(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】作業推定端末、作業推定システム、作業推定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240625BHJP
B60P 1/04 20060101ALI20240625BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G06Q50/08
B60P1/04 Z
G08B21/24
(21)【出願番号】P 2020047977
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】黒田 恭平
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-056050(JP,A)
【文献】特開2014-035214(JP,A)
【文献】特開平02-229391(JP,A)
【文献】特開2013-257715(JP,A)
【文献】特開2015-011662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B60P 1/04
G08B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に搭載される作業推定端末であって、
所定の作業と
、前記所定の作業中であることを注意喚起する警報音の周波数を含む所定の周波数域とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記作業車両の
キャブ内の音を収集する集音部と、
前記集音部によって収集された音の周波数を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された周波数が前記記憶部に記憶された前記所定の周波数域に含まれる場合に、前記所定の作業が行われたと推定する推定部と、
を備える作業推定端末。
【請求項2】
前記検出部は、前記集音部によって収集された音の音圧を検出し、
前記推定部は、前記検出部によって検出された音圧が所定圧以上である場合に、前記所定の作業が行われたと推定する、
請求項1に記載の作業推定端末。
【請求項3】
前記検出部は、前記集音部によって収集された音の長さを検出し、
前記推定部は、前記検出部によって検出された音の長さが所定時間以上である場合に、前記所定の作業が行われたと推定する、
請求項1又は2に記載の作業推定端末。
【請求項4】
前記作業車両はダンプトラックである、
請求項1乃至3のいずれかに記載の作業推定端末。
【請求項5】
前記所定の作業は、前記ダンプトラックの荷台を上昇或いは下降させる作業である、
請求項4に記載の作業推定端末。
【請求項6】
前記所定の作業は、前記ダンプトラックの荷台に取り付けられたあおりを開閉動作させる作業である、
請求項4に記載の作業推定端末。
【請求項7】
作業車両における作業を推定するための作業推定システムであって、
所定の作業と
、前記所定の作業中であることを注意喚起する警報音の周波数を含む所定の周波数域とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記作業車両の
キャブ内の音を収集する集音部と、
前記集音部によって収集された音の周波数を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された周波数が前記記憶部に記憶された前記所定の周波数域に含まれる場合に、前記作業車両において前記所定の作業が行われたと推定する推定部と、
を備える作業推定システム。
【請求項8】
作業車両における作業を推定するための作業推定方法であって、
前記作業車両の
キャブ内において、所定の作業中であることを注意喚起する警報音を収集する工程と、
収集された音の周波数と音圧とを検出する工程と、
検出された周波数と音圧との時系列データのパターンにより、前記作業車両において所定の作業が行われたと推定する工程と、
を備える作業推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業推定端末、作業推定システム、作業推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両は、土木作業現場で作業を行う車両である。作業車両の例としてダンプトラックがある。従来、土木作業現場での土砂の運搬には、ダンプトラックが広く利用されている。ダンプトラックは、土砂を積載するための荷台と、荷台を囲むあおりと、を備える。ダンプトラックは、あおりを開くとともに荷台をダンプアップさせることによって、荷台の後端から施工場所に土砂を排出する。
【0003】
土木作業現場における生産性は、作業車両の生産効率に依存している。土木作業現場における生産性は、例えば、ダンプトラックによる土砂の運搬効率に依存している場合が多い。そのため、土木作業現場における生産性を改善するには、ダンプトラックにおける作業を正確に把握する必要がある。
【0004】
ここで、特許文献1では、車両に搭載された位置検出装置によって検出される車両の位置を無線機によって管理装置に送信する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、作業車両の位置を把握できるにすぎず、作業車両における作業を把握することはできない。
【0007】
本発明は、作業車両における作業を簡便かつ正確に推定可能な作業推定端末、作業推定システム、作業推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る作業推定端末は、作業車両に搭載される作業推定端末であって、記憶部と、集音部と、検出部と推定部とを備える。記憶部は、所定の作業と所定の周波数域とを関連付けて記憶する。集音部は、作業車両の内部又は周囲の音を収集する。検出部は、集音部によって収集された音の周波数を検出する。推定部は、検出部によって検出された周波数が記憶部に記憶された所定の周波数域に含まれる場合に、所定の作業が行われたと推定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業車両における作業を簡便かつ正確に推定可能な作業推定端末、作業推定システム、作業推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
(作業推定システム1)
図1は、作業推定システム1の構成を示す模式図である。
【0012】
作業推定システム1は、ダンプトラック(作業車両)10、作業推定端末20及び管理装置30を備える。
【0013】
[ダンプトラック10]
ダンプトラック10は、車体11、左右一対の前輪12,12、左右一対の後輪13,13、キャブ14、荷台15、油圧シリンダ16及び警報機17を有する。
【0014】
車体11は、左右一対の前輪12,12及び左右一対の後輪13,13によって支持される。キャブ14は、車体11の前端部上に配置される。キャブ14内には、警報機17及び作業推定端末20が配置される。
【0015】
荷台15は、キャブ14の後方において車体11上に配置される。荷台15は、その後下端部を支点として昇降可能に構成される。荷台15は、積載部18及び左右一対の側方あおり19,19を有する。
【0016】
積載部18は、底板18a、左右一対の側壁18b,18b、前壁18c及び後方あおり18dによって構成される。底部18には、土砂などが積載される。後方あおり18dは、その下端部を支点として後方に開くことができる。
【0017】
左右一対の側方あおり19,19は、積載部18の左右一対の側壁18b,18b上に立設される。左の側方あおり19は、その下端部を支点として左方に開くことができる。右の側方あおり19は、その下端部を支点として右方に開くことができる。左右一対の側方あおり19,19それぞれの開閉動作は、オペレータが操作する油圧シリンダ(不図示)によって実行される。
【0018】
本明細書では、左右一対の側方あおり19,19が開閉動作中であることを「あおり作業」と称する。従って、左右一対の側方あおり19,19が開状態で停止している状態は「あおり作業」に含まれない。
【0019】
油圧シリンダ16は、車体11と荷台15とに連結される。油圧シリンダ16は、オペレータの操作に応じて伸縮する。油圧シリンダ16が伸長すると荷台15は上昇し、油圧シリンダ16が収縮すると荷台15は下降する。油圧シリンダ16が最短まで収縮すると荷台15全体が車体11上に載置される。
【0020】
本明細書では、荷台15が上昇動作中、下降動作中、停止中のいずれの状態であるかに関わらず、荷台15が上昇した状態にあることを「ダンプアップ作業」と称する。従って、油圧シリンダ16が少しでも伸長していれば「ダンプアップ作業」に含まれる。
【0021】
警報機17は、キャブ14内に配置される。警報機17は、荷台15のダンプアップ作業中、第1のブザー音を発する。第1のブザー音の周波数及び音圧は特に制限されず、適宜設定可能である。
【0022】
本実施形態において、荷台15のダンプアップ作業は、ダンプトラック10における「所定の作業」の一例であり、第1のブザー音は、ダンプアップ作業中であることをオペレータに注意喚起する「警報音」の一例である。
【0023】
警報機17は、左右一対の側方あおり19,19のあおり作業中、第2のブザー音を発する。第2のブザー音は、第1のブザー音とは異なる周波数の音である。第2のブザー音は、第1のブザー音とは異なる周波数の音であればよく、適宜設定可能である。
【0024】
本実施形態において、左右一対の側方あおり19,19のあおり作業は、ダンプトラック10における「所定の作業」の一例であり、第2のブザー音は、あおり作業中であることをオペレータに注意喚起する「警報音」の一例である。
【0025】
[作業推定端末20]
作業推定端末20は、キャブ14内に配置される。作業推定端末20は、ダンプトラック10において実施された作業を推定するためのモバイル端末である。作業推定端末20は、スマートフォンなどのスマートデバイスであってよい。作業推定端末20がスマートデバイスの場合、既存の作業車両に容易に本発明を設置することができる。
【0026】
図2は、作業推定端末20の構成を示すブロック図である。
【0027】
作業推定端末20は、記憶部21、集音部22、検出部23、推定部24及び無線送信部25を有する。
【0028】
記憶部21は、所定の作業と所定の周波数域とを関連付けて記憶する。本実施形態において、記憶部21は、第1の周波数域とダンプアップ作業とを関連付けて記憶するとともに、第2の周波数域とあおり作業とを関連付けて記憶する。
【0029】
第1の周波数域は、第1のブザー音の周波数を含み、かつ、第2のブザー音の周波数を含まないように設定される。例えば、第1の周波数域は、第1のブザー音の周波数を中心とする所定範囲に設定することができる。第2の周波数域は、第2のブザー音の周波数を含み、かつ、第1のブザー音の周波数を含まないように設定される。例えば、第2の周波数域は、第2のブザー音の周波数を中心とする所定範囲に設定することができる。
【0030】
集音部22は、ダンプトラック10の内部の音を収集する。本実施形態において、集音部22は、キャブ14内の音を収集する。集音部22は、収集した音の時系列データを検出部23に出力する。集音部22としては、周知のマイクロホンを用いることができる。集音されたダンプトラック10の内部の音は、ダンプトラック10の周囲からキャブ14内に侵入する音を含んでもよい。
【0031】
検出部23は、集音部22から入力される音の時系列データを短時間フーリエ変換(STFT:Short-Time Fourier Transform)することにより、集音部22によって収集された音の周波数及び音圧を検出する。また、検出部23は、集音部22から入力される音の時系列データを参照して、集音部22によって収集された音の長さを検出する。検出部23は、検出した周波数、音圧及び音の長さを推定部24に出力する。
【0032】
推定部24は、検出部23によって検出された周波数が、記憶部21に記憶された所定の周波数域に含まれるか否かを判定する。本実施形態において、推定部24は、検出部23によって検出された周波数が第1の周波数域に含まれるか否かを判定するとともに、検出部23によって検出された周波数が第2の周波数域に含まれるか否かを判定する。
【0033】
また、推定部24は、検出部23によって検出された音圧が所定圧以上であるか否かを判定する。所定圧は、第1及び第2のブザー音それぞれと雑音とを区別するために予め設定される閾値である。
【0034】
また、推定部24は、検出部23によって検出された音の長さが所定時間以上であるか否かを判定する。所定時間は、第1及び第2のブザー音それぞれと雑音とを区別するために予め設定される閾値である。
【0035】
推定部24は、検出部23によって検出された周波数が第1の周波数域に含まれ、音圧が所定圧以上であり、かつ、音の長さが所定時間以上である場合、ダンプトラック10においてダンプアップ作業が行われたと推定する。
【0036】
一方、推定部24は、検出部23によって検出された周波数が第2の周波数域に含まれ、音圧が所定圧以上であり、かつ、音の長さが所定時間以上である場合、ダンプトラック10においてあおり作業が行われたと推定する。総括すると、推定部24は収音された音の周波数と音圧の時系列データに含まれる所定作業が固有に持つパターンを認識して、所定作業の実施を推定する。
【0037】
推定部24は、ダンプアップ作業及び/又はあおり作業が行われたと推定した場合、音の時系列データを参照して、ダンプアップ作業及び/又はあおり作業が行われた時刻を特定する。推定部24は、ダンプアップ作業及び/又はあおり作業が行われた時刻を含む作業推定データを生成して無線送信部25に出力する。
【0038】
無線送信部25は、作業推定データを管理装置30に送信する。無線送信部25は、例えばモバイルデータ通信回線を介して作業推定データを送信することができる。
【0039】
[管理装置30]
管理装置30は、作業推定端末20の無線送信部25から作業推定データを取得する。管理装置30は、作業推定データを参照して、ダンプトラック10においてダンプアップ作業及び/又はあおり作業が行われた時刻を管理する。
【0040】
これにより、ダンプトラック10における作業を正確に把握することができるため、土木作業現場における生産性の改善に役立てることができる。
【0041】
(作業推定方法)
作業推定システム1において実行される作業推定方法について、図面を参照しながら説明する。
図3は、作業推定方法を説明するためのフロー図である。
【0042】
ステップS1において、集音部22は、キャブ14内の音を収集し、収集した音の時系列データを検出部23に出力する。
【0043】
ステップS2において、検出部23は、音の時系列データに基づき、集音部22によって収集された音の周波数、音圧及び音の長さを検出する。
【0044】
ステップS3において、推定部24は、検出部23によって検出された周波数が第1の周波数域に含まれるか否かを判定する。検出された周波数が第1の周波数域に含まれない場合、処理はステップS4に進む。検出された周波数が第1の周波数域に含まれる場合、処理はステップS5に進む。
【0045】
ステップS4において、推定部24は、検出部23によって検出された周波数が第2の周波数域に含まれるか否かを判定する。検出された周波数が第2の周波数域に含まれる場合、処理はステップS5に進む。検出された周波数が第2の周波数域に含まれない場合、処理は終了する。
【0046】
ステップS5において、推定部24は、検出部23によって検出された音圧が所定圧以上であるか否かを判定する。検出された音圧が所定圧以上である場合、処理はステップS6に進む。検出された音圧が所定圧以上でない場合、処理は終了する。
【0047】
ステップS6において、推定部24は、検出部23によって検出された音の長さが所定時間以上であるか否かを判定する。検出された音の長さが所定時間以上である場合、処理はステップS7に進む。検出された音の長さが所定時間以上でない場合、処理は終了する。
【0048】
ステップS7において、推定部24は、ステップS3及びステップS4の判定結果に基づいて、ダンプトラック10において行われた作業を推定する。具体的には、推定部24は、検出された周波数が第1の周波数域に含まれるとステップS3において判定していた場合にはダンプアップ作業が行われたと推定し、検出された周波数が第2の周波数域に含まれるとステップS4において判定していた場合にはあおり作業が行われたと推定する。
【0049】
ステップS8において、推定部24は、音の時系列データを参照して、ダンプアップ作業又はあおり作業が行われた時刻を含む作業推定データを生成する。
【0050】
ステップS9において、無線送信部25は、作業推定データを管理装置30に送信する。
【0051】
(他の実施形態)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0052】
上記実施形態では、作業車両の一例としてダンプトラックを挙げて説明したが、これに限られない。本発明に係る作業推定端末、作業推定システム及び作業推定方法は、土木作業現場で用いられる周知の作業車両に適用可能である。
【0053】
上記実施形態において、記憶部21、検出部23及び推定部24は、作業推定端末20に設けられることとしたが、これに限られない。例えば、記憶部21、検出部23及び推定部24は、管理装置30に設けられてもよい。或いは、検出部23が作業推定端末20に設けられ、かつ、記憶部21及び推定部24が管理装置30に設けられてもよい。
【0054】
上記実施形態において、推定部24は、検出された周波数が第1及び第2の周波数域に含まれるか否かだけでなく、音圧が所定圧以上であるか否か、さらに、音の長さが所定時間以上であるか否かにも基づいて、作業車両において行われた作業を推定することとしたが、これに限られない。推定部24は、音の長さについての判定を行わなくてもよい。すなわち、推定部24は、収集された音の周波数と音圧との時系列データのパターンにより、作業車両において所定の作業が行われたと推定してもよい。また、推定部24は、音圧及び音の長さについての判定を行わなくてもよい。すなわち、推定部24は、収集された音の周波数の時系列データのパターンにより、作業車両において所定の作業が行われたと推定してもよい。音圧及び/又は音の長さについての判定が行われない場合、推定精度は若干低下するものの、作業推定処理の負荷を低減させることができる。
【0055】
上記実施形態では、所定の作業の一例としてダンプアップ作業及びあおり作業について説明したが、これに限られない。作業車両において行われる何らかの作業と当該作業に応じて生じる音とを関連付けることができる限り、いかなる作業についても本発明を適用することができる。従って、作業推定に用いられる音は、ブザー音に限らず、作業に応じて生じる機械音などであってもよい。よって、集音部22は、作業車両の周囲の音を収集してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 作業推定システム
10 ダンプトラック(作業車両)
11 車体
14 キャブ
15 荷台
17 警報機
19 側方あおり
20 作業推定端末
21 記憶部
22 集音部
23 検出部
24 推定部
25 無線送信部
30 管理装置