(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】類似の仮想材料外観を検索する方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/907 20190101AFI20240625BHJP
【FI】
G06F16/907
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229166
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン スドラ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ダマーツ
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197129(JP,A)
【文献】特開2013-179905(JP,A)
【文献】特開2006-285570(JP,A)
【文献】特開2015-194909(JP,A)
【文献】特表2017-528790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各仮想材料外観が、当該仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値から計算された外観
特徴に関連付けられる仮想材料外観を含むデータベースを提供するステップ
であって、当該値が少なくとも当該構造を示し、当該反射及び当該色が当該仮想材料外観の表現から計算され、当該仮想材料外観の当該表現は、レンダリングの少なくとも一部の結果である、提供するステップと、
第1の仮想材料外観に関連する第1の外観
特徴を提供するステップと、
前記第1の外観
特徴を、
前記データベース内の仮想材料外観にそれぞれ関連する外観
特徴と比較することによって、
当該第1の仮想材料外観に類似する1つ又は複数の仮想材料外観を
当該データベース内で識別するステップと
を含む、類似の仮想材料外観をデータベースから検索するためのコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記第1の外観
特徴に重み付けするステップをさらに含む
請求項
1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記第1の外観
特徴に重み付けするステップは、
第1の外観特徴及び比較された外観特徴の各々に関連する仮想材料外観の
、少なくとも前記構造、
前記反射、及び
前記色を表す値を重み付けするステップを含む
請求項
2に記載のコンピュータ実施方法
【請求項4】
前記
各仮想材料外観の色の値を計算するステップは、次式によって与えられる値ΔEabを決定することを含み、
【数1】
ここで、
・ΔEabはCIELAB色空間における2つの色のユークリッド距離であり、
・添字1及び2は
前記各仮想材料外観の2つの色に対するインデックスに対応し、
・Lは明度に相当し、
・a及びbはそれぞれ緑赤、青黄色成分に対応する
請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載のコンピュータ
実施方法。
【請求項5】
前記各仮想材料外観の表現から双方向反射分布関数(BRDF)を計算することによって、前記反射の値を計算するステップをさらに含む
請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記BRDFを計算するステップは、空間的に一様な中性光を有する照明を用いてパラメータ化された空間において、
前記各仮想材料外観の表現上の前記BRDFの複数の角度評価を計算するステップをさらに含む
請求項
5に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記照明は、周波数成分をさらに含む
請求項
6に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
空間的に一様な中性光を有する照明を用いて、関連する仮想材料外観の表現の仮想測定平面をサンプリングするステップ、及び
各試料による照明の反射光の半球積分を評価するステップ
により前記
構造を表す値を計算するステップをさらに有する
請求項
1乃至
7のいずれか一項に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項9】
外観
特徴を計算するステップは、外観
特徴の寸法を縮小するステップをさらに含む
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記外観
特徴の寸法を縮小するステップは、
前記データベース
における、各仮想材料外観の
少なくとも構造、反射、及び
色をそれぞれ表す値に対して主成分分析(PCA)を実行するステップと、
前記PCAから得られる
複数の基底ベクトルを得るステップと、
前記基底ベクトルの数を用いて計算値の数を減らすステップと、
をさらに含む、請求項
9に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
前記第1の外観
特徴は、前記第1の仮想材料外観の
少なくとも前記構造、前記反射、及び前記
色を表す低減された数の値から計算される
請求項
10に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の仮想材料外観を含むデータベース。
【請求項13】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項
13に記載のコンピュータプログラムが記録された、データベースと、メモリに結合されたプロセッサとを備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータプログラム及びシステムの分野に関し、より具体的には、データベースから類似の仮想材料外観を検索するための方法、システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の設計、エンジニアリング及び製造のために、多数のシステム及びプログラムが市場に提供されている。CADはコンピュータ支援設計の頭字語であり、例えば、被写体を設計するためのソフトウェアソリューションに関する。CAEはコンピュータ支援エンジニアリングの頭字語であり、例えば、将来の製品の物理的挙動をシミュレートするためのソフトウェアソリューションに関連する。CAMはコンピュータ支援製造の頭字語であり、例えば、製造プロセス及び動作を定義するためのソフトウェアソリューションに関する。そのようなコンピュータ支援設計システムでは、グラフィカルユーザインタフェースが技法の効率に関して重要な役割を果たす。これらの技術は、製品ライフサイクル管理(PLM)システム内に組み込まれてもよい。PLMとは、企業が製品データを共有し、共通のプロセスを適用し、企業知識を活用して、長期的な企業のコンセプトを越えて、コンセプトから生涯にわたる製品の開発に役立てることを支援するビジネス戦略のことをいう。(CATIA、ENOVIA及びDELMIAの商標で)ダッソーシステムズによって提供されるPLMソリューションは、製品工学知識を編成するエンジニアリングハブと、製造工学知識を管理する製造ハブと、エンタープライズ統合及びエンジニアリングハブ及び製造ハブの両方への接続を可能にする企業ハブとを提供する。全体として、システムは最適化された製品定義、製造準備、生産、及びサービスを駆動する動的な知識ベースの製品作成及び意思決定サポートを可能にするために、製品、プロセス、リソースをリンクするオープン・オブジェクト・モデルを提供する。
【0003】
コンピュータビジョンでは、それらの外観に基づく材料の分類が画像からの物体認識の文脈において重要な規律である。デジタル画像合成の技術は、仮想物体を仮想材料と組み合わせて使用して、現実の物体のための正確な仮想表現を生成する。例えば、仮想物体は機械システムの一部のような現実世界の物体を表し、仮想物体の仮想材料は、現実世界の物体が作られる金属を表すことができる。仮想材料は、何らかの方法でオブジェクトの特性を表すデータセットである。これらの特性は材料の異なる物性、例えば、機械的挙動、化学組成及び/又は視覚的外観に関連する。仮想材料の外観部分は、光と物体の表面との相互作用をパラメータ化するデータサブセットである。これは、光がどのように表面から反射し、屈折し、又は表面の内側/下で散乱するかを含む。
【0004】
被写体を作成するとき、被写体を設計しているユーザは既存のデータベースから、被写体をレンダリングするときに使用される1つ又は複数の仮想材料外観を取り出すことができる。ユーザはまた、類似の外観を有する異なる仮想材料外観、換言すれば、視覚的特徴を共有する仮想材料を試験することを望む場合がある。これにより、ユーザは例えば、レンダリング中に最小量の計算資源を消費する、最も適切な仮想材料外観又は仮想材料外観を選択することができる。
【0005】
典型的には、異なる仮想材料の外観がユーザによって視覚的に評価される。レンダリングされたオブジェクトの外観は、観察される環境に応じて異なって知覚される。例えば、光沢のあるクロムの仮想材料外観でレンダリングされる被写体は、その環境を反映する。このような仮想素材の外観を用いた物体の外観は、その周囲に応じて異なって知覚される。拡散白色環境の極端な場合、同じレンダリングされた被写体は全く光沢がないように見え、拡散白色に見えるだけである。外部条件への依存性は、それらの間の異なる仮想材料の外観を比較することを困難にする。
【0006】
材料の仮想特性及び特徴の表現は、物理的材料ほどきれいに分離することができない。物理的材料は外観を特徴付ける特徴の角度を解くのに役立つ視覚以外のタッチ及び他の人間の感覚を通じて感知することができるが、これは仮想材料には不可能である。Adelson et al、"On seeing stuff: perception of materials by humans and machines"、2001に記載されているように、これらの要因をただ1つの2D画像から解くことは複雑である。これは、仮想材料の外観間の比較を複雑にする。
【0007】
異なる仮想材料外観を検索することを困難にする仮想材料のための標準化された外観データモデルは存在しない。異なるデータモデルは外観の異なる態様を記述し、しばしば直接比較することができない。これは、異なる仮想材料の外観を比較するとき、同様の仮想材料の外観を識別することは言うまでもなく、困難性をさらに増大させる。
【0008】
類似性の概念は、科学において偏在するである。数学において、幾何学的類似性は、幾何学的形状間の類似性関係を記述するために使用される。言語学や情報科学などのオントロジーの意味解析には、グラフ理論的類似性技術が用いられている。タンパク質の対の類似性を計算する能力は、分子生物学におけるDNA分析のための必須のツールである。これら全ての類似性尺度は共通の特徴を共有し、入力データは明確に定義される。入力データの構造及び意味を知ることによって、いわゆる類似空間、すなわち、対象の特徴に関して対象を表現するために使用され得る空間を数学的に定義し、次いで、それらの射影座標の単純な幾何学的距離として類似性を抽出することが可能である。
【0009】
類似性の概念は、人工知能において重要な役割を果たす。機械学習技術は、あらゆる分野に浸透し始めている。クラウド・ベースのユーザ・プラットフォームやビッグ・データ・インテリジェント・アルゴリズムの時代には、すべての情報を理解するために不可欠である。オブジェクト間の類似関係を確立することは、これらの技法が複雑で非自明なデータ関係を理解するのに役立つ。
【0010】
現在、ユーザが、別の仮想材料外観に類似する仮想材料外観をデータベース内で検索することを可能にする方法は存在しない。この文脈内で、仮想材料外観を比較し、仮想材料外観に類似するデータベースから仮想材料外観を検索する改善された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
したがって、データベースから仮想材料外観を検索するための、以下のステップを含むコンピュータ実施方法が提供される:
・各仮想材料外観が、関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値から計算された外観署名に関連付けられる仮想材料外観を含むデータベースを提供ステップする。
・第1の仮想材料外観に関連する第1の外観署名を提供するステップ。
・第1の外観署名を、データベース内の仮想材料外観にそれぞれ関連する外観署名と比較することによって、第1の仮想材料外観に類似する1つ又は複数の仮想材料外観をデータベース内で識別するステップ。
【0012】
この方法は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる:
・値は関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表し、前記関連する仮想材料外観の表現から計算される。
・最初の外観署名の重み付け。
・第1の外観署名の重み付けは、第1の外観署名に関連付けられた仮想材料外観の構造、反射、及び色、ならびに比較された外観署名のそれぞれのうちの少なくとも1つを表す値に重み付けすることを含む。
【0013】
・色の値を計算することは、次のように与えられる値ΔEab,
【数1】
を決定することを含む:
ここで:
・1と2は、2つの色に対するインデックスに対応する;
・Lは明度に対応し、a及びbはそれぞれ緑赤、青黄色成分に対応する;
【0014】
・関連する仮想材料外観の表現から双方向反射分布関数(BRDF)を計算することによる反射の値の計算;
・BRDFを計算するステップは、空間的に一様な中性光を有する照明を用いてパラメータ化された空間において、関連する仮想材料外観の表現に関するBRDFの複数の角度評価を計算するステップをさらに含む;
・前記照明は、周波数成分をさらに含む;
【0015】
・以下による構造の価値の計算:
・空間的に一様な中性光を有する照明を用いて、関連する仮想材料外観の表現の仮想測定平面をサンプリングし、
・各サンプルによる照明の反射光の半球積分を評価する;
【0016】
・外観署名を計算するステップは、外観署名の寸法を縮小するステップをさらに含む;
【0017】
・外観署名の寸法を縮小するステップはさらに以下を含む:
・データベースの関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つをそれぞれ表す値に対して主成分分析(PCA)を実行するステップ;
・PCAから得られる多数の基底ベクトルを得るステップ
・基底ベクトルの数を使用して計算値の数を減らす
【0018】
・第1の外観署名は、第1の仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す低減された数の値から計算される。
【0019】
本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムがさらに提供される。
【0020】
さらに、コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0021】
本方法を実行することができる仮想材料外観を含むデータベースがさらに提供される。
【0022】
さらに、メモリに結合されたプロセッサとグラフィカルユーザインタフェースとを含むシステムが提供され、メモリは、その上に記録されたコンピュータプログラムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】システムのグラフィカルユーザインタフェースの一例を示す。
【
図4】従来技術で知られているような2つの仮想材料外観に対するBRDF測定及び2つのスライス表現の原理の一例を示す。
【
図5】従来技術で知られているような2つの仮想材料外観に対するBRDF測定及び2つのスライス表現の原理の一例を示す。
【
図6】反射測定中の照明のためのブラックラッカークリアコートにおけるストライプパターンのスクリーンショットの例を示す。
【
図7】黄色がかった革の仮想材料の外観からのaの構造値の表現のスクリーンショットの例を示す。
【
図8】BRDFデータ縮小後の2Dスライスとして視覚化された最初の5つのPCA基底ベクトルのスクリーンショットの例を示す。
【
図9】基底ベクトルの計算の一例を示すフローチャート。
【
図10】一組の仮想材料外観に対するBRDF値の対応する対の間の距離をプロットするグラフのスクリーンショットを示す。
【
図11】一組の仮想材料外観及び関連する累積距離分布に対するBRDF値の対応する対の間の距離をプロットするグラフのスクリーンショットを示す。
【
図12】一組の仮想材料外観、関連する累積距離分布、及び累積距離分布への適合についてのBRDF値の対応する対の間の距離をプロットするグラフのスクリーンショットを示す。
【
図15】BRDF値の計算例を示すフローチャート。
【
図16】構造値の計算の一例を示すフローチャート。
【
図18】本方法に従ってデータベースから検索され、事前に生成されたサムネイルでレンダリングされた仮想材料外観のスクリーンショットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1のフローチャートを参照すると、データベースから仮想材料外観を検索するためのコンピュータ実施方法が提案されている。この方法は、仮想材料外観を含むデータベースを提供することを含む。データベース内の仮想材料外観は、外観署名に関連付けられる。2つの被写体が関連付けられ、データベース内で関連付けられていることを意味する「関連付けられた」という言葉はそれらが密接な関係を有していること、例えば、2つの被写体間に相互の関連があることを意味する。したがって、外観署名は、例えば属性の形で、及び/又はポインタを介して、仮想材料外観にも関連付けられる。各外観署名は、対応する外観署名に関連する対応する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値から計算される。本方法は、第1の仮想材料外観に関連付けられた第1の外観署名を提供するステップをさらに含む。この方法は、第1の仮想外観に類似する1つ又は複数の仮想材料外観をデータベース内で識別するステップをさらに含む。識別は第1の外観署名を他の外観署名と比較することによって実行され、他の外観署名の各々はデータベース内の1つの仮想材料外観に関連付けられる。
【0025】
このような方法は、仮想材料外観の比較、及び所与の仮想材料外観に類似する仮想材料外観のデータベースからの検索を改善する。
【0026】
特に、本方法における外観署名は、2つの仮想材料外観間の類似性の決定論的評価を可能にする。換言すれば、外観署名は、仮想材料外観によって提供される視覚的外観の類似性を与えることを可能にする。実際、外観署名は仮想材料の外観を特徴付ける3つの重要な特徴、すなわち、色、反射、及びテクスチャのうちの少なくとも1つを表す値を含む。したがって、外観署名は、2つの仮想材料外観間の数値に基づく比較を可能にする。この方法は、第1の仮想材料外観に類似するデータベース内の1つ又は複数の仮想材料外観の識別を可能にする。識別された1つ又は複数の類似の仮想材料外観は例えば、リストとして、及び/又は1つ又は複数の類似の仮想材料外観でレンダリングされた所定のサムネイルとして、ユーザに返すことができる。したがって、この方法は、既知の仮想材料外観に類似する代替仮想材料外観を識別する際にユーザを支援することによって、仮想材料外観の使用を容易にする。
【0027】
例では、シーンを設計するときに仮想材料外観が使用される。シーン内のオブジェクトは、シーンに依存する方法でユーザによって知覚される。被写体は仮想シーンにおける被写体の表現であるので、仮想被写体(例えば、モデル化された被写体)である。例ではシーン内のオブジェクトが現実世界のオブジェクトを表し、したがって、シーン内のオブジェクトの外観は現実世界のオブジェクトの外観を模倣する。換言すれば、シーン内の物体の仮想材料外観によって定義される、シーン内の物体上の色、テクスチャ、及び光反射は、現実世界の物体の外観を模倣する。シーンを設計するとき、ユーザは視覚的に類似しているべきであるシーン内のオブジェクト、例えば、異なる種類の木材から作られた椅子又はテーブルをモデル化するオブジェクト、又は異なる金属から作られた同じ車両の金属部品に、異なる仮想材料外観を適用することを望む場合がある。この方法はユーザがデータベースから代替仮想材料を迅速に識別することを可能にし、これにより、記憶された多くの仮想材料外観を手動で調べる必要がなくなり、したがって、ユーザの効率が改善される。さらに、シーンをレンダリングするときに含まれる計算資源の量はシーン内のオブジェクトに依存し、シーン内のオブジェクトをレンダリングするときに含まれる計算資源の量は、オブジェクトの仮想材料外観に依存する。類似の仮想材料外観を識別することは、レンダリングされたときに類似して見えるが異なる量の計算資源を必要とする1つ又は複数の仮想材料外観の選択を容易にする。
【0028】
例では、外観署名が計算される構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値自体が外観署名に関連付けられた仮想材料外観の表現から計算される。仮想材料外観は、第1の仮想材料外観及び/又はデータベース内の仮想材料外観を含む、任意の提供される仮想材料外観であってもよい。構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値の計算は、仮想材料外観の表現から前記値を抽出することを含むことができる。仮想材料外観の表現は、システムによって計算されてもよく、レンダリングの少なくとも一部から生じてもよい。したがって、本方法は、異なる外観モデルを有する視覚的材料外観に適用可能である。この方法は外観データモデルの断片化の問題を効果的に回避することを可能にし、異なる外観モデルで実行することができる。
【0029】
例では、仮想材料外観の表現の計算が光輸送シミュレーションを含む。したがって、シミュレートされた光輸送は、必要に応じて、構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す計算値の精度を高めるように変化することができる。
【0030】
例では、第1の外観署名は重み付けされる。例えば、第1の外観署名に重みを加えることによって、あるいは、第1の外観署名の部分に重みを加えることによってである。第1の外観署名が他の外観署名と比較されるとき、比較は、第1の外観署名の重みを考慮に入れる。実施例では第1の仮想材料外観の構造、反射、及び/又は色を表す値から計算される独立した重みが、第1の外観署名の各部分に追加される。特定された仮想材料の外観は、重みに応じて、第1の仮想材料の外観の構造、反射、又は色に関して類似性を共有する。したがって、データベース内の類似の仮想材料外観の識別の精度は、ユーザが識別したい仮想材料外観の種類をより良く反映することにつれて増加する。
【0031】
実施例では、構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す計算された値は例えば、有意な値のみを保持することによって圧縮される。圧縮された値から計算された外観署名は、メモリ内のスペースをほとんど占有しないサイズを有する。例では、外観署名が20を超える値、100未満の値、例えば40の値を有することができる。構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値に対する圧縮及び/又はデータ縮小プロセスは、外観署名を比較するときに類似性の品質を保存するように構成される。したがって、外観署名は、その小さなサイズが処理するのに必要な計算資源が少ないので、迅速かつ効率的なコンピュータ動作に適合される。
【0032】
この方法は、コンピュータで実施される。この意味は、該方法のステップ(又は実質的に全てのステップ)が少なくとも1つのコンピュータ又は任意のシステムによって実行されることである。したがって、本方法のステップはコンピュータによって、場合によっては完全に自動的に、又は半自動的に実行される。例では、方法のステップのうちの少なくともいくつかのトリガがユーザ/コンピュータ対話を介して実行され得る。必要とされるユーザ/コンピュータ対話のレベルは予測される自動化のレベルに依存し、ユーザの希望を実施する必要性とバランスをとることができる。例では、このレベルがユーザ定義及び/又は事前定義され得る。
【0033】
方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的のために適合されたシステムを用いて方法を実行することである。システムはメモリに結合されたプロセッサと、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)とを備えることができ、メモリには、本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記録されている。メモリはまた、データベースを記憶してもよい。メモリはそのような記憶装置に適合された任意のハードウェアであり、場合によっては、いくつかの物理的に別個の部分(例えば、プログラムのための部分、及び場合によってはデータ断片ベースのための部分)を備える。
【0034】
この方法の場合、データベースは、仮想材料外観を含む。データベースは、外観署名をさらに含むことができる。各外観署名は、データベース内の対応する仮想材料外観に関連付けられる。
【0035】
例では、第1の仮想材料外観に関するデータがデータベース上でクエリを実行するときに含めることができ、例えば、関連する外観署名をクエリに含めることができる。識別された仮想材料外観は、ユーザ又はクエリに続くアプリケーションに返されてもよい。したがって、クエリを介して本方法を実行することは、本方法による仮想材料外観の識別を最適化するために、データベース構造を完全に使用することができる。
【0036】
この方法は、システム又はシステムの一部で実施することができる。システムは、CADシステム、CAEシステム、CAMシステム、PDMシステム、及び/又はPLMシステム、あるいはこれらのシステムのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
この方法は、シーン又はシーン内のオブジェクトを設計することの一部とすることができる。シーン及びオブジェクトは、3次元であってもよい。被写体はモデル化された被写体であってもよく、これは例えばデータベースに格納されたデータによって定義される被写体である。
【0038】
一例では、この方法が第1の仮想材料外観を含む第1のモデル化オブジェクトを提供することを含むことができる。第1の仮想材料外観はシステムによって識別され、言い換えれば、第1の仮想外観を入力としてとる動作を実行することができる。この方法は、第1の仮想材料外観に関連する第1の外観署名を識別することをさらに含む。識別することは、外観署名が第1の仮想材料外観に関連付けられていない場合に、本方法に従って第1の仮想材料外観を計算することを含むことができる。本方法は、本方法による第1の仮想材料外観に類似する1つ又は複数の格納された仮想材料外観をデータベース又は不揮発性メモリ内で識別するステップをさらに含む。この方法は、識別された仮想材料外観のリストを提供することをさらに含むことができる。代替的又は追加的に、識別された仮想材料外観を有するオブジェクトの1つ又は複数の表現をユーザに提供することができる。したがって、この方法は、モデル化されたオブジェクト及び/又はシーンの設計を改善する。
【0039】
設計プロセスは、CADシステムにおいて実行されてもよい。CADシステムとは、さらに、CATIAのような、モデル化オブジェクトのグラフィック表現に基づいてモデル化オブジェクトを少なくとも設計するように適合された任意のシステムを意味する。この場合、モデル化オブジェクトを定義するデータは、モデル化オブジェクトの表現を可能にするデータを含む。CADシステムは例えば、ある場合には、顔又は表面を有するエッジ又は線を使用してCADモデル化オブジェクトの表現を提供することができる。線、エッジ、又は表面は様々な方法、例えば、不均一有理Bスプライン(NURBS)で表すことができる。具体的には、CADファイルは仕様を含み、そこから幾何学的形状を生成することができ、これにより表現を生成することができる。モデル化されたオブジェクトの仕様は、単一のCADファイル又は複数のCADファイルに格納することができる。CADシステム内のモデル化された被写体を表すファイルの典型的なサイズは、部品当たり1メガバイトの範囲内である。そして、モデル化された被写体は、典型的には何千もの部品のアセンブリであり得る。
【0040】
CADの文脈では、モデル化された被写体が典型的には例えば、部品又は部品のアセンブリ、又は場合によっては製品のアセンブリなどの製品を表す3Dモデル化された被写体とすることができる。「3Dモデリングされたオブジェクト」とは、その3D表現を可能にするデータによってモデリングされる任意のオブジェクトを意味する。3D表現は、全ての角度から部品を見ることを可能にする。例えば、3Dモデル化オブジェクトは3D表現される場合、その軸のいずれかの周り、又は表現が表示される画面内のいずれかの軸の周りで取り扱われ、回転され得る。これは特に、3Dモデル化されていない2Dアイコンを除外する。3D表現の表示は設計を容易にする(すなわち、設計者が統計的に彼らのタスクを達成する速度を増加させる)。これは、製品の設計が製造工程の一部であるため、産業界における製造工程を高速化する。
【0041】
3Dモデル化オブジェクトは例えばCADソフトウェアソリューション又はCADシステムを用いた仮想設計の完了後に現実世界で製造される製品の幾何学的形状、例えば部品の(例えば機械的である)部品又はアセンブリ(又は部品のアセンブリは本方法の観点から部品自体として見ることができるので、同等に部品のアセンブリ)、又はより一般的には任意の剛体アセンブリ(例えば可動機構)を表すことができる。CADソフトウェアソリューションは、航空宇宙、建築、建築、消費財、ハイテク装置、産業機器、輸送、海洋、及び/又は沖合の石油/ガスの生産又は輸送を含む、さまざまな無制限の産業分野における製品の設計を可能にする。したがって、本方法によって設計された3Dモデル化オブジェクトは、陸上車両(例えば、自動車及び軽トラック機器、レーシングカー、オートバイ、トラック及びモーター機器、トラック及びバス、列車を含む)の一部(又は全体)、航空車両(例えば、機体機器、航空宇宙機器、推進機器、防衛機器、航空機機器、宇宙機器を含む)の一部(又は全体)、海軍車両(例えば、海軍機器、商用船、オフショア機器、ヨット及びワークボート、船舶機器を含む)の一部(又は全体)、機械部品(例えば、産業用製造機械、重機、移動機器、設置機器、産業用機器、加工金属製品、タイヤ製造製品を含む)、電気機械又は電子部品(例えば、家庭用電化製品、セキュリティ及び/又は制御装置及び/又は計装製品、コンピュータ及び通信機器、半導体、医療デバイス及び機器を含む)、消費者であり得る産業製品を表す。商品(家具、家庭用品、庭用品、レジャー用品、ファッション用品、ハードグッズ小売業用品、ソフトグッズ小売業用品等)、包装(食品・飲料・たばこ、美容・パーソナルケア、家庭用品包装等)を表す。
【0042】
CADシステムは、履歴ベースであってもよい。この場合、モデル化された被写体は、幾何学的特徴の履歴を含むデータによってさらに定義される。モデル化された被写体は実際には標準的なモデリング特徴(例えば、押し出し、回転、切断、及び/又は円形)及び/又は標準的な表面特徴(例えば、掃引、ブレンド、ロフト、充填、変形、及び/又は平滑化)を使用して、物理的な人物(すなわち、設計者/ユーザ)によって設計されてもよい。このようなモデリング機能をサポートする多くのCADシステムは、履歴ベースのシステムである。これは、デザインフィーチャの作成履歴が典型的には入出力リンクを介して前記幾何学的フィーチャを一緒にリンクする非循環データフローを介して保存されることを意味する。履歴ベースのモデリングパラダイムは、80年代の始まりから周知である。モデル化された被写体は履歴及びB-rep(すなわち、境界表現)という2つの永続的なデータ表現によって記述される。B-repは、履歴に定義された計算の結果である。モデル化された被写体が表現されるときにコンピュータのスクリーン上に表示される部品の形状はB-rep(のテッセレーション)である。部品の履歴は設計意図である。基本的に、履歴は、モデル化された被写体が受けた動作に関する情報を収集する。B-repは複雑な部品を表示しやすくするために、履歴とともに保存される場合がある。設計意図に応じた部品の設計変更を可能にするため、B-Repと共に履歴を保存することがある。
【0043】
PLMシステムとは、さらに、物理的に製造された製品(又は製造される製品)を表すモデル化オブジェクトの管理に適合された任意のシステムを意味する。したがって、PLMシステムでは、モデル化オブジェクトが物理的オブジェクトの製造に適したデータによって定義される。これらは、典型的には寸法値及び/又は公差値であってもよい。オブジェクトを正確に製造するためには、このような値を有することが実際に好ましい。
【0044】
CAMソリューションとは、さらに、製品の製造データを管理するように適合された任意のソリューション、ハードウェアのソフトウェアを意味する。製造データは一般に、製造する製品、製造工程、及び必要な資源に関するデータを含む。CAMソリューションは製品の製造プロセス全体を計画し、最適化するために使用される。例えば、CAMユーザに、製造プロセスの実現可能性、製造プロセスの継続時間、又は製造プロセスの特定のステップで使用することができる特定のロボットなどのリソースの数に関する情報を提供することができ、したがって、管理又は必要な投資に関する決定を可能にする。CAMは、CADプロセス及び潜在的CAEプロセスの後の後続プロセスである。このようなCAMソリューションは、ダッソーシステムズによってDELMIA(登録商標)の商標で提供されている。
【0045】
CAEソリューションとは、さらに、モデル化オブジェクトの物理的挙動の分析に適合された任意のソリューション、ハードウェアのソフトウェアを意味する。よく知られ、広く使用されているCAE技法は有限要素法(FEM)であり、これは、典型的にはモデル化されたオブジェットを、物理的挙動を計算し、式によってシミュレートすることができる要素に分割することを含む。このようなCAEソリューションは、ダッソーシステムズによって、SIMULIA(登録商標)の商標で提供されている。別の成長するCAE技術は、CADジオメトリデータなしで物理学の異なる分野からの複数の構成要素を構成する複雑なシステムのモデリング及び分析を伴う。CAEソリューションはシミュレーションを可能にし、したがって、製品の最適化、改善、及びバリデーションを製造することを可能にする。このようなCAEソリューションは、ダッソーシステムズによってDYMOLA(登録商標)の商標で提供されている。
【0046】
PDMは、製品データ管理を意味する。PDMソリューションとは、特定の製品に関連するすべてのタイプのデータを管理するように適合された任意のソリューション、ハードウェアのソフトウェアを意味する。PDMソリューションは、製品のライフサイクルに関与するすべての行為者(主にエンジニアだけでなく、プロジェクトマネージャー、ファイナンス担当者、販売担当者、及び購入者も含む)によって使用され得る。PDMソリューションは一般に、製品指向データベースに基づく。それは、行為者が彼らの製品に関する一貫性のあるデータを共有することを可能にし、したがって、行為者が異なるデータを使用することを防ぐ。このようなPDMソリューションは、ダッソーシステムズによってENOVIA(登録商標)という商標で提供されている。
【0047】
図2はシステムのGUIの一例を示し、システムはCADシステムである。
【0048】
GUI2100は、標準的なメニューバー2110、2120、ならびに底部及び側部ツールバー2140、2150を有する、典型的なCAD様インターフェースであり得る。このようなメニューバー及びツールバーはユーザが選択可能なアイコンのセットを含み、各アイコンは当技術分野で知られているように、1つ又は複数の操作又は関数に関連付けられている。これらのアイコンのいくつかは、GUI2100に表示された3Dモデル化オブジェクト2000を編集及び/又は作業するように適合されたソフトウェアツールに関連付けられる。ソフトウェアツールは、ワークベンチにグループ化することができる。各ワークベンチは、ソフトウェアツールの部分集合を含む。特に、ワークベンチの1つは、モデル化された製品2000の幾何学的特徴を編集するのに適した編集ワークベンチである。動作中、設計者は例えば、被写体2000の一部を事前に選択し、次いで、適切なアイコンを選択することによって、動作(例えば、寸法、色などを変更する)又は幾何学的制約を編集することができる。例えば、典型的なCAD動作は、画面上に表示される3Dモデル化オブジェクトの打ち抜き加工又は折り畳みのモデル化である。GUIは例えば、表示された製品2000に関連するデータ2500を表示することができる。図の例では「特徴木」として表示されるデータ2500、及びそれらの3D表現2000はブレーキキャリパ及びディスクを含むブレーキアセンブリに関する。GUIは編集された製品の動作のシミュレーションをトリガするために、又は表示された製品2000の様々な属性をレンダリングするために、例えば、オブジェクトの3D配向を容易にするための様々なタイプのグラフィックツール2130、2070、2080をさらに示すことができる。カーソル2060はユーザがグラフィックツールと対話することを可能にするために、触覚デバイスによって制御され得る。
【0049】
図3は、システムがクライアントコンピュータシステム、例えばユーザのワークステーションであるシステムの一例を示す。
【0050】
この例のクライアントコンピュータは、内部通信バス1000に接続された中央処理装置(CPU)1010と、やはりバスに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)1070とを備える。クライアントコンピュータには、さらに、バスに接続されたビデオ・ランダム・アクセス・メモリ1100に関連するグラフィカル・プロセッシング・ユニット(GPU)1110が設けられている。ビデオRAM1100は、当技術分野ではフレームバッファとしても知られている。大容量記憶装置の制御装置1020は、ハードドライブ1030などの大容量記憶装置へのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現化するのに適した大容量メモリデバイスは、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMディスク1040を含む、すべての形態の不揮発性メモリを含む。前述のいずれも、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足されるか、又はその中に組み込まれてもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータは、カーソル制御デバイス、キーボードなどの触覚デバイス1090も含むことができる。ユーザがディスプレイ1080上の任意の所望の位置にカーソルを選択的に位置決めすることを可能にするために、カーソル制御装置がクライアントコンピュータ内で使用される。さらに、カーソル制御装置はユーザが様々なコマンドを選択し、制御信号を入力することを可能にする。カーソル制御装置は、システムに制御信号を入力するための多数の信号発生装置を含む。典型的にはカーソル制御装置がマウスであってもよく、マウスのボタンは信号を生成するために使用される。代替的に又は追加的に、クライアントコンピュータシステムは、タッチパッド及び/又はタッチスクリーンを含むことができる。
【0051】
コンピュータプログラムはコンピュータによって実行可能な命令を含むことができ、命令は、上記システムに該方法を実行させるための手段を含む。プログラムは、システムのメモリを含む任意のデータ記憶媒体に記録可能であってもよい。プログラムは例えば、デジタル電子回路において、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアにおいて、又はそれらの組み合わせにおいて実装されてもよい。プログラムは装置、例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のための機械可読記憶デバイスに有形に具現化された製品として実装されてもよい。方法のステップは入力データ断片に対して動作し、出力を生成することによって、方法の機能を実行するための命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。したがって、プロセッサはプログラム可能であり、データ断片記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ断片及び命令を受信し、それらにデータ断片及び命令を送信するように結合され得る。アプリケーションプログラムは、高レベルの手続き型又はオブジェクト指向プログラミング言語で、あるいは必要に応じてアセンブリ言語又は機械語で実装することができる。いずれの場合も、言語は、コンパイルされた言語又は解釈された言語であってもよい。プログラムはフルインストールプログラムであってもよいし、更新プログラムであってもよい。システム上にプログラムを適用すると、いずれにしても、この方法を実行するための命令が得られる。
【0052】
方法は製造プロセスに含まれてもよく、製造プロセスは方法を実行した後に、モデル化された被写体に対応する物理的製品を生成することを含んでもよい。いずれの場合も、本方法によって設計されたモデル化オブジェクトは、製造オブジェクトを表すことができる。したがって、モデル化された被写体はモデル化された立体(すなわち、立体を表すモデル化された被写体)とすることができる。製造対象物は、部品などの製品、又は部品のアセンブリであってもよい。この方法はモデル化された物体の設計を改善するので、この方法はまた、製品の製造を改善し、したがって、製造プロセスの生産性を増加させる。
【0053】
仮想材料は、データによってモデル化された現実世界の材料である。現実世界の材料(物理材料ともいう)とは、被写体を構成する化学物質又は物質の混合物である。物理的材料は、製造工程を用いて製造される。実語の材料は、金属材料、複合材料、有機材料、鉱物材料であってもよい。実際には、現実世界の材料がCADシステムに関連して前述した産業のうちの少なくとも1つにおいて使用される。例示のためだけに、現実世界の材料はプラスチック、バイオベースの材料、炭素ベースの材料、セルロース繊維、コルク、断面ラミネート、エボナイト、FDU材料、繊維、宝石、ガラス微小球、ハイブリッド木材、金属、ラテックス、メソ多孔性材料、ミネラルウール、ナノ相セラミック、紙、シリコンナノワイヤ、木材などであってもよいが、これらに限定されない。仮想材料のデータは、仮想材料の物理的態様を記述するデータと、仮想材料の視覚的態様を記述するデータとを含む。物理的側面を記述するデータは、材料が他のオブジェクトと物理的にどのように相互作用するかを記述する情報を含む。例えば、物理的態様は当技術分野で知られているように、粗さパラメータ、例えば、振幅パラメータ、勾配、間隔、及び計数パラメータを含むことができる。視覚的側面を記述するデータは、仮想材料の外観を記述するデータファイルを含む、1つ以上のデータファイルを含んでもよい。外観は材料の反射特性の分析表現であり、光が表面レベルで材料とどのように相互作用するかを記述する。したがって、仮想材料の外観は仮想材料の外観に関する情報を含むデータ(例えば、コンピュータメモリに記憶されたデータファイルの形態)である。仮想材料外観の具体的な情報は、仮想材料外観のデータモデルに依存する。例えば、仮想材料外観は、それらが適用され得るモデル化されたオブジェクトとは別個のデータファイルが存在する。
【0054】
例では、仮想材料外観が視覚材料の物理的態様に関する情報を含まない。仮想材料外観が適用されるモデル化オブジェクトをレンダリングするとき、モデル化オブジェクトは光と相互作用し、仮想材料外観によって定義される物理的特性を有する。例えば、光沢のあるクロム仮想材料の外観が適用されるレンダリングされたモデル化オブジェクトは、研磨されたクロムの外観をシミュレートする金属光沢を有する。
【0055】
以下では、「仮想材料外観」という用語は外観に関連しない特性を含まない。
【0056】
【0057】
この方法は、データベースから仮想材料外観を検索するためのものである。データベースは、リレーショナルデータベースであってもよい。代替的に又は追加的に、データベースは不揮発性メモリ記憶装置であってもよい。この方法は(例えば、データベースに記憶された)仮想材料外観を含むデータベースを提供するステップ(S10)を含む。データベースに記憶された仮想材料外観は、外観署名に関連付けられる。1つの外観署名は、1つの仮想材料外観に関連付けられる。外観署名は、外観署名に関連付けられた仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値から計算される。本方法は、第1の仮想材料外観に関連付けられた第1の外観署名を提供するステップ(S20)をさらに含む。第1の仮想材料外観は、データベースに格納された、又はシステムによってアクセス可能な他の場所に格納された仮想材料外観であってもよい。この方法は、第1の仮想材料外観に類似する1つ又は複数の仮想材料外観をデータベース内で識別するステップをさらに含む。識別は、第1の外観署名を、データベース内の仮想材料外観にそれぞれ関連付けられた外観署名と比較することによって実行される。
【0058】
あるいは、S20において、第1の外観署名の代わりに第1の材料外観が提供されてもよい。この場合、本方法は、第1の仮想材料外観に関連する第1の外観署名を識別するステップをさらに含む。外観署名が第1の視覚材料外観に関連付けられていない場合、本方法は、第1の視覚材料外観に関連付けられた第1の仮想材料外観署名を計算するステップをさらに含む。提供された第1の仮想材料の外観は、将来の使用のために不揮発性コンピュータメモリに記憶することができる。
【0059】
データベース内の各仮想材料外観は、外観署名に関連付けられる。外観署名は所与の仮想材料外観の一意の識別子であり、仮想材料外観の特徴に関する情報を含む。外観署名は、データベースインデクサの入力として使用することができる。外観署名は、仮想材料外観の反射、構造、及び色などの外観特徴のうちの少なくとも1つを表す値から計算される。外観特徴を表す値は、前記特徴を定量化する値であってもよい。なお、その値は数値であってもよい。その値は、外観署名に含めることができる。「定量化」とは、(例えば、座標系の助けを借りて)数値スケールで順序付けられた数値のような、決定論的な方法でスケールで順序付けることができる情報を意味する。外観特徴を定量化する値は類似性の分析的評価を可能にするそれぞれの特徴空間において、例えば、それぞれの特徴空間についての値の間の差に基づいて、順序付けられてもよい。したがって、異なる外観特徴を定量化する組み合わせ値は、仮想材料外観間の類似性の分析的評価を可能にする。外観署名は反射、構造、及び色のうちの少なくとも1つを表す値から計算されるが、さらに、仮想材料外観の外観に関連する他の特徴から計算されてもよい。
【0060】
例では、外観署名が仮想材料外観の1つ又は複数の特徴を表す値の連結を含むベクトルとすることができる。特徴を表す値は、数、ベクトル、及び/又は行列の形態の数値を含むことができる。
【0061】
S30で、第1の仮想材料外観に類似する1つ又は複数の仮想材料外観が、データベース内で識別される。識別された仮想材料外観は、外観署名によって定量化された特徴のうちの少なくとも1つについて、第1の仮想材料外観と類似性を共有する。したがって、この類似性はデータベース内の仮想材料外観に関連する第1の外観署名及び外観署名などの2つの外観署名を比較するときに、決定論的に評価することができる。
【0062】
2つの外観署名間の比較は、メトリックを使用して2つの外観署名間の距離を測定することによって実行され得る。メトリックは、スカラー積のようなユークリッドメトリックであってもよい。これにより、距離計算を簡単にすることができ、本方法の試験中にうまく機能させることができる。あるいは、距離の測定がコサイン距離メトリック又はマンハッタン距離メトリックを用いて実行されてもよい。
【0063】
例では、類似性が類似性空間内の仮想材料外観間の距離に基づいて評価される。類似空間は、反射、構造、及び色のうちの少なくとも1つのための1組の軸を含む。さらに、類似空間は、他の外観特徴のための他の軸を有する可能性がある。外観署名は特徴を表す値に基づいて、例えば、特徴軸の座標の形成で、仮想材料を類似性空間内に配置することを可能にする。この類似性はメトリックで測定することができる。
【0064】
例では、2つの仮想材料外観間の比較が類似性メトリックを介して実行される。類似性メトリックは、同じ特徴を定量化する2つの比較された外観署名の値の間の距離の特徴にわたる合計の逆数として定義されてもよい。この例は、以下の式1及び式2で例示される:
【数2】
ここで、
・s(m
1,m
2)は、外観署名m
1及びm
2の間の類似性メトリックである。
・aは、値m
1a及びm
2aにより定量化された外観特徴である。
・δは、距離メトリックである。
・m
1a及びm
2aは、外観署名m
1及びm
2の特徴を定量化した値である。
・x及びyは値である。
【0065】
外観署名は類似性を評価するために、観察された外観の知覚を考慮に入れる。これは、関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つの外観特徴の定量化によって反映される。これは、外観署名間の比較が2つの仮想材料外観がどれほど類似しているかを客観的に定量化することを可能にする。
【0066】
例では、外観署名が外観署名に関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも2つの特徴を定量化する。これは、本方法によって考慮される仮想材料外観間のより正確な類似性比較をもたらす。
【0067】
例では、外観署名が外観署名に関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色を定量化し、外観署名による仮想材料外観の広範な記述をもたらす。
【0068】
例では、1つ又は複数の識別された仮想材料外観を、リストとしてユーザに提示することができる。リストは例えば、最も類似した仮想材料外観から最も類似しない仮想材料外観への順序付けされたリストであってもよい。例では、識別された仮想材料の外観をユーザに返すことができる。
【0069】
例では、識別された仮想材料外観の表現(仮想材料外観が適用される画像又はモデル化されたオブジェクトなど)が、ユーザに返され得る。
【0070】
例では、識別される仮想材料外観の数が予め決定されてもよい。代替的に又は追加的に、外観署名間の比較が所定の閾値を上回る場合、例えば類似性メトリックが10%又は20%を上回る類似性を示す場合にのみ、仮想材料外観を識別することができる。これにより、様々な類似の仮想材料外観を識別することが可能になり、例えば、類似の仮想材料外観を探している設計者は、データベース内で識別された仮想外観材料のうちの1つ又は複数を選択することができる。リストは、同様の仮想材料外観に関する追加情報も含むことができる。閾値は識別された仮想外観の数を増減するために、設計者によって構成されてもよい。ユースケースでは、識別された仮想外観の数が少なすぎる場合、閾値が減少される。逆に、識別された仮想外観の数が多すぎる場合、閾値は増加される。
【0071】
本方法はまた、仮想材料外観を合成して、仮想材料外観の1つ又は複数の特徴を表す値を計算するステップを含むことができる。算出される値は、仮想素材外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す値であってもよい。仮想材料外観を合成することは、仮想材料外観の表現を計算することを指し、この表現はコンピュータメモリ(例えば、揮発性及び/又は不揮発性メモリ)に記憶される。例では、視覚材料外観を合成することは仮想材料外観を完全にレンダリングすることを含む。あるいは仮想材料外観を合成することは不完全なレンダリングを含むことができ、いくつかのレンダリングステップは仮想材料外観を完全にレンダリングするためのすべてのステップを必ずしも完了することなく実行される。不完全なレンダリングは、仮想レンダリングとも呼ばれる。
【0072】
仮想材料外観のレンダリングは、光源と相互作用する仮想材料の挙動を記述する情報を計算することを含む。この計算された情報は、仮想材料外観に関連付けられた外観署名の計算に使用することができる。これは、異なる仮想材料外観のモデル断片化、換言すれば、異なる仮想材料外観のデータの差による不適合性をバイパスすることを可能にする。したがって、仮想材料外観の計算された表現は外観データモデルにかかわらず、異なる仮想材料外観を比較するために、異なるモデルを通して作成された2つの異なるレンダリング外観の間で一貫した方法で外観特徴を効果的に抽出することを可能にする。
【0073】
例では、構造、反射、及び色のそれぞれについて値を計算するために、仮想材料外観の異なる表現が合成される。例えば、第1の表現は反射を表す値を計算するために合成され、第2の表現はテクスチャを表す値を計算するために合成される。これは、各表現がそれぞれの特徴に対する値の計算のために構成され得るので、仮想材料外観の特徴を表す値のよりカスタマイズされた計算をもたらす。あるいは、1つの表現から、前記1つの表現に対応する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの1つ又は複数を表す値を計算することができる。これは、表現を再合成する必要なしに表現を再使用することを可能にし、したがって、方法を実行するときに計算資源を節約する。
【0074】
いくつかの例では、第1の視覚的材料外観の表現を合成することは物理ベースのレンダリングエンジンを用いて1つ又は複数のレンダリングステップ又はすべてのレンダリングステップを実行することを含む。物理ベースのレンダリングエンジンによって合成された表現は、物理ベースの表現と呼ばれる。仮想材料外観の外観データは有効な出力を生成するために、物理ベースのレンダリングシステムのための入力として適合される。物理ベースの画像合成は、視覚効果(VFX)、産業用視覚化、及びゲームなどの分野で使用され、高速レンダリング技術及び高度に現実的な解析材料モデルを備える。物理ベースのレンダリングエンジンは、物理を利用して被写体をレンダリングする。物理的基礎は、外観モデルからの関連データの計算に特定のルールセットを課す。これらの規則は、計算が物理法則に違反しないことを保証する。例えば、外観モデルは、それらが受け取る例により多くのエネルギーを反映すべきではない(エネルギー節約)。このような規則は、予測可能かつ直感的な結果を可能にする。これは、同じ規則に従う異なるレンダラが同様の結果を生成する可能性が高いので、結果のレンダラ間有効性に関する仮定を行うのに特に有用である。さらに、このような物理的に基づく外観モデルの性能最適化分析バージョンが使用される。このようなモデルは視覚的忠実度を最大にしながら、計算の労力を最小にする。
【0075】
例では、外観署名の計算がそれぞれの仮想材料外観がそれぞれの外観署名に関連付けられていないことを識別した後に実行することができる。あるいは、外観署名の計算がユーザによってトリガされてもよい。
【0076】
例では、外観署名の計算がそれぞれの仮想材料外観の表現(例えば、物理ベースの表現)を計算することを含む。それぞれの仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つの値のセットが、表現から計算される。次に、計算された値から、それぞれの外観署名が計算される。例では、それぞれの外観署名が計算された値を組み合わせることによって、例えば、それぞれの値を連結することによって(例えば、計算された値を有するベクトルを形成することによって)計算される。代替として、又は追加として、それぞれの外観署名の計算の前に、計算された値に対してさらなる動作を実行することができる。次いで、計算されたそれぞれの外観署名は、それぞれの仮想材料外観に関連付けられる。
【0077】
例では、外観署名の計算が第1の仮想材料外観に関連付けられていない第1の仮想材料外観が提供されるときに、1つ又は複数の類似の仮想材料外観の識別(S30)の前に自動的に実行され得る。例では、外観署名の計算がデータベースに追加される仮想材料外観に対して実行されてもよい。これは、類似の仮想材料外観の識別が仮想材料外観モデルから独立することを可能にする。
【0078】
本方法は、第1の外観署名に重み付けするステップをさらに含むことができる。重み付けは、第1の外観署名への関連付け重みを含み、ステップS30における外観署名間の比較の前に実行されてもよい。重みは類似性を評価するときに、外観署名の1つ又は複数の特定の特徴が他の特徴よりも考慮されることを可能にする値とすることができる。したがって、ユーザは、データベース内の類似の仮想材料外観の識別をより良く指示することができる。例では、重みが比較に含まれる第1の外観署名及び外観署名の両方に影響を及ぼす。
【0079】
第1の外観署名を重み付けするステップは、S30で比較された外観署名に関連付けられた仮想材料外観の構造、反射、及び色などの特徴を定量化する値に重みパラメータを関連付けるステップをさらに含むことができる。各特徴は独立した重みを有するので、S30における識別はより選択的であり得る。これは、識別された材料の外観がユーザにとって関心のある特定の特徴において類似しているので、より細かい検索を可能にする。例では、重みがS30で外観署名を比較する前に、ユーザによって設定される。
【0080】
例では、以下の式3によって示されるように、重み付けされた類似性メトリックが外観署名間の比較を実行するために使用される:
【数3】
ここで、w
aは、特徴aに関連する重みである。式(3)の他のパラメータは、式(1)及び式(2)を参照して説明したものと同じである。
【0081】
例では、重みパラメータが定量化された値に直接適用されてもよい。この場合、値がそれぞれの特徴空間上で変化する範囲に基づいて、異なる特徴空間上で規格化(及び任意選択で線形化)を実行することができる。これらの値は、データベースに記憶された仮想材料外観に関連する全ての外観署名の値に対応する。2つの特徴空間に対応するスケールは異なっていてもよい。例えば、色に関するデータベース内の視覚的材料外観に関連付けられた全ての外観署名の最大値と最小値との間の範囲は、構造に関するものとは異なり得る。全データセット内の全ての外観間の距離の分布について同じカウントを行う。例では構造重みが0と1との間で変化し得るが、材料の大部分(例えば、90%)は構造特徴空間において近接している。このような場合、検索結果の変動の大部分は小さな値の範囲(例えば、全範囲の10%、例えば、0と0.1との間)で生じる。そのような場合、特徴空間の規格化及び線形化は、0から1の間の線形重みの広がりを可能にする。特徴空間を正規化し、線形化することにより、外観署名を比較する際に、同じ値を有する重みを有する2つの特徴を等しく考慮することが可能になる。これは、ユーザによる重みの管理を容易にする。
【0082】
前記方法は仮想材料外観の色を表す値を計算する際に、値ΔEabを決定することをさらに含むことができる。数値ΔEabは色差の距離の計量値である。例では色からの距離メトリックが国際照明委員会(CIE)によって導入された距離メトリックであってもよく、これは人間の感覚の文脈における色差のメトリックである。この結果、この特定のメトリックは、外観を定量化するのに十分に適合される。その基本版では、ΔEabが式(4)に示すようなCIELAB色空間における2色のユークリッド距離である:
【数4】
ここで:
・1及び2は、仮想材料外観の2つの色に対するインデックスに対応する;
L・は明度に対応する。
・a及びbはそれぞれ緑赤、青黄色成分に対応する。
【0083】
実施例では、仮想材料外観の色を表す値が仮想材料外観の3成分CIELAB平均色である。
【0084】
例では色は仮想材料外観の表現から計算される。例では、色の計算が均一なニュートラル環境照明で実行される。
【0085】
仮想材料外観の反射を表す値の計算は、仮想材料外観の表現から双方向反射分布関数(BRDF)によって実行することができる。BRDFは特定の位置における入射光のどれだけが特定の方向に反射されるかを記述する4次元関数であり、全ての半球方向からの入射光に対する比率として、特定の方向における反射光の量を生じる。BRDFは、仮想材料外観の反射挙動を表すために使用されてもよく、光沢、色、ハイライトの形状、及びフレネル挙動(フレネル反射としても知られる)などの異なる挙動の非自明な組み合わせを記述する。
【0086】
BRDFは特にBRDFが物理ベースの表現から計算されるときに、表面の反射挙動を記述するように特に良好に適合される。
【0087】
例では、BRDF表現がMcAllisterらによって「Efficient Rendering of Spatial Bi-directional Reflectance Distribution Functions」, Computer, 2002に記載されているように、反射挙動及び表面にわたる表面変化を考慮に入れるために、空間的に変化する情報によって拡張することができる。
【0088】
BRDFデータセットの構造は、Matusikらの「efficient isotropic BRDF measurement」EGRW ‘03 Proceedings of 14th Eurographics workshop on Rendering 2, 2003に記載されているような本格的な測定表現から、Ashikhminらの「An Anisotropic Phong BRDF Model」、Journal of Graphics Tools 5, 2000、又はBurley, B.及びWaltDisneyAnimationStudiosの「Physically-based shading at Disney」, Acm Siggraph, 2012から並べられ得る。これは、それらを計算するために使用されたBRDFについての知識なしに、利用可能なBRDF値を比較することを困難にする。この方法は、仮想材料外観の表現から直接BRDF値を計算する。この結果、BRDF値は異なる仮想材料外観間で一致し、したがって、類似性を評価するために異なる外観署名を比較することが可能になる。
【0089】
BRDFによる反射を表す値の計算は、仮想材料外観の表現からBRDFの複数の角度評価を計算することを含むことができる。角度評価の計算は、空間的に一様な中性光を有する照明を用いて、BRDFの半球をカバーするパラメータ化された空間において実行されてもよい。
【0090】
角度評価は、1つの半球角度に対するBRDFの測定である。BRDFは
図4に示すように、表面法線の周りに配向された入射方向及び出射方向の領域で定義される関数である。BRDFは、入射光のどれだけがある出射方向に反射するかを計算する。典型的には、BRDFが位置に依存しないので、評価されるべき表面に適用される必要はない。あるいはBRDFが位置に依存し得るが、位置と共にBRDFを変化させることは「構造」特徴によって覆われる観察される外観の視覚的構造を変化させる。
【0091】
BRDFは、パラメータのセット、例えば角度パラメータに依存し得る。各角度評価は、異なる角度値など、異なるパラメータ値のセットを有することができる。パラメータのセットは、パラメータ化された空間を形成する。角度評価は例えば、BRDF内の角度の値を変化させることによって、パラメータ空間を検索することができる。例では、BRDFの角度評価が(
図5に示すように)2D画像/スライスとして表すことができる。代替的に又は追加的に、BRDFの角度評価は、値のベクトル、言い換えれば反射特徴ベクトルとしてコンピュータメモリに記憶されてもよい。
【0092】
BRDF評価値は、入射光、言い換えれば照明に依存し得る。空間的に均質な中性光を使用すると、BRDF値は照明条件とは無関係になる。表現を取り囲む空間内の全ての考えられる角度からニュートラル光が到達する「空間的に均質である」手段という語は、光に対する方向依存性を除外することを可能にする。中性光は各RGB成分及び/又は各波長に対して同じ値(例えば、1の値)を有する光である。RGB成分及び/又は波長間のこの一定のファクタは、角度照明依存性を除去する。
【0093】
仮想材料の視覚的知覚は、その外観に依存するだけではない。仮想材料の環境内の光源は、ユーザの視覚的知覚を変化させることができる。したがって、所与の仮想材料の外観は、異なる環境において異なるように知覚される。例えば、灰色の石を表すモデル化された被写体に適用された仮想材料は、明るい環境よりも照明の少ない環境において暗く見える。これは、デジタル画像合成に有効であるだけでなく、現実世界でも全く同じである。空間的に均質な中性光は、反射を表す値が照明環境によって影響されないことを可能にする。
【0094】
ここで、
図5を参照する。実施例では、大まかな仮想測定がBRDFの評価を計算するときに実行される。仮想測定は、「Efficient isotropic BRDF measurement」, 2003, EGRW ‘03 Proceedings of 14th Eurographics workshop on RenderingにおいてMatusik W.らによって記載されている現実世界の測定と同様である。仮想測定を実行するとき、構造に関連するすべての情報、例えば、色、法線、又は粗さなどのテクスチャからのすべての空間的に変化する情報は無視される。この結果、反射を定量化し、構造から完全に独立した値が得られる。例では、空間的に変化する色のみが無視され、BRDF反射の色は保存されるが無視される。そのような例では、BRDF色情報が色テクスチャが利用可能でない場合に使用されてもよい。測定空間のパラメータ化は「A New Change of Variables for Efficient BRDF representation」、198、Rendering Techniques ‘98、pp 11-22においてRusinkiewiczによって論じられているように、Rusinkiewicz半角表現のパラメータ化である。評価するパラメータを少なくするために、φdを90°に固定することができる。この結果、処理するデータの量が減少し、異方性情報は犠牲にされるが、これは出現に関する考察にはあまり入らない(φdを90°に固定することの影響は小さい)。BRDFの完全な測定は外観のBRDFにおける角度変動の大部分を捕捉するために、非常に微細な分解能(例えば、1度以下)での物理的角度測定を含む。これは、複数の角度評価を含み、次いで、Burley、B.及びWaltDisneyAnimationStudiosによって「Physically-based shading at Disney」, Acm Siggraph, 2012、及び
図5に示されるように、2D画像/スライスとして表され得る。スライスの異なる領域は、鏡面反射ピーク、フレネルピーク、グレージング逆反射、及び拡散反射などの特定の視覚的BRDF特徴に関連付けることができる。言い換えれば、視覚的に重要なBRDFアスペクトは、単純な2Dデータ構造として空間的に分離された方法で計算される。この単純な2Dデータ構造は、基礎となる外観データモデルから独立している。次に、BRDF間の類似性を2D画像比較問題に低減することができる。
図5は2つのスライスを示し、一方は赤色プラスチックについてのBRDF測定値を表し、他方は、赤色鏡面プラスチックについてのBRDF測定値を表す。
【0095】
例では、「on Optimal、Minimal BRDF Sampling for Reflectance Acquisition」(2015, IEEE Signal Processing and Signal Processing Education Workshop)においてNielsen、J.B.によって論じられているような対数相対正規化スキームを2Dスライス上で使用することができる。2Dスライスは、高いダイナミックレンジを有する。例えば、鏡面反射ピーク領域の値は、例えば拡散領域の値よりも数倍高くてもよい。大きさの桁の差はより低い値(例えば、拡散領域の値)に干渉することを隠すことができる。対数規格化は、スライスの解釈を容易にするためにダイナミックレンジを減少させる。対数規格化は、スライスの比較に影響しない。対数規格化はBRDF間変動、したがってBRDFの比較可能性を維持しながら、BRDF内変動を減衰させる。
【0096】
ここで
図6を参照すると、照明は周波数成分を含むことができる。一例では、均一な中性光が強度が変化するパターンであってもよい。実施例では、入射光評価のために経度角方向に半球を反復するとき、強度低減がストライプパターンを生成するために、規則的なセグメントにおいて中立照明情報に適用される。このような場合、図柄は、
図6に示すような手続き型ストライプ図柄であってもよい。これは、非常に反射性の仮想材料に対する非常に拡散性の仮想材料の間の区別を可能にする。例えば、完全なミラー及び完全に拡散性の材料は均一なニュートラル照明環境のための同じ均質なBRDF測定スライスをもたらし、照明にストライプパターンを追加することにより、それらの区別が可能になる。これにより、類似性測定の精度が向上する。
【0097】
仮想材料外観の構造を表す値の計算は、空間的に一様な中性光を有する照明で表現の仮想測定平面をサンプリングすることと、平面上の各サンプル位置について照明の反射光の半球積分を評価することとを含むことができる。構造は、表面にわたる空間的に変化する反射挙動の結果である。サンプリングは別個のステップで実行することができ、各サンプル点において、反射光の半球積分を評価して、仮想材料外観の構造特徴を定量化することができる。この結果、構造評価は、空間的に変化する反射挙動に加えて、空間的に変化するテクスチャ情報を測定する。例では、構造特徴の定量化が
図7に示すような2D画像スライスで表すことができる。代替的に又は追加的に、構造特徴の定量化は、値のベクトル、言い換えれば構造特徴ベクトルとしてコンピュータメモリに記憶されてもよい。
【0098】
実施例では、仮想測定平面の測定結果が仮想材料外観から合成された測定情報を含む2D画像/スライスであってもよい。これに加えて、又はこれに代えて、色特徴を表す値を仮想測定値から計算することもできる。これは、1つの同じ表現が毎回それを再計算する必要なしに、構造及び色についての値を計算することに関与し得るので、方法の性能を増加させる。
【0099】
例では、色の特徴ベクトルが構造スライスから計算された3成分CIELAB平均色である。
【0100】
例では、「Combined scattering for rotation invariant texture analysis」(ESANN 2012 proceedings)においてSifre、L.及びMallat S.によって提案された散乱変換アルゴリズムを使用して、スライスから回転不変及び変形安定構造特徴表現を抽出する。
【0101】
外観署名の計算は、外観署名の寸法を縮小することを含むことができる。
【0102】
外観署名に関連する仮想材料外観の特徴を定量化するすべての値を含む外観署名は、非常に大きく、したがって、処理及び記憶のためにかなりの量のメモリを必要とすることがある。外観特徴は例えば、各特徴について少なくとも1つの値を保持しながら、仮想材料外観の特徴を表す値の量を減少させることによって、その寸法を減少させることができる。これは例えば50と200の間の値、又は100の値に制限されたインデックスサイズを有することができるデータベース内の外観署名の使用を容易にし、一方、低減された外観署名は10と100の間の値、例えば40の値を含む。
【0103】
外観署名の次元の減少(次元減少)は、データベースの関連する仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つをそれぞれ表す値に対して主成分分析(PCA)を実行することを含むことができる。例では、PCAは特異値分解(SVD)を含むことができる。PCAは第1の外観署名を提供する前に、及び/又はデータベースが提供される前に、前処理ステップとして実行されてもよい。PCAを実行した後、多数の基底ベクトルが得られる。基底ベクトルの数は、プロセッサによって自動的に得ることができる。次に、基底ベクトルを使用して、データベース内の仮想材料外観の特徴の各々について計算された値の数を減らすことができる。例では、外観署名を計算するために使用される特徴ベクトルが特徴ベクトル内の値の数を効果的に低減する基底ベクトルによって定義される空間に射影され得る。基底ベクトルは、将来の使用のためにコンピュータメモリに記憶されてもよい。例えば、データベースに格納されていない仮想材料の外観署名の寸法を小さくするためである。
【0104】
外観特徴に対する計算された値の数の減少は、コンピュータメモリに関して外観署名をより小さくする。例では、特徴ベクトルの非縮小表現(例えば、2D画像によって表される特徴ベクトル)は大きすぎることがあり、例えば、テクスチャ特徴ベクトルについては26688値、反射特徴については16384値、色については3値である。PCAを使用する値の減少は多くの情報を失うことなく、これらの値の数を、例えば、3つの特徴全てについて100未満の合計値に減少させることを可能にする。したがって、外観署名は揮発性コンピュータメモリにおいてより容易に処理され、不揮発性コンピュータメモリにおいてより少ないスペースをとり、これは、外観署名間の比較を高速化する。特に、外観署名は、特定の入力サイズに限定された大部分のデータベースインデクサのための入力として取り入れることができる。
【0105】
特に、PCAは、BRDF値を低下させるのに特に適している。主成分分析(PCA)を多様な材料測定値のセットに適用することにより、支配的な視覚的BRDF特徴のすべてを分離する基底ベクトルの小さなセットが得られる。
【0106】
例では、データベース内の複数の仮想材料外観について1つの特徴を表すすべての値から行列を計算することができる。次に、計算された行列に対してPCAを実行することができる。あるいは、PCAがデータベース内の複数の仮想材料外観に対する特徴の値の2D表現に対して実行されてもよい。データベース内の複数の仮想材料外観は、データベース内のすべての仮想材料外観、又はデータベース内の仮想材料外観の少なくとも代表的なセットとすることができる。代表的なセットはデータベース内の他の仮想材料外観(例えば、データベース内の仮想材料外観の85%、95%、又は100%)を正確に反映する仮想材料外観のセットに対応する。
【0107】
ここで
図8を参照すると、反射特徴の基底ベクトルの例は、データベース内のすべての仮想材料外観の反射のスライス表現にPCA分解を適用することによって、前処理で計算される。色情報は主に、外観定義の空間的に変化する特性の一部としてテクスチャによって決定されるので、RGBカラーチャネルは、別個のグレースケールPCAサンプルとして扱われてもよい。主成分ベクトルは、平均減算され正規化されたサンプル行列にSVDを適用することによって抽出することができる:
【0108】
【数5】
ここで:
・Xは、シングルチャネル画像スライスとその行を持つサンプル行列である。
【数6】
は、平均サンプル行ベクトルを有する行列であり、mはベクトル内の要素の数(例えば、BRDF特徴については24300)であり、pはサンプルの数(例えば、BRDFスライスの数)である。
【数7】
はVの共役転置であり、その列はサンプル・データ空間の主成分を表す。
【数8】
は特異値分解のための数学的に定義された項であり、その対角値は主成分の分散値を保持し、ここでkは所望の主成分の数である(例えば、BRDFの場合、特徴は5)。
・Uは、当技術分野で知られているSVDの行列である。
【0109】
行列
【数9】
を使用して、各スライス(又は対応する特徴ベクトル)
【数10】
をk次元特徴空間ベクトル
【数11】
上に射影することができる。ここで、
・Qの行は、最も高い固有値を有するk個の主成分である。
・Sは、元のスライスの平均値グレースケールバージョンである;
【数12】
の軸はデータベース内の仮想材料外観にわたって最も高い変動を有するBRDF特徴を表し、
【数13】
を検証する。
【0110】
図8は、反射のための2Dスライスとして視覚化された最初の5つのPCA基底ベクトルを示す。
【0111】
例では、構造特徴の基底ベクトルがデータベース内のすべての仮想材料外観の散乱係数表現にPCA分解を適用することによって、前工程で計算される。
【0112】
BRDF測定のために試験を行った。RGB測定値を考慮したBRDF測定値を表す90x90ピクセルイメージスライスをもたらす、1°の角度増加のθhとθdについて実施したところ、1スライスの24300フロート値に相当した。次元数を減少させた後、値の数は、反射の挙動の信頼できる表現を保持しながら5に減少され、したがって、類似性を識別するための比較を可能にした。
【0113】
また、テストは構造特徴に対する散乱変換のために、性能/記憶のトレードオフに関する最適なパラメータ構成が、特徴ベクトルとして26688のフロート係数からなることを示した。この数は次元数を減少させた後に、より高い次元の圧縮と比較して、過度の品質損失なしに、約30の値に減少した。
【0114】
第1の外観署名は、第1の仮想材料外観の構造、反射、及び色のうちの少なくとも1つを表す低減された数の値から計算することができる。前処理中に異なる特徴について計算された基底ベクトルを使用して、データベース内の仮想材料外観の外観署名の場合のように、値の数を減らすことができる。基底ベクトルは前もって計算されているので、第1の外観署名の次元の減少が効率的に実行される。
【0115】
以下は、この方法の実施例(100)についての議論である。仮想材料外観を含むデータベースが提供され、データベース内の各仮想材料外観は、構造、反射、及び色の特徴を定量化する値を含む外観署名に関連付けられる。
【0116】
図9を参照すると、前処理が実行されて、データベース内の外観署名の次元を縮小し、特徴に対する計算された基底ベクトルを記憶する。基底ベクトルの計算が開始され(110)、特徴を定量化する値がデータベースのすべての仮想材料外観について計算されていないことが検証される(120)。次に、特徴を定量化する値が、仮想材料外観の合成表現から計算される(130)。次に、これらの値は、例えば列ベクトル又は行ベクトルの形成でサンプル行列に加算される(140)。これは、サンプルマトリックスが全ての仮想材料外観(160)の値を含むまで繰り返される(150)。次に、基底ベクトル(180)を得るために、サンプル行列に対してPCA(170)が実行される。これは、構造及び反射特徴に対して実行される。
【0117】
基底ベクトルは、データベース内の仮想材料外観の外観署名の次元を低減するために使用される。次いで、基底ベクトルは、将来の使用のためにメモリに記憶され得る。
【0118】
ここで
図10を参照すると、データベース内で類似性検索を実行するときに外観署名に追加される重みの管理を容易にするために、1つ又は複数の規格化及び1つ又は複数の線形化係数が計算される。
【0119】
これらの因子の計算は1≦m、n≦Nを有する距離行列を定義することを含み、ここで、Nは、データベース内の材料の数である。正規化項は次のようになる:
【数14】
【0120】
正規化されたパラメータ空間における特徴に対する距離の分布は、別の特徴に対する正規化されたパラメータ空間における距離の分布と比較した場合、非線形性を示す。このため、線形化関数が決定される。
図10のプロットは、データベース内の仮想材料外観間の構造特徴の距離500の分布を示す。
【0121】
次に
図11を参照すると、BRDF距離500の分布に対する累積分布関数(CDF)510が
図11で計算されている。
図12では、累積分布関数がロジスティック分布520(CDFフィッティングと記す)関数をそれにフィッティングすることによって解析的に近似される。結果として得られる係数を使用して、パラメータ空間を線形化することができる。これにより、類似範囲で変化する重みを、類似検索を行う際の異なる特徴の値に対応付けることができる。
【0122】
ここで
図13を参照すると、基底ベクトル及び線形化/規格化項が決定された後、ユーザ又はアプリケーションは第1の仮想材料外観を入力(又は提供)し(310)、第1の仮想材料外観を表すデータは本方法を実行するシステムによって実行されるさらなる計算のために利用可能である。決定(320)は(例えば、プロセッサによって)実行され、入力された第1の仮想材料外観が第1の外観署名に関連付けられているかどうかを検証する。これは、当技術分野で知られているように実行される。第1の外観署名が識別されない場合、第1の仮想材料外観が作成される(330)。
【0123】
図14を参照して、外観署名(330)の作成例を説明する。外観署名(例えば、第1の外観署名)の作成は、反射(332)、構造(334)、及び色(336)の特徴ベクトルを計算/抽出することを含む。計算/抽出は、説明したように実行することができる。外観署名は、対応する規格化及び線形化係数が適用される、各抽出された特徴ベクトルの連結である。
【0124】
図15を参照して、反射のための特徴ベクトルを計算/抽出する例を説明する。反射特徴ベクトルの抽出は、入力として使用される視覚材料外観の表現を合成することを含む(3322)。BRDFの評価(例えば仮想測定)を含む測定(3324)は合成された表現からの反射値を測定するために、例えば、θh及びθdに対して1°の角度増加を行うことによって、BRDFのパラメータを検索するために実施される。BRDF評価に必要な入射光のパラメータは、空間的に均一な白色光をシミュレートする。結果として得られる値は、反射基底ベクトルに従って射影される(3326)。この結果、入力として使用される仮想材料外観の反射特徴の最も重要な特性を保持する値の数が減少した反射特徴ベクトル(3328)が生成される。反射特徴ベクトルのサイズは、5~20フロート値の間である。例では、より少ない値が結果の品質を著しく悪化させ、より多くの値が結果の品質を著しく改善しないので、5つのフロート値が反射特徴ベクトルの最適サイズであり得る。
【0125】
図16を参照して、構造特徴ベクトルの計算/抽出の一例を説明する。構造特徴ベクトルの抽出は、入力として使用される視覚材料外観の表現を合成することを含む(3342)。仮想測定値は、仮想上の表現から計算される。平面は、離散的なサンプルステップに離散化される。各サンプル位置において、反射された空間的に均一な入射中性光の半球積分が評価される(3344)。次に、散乱畳み込みネットワークに基づく特徴分析を実行して、計算されたスライスの構造的特徴を抽出する(3345)。例えば、Joan Bruna及びStephane Mallatによる論文「Invariant Scattering Convolution Networks」に基づく特徴分析を実行することができる。この技術は、配向及びサイズに依存しない構造的特徴の認識に関して信頼性があることが証明された。次に、結果として得られる値は、構造に対応する基底ベクトルに従って射影され(3346)、前工程中に計算される。この結果、入力として使用される仮想材料外観の構造特徴の最も重要な特性を保持する値の数が低減された構造特徴ベクトル(3348)が生成される。構造特徴ベクトルのサイズは例えば、30~60のフロート値であってもよい。
【0126】
図17を参照して、色特徴ベクトルの計算/抽出の一例を説明する。色特徴ベクトルの抽出は、入力として使用される仮想材料外観の合成表現に対して実行される(3362)。表現のための3つの成分CIELAB色を抽出することを含む測定(3364)が実行される。各成分の測定値の平均が計算され(3365)、その結果が色特徴ベクトルを形成する(3368)。
【0127】
図13に戻ると、第1の外観署名が作成された後、及び/又は第1の外観署名が識別された場合、ユーザは、データベースのクエリを調整するための重みを選択する(340)。重みは特徴、すなわち、反射(例えば、材料がどの程度光沢があるか)、構造(例えば、色又は通常の変化による構造パターン)、及び色(外観の全体的な色)の間の検索関心をスケーリングする。各特徴に対して1つずつの3つの重みを独立して変更することができる。各重みは、同じ範囲、例えば0~1で変化する。データベースは、第1の外観署名を使用して照会される(350)。第1の外観署名は、仮想材料外観間の類似性に値を与える類似性メトリックを使用して、データベース内の仮想材料外観に関連付けられた外観署名と比較される。次に、検索重みに従って第1の材料外観に最も類似する類似仮想材料外観のリスト(360)が返される。類似の仮想材料外観は(例えば、関連する外観署名に類似メトリックを適用することによって)類似メトリックが他の仮想材料外観よりも高い値をもたらす仮想外観である。データベース内の最も類似した仮想材料外観は類似性メトリックがデータベース内で比較されたすべての仮想材料外観(例えば、データベース内のすべての仮想材料外観)に対して最高値をもたらした仮想材料外観である。
【0128】
リスト内の類似材料外観の数は所定の数であってもよく、及び/又は類似性メトリックの値が所与の閾値を超える(例えば、0.5を超える、又は0.7を超える)仮想材料外観であってもよい。類似の仮想材料外観のリストは、仮想材料外観が例えばオブジェクト上にレンダリングされた画像を含むことができる。類似の仮想材料外観のリストは、1つの特徴のみに関する類似の仮想材料外観のサブリストをさらに含むことができる。類似の仮想材料外観のリストは、1つ又は複数のリストされた類似の仮想材料外観に関連付けられた特徴ベクトルの2D画像/スライス表現を返すことを含むことができる。リストは1つの類似の仮想材料外観のみから構成されてもよく、代替的に、複数の類似の仮想材料外観から構成されてもよい。リストは、レンダリングされた第1の仮想材料外観を有する画像を含むことができる。
【0129】
例では、リストが少なくとも、第1の仮想材料外観に最も類似する仮想材料外観を含むことができる。
図18は、本方法の結果を表示するように適合されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)のスクリーンショットである。この例では、入力として使用されるオレンジアルカンタラ仮想材料外観についてデータベース内でクエリが実行され、例えば、ユーザは製造される製品を設計しながら、データベース内でこの(第1の)オレンジアルカンタラ仮想材料外観1700を選択した。抽出されたBRDF特徴ベクトル(332)、構造特徴ベクトル(334)及び色特徴ベクトル(336)の各々に対する重みは、この例では同じである。
図18では、GUIの左側部分1710、1720、1730に示すように、抽出された特徴の各々について、最も類似した仮想材料外観がデータベースから検索される。GUIの右側部分1740は、等しい検索重みに従って、第1のものと同様のレンダリングされた仮想材料外観の表現を表示する。
【0130】
ここで、
図18を参照する。例では、建物の壁の実世界画像(例えば、写真)が提供される。写真はインターネットから取り出されてもよいし、携帯電話のような装置で撮られてもよい。ピクチャは構造及び色特徴の類似性検索のための入力(例えば、画像から抽出されたデータ)として使用される。次に、この方法に基づいて、データベース内の仮想材料外観の表現(例えば、それぞれの画像)が返される。次いで、仮想材料の外観を使用して、CAD被写体をテクスチャリングすることができる。したがって、ユーザは、本明細書で説明する方法を使用して、写真を使用して仮想材料外観カタログに問い合わせることができる。さらに、返された仮想材料外観は、検索された仮想材料外観の同じ特徴と入力として使用されるピクチャとの間の類似性に関する指示を含むことができる。この表示は、
図19に示すようなスターシステムであってもよい。