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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】運転技能評価システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240625BHJP
   B60W 40/09 20120101ALI20240625BHJP
【FI】
G08G1/00 D
B60W40/09
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020088532
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021184120
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】399059049
【氏名又は名称】フューチャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿
(72)【発明者】
【氏名】小橋 昌明
(72)【発明者】
【氏名】塚本 祥太
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030188(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116862(WO,A1)
【文献】特開2011-107978(JP,A)
【文献】特開2010-198118(JP,A)
【文献】特開2016-012334(JP,A)
【文献】特開2019-159642(JP,A)
【文献】特開2010-250445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの運転技能の評価を行う運転技能評価システムにおいて、
前記ドライバの運転操作の修正操作を検出する修正操作検出部と、
前記修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報、前記修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における前記車両の制御情報及び前記車両の周囲環境の情報と、に基づいて当該修正操作を行うに至った原因を推定する原因推定部と、
前記推定の結果に基づいて前記ドライバの運転技能を評価する評価部と、
を備える、運転技能評価システム。
【請求項2】
前記原因推定部は、
あらかじめ用意された、修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報、並びに、修正操作を行うに至った原因、を入力データとして生成された修正操作原因モデルを用いて、
記修正操作を行った時刻における前記車両の走行シーンの情報と、前記修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における前記車両の制御情報及び前記車両の周囲環境の情報と、を前記修正操作原因モデルに入力し、前記修正操作を行うに至った原因を推定する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項3】
前記評価部は、
前記原因推定部により、前記修正操作を行うに至った原因が、前記車両の走行環境において不可避な操作によるものと推定された場合、前記運転技能をマイナス評価しない一方、
前記修正操作を行うに至った原因が、前記車両の走行環境において不可避な操作によるものではない他の原因によるものと推定された場合、前記運転技能をマイナス評価する、請求項1又は2に記載の運転技能評価システム。
【請求項4】
前記運転操作は操舵角を調節するステアリング操作を含み、
前記修正操作検出部は、
操舵の回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられた後、切り換え後の方向への操舵の回転量が所定の切返し判定閾値以上となった場合に、操舵の切返しが発生したと判定し、
一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、走行距離が所定の距離閾値に到達する前に前記他の方向から前記一の方向への操舵の切返しを検出したときに、前記ステアリング操作の修正操作を検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の運転技能評価システム。
【請求項5】
前記距離閾値が、前記車両の走行シーンに応じて設定される、請求項4に記載の運転技能評価システム。
【請求項6】
前記運転操作は操舵角を調節するステアリング操作を含み、
前記修正操作検出部は、
操舵の回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられた後、切り換え後の方向への操舵の回転量が所定の切返し判定閾値以上となった場合に、操舵の切返しが発生したと判定し、
一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、所定時間内に前記他の方向から前記一の方向への操舵の切返しを検出したときに、前記ステアリング操作の修正操作を検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の運転技能評価システム。
【請求項7】
前記所定時間が、前記車両の走行シーンに応じて設定される、請求項6に記載の運転技能評価システム。
【請求項8】
前記運転操作は前後加速度を調節する操作を含み、
前記修正操作検出部は、
加速度が所定の加速度閾値を超えてからの経過時間が所定時間を経過したときに、前記運転操作の修正操作を検出する、請求項1~7のいずれか1項に記載の運転技能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転技能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転操作に基づいてドライバの運転技能を評価する装置が知られている。例えば、特許文献1には、ドライバによる運転操作に応じて変化する車両の状態量を検出しながら、ドライバが特定の運転操作を開始したときの車両の状態量と特定の運転操作を終了したときの車両の状態量とに基づいて特定の運転操作についての指標とする運転モデルを作成し、車両の状態量の検出結果が示すドライバの運転操作と運転モデルとを比較してドライバの運転技能を評価する運転評価装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ドライバによるステアリング操作、ブレーキ操作、アクセル操作等の複数種の運転操作について個々に運転技能を評価し報知する運転支援装置が開示されている。具体的には、一定時間分について、ステアリングとアクセルペダルとブレーキペダルの操作状況が蓄積され、データベースから読み出されたエキスパートドライバによる操作状況と、データベースに記憶されたドライバの操作状況とを比較して運転評価点を算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-135061号公報
【文献】特開2017-218055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1又は2に開示されているように、運転操作と学習モデルやエキスパートドライバによる操作状況等との比較のみでは、運転技能を必ずしも適切に評価できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、評価精度を向上可能な自動車の運転技能評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ドライバの運転技能の評価を行う運転技能評価システムであって、ドライバの運転操作の修正操作を検出する修正操作検出部と、修正操作を行った時刻における車両の走行状態の情報、及び、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の走行状態の情報に基づいて当該修正操作を行うに至った原因を推定する原因推定部と、推定の結果に基づいてドライバの運転技能を評価する評価部と、を備える運転技能評価システムが提供される。
【0008】
また、原因推定部は、修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報、及び、修正操作を行うに至った原因、を入力データとする修正操作原因モデルを用いて、修正操作を行った時刻における車両の走行状態の情報としての修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報と、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の走行状態の情報としての修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、及び、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報と、から、修正操作を行うに至った原因を推定してもよい。
【0009】
また、評価部は、原因推定部により、修正操作を行うに至った原因が、車両の走行環境において不可避な操作によるものと推定された場合、運転技能をマイナス評価しない一方、修正操作を行うに至った原因が、車両の走行環境において不可避な操作によるものではない他の原因によるものと推定された場合、運転技能をマイナス評価してもよい。
【0010】
また、運転操作は操舵角を調節するステアリング操作を含み、修正操作検出部は、操舵の回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられた後、切り換え後の方向への操舵の回転量が所定の切返し判定閾値以上となった場合に、操舵の切返しが発生したと判定し、一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、走行距離が所定の距離閾値に到達する前に他の方向から一の方向への操舵の切返しを検出したときに、ステアリング操作の修正操作を検出してもよい。
【0011】
また、距離閾値が、車両の走行シーンに応じて設定されてもよい。
【0012】
また、運転操作は操舵角を調節するステアリング操作を含み、修正操作検出部は、操舵の回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられた後、切り換え後の方向への操舵の回転量が所定の切返し判定閾値以上となった場合に、操舵の切返しが発生したと判定し、一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、所定時間内に他の方向から一の方向への操舵の切返しを検出したときに、ステアリング操作の修正操作を検出してもよい。
【0013】
また、所定時間が、車両の走行シーンに応じて設定されてもよい。
【0014】
また、運転操作は前後加速度を調節する操作を含み、修正操作検出部は、加速度が所定の加速度閾値を超えてからの経過時間が所定時間を経過したときに、運転操作の修正操作を検出してもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、評価精度を向上可能な自動車の運転技能評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る運転技能評価システムの構成例を示すブロック図である。
図2】機械学習時に入力する修正操作の原因一覧の例を示す説明図である。
図3】ステアリング操作の修正操作の検出方法を示す説明図である。
図4】走行シーンに応じて設定される距離閾値及び操作時間の例を示す。
図5】前後加速度を調節する操作の修正操作の検出方法を示す説明図である。
図6】運転技能の評価結果を通知する表示の一例を示す説明図である。
図7】同実施形態に係る運転技能評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図8】ステアリング操作の修正操作を検出する処理の一例を示すフローチャートである。
図9】前後加速度を調節する操作の修正操作を検出する処理の一例を示すフローチャートである。
図10】管理サーバを利用した運転技能評価システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.運転技能評価システムの概略>
まず、本実施形態に係る運転技能評価システムの概略を説明する。
【0019】
安全運転が行われる社会を実現する上で、自動車の運転操作の内容に基づいてドライバの運転技能を評価するシステムは重要と考えられる。ただし、運転技能が高い運転操作というものを一律に特定することは困難である。例えば、熟練ドライバであってもコーナリング中の操作等には個人差がある。また、運転技能が高いドライバが運転する場合、同乗者は安心して乗ることができると考えることもできるが、同乗者が安心できる運転というものも一律に特定することは困難である。このため、ある場面において特定の操作を正解とし、当該正解となる運転操作から逸脱した操作を問題であると評価した場合、運転技能を適切に評価できないおそれがある。
【0020】
そこで、本実施形態に係る運転技能評価システムでは、「ドライバ自身の意図通りに車両を操縦できており、運転操作の修正が少ない運転」を「運転技能が高い運転」として捉え、運転技能評価システムが、ドライバによる運転操作の修正操作を検出し、かつ、当該修正操作の原因を推定するように構築されている。また、本実施形態に運転技能評価システムは、推定した修正操作の原因に基づいてドライバの運転技能を評価し、当該評価の結果をドライバへフィードバックするための通知を行うように構築されている。
【0021】
従来、ドライバによる車両の運転操作自体あるいは運転操作に伴って現れる車両の挙動自体を評価する技術は提案されていたものの、修正操作の原因となる操作まで考慮する技術は提案されていない。本実施形態に係る運転技能評価システムでは、運転操作の修正操作の検出に用いる情報として、ステアリング又は車輪の操舵角及び前後加速度の情報が用いられる。車両の挙動に対して、ドライバの運転操作が影響を与え得る操作として、ステアリング操作、ブレーキ操作及びアクセル操作が挙げられる。したがって、操舵角及び前後加速度を時系列で検出することにより、ドライバの運転操作による車両の挙動への影響を検知することができ、運転操作の修正操作の推定が可能になる。また、本実施形態に係る運転技能評価システムは、修正操作の原因となる操作を推定可能に構成されることで、ドライバの根本的な運転技能を評価可能になっている。
【0022】
<2.運転技能評価システムの構成例>
次に、本発明の実施の形態に係る運転技能評価システムの構成例を説明する。図1は、本実施形態に係る運転技能評価システム1の構成例を示すブロック図である。
【0023】
運転技能評価システム1は、運転技能評価装置10、検出機器20及び通知部30を備え、車両に搭載される。検出機器20は、運転技能の評価に用いる種々の車両データを収集し、運転技能評価装置10へ出力する。運転技能評価装置10は、収集された車両データに基づいてドライバの運転技能を評価する。通知部30は、運転技能評価装置10による運転技能の評価の結果をドライバへ通知する。
【0024】
(2-1.検出機器)
検出機器20は、車両操作/挙動センサ21、GPSアンテナ23、車外撮影カメラ25及び周囲環境センサ27を含む。車両操作/挙動センサ21、GPSアンテナ23、車外撮影カメラ25及び周囲環境センサ27は、それぞれ直接的に、又は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して運転技能評価装置10に接続されている。
【0025】
(2-1-1.車両操作/挙動センサ)
車両操作/挙動センサ21は、車両の操作状態及び挙動を検出する少なくとも一つのセンサからなる。本実施形態において、車両操作/挙動センサ21は、少なくとも前後加速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量及び操舵角を検出する。例えば、車両操作/挙動センサ21は、加速度センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ及び舵角センサを含む。舵角センサは、ステアリングの操舵角を検出するセンサであってもよく、車輪の操舵角を検出するセンサであってもよい。以下、車両操作/挙動センサ21が検出した情報をまとめて車両の制御情報と総称する。車両操作/挙動センサ21は、検出した車両の制御情報を運転技能評価装置10へ送信する。なお、車両操作/挙動センサ21は、上記以外の車両の操作状態又は挙動を検出するセンサを含んでいてもよい。
【0026】
(2-1-2.GPSアンテナ)
GPSアンテナ23は、GPS(Global Positioning System)衛星からの衛星信号を受信する。GPSアンテナ23は、受信した衛星信号に含まれる車両の地図データ上の位置情報を運転技能評価装置10へ送信する。なお、GPSアンテナ23の代わりに、車両の位置を特定する他の衛星システムからの衛星信号を受信するアンテナが備えられていてもよい。
【0027】
(2-1-3.車外撮影カメラ)
車外撮影カメラ25は、車両の周囲を撮影した画像データを生成する。車外撮影カメラ25は、車両の安全機能として搭載されるものであってもよく、運転技能評価に用いる情報収集のために搭載されるものであってもよい。車外撮影カメラ25は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを運転技能評価装置10へ送信する。車外撮影カメラ25は、車両の前方、側方及び後方のうちの少なくともいずれかの方向を撮影可能に設けられた一つ又は複数のカメラからなる。
【0028】
(2-1-4.周囲環境センサ)
周囲環境センサ27は、車両の周囲の人物や障害物を検出するセンサである。周囲環境センサ27は、例えば、高周波レーダセンサ、超音波センサ、LiDARのうちの一つ又は複数を含んで構成される。検出される障害物は、他車両や自転車、建造物、交通標識、交通信号機、自然物、その他、車両の周囲に存在するあらゆる物体を含む。
【0029】
(2-2.通知部)
通知部30は、音声出力装置31及び表示装置33を含む。音声出力装置31は、運転技能評価装置10により駆動されて、運転技能の評価の結果を音声により通知する。音声出力装置31は、車両に搭載された音響システムのスピーカであってもよく、運転技能評価システム1専用のスピーカであってもよい。表示装置33は、運転技能評価装置10により駆動されて、運転技能の評価の結果を画像表示することにより通知する。表示装置33は、インストルメントパネル内に設けられたディスプレイであってもよく、ナビゲーションシステムのディスプレイであってもよく、運転技能評価システム1専用のディスプレイであってもよい。
【0030】
(2-3.運転技能評価装置)
運転技能評価装置10は、制御部50及び記憶部61を含んで構成される。制御部50の一部又は全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置及びGPU(Graphic Processing Unit)等の画像処理装置により構成される。ただし、制御部50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0031】
(2-3-1.記憶部)
記憶部61は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子、あるいは、HDD(Hard Disk Drive)やCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)フラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体を含んで構成される。記憶部61は、制御部50により実行されるソフトウェアプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメタ、取得した情報、演算結果等を記憶する。
【0032】
また、記憶部61には、あらかじめ準備された修正操作原因モデルが格納されている。つまり、修正操作原因モデルは、例えば、運転技能評価装置10とは別のコンピュータを用いた機械学習によりあらかじめ生成された後に、記憶部61に格納される。修正操作原因モデルは、修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報、及び、修正操作を行うに至った原因、を入力データとする学習モデルである。
【0033】
車両の走行シーンの情報は、主として想定される車両の走行速度に応じて分類される走行環境のデータであり、例えば高速道走行、一般道走行、住宅街の狭路走行、駐車場内走行等のうちのいずれかに分類されている。車両の制御情報は、上述の車両操作/挙動センサ21により検出される情報に対応するデータであり、少なくとも前後加速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量及び操舵角のデータを含む。車両の周囲環境の情報は、上述のGPSアンテナ23又は周囲環境センサ27により検出される情報に対応するデータであり、少なくとも車両の速度や進行方向に影響を与え得る他車両や歩行者、自転車、その他障害物のデータを含む。
【0034】
修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報及び周囲環境の情報は、生成される学習モデルの精度が向上するように、修正操作を行った時刻の前後の適宜の時刻におけるデータが用いられる。当該時間間隔は、例えば、一般のドライバが車両の走行中にどれだけ先を見ながら運転しているかを考慮して設定することが好ましい。例えば、修正操作を行った時刻よりも2.5秒前及び修正操作を行った時刻の2.5秒後のデータを用いることができる。ただし、直線の道路を走行しているか、カーブを走行しているかによっても、ドライバがどれだけ先を見ているかが変わり得る。したがって、想定される走行路に応じて時間間隔を異ならせてもよい。
【0035】
修正操作を行うに至った原因としては、様々な理由が考えられる。本実施形態では、ドライバの運転技能に起因する修正操作の原因として、ステアリング操作に関連する原因、アクセル操作に関連する原因、ブレーキ操作に関連する原因及び車速に関連する原因が用いられる。特に、ステアリング操作に関し、実際に修正操作が行われるよりも前のタイミングで、修正操作の原因となる操作をしていると考えられる。
【0036】
図2は、修正操作の原因一覧の例を示す説明図である。
ステアリング操作に関連する原因としては、以下の原因が含まれる。
-ステアリングを切りすぎ
-ステアリングを戻しすぎ
-ステアリングを切り足りない
-ステアリングを戻し足りない
【0037】
また、アクセル操作に関連する原因としては、以下の原因が含まれる。
-アクセルを踏みすぎ
-アクセルを戻しすぎ
【0038】
また、ブレーキ操作に関連する原因としては、以下の原因が含まれる。
-ブレーキを踏みすぎ
-ブレーキを踏み足りない
【0039】
また、車速に関連する原因としては、以下の原因が含まれる。
-車速が遅い
-車速が早い
【0040】
また、修正操作の原因としては、ドライバの運転技能によるものもあれば、車両の走行環境において不可避な操作によるものもあり得る。このため、周囲の交通参加者や障害物等との接触を避けること等を目的とするような車両の走行環境において不可避な操作に起因する修正操作の原因として、「問題なし」の選択肢も含まれている。
【0041】
上述のように、本実施形態に係る運転技能評価システム1では、運転操作の修正操作の検出に用いる情報として、操舵角及び前後加速度の情報が用いられる。車両の挙動に対して、ドライバの運転操作が影響を与え得る操作として、ステアリング操作、ブレーキ操作及びアクセル操作が挙げられる。このため、図2に示した修正操作の原因一覧では、ステアリング操作、ブレーキ操作及びアクセル操作に関する原因が列挙されている。
【0042】
本実施形態に係る運転技能評価システム1では、事前準備として、機械学習により修正操作原因モデルを生成するための入力データ(学習データ)としての複数のデータセットを用意し、機械学習を行うことで修正操作原因モデルを生成する。それぞれのデータセットは、例えば車両の走行中に運転操作の修正操作を行った際の車両の走行シーンの情報、車両の制御情報及び車両の周囲環境の情報のデータと、当該データを収集したケースでの修正操作の原因のデータとにより構成される。これらのデータセットは、実際に車両を走行させて収集されたデータであってもよく、シミュレーション等により用意されたデータであってもよい。
【0043】
(2-3-2.制御部)
制御部50は、車両データ収集部51、修正操作検出部53、原因推定部55、評価部57及び通知制御部59を備える。制御部50は、記憶部61に記憶されたプログラムを実行することにより種々の演算処理を実行する。制御部50を構成する各部は、具体的には、演算処理装置又は画像処理装置によるプログラムの実行により実現される機能である。
【0044】
(2-3-2-1.車両データ収集部)
車両データ収集部51は、検出機器20からの出力信号に基づいて種々の車両データを収集する。具体的に、車両データ収集部51は、車両操作/挙動センサ21からの出力信号に基づいて、少なくとも前後加速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量及び操舵角等の車両の制御情報のデータを収集し、記憶部61に記憶させる。また、車両データ収集部51は、GPSアンテナ23からの出力信号に基づいて、地図データ上の車両の位置のデータを収集し、記憶部61に記憶させる。
【0045】
また、車両データ収集部51は、車外撮影カメラ25及び周囲環境センサ27からの出力信号に基づいて、車両の周囲環境のデータを収集し、記憶部61に記憶させる。例えば、車両データ収集部51は、車外撮影カメラ25から送信される画像データを画像処理し、物体検知の技術を用いて、車両の周囲に存在する人物や他車両、自転車、建造物、自然物等を特定するとともに、車両に対するこれらの物体の位置、車両とこれらの物体との間の距離や相対速度を算出する。あるいは、車両データ収集部51は、周囲環境センサ27から送信されるセンサ信号に基づいて、車両の周囲に存在する物体を特定するとともに、車両に対するこれらの物体の位置、車両とこれらの物体との間の距離や相対速度を算出してもよい。
【0046】
なお、車両データ収集部51は、車車間通信又は路車間通信、移動体通信網等の通信手段を介して車外の装置から送信される情報を取得し、上記の車両の周囲環境のデータの一部を特定してもよい。また、車両データ収集部51は、GPSアンテナ23により取得される車両の位置情報を用いて地図データ上の車両の位置を特定し、上記の車両の周囲環境の情報の一部を特定してもよい。
【0047】
車両データ収集部51は、収集したそれぞれのデータを時系列のデータとして記憶部61に記憶させる。
【0048】
(2-3-2-2.修正操作検出部)
修正操作検出部53は、ドライバの運転操作の修正操作を検出する。上述のように、本実施形態に係る運転技能評価システム1において、修正操作検出部53は、操舵角及び前後加速度の情報を用いて運転操作の修正操作を検出するように構成される。
【0049】
[ステアリング操作の修正操作の検出]
操舵角を調節するステアリング操作の修正操作を検出する場合、修正操作検出部53は、操舵角の時間変化の情報に基づいてステアリング操作の修正操作を検出する。具体的に、修正操作検出部53は、ステアリングの回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられた後、切り換え後の方向への操舵の回転量が所定の切返し判定閾値以上となった場合に、操舵の切返しが発生したと判定する。例えば、ステアリングの回転方向が右から左に切り換えられた後、そのまま左方向へ一定角度回転させたときに、修正操作検出部53は、「ステアリングを右に切る動作から左に切る動作に変わった」と判定する。ただし、コーナリング時等、走行路に沿って走行する場合等に自然に発生するステアリング操作と、ステアリング操作の修正操作とを区別する必要がある。このため、修正操作検出部53は、一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、走行距離が所定の距離閾値に到達する前に他の方向から一の方向への操舵の切返しを検出したときに、ステアリング操作の修正操作を検出する。
【0050】
図3は、ステアリング操作の修正操作の検出方法を説明するために示す図である。図3の下方には、車両が右カーブを通過する際の各時刻t1~t8における車両の位置が示されている。また、図3に示す二つのグラフのうちの下のグラフは各時刻t1~t8における操舵角θを示し、上のグラフは操舵角が左右に反転した時刻からの操舵角の変化量Δθを示している。
【0051】
図3に示す例では、時刻t1,t2,t4,t5,t6,t7,t8において、ステアリングの回転方向が左から右、あるいは、右から左へと切り換えられている。このうち、時刻t4,t5,t8において回転方向が切り換えられた後の操舵角の変化量Δθが、あらかじめ設定された切返し判定閾値Δθthreを超えている。したがって、修正操作検出部53は、時刻t4,t5,t8において操舵の切返しが発生したと判定する。この場合、修正操作検出部53は、ステアリングの回転方向が切り換えられた後の操舵角の変化量Δθが切返し判定閾値Δθthreを超えない時刻t1,t2,t6,t7においては、操舵の切返しが発生したとは判定しない。
【0052】
また、時刻t4において、操舵の切返しが発生した後、走行距離D1が所定の距離閾値Dthreに到達する前の時刻t5において、再び操舵の切返しが発生している。このため、修正操作検出部53は、時刻t4~t5及び時刻t5~t6の一連の動作をステアリング操作の修正操作として検出する。一方、時刻t5において、操舵の切返しが発生した後、走行距離D1が所定の距離閾値Dthreに到達する前の時刻t6において、ステアリングの回転方向が切り換えられているが、時刻t6は再び操舵の切返しが発生したとは判定されないことから、時刻t5~t6及び時刻t6~t7の一連の動作は、ステアリング操作の修正操作としては検出されない。さらに、修正操作検出部53は、操舵の切返しが発生した後、再び操舵の切返しが発生するまでの走行距離D3が所定の距離閾値Dthreを超える時刻t8以降の動作をステアリング操作の修正操作としては検出しない。
【0053】
操舵の切返しの発生を判定する切返し判定閾値Δθthreは、例えば熟練度が一般的であると想定されるドライバのステアリング操作の揺れの大きさのデータに基づいて適切な値に設定することができる。車両のステアリング装置が車速によって操作性(ステアリングの重さ)を調節するように構成されている場合、切返し判定閾値Δθthreは、走行中の車両の速度に応じて変更されてもよい。
【0054】
また、ステアリング操作の修正操作を判定する距離閾値Dthreも同様に、例えば熟練度が一般的であると想定されるドライバがステアリング操作を修正するまでの走行距離のデータに基づいて適切な値に設定することができる。その際に、距離閾値Dthreは、車両の走行シーンに応じて設定される可変値であってもよい。これは、操舵の切返しが発生した後、再び操舵の切返しが発生するまでの走行距離Dは、車速によって異なるからである。
【0055】
図4は、走行シーンに応じて設定される距離閾値Dthreの例を示す。図4に示す例では、走行シーンが「超低速」、「低速」、「中速」及び「高速」に分類されている。「超低速」は、例えば駐車場走行時を想定した走行シーンであり、「低速」は、例えば住宅街の狭路走行時を想定した走行シーンである。また、「中速」は、例えば一般道走行時を想定した走行シーンであり、「高速」は、例えば高速道走行時を想定した走行シーンである。「超低速」の距離閾値Dthreは5mに設定され、「低速」の距離閾値Dthreは20mに設定され、「中速」の距離閾値Dthreは40mに設定され、「高速」の距離閾値Dthreは60mに設定されている。
【0056】
走行シーンは、例えば、GPSアンテナ23を用いて得られる車両の位置情報、あらかじめ設定された所定の距離範囲での平均車速の情報、又は車外撮影カメラ25を用いて得られる車両の周囲環境の情報等に基づいて推定することができる。修正操作検出部53は、推定される走行シーンに応じて距離閾値Dthreを設定した上で、一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、走行距離Dが距離閾値Dthreに到達する前に他の方向から一の方向への操舵の切返しを検出したときに、ステアリング操作の修正操作を検出する。
【0057】
なお、ステアリング操作の修正操作を判定する基準として、操舵の切返しが発生した後、再び操舵の切返しが発生するまでの走行距離に代えて、操作時間を用いてもよい。具体的に、修正操作検出部53は、一の方向から他の方向への操舵の切返しを検出した後、所定の操作時間内に他の方向から一の方向への操舵の切返しを検出したときに、ステアリング操作の修正操作を検出してもよい。
【0058】
ステアリング操作の修正操作を判定する操作時間も同様に、例えば熟練度が一般的であると想定されるドライバがステアリング操作を修正するまでの操作時間のデータに基づいて適切な値に設定することができる。その際に、操作時間は、車両の走行シーンに応じて設定される可変値であってもよい。これは、操舵の切返しが発生した後、再び操舵の切返しが発生するまでの操作時間は、車速によって異なるからである。図4に示した例では、「超低速」の操作時間は1.5秒に設定され、「低速」の操作時間は2.0秒に設定され、「中速」の操作時間は2.5秒に設定され、「高速」の操作時間は3.0秒に設定されている。
【0059】
[前後加速度を調節する操作の修正操作の検出]
前後加速度を調節する操作の修正操作を検出する場合、修正操作検出部53は、前後加速度の時間変化の情報に基づいて前後加速度を調節する操作の修正操作を検出する。具体的に、修正操作検出部53は、加速度が所定の加速度閾値Gthreを超えてからの経過時間が所定時間を経過したときに、前後加速度を調節する操作の修正操作を検出する。前後加速度を調節する操作の修正操作となる急激なアクセル操作及びブレーキ操作は、前後加速度の増大化に直結する。このため、前後加速度が所定の加速度閾値Gthreを超えていることが条件となっている。また、修正操作とは関係なく、ごく短時間だけ前後加速度が増大した場合に修正操作と判定されることがないように、所定時間以上連続して加速度が加速度閾値Gthreを超えた場合に、前後加速度を調節する操作の修正操作が検出されるように構成されている。
【0060】
図5は、前後加速度を調節する操作の修正操作の検出方法を説明するために示す図である。図5は、時間の経過に伴う前後加速度の変化の一例を示し、加速度及び減速度(負の加速度)についてそれぞれ加速度閾値Gthreが0.2,-0.2に設定されている。加速度閾値Gthreは、通常の前後加速度よりも大きい加減速が生じている期間の加速度に基づいて適宜の値に設定される。
【0061】
図5に示す例では、時刻t11,t13において、加速度が加速度閾値Gthreを超えている。このうち、時刻t11において加速度が加速度閾値Gthreを超えてからの経過時間T1があらかじめ設定された時間閾値Tthreに到達する前に、加速度は加速度閾値Gthreを下回っている。一方、時刻t13において加速度が加速度閾値Gthreを超えてからの経過時間T2は、時間閾値Tthreを超えている。このため、修正操作検出部53は、時刻t13~t14の一連の動作を、前後加速度を調節する操作の修正操作として検出する。この場合、修正操作検出部53は、時刻t11~t12の一連の動作を、前後加速度を修正する操作の修正操作としては検出しない。
【0062】
また、時刻t15において、減速度が減速度の閾値Gthreを超えている。時刻t15において減速度が減速度の閾値Gthreを超えてからの経過時間T3は、時間閾値Tthreを超えている。このため、修正操作検出部53は、時刻t15~t16の一連の動作を、前後加速度を調節する操作の修正操作として検出する。
【0063】
前後加速度を調節する操作の修正操作を判定する時間閾値Tthreも同様に、例えば熟練度が一般的であると想定されるドライバがアクセル操作あるいはブレーキ操作を修正する際に用いられる操作時間のデータに基づいて適切な値に設定することができる。その際に、時間閾値Threは、車両の走行シーンに応じて設定される可変値であってもよい。これは、例えば、停車と発進を繰り返す市街地と、定速で走行する高速道とでは、速度の調整範囲が異なり、停車と発進を伴う市街地の方が、操作時間が長くなると考えられるからである。
【0064】
このようにして、本実施形態に係る運転技能評価システム1では、修正操作検出部53により、ステアリング操作の修正操作及び前後加速度を調節する修正操作が検出される。なお、ステアリング操作の修正操作及び前後加速度を調節する修正操作の検出方法は上述の例に限られるものではなく、他の方法であってもよい。
【0065】
(2-3-2-3.原因推定部)
原因推定部55は、修正操作検出部53により検出された修正操作を行った時刻における車両の走行状態の情報、及び、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の走行状態の情報に基づいて当該修正操作を行うに至った原因を推定する。本実施形態において、原因推定部55は、記憶部61に格納された修正操作原因モデルを用いて、記憶部61に蓄積された車両データから、ドライバが修正操作を行うに至った原因を推定する。
【0066】
上述のとおり、修正操作原因モデルは、修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報、及び、修正操作を行うに至った原因、を入力データとする機械学習により生成されている。このため、修正操作を行った時刻における車両の走行状態の情報として、修正操作検出部53により検出された修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報が用いられる。原因推定部55は、記憶部61に蓄積された走行シーンのデータのうち、修正操作を行った時刻に対応するデータを抽出する。
【0067】
また、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の走行状態の情報として、修正操作検出部53により検出された修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、及び、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報が用いられる。原因推定部55は、記憶部61に蓄積された車両データのうち、修正操作原因モデルの生成時に用いられた時間間隔の設定にしたがって、対応する時刻の車両データを抽出する。抽出される車両データの、修正操作を行った時刻からの時間間隔は、固定であってもよく、直線道路又はカーブ等の走行路によって異ならせてもよい。
【0068】
なお、「修正操作を行った時刻」は、修正操作検出部53により検出された修正操作の開始から終了までの期間(例えば、図3の時刻t4~t5及び時刻t5~t6)のうちのいずれかの時刻となるように設定される。例えば、一の方向から他の方向への操舵の切返しが行われた後、走行距離が所定の距離閾値に到達する前に他の方向から一の方向への操舵の切返しが行われたとき(例えば、図3の時刻t5)を「修正操作を行った時刻」とする。この他、一連の修正操作の開始時刻(例えば、図3の時刻t4)を「修正操作を行った時刻」としてもよく、一連の修正操作の終了時刻(例えば、図3の時刻t6)を「修正操作を行った時刻」としてもよく、一連の修正操作が行われた期間の中間の時刻を「修正操作を行った時刻」としてもよい。さらに、「修正操作を行った時刻」を「修正操作を行った時間」とし、修正操作を行った時刻の所定時間前の時刻を一連の修正操作の開始時刻(例えば、図3の時刻t4)の所定時間前の時刻とする一方、修正操作を行った時刻の所定時間後の時刻を修正操作の終了時刻(例えば、図3の時刻t6)の所定時間後の時刻としてもよい。
【0069】
原因推定部55は、抽出した修正操作を行った時刻における車両の走行シーンのデータ、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報のデータ、及び修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境のデータを修正操作原因モデルに入力し、修正操作の原因を求める。本実施形態では、図2に示す修正操作原因一覧のいずれかが修正操作の原因として求められる。
【0070】
(2-3-2-4.評価部)
評価部57は、原因推定部55による修正操作の原因の推定の結果に基づいて、ドライバの運転技能を評価する。評価方法は特に限定されるものではないが、例えば、ステアリング操作又は前後加速度を調節する操作の修正操作が検出されるごとに減点評価する方法とすることができる。
【0071】
例えば、評価部57は、運転操作の修正操作がない場合を満点として、運転操作の修正操作が検出されるごとにマイナス評価するようにしてもよい。この場合、評価部57は、原因推定部55により、修正操作を行うに至った原因の推定結果が「問題なし」であった場合、運転技能をマイナス評価しない一方、修正操作を行うに至った原因の推定結果が、「問題なし」以外の運転技能に起因するものであった場合、運転技能をマイナス評価する。具体的に、評価部57は、運転操作の修正操作がない場合を100点満点として、運転操作の修正操作が検出され、その原因が「問題なし」以外の原因であったものについてそれぞれ10点減点するようにしてもよい。
【0072】
(2-3-2-5.通知制御部)
通知制御部59は、通知部30の駆動を制御することにより、評価部57によるドライバの運転技能の評価の結果を通知部30により通知させる。本実施形態において、通知制御部59は、運転技能の評価の結果を表示装置33に表示させるとともに、運転技能の評価の結果を通知する音声を音声出力装置31から出力させる。通知制御部59は、例えば、運転技能の評価の終了時に運転技能の評価の結果を通知させてもよく、ドライバ等のリクエストに応じて運転技能の評価の結果を通知させてもよい。
【0073】
図6は、表示装置33に表示される、運転技能の評価結果を通知する表示の例を示す。図6に示した表示の例では、総合評価結果と併せて、直線、左カーブ、右カーブそれぞれを走行したときの運転技能の評価結果が表示されている。直線、左カーブ、右カーブそれぞれについての運転技能の評価結果の評価点は、いずれも100点を満点とし、修正操作の原因が「問題なし」以外の原因であった修正操作の検出ごとに10点減点した結果である。総合評価結果の評価点は、直線、左カーブ、右カーブそれぞれについての運転技能の評価結果の評価点の平均点である。
【0074】
図6は、直線及び左カーブの走行時には修正操作の原因が「問題なし」以外の原因であった修正操作が検出されなかった一方で、右カーブの走行時にはステアリング操作に起因する修正操作が2回検出された場合の評価結果の例を示している。このため、直線及び左カーブについての評価点が100点となっている一方、右カーブについての評価点が80点となっている。その結果、総合評価結果が93点となっている。
【0075】
また、図6に示した表示の例では、運転操作に対するアドバイスの通知も含まれている。修正操作の原因が「問題なし」以外の原因であった修正操作が検出されなかった直線及び左カーブについては、「運転操作の修正が少ない安定した走行ができています。」とテキスト表示されるとともに、「ステアリング操作」、「ブレーキ操作」及び「アクセル操作」それぞれについて「〇」が付されている。一方、ステアリング操作に起因する修正操作が2回検出された右カーブについては、当該原因に基づき「ステアリングの切りすぎや切る速度に注意しましょう。」とテキスト表示されている。また、「ブレーキ操作」及び「アクセル操作」それぞれについて「〇」が付されている一方、「ステアリング操作」について「×」が付されている。
【0076】
さらに、図6に示した表示の例では、直線、左カーブ及び右カーブについて、運転技能を評価した走行区間が図示されている。ステアリング操作に起因する修正操作が検出された右カーブについては、当該修正操作を行った時刻における車両の位置が走行路上に「×」で示されている。このため、ドライバは、運転操作の修正操作を行った位置を知ることができ、自身の運転技能の評価が低いポイントを認識しやすくなっている。
【0077】
通知制御部59は、図6に示した表示と併せて、音声出力装置31を制御して表示内容の一部又は全部を音声により通知させる。なお、運転技能の評価の結果の通知は、音声出力装置31又は表示装置33のいずれか一方のみであってもよいが、音声出力及び表示をともに利用して評価の結果を通知することにより、ドライバが評価の結果を理解しやすくなって、運転技能の向上に資することができる。
【0078】
ここまで、本実施形態に係る運転技能評価システム1の構成例を説明した。運転技能評価システム1を用いた運転技能の評価は、車両の通常使用時においてイグニッションスイッチのオンに伴って開始され、イグニッションスイッチのオフに伴って終了されてもよい。あるいは、運転技能評価システム1を用いた運転技能の評価は、車両の通常使用時において、ドライバが開始の設定をすることにより開始され、ドライバが終了の設定をすることにより終了されてもよい。
【0079】
また、運転技能評価システム1を用いた運転技能の評価は、あらかじめ設定された走行条件を満たす走行期間に収集されたデータを用いて行われてもよく、特定のテストコース等を走行中に収集されたデータを用いて行われてもよい。さらに、運転技能評価システム1を用いた運転技能の評価は、車両の走行中にリアルタイムで実行されてもよく、あるいは、車両の走行中に蓄積された車両データを用いて、適宜のタイミングで実行されてもよい。
【0080】
<3.運転技能評価システムの動作例>
次に、本実施形態に係る運転技能評価システム1を構成する運転技能評価装置10の動作例を具体的に説明する。
【0081】
図7は、運転技能評価装置10の制御部50により実行される処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する動作例は、所定の運転技能の評価の開始条件の成立から終了条件の成立までの期間に車両データを収集するとともに運転技能の評価をリアルタイムで行う例である。
【0082】
まず、制御部50の評価部57は、運転技能の評価の開始条件が成立しているか否かを判別する(ステップS11)。開始条件は、例えば、イグニッションスイッチがオンにされていることであってもよく、ドライバ等により操作スイッチやタッチパネル等が操作されて評価の開始の設定がされていることであってもよい。評価部57は、開始条件が成立していない場合(S11/No)、開始条件が成立していると判別されるまでステップS11の判別を繰り返す。
【0083】
開始条件が成立している場合(S11/Yes)、車両データ収集部51は、車両操作/挙動センサ21からの出力信号に基づいて、少なくとも前後加速度、アクセル操作量、ブレーキ操作量及び操舵角等の車両の制御情報のデータを収集する(ステップS13)。本実施形態において、車両データ収集部51は、GPSアンテナ23からの出力信号に基づいて、地図データ上の車両の位置のデータを併せて収集する。車両データ収集部51は、あらかじめ設定された処理サイクルごとに車両の制御情報のデータ及び車両の一のデータを収集し、時系列のデータとして記憶部61に記憶させる。
【0084】
次いで、車両データ収集部51は、車外撮影カメラ25及び周囲環境センサ27からの出力信号に基づいて、車両の周囲環境のデータを収集する(ステップS15)。例えば、車両データ収集部51は、車両の周囲に存在する人物や物体等を特定するとともに、車両に対するこれらの物体の位置、車両とこれらの物体との間の距離や相対速度を算出する。車両データ収集部51は、車車間通信又は路車間通信、移動体通信網等の通信手段を介して車外の装置から送信される情報、あるいは、GPSアンテナ23により取得される車両の位置情報を用いて、車両の周囲環境のデータの一部を特定してもよい。車両データ収集部51は、あらかじめ設定された処理サイクルごとに車両の周囲環境のデータを収集し、時系列のデータとして記憶部61に記憶させる。
【0085】
次いで、修正操作検出部53は、ステップS13及びステップS15において収集された車両データに基づいて、車両の走行シーンを判定する(ステップS17)。例えば、修正操作検出部53は、GPSアンテナ23を用いて得られる車両の位置情報、あらかじめ設定された所定の距離範囲での平均車速の情報、又は車外撮影カメラ25を用いて得られる車両の周囲環境の情報等に基づいて、走行シーンを推定することができる。
【0086】
次いで、修正操作検出部53は、記憶部61に蓄積された車両データに基づいて、運転操作の修正操作の検出処理を実行する(ステップS19)。本実施形態において、修正操作検出部53は、ステアリング操作の修正操作及び前後加速度を調節する操作の修正操作の検出を行う。以下、ステアリング操作の修正操作及び前後加速度を調節する操作の修正操作それぞれの検出処理の例を説明する。
【0087】
図8は、ステアリング操作の修正操作を検出する処理の一例を示すフローチャートである。
修正操作検出部53は、操舵角のデータに基づいてステアリングの回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられたか否かを判別する(ステップS41)。ステアリングの回転方向が切り換えられていない場合(S41/No)、修正操作検出部53はステップS41の判別を繰り返す。ステアリングの回転方向が右から左又は左から右へ切り換えられた場合(S41/Yes)、修正操作検出部53は、操舵角の変化量Δθと走行距離Dの値をリセットするとともに、ステアリングの回転方向が切り換えられた時刻からの操舵角の変化量Δθ、及び、ステアリングの回転方向が切り換えられた時刻からの走行距離Dの計測を開始する(ステップS43)。
【0088】
次いで、修正操作検出部53は、操舵角の変化量Δθがあらかじめ設定された切返し判定閾値Δθthreを超えたか否かを判別する(ステップS45)。車両のステアリング装置が車速によって操作性(ステアリングの重さ)を調節するように構成されている場合、修正操作検出部53は、車両の速度に応じて切返し判定閾値Δθthreを変更してもよい。
【0089】
操舵角の変化量Δθが切返し判定閾値Δθthre以下である場合(S45/No)、修正操作検出部53は、ステアリングの回転方向が切り換えられたか否かを判別する(ステップS47)。ステップS47において、修正操作検出部53は、ステップS41で検出された操舵角の反転方向とは逆方向に操舵角が反転したか否かを判別する。ステアリングの回転方向が切り換えられた場合(S47/Yes)、修正操作検出部53は、ステップS43に戻って、操舵角の変化量Δθと走行距離Dの値をリセットするとともに、ステアリングの回転方向が切り換えられた時刻からの操舵角の変化量Δθ、及び、ステアリングの回転方向が切り換えられた時刻からの走行距離Dの計測を開始する(ステップS43)。
【0090】
一方、ステアリングの回転方向が切り換えられていない場合(S47/No)、修正操作検出部53は、ステップS45に戻って、操舵角の変化量Δθが切返し判定閾値Δθthreを超えたか否かの判別を繰り返す(ステップS45)。操舵角の変化量Δθが切返し判定閾値Δθthreを超えた場合(S45/Yes)、修正操作検出部53は、走行距離Dがあらかじめ設定された距離閾値Dthre未満であるか否かを判別する(ステップS49)。本実施形態において、修正操作検出部53は、図4に示した例にしたがって、ステップS17で判定された車両の走行シーンに応じて距離閾値Dthreを設定する。
【0091】
なお、走行距離Dが距離閾値Dthre未満であるか否かを判定する代わりに、ステアリングの回転方向が切り換えられた時刻からの経過時間が所定の操作時間未満であるか否かを判定してもよい。この場合においても、修正操作検出部53は、図4に示した例にしたがって、ステップS17で判定された車両の走行シーンに応じて操作時間を設定する。
【0092】
走行距離Dが距離閾値Dthreに到達している場合(S49/No)、行われているステアリング操作が、運転中に自然に発生する操作であるものとしてそのままルーチンを終了させてステップS41に戻る。一方、走行距離Dが距離閾値Dthre未満である場合(S49/Yes)、修正操作検出部53は、ステアリングの回転方向が切り換えられたか否かを判別する(ステップS51)。ステップS51において、修正操作検出部53は、直前にステップS41あるいはステップS47で検出された操舵角の反転方向とは逆方向に操舵角が反転したか否かを判別する。
【0093】
ステアリングの回転方向が切り換えられていない場合(S51/No)、ステップS49に戻る一方、ステアリングの回転方向が切り換えられた場合(S51/Yes)、修正操作検出部53は、ステアリング操作の修正操作が検出されたと判断して、修正操作の検出を記憶部61に記憶させる(ステップS53)。修正操作が検出された時刻における車両の走行シーンのデータや、修正操作が検出された時刻の前後における車両データを特定できるように、修正操作検出部53は、修正操作が検出された時刻に紐づけて修正操作の検出を記憶させる。
【0094】
このようにして、修正操作検出部53は、ステップS41~ステップS53までの処理動作を繰り返すことにより、ステアリング操作の修正操作を検出し、記憶部61に記憶させる。
【0095】
図9は、前後加速度を調節する操作の修正操作を検出する処理の一例を示すフローチャートである。
まず、修正操作検出部53は、前後加速度のデータに基づいて、加速度(又は減速度)があらかじめ設定された加速度閾値Gthreを超えたか否かを判別する(ステップS61)。本実施形態において、加速度閾値Gthreは、通常の前後加速度よりも大きい加減速が生じている期間の加速度に基づいて適宜の値に設定される。
【0096】
加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthre以下の場合(S61/No)、修正操作検出部53はステップS61の判別を繰り返す。加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthreを超えた場合(S61/Yes)、修正操作検出部53は、経過時間Tの値をリセットするとともに、加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthreを超えた時刻からの経過時間Tの計時を開始する(ステップS63)。
【0097】
次いで、修正操作検出部53は、経過時間Tがあらかじめ設定された時間閾値Tthreを超えたか否かを判別する(ステップS65)。本実施形態において、修正操作検出部53は、ステップS17で判定された車両の走行シーンに応じて時間閾値Tthreを設定する。
【0098】
経過時間Tが時間閾値Tthre以下の場合(S65/No)、修正操作検出部53は、加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthre以下となったか否かを判別する(ステップS67)。加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthre以下となった場合(S67/Yes)、修正操作検出部53は、ステップS61に戻って、加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthreを超えたか否かの判別を行う(ステップS61)。一方、加速度(又は減速度)が加速度閾値Gthreを超えている場合(S67/No)、修正操作検出部53は、ステップS65に戻って、経過時間Tが時間閾値Tthreを超えたか否かの判別を繰り返す(ステップS65)。
【0099】
経過時間Tが時間閾値Tthreを超えた場合(S65/Yes)、修正操作検出部53は、前後加速度を調節する操作の修正操作が検出されたと判断して、修正操作の検出を記憶部61に記憶させる(ステップS69)。修正操作が検出された時刻における車両の走行シーンのデータや、修正操作が検出された時刻の前後における車両データを特定できるように、修正操作検出部53は、修正操作が検出された時刻に紐づけて修正操作の検出を記憶させる。
【0100】
このようにして、修正操作検出部53は、ステップS61~ステップS69までの処理動作を繰り返すことにより、前後加速度を調節する操作の修正操作を検出し、記憶部61に記憶させる。
【0101】
図7に戻り、ステップS19に次ぐステップS21において、原因推定部55は、修正操作検出部53により運転操作の修正操作が検出されたか否かを判別する(ステップS21)。運転操作の修正操作が検出されていない場合(S21/No)、そのままステップS29へ進む。一方、運転操作の修正操作が検出されている場合(S21/Yes)、原因推定部55は、修正操作の原因を推定する処理を行う(ステップS23)。本実施形態において、原因推定部55は、修正操作を行った時刻における車両の走行シーンのデータ、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報及び車両の周囲環境のデータを入力データとして、あらかじめ記憶部61に格納された修正操作原因モデルを用いて、修正操作の原因を求める。ここでは、図2に示す修正操作原因一覧のいずれかが修正操作の原因として求められる。
【0102】
次いで、評価部57は、原因推定部55により求められた修正操作の原因が「問題なし」であるか否かを判別する(ステップS25)。修正操作の原因が「問題なし」である場合(S25/Yes)、検出された修正操作が、車両の走行環境において不可避的な操作によるものと判断されるため、評価部57は、運転技能をマイナス評価することなくそのままステップS29へ進む。
【0103】
一方、修正操作の原因が「問題なし」ではない場合(S25/No)、検出された修正操作が、ドライバのステアリング操作、あるいは、アクセル操作又はブレーキ操作のいずれかに起因するものと判断されるため、評価部57は、運転技能をマイナス評価してステップS29へ進む。本実施形態において、評価部57は、ドライバの運転技能に起因する修正操作が検出されるごとにマイナス10点を記録する。このとき、直線走行時、右カーブ走行時、左カーブ走行時に分けて、マイナス評価を記録する。
【0104】
次いで、ステップS29において、評価部57は、運転技能の評価の終了条件が成立しているか否かを判別する(ステップS29)終了条件は、例えば、イグニッションスイッチがオフに切り替わったことであってもよく、ドライバ等により操作スイッチやタッチパネル等が操作されて評価の終了の設定がされたことであってもよい。終了条件が成立していない場合(S29/No)、ステップS13に戻って、上述した各ステップの処理を実行する。
【0105】
一方、終了条件が成立している場合(S29/Yes)、評価部57は、運転技能の評価期間における評価結果を求める(ステップS31)。本実施形態では、評価部57は、直線走行時、右カーブ走行時、左カーブ走行時それぞれについて、記録されているマイナス点を100点から引いて評価点とする。また、評価部57は、直線走行時、右カーブ走行時、左カーブ走行時それぞれの評価点の平均点を総合評価点とする。
【0106】
次いで、通知制御部59は、運転技能の評価結果を通知させるための制御信号を生成し、音声出力装置31及び表示装置33へ制御信号を送信する(ステップS33)。例えば、通知制御部59は、ステップS31で求めた評価結果の情報と併せて、直線走行時、右カーブ走行時、左カーブ走行時それぞれについて推定された修正操作の原因のデータと、修正操作が検出された地点のデータとを抽出し、図6に示したような表示データ及び対応する音声データの制御信号を生成し出力する。これにより、音声出力装置31及び表示装置33により運転技能の評価の結果が通知され、ドライバに対して運転技能を向上させるためのアドバイス等が出力される。
【0107】
本実施形態に係る運転技能評価システムにおいて、運転技能評価装置10は、上述したステップS11~ステップS33の演算処理を実行する。これにより、ドライバは、学習モデルやエキスパートドライバによる操作状況等の単一の比較対象との比較ではなく、運転操作の修正操作と当該修正操作を行うに至った原因とに基づいて自身の運転技能を客観的に知ることができる。また、運転技能評価装置10は、運転技能の評価の結果と併せて、修正操作を行うに至った原因に基づくアドバイスを通知する。このため、ドライバは、自身の運転操作の苦手な点あるいは習性を知ることができ、運転技能の向上への意識付けをさせることができる。
【0108】
<4.他の構成例>
ここまでに説明した本実施形態に係る運転技能評価システム1は、修正操作原因モデルが運転技能評価装置10の記憶部61に格納され、修正操作の検出及び修正操作の原因の推定等の処理をすべて運転技能評価装置10の制御部50が実行するように構成されていた。ただし、運転技能評価システム1は、移動体通信等の無線通信手段を介して管理サーバと通信を行いながら、ドライバの運転技能を評価するシステムとして構成することもできる。
【0109】
図10は、管理サーバを利用した運転技能評価システム1Aの構成例を示すブロック図である。
管理サーバ5は、例えばクラウドサーバであり、各車両に搭載された運転技能評価装置10Aと通信を行うための通信装置を備える。通信装置は、管理サーバ5が移動体通信網等の通信手段により運転技能評価装置10と通信を行うためのインタフェースである。また、管理サーバ5は、RAMやROM等の記憶素子、あるいは、HDDやCD、DVD、SSD、USBフラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体等の記憶装置を備える。記憶装置には、少なくとも修正操作原因モデルが格納されている。また、管理サーバ5は、例えば、CPU等の演算処理装置を備える。演算処理装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより種々の演算処理を実行する。
【0110】
管理サーバ5を含む運転技能評価システム1Aにおいて、運転技能評価装置10Aは、管理サーバ5と通信を行うための通信装置35を備える。通信装置35は、運転技能評価装置10が移動体通信網等の通信手段により管理サーバ5と通信を行うためのインタフェースである。また、運転技能評価装置10Aの制御部50Aは、通信装置35を介して管理サーバ5との間で情報の送受信を行う。
【0111】
かかる運転技能評価システム1Aにおいて、上述した実施形態に係る運転技能評価システム1の運転技能評価装置10の記憶部61に格納されていた修正操作原因モデルが管理サーバ5に格納される。また、上述した実施形態に係る運転技能評価システム1の運転技能評価装置10の制御部50が有する機能構成の一部又は全部が管理サーバ5の演算処理装置によって実現される。
【0112】
かかる運転技能評価システム1Aによれば、車両に搭載される運転技能評価装置10Aの制御部50Aの演算処理の負荷を軽減することができる。また、複数の車両により収集されるデータを活用して管理サーバ5が演算処理を行った結果を蓄積することができる。したがって、個々のドライバの運転操作の習性だけでなく、複数のドライバの運転操作の習性のデータを用いて、ドライバの運転操作の一般的な傾向を分析したり、修正操作原因モデルを更新したりすることができる。
【0113】
<5.まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る運転技能評価システム1によれば、ドライバの運転操作の修正操作を検出するとともに、検出された修正操作を行うに至った原因を推定し、推定された結果に基づいてドライバの運転技能の評価が行われる。このため、学習モデルやエキスパートドライバによる操作状況等の単一の比較対象との比較ではなく、運転操作の修正操作と当該修正操作を行うに至った原因とに基づいてドライバの運転技能が評価される。したがって、評価精度の高い運転技能評価システムとすることができる。
【0114】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム1は、運転技能の評価の結果と併せて、修正操作を行うに至った原因に基づくアドバイスを通知する。このため、ドライバは、自身の運転操作の苦手な点あるいは習性を知ることができ、運転技能の向上への意識付けをさせることができる。
【0115】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム1では、修正操作を行った時刻における車両の走行シーンの情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の制御情報、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の周囲環境の情報、及び、修正操作を行うに至った原因、を入力データとする修正操作原因モデルを用いて、修正操作の原因が推定される。このため、熟練度が高く修正操作の少ないドライバの運転操作と熟練度が高くない修正操作が多いドライバの運転操作との違いを示すデータ、及び、修正操作が生じたときの原因のデータに基づいて、実際に生じた修正操作の原因を高精度に推定することができる。したがって、運転技能の評価の結果の精度を向上させることができる。
【0116】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム1では、運転操作の修正操作が検出された場合であっても、当該操作が、車両の走行環境において不可避的な操作である場合には運転技能をマイナス評価しないように構成されている。このため、ドライバの運転技能に起因する修正操作を対象として運転技能を評価する確実性を高めることができる。
【0117】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム1では、車両の制御情報のデータに基づいて、ステアリング操作及び前後加速度を調節する操作の修正操作を検出し、運転技能を評価するよう構成されている。このため、ドライバの運転操作が車両の挙動に反映され得る運転操作に基づいてドライバの運転技能が評価され、評価結果の信頼性を高めることができる。
【0118】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム1では、ステアリング操作及び前後加速度を調節する操作の修正操作を検出するために用いる閾値を、車両の走行シーンに応じて設定するよう構成されている。このため、車両の走行シーン、特に、車速に応じた適切な閾値を用いて運転操作の修正操作が検出され、修正操作の検出精度を高めることができる。したがって、運転技能の評価の結果の信頼性を高めることができる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0120】
例えば、上記実施形態では、ドライバのステアリング操作、アクセル操作及びブレーキ操作を対象として修正操作を検出し、運転技能を評価していたが、本発明はかかる例に限定されない。特に車両の挙動に影響し得るドライバの運転操作であれば、他の運転操作の修正操作を検出対象として、運転技能を評価するようにしてもよい。この場合、あらかじめ生成される修正操作原因モデルに入力されるデータセットに、当該他の運転操作を検出可能な情報を含ませればよい。
【0121】
また、上記実施形態では、図2に示した修正操作の原因一覧の中から修正操作の原因が選択されるようになっていたが、修正操作の原因一覧に、考え得るその他の原因が含まれていてもよい。
【0122】
また、図6に示した評価結果の表示はあくまでも一例にすぎず、評価結果の通知に含ませる内容や、通知の態様は、特に限定されるものではない。
【0123】
また、上記実施形態では、修正操作を行った時刻における車両の走行状態の情報、及び、修正操作を行った時刻の所定時間前及び所定時間後の時刻における車両の走行状態の情報に基づいて当該修正操作を行うに至った原因を推定していたが、修正操作を行った時刻に代えて修正操作を行ったときの走行地点における種々の情報を用いてもよい。具体的に、運転技能評価装置10は、修正操作を行った走行地点を特定した上で、修正操作を行ったときの走行地点における車両の走行状態の情報、及び、修正操作を行ったときの走行地点から所定距離前及び所定距離後の走行地点における車両の走行状態の情報に基づいて当該修正操作を行うに至った原因を推定してもよい。この場合においても、運転操作の修正操作と当該修正操作を行うに至った原因とに基づいてドライバの運転技能が評価され、評価精度の高い運転技能評価システムとすることができる。
【符号の説明】
【0124】
1,1A…運転技能評価システム、5…管理サーバ、10,10A…運転技能評価装置、20…検出機器、30…通知部、50,50A…制御部、51…車両データ収集部、53…修正操作検出部、55…原因推定部、57…評価部、59…通知制御部、61…記憶部
図1
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図10