【0031】
図3は、本発明の第2実施形態による固形筆記体セットの平面図であり、図4は第2実施形態による固形筆記体セットに収容されるうちの1本の固形筆記体の斜視図である。
【0032】
第2実施形態は、第1実施形態と同様に外箱9に内ケース1に複数の鉛筆10が収容されている。複数の鉛筆10の間には、鉛筆10を同一配向で隣接配置を容易にするために仕切壁3が形成されている。また、内ケースに収容する鉛筆10が第1実施形態は丸形の軸形状であったことに対し、第2実施形態は平面部13が形成された断面六角形の軸形状となっている。なお鉛筆10の軸形状は平面部13のある形態では、平面部13の視認可能な表面である径方向の平面長さを軸最大径の50~100%とすることが好ましい。
【0033】
鉛筆10には、平面部13の各々の鉛筆間では異なる位置に大模様11と大模様11より小さい小模様12が施されており、大模様11と小模様12を除く軸表面の色は略同色に着色されている。複数の鉛筆10を同一配向で隣接配置すると一体となるデザインとなっており、第2実施形態では、ハート型のデザインになるように各模様が施されている。なお、複数の鉛筆10には同一配向で隣接配置した際に、一体となるデザインとするために鉛筆10の表面にB,2B,3B・・・と規則性のある硬度表示や並べるための数字を施しておくことが好ましい。
【0034】
図4は、第2実施形態の鉛筆10の斜視図である。鉛筆10は、径方向の半周の範囲内に少なくとも一箇所の平面部13を形成することで、内ケース1に収容した際のデザインの表示面となる。平面部13には、少なくとも同一配向で隣接配置した際に、一体となるデザインを視認するための大模様11と、大模様11を引き立たせたるためのデザインである大模様11より小さい小模様12が形成されている。大模様11と小模様12は第1実施形態と同様に金色の箔押しによる装飾が施され、軸色はマルセル系表色で明度4未満の略同じ軸色である。
【0035】
筆記芯である鉛筆10の軸芯に収容されている固形筆記芯14の太さや長さは、目的に応じて任意に選択することができる。本実施形態による固形筆記芯の太さは1~5mmであり、1.5~4mmであることがより好ましく、長さは一般に60~300mmであり、150~200mmであることがより好ましい。また、固形筆記芯の外周に木材等を覆う鉛筆構造とする場合には、内芯の太さおよび外殻の厚さも任意に選択することができるが、外殻の厚さが厚いと耐衝撃性が優れる傾向にあり、一方で外殻の厚さが薄いと内芯の露出量が多くなるため、使い勝手に優れる傾向にある。内芯の半径長さに対する外殻の厚さが10~100%であることが好ましく、20~50%であることがより好ましい。
【0036】
固形筆記芯14は熱変色性の固形筆記体を用いることができる。一例として、(a)電子供与性呈色性有機化合物、(b)電子受容性化合物、(c)前記(a)、(b)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を賦形性ワックスに分散状態に保持、成形してなる固形筆記芯であって、前記組成物は色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、各相の保持温度域が共に常温域にあり、第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度T3に達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度T3より高い温度T4以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度T3より低い第1の温度T2に達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度T2より低い温度T1以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度T2と第2の温度T3の間の温度域で第1色相或いは第2色相が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度T2は-30~0℃の範囲にあり、温度T4は45~95℃の範囲とし、が挙げられる。更には、前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を賦形性ワックスに分散状態に保持、成形してなること、前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度T2は-30~-5℃の範囲にあり、温度T4が50~95℃の範囲にあること、前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度-温度曲線に関して50℃乃至80℃のヒステリシス幅(ΔH)を示すこと、非変色性染料又は顔料を含んでなること、消しゴムを除く摩擦部材15を設けてなることが好ましい。
【0037】
前記賦形剤ワックスとして具体的には、融点40~120℃のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、酸化パラフィンワックス、酸化ペトロラクタム等の石油系ワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス、エチレンアクリル共重合ワックス、ビニールエーテルワックス等の合成ワックス、セラック、カルナバワックス、カスターワックス、牛脂硬化油等の動植物系ワックス、ベヘン酸ベヘニル、ベベン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアロン、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リグノモリン酸、セロチン酸等のエステル類、高級アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、パーム油、流動パラフィン、ポリブテン、ポリブタジエン、スチレンオリゴマー等の油脂脂肪酸、液状炭化水素類が挙げられる。なお、黒色とする場合は、タルク、マイカ、カオリン、クレー、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー等の体質材を強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。
【0038】
可逆熱変色性組成物は、(a)電子供与性呈色性有機化合物、(b)電子受容性化合物、(c)(a)、(b)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなり、大きなヒステリシス特性(ΔH=8~70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での第一色相を呈する状態(発色状態)、又は、高温域での第二色相を呈する状態(消色状態)を特定温度域で保持できる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物が好適に用いられる。
【0039】
可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による筆跡を摩擦により簡易に変色させるためには、完全消色温度(T4)が45~90℃であり、且つ、発色開始温度(T2)が-30~0℃である。ここで、変色状態が常温域で保持でき、且つ、筆跡の摩擦による変色性を容易とするために何故完全消色温度(T4)が45~95℃、且つ、発色開始温度(T2)が-30~0℃以下であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(T3)を経て完全消色温度(T4)に達しない状態で加温を止めると、再び第一の状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(T2)を経て完全発色温度(T1)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(T4)が常温域を越える45℃以上であれば、発色状態は通常の使用状態において維持されることになり、発色開始温度(T2)が常温域を下回る-30~0℃の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。更に、摩擦により筆跡を消色する場合、完全消色温度(T4)が95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。完全消色温度(T4)が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて摩擦する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。よって、前記温度設定は筆記面に変色状態の筆跡を選択して択一的に視認させる熱消色性筆記具には重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。前述の完全消色温度(T4)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(T4)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。よって、完全消色温度(T4)は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃である。更に、前述の発色開始温度(T2)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、-30~-3℃が好適であり、-30~-5℃がより好適である。なお、筆記体に分散された状態の可逆熱変色性組成物を予め発色状態にするためには冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、-30℃迄が限度であり、従って、完全発色温度(T1)は-30℃以上である。また、ヒステリシス幅(ΔH)は50℃乃至80℃の範囲であり、好ましくは55乃至80℃、更に好ましくは60乃至80℃である。
【0040】
可逆熱変色性組成物を構成する(a)、(b)、(c)成分について具体的に化合物を例示する。本発明の(a)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができ、以下にこれらの化合物を例示する。3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3,6-ジフェニルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(N-メチルアニリノ)-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジエチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル-、スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジ-n-ブチルアミノ)-4-メチル-、スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル-、スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(N-エチル-N-i-アミルアミノ)-4-メチル-、スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジ-n-ブチルアミノ)-4-フェニル、3-(2-メトキシ-4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-ペンチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド等を挙げることができる。更には、蛍光性の黄色~赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0041】
成分(b)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(a)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。具体例としては、フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン等がある。前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0042】
前記(c)成分として好ましくは、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリンなどを用いる整理ことができる。
【0043】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。具体的には、エステル類としては、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシルなどが挙げられる。
【0044】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロンなどが挙げられる。
【0045】
更に、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類としては、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0046】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0047】
前記(a)、(b)、(c)成分の構成成分割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(a)成分1に対して、(b)成分0.1~50、好ましくは0.5~20、(c)成分1~800、好ましくは5~200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。又、各成分は各々二種以上の混合であってもよい。
【0048】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用することもでき、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがなく、耐熱安定性が保持できる。また、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができる。前記マイクロカプセルは、平均粒子径が0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~20μmの範囲が実用性を満たす。前記マイクロカプセルは最大外径の平均値が50μmを越えると分散安定性に欠けることがあり、また、最大外径の平均値が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
【0049】
また、前記マイクロカプセルは、内包物:壁膜=7:1~1:1(質量比)、好ましくは6:1~1:1(質量比)の範囲が有効であり、内包物の比率が前記範囲より小になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、内包物の比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易くなる。前記マイクロカプセル化は、イソシアネート系の界面重合法、メラミン-ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。筆記により形成される筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡を摩擦部材による摩擦による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
【0050】
前記固形筆記芯14には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0051】
本実施形態の固形筆記芯14により形成された筆跡を変色させるために固形筆記芯に設けた摩擦部材15を用いることができる。前記固形筆記芯14に摩擦部材15を設けることにより、携帯性に優れた鉛筆10が得られる。前記摩擦部材15は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるゴム弾性を有する消しゴムを除くエラストマーが好適である。具体的な摩擦部材15の材質としては、スチレン系エラストマーを含み、120℃における圧縮永久歪:80%以下、及びデュロメータA硬度:60~98が好ましい。
【0052】
摩擦部材15は、120℃における圧縮永久歪(本開示で、「120℃圧縮永久歪」ともいう。):80%以下を有する。120℃圧縮永久歪が小さいことは、擦過条件下(すなわち高温条件下)での摩擦部材の良好な変形回復性の指標となり、そしてこの良好な変形回復性は、摩擦部材の特に擦過条件下(すなわち高温条件下)での良好な耐摩耗性の維持に寄与する。
【0053】
120℃圧縮永久歪は、摩擦部材の高温条件下での良好な耐摩耗性の観点から、80%以下であり、70%以下、又は60%以下であってよい。120℃圧縮永久歪は、高温条件下での耐摩耗性の観点では小さい程好ましい。なお本開示において、圧縮永久歪はJIS K6262-2013に準拠して測定される値である。
【0054】
一般に、エラストマーから形成された成形体の圧縮永久歪は温度の上昇に伴って大きくなる傾向がある。本開示の摩擦部材は、上記特定範囲のような小さい120℃圧縮永久歪を有する。このような120℃圧縮永久歪を得るという観点で、摩擦部材における圧縮永久歪の温度依存性を小さくすることが有利である。摩擦部材において、70℃における圧縮永久歪(B)に対する120℃における圧縮永久歪(A)の比率(A)/(B)は、1.0以上1.7以下、1.0以上1.5以下、1.0以上1.4以下、又は1.0以上1.3以下であってよい。
【0055】
摩擦部材15は、デュロメータA硬度:60~98を有する。デュロメータA硬度は、熱変色性を有する像の良好な変色性、及び摩擦部材の良好な耐摩耗性の観点で、60以上である。デュロメータA硬度は、摩擦部材を紙面に押付けることで該紙面に対する接触面積を大きくでき、従って良好な変色性を容易に得ることができるという観点で、98以下である。なお、デュロメータA硬度はJIS K 6253-3-2012に準拠して測定される値である。
【0056】
摩擦部材を構成する材料成分の組成は、前述したような所望の120℃圧縮永久歪及びデュロメータA硬度を与えるように設計される。摩擦部材は、典型的には、エラストマー成分と添加剤成分とを含む。
【0057】
エラストマー成分としては、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー等を例示できるが、所望の120℃圧縮永久歪及びデュロメータA硬度の実現が容易であるという点で、エラストマー成分は、スチレン系エラストマーを含み、好ましくはスチレン系エラストマーからなる。ここで挙げる、「スチレン系エラストマー」とは、主鎖中にスチレン構成単位を含むエラストマーを意味し、典型的には熱可塑性エラストマーである。所望の120℃圧縮永久歪及びデュロメータA硬度の実現が容易であるという観点で、スチレン系エラストマーは、スチレン骨格含有化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体(以下、スチレン系ブロック共重合体という。)、若しくは該ブロック共重合体の水素添加物、又はこれらの混合物であることが好ましい。なお上記の「スチレン骨格含有化合物(又は共役ジエン化合物)に由来する構成単位を主体とする重合体ブロック」とは、重合体ブロック中で最も高い質量割合で存在する構成単位がスチレン骨格含有化合物(又は共役ジエン化合物)由来の構成単位であるような重合体ブロックを意味する。上記スチレン系ブロック共重合体は、通常、スチレン骨格含有化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロックXの1個以上、好ましくは機械的特性の観点から2個以上と、共役ジエン化合物に由来する構成単位を主体とする重合体ブロックYの1個以上とを有するブロック共重合体である。X-Y、X-Y-X、Y-X-Y-X、及びX-Y-X-Y-X、等の構造を有するブロック共重合体を挙げることができる。上記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物は、上記スチレン系ブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合に水素を添加して炭素・炭素単結合にすることにより得られる。上記水素添加は、不活性溶媒中で水素添加触媒を用いて水素処理することにより行うことができる。上記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物の水素添加率(すなわち、水素添加前のスチレン系ブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合の数に対する、水素添加で生じた炭素・炭素単結合の数の割合)は、消字性能、耐紙面汚染性、及び耐摩耗性の向上の観点から、50%以上、70%以上、又は90%以上であってよい。なお上記水素添加率は、特記がない限り1H-NMRで測定される値を意味する。
【0058】
スチレン骨格含有化合物は、重合性の炭素・炭素二重結合と芳香環とを有する重合性モノマーである。上記スチレン骨格含有化合物としては、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、p-第3ブチルスチレン、及び炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレン、等を挙げることができる。これらの中で、スチレン、及び炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレンが好ましい。上記スチレン骨格含有化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。上記炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレンとしては、o-アルキルスチレン、m-アルキルスチレン、p-アルキルスチレン、2,4-ジアルキルスチレン、3,5-ジアルキルスチレン、2,4,6-トリアルキルスチレン等のアルキルスチレン類、及びこれらアルキルスチレン類におけるアルキル基の水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキルスチレン類、等が挙げられる。より具体的には、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジエチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、2,4,6-トリエチルスチレン、o-プロピルスチレン、m-プロピルスチレン、p-プロピルスチレン、2,4-ジプロピルスチレン、3,5-ジプロピルスチレン、2,4,6-トリプロピルスチレン、2-メチル-4-エチルスチレン、3-メチル-5-エチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、2,4-ビス( クロロメチル)スチレン、3,5-ビス(クロロメチル)スチレン、2,4,6-トリ(クロロメチル)スチレン、o-ジクロロメチルスチレン、m-ジクロロメチルスチレン、及びp-ジクロロメチルスチレン、等が挙げられる。これらの中でもp-メチルスチレンが架橋性の観点から特に好ましい。上記炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレンは、架橋されたスチレン系エラストマーの材料として好適に用いられる。
【0059】
上記重合体ブロックXにおける、上記炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレンの割合は、架橋性の観点から1質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、さらに100質量%であってもよい。
【0060】
上記共役ジエン化合物は、2つの炭素・炭素二重結合が1つの炭素・炭素単結合により結合された構造を有する重合性モノマーである。上記共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、及びクロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、等を挙げることができる。これらの中で、1,3-ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。上記共役ジエン化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0061】
上記スチレン系ブロック共重合体又はその水素添加物における、上記スチレン骨格含有化合物に由来する構成単位の含有量は、特に制限されないが、機械強度、耐寒性、耐熱性及び柔軟性の観点から、5~50質量%、又は20~40質量%であってよい。
【0062】
上記重合体ブロックXは、好ましくは、上記スチレン骨格含有化合物のみに由来する重合体ブロック、又は上記スチレン骨格含有化合物と上記共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。上記重合体ブロックXが上記共重合体ブロックである場合、当該共重合体ブロック中の、上記重合体ブロックX中の上記スチレン骨格含有化合物に由来する構成単位の含有量は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、通常50質量%以上であり、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。上記重合体ブロックX中の上記共役ジエン化合物に由来する構成単位の分布は、特に制限されない。スチレン系エラストマー分子中に上記重合体ブロックXが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
【0063】
上記重合体ブロックYは、好ましくは、上記共役ジエン化合物のみからなる重合体ブロック、又は上記スチレン骨格含有化合物と上記共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。上記重合体ブロックYが上記共重合体ブロックである場合、当該共重合体ブロック中の、上記重合体ブロックY中の上記共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有量は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、通常50質量%以上であり、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。上記重合体ブロックY中の上記スチレン骨格含有化合物に由来する構成単位の分布は、特に制限されない。上記共役ジエン化合物と上記スチレン骨格含有化合物との結合様式は、特に制限されない。スチレン系エラストマー分子中に上記重合体ブロックYが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
【0064】
上記スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)などを挙げることができる。上記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物としては、スチレン-エチレン-ブテン共重合体(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)などを挙げることができる。これらの中で、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)及びスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)が好ましく、特に、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)が耐摩耗性の観点から好ましい。上記で列挙したスチレン系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物を、1種で又は2種以上の混合物で用いることができる。
【0065】
スチレン系エラストマーは、架橋されていてもよい。架橋の程度を高くすることは、120℃圧縮永久歪の低減及びデュロメータA硬度の上昇に寄与する。この場合、スチレンをp-メチルスチレンに置き換えたSEBS、SEPS、及びSEEPSが耐熱性及び耐摩耗性の観点から好ましい。なお、スチレン系エラストマーが架橋されているものであるか否かは、120℃の熱キシレンに24時間浸漬した後、ゲル分が残留するか否かを目視で観測、または残重量を測定することで区別できる。架橋には後述の架橋剤(成分(E))を用いることができる。例示の態様において、摩擦部材は、架橋されたスチレン系エラストマー以外の、120℃熱キシレン不溶性のポリマーを含まないことができる。この場合、スチレン系エラストマーが架橋されているか否かは、摩擦部材に対して上記の熱キシレン処理をすることでも評価できる。
【0066】
スチレン系エラストマーの質量平均分子量(Mw)は、好ましくは150,000~500,000である。質量平均分子量は、耐摩耗性が良好である摩擦部材を得る観点で、150,000以上、180,000以上、又は200,000以上であってよい。一方、質量平均分子量は、摩擦部材製造時の加工性が良好であるという観点で、500,000以下、450,000以下、又は400,000以下であってよい。本開示で、分子量は、特記がない限りゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
【0067】
その他成分としては、プロピレン系樹脂(以下、成分(B))、ゴム用軟化剤(以下、成分(C))、潤滑剤(以下、成分(D))、架橋剤(以下、成分(E))、架橋助剤(以下、成分(F))、着色剤(以下、成分(G))、上記プロピレン系樹脂以外のポリマー成分、安定剤、充填剤、等のうち1種以上を使用できる。
【0068】
プロピレン系樹脂(成分(B))の使用は、摩擦部材の耐摩耗性及び耐紙面汚染性の向上において有利である。上記成分(B)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン系ブロック共重合体を例示でき、これらを1種又は2種以上の組合せで使用できる。耐熱性の観点で、プロピレン単独重合体及びプロピレン系ブロック共重合体がより好ましく、プロピレン単独重合体が更に好ましい。プロピレン単独重合体は、プロピレン単位のみで構成される重合体であり、結晶性及び融点が高いため、成分(B)として最も好ましい。
【0069】
プロピレン系ランダム共重合体としては、プロピレンとエチレンとを共重合して得られるプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素数4~20の少なくとも1種のα-オレフィンとを共重合して得られるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレンとエチレンと炭素数4~20の少なくとも1種のα-オレフィンとを共重合して得られるプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体などを例示できる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセン、等が挙げられる。炭素数4~20のα-オレフィンは、好ましくは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンであり、より好ましくは1-ブテン、及び1-ヘキセンである。プロピレン系ランダム共重合体の具体例としては、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体、及びプロピレン-エチレン-1-オクテンランダム共重合体、等が挙げられ、好ましくはプロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、及びプロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体、等である。プロピレン系ブロック共重合体としては、結晶性プロピレン系重合体部位と非結晶性プロピレン・α-オレフィン共重合体部位とから構成されるブロック共重合体が挙げられる。結晶性プロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと少量の他のα-オレフィンとのランダム共重合体、等が例示できる。一方、非結晶性プロピレン・α-オレフィン共重合体としては、プロピレンと他のα-オレフィンとの非結晶性ランダム共重合体が挙げられる。他のα-オレフィンとしては、炭素数2又は4~12のものが好ましく、具体例としては、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロペンタン、及びビニルシクロヘキサン、等が挙げられる。これらのα-オレフィンは1種又は2種以上の組合せで使用できる。プロピレン系ブロック共重合体として、上記他のα-オレフィンに加えて1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、及び5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、等の非共役ジエンを共重合した三元又は四元以上の共重合体も使用することもできる。
【0070】
上記成分(B)のメルトマスフローレートは、成形性の観点から、JIS K 7210-1999に準拠し、230℃、21.18Nの条件で測定したときに、0.01~100g/10分、0.1~50g/10分、又は0.3~10g/10分であってよい。また、上記成分(B)の融点は、耐熱性の観点から、150℃以上、又は160℃以上であってよい。融点の上限は特に制限されないが、ポリプロピレン系樹脂であることから約167℃程度が上限である。なお上記融点は、DSC型示差走査熱量計(株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond)を使用し、230℃で5分間保持→10℃/分で-10℃まで冷却→-10℃で5分間保持→10℃/分で230℃まで昇温、のプログラムで測定したときのセカンド融解曲線(すなわち最後の昇温過程で測定される融解曲線)において、最も高温側に現れるピークのピークトップ融点を意図する。上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対し、30~300質量部、35~250質量部、又は40~180質量部であってよい。この範囲であることにより、柔軟性、耐摩耗性、及び耐紙面汚染性のバランスが良好になる。
【0071】
ゴム用軟化剤(成分(C))としては、当該分野で軟化剤として機能することが当業者に理解される種々の化合物を使用できる。成分(C)の使用は摩擦部材の柔軟性の向上において有利である。上記成分(C)は、典型的には非芳香族系ゴム用軟化剤である。非芳香族系ゴム用軟化剤の例は、非芳香族系の鉱物油(すなわち石油等に由来する炭化水素化合物であって、後述の区分において芳香族系に区分されない(すなわち芳香族炭素数が30%未満である)もの)又は非芳香族系の合成油(すなわち合成炭化水素化合物であって芳香族モノマーを使用していないもの)である。非芳香族系ゴム用軟化剤は、通常、常温では液状又はゲル状若しくはガム状である。成分(C)として用いられる鉱物油は、パラフィン鎖、ナフテン環、及び芳香環の1種以上を有する化合物の混合物であり、炭素数基準で、ナフテン環が30~45%のものはナフテン系鉱物油、芳香環が30%以上のものは芳香族系鉱物油と呼ばれ、ナフテン系鉱物油にも芳香族系鉱物油にも属さず、かつ炭素数基準でパラフィン鎖が50%以上を占めるものはパラフィン系鉱物油と呼ばれて区別されている。上記成分(C)としては、直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、及びこれらの誘導体などのパラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油、水素添加ポリイソブチレン、ポリイソブチレン、及びポリブテンなどの合成油、等を挙げることができる。これらの中で、エラストマー成分との相溶性の観点から、パラフィン系鉱物油が好ましく、芳香族炭素数の少ないパラフィン系鉱物油がより好ましい。また取扱い性の観点から、室温で液状であるものが好ましい。耐熱性及び取扱い性の観点から、上記成分(C)の、JIS K2283-2000に準拠し測定された37.8℃における動的粘度は、20~1000cSt、又は50~500cStであってよい。また取扱い性の観点から、上記成分(C)の、JIS K2269-1987に準拠し測定された流動点は、-10~-25℃であってよい。更に安全性の観点から、上記成分(C)の、JIS K2265-2007に準拠し測定された引火点(COC)は、170~300℃であってよい。上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対し、柔軟性と機械物性とのバランスの観点から、1~400質量部、10~250質量部、又は40~180質量部であってよい。
【0072】
潤滑剤(成分(D))としては、当該分野で潤滑剤として機能することが当業者に理解される種々の化合物を使用できる。成分(D)の使用は金型剥離性及び紙面の摩擦抑制において有利である。上記成分(D)としては、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、界面活性剤、等が挙げられ、紙面の摩擦抑制の観点からシリコーン系化合物が好ましい。上記シリコーン系化合物としては、シリコーンオイル、シリコーンガム等を使用することができる。これらの中でも耐熱性、耐ブリード性、及び紙面の摩擦抑制の観点から高分子量のものが好ましい。但し、一般に、高分子量のシリコーン系化合物は高粘度の液体、又はガム状であるためハンドリング性が悪い傾向があるため、樹脂とのブレンド物又は樹脂との共重合物が使用上好適である。ここで使用される樹脂は、摩擦部材を構成する他の成分、特に成分(A)との相溶性等を考慮して選定されるが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好適である。上記フッ素系化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等を使用することができる。これらの中でも紙面の摩擦抑制の観点からポリフッ化ビニリデンが好ましい。上記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれをも使用することができる。上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対し、紙面の摩擦抑制の観点から、0.1~30質量部、0.5~20質量部、又は1~10質量部であってよい。摩擦部材中の成分(D)の含有量(好ましい態様ではシリコーンオイルの含有量、又は別の好ましい態様ではフッ素系化合物の含有量)は、0.1~3.0質量%であることが好ましい。上記含有量は、紙面の摩擦抑制の観点から、0.1質量%以上であり、良好な消字性能及び耐紙面汚染性を得る観点から、3.0質量%以下である。
【0073】
架橋剤(成分(E))としては、当該分野で架橋剤として機能することが当業者に理解される種々の化合物を使用できる。摩擦部材において、成分(E)は、主として成分(A)を架橋する目的で配合される。成分(E)の使用は120℃圧縮永久歪の低減及びデュロメータA硬度の上昇において有利である。上記成分(E)としては、有機過酸化物、フェノール系化合物、等が挙げられ、耐摩耗性の観点から有機過酸化物が好ましい。上記有機過酸化物は、過酸化水素の水素原子の1個又は2個を遊離有機基で置換した化合物である。有機過酸化物は、その分子内に過酸化結合を有するため、摩擦部材の作製時(材料組成物を溶融混練する際)にラジカルを発生し、そのラジカルが連鎖的に反応して、上記成分(A)を架橋させる働きをする。上記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、及びtert-ブチルクミルパーオキシド、等を挙げることができる。これらの中で、低臭気性、低着色性、及びスコーチ安全性の観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が好ましい。なお、成分(E)として有機過酸化物を使用する場合、後述の架橋助剤(成分(F))も使用することが好ましい。成分(F)も使用することにより均一かつ効率的な架橋反応を行うことができる。上記フェノール系化合物としては、通常液状であるという観点でレゾール樹脂が好ましい。レゾール樹脂は、アルキル置換フェノール又は非置換フェノールの、アルカリ媒体中のアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)での縮合、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造される。アルキル置換されたフェノールのアルキル置換基部分は典型的に炭素数1~10を有する。p-位において炭素数1~10を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール又はフェノール樹脂が好ましい。上記フェノール系化合物の中では、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、及び臭素化アルキルフェノール樹脂、等が好ましい。環境面から臭素化されていないものが望ましいが、末端の水酸基を臭素化したものであってもよい。特に、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0074】
上記成分(E)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、0.01~20質量部、0.1~10質量部、又は0.5~5質量部であってよい。上記の下限値以上であることは、架橋反応が良好に進行する点で好ましく、一方、上記の上限値以下であることは、架橋が進み過ぎず成形性が良好に維持される点で好ましい。
【0075】
架橋助剤(成分(F))としては、当該分野で架橋助剤又は架橋促進剤として機能することが当業者に理解される種々の化合物を使用できる。上記成分(F)としては、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールの繰り返し単位数が9~14のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジメタクリレート、及び1,9-ノナンジオールジメタクリレート、等のような多官能性メタクリレート化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びプロピレングリコールジアクリレート、等のような多官能性アクリレート化合物、ビニルブチラート又はビニルステアレートのような多官能性ビニル化合物、を挙げることができる。上記成分(F)としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0076】
上記成分(F)の中では、多官能性アクリレート化合物及び多官能性メタクリレート化合物が好ましく、トリアリルシアヌレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びテトラエチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。これらの化合物は、取り扱いが容易であると共に、有機過酸化物可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、有機過酸化物と組合せて用いた際に架橋をより均一かつ効果的にすることができる。
【0077】
上記成分(F)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、0.01~50質量部である。上記の下限値以上であることは、架橋反応が良好に進行する点で好ましく、一方、上記の上限値以下であることは、架橋が進み過ぎず、摩擦部材中での架橋物の分散が良好に維持される点で好ましい。
【0078】
着色剤(成分(G))としては、当該分野で着色剤として機能することが当業者に理解される種々の化合物を使用できる。成分(G)としては、無機系顔料、有機系顔料等が好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1 内ケース
2 外枠
3 仕切壁
4 外枠分断部
6 内箱折り曲げ部
7 補強リブ
9 外箱
10 鉛筆(固形筆記体)
11 大模様
12 小模様
13 平面部
14 固形筆記芯
15 摩擦部材

図1
図2
図3
図4