(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/22 20120101AFI20240625BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240625BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20240625BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20240625BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B24B37/22
B24B37/24 C
B24B37/013
B24B37/26
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2020035682
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】高木 正孝
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓介
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-44844(JP,A)
【文献】特開2011-73112(JP,A)
【文献】特開2003-163191(JP,A)
【文献】特開2018-051645(JP,A)
【文献】特開2007-105836(JP,A)
【文献】特開2018-051698(JP,A)
【文献】特開2004-327974(JP,A)
【文献】特開2014-104521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式成膜により形成された複数の涙形状気泡を有する樹脂で構成される、被研磨物を研磨するための研磨表面を有する第1の層と、
前記第1の層の研磨表面とは反対側の面に接着されている透明シート層と、
前記透明シート層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面に接着されている第2の層と、
を含む研磨パッドであって、
前記第1の層は第1貫通孔を有し、
前記第2の層は第2貫通孔を有し、
前記研磨パッドを研磨表面側から見た場合に、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、
前記第1の層は複数の涙形状気泡を含み、且つ
前記複数の涙形状気泡の少なくとも一部は、気泡同士が繋がって連通している連続気泡である、前記研磨パッド。
【請求項2】
前記研磨表面は溝を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記連続気泡は、前記第1貫通孔の側面から前記研磨表面及び/又は前記溝まで連通している、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記溝はエンボス溝である、請求項2又は3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記第1の層が不透明である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の前記第1貫通孔の断面形状が円形である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の前記第2貫通孔の断面形状が円形である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記第2の層の硬度が前記第1の層の硬度よりも大きい、請求項1~
7のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記第1の層のショアA硬度が5~70度である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記第1の層の圧縮率が1~60%である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項11】
前記第1の層の圧縮弾性率が50~100%である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項12】
複数の涙形状気泡を含み且つ前記複数の涙形状気泡の少なくとも一部が気泡同士が繋がって連通している連続気泡である第1の層と、透明シート層と、第2の層とを用意する工程、
前記第1の層に第1貫通孔を設ける工程、
前記第2の層に第2貫通孔を設ける工程、及び
前記第1の層と前記透明シート層と前記第2の層とを貼り合わせる工程、
を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関し、特に光透過領域を有する化学機械研磨(CMP)用研磨パッド及びその製造方法に関する。より具体的には、光学的に研磨終点が検出可能な終点検出用窓を備えた研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程(特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、又は、埋め込み配線形成)において化学機械研磨(以下、「CMP」という)法が利用されている。CMPは、半導体製造工程(特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等)に適用されている。CMPは、ウエハの被研磨面を研磨パッドの研磨面に押し付けた状態で、砥粒が分散されたスラリーを用いて研磨する技術である。CMPに用いる研磨パッドは、硬質研磨パッドと軟質研磨パッドに大別され、硬質研磨パッドはウレタンプレポリマーを含む硬化性組成物を金型に注型し硬化させる乾式成形法が、軟質研磨パッドはウレタン樹脂溶液を凝固浴で成膜し乾燥する湿式成膜法が主流である。近年、被研磨物の低欠陥性、段差解消性が高度に要求されるようになり、仕上げ研磨工程等に軟質研磨パッドを利用するケースが増えている。
【0003】
近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求され、研磨パッドに対してはディフェクトフリーとともに、ディッシングのない高平坦化性が要望されている。これらの要求を満たして高精度のCMPを行うためには、研磨終点の判定が必要となり、希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検知しなければならず、光学的測定による終点の検出が行われてきている。
【0004】
光学的測定は、研磨パッドに設けた測定用の窓を通して、ウエハの表面を観測する方法である。光学的測定のために研磨パッドに測定用の窓を設ける場合、研磨パッドは一般的に透明でないため、窓とする部分に研磨パッドとは材質の異なる透明材料を配置する必要がある。この透明材料は、研磨パッドの材料とは機械的物性が一般的に異なるため、研磨の不均一や研磨傷を発生させる原因となる危険が高い。また、研磨部分と窓部分の材質の違いにより、摩擦抵抗が違うため、研磨部分と窓部分のつなぎ目が歪み、隙間が生まれることで、スラリーが漏れてしまう、または、窓が剥離してしまうという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献1及び2には、貫通孔を備える研磨層と透明シート層と下層とを有する研磨パッドが提案されている。この研磨パッドは、研磨層の研磨表面とは反対側の面に透明シート層を設けることにより、スラリーが研磨層の貫通孔から下層に漏れることを防ぐことができる。
また、特許文献3には、スラリーの流動を促すため、研磨層に設けた貫通孔の下の下地層の底面を斜めにすることが記載されている。特許文献4には、貫通孔の下の下地層にも溝を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5001619号公報
【文献】特許第3913969号公報
【文献】特許第6209628号公報
【文献】特許第5908169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2の研磨パッドは、透明シート層を設けることによってスラリーが研磨層の貫通孔から下層への漏れを防ぐことはできるものの、研磨中に貫通孔内に研磨屑が溜まり、光透過率の低下を招いてしまうという問題がある。
特許文献3,4の研磨パッドは、特許文献1、2の研磨パッドに比べるとスラリーの流動性を促せるかもしれないが、貫通孔中に入り込んだ研磨屑を十分排出させることができず、研磨屑が徐々に堆積して生じる経時的な光透過率の低下を防ぐことが困難という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、貫通孔を有する第1の層とその下層の透明シート層とを含み且つ第1の層として連続気泡を有する層を用いることにより、研磨中に発生する研磨屑が貫通孔内に堆積しにくく、従って研磨屑による光透過領域の閉塞が起こりにくい研磨パッドが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を提供する。
【0009】
〔1〕 被研磨物を研磨するための研磨表面を有する第1の層と、
前記第1の層の研磨表面とは反対側の面に接着されている透明シート層と、
前記透明シート層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面に接着されている第2の層と、
を含む研磨パッドであって、
前記第1の層は第1貫通孔を有し、
前記第2の層は第2貫通孔を有し、
前記研磨パッドを研磨表面側から見た場合に、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、
前記第1の層は複数の気泡を含み、且つ
前記複数の気泡の少なくとも一部は、気泡同士が繋がって連通している連続気泡である、前記研磨パッド。
〔2〕 前記研磨表面は溝を有する、〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕 前記連続気泡は、前記第1貫通孔の側面から前記研磨表面及び/又は前記溝まで連通している、〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕 前記溝はエンボス溝である、〔3〕に記載の研磨パッド。
〔5〕 研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の前記第1貫通孔の断面形状が円形である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔6〕 研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の前記第2貫通孔の断面形状が円形である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔7〕 前記第2の層の硬度が前記第1の層の硬度よりも大きい、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔8〕 前記第1の層のショアA硬度が5~70度である、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔9〕 前記第1の層の圧縮率が1~60%である、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔10〕 前記第1の層の圧縮弾性率が50~100%である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔11〕 複数の気泡を含み且つ前記複数の気泡の少なくとも一部が気泡同士が繋がって連通している連続気泡である第1の層と、透明シート層と、第2の層とを用意する工程、
前記第1の層に第1貫通孔を設ける工程、
前記第2の層に第2貫通孔を設ける工程、及び
前記第1の層と前記透明シート層と前記第2の層とを貼り合わせる工程、
を含む、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の研磨パッドは、被研磨物の表面状態を光学的に検知するために設けられた貫通孔内に入り込んだスラリーや研磨屑を貫通孔外に排出することができる。従って、本発明の研磨パッドは、研磨屑による光透過領域の閉塞が起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の研磨パッドの厚さ方向略断面(切断部端面)模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の研磨パッドの第1貫通孔側面付近の厚さ方向略断面(切断部端面)模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の研磨パッドの第1の層の研磨表面より厚さ方向に見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
<<研磨パッド>>
本発明の研磨パッドは、被研磨物を研磨するための研磨表面7を有する第1の層2と、前記第1の層の研磨表面とは反対側の面に接着されている透明シート層4と、前記透明シート層の前記第1の層と接着している面とは反対側の面に接着されている第2の層3と、を含む研磨パッドであって、前記第1の層は第1貫通孔5を有し、前記第2の層は第2貫通孔6を有し、前記研磨パッドを研磨表面側から見た場合に、前記第1貫通孔5と前記第2貫通孔6とが少なくとも部分的に重なっており、前記第1の層は複数の気泡を含み、且つ前記複数の気泡の少なくとも一部は、気泡同士が繋がって連通している連続気泡である、前記研磨パッドである。
【0014】
<1.第1の層>
第1の層は、厚さ方向に貫通した第1貫通孔を有する。
第1の層は、第1貫通孔が厚さ方向に貫通している限り、1層で構成されていてもよく、2層以上で構成されていてもよい。但し、第1の層が2層以上で構成されている場合は、前記2層以上の全層が第1貫通孔によって貫通されていることを条件とする。第1の層が複数の層から構成されていると、研磨表面側の層が柔らかい樹脂で構成されていてもある程度の硬さが確保でき取扱いが容易となるため、透明シート層との接着を容易に行うことができる。
第1の層は透明であっても不透明であってもよいが、不透明であることが好ましい。
【0015】
第1の層は被研磨物を研磨するための研磨表面を有する。研磨表面とは、研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する際に被研磨物と接する表面を意味する。被研磨物に特に制限はなく、例えば、複数のメモリダイまたはプロセッサダイを含む製品基板、試験基板、ベア基板、およびゲート基板などが挙げられる。基板は、集積回路製造の様々な段階のものとすることができ、たとえば、基板はベアウエハとすることができ、あるいは1つまたは複数の堆積層及び/又はパターン形成層とすることができる。第1の層は研磨層と呼んでもよい。
【0016】
(第1貫通孔)
第1貫通孔は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、第1の層の研磨表面から第1の層の反対側の表面へと貫通している孔である。第1貫通孔は、厚み方向に対して平行に又は研磨表面に対して垂直に第1の層を貫通していることが好ましい。
第1貫通孔は第1の層中に1個設けられていてもよく、互いに離間し且つ独立している2個以上の貫通孔が設けられていてもよい。
研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の第1貫通孔の形状、研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状、及び/又は研磨表面における第1貫通孔の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形等が挙げられる。或いは、同一又は異なる複数の上記形状が互いに部分的に重なり合った形状であってもよい。これらの中でも、研磨屑が溜りやすい隅部を形成しない円形が特に好ましい。なお、上記形状が円形である場合、第1貫通孔の円相当径は直径に相当する。
【0017】
(円相当径)
本明細書及び特許請求の範囲において、円相当径とは、測定対象の図形が有する面積に相当する、真円の直径のことである。
第1貫通孔の円相当径は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見たときの第1貫通孔の円相当径であり、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た時の第1貫通孔の形状が円形である場合は直径に相当する。
本発明の研磨パッドは、研磨パッドの第1の層を厚さ方向に対して垂直に(又は研磨表面に対して平行に)切断して得られる任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径が、他の任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径と等しい。従って、貫通孔は、気泡同士が繋がって形成される連通孔と明確に区別される。第1貫通孔の円相当径は研磨表面における第1貫通孔の円相当径としてもよい。
第1貫通孔の円相当径に特に制限はないが、5~40mmが好ましく、5~30mmがより好ましく、10~28mmがさらにより好ましい。
また、研磨表面における第1貫通孔の面積は、研磨表面の全面積に対して0.01~0.5%であることが好ましく、0.05~0.5%であることがより好ましく、0.1~0.5%であることがさらにより好ましい。
【0018】
(第1の層の構成)
第1の層を構成する樹脂としては、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系樹脂;ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、圧縮特性や柔軟性を考慮すれば、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
第1の層は1種類の樹脂から構成されていてもよく、2種以上の樹脂から構成されていてもよい。
【0019】
(連通孔及び連続気泡)
本発明の研磨パッドは、第1の層が複数の気泡を含み、複数の気泡の少なくとも一部は気泡同士が繋がって連通している(すなわち、連通孔を有する)連続気泡である。従って、本発明の研磨パッドは、第1の層が連通孔を有する。第1の層が2層以上で構成されている場合は、少なくとも研磨表面を有する層が連続気泡を有することが好ましい。第1の層を構成する全ての層が、連続気泡を有していてもよい。
ここで、連通孔とは、隣り合う気泡同士が互いにつながって形成される孔を意味する。また、連続気泡とは、隣り合う気泡同士が互いに連通してつながった気泡を意味し、独立気泡(隣り合う気泡同士が互いに連通していない気泡)と区別される。連続気泡は、第1の層表面のある地点から第1の層の別の地点まで連通しており、これにより液体や空気等は(連通孔を介して)第1の層内を移動することができる。
本発明の研磨パッドは、第1貫通孔5の側面から研磨表面7及び/又は溝8まで連通していることが好ましい(
図2)。すなわち、第1貫通孔5の側面に連続気泡由来の開口を有し、当該開口部から研磨表面7及び/又は溝8に存在する連続気泡由来の開口まで連通した連続気泡を有することが好ましい。本発明の研磨パッドは、第1の層2が連続気泡を有することにより、研磨中に第1貫通孔5内に入り込んだスラリーや研磨屑が、研磨加工時に生じる遠心力により貫通孔側面へと移動した後、連通孔9を有する連続気泡を通って第1の層内を移動し、研磨表面7や溝領域8の表面に存在する連続気泡由来の開口部を介して研磨表面7や溝領域8へと排出される(
図2の排出流路10を参照のこと)。これにより、研磨中に研磨屑が貫通孔内に堆積しづらくなり、経時的な光透過率の低下を防ぎつつ被研磨物を研磨することができる。よって、研磨パッドの長寿命化につながる。
連通孔9の孔径(円相当径)としては、研磨屑がスラリーと共に排出できる程度の孔径を有している限り特に制限はない。連通孔の孔径(円相当径)は、走査型電子顕微鏡や光学顕微鏡で第1の層の厚み断面(切断部端面)の画像を得て、画像処理ソフトにて二値化処理し、濃淡のある画像としたのち、切断部端面に開孔した気泡内に見られる濃部を連通孔として濃度範囲(閾値)を捉えられるように設定し連通孔の面積から円相当径として得ることができる。例えば、第1の層は、5μm以上の孔径(円相当径)を有する連通孔を含んでいてもよく、10μm以上の孔径(円相当径)を有する連通孔を含んでいてもよく、15~400μmの孔径(円相当径)を有する連通孔を含んでいてもよい。また、連通孔の孔径として、上記以上の孔径(円相当径)と上記よりも小さい孔径(円相当径)とが混在していてもよい。
【0020】
連通孔及び連続気泡は、湿式成膜法による樹脂や乾式成形、射出成形によるフォームで形成させることができる。これらの中でも湿式成膜法による樹脂によって連通孔及び連続気泡を形成させることが好ましい。これにより良好な屈伸運動が期待できる。
本明細書において、湿式成膜法による樹脂とは、湿式成膜法により成膜された樹脂(好ましくはポリウレタン樹脂)を意味する。湿式成膜法は、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後に凝固液中に通して樹脂を凝固させる方法である。湿式成膜された樹脂は、一般に、脱溶媒により形成される複数の涙形状(teardrop-shaped)気泡(異方性があり、研磨パッドの研磨表面から底部に向けて径が大きい構造を有する形状)を有する。従って、湿式成膜された樹脂は、複数の涙形状気泡を有する樹脂と言い換えることもできる。複数の涙形状気泡は互いに連通して連続気泡を形成してもよく、貫通孔内の研磨屑は貫通孔側面に露出した涙形状気泡の開孔より容易に取り込まれ、連続気泡の開孔より研磨層表面や溝領域へと排出できる。湿式成膜された樹脂は軟質であるため、乾式成膜された硬質の研磨パッドに比べ硬度が低くなり、ウエハ表面を傷つけることなく研磨することができる。
連続気泡を有する樹脂は、例えば、特許第5421635号、特許第5844189号に開示された方法により得ることができる。
【0021】
(溝)
本発明の研磨パッドは、第1の層の研磨表面に溝が設けられていることが好ましい。溝は第1の層を貫通しておらず、第1貫通孔と区別することができる。
溝としては、研磨表面にエンボス加工を施すことで得られるエンボス溝、切削工具により切削加工を施すことで得られる切削溝が挙げられる。エンボス溝などの溝を設けることにより、研磨表面にバリが出にくく、仕上げ研磨に適した研磨パッドを得ることができる。
溝の深さは第1の層の厚みよりも小さい限り特に制限はないが、第1の層の厚みの50~90%であることが好ましく、60~80%であることがより好ましい。被研磨物の研磨により溝が消失すると研磨スラリーの流排出性が失われ研磨性能が低下するため研磨パッドは寿命となることから、溝深さは深いことが好ましい。他方、エンボス溝の溝深さを大きくするためには加工圧力を上げる、或いは加工温度を上げる必要があり、それにより第1の層裏面の基材(PET)が変形したり、第1の層表面が劣化する可能性がある。溝の深さが上記範囲内であると、これらの問題が生じにくい。
溝の断面形状は特に限定されず、円弧状であってもよく、U字状、V字状、矩形状、台形状及びその他の多角形状であってもよく、これら2種以上の形状の組み合わせであってもよい。また、溝の数や形状も特に制限はなく、研磨パッドの使用目的などに合わせて適宜溝数や形状を調整すればよい。形状としては、格子状、放射状、同心円、ハニカム状などが挙げられ、それらを組み合わせてもよい。
また、本発明の研磨パッドは、第1の層の表面を研削(バフ処理)により開孔していてもよく、スライスしていてもよい。研削又はスライスを行うと、連続気泡由来の開口部を研磨表面に設けやすくなるとともに、開口部を大きくすることができる。
【0022】
(ショアA硬度)
本明細書において、ショアA硬度とは、日本工業規格(JIS K7311)に準じて測定した値を意味する。
第1の層のショアA硬度は、5~70度が好ましく、8~65度がより好ましい。第1の層のショアA硬度が上記範囲内であると、第1の層が被研磨物により押し込まれやすくなり、貫通孔内壁に研磨屑が固着するのを防ぎやすくなる。
【0023】
(圧縮率及び圧縮弾性率)
本明細書において、圧縮率とは、軟らかさの指標であり、圧縮弾性率とは、圧縮変形に対する戻りやすさの指標である。
圧縮率及び圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さt1を測定する。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定する。
圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0の式で算出することができる(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1)の式で算出することが出来る(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
第1の層の圧縮率は、1~60%が好ましく、3~50%がより好ましい。第1の層の圧縮弾性率は、50~100%であることが好ましく、60~98%であることがより好ましい。圧縮率及び圧縮弾性率が上記範囲内であると、第1貫通孔上を被研磨物が通過する際に第1の層が圧縮され、また、被研磨物によって押し込まれた後の回復性に優れるため、第1の層の屈伸運動により第1貫通孔内部でスラリーの流れができ、貫通孔内にスラリーが留まることなく循環し、スラリーと共に貫通孔内に入った研磨屑が圧縮・回復の動作で貫通孔外に排出されやすくなる。これにより、貫通孔内に研磨屑が堆積することが防ぎやすくなる。
【0024】
(密度)
第1の層の密度は、0.1~0.5g/cm3が好ましく、0.12~0.45g/cm3がより好ましく、0.15~0.35g/cm3がさらにより好ましい。第1の層の密度が上記範囲内であることにより、スラリーの保持性を良好なものとし、研磨屑を被研磨物に押し付ける力を弱めることができるので、研磨レートとスクラッチ性能とをバランスよく兼ね備えることができる。
【0025】
(厚み)
厚みは、日本工業規格(JIS K6505)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
縦、横10cm角の試料を準備する。試料の表面を上にして測定器に載せる。荷重100g/cm2をかけた加圧面を試料上に下し、5秒後の厚さを測定する。1枚につき5ヶ所測定しその平均値を厚さとする。なお、10cm角の試料が取れない場合は5ヶ所の平均とする。
第1の層の厚みに特に制限はないが、0.5~2mmであることが好ましく、0.75~1.55mmがさらにより好ましい。
【0026】
<2.透明シート層>
本発明の研磨パッドは、透明シート層を有する。透明シート層は、第1の層の研磨表面とは反対側の面に接着される。従来の研磨パッドは光検出のための透明樹脂部材を研磨層に設けていたため、これが被研磨物と接触して研磨傷が発生する可能性があったが、本発明の研磨パッドは透明シート層が第1の層よりも下層に設けられているため、透明樹脂部材が被研磨物と接触することがなく、研磨傷の発生を低減することができる。
【0027】
図1を参照すると、透明シート層4は、厚さ方向断面で見た場合に、第1の層2と第2の層3の間に設けられる。第2貫通孔6、透明シート層4及び第1貫通孔5を通って、研磨パッドの厚さ方向に光が透過できる。第1貫通孔及び第2貫通孔で挟まれた部分に存在する透明シート層を通して被研磨物に光を照射することにより、被研磨物が希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検出することができる。なお、
図1では連通孔及び連続気泡は図示していない。
透明シート層は、1層で構成されていてもよく、2層以上で構成されていてもよいが、1層で構成されていることが好ましい。透明シート層が2層以上で構成されている場合、2層以上の層同士は直接接着されていてもよく、接着剤等を介して接着されていてもよい。また、第1の層と透明シート層は、直接接着されていてもよく、接着剤等を介して接着されていてもよい。また、第1の層を構成する材料が片面又は両面テープの形態である場合には、片面又は両面テープの粘着面を利用して第1の層を構成する2以上の層同士を接着させていてもよく、同様にして第1の層と透明シート層とを接着させていてもよい。
【0028】
(透明シート層の構成)
透明シート層を構成する樹脂は、光を透過させる程度の透明性を備えている限り特に制限はないが、波長400~700nmの全範囲で光透過率が20%以上である材料を用いることが好ましく、さらに好ましくは光透過率が50%以上の材料である。そのような材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリスチレン樹脂、及びオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの熱可塑性樹脂、ブタジエンゴムやイソプレンゴムなどのゴム、紫外線や電子線などの光により硬化する光硬化性樹脂、及び感光性樹脂などが挙げられる。中でも、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂が0.1~1.0mmの厚みにおいて適度なハリを持ち、厚み精度に優れ、接着剤との相性が良いため好ましい。
透明シート層は、連通孔を有さないことが好ましい。また、透明シート層は、連続気泡を有さないことが好ましい。また、透明シート層は、開孔を有さないことが好ましい。これにより、透明シート層内部へのスラリーや研磨屑が漏れることを防ぐことができる。従って、光透過の低下を防止しやすくなる。
【0029】
(厚み)
透明シート層の厚みに特に制限はないが、0.1~1.0mmであることが好ましく、0.1~0.8mmがより好ましく、0.1~0.5mmがさらにより好ましい。
【0030】
本発明の研磨パッドは、透明シート層に加えて更に、第1貫通孔内及び/又は第2貫通孔内に透明樹脂部材を設けてもよいが、第1貫通孔内及び/又は第2貫通孔内に透明樹脂部材を設けないことが好ましい。
【0031】
<3.第2の層>
本発明の研磨パッドは、厚さ方向に貫通した第2貫通孔を備える第2の層を有する。第2の層は、透明シート層の第1の層と接着している面とは反対側の面に接着されている層である。第2の層は基材層と呼んでもよい。
第2貫通孔が厚さ方向に貫通している限り、第2の層は1層で構成されていてもよく、2層以上で構成されていてもよい。但し、第2の層が2層以上で構成されている場合は、第2貫通孔が前記2層以上の全層を貫通していることを条件とする。
第2の層が2層以上で構成されている場合、2層以上の層同士は直接接着されていてもよく、接着剤等を介して接着されていてもよい。また、第2の層と透明シート層は、直接接着されていてもよく、接着剤等を介して接着されていてもよい。また、第2の層を構成する材料が片面又は両面テープの形態である場合には、片面又は両面テープの粘着面を利用して第2の層を構成する2以上の層同士を接着させていてもよく、同様にして透明シート層と第2の層とを接着させていてもよい。
第2の層は透明樹脂部材よりも透明度が低く、好ましくは不透明である。
【0032】
(第2貫通孔)
第2貫通孔は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、第2の層の透明シート層側と接している表面から第2の層の透明シート層と接している表面とは反対側の表面へと貫通している孔である。第2貫通孔は、厚み方向に対して平行に又は研磨表面に対して垂直に第2の層を貫通していることが最も好ましい。
研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の第2貫通孔の形状、研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第2貫通孔の断面形状、及び/又は第2の層表面における第2貫通孔の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形等が挙げられる。或いは、同一又は異なる複数の上記形状が互いに部分的に重なり合った形状であってもよい。これらの中でも、円形が特に好ましい。なお、上記形状が円形である場合、第2貫通孔の円相当径は直径に相当する。
本発明の研磨パッドは、厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状と第2貫通孔の断面形状とが同じ形状を有していても異なる形状を有していてもよいが、同じ形状を有することが好ましい。これらの中でも、厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状と第2貫通孔の断面形状とが、いずれも円形であることが好ましい。
【0033】
本発明の研磨パッドは、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に、好ましくは完全に重なっている。ここで、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔が少なくとも部分的に重なっているとは、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の位置と第2貫通孔の位置とが少なくとも部分的に一致していることをいう。第1貫通孔と第2貫通孔とが完全に重なっているとは、研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の位置と第2貫通孔の位置とが完全に一致していることをいう。研磨表面側から厚さ方向に見た場合に第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっていることにより、透明シート層を介して第2貫通孔側から第1貫通孔側へと光を透過させることができ、研磨加工中の被研磨物の表面状態を光学的に検知することができる。より好ましくは、第1貫通孔及び第2貫通孔がともに円柱形状であり、第1貫通孔の円柱中心軸と第2貫通孔の円柱中心軸及びその径が一致する。
図1を参照すると、研磨パッド1の厚さ方向断面において研磨表面7を上とした場合に、第2貫通孔6は、第1貫通孔5の下部に透明シート層4を介して接しており、透明シート層4を介して間接的に第1貫通孔5とつながっている。
第2貫通孔は第2の層中に1個設けられていてもよく、互いに離間し且つ独立している2個以上の貫通孔が設けられていてもよい。第1貫通孔の個数と第2貫通孔の個数は等しいことが好ましい。複数の第2貫通孔が設けられている場合、各第2貫通孔は、各第1貫通孔の下部に透明シート層を介して少なくとも部分的に、好ましくは完全に接していることが好ましい。
【0034】
(円相当径)
本明細書及び特許請求の範囲において、第2貫通孔の円相当径は、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見たとき又は第2の層を厚さ方向に見たときの第2貫通孔の円相当径であり、研磨パッドの研磨表面側から研磨パッド厚さ方向に見た時の第2貫通孔の形状が円形である場合は直径に相当する。
本発明の研磨パッドは、研磨パッドの第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径が、第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる他の任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径と等しい。従って、第2貫通孔の円相当径は第2の層の透明シート層と接する表面における第2貫通孔の円相当径としてもよい。
第2の層の透明シート層と接する表面における第2貫通孔の面積は、前記表面の全面積に対して0.01~0.5%であることが好ましく、0.05~0.5%であることがより好ましく、0.1~0.5%であることがさらにより好ましい。
また、第2貫通孔の円相当径は、第1貫通孔の円相当径の80~120%であることが好ましく、90~110%であることがより好ましく、100%であることがさらにより好ましい。
また、第2の層の透明シート層と接する表面における第2貫通孔の面積は、研磨表面における第1貫通孔の面積の80~120%であることが好ましく、90~110%であることがより好ましく、100%であることがさらにより好ましい。
また、第2貫通孔の円相当径に特に制限はないが、5~40mmが好ましく、5~30mmがより好ましく、10~28mmがさらにより好ましい。
【0035】
(第2の層の構成)
第2の層としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系シート、塩化ビニル系シート、酢酸ビニル系シート、ポリイミド系シート、ポリアミド系シート、フッ素樹脂系シートや樹脂含浸不織布、不織布や織布等が挙げられる。これら中でも物理的特性(例えば、寸法安定性、厚み精度、加工性、引張強度)、経済性等の観点から、第2の層はポリエステル系シートがより好ましく、そのなかでもポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製シートが特に好ましい。
第2の層と透明シート層とを貼り合わせる方法としては、例えば、片面又は両面に粘着剤を塗着したPETシート等のシートを第2の層として用い、この粘着剤を介して第2の層と透明シート層とを接着させることができる。粘着剤を塗着していないPETシート等のシートを第2の層として用意し、これとは別に透明シート層と粘着剤とを用意して、粘着剤を介して第2の層と透明シート層とを接着させることもできる。
第2の層は、複数の気泡を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。また、第2の層は、複数の気泡の少なくとも一部が連通孔を形成していてもよく、連通孔を形成していなくてもよい。
【0036】
(硬度)
本発明の研磨パッドは、第2の層の硬度が第1の層の硬度よりも大きいことが好ましく、第2の層のショアA硬度が第1の層のショアA硬度よりも大きいことがより好ましい。
【0037】
(密度)
第2の層の密度は、第1の層の密度以上であることが好ましく、第1の層の密度よりも大きいことがより好ましい。第2の層の密度は、0.4~1.5g/cm3がより好ましく、0.5~1.4g/cm3がさらにより好ましく、0.6~1.35g/cm3がさらにより好ましい。第2の層の密度が上記範囲内であると、研磨パッド全体の剛性が高まり、研磨定盤貼付け作業や研磨パッドの剥離作業時の作業性が向上する。
【0038】
(厚み)
第2の層の厚みに特に制限はないが、0.1~2.0mmが好ましく、0.15~1.5mmがより好ましく、0.2~1.0mmがさらにより好ましい。
【0039】
本発明において、第1の層、透明シート層及び第2の層がそれぞれ複層構造を有する場合には、複数の層同士を接着剤などを用いて、必要により加圧しながら接着・固定すればよい。この際用いられる接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の接着剤の中から任意に選択して使用することが出来る。或いは、複数の層同士を加圧及び/又は加熱して直接接着・固定してもよい。
【0040】
(利点)
本発明の研磨パッドは、第1の層が連通孔9を持つ連続気泡を有する。従って、第1の層に設けた貫通孔5の側面にも連続気泡が開いており、その一部が研磨表面又は溝領域まで連通して続いている。これにより、研磨中に第1貫通孔内に入り込んだスラリーや研磨屑が、研磨加工時に発生する遠心力により第1貫通孔側面に移動し、連通孔9を持つ連続気泡を通って研磨表面7や溝領域8へと排出されるため、研磨屑が第1貫通孔内に蓄積することによる経時的な光透過率の低下を防ぐことができ、研磨パッドの長寿命化につながる。すなわち、研磨層の貫通孔中にスラリーが留まり続けることなく循環し、スラリーと共に研磨屑も貫通孔外へと排出され、貫通孔内に研磨屑が堆積することを防ぐことができる。研磨屑が貫通孔内に堆積しにくいため、研磨中に光透過率を低下させることなく研磨終点の検出が可能となる。
本発明の研磨パッドは、例えば、下記の方法により製造することができる。
【0041】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッドの製造方法は、複数の気泡を含み且つ前記複数の気泡の少なくとも一部が気泡同士が繋がって連通している連続気泡である第1の層と、透明シート層と、第2の層とを用意する工程、前記第1の層に第1貫通孔を設ける工程、前記第2の層に前記第2貫通孔を設ける工程、及び前記第1の層と前記透明シート層と前記第2の層とを貼り合わせる工程を含む。
各工程について説明する。
【0042】
<1.第1の層、透明シート層、第2の層を用意する工程>
本工程において、複数の気泡を含み且つ前記複数の気泡の少なくとも一部が気泡同士が繋がって連通している連続気泡である第1の層、透明シート層、第2の層を用意する。第1の層、透明シート層、第2の層としては、それぞれ上記のものを挙げることができる。第1の層、透明シート層、第2の層は、それぞれ市販のものを用いてもよく、製造したものを用いてもよい。市販の透明シートとしては、ポリエステル樹脂からなる三菱ケミカル株式会社製「ダイアホイルT910E」、「ダイアホイルT600E」、東洋紡株式会社製「コスモシャインA4300」、「コスモシャインA2330」、「コスモシャインTA017」、「コスモシャインTA015」、「コスモシャインTA042」、「コスモシャインTA044」、「コスモシャインTA048」、「ソフトシャインTA009」、ポリメチルメタクリレート樹脂からなる三菱ケミカル株式会社製「アクリプレンHBS006」、「アクリプレンHBXN47」、「アクリプレンHBS010」、帝人化成株式会社製「パンライトフィルムPC-2151」、株式会社カネカ製「サンデュレンSD009」、「サンデュレンSD010」、ポリカーボネート樹脂からなる住友化学株式会社製「C000」、帝人化成株式会社製「ユーピロンH-3000」、アクリル樹脂/ポリカーボネート樹脂からなる住友化学株式会社製「C001」、脂環式ポリオレフィン樹脂からなる日本ゼオン株式会社製「ゼオノアZF14」、「ゼオノアZF16」、JSR株式会社製「アートンフィルム」等を市販品として入手することができる。第1の層を製造する場合は、例えば、特許第5421635号、特許第5844189号を参照してポリウレタン樹脂を湿式成膜し、PET樹脂からなる可撓性シートと貼り合わせることで製造することができる。
第1の層の研磨表面にスキン層が存在する場合には、当該スキン層をバフ処理してもよい。バフ処理(研削処理)する場合には、サンドペーパーなどを用いて、研磨表面を50~300μm、好ましくは80~250μm程度研削すればよい。バフ処理は、下記工程2~4の各工程の前であってもよく、工程2~4の各工程の後であってもよいが、工程2~4の前であることが好ましい。
また、第1の層の研磨表面に溝を設けてもよい。溝は、例えば、エンボス加工を施すことにより得ることができる。溝を設ける工程は、下記工程2~4の各工程の前であってもよく、工程2~4の各工程の後であってもよいが、工程2~4の前であることが好ましい。
【0043】
<2.第1の層に第1貫通孔を設ける工程>
本工程において、第1の層に第1貫通孔を設ける。第1貫通孔は、例えば、円形、楕円形、多角形等の抜型(好ましくは円形の抜型)で第1の層の厚さ方向に穴を開けることにより設けることができる。抜型を用いることにより、研磨パッドの第1の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径が、他の任意の第1の層断面における第1貫通孔の円相当径と同一とすることができる。
本工程は、下記工程3「第2の層に第2貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、下記工程3の後であってもよい。また、本工程は、下記工程4「第1の層と透明シート層と第2の層とを貼り合わせる工程」の前であってもよく、下記工程4の後であってもよい。また、本工程は、下記工程3と同時に行ってもよい。好ましくは、本工程は、下記工程3の前であって且つ下記工程4の前である。
【0044】
<3.第2の層に第2貫通孔を設ける工程>
本工程において、第2の層に第2貫通孔を設ける。第2貫通孔は、例えば、円形、楕円形、多角形等の抜型(好ましくは円形の抜型)で第2の層の厚さ方向に穴を開けることにより設けることができる。抜型を用いることにより、研磨パッドの第2の層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径が、他の任意の第2の層断面における第2貫通孔の円相当径と同一とすることができる。
本工程は、上記工程2「第1の層に第1貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、上記工程2の後であってもよい。また、本工程は、下記工程4「第1の層と透明シート層と第2の層とを貼り合わせる工程」の前であってもよく、下記工程4の後であってもよい。好ましくは、本工程は、上記工程2の後であって且つ下記工程4の前である。
【0045】
<4.第1の層と透明シート層と第2の層とを貼り合わせる工程>
本工程において、第1の層と透明シート層と第2の層とを貼り合わせる。第1の層と透明シート層、及び/又は透明シート層と第2の層は、直接接着させてもよく、例えば、接着剤等を用いて接着させてもよい。
本工程は、上記工程2「第1の層に第1貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、上記工程2の後であってもよい。また、本工程は、上記工程3「第2の層に第2貫通孔を設ける工程」の前であってもよく、上記工程3の後であってもよい。好ましくは、本工程は、上記工程2の後であって且つ上記工程3の後である。
以上により、本発明の研磨パッドを得ることができる。
【0046】
本発明の研磨パッドを使用するときは、研磨パッドを第1の層の研磨表面が被研磨物と向き合うようにして研磨機の研磨定盤に取り付ける。そして、スラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨する。
本発明の研磨パッドにより加工される被研磨物としては、ベアシリコン、半導体デバイスが挙げられる。中でも、本発明の研磨パッドは、半導体デバイスの研磨、特に仕上げ研磨に特に適しており好ましい。
【0047】
本発明の研磨パッドを用いて、例えば、CMP研磨工程中に光ビームを貫通孔内の透明シートを通して研磨パッド越しにウエハに照射し、その反射によって発生する干渉信号をモニターすることにより、被研磨物を研磨しつつ、半導体ウエハ等の被研磨物の表面特性や平面状態に到達した時点を光学的に検知することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
100%モジュラス7.8MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂(30質量部)及びDMF(70質量部)を含む溶液100質量部に、別途DMF60質量部、水5質量部を添加し、混合することにより樹脂含有溶液を得た。
得られた樹脂含有溶液を、濾過することにより、不溶成分を除去した。前記溶液をポリエステルフィルム上にナイフコータを用いて塗布厚みが0.8mmとなるようキャストした。その後、樹脂含有溶液をキャストしたポリエステルフィルムを凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、前記樹脂含有溶液を凝固させた後、ポリエステルフィルムを剥離し洗浄・乾燥させて、内部に涙型形状の複数の気泡を有し且つ当該複数の気泡が互いに繋がり合って連通しているポリウレタン樹脂フィルムを得た。得られたポリウレタン樹脂フィルムの表面をバフ処理し厚みを0.73mmとしたのち、バフ処理面と反対面側に厚み0.188μmのPET製の樹脂基材を接着剤で貼り合わせ、ポリウレタン樹脂フィルムの表面側からエンボス加工を施し、表面に溝幅を1mm、溝間隔を4mm、溝深さを0.45mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を設けた。樹脂基材のポリウレタン樹脂フィルムが貼り合わされていない面側に、片側に離型紙を有する厚さ約0.1mmの両面テープ(PET基材厚み0.023mm、PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)を接着した。溝処理面側の研磨パッドの中心となる位置から研磨パッドの半径の1/2となる位置の同心円上に、両面テープの離型紙まで貫通させるよう、直径20mmの円形抜型で等間隔に3か所穴を開け、第1貫通孔を設けた。両面テープの離型紙を剥がし、透明シートとして研磨層と同径のアクリル樹脂フィルム(三菱ケミカル(株)製、アクリプレン HBS006、厚み150μm)を貼り合わせた。第2層として片面に離型紙を有する厚さ約0.1mmの両面テープ(PET基材厚み0.023mm、PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)を用意し、厚さ方向に見た場合に第1貫通孔と重なる位置に3か所穴を開けることで第2貫通孔を設け、アクリル樹脂フィルムのポリウレタン樹脂フィルムが貼り合わされていない面側に接着させることで研磨パッドを製造した。
【0050】
上記のとおり製造した研磨パッドは、第1の層に存在する気泡同士が繋がって連通している(連続気泡を形成している)ため、研磨加工時に生じる研磨屑をスラリーと共に第1貫通孔の側面から研磨表面又は溝領域に排出することができる(
図2)。従って、研磨表面から透明シート層までの凹みが深く研磨屑が溜まりやすい構造であっても、研磨屑が第1貫通孔内に蓄積することによる経時的な光透過率の低下を防ぐことができ、長時間に渡って研磨パッドを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、被研磨物の表面状態を光学的に検知するために設けられた貫通孔内に入り込んだスラリーや研磨屑を貫通孔外に排出することのできる研磨パッドを提供することができる。よって、本発明の研磨パッドは、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0052】
1…研磨パッド
2…第1の層
3…第2の層
4…透明シート層
5…第1貫通孔
6…第2貫通孔
7…研磨表面
8…溝
9…連通孔
10…スラリーや研磨屑の排出流路