(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240625BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240625BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240625BHJP
G03B 17/08 20210101ALI20240625BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240625BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G03B15/00 V
G03B17/02
G03B17/08
G03B30/00
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2020030338
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 章
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209514180(CN,U)
【文献】特開2019-060944(JP,A)
【文献】特開2009-244391(JP,A)
【文献】特開2006-154764(JP,A)
【文献】特開平11-174298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0011280(US,A1)
【文献】中国実用新案第207216111(CN,U)
【文献】特開平04-166905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 17/02 - 17/17
G03B 15/00 - 15/16
G03B 29/00 - 30/00
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを有するレンズユニットにおいて、
前記レンズ群は、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する第2のレンズとを有し、
前記レンズ群を構成するレンズは、光軸方向に対して垂直な断面内で前記鏡筒と周方向で点接触することにより、径方向で前記鏡筒の内面との間に隙間を形成し、
前記第1のレンズの外周面と前記鏡筒の内周面との間には前記鏡筒の物体側端部を封止するシール部材が介挿され、
像側から前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間のレンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するように前記
第2のレンズと前記鏡筒とにわたって接着媒体が
設けられることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記気体流通経路は、前記レンズ群を構成する各レンズと前記鏡筒の内面との間の
前記隙間によって形成される光軸方向に沿って連続的に延びる連通路であることを特徴とする請求項
1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記鏡筒と前記第2のレンズとの間の
前記隙間に前記接着媒体が充填されることを特徴とする請求項
1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記接着媒体は、前記鏡筒の内面と前記第2のレンズとの間に形成される
前記隙間を埋めるように物体側に面する前記第2のレンズの物体側外表面部位と前記鏡筒の内面に対向する前記第2のレンズの鏡筒側外表面部位とにわたって連続的に延在して前記第2のレンズの鏡筒側外表面部位と前記鏡筒の内面とを接着することを特徴とする請求項
3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載のレンズユニットと、該レンズユニットを通じて集光される光を受光して電気信号に変換するイメージセンサとを備え、前記接着媒体は、前記イメージセンサから生じる水蒸気が前記レンズ間空間内へと侵入しないように前記気体流通経路を遮断することを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成し得るレンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特に車載カメラ用のレンズユニットでは、少なくとも一部が車外に設置される場合、防水および防塵のため、
図5に示されるように、鏡筒102の内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ100と鏡筒102との間にOリング104が介挿され、鏡筒102の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、例えば、第1のレンズ100の外周側面100aに、該レンズ100の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部100bが設けられ、この縮径部100bにOリング104が装着されて、第1のレンズ100の外周側面100aと鏡筒102の内周面102aとの間でOリング104が径方向で圧縮されることにより、鏡筒102の物体側端部が封止された状態となっている。
【0004】
さらに、鏡筒102は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(
図7において上端部)のカシメ部123が径方向内側にカシメられることにより、第1のレンズ100をこのカシメ部123で鏡筒102の物体側端部に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようにOリング104によって防水対策を行なっても、湿気(水蒸気)は様々な経路を通じてレンズユニット内に侵入し得る。そのため、外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなると、レンズユニット内の水蒸気が凝縮してレンズ表面に結露が生じる。特に、外部との温度差の影響が最も大きい第1のレンズ100とこれに隣接する第2のレンズ101との間のレンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が生じ易い。
【0007】
外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなる要因としては、外気が冷たい冬期にレンズユニット内の温度が上昇すること、例えばレンズユニットを通じて集光される光を受光して電気信号に変換するための常時通電されたイメージセンサ(撮像素子)から伝わる熱によりレンズユニット内の温度が上昇すること、あるいは、前記イメージセンサや周囲環境(例えば車両のエンジン)からの熱によりレンズユニット内の温度が高い状態で第1のレンズ100の表面100dが外気や雨等に晒されたりするなどして第1のレンズ100が冷却されることなどが挙げられる。
【0008】
また、レンズユニット内への水蒸気の侵入を許容する経路としては、例えば、鏡筒102のカシメ部123と第1のレンズ100との間の隙間からOリング104の周囲の一部並びに第1のレンズ100と鏡筒102および/または第2のレンズ101との間の隙間を通じてレンズ間空間S1等へと至る経路、あるいは、鏡筒102を形成する透湿性の樹脂を介しての経路などを挙げることができる。さらに、レンズユニットの像側に配置されたイメージセンサ(撮像素子)は動作時に100度前後に上昇するが、その際、イメージセンサが搭載された基板に含まれる水分が水蒸気化してレンズ間空間S1に到達する経路もある。
【0009】
いずれにしても、このような経路を通じて水蒸気がレンズユニット内に侵入し、前述したような要因により外気とレンズユニット内との間で温度差が生じると、レンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が起こり、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)。したがって、レンズユニットの気密性を更に一層確保して、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑制することが求められる。
【0010】
しかしながら、特に、レンズ群Lを構成するレンズが、光軸方向に対して垂直な断面内で鏡筒102と周方向で点接触する(例えば、光軸方向に対して垂直な断面において、鏡筒102の内周面が多角形を成し且つレンズが円形を成す)ことにより、径方向で鏡筒102の内面との間に隙間を形成している場合、したがって、光軸方向に沿って連続的に延びる連通路を形成している場合には、Oリング104周辺の経路を含むその他の水蒸気侵入経路を遮断したとしても、イメージセンサからの水蒸気が前記隙間(連通路)を通じて像側から物体側の内側収容空間S1内へと侵入し得る。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、像側からの水蒸気が最も物体側に位置されるレンズとこれに隣接するレンズとの間のレンズ間空間内へと侵入することを防止できるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを有するレンズユニットにおいて、
前記レンズ群は、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する第2のレンズとを有し、
像側から前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間のレンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するように前記レンズ群を構成する少なくとも1つのレンズと前記鏡筒との間の隙間に接着媒体が充填されることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、接着媒体による気体流通経路の遮断により、像側からの水蒸気、特にレンズユニットを通じて集光される光を像側で受光して電気信号に変換するイメージセンサの基板で生じて内側収容空間内に取り込まれた水蒸気が、レンズ間空間内へと侵入して第1のレンズの裏面に結露を生じさせるといった事態を回避できる。したがって、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)といった事態を回避できる。
【0014】
また、このような接着媒体による遮断効果は、レンズ群を構成するレンズが、光軸方向に対して垂直な断面内で鏡筒と周方向で点接触することにより、径方向で鏡筒の内面との間に隙間を形成するレンズ組み込み形態において特に有益である。このようなレンズ組み込み形態では、気体流通経路が、レンズ群を構成する各レンズと鏡筒の内面との間の各隙間によって形成される光軸方向に沿って連続的に延びる連通路を形成することから、像側からの水蒸気がレンズ間空間内へと侵入し易く、したがって、そのような連通路を接着媒体の隙間内充填により遮断することにより、レンズ間空間内への水蒸気の侵入を防止して、第1のレンズの裏面に結露を生じさせるといった事態を効果的に回避できる。
【0015】
また、このような接着媒体による隙間充填は、レンズ間空間に最も近い気体流通経路中の部位、すなわち、鏡筒と第2のレンズとの間の隙間で成されることが好ましい。これにより、レンズ間空間内への水蒸気の侵入を効果的に防止できる。また、この場合、接着媒体は、鏡筒の内面と第2のレンズとの間に形成される隙間を埋めるように物体側に面する第2のレンズの物体側外表面部位と鏡筒の内面に対向する第2のレンズの鏡筒側外表面部位とにわたって連続的に延在して第2のレンズの鏡筒側外表面部位と鏡筒の内面とを接着することが好ましい。これにより、鏡筒と第2のレンズとの間の隙間に接着媒体を確実に充填して気体流通経路を確実に遮断できる。
【0016】
また、本発明に係るカメラモジュールは、上記構成のレンズユニットと、該レンズユニットを通じて集光される光を受光して電気信号に変換するイメージセンサとを備え、前記接着媒体は、イメージセンサから生じる水蒸気がレンズ間空間内へと侵入しないように気体流通経路を遮断することを特徴とする。
このような構成によれば、前述のレンズユニットの作用効果をカメラモジュールで得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、像側から第1のレンズと第2のレンズとの間のレンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するようにレンズ群を構成する少なくとも1つのレンズと鏡筒との間の隙間に接着媒体が充填されるため、像側からの水蒸気がレンズ間空間内へと侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略半断面図である。
【
図2】
図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
【
図3】(a)は、接着媒体塗布前における第2のレンズが位置される部位での光軸方向と直交する断面であり、(b)は、接着媒体塗布後における第2のレンズが位置される部位での光軸方向と直交する断面であり、(c)は、レンズユニットの光軸方向に沿う概略半断面図である。
【
図4】各レンズに適用できる接着媒体の隙間内充填の概念図であり、(a)は、接着媒体塗布前における各レンズが位置される部位での光軸方向と直交する断面であり、(b)は、接着媒体塗布後における各レンズが位置される部位での光軸方向と直交する断面であり、(c)は、レンズユニットの光軸方向に沿う模式図である。
【
図5】従来のレンズユニットの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、前述した
図5を含む全ての図においてレンズについてはハッチングを省略している。
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の段付きの内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16および第5のレンズ17から成る5つのレンズと、2つの絞り部材22a,22bとを備えている。2つの絞り部材22a,22bのうちの物体側から1番目の絞り部材22aは、第2のレンズ14と第3のレンズ15との間に配置されている。物体側から2番目の絞り部材22bは、第3のレンズ15と第4のレンズ16との間に配置されている。絞り部材22a,22bは透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0020】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側に凸面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,15,16,17は樹脂レンズであるが、これに限定されない。
【0021】
本実施の形態を含む本発明は、接着媒体によって気体流通経路を遮断する(後述する)ことを特徴としており、レンズの数、レンズおよび鏡筒の素材等については用途等に応じて任意に設定できる。また、本実施の形態において、像側に位置される2つの第4および第5のレンズ16,17は貼り合わせレンズであるが、そうである必要はない。なお、これらのレンズ13,14,15,16,17の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0022】
また、本実施の形態において、最も物体側に位置される第1のレンズ13と鏡筒12との間にはシール部材としてのOリング26が介挿され、鏡筒12の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1のレンズ13の外周面13dに、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13eが設けられ、この縮径部13eにOリング26が装着されて、第1のレンズ13の外周面13dと鏡筒12の内周面12aとの間でOリング26が径方向で圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部が封止された状態となっている。なお、第1のレンズ13と鏡筒12との間に介挿されるシール部材は、Oリングに限定されず、第1のレンズ13と鏡筒12との間をシールできる環状体であればどのような形態であっても構わない。
【0023】
鏡筒12の内側には物体側において円筒状の内壁12bが設けられ、この内壁12bと外壁12cとの間には溝18が形成されており、溝18の中には環状体27が設けられ、この環状体27にOリング26が密接している。内壁12bと外壁12aの間に溝18を形成している理由は、溝がなく内壁12bと外壁12aとが一体化している場合には壁厚が厚くなるため、樹脂の鏡筒12を成形・冷却する際に大きくヒケが発生し寸法精度が狂うことを抑制するためである。環状体27は比較的柔らかい弾性を有する物質から構成され、例えばテフロン(登録商標)が用いられる。環状体27はOリング26を光軸方向に支持する機能を有している。環状体27は鏡筒12とは別部材になっているため、Oリング26の大きさに応じて高さの異なる環状体27に変更が可能であり、Oリング26が適切な弾性力でシールすることを担保している。
【0024】
また、鏡筒12は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(
図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側に熱的にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13をこのカシメ部23により鏡筒12の物体側端部に光軸方向で固定する。この場合、安定したカシメを行なえるように、カシメ部23が圧接されるガラスレンズ13の部位は平面状に斜めにカットされた平坦部13bとして形成される。
【0025】
また、鏡筒12の像側の端部(
図1において下端部)には、第5のレンズ17よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17と絞り部材22a,22bとが光軸方向で保持固定されている。
【0026】
鏡筒12は、その内径が物体側から像面側に向かって段階的に小さくなっている。これに対応して、レンズ13,14,15,16,17は、物体側から像面側に向かうにつれて、外径が小さくなっている。基本的に、レンズ13,14,15,16,17それぞれの外径と、鏡筒12の各レンズ13,14,15,16,17が支持される部分それぞれの内径とは略等しくなっている。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
【0027】
また、
図2は、
図1のレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、カメラモジュール300は、フィルタ100が装着されたレンズユニット11を含んで構成されている。
【0028】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303および撮像素子としてのパッケージセンサ(イメージセンサ)304を備えている。
【0029】
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12dとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0030】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0031】
以上のような構成を成す本実施の形態に係るレンズユニット11およびカメラモジュール300では、一例として光軸方向に対して垂直な第2のレンズ14の位置での断面である
図3(a)(b)に明確に示されるように、レンズ群Lを構成する第1のレンズ13を除く各レンズ14,15,16,17が、光軸方向に対して垂直な断面内で鏡筒12と周方向で点接触する(本実施の形態では、光軸方向に対して垂直な断面において、鏡筒12の内周面が多角形を成し且つレンズ14,15,16,17が円形を成す)ことにより、径方向で鏡筒12の内面12eとの間に隙間Cを形成している(
図3の(a)参照)。なお、各レンズ14,15,16,17を光軸方向に対して垂直な断面内で鏡筒12と周方向で点接触させる方法は、鏡筒12の内面12eを多角形にする場合に限らず、鏡筒12の内周に突起状のリブを設けて点接触するようにしてもよい。ここで、点接触とは、光軸方向に対して垂直な断面内で点接触しているものをいい、光軸方向に直線状に接触しているものを含むものである。
【0032】
また、本実施の形態において、第1のレンズ13およびこの第1のレンズ13とその像側で隣接する第2のレンズ14は、光軸方向で互いに対向する対向面13a,14a同士が互いに好ましくは気密に当接しており、それにより、第1のレンズ13と第2のレンズ14との間に閉じられたレンズ間空間S1が形成されている。そして、この実施の形態では、対向面13a,14a同士の当接領域の径方向外側で、接着媒体40が第2のレンズ14の外表面に塗布されている。
【0033】
この場合、接着媒体40は、
図1、
図2および
図3の(c)に示されるように、像側からレンズ間空間S1内へと向かう気体流通経路(各レンズ14,15,16,17と鏡筒12の内面12eとの間の各隙間Cによって形成される光軸方向に沿って連続的に延びる連通路)を遮断するように第2のレンズ14と鏡筒12との間の隙間Cに充填される。具体的には、接着媒体40は、鏡筒12の内面12eと第2のレンズ14との間に形成される隙間Cを完全に埋めるように、物体側に面する第2のレンズ14の物体側外表面部位14iと鏡筒12の内面12eに対向する第2のレンズ14の鏡筒側外表面部位14hとにわたって連続的に延在して、第2のレンズ14の鏡筒側外表面部位14hと鏡筒12の内面12eとを接着している。したがって、パッケージセンサ304(
図2参照)の基板からの水蒸気がレンズ間空間S1に到達する経路を遮断することができ、その結果、第2のレンズ14の外表面の接着媒体40と第1のレンズ13の側面のOリング26とによってレンズ間空間S1の外部に対する密閉性が確保される。
【0034】
なお、本実施の形態で用いられる接着媒体40としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、オレフィン系の接着剤、粘着性を有する(例えばゲル状の)弾性材料などを挙げることができ、また、このような接着媒体40は、レンズ13,14の有効径の外側(光線が通らない光学面外部位)に設けられる。ここで、アクリル系の接着剤とはアクリル樹脂を50重量%以上含む接着剤、エポキシ系の接着剤とはエポキシ樹脂を50重量%以上含む接着剤、オレフィン系の接着剤とはオレフィン系樹脂(二重結合を1箇もった鎖状炭化水素)を50重量%以上含む接着剤をいうものとする。
【0035】
また、
図4の(c)に概念的な模式図として示されるように(
図4の(a)(b)は
図3の(a)(b)に対応する概略断面図)、像側からレンズ間空間S1内へと向かう気体流通経路Pを遮断するように接着媒体40が充填される隙間Cは、第2のレンズ14と鏡筒12との間の径方向の隙間Cだけでなく、これに代えてまたはこれに加えて、他のレンズ15,16,17と鏡筒12との間の径方向の隙間Cであってもよい。すなわち、第2~第5レンズ14,15,16,17のうちのいずれか1つあるいは任意の複数と鏡筒12との間の隙間Cが接着媒体40によって充填されて気体流通経路Pが遮断されればよい。このような接着媒体40による気体流通経路Pの遮断により、パッケージセンサ304から内側収容空間S内に取り込まれた水蒸気がレンズ間空間S1内に侵入して第1のレンズ13の裏面13cに結露を生じさせるといった事態を回避できる。
【0036】
なお、前述した実施の形態において、レンズ、鏡筒などの形状等は、前述した実施の形態に限定されない。また、前述した実施の形態は、レンズ13の表面結露を防止する手段を開示するが、このような結露防止手段に加えて従来から行われているレンズユニット内部に吸湿部材を設置する方法などを併用することを妨げるものではない。また、前述した全ての実施の形態において、第2のレンズ14が低透湿性(例えば、厚み0.025mmにおいて30g/m2・24h以下)の樹脂(例えば、COP(シクロオレフィンポリマー)などの材料またはCOPを母材とする樹脂)で構成されるのが好ましい。これにより、第1および第2のレンズ13,14間の気密性はもとより、第2のレンズ14自体の透湿によるレンズ間空間S1内への水蒸気の侵入も防止できる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。また、各実施形態において記載された技術的事項は、その効果を得るために他の実施形態に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13 第1のレンズ
14 第2のレンズ
14h 鏡筒側外表面部位
14i 物体側外表面部位
40 接着媒体
300 カメラモジュール
C 隙間
L レンズ群
O 光軸
P 気体流通経路
S 内側収容空間
S1 レンズ間空間