IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】半導体整流器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240625BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240625BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 C
H01L29/48 Z
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/86 301Z
H02M7/12 K
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019559523
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018043398
(87)【国際公開番号】W WO2019116868
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2017236708
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦司
(72)【発明者】
【氏名】柏木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森山 洋平
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】河本 充雄
【審判官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-143779(JP,A)
【文献】特開2016-134435(JP,A)
【文献】特開平1-51664(JP,A)
【文献】特開2012-231129(JP,A)
【文献】特開2009-182107(JP,A)
【文献】特開2008-198735(JP,A)
【文献】特開2010-103288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/338
H01L29/12
H01L29/78
H01L29/812
H01L29/861-872
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を有するトランジスタと、
アノード電極およびカソード電極を有するダイオードであって、前記アノード電極は前記ゲート電極に導通し、前記カソード電極は前記ソース電極に導通するダイオードと、を備え、
前記ダイオードの前記カソード電極が、接合層によって前記トランジスタの前記ソース電極に接合されており、
前記トランジスタと前記ダイオードとが積層されており、
前記ダイオードは、平面視において前記ソース電極よりも小さく、且つ平面視において前記ソース電極に内包されるように前記ソース電極上に配置されている、半導体整流器。
【請求項2】
前記トランジスタは、ノーマーリーオン型である、請求項1に記載の半導体整流器。
【請求項3】
前記アノード電極と前記ゲート電極との導通経路に介在する第1抵抗器を備える、請求項1または2に記載の半導体整流器。
【請求項4】
前記第1抵抗器は、前記トランジスタおよび前記ダイオードの少なくともいずれかと一体的に形成されている、請求項3に記載の半導体整流器。
【請求項5】
前記ダイオードに対して並列に接続されたコンデンサを備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項6】
前記コンデンサに対して直列に接続された第2抵抗器を備える、請求項5に記載の半導体整流器。
【請求項7】
前記第2抵抗器は、前記トランジスタおよび前記ダイオードの少なくともいずれかと一体的に形成されている、請求項6に記載の半導体整流器。
【請求項8】
前記トランジスタは、GaN半導体層またはSiC半導体層を有する、請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項9】
前記ダイオードは、Siショットキーバリアダイオードである、請求項1ないし8のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項10】
前記トランジスタの耐圧は、前記ダイオードの耐圧よりも高い、請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項11】
前記ダイオードの閾値電圧が、0.8V以下である、請求項1ないし10のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項12】
前記トランジスタの前記ドレイン電極および前記ソース電極間の静電容量Cds、前記ゲート電極および前記ソース電極間の静電容量Cgsおよび前記ダイオードの静電容量Cdiが、
2Cds≦Cdi+Cgsの関係を満たす、請求項1ないし11のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項13】
前記トランジスタの前記ドレイン電極および前記ソース電極間の静電容量Cds、前記ゲート電極および前記ソース電極間の静電容量Cgs、前記ダイオードの静電容量Cdiおよび前記コンデンサの静電容量Cxdが、
2Cds≦Cdi+Cgs+Cxdの関係を満たす、請求項5ないし7のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項14】
前記トランジスタは、GaN半導体層を有し、且つ前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記ゲート電極が、同じ側に位置する、請求項1ないし13のいずれかに記載の半導体整流器。
【請求項15】
前記トランジスタは、SiC半導体層を有し、且つ前記ソース電極および前記ゲート電極と前記ドレイン電極とが、互いに反対側に位置する、請求項1ないし13のいずれかに記載の半導体整流器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体整流器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体整流器の一形態であるショットキーバリアダイオードは、Si半導体層と、ショットキー電極およびオーミック電極を有する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一側面によって提供される半導体整流器は、トランジスタおよびダイオードを備える。前記トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を有する。前記ダイオードは、アノード電極およびカソード電極を有する。前記アノード電極は前記ゲート電極に導通し、前記カソード電極は前記ソース電極に導通する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器を示す回路図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器の電圧電流特性を示すグラフである。
図6】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器の逆回復特性を示すグラフである。
図7】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器の第1変形例を示す平面図である。
図8】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器の第2変形例を示す平面図である。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器の第3変形例を示す平面図である。
図11】本開示の第2実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図12】本開示の第2実施形態に係る半導体整流器を示す回路図である。
図13】本開示の第3実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図14】本開示の第3実施形態に係る半導体整流器を示す回路図である。
図15】本開示の第3実施形態に係る半導体整流器の第1変形例を示す平面図である。
図16】本開示の第3実施形態に係る半導体整流器の第1変形例を示す回路図である。
図17】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器の逆回復特性を示すグラフである。
図18】本開示の第1実施形態に係る半導体整流器のダイオード電圧を示すグラフである。
図19】本開示の第3実施形態に係る半導体整流器の逆回復特性を示すグラフである。
図20】本開示の第3実施形態に係る半導体整流器のダイオード電圧を示すグラフである。
図21】本開示の第4実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図22図21のXXII-XXII線に沿う断面図である。
図23】本開示の第4実施形態に係る半導体整流器の第1変形例を示す平面図である。
図24】本開示の第4実施形態に係る半導体整流器の第2変形例を示す平面図である。
図25図24のXXV-XXV線に沿う断面図である。
図26】本開示の第5実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図27】本開示の第5実施形態に係る半導体整流器を示す回路図である。
図28】本開示の第6実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図29図28のXXIX-XXIX線に沿う断面図である。
図30】本開示の第7実施形態に係る半導体整流器を示す平面図である。
図31図30のXXXI-XXXI線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0006】
<第1実施形態>
図1図4は、本開示の第1実施形態に係る半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A1は、トランジスタ1、ダイオード2、リードフレーム3および封止樹脂6を備えている。
【0007】
図1は、半導体整流器A1を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、半導体整流器A1を示す回路図である。
【0008】
トランジスタ1は、たとえばノーマリーオン型(デプレッション型)のトランジスタであり、素子本体10、ソース電極11S、ドレイン電極11D及びゲート電極11Gを有する。
【0009】
素子本体10は、半導体層を含むものであり、本実施形態においては、GaN半導体層を含む。この場合、トランジスタ1は、たとえばGaN-MOSFETやGaN-HEMT等である。ソース電極11S、ドレイン電極11D及びゲート電極11Gは、素子本体10の上面に設けられており、すべてが素子本体10の同じ側に位置する。
【0010】
ソース電極11S、ドレイン電極11D及びゲート電極11Gは、金属からなり、たとえばめっきによって形成される。ワイヤのボンディングやはんだ接合を好適に行う観点から、ソース電極11S、ドレイン電極11Dおよびゲート電極11Gの表層は、Auによって構成されていることが好ましい。また、ソース電極11S、ドレイン電極11Dおよびゲート電極11Gのうち表層に覆われる部分は、たとえばCu、Ni等の金属からなる。
【0011】
ダイオード2は、素子本体20、アノード電極21A及びカソード電極21Cを有する。ダイオード2は、たとえば素子本体20がSi半導体層を含む、Siショットキーバリアダイオードである。ダイオード2の閾値電圧は、好ましくは、0.8V以下である。
【0012】
リードフレーム3は、トランジスタ1およびダイオード2を支持しており、トランジスタ1およびダイオード2への導通経路を構成している。本実施形態においては、リードフレーム3は、アイランド部30、アノード端子31Aおよびカソード端子31Cを有している。また、リードフレーム3には、金属層32および絶縁層33が設けられている。
【0013】
リードフレーム3の材質は特に限定されず、たとえば、Cu,Ni等の金属からなる金属板材料を用いて打ち抜き加工や折り曲げ加工等を施すことによって形成される。
【0014】
アイランド部30は、トランジスタ1およびダイオード2を支持する部分である。図示された例においては、アイランド部30は、x方向およびy方向に沿う四辺を有する平面視矩形状であるが、アイランド部30の形状は特に限定されない。
【0015】
また、本実施形態においては、アイランド部30に金属層32が設けられている。金属層32は、たとえばAl,Cu,Ni等から適宜選択される金属または合金からなる層である。図示された例においては、金属層32は、絶縁層33を介してアイランド部30に固定されている。絶縁層33は、絶縁材料からなり、たとえば樹脂やセラミックスが適宜採用される。また、金属層32のz方向視寸法は、アイランド部30のz方向視寸法よりも小さい。金属層32の形成手法は特に限定されず、メッキ等による手法によって絶縁層33上に形成してもよいし、予め形成しておいた金属層32を絶縁層33によってアイランド部30に接合してもよい。
【0016】
図示された例においては、トランジスタ1が、接合層19によって金属層32に接合されている。また、ダイオード2のカソード電極21Cが、接合層29によって金属層32に接合されている。本例の場合、接合層19は、絶縁性であってもよいし、導電性であってもよい。接合層29は、導電性材料からなり、たとえばはんだである。これにより、ダイオード2のカソード電極21Cは、金属層32に導通している。
【0017】
アノード端子31Aは、半導体整流器A1の端子となるものであり、アノード接続される端子である。アノード端子31Aは、アイランド部30から離間している。
【0018】
カソード端子31Cは、半導体整流器A1の端子となるものであり、カソード接続される端子である。本例においては、カソード端子31Cは、アイランド部30に繋がっている。
【0019】
図示された例においては、半導体整流器A1は、複数のアノードワイヤ4A、ゲートワイヤ4G、複数のソースワイヤ4S及び複数のドレインワイヤ4Dを有する。複数のアノードワイヤ4Aは、アノード端子31Aとダイオード2のアノード電極21Aとに接続されている。ゲートワイヤ4Gは、ダイオード2のアノード電極21Aとトランジスタ1のゲート電極11Gとに接続されている。複数のソースワイヤ4Sは、金属層32とトランジスタ1のソース電極11Sとに接続されている。複数のドレインワイヤ4Dは、トランジスタ1のドレイン電極11Dとアイランド部30とに接続されている。
【0020】
複数のアノードワイヤ4A、ゲートワイヤ4G、複数のソースワイヤ4S及び複数のドレインワイヤ4Dは、たとえばAu、アルミ、Cu等の金属からなる。以下においては、複数のアノードワイヤ4A、ゲートワイヤ4G、複数のソースワイヤ4S及び複数のドレインワイヤ4Dが、Auからなる場合を例に説明するが、それぞれの本数はそれぞれの材質によって増減しうる。
【0021】
以上に述べた構成により、半導体整流器A1は、図4に示す回路を構成している。ダイオード2のアノード電極21Aは、ゲートワイヤ4Gを介してゲート電極11Gに導通している。ダイオード2のカソード電極21Cは、金属層32および複数のソースワイヤ4Sを介してソース電極11Sに導通している。
【0022】
封止樹脂6は、トランジスタ1、ダイオード2、リードフレーム3の一部、複数のアノードワイヤ4A、ゲートワイヤ4G、複数のソースワイヤ4S及び複数のドレインワイヤ4Dを保護するためのものであり、たとえばエポキシ樹脂等の絶縁樹脂からなる。図示された例においては、封止樹脂6は、アイランド部30の裏面を露出させている。また、アノード端子31Aおよびカソード端子31Cは、封止樹脂6の側面から同じ方向に突出している。
【0023】
次に、半導体整流器A1の作用について説明する。
【0024】
本実施形態によれば、トランジスタ1を用いることにより、たとえば単体のダイオードからなる半導体整流器と比較して耐圧を向上させることが可能である。また、図5は、アノード端子31Aおよびカソード端子31C間に印加される電圧と電流の関係を示しており、半導体整流器A1との比較例として、Si-FRD(ファストリカバリダイオード)単体からなる半導体整流器とSiC-SBD(ショットキーバリアキーダイオード)単体からなる半導体整流器との電圧および電流の関係を示している。同図に示すように、半導体整流器A1に所定の電流が流れ始める閾値電圧は、Si-FRD単体からなる半導体整流器およびSiC-SBD単体からなる半導体整流器のいずれの閾値電圧よりも低い値となっている。また、図6は、半導体整流器A1と、比較例としてのSi-FRD単体からなる半導体整流器およびSiC-SBD単体からなる半導体整流器との、逆回復特性を示している。オン状態からオフ状態に切り替えられた際に、逆方向に電流が流れる時間である逆回復時間に着目すると、半導体整流器A1の逆回復時間は、SiC-SBD単体からなる半導体整流器の逆回復時間と同程度であり、Si-FRD単体からなる半導体整流器の逆回復時間よりも顕著に短い。以上より、半導体整流器A1によれば、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。
【0025】
図7図31は、本開示の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0026】
<第1実施形態 第1変形例>
図7は、半導体整流器A1の第1変形例を示している。本変形例の半導体整流器A11は、リードフレーム3の構成が、上述した半導体整流器A1と異なっている。本変形例においては、アイランド部30には、上述した金属層32および絶縁層33は、形成されていない。トランジスタ1の素子本体10が接合層19によってアイランド部30に接合されており、ダイオード2のカソード電極21Cが接合層29によってアイランド部30に接合されている。これにより、アイランド部30は、カソード電極21Cと同電位となる。これに対応して、カソード端子31Cは、アイランド部30から離間している。複数のドレインワイヤ4Dは、トランジスタ1のドレイン電極11Dとカソード端子31Cとに接続されている。アイランド部30は、封止樹脂6から一部が露出していてもよいし、封止樹脂6によって全てが覆われていてもよい。
【0027】
このような変形例によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、金属層32および絶縁層33が不要であることにより、コスト低減を図ることができる。
【0028】
<第1実施形態 第2変形例>
図8および図9は、半導体整流器A1の第2変形例を示している。本変形例の半導体整流器A12は、ダイオード2の実装構造が、上述した例と異なっている。本変形例においては、ダイオード2のカソード電極21Cが、接合層29によってトランジスタ1のソース電極11Sに接合されている。これにより、トランジスタ1とダイオード2とが積層された実装構造となっている。
【0029】
このような変形例によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、ダイオード2のカソード電極21Cとトランジスタ1のソース電極11Sとの導通経路が、接合層29のみによって構成され、上述した例におけるソースワイヤ4Sを含まない。これにより、ソース電極11Sに至る導通経路の低抵抗化を図ることができる。また、z方向視における半導体整流器A12の小型化に有利である。
【0030】
<第1実施形態 第3変形例>
図10は、半導体整流器A1の第3変形例を示している。本変形例の半導体整流器A13は、トランジスタ1およびダイオード2の実装構造が、半導体整流器A12と類似しており、リードフレーム3の構成が半導体整流器A12と異なっている。本変形例においては、アイランド部30とカソード端子31Cとが一体的に形成されている。複数のドレインワイヤ4Dは、ドレイン電極11Dとアイランド部30とに接続されている。
【0031】
このような変形例によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、複数のドレインワイヤ4Dの長さを、半導体整流器A12における複数のドレインワイヤ4Dの長さよりも短くすることが可能である。これにより、ドレイン電極11Dとカソード端子31Cとの導通経路の低抵抗化を図ることができる。
【0032】
<第2実施形態>
図11および図12は、本開示の第2実施形態に係る半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A2は、トランジスタ1およびダイオード2に加えて、第1抵抗器51を備えている。第1抵抗器51は、アノード端子31Aとトランジスタ1のゲート電極11Gとの導通経路に介在している。なお、第1抵抗器51は、トランジスタ1およびダイオード2のいずれかと一体的に形成されていてもよい。
【0033】
図示された例においては、金属層32が、第1領域321、第2領域322および第3領域323の3つの領域に分割されている。第1領域321には、トランジスタ1およびダイオード2が接合されている。第2領域322および第3領域323には、第1抵抗器51の電極がそれぞれ接合されている。また、ダイオード2のアノード電極21Aと第2領域322には、ワイヤ41が接続されている。ゲートワイヤ4Gは、第3領域323とゲート電極11Gとに接続されている。
【0034】
このような実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、第1抵抗器51を備えることにより、第1抵抗器51の抵抗値を種々に設定すれば、半導体整流器A2の動作特性を様々に設定することができる。
【0035】
<第3実施形態>
図13および図14は、本開示の第3実施形態に係る半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A3は、トランジスタ1およびダイオード2に加えて、コンデンサ55を備えている。コンデンサ55は、ダイオード2に対して並列に接続されている。なおコンデンサ55は、トランジスタ1およびダイオード2のいずれかと一体的に形成されていてもよい。
【0036】
図示された例においては、金属層32が、第1領域321および第2領域322を有する。第1領域321には、トランジスタ1、ダイオード2およびコンデンサ55の一方の電極が接合されている。第2領域322には、コンデンサ55の他方の電極が接合されている。アノード端子31Aと第2領域322には、複数のワイヤ41が接続されている。
【0037】
このような実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、後述するように、コンデンサ55を備えることにより、半導体整流器A3の特性を高めることができる。
【0038】
<第3実施形態 第1変形例>
図15および図16は、本開示の第3実施形態に係る半導体整流器の第1変形例を示している。本変形例の半導体整流器A31は、第2抵抗器52を備えている。第2抵抗器52は、コンデンサ55に対して直列に接続されており、コンデンサ55とソース電極11Sとの導通経路に含まれている。なお、第2抵抗器52は、トランジスタ1およびダイオード2のいずれかと一体的に形成されていてもよい。
【0039】
図示された例においては、金属層32は、第1領域321、第2領域322、第3領域323および第4領域324を有する。第1領域321には、トランジスタ1およびダイオード2が接合されている。第2領域322には、コンデンサ55の一方の電極が接合されている。第3領域323には、コンデンサ55の他方の電極と第2抵抗器52の一方の電極が接合されている。第4領域324には、第2抵抗器52の他方の電極が接合されている。
【0040】
アノード端子31Aと第2領域322には、複数のワイヤ41が接続されている。また、第4領域324と第1領域321には、複数のワイヤ42が接続されている。
【0041】
このような実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。
【0042】
半導体整流器A3および半導体整流器A31の特性を説明するに先立ち、上述した半導体整流器A1の特性について、図17および図18を参照して説明する。ダイオード2には、素子本体20、アノード電極21Aおよびカソード電極21Cの材質やこれらの接合形態に応じて、静電容量が内在する。このダイオード2の静電容量Cdiを、300pF、840pF、1200pFと設定した場合の、逆回復特性を示すグラフが図17であり、ダイオード2の内部における電圧を示すグラフが図18である。図17および図18は、シミュレーション結果である。図17に示すように、静電容量Cdiが小さいほど、逆回復時間を短縮することができる。一方、図18に示すように、静電容量Cdiが小さいほど、ダイオード2の電圧が大きいという背反事項がある。ダイオード2に使用されるダイオードは、耐圧が低いほど立ち上がり電圧が小さい傾向がある。この立ち上がり電圧が、半導体整流器A1の立ち上がり電圧を決定する主な要因である。このため、半導体整流器A1において立ち上がり電圧を低く抑えながら高耐圧を実現するには、ダイオード2に発生する電圧を低く抑えつつ、トランジスタ1の分圧を高めることが必要である。トランジスタ1の分圧を高めるためには、トランジスタ1のドレイン電極11Dおよびソース電極11S間の静電容量Cds、ゲート電極11Gおよびソース電極11S間の静電容量Cgsおよびダイオード2の静電容量Cdiが、2Cds≦Cdi+Cgsの関係を満たすことが好ましい。
【0043】
次に、図19および図20を参照して、半導体整流器A1、半導体整流器A3および半導体整流器A31の特性について説明する。図19は、逆回復特性を示し、図20は、ダイオード2の電圧を示す。これらの図に示すグラフは、半導体整流器A1、半導体整流器A3および半導体整流器A31それぞれの静電容量Cdiが300pFであり、半導体整流器A3および半導体整流器A31のコンデンサ55の静電容量Cxdが470pF、半導体整流器A31の第2抵抗器52の抵抗値R2が100Ωである条件でのシミュレーション結果である。
【0044】
図19に示すように、半導体整流器A3の逆回復時間は、半導体整流器A1の逆回復時間よりも明らかに長い。これは、コンデンサ55のみを付加すると、逆回復時間の延長を生じることを意味する。一方、半導体整流器A31の逆回復時間は、半導体整流器A1の逆回復時間とほぼ同等であり、半導体整流器A3の逆回復時間よりも明らかに短い。これは、コンデンサ55のみではなく、コンデンサ55と直列に接続される第2抵抗器52をさらに付加することによって、逆回復時間の短縮を図ることができることを意味する。
【0045】
また、図20に示すように、半導体整流器A1のダイオード2の電圧が時間とともに顕著に増加するのに対し、半導体整流器A3の電圧は、明らかに低い。また、半導体整流器A31の電圧は、半導体整流器A3の電圧よりもさらに低い。これは、コンデンサ55を付加することにより、ダイオード2の分圧を効果的に低減させることができることを意味する。このような観点から、トランジスタ1のドレイン電極11Dおよびソース電極11S間の静電容量Cds、ゲート電極11Gおよびソース電極11S間の静電容量Cgs、ダイオード2の静電容量Cdiおよびコンデンサ55の静電容量Cxdが、2Cds≦Cdi+Cgs+Cxdの関係を満たすことが好ましい。
【0046】
<第4実施形態>
図21および図22は、本開示の第4実施形態に係る半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A4は、トランジスタ1の構成が、上述した実施形態と異なっている。本実施形態のトランジスタ1は、素子本体10がSiC半導体層を含んでおり、いわゆる縦型のトランジスタである。ソース電極11Sおよびゲート電極11Gは、素子本体10の上面に位置しており、ドレイン電極11Dは、ソース電極11Sおよびゲート電極11Gとは反対側の下面に位置している。トランジスタ1の1Dは、接合層19によって金属層32に接合されている。接合層19は、導電性の材料からなり、たとえばはんだである。
【0047】
アイランド部30とカソード端子31Cとは、一体的に形成されている。複数のワイヤ41は、金属層32とアイランド部30とに接続されている。これにより、トランジスタ1のドレイン電極11Dとカソード端子31Cとは、接合層19、金属層32、複数のワイヤ41およびアイランド部30を介して導通している。
【0048】
このような実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、半導体整流器A4は、z方向視における小型化を図るのに適している。
【0049】
<第4実施形態 第1変形例>
図23は、半導体整流器A4の第1変形例を示している。本変形例の半導体整流器A41においては、金属層32および絶縁層33の構成が、上述した半導体整流器A4と異なっている。本変形例においては、金属層32および絶縁層33は、z方向視においてダイオード2と重なっており、且つトランジスタ1とは重なっていない。
【0050】
ダイオード2のカソード電極21Cは、接合層29によって金属層32に導通接合されている。複数のソースワイヤ4Sは、金属層32とトランジスタ1のソース電極11Sとに接続されている。トランジスタ1のドレイン電極11Dは、接合層19によってアイランド部30に導通接合されている。
【0051】
このような実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、ドレイン電極11Dとカソード端子31Cとは、接合層19およびアイランド部30のみを介して導通している。これにより、ドレイン電極11Dとカソード端子31Cとの導通経路の低抵抗化を図ることができる。
【0052】
<第4実施形態 第2変形例>
図24および図25は、半導体整流器A4の第2変形例を示している。本変形例の半導体整流器A42は、トランジスタ1とダイオード2とが積層された実装構造となっている。すなわち、ダイオード2のカソード電極21Cが、接合層29によってトランジスタ1のソース電極11Sに導通接合されている。また、トランジスタ1のドレイン電極11Dは、接合層19によってアイランド部30に導通接合されている。
【0053】
このような実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、カソード電極21Cとソース電極11Sとの間の導通経路の低抵抗化、およびドレイン電極11Dとカソード端子31Cとの間の導通経路の低抵抗化、を図ることができる。
【0054】
<第5実施形態>
図26および図27は、本開示の第5実施形態に係る半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A5は、トランジスタ1およびダイオード2を2つずつ備えている。
【0055】
2つのトランジスタ1は、いずれも接合層19によってアイランド部30に接合されている。各ダイオード2のカソード電極21Cは、接合層29によって各トランジスタ1のソース電極11Sに導通接合されている。
【0056】
リードフレーム3は、カソード端子31Cと2つのアノード端子31Aとを有している。カソード端子31Cは、アイランド部30を兼ねている。2つのアノード端子31Aは、カソード端子31C(アイランド部30)に対してy方向に離間している。各アノード端子31Aと各ダイオード2のアノード電極21Aとには、複数のアノードワイヤ4Aがそれぞれ接続されている。各トランジスタ1のドレイン電極11Dとアイランド部30とには、複数のドレインワイヤ4Dがそれぞれ接続されている。すなわち、2つのトランジスタ1のドレイン電極11D同士は、互いに導通している。
【0057】
また、図示された例においては、トランジスタ1、ダイオード2、アノード端子31A、複数のアノードワイヤ4A、ゲートワイヤ4Gおよび複数のドレインワイヤ4Dの配置が、半導体整流器A5のx方向中心を挟んで線対称の配置とされている。
【0058】
本実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、一方のアノード端子31Aおよびカソード端子31Cのみを使用する形態と、両方のアノード端子31Aおよびカソード端子31Cを使用する形態とを、使い分けることが可能である。これにより、回路に流すべき電流の大きさによる使い分けや、異なる系統の電流を制御する等の用途に、半導体整流器A5を用いることができる。
【0059】
<第6実施形態>
図28は、本開示の第6実施形態に基づく半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A6は、いわゆる面実装型の半導体整流器として構成されている。
【0060】
本実施形態においては、リードフレーム3は、アイランド部30を兼ねるカソード端子31Cとアノード端子31Aとを有している。アノード端子31Aおよびカソード端子31Cは、いずれもz方向視矩形状であり、y方向に互いに離間している。
【0061】
トランジスタ1は、アイランド部30(カソード端子31C)に実装されている。ダイオード2は、トランジスタ1に積層して実装されており、カソード電極21Cが接合層29によってソース電極11Sに導通接合されている。複数のドレインワイヤ4Dは、ドレイン電極11Dとカソード端子31Cとに接続されている。複数のアノードワイヤ4Aは、アノード端子31Aとアノード電極21Aとに接続されている。
【0062】
本実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、半導体整流器A6は、たとえばリフロー炉を用いた実装手法によって回路基板等(図示略)に実装することができる。
【0063】
<第7実施形態>
図30および図31は、本開示の第7実施形態に係る半導体整流器を示している。本実施形態の半導体整流器A7は、トランジスタ1とダイオード2とが、いわゆるモノリシック構造によって互いに一体的に形成されており、同一の半導体基板15を共有しているいる。半導体基板15は、たとえばSiからなる。半導体基板15の両側には、ダイオード2のアノード電極21Aおよびカソード電極21Cが形成されている。素子本体10は、半導体基板15上に積層されている。トランジスタ1、ダイオード2およびリードフレーム3の導通形態は、半導体整流器A1と同様である。
【0064】
本実施形態によっても、耐圧の向上、閾値電圧の低減及び逆回復時間の短縮を図ることができる。また、半導体整流器A1は、小型化に適している。
【0065】
本開示に係る半導体整流器は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係る半導体整流器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0066】
本開示は、以下の付記にかかる実施形態を含む。
[付記1]
ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を有するトランジスタと、
アノード電極およびカソード電極を有するダイオードであって、前記アノード電極は前記ゲート電極に導通し、前記カソード電極は前記ソース電極に導通するダイオードと、を備える、半導体整流器。
[付記2]
前記トランジスタは、ノーマーリーオン型である、付記1に記載の半導体整流器。
[付記3]
前記アノード電極と前記ゲート電極との導通経路に介在する第1抵抗器を備える、付記1または2に記載の半導体整流器。
[付記4]
前記第1抵抗器は、前記トランジスタおよび前記ダイオードの少なくともいずれかと一体的に形成されている、付記3に記載の半導体整流器。
[付記5]
前記ダイオードに対して並列に接続されたコンデンサを備える、付記1ないし4のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記6]
前記コンデンサに対して直列に接続された第2抵抗器を備える、付記5に記載の半導体整流器。
[付記7]
前記第2抵抗器は、前記トランジスタおよび前記ダイオードの少なくともいずれかと一体的に形成されている、付記6に記載の半導体整流器。
[付記8]
前記トランジスタは、GaN半導体層またはSiC半導体層を有する、付記1ないし7のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記9]
前記ダイオードは、Siショットキーバリアダイオードである、付記1ないし8のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記10]
前記トランジスタの耐圧は、前記ダイオードの耐圧よりも高い、付記1ないし9のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記11]
前記トランジスタと前記ダイオードとが、同一の半導体基板を共有している、付記1ないし10のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記12]
前記ダイオードの閾値電圧が、0.8V以下である、付記1ないし11のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記13]
前記トランジスタの前記ドレイン電極および前記ソース電極間の静電容量Cds、前記ゲート電極および前記ソース電極間の静電容量Cgsおよび前記ダイオードの静電容量Cdiが、
2Cds≦Cdi+Cgs
の関係を満たす、付記1ないし12のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記14]
前記トランジスタの前記ドレイン電極および前記ソース電極間の静電容量Cds、前記ゲート電極および前記ソース電極間の静電容量Cgs、前記ダイオードの静電容量Cdiおよび前記コンデンサの静電容量Cxdが、
2Cds≦Cdi+Cgs+Cxd
の関係を満たす、付記5ないし7のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記15]
前記トランジスタは、GaN半導体層を有し、且つ前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記ゲート電極が、同じ側に位置する、付記1ないし14のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記16]
前記トランジスタは、SiC半導体層を有し、且つ前記ソース電極および前記ゲート電極と前記ドレイン電極とが、互いに反対側に位置する、付記1ないし14のいずれかに記載の半導体整流器。
[付記17]
前記トランジスタの前記ソース電極に、前記トランジスタの前記カソード電極が導通接合されている、付記1ないし16のいずれかに記載の半導体整流器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31