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特許7509591シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
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  • 特許-シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240625BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240625BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20240625BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
H01L21/308 E
H01L21/306 E
H01L29/78 371
H10B41/27
H10B43/27
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020115810
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2021015969
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082503
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ホソン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンウン
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-029717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0136132(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107573940(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/306
H10B 69/00
H10B 43/27
H10B 41/27
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸水溶液;及び、
下記化1で表される化合物;を含む、
シリコン窒化膜エッチング溶液:
[化1]
上記化1において、
mは、0~20の整数であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシ基(-OH)、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
nは、1~20の整数であり、
Aは、-(C(R)(R10))pであり、
及びR10は、それぞれ独立して水素、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、0~3であり、
Xは、置換または非置換されたC-C30アリール基、または置換または非置換されたC-C20ヘテロアリール基であり、
前記
及び
は、
順次に配列、規則的に交互配列または不規則的にランダム配列される。
【請求項2】
前記R、R、R、R、R、R、R,R、R及びR10は、それぞれ独立してC-C10のアルキル基であり、
前記Xは、窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を含み、
前記Xは、単環の置換または非置換されたアリール基、または単環の置換または非置換されたヘテロアリール基であることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項3】
前記Xは、下記化2、化3、化4、化5または化6で表される化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
[化2]
[化3]
[化4]
[化5]
[化6]
上記化3、化4、化5及び化6において、
11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立してC-C10のアルキル基、C-C12シクロアルキル基、C-C30アリール基、及びハロゲンから選択され、
、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立して窒素及び硫黄から選択され、
、X及びXは、それぞれ独立して炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択され、
Arは、置換または非置換されたC-C30アリール基、または置換または非置換されたC-C20ヘテロアリール基であり、
sは、1~4であり、
tは、1~2である。
【請求項4】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物は、300~300,000ppmで含まれることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つのフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項6】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有するフッ素含有化合物をさらに含む、

請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項7】
請求項1項によるシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、シリコン窒化膜をエッチングする際、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることの可能なシリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜をエッチングする方法としては、様々があるが、乾式エッチング法と湿式エッチング法が主に使用される方法である。
【0003】
乾式エッチング法は、通常に気体を用いたエッチング法であって、湿式エッチング法より等方性に優れるという長所があるものの、湿式エッチング法より生産性が劣り過ぎ、高価の方式であるという点から、湿式エッチング法が広く利用されつつある。
【0004】
一般に、湿式エッチング法としては、エッチング溶液としてリン酸を用いる方法がよく知られている。このとき、シリコン窒化膜をエッチングするために、純粋なリン酸のみ用いる場合は、素子が微細化するにつれて、シリコン窒化膜のみならず、シリコン酸化膜までエッチングされることによって、各種の不良及びパターンの異常が発生するなどの問題が生じ得るため、シリコン酸化膜に保護膜を形成して、シリコン酸化膜のエッチング速度をさらに下げる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高温で行われるエッチング工程において、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を下げて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることの可能なシリコン窒化膜エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一側面によれば、シリコン窒化膜エッチング溶液は、リン酸水溶液及び下記化1で表される化合物を含む。
【0008】
[化1]
【0009】
上記化1において、
mは、0~20の整数であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシ基(-OH)、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
nは、1~20の整数であり、
Aは、-(C(R)(R10))pであり、
及びR10は、それぞれ独立して水素、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、0~3であり、
Xは、置換または非置換されたC-C30アリール基、または置換または非置換されたC-C20ヘテロアリール基であり、
前記
及び
は、
順次に配列、規則的に交互配列または不規則的にランダム配列される。
【0010】
また、本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物を用いることによって、エッチング条件下で容易に分解されないし、溶解度に優れており、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング速度を下げることができる。
【0012】
このとき、本願で用いられる上記化1で表される化合物は、アリール系またはヘテロアリール系置換基を含むことによって、リン酸水溶液における高い分布度を示し、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を概略的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0015】
以下では、本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液について詳説する。
【0016】
本発明の一側面によれば、リン酸水溶液及び下記化1で表される化合物を含むシリコン窒化膜エッチング溶液が提供される。
【0017】
[化1]
【0018】
上記化1において、
mは、0~20の整数であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシ基(-OH)、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
nは、1~20の整数であり、
Aは、-(C(R)(R10))pであり、
及びR10は、それぞれ独立して水素、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、0~3であり、
Xは、置換または非置換されたC-C30アリール基、または置換または非置換されたC-C20ヘテロアリール基であり、
前記
及び
は、
順次に配列、規則的に交互配列または不規則的にランダム配列される。
【0019】
本願におけるC-C作用基は、a~b個の炭素原子を有する作用基を意味する。例えば、C-Cアルキルは、a~b個の炭素原子を有する、直鎖アルキル及び分鎖アルキル等を含む飽和脂肪族基を意味する。直鎖または分鎖アルキルは、これの主鎖に10個以下(例えば、C-C10の直鎖、C-C10の分鎖)、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。
【0020】
具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペント-1-イル、ペント-2-イル、ペント-3-イル、3-メチルブト-1-イル、3-メチルブト-2-イル、2-メチルブト-2-イル、2,2,2-トリメチルエト-1-イル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オキチルであってもよい。
【0021】
本願におけるシクロアルキル(cycloalkyl)は、他に定義されない限り、それぞれアルキルの環状構造に理解されるだろう。
【0022】
シクロアルキルの非制限的な例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、及びシクルロヘプチル等がある。
【0023】
本願におけるハロゲンは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を意味し、ハロアルキルは、上述したハロゲンで置換されたアルキルを意味する。例えば、ハロメチルは、メチルの水素のうち少なくとも一つがハロゲンに取り替えられたメチル(-CHX、-CHX又は-CX)を意味する。
【0024】
本願におけるアリールは、他に定義されない限り、単一環又は互いに接合又は共有結合で連結された多重環(好ましくは、1~4個の環)を含む不飽和芳香族性環を意味する。アリールの非制限的な例としては、フェニル、ビフェニル、o-テルフェニル(terphenyl)、m-テルフェニル、p-テルフェニル、1-ナプチル、2-ナプチル、1-アントリル(anthryl)、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントレニル(phenanthrenyl)、2-フェナントレニル、3-フェナントレニル、4-フェナントレニル、9-フェナントレニル、1-ピレニル、2-ピレニル、及び4-ピレニルなどがある。 本願におけるヘテロアリールは、単環または互いに接合または共有結合で連結された多環の不飽和芳香族性環を意味し、前記環内の一つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄のような非炭素原子で置換された作用基を意味する。
【0025】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、水によって容易に分解されない、かつリン酸水溶液における分布度を増加させるために、下記化1で表される化合物を含む。
【0026】
通常、リン酸水溶液からシリコン基板を保護するために、シリコン窒化膜エッチング溶液にシリコンポリマーが添加されうる。しかし、シリコンポリマーは、溶解度が低くて、リン酸水溶液内の分布度を増加させない問題がある。また、シリコンポリマーは、水と反応して分解されやすいところ、シリコンポリマーと水との反応性を減少させるために、シリコン窒化膜エッチング溶液に疎水性(Hydrophobic)化合物が添加されてもよい。しかし、疎水性化合物が添加される場合は、シリコンポリマーの溶解度はさらに低くなり、リン酸水溶液内のシリコンポリマーの分布度はさらに減少されうる。これにより、シリコン窒化膜エッチング溶液にシリコンポリマーを添加しても、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比の増加効果が微弱である問題がある。
【0027】
[化1]
【0028】
上記化1において、
mは、0~20の整数であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル基、ヒドロキシ基(-OH)、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
nは、1~20の整数であり、
Aは、-(C(R)(R10))pであり、
及びR10は、それぞれ独立して水素、C-C10のアルキル基、及びC-C10のシクロアルキル基から選択され、
pは、0~3であり、
Xは、置換または非置換されたC-C30アリール基、または置換または非置換されたC-C20ヘテロアリール基であり、
前記
及び
は、
順次に配列、規則的に交互配列または不規則的にランダム配列される。
【0029】
ここで、本発明の上記化1で表される化合物は、アリール系またはヘテロアリール系置換基を対称的に含むことで、水と化1で表される化合物のうち、Siとの反応性を減少させることができる。これによって、化1で表される化合物は、容易に分解されず、化合物構造を維持することで、リン酸水溶液からシリコン基板を効果よく保護することができる。
【0030】
また、本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、適正溶解度を確保し、リン酸水溶液内の分布度を向上させて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を高めるために、化1で表される化合物を含む。
【0031】
一例として、化1で表される化合物において、
前記
及び
は、順次に配列、規則的に交互配列または不規則的にランダム配列され、具体的には、化1で表される化合物は、下記化7で表される化合物のように順次に配列されてもよい。
【0032】
[化7]
【0033】
また、化1で表される化合物は、下記化8で表される化合物のように、規則的に交互配列されてもよい。
【0034】
[化8]
【0035】
また、化1で表される化合物は、下記化9で表される化合物のように、不規則的にランダム配列されてもよい。
【0036】
[化9]
【0037】
また、一例として、化1で表される化合物において、前記R、R、R、R、R、R、R,R、R及びR10は、それぞれ独立してC-C10のアルキル基であり、前記Xは、窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を含み、前記Xは、単環の置換または非置換されたアリール基、または単環の置換または非置換されたヘテロアリール基であってもよい。
【0038】
ここで、前記Xは、炭素と電気陰性度が相違する窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、特に前記Xは、炭素より電気陰性度の大きい窒素原子を含むことが好ましい。
【0039】
また、一例として、化1で表される化合物において、前記Xは、下記化2、化3、化4、化5または化6で表される化合物であってもよい。
【0040】
[化2]
【0041】
[化3]
【0042】
[化4]
【0043】
[化5]
【0044】
[化6]
【0045】
上記化3、化4、化5及び化6において、
11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立してC-C10のアルキル基、C-C12シクロアルキル基、C-C30アリール基、及びハロゲンから選択され、
、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立して窒素及び硫黄から選択され、
、X及びXは、それぞれ独立して炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択され、
Arは、置換または非置換されたC-C30アリール基、または置換または非置換されたC-C20ヘテロアリール基であり、
sは、1~4であり、
tは、1~2である。
【0046】
一般に、シリコンポリマーと水との反応は、下記反応式1で表される。
【0047】
[反応式1]
【0048】
前記反応式1のように、通常、シリコンポリマーは、水と反応して分解されやすい。これによって、シリコンポリマーは、化合物構造を維持することができず、リン酸水溶液からシリコン基板を十分に保護することができない問題がある。
【0049】
ここで、一実施例による本発明の化1で表される化合物と水との反応は、反応式2または反応式3で表される。
【0050】
[反応式2]
【0051】
[反応式3]
【0052】
上記反応式2及び反応式3のように、化1で表される化合物は、シリコンポリマーに体積の大きいアリール基またはヘテロアリール基を対称的に導入することで、アリール基またはヘテロアリール基の立体障害(steric
hinderance)を介して水とSiとの反応性を効果よく減少させることができる。これによって、シリコンポリマーは、化合物構造を維持して、シリコン基板の保護膜を形成し、リン酸水溶液からシリコン基板をさらに効果よく保護することができる。
【0053】
また、本発明の化1で表される化合物は、シリコンポリマーに極性のアリール基またはヘテロアリール基を導入することで、溶解度が増加し、これによって、リン酸水溶液内の分布度が向上することができる。
【0054】
すなわち、本発明の化1で表される化合物は、シリコンポリマーに体積の大きいアリール基またはヘテロアリール基を対称的に導入することで、アリール基またはヘテロアリール基の立体障害を介して水とSiとの反応性を減少させるとともに、極性を示すアリール基またはヘテロアリール基によって溶解度を増加させることができる。これによって、リン酸水溶液内のシリコンポリマーの分布度を増加させて、リン酸水溶液からシリコン基板を効果よく保護することができ、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を高めることができる。
【0055】
上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に300~300,000ppmで存在することが好ましい。また、上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に400~100,000ppmで存在することがさらに好ましい。ここで、添加剤の含量は、シリコン窒化膜エッチング溶液中に溶解された化1で表される化合物の量であって、ppmの単位に示したものである。
【0056】
例えば、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が5,000ppmで存在するということは、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に溶解された化1で表される化合物が5,000ppmであることを意味する。
【0057】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が300ppm
未満で存在する場合は、エッチング条件下でシリコン化合物の分布度が低下して、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比の増加効果が微弱であり得る。
【0058】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が300,000ppmを超える場合は、エッチング条件下でシリコン窒化膜エッチング溶液のうち、リン酸水溶液に含まれた水の割合が減少して、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が低下する問題が生じ得る。
【0059】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液のエッチング対象であるシリコン基板は、少なくともシリコン酸化膜(SiO)を含むことが好ましいし、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(Si)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0060】
ここで、シリコン酸化膜は、用途及び素材の種類等に応じて、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density
Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate
Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate
Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate
Glass)膜、LP-TEOS(Low
Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra
Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium
Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization
Layer)膜、ALD(Atomic Layer
Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)又はO-TEOS(O-Tetra Ethyl
Ortho Silicate)等に言及し得る。
【0061】
ここで、リン酸水溶液は、シリコン窒化膜をエッチングするとともに、エッチング溶液のpHを維持して、エッチング溶液内に存在する様々な形態のシリコン化合物がシリコン系パーティクルに変化することを抑える成分である。
【0062】
一実施例において、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液は、60~90重量部で含まれることが好ましい。
【0063】
シリコン基板エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液の含量が60重量部未満である場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度が低下して、シリコン窒化膜が十分にエッチングされないか、シリコン窒化膜のエッチング工程の効率性が低下するおそれがある。
【0064】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液100重量部に対して、リン酸水溶液の含量が90重量部を超える場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度が増加し過ぎるだけでなく、シリコン酸化膜まで早くエッチングされることによって、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が低下し得るし、シリコン酸化膜のエッチングによるシリコン基板の不良が引き起こされうる。
【0065】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、化1で表される化合物を含むことによって低下するシリコン窒化膜のエッチング速度を補償するとともに、全体的なエッチング工程の効率を向上させるためにフッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0066】
本願におけるフッ素含有化合物は、フッ素イオンを解離させる任意の形態のあらゆる化合物を指す。
【0067】
一実施例において、フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つである。
【0068】
また、他の実施例において、フッ素含有化合物は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。
【0069】
例えば、フッ素含有化合物は、アルキルアンモニウムとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。ここで、アルキルアンモニウムは、少なくとも一つのアルキル基を有するアンモニウムであって、最大4つのアルキル基を有し得る。アルキル基に対する定義は、前述したとおりである。
【0070】
さらに他の例において、フッ素含有化合物は、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモルホリニウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される有機系カチオンと、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロボラート、及びフルオロアルキル-フルオロボラートから選択されるフッ素系アニオンとがイオン結合した形態のイオン性液体であってもよい。
【0071】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、フッ素含有化合物として一般に用いられるフッ化水素、またはフッ化アンモニウムに比べて、イオン性液体状に提供されるフッ素含有化合物は、高い沸点及び分解温度を有するところ、高温で行われるエッチング工程中に分解されることによって、エッチング溶液の組成を変化させるおそれが少ないという利点がある。
【0072】
本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法が提供される。
【0073】
本製造方法によれば、少なくともシリコン窒化膜(SI)を含むシリコン基板上で、上述したエッチング溶液を用いてシリコン窒化膜に対する選択的エッチング工程を行うことによって半導体素子を製造することが可能である。
【0074】
半導体素子の製造に用いられるシリコン基板は、シリコン窒化膜(SI)を含むか、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(SI)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0075】
本発明による半導体素子の製造方法は、NAND素子の製造工程に適用されてもよい。より具体的には、NANDを形成するための積層構造体のうち、シリコン酸化膜に対する損失なく、シリコン窒化膜の選択的な除去が要求される工程ステップにおいて、上述したエッチング溶液を用いることで行うことができる。
【0076】
一例として、図1は、本発明によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を説明するための概略的な断面図である。
【0077】
図1を参照すれば、シリコン基板10上にシリコン窒化膜11とシリコン酸化膜12とが交互に積層した積層構造体20上にマスクパターン層30を形成した後、異方性エッチング工程を介してトレンチ50が形成される。
【0078】
また、図1を参照すれば、積層構造体20内に形成されたトレンチ50領域を介して本発明によるエッチング溶液が投入され、これによって、シリコン窒化膜11がエッチングされて、シリコン酸化膜12とマスクパターン層30のみ残るようになる。
【0079】
すなわち、本発明は、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上したエッチング溶液を用いることで、積層構造体20内のシリコン酸化膜12のエッチングを最小化して、十分な時間の間にシリコン窒化膜11を完全かつ選択的に除去することができる。その後、シリコン窒化膜11の除去された領域にゲート電極を形成するステップが含まれた後続工程を介して半導体素子を製造することができる。
【0080】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、ここに記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎないし、これによって本発明が制限されてはならない。
【0081】
実施例
エッチング溶液の製造
実施例1~6では、化1で表される化合物をリン酸水溶液に添加して、初基濃度が300ppmになるようにエッチング溶液を製造した。
【0082】
実施例1~6及び比較例1~3によるエッチング溶液組成物は、表1のとおりである。
【0083】
[表1]
【0084】
実験例
各実施例及び比較例による組成を有するシリコン窒化膜エッチング溶液を175℃で500Å厚みのシリコン酸化膜(thermal oxide layer)及びシリコン窒化膜を、加熱されたエッチング溶液に浸漬して10分間エッチングした。
【0085】
エッチングの前及びエッチング後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚みは、エリプソメトリー(Nano-View、SE
MG-1000;Ellippsometery)を用いて測定しており、エッチング速度は、エッチングの前及びエッチング後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚みの差をエッチング時間(10分)で除して算出した数値である。
【0086】
測定されたエッチング速度は、下記表2に示した。
【0087】
[表2]
【0088】
上記表2に示したように、実施例1~6のシリコン窒化膜エッチング溶液は、比較例1~3のシリコン窒化膜エッチング溶液に比べて、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を下げることができ、これによって、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上することを確認することができる。
【0089】
以上では、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれは、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から外れない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等によって本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも本発明の権利範囲内に含まれると言える。
図1