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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B62D55/253 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019225828
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094913
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047173(JP,A)
【文献】実開平05-064556(JP,U)
【文献】特開2013-166475(JP,A)
【文献】特開2006-103531(JP,A)
【文献】国際公開第01/089913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状に形作られているとともに弾性材料からなるクローラ本体と、
クローラ周方向に沿って延在する複数のコードを備えた、周方向コード層と、
クローラ周方向に対して傾斜する複数のコードを備えた、バイアスコード層と、を備えており、
前記周方向コード層は、前記バイアスコード層とともに、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向内周側の前記クローラ本体に埋設されており、
前記周方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも大きく、
クローラ幅方向に沿って延在する複数のコードを備えた、幅方向コード層をさらに備えており、
前記幅方向コード層は、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向外周側の前記クローラ本体に埋設されており、
前記幅方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも小さく、
前記バイアスコード層と前記幅方向コード層との間に、弾性材料領域を備えており、
前記周方向コード層は、複数のコードと、当該複数のコードを一体的に被覆する弾性被覆部とによって構成されている、弾性クローラ。
【請求項2】
無端帯状に形作られているとともに弾性材料からなるクローラ本体と、
クローラ周方向に沿って延在する複数のコードを備えた、周方向コード層と、
クローラ周方向に対して傾斜する複数のコードを備えた、バイアスコード層と、を備えており、
前記周方向コード層は、前記バイアスコード層とともに、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向内周側の前記クローラ本体に埋設されており、
前記周方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも大きく、
クローラ幅方向に沿って延在する複数のコードを備えた、幅方向コード層をさらに備えており、
前記幅方向コード層は、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向外周側の前記クローラ本体に埋設されており、
前記幅方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも大きく、
前記バイアスコード層と前記幅方向コード層との間に、弾性材料領域を備えており、
前記周方向コード層は、複数のコードと、当該複数のコードを一体的に被覆する弾性被覆部とによって構成されている、弾性クローラ。
【請求項3】
前記周方向コード層と前記バイアスコード層との間に、弾性材料領域を備えている、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の弾性クローラには、複数の金属コードからなるメインコード層が、複数の金属コードからなる2つのバイアスコード層とともに、当該2つのバイアスコード層よりもクローラ厚み方向外周側のクローラ本体に埋設されたゴム製のトラックベルトがある(例えば、特許文献1参照。)。こうした弾性クローラによれば、メインコード層が2つのバイアスコード層に保護されることよって、耐久性に優れた弾性クローラを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開01/89913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴムと金属とは異なる材料である。このため、上記従来の弾性クローラにおいて、バイアスコード層が大きな力を受けると、ゴム製のクローラ本体と金属製のバイアスコードとの界面または当該界面の付近に歪が集中することによって、バイアスコードがクローラ本体から剥離してしまう。したがって、上記従来の弾性クローラには、耐久性の向上の点において更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、耐久性に優れた弾性クローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性クローラは、無端帯状に形作られているとともに弾性材料からなるクローラ本体と、クローラ周方向に沿って延在する複数のコードを備えた、周方向コード層と、クローラ周方向に対して傾斜する複数のコードを備えた、バイアスコード層と、を備えており、前記周方向コード層は、前記バイアスコード層とともに、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向内周側の前記クローラ本体に埋設されており、前記周方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも大きい。本発明に係る弾性クローラは、耐久性に優れる。
【0007】
本発明に係る弾性クローラは、クローラ幅方向に沿って延在する複数のコードを備えた、幅方向コード層をさらに備えており、前記幅方向コード層は、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向外周側の前記クローラ本体に埋設されており、前記幅方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも小さいことが好ましい。この場合、より耐久性が向上する。
【0008】
また、本発明に係る弾性クローラは、クローラ幅方向に沿って延在する複数のコードを備えた、幅方向コード層をさらに備えており、前記幅方向コード層は、前記バイアスコード層よりもクローラ厚み方向外周側の前記クローラ本体に埋設されており、前記幅方向コード層のクローラ幅方向幅は、前記バイアスコード層のクローラ幅方向幅よりも大きいものとすることができる。この場合、弾性クローラの張力の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明に係る弾性クローラは、前記バイアスコード層と前記幅方向コード層との間に、弾性材料領域を備えていることが好ましい。この場合、より耐久性が向上する。
【0010】
本発明に係る弾性クローラは、前記周方向コード層と前記バイアスコード層との間に、弾性材料領域を備えていることが好ましい。この場合、より耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐久性に優れた弾性クローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る弾性クローラを適用可能なクローラ走行装置の一例を概略的に示す側面図である。
図2図1の弾性クローラを一部断面で示す斜視図である。
図3A図1のA-A断面図である。
図3B図2の一部を拡大して示す断面図である。
図4】コード層を軸直断面で概略的に示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る弾性クローラについて説明をする。なお、本明細書において、「クローラ幅方向」、「クローラ厚み方向」および「クローラ周方向」は、それぞれ、クローラ本体(ここでは、「弾性クローラ」と同義。)を基準とした方向をいう。図中、クローラ幅方向は、矢印WDで示し、クローラ厚さ方向は、矢印TDで示し、また、クローラ周方向は、矢印CDで示す。また、本明細書中、「クローラ内周側」および「クローラ外周側」も、それぞれ、クローラ本体(ここでは、「弾性クローラ」と同義。)を基準とした「内周側」および「外周側」をいう。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性クローラ1を適用可能なクローラ走行装置の一例を概略的に示す側面図である。
【0015】
図1中、符号100は、弾性クローラ1を適用可能なクローラ走行装置である。クローラ走行装置100は、例えば、農業機械(トラクター、コンバイン等)、建設機械(ミニショベル等)等の車両走行用として使用することができる。この例では、クローラ走行装置100は、トラクター用の走行装置として構成されている。
【0016】
図1の例では、クローラ走行装置100は、駆動輪110と、従動輪120と、転輪130と、を備えている。これらは、車両の機体(図示省略)に取り付けられている。駆動輪110は、かご型スプロケットである。前記かご型スプロケットは、回転軸Oの周りに同一ピッチで配置された複数のピン110Pを有している(図1では、例示的に1つのみに符号を付している。)。この例では、クローラ走行装置100は、1つの駆動輪110と、2つの従動輪120と、3つの転輪130とを備えている。ただし、駆動輪110、従動輪120および転輪130の個数は、それぞれ、クローラ走行装置100の構成に応じて変更することができる。また、この例では、ピン110Pは、クローラ幅方向に延在する円柱状に構成されているが、ピン110Pの構成は適宜変更することができる。
【0017】
弾性クローラ1は、駆動輪110、従動輪120及び転輪130に巻き掛けられている。
【0018】
弾性クローラ1は、無端帯状に形作られているとともに弾性材料からなるクローラ本体2を備えている。また、弾性クローラ1は、クローラ本体2の内周面21に間隔を置いて配置されている複数の突起3を備えている(図1では、例示的に1つのみに符号を付している。)。
【0019】
図1に示すように、複数の突起3は、それぞれ、クローラ本体2の内周面21からクローラ厚み方向内周側へ突出している。また、複数の突起3は、それぞれ、クローラ周方向に互いに一定の間隔を置いて配列されている。本実施形態では、弾性クローラ1の内周面11は、クローラ本体2の内周面21と、突起3の外表面とで、構成されている。
【0020】
さらに、本実施形態に係る弾性クローラ1は、クローラ本体2の外周面22に間隔を置いて配置されている複数のラグ4を備えている(図1では、例示的に1つのみに符号を付している。)。複数のラグ4は、それぞれ、クローラ本体2の外周面22からクローラ厚み方向外周側へ突出している。ラグ4の形状、配置は、各図に示すものに限られず、任意の形状、配置を採用することができる。本実施形態では、弾性クローラ1の外周面12は、クローラ本体2の外周面22と、各ラグ4の外表面とで、構成されている。ラグ4は、弾性材料からなる。この例では、前記弾性材料は、ゴムである。ラグ4は、クローラ本体2と共に一体に成形することができ、また、クローラ本体2に対して加硫接着することができる。
【0021】
図1の矢印Dに示すように、駆動輪110が回転軸O周りに回転すると、各ピン110Pは、それぞれ、当該ピン110Pに対応する弾性クローラ1の突起3に対して順次接触するように構成されている。突起3は、駆動輪110のピン110Pが突起3と接触する際に、ピン110Pからの駆動力をクローラ本体2に伝達する機能を有する。
【0022】
図2は、弾性クローラ1を一部断面で示す斜視図である。
【0023】
本実施形態に係る弾性クローラ1は、芯金レスゴムクローラである。図2に示すように、本実施形態では、複数の突起3(図2では、例示的に1つのみに符号を付している。)は、それぞれ、クローラ幅方向中央に配置されている。
【0024】
図2中、符号5は、クローラ周方向に沿って延在する複数のコード5a(図2では、例示的に1つのみに符号を付している。)を備えた、周方向コード層である。
【0025】
本実施形態では、コード5aは、金属コードである。コード5aは、クローラ平面方向からのクローラ平面視において、クローラ周方向に対して平行に延在している。言い換えれば、コード5aは、クローラ周方向に対して直交するクローラ幅方向に対して90度の角度で延在している。このため、本実施形態において、周方向コード層5のクローラ幅方向端5eは、コード5aの側面5a2によって形成されている。複数のコード5aは、例えば、1つのコード5aをクローラ幅方向に向かって巻き付けることによって形成することができる。或いは、例えば、複数のコード5aは、無端状のコード5aをクローラ幅方向に複数配置することによって形成することもできる。
【0026】
また、図2中、符号6は、クローラ周方向に対して傾斜する複数のコード6aを備えた、バイアスコード層である。
【0027】
本実施形態では、コード6aは、金属コードである。コード6aは、クローラ平面視において、クローラ周方向に対して傾斜している。言い換えれば、コード6aは、クローラ周方向に対して直交するクローラ幅方向に対して所定の角度で延在している。即ち、本実施形態では、バイアスコード層6において、1つのコード6aの2つのコード端6a1は、それぞれ、クローラ幅方向外側に配置されている。このため、本実施形態において、バイアスコード層6のクローラ幅方向端6eは、コード6aのコード端6a1によって形成されている。
【0028】
本実施形態に係る弾性クローラ1は、バイアスコード層6として、バイアスコード層6Aと、バイアスコード層6Bと、を備えている。バイアスコード層6Aと、バイアスコード層6Bとは、それぞれ、クローラ平面視において、互いのコード6a(図2では、バイアスコード層6Aと、バイアスコード層6Bにそれぞれ、例示的に1つのみに符号を付している。)がクローラ周方向を挟んで反対向きに傾斜するように配置されている。
【0029】
本実施形態では、バイアスコード層6Aと、バイアスコード層6Bとは、クローラ厚み方向に積層配置されている。本実施形態では、バイアスコード層6Aは、バイアスコード層6Bよりもクローラ厚み方向内周側に配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、バイアスコード層6Aのクローラ幅方向幅W6aと、バイアスコード層6Bのクローラ幅方向幅W6bと、は、同一の幅である。ただし、本発明によれば、バイアスコード層6Aのクローラ幅方向幅W6aと、バイアスコード層6Bのクローラ幅方向幅W6bと、は、異なる幅とすることができる場合がある。この場合、バイアスコード層6Aのクローラ幅方向幅W6aがバイアスコード層6Bのクローラ幅方向幅W6bよりも大きくなることが好ましい。
【0031】
また、図2中、符号7は、クローラ幅方向に沿って延在する複数のコード7a(図2では、例示的に1つのみに符号を付している。)を備えた、幅方向コード層である。
【0032】
本実施形態では、コード7aは、金属コードである。コード7aは、クローラ平面視において、クローラ幅方向に沿って延在している。言い換えれば、コード7aは、クローラ幅方向に対して平行(角度0°で)に延在している。即ち、本実施形態では、幅方向コード層7において、1つのコード7aの2つのコード端7a1は、それぞれ、クローラ幅方向外側に配置されている。このため、本実施形態において、幅方向コード層7のクローラ幅方向端7eは、コード7aのコード端7a1によって形成されている。
【0033】
周方向コード層5は、バイアスコード層6とともに、バイアスコード層6よりもクローラ厚み方向内周側のクローラ本体2に埋設されている。
【0034】
また、周方向コード層5のクローラ幅方向幅W5は、バイアスコード層6のクローラ幅方向幅W6よりも大きい。
【0035】
本実施形態において、クローラ幅方向幅W5は、周方向コード層5の2つのクローラ幅方向端5eの間のクローラ幅方向幅である。また、本実施形態において、クローラ幅方向幅W6は、バイアスコード層6の2つのクローラ幅方向端6eの間のクローラ幅方向幅である。本実施形態において、バイアスコード層6のクローラ幅方向幅W6aと、バイアスコード層6Bのクローラ幅方向幅W6bとは、共通のクローラ幅方向幅W6(W6=W6A=W6b)である。
【0036】
バイアスコード層6は、そのクローラ幅方向端6eがコード6aのコード端6a1で形成されるように、クローラ本体2に埋設されている。このため、バイアスコード層6のクローラ幅方向端6eは、弾性クローラ1に、曲げ、ねじり等の変形を生じると、当該変形に追従するように、クローラ本体2内において動き易い。したがって、バイアスコード層6では、当該バイアスコード層6(コード6a)とクローラ本体2との界面または当該界面の付近に歪が集中し易い。
【0037】
これに対し、周方向コード層5は、そのクローラ幅方向端5eがコード5aの側面5a2で形成されるように、クローラ本体2に埋設されている。このため、周方向コード層5のクローラ幅方向端5eは、弾性クローラ1に、曲げ、ねじり等の変形を生じても、当該クローラ幅方向端5eがコード5aのコード端で形成されていない分、クローラ幅方向端6eがコード6aのコード端6a1で形成されているバイアスコード層6に比べて、クローラ本体2内において動き難い。したがって、周方向コード層5では、当該周方向コード層5(コード5a)とクローラ本体2との界面または当該界面の付近に歪が集中し難い。
【0038】
本実施形態に係る弾性クローラ1によれば、周方向コード層5がクローラ厚み方向内周側からクローラ厚み方向外周側のバイアスコード層6のクローラ幅方向端6eを覆うことによって、バイアスコード層6のクローラ幅方向端6eの動きが周方向コード層5によって抑えられる。これにより、本実施形態によれば、バイアスコード層6とクローラ本体2との界面およびその付近に生じ得る歪を抑制することができる。
【0039】
したがって、本実施形態に係る弾性クローラ1は、クローラ本体2からのバイアスコード層6の剥離が抑制されることから、耐久性に優れる。
【0040】
さらに、幅方向コード層7は、バイアスコード層6よりもクローラ厚み方向外周側のクローラ本体2に埋設されている。
【0041】
本実施形態では、周方向コード層5、バイアスコード層6Aおよびバイアスコード層6B、ならびに、幅方向コード層7は、それぞれ、クローラ厚み方向内周側からクローラ厚み方向外周側に向かって、順次積層されている。
【0042】
また、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、バイアスコード層6のクローラ幅方向幅W6よりも小さい。
【0043】
本実施形態では、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、バイアスコード層6Aのクローラ幅方向幅W6aよりも小さい。即ち、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、周方向コード層5、バイアスコード層6および幅方向コード層7のうちで、最も小さい。言い換えれば、周方向コード層5のクローラ幅方向幅W5は、周方向コード層5、バイアスコード層6および幅方向コード層7のうちで、最も大きい。
【0044】
幅方向コード層7も、そのクローラ幅方向端7eがコード7aのコード端7a1で形成されるように、クローラ本体2に埋設されている。このため、幅方向コード層7のクローラ幅方向端7eも、弾性クローラ1に、曲げ、ねじり等の変形を生じると、当該変形に追従するように、クローラ本体2内において動き易い。したがって、幅方向コード層7でも、当該幅方向コード層7(コード7a)とクローラ本体2との界面または当該界面の付近に歪が集中し易い。
【0045】
これに対し、周方向コード層5は、そのクローラ幅方向端5eがコード5aの側面5a2で形成されるするように、クローラ本体2に埋設されている。このため、周方向コード層5のクローラ幅方向端5eは、弾性クローラ1に、曲げ、ねじり等の変形を生じても、当該クローラ幅方向端5eがコード5aのコード端で形成されていない分、クローラ幅方向端7eがコード7aのコード端7a1で形成されている幅方向コード層7に比べて、クローラ本体2内において動き難い。したがって、周方向コード層5では、当該周方向コード層5(コード5a)とクローラ本体2との界面または当該界面の付近に歪が集中し難い。
【0046】
本実施形態によれば、周方向コード層5がクローラ厚み方向内周側から幅方向コード層7のクローラ幅方向端7eを覆うことによって、幅方向コード層7のクローラ幅方向端7eの動きが周方向コード層5によって抑えられる。これにより、本実施形態によれば、幅方向コード層7とクローラ本体2との界面およびその付近に生じ得る歪を抑制することができる。
【0047】
したがって、本実施形態に係る弾性クローラ1は、クローラ本体2からの幅方向コード層7の剥離が抑制されることから、耐久性に優れる。
【0048】
ところで、本発明に従えば、図2中、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、バイアスコード層6のクローラ幅方向幅W6よりも大きくすることができる。
【0049】
図2中、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、周方向コード層5のクローラ幅方向幅W5よりも小さい。これに対し、本発明の他の実施形態としては、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7を、バイアスコード層6よりも大きくする。この場合、弾性クローラ1が地面との接触に際し、石等の異物を踏んだ時にも、幅方向コード層7が周方向コード層5を保護することができる。これにより、本実施形態のように、図2中において、幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7をバイアスコード層6のクローラ幅方向幅W6よりも大きくすれば、周方向コード層6に生じる張力が異物を踏んだことによって低下してしまうような事態の発生を抑制する事ができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、周方向コード層5とバイアスコード層6との間に、弾性材料領域R1を備えることが好ましい。この場合、周方向コード層5のコード5aとバイアスコード層6のコード6aとの直接的な接触が回避されることから、より耐久性が向上する。
【0051】
また、本実施形態では、バイアスコード層6と幅方向コード層7との間に、弾性材料領域R2を備えることが好ましい。この場合、バイアスコード層6のコード6aと幅方向コード層7のコード7aとの直接的な接触が回避されることから、より耐久性が向上する。
【0052】
さらに、本実施形態では、バイアスコード層6Aとバイアスコード層6Bとの間に、弾性材料領域R3を備えることが好ましい。この場合、バイアスコード層6Aのコード6aとバイアスコード層6Bのコード6aとの直接的な接触が回避されることから、より耐久性が向上する。
【0053】
ここで、図3Aは、図1のA-A断面図である。図3Aは、クローラ走行装置100を、クローラ幅方向断面で示す断面図である。また、図3Bは、図3Aの一部を拡大して示す断面図である。
【0054】
図3Aを参照すると、本実施形態において、クローラ本体2は、クローラ本体内側層2aとクローラ本体外側層2bとの2層によって形成されている。また、本実施形態では、周方向コード層5は、クローラ本体内側層2aとクローラ本体外側層2bとの間に介在している。また、本実施形態では、バイアスコード層6および幅方向コード層7は、クローラ本体外側層2bに埋設されている。本実施形態では、クローラ本体内側層2aとクローラ本体外側層2bとは、弾性率の異なる弾性材料で構成されている。前記弾性材料は、例えば、ゴムとすることができる。この場合、クローラ本体2は、加硫成形によって製造することができる。
【0055】
さらに、図3Bを参照すると、本実施形態において、周方向コード層5は、複数のコード5aと、当該複数のコード5aを一体的に被覆する弾性被覆部5bとによって構成されている。弾性被覆部5bは、例えば、ゴムとすることができる。具体的には、弾性被覆部5bは、複数のコード5aをシート状に加硫接着したゴムとすることができる。
【0056】
また。本実施形態において、バイアスコード層6は、複数のコード6aと、当該複数のコード6aを一体的に被覆する弾性被覆部6bとによって構成されている。弾性被覆部6bも、例えば、ゴムとすることができる。具体的には、弾性被覆部6bも、複数のコード6aをシート状に加硫接着したゴムとすることができる。本実施形態では、バイアスコード層6Aおよびバイアスコード層6Bは、それぞれ、複数のコード6aと、弾性被覆部6bとによって構成されている。
【0057】
また。本実施形態において、幅方向コード層7は、複数のコード7aと、当該複数のコード7aを一体的に被覆する弾性被覆部7bとによって構成されている。弾性被覆部7bも、例えば、ゴムとすることができる。具体的には、弾性被覆部7bも、複数のコード7aをシート状に加硫接着したゴムとすることができる。
【0058】
本実施形態によれば、弾性材料領域R1は、周方向コード層5の弾性被覆部5bと、バイアスコード層6Aの弾性被覆部6bとによって構成されている。この場合、周方向コード層5のコード5aとバイアスコード層6のコード6aとの直接的な接触が回避されることから、より耐久性が向上する。
【0059】
また、本実施形態によれば、弾性材料領域R2は、バイアスコード層6Bの弾性被覆部6bと、幅方向コード層7の弾性被覆部7bとによって構成されている。この場合、バイアスコード層6のコード6aと幅方向コード層7のコード7aとの直接的な接触が回避されることから、より耐久性が向上する。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、弾性材料領域R3は、バイアスコード層6Aの弾性被覆部6bと、バイアスコード層6Bの弾性被覆部6bとによって構成されている。この場合、バイアスコード層6Aのコード6aとバイアスコード層6Bのコード6aとの直接的な接触が回避されることから、より耐久性が向上する。
【0061】
なお、図3Aおよび図3Bにおいて、クローラ本体内側層2aとクローラ本体外側層2bとは、その界面を示すことによって明確に区別されている。ただし、本実施形態のように、前記弾性材料がゴムである場合、実際には、クローラ本体内側層2aとクローラ本体外側層2bとは、加硫によって一体化されているため、前記界面は明確に現れない場合がある。また、弾性被覆部5b、6bおよび7bも、それぞれ、その界面を示すことによって明確に区別されている。ただし、本実施形態によれば、弾性被覆部5b、6bおよび7bを形成する弾性材料がゴムである場合、これらも、実際には、加硫によって一体化しているため、前記界面は明確に現れない場合がある。
【0062】
また、本実施形態において、周方向コード層5のコード5aは、弾性被覆部5bによって一体に結合している。この場合、周方向コード層5の取り扱いが容易になる。また、複数のコード5aが弾性被覆部5bによって一体に結合している場合、周方向コード層5のクローラ幅方向端5eは、弾性被覆部5bのクローラ幅方向とすることができる。即ち、この場合、周方向コード層5のクローラ幅方向幅W5は、弾性被覆部5bのクローラ幅方向幅とすることができる。したがって、複数のコード5aが弾性被覆部5bによって一体に結合している場合、クローラ本体2(弾性クローラ1)の製造が容易になる。また、これらのことは、バイアスコード層6および幅方向コード層7についても同様である。
【0063】
ところで、図3Aに示すように、本例のクローラ走行装置100では、転輪130は、クローラ幅方向に間隔を置いて配置された2つの転輪本体131と、転輪本体131を連結する連結シャフト132と、を備えている。更に、この例では、転輪本体131の外周面は、ゴム部133によって被覆されている。本例のクローラ走行装置100では、転輪130は、それぞれ、転輪通過面11a上を転動するように構成されている。即ち、本実施形態に係る弾性クローラ1は、走行時において、転輪130上を通過するように構成されている。
【0064】
本実施形態において、弾性クローラ1は、ラグ4を接地面(踏面)としている。この場合、図3Bに示すように、周方向コード層5、バイアスコード層6および幅方向コード層7は、それぞれ、クローラ幅方向断面視(クローラ平面視)において、ラグ4と重複する位置に配置されるように、クローラ本体2に埋設されることが好ましい。また、本実施形態によれば、少なくとも、幅方向コード層7は、当該幅方向コード層7のクローラ幅方向端7eが転輪通過面11aのクローラ幅方向端11aeよりもクローラ幅方向外側の位置になるように、クローラ本体2に埋設することが好ましい。ただし、弾性クローラ1は、ラグ4を省略することができる。この場合、クローラ本体2の外周面21を接地面(踏面)とすることができる。
【0065】
また、図3Aを参照すると、符号T2は、クローラ本体2のクローラ厚み方向厚み(以下、「クローラ本体2の厚み」ともいう。)である。また、周方向コード層5、バイアスコード層6および幅方向コード層7をコード層LCと総称すると、符号TLは、クローラ本体2に埋設されたコード層LCのうち、クローラ本体2の外周面22に最も近いコード層LCのクローラ厚み方向外周面からクローラ本体2の外周面22までのクローラ厚み方向厚さ(以下、「クローラ本体2の表層厚み」ともいう。)である。本実施形態では、クローラ本体2の表層厚みTLは、幅方向コード層7のクローラ厚み方向外周面72からクローラ本体2の外周面22までの厚さである。本実施形態によれば、クローラ本体2の表層厚みTLは、クローラ本体2の厚みT2に対して、1/7~1/2倍の厚みであることが好ましい。具体例としては、クローラ本体2の厚みT2が41mmに対して、クローラ本体2の表層厚みTLは、3mm~20mmである。
【0066】
また、図3Aにおいて、符号W2は、クローラ本体2のクローラ幅方向幅(以下、「クローラ本体2の幅」ともいう。)である。クローラ本体2の幅W2は、クローラ本体2の2つのクローラ幅方向端2e(以下、「クローラ本体2の幅方向端2e」ともいう。)の間のクローラ幅方向幅である。
【0067】
また、符号WIは、コード層LCを基準においたクローラ耳幅(クローラ幅方向縁部幅)である。クローラ耳幅WIは、クローラ本体2の幅方向端2eを基点として、当該クローラ本体2の幅方向端2eからコード層LCのクローラ幅方向端までのクローラ幅方向幅である。本実施形態において、符号WI5は、コード層LCが周方向コード層5であるときの、当該周方向コード層5を基準においたクローラ耳幅(以下、「周方向コード層基準クローラ耳幅」ともいう。)である。また、符号WI6は、コード層LCがバイアスコード層6であるときの、当該バイアスコード層6を基準においたクローラ耳幅(以下、「バイアスコード層基準クローラ耳幅」ともいう。)である。さらに、符号WI7は、コード層LCが幅方向コード層7であるときの、当該幅方向コード層7を基準においたクローラ耳幅(以下、「幅方向コード層基準クローラ耳幅」ともいう。)である。
【0068】
本実施形態において、周方向コード層基準クローラ耳幅WI5は、0~50mmの範囲とすることが好ましい。また、本実施形態において、バイアスコード層基準クローラ耳幅WI6は、45mm~80mmの範囲とすることが好ましい。さらに、本実施形態において、幅方向コード層基準クローラ耳幅WI7は、65mm~90mmの範囲とすることが好ましい。また幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7がバイアスコード層6のクローラ幅方向幅W6より大きい場合もある。この時の幅方向コード層基準クローラ耳幅WI7は20~60mmの範囲とする事が好ましい。
【0069】
次いで、図4は、コード層LCを軸直断面で概略的に示した拡大図である。ここで、軸直断面とは、コード層LCに含まれるコードCの中心軸OCに対して直交する断面をいう。即ち、「コードC」という用語は、コード5a、コード6aおよびコード7aの総称として用いられる。
【0070】
図4中、符号DCは、コードCの直径である。本実施形態において、符号DC5は、コード5aの直径である。また、本実施形態において、符号DC6は、コード6aの直径である。さらに、本実施形態において、符号DC7は、コード7aの直径である。
【0071】
本実施形態において、コード5aの直径DC5は、3mm~7mmの範囲とすることができる。また、コード6aの直径DC6は、0.8mm~3.2mmの範囲とすることができる。さらに、コード7aの直径DC7も、0.8mm~3.2mmの範囲とすることができる。
【0072】
また、図4中、符号PCは、コードCの打ち込みピッチ(埋め込みピッチ)である。打ち込みピッチPCは、2つのコードCの中心軸OCの間のピッチである。本実施形態において、符号PC5は、コード5aの打ち込みピッチである。また、本実施形態において、符号PC6は、コード6aの打ち込みピッチである。さらに、本実施形態において、符号PC7は、コード7aの打ち込みピッチである。
【0073】
本実施形態において、コード5aの打ち込みピッチPC5は、コード5aの直径DC5の1.0倍~2.0倍の範囲とすることができる。また、本実施形態において、コード6aの打ち込みピッチPC6は、コード6aの直径DC6の1.0倍~3.0倍の範囲とすることができる。さらに、本実施形態において、コード7の打ち込みピッチPC7は、コード7aの直径DC7の1.0倍~3.0倍の範囲とすることができる。
【0074】
また、符号TC1およびTC2は、弾性被覆部Eの厚み方向端面EtからコードCまでの、弾性被覆部Eの厚み方向厚さ(以下、「弾性被覆部Eの表層厚み」ともいう。)である。ここで、「弾性被覆部E」という用語は、コード5aの弾性被覆部5b、コード6aの弾性被覆部6bおよびコード7aの弾性被覆部7bの総称として用いられる。本実施形態において、弾性被覆部Eの表層厚みTC1およびTC2は、それぞれ、3mm以上であることが好ましい。
【0075】
なお、本実施形態において、弾性被覆部Eは、例えば、天然ゴムがポリマーの半分を占めるゴム等の組成物とすることができる。また、弾性被覆部Eは、2MPaの引っ張り力によって、自然長の2倍の長さとなるものとすることができる。
【0076】
また、本実施形態において、コード5aの弾性被覆部5b、コード6aの弾性被覆部6bおよびコード7aの弾性被覆部7bは、同種のゴムとすることができるが、これに限定されるものではない。即ち、コード5aの弾性被覆部5b、コード6aの弾性被覆部6bおよびコード7aの弾性被覆部7bは、同種の弾性材料(組成物)でなくともよい。例えば、コード5aの弾性被覆部5b、コード6aの弾性被覆部6bおよびコード7aの弾性被覆部7bは、それぞれ、異なる弾性材料とすることができる。また、コード5aの弾性被覆部5b、コード6aの弾性被覆部6bおよびコード7aの弾性被覆部7bのうちの少なくとも2つを同種の弾性材料とすることができる。
【0077】
さらに、本実施形態において、幅方向コード層7は、1層に限定されるものではない。例えば、弾性クローラ1は、さらに1つの幅方向コード層7を備えることができる。具体的には、新たな幅方向コード層7は、バイアスコード層6よりもクローラ周方向外周側に、他方の幅方向コード層7とともに埋設することができる。ただし、この場合も、新たな幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、周方向コード層5のクローラ幅方向幅W5よりも小さい。或いは、新たな幅方向コード層7は、周方向コード層5よりもクローラ周方向内周側に埋設することができる。ただし、この場合、新たな幅方向コード層7のクローラ幅方向幅W7は、周方向コード層5のクローラ幅方向幅W5よりも小さくすることが好ましい。
【0078】
上述したところは、本発明のいくつかの実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。上述した各実施形態に採用された様々な構成は、相互に適宜、置き換えることができる。
【符号の説明】
【0079】
1:弾性クローラ, 2:クローラ本体, 12:クローラ本体の内周面, 3:突起, 4;ラグ, 5:周方向コード層, 5a:コード, 5a2:コード側面, 5b:弾性被覆部, 6:バイアスコード層, 6A:バイアスコード層(内周側), 6B:バイアスコード層(外周側), 6a:コード, 6a1:コード端, 6b:弾性被覆部, 7:幅方向コード層, 7a:コード, 7a1:コード端, 7b:弾性被覆部, 100:クローラ走行装置, 110:駆動輪(回転体), 110P:ピン, 120:従動輪(回転体), 130:転輪(回転体), C:コード, E:弾性被覆部, LC:コード層, R1:弾性材料領域, R2:弾性材料領域, R3:弾性材料領域, W5:周方向コード層のクローラ幅方向幅, W6:バイアス方向コード層のクローラ幅方向幅, W7:幅方向コード層のクローラ幅方向幅, W5:周方向コード層のクローラ幅方向幅,
図1
図2
図3A
図3B
図4