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特許7509594固体炭素回収型エネルギー供給システム、および、固体炭素回収型エネルギー供給方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】固体炭素回収型エネルギー供給システム、および、固体炭素回収型エネルギー供給方法。
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240625BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20240625BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240625BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240625BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240625BHJP
   H01M 8/0668 20160101ALI20240625BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240625BHJP
【FI】
H01M8/04 N
C01B3/38
H01M8/04014
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/0668
H01M8/12 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020124725
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022021242
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良雄
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071963(JP,A)
【文献】特開2020-077486(JP,A)
【文献】特許第6043886(JP,B1)
【文献】特開2018-045875(JP,A)
【文献】特開平02-227962(JP,A)
【文献】特表2005-511467(JP,A)
【文献】特開2014-080328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0220695(US,A1)
【文献】特表2015-516361(JP,A)
【文献】特開2014-107056(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115502(WO,A1)
【文献】特開2003-221204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/38
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質触媒が収納された改質空間を有し、炭化水素を含む燃料ガスを前記改質空間内の二酸化炭素で二酸化炭素改質して水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成する改質部と、
前記改質部の下流側に設けられ、前記改質部から送出された前記改質ガスから固体炭素を析出させる炭素析出部と、
前記炭素析出部よりも下流側に設けられ、前記炭素析出部から送出された前記改質ガスを消費してエネルギーを得るガス消費部と、
を備え、前記炭素析出部で析出させた固体炭素を回収する、
固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項2】
前記ガス消費部から排出された利用後改質ガスから水を分離する水分離部と、
前記水分離部で水が分離された前記利用後改質ガスを前記改質部へ供給するガス循環路と、
を備えた請求項1に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項3】
前記炭素析出部よりも下流側且つ前記ガス消費部よりも上流側に設けられ、前記炭素析出部から送出された前記改質ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を測定して前記炭素析出部で析出された炭素量に関する析出炭素情報を出力する炭素情報出力部と、
を備えた、請求項1または請求項2に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項4】
複数の前記炭素析出部と、
前記炭素情報出力部から出力された前記析出炭素情報に基づいて、前記複数の炭素析出部の内、前記改質部からの前記改質ガスの送出先となる前記炭素析出部を切り換える切換部と、
を備えた、請求項3に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項5】
前記ガス消費部は、前記改質ガスを発電反応に用いる燃料電池セルスタックであり、前記燃料ガスは前記燃料電池セルスタックの燃料極へ供給される、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項6】
前記燃料極から排出された燃料極オフガスから水素、一酸化炭素、及び炭化水素の少なくとも1つを除去する除去部と、
前記除去部で水素、一酸化炭素、及び炭化水素の少なくとも1つを除去された前記燃料極オフガスを前記改質部へ供給するオフガス循環路と、
を備えた、請求項5に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項7】
前記燃料電池セルスタックの空気極から排出された空気極オフガスと前記改質部及び前記炭素析出部の少なくとも一方と熱交換を行うオフガス熱交換部、
を備えた請求項5または請求項6に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項8】
前記ガス消費部は、前記燃料ガスを燃焼させる燃焼部を有し、
前記燃焼部へ前記燃料ガス及び酸化剤ガスが供給される、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項9】
前記燃焼部から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部と、
前記二酸化炭素分離部で分離された二酸化炭素を前記改質部へ供給する二酸化炭素循環路と、
を備えた、請求項8に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項10】
前記燃焼部から排出された燃焼排ガスと前記改質部及び前記炭素析出部の少なくとも一方と熱交換を行う燃焼排ガス熱交換部、
を備えた請求項8または請求項9に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【請求項11】
炭化水素を含む燃料ガスを改質空間で二酸化炭素改質して水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、
前記改質空間の下流側に設けられた炭素析出部で前記改質ガスから固体炭素を析出させ、
前記炭素析出部よりも下流側に設けられたガス消費部で、前記炭素析出部から送出された前記改質ガスを消費してエネルギーを得、
前記炭素析出部で析出させた固体炭素を回収する、
固体炭素回収型エネルギー供給方法。
【請求項12】
ガス消費部から排出された利用後改質ガスから水を分離し、
水が分離された前記利用後改質ガスを前記改質空間へ供給する、
請求項11に記載の固体炭素回収型エネルギー供給方法。
【請求項13】
前記炭素析出部は、乱流を発生させるリブを含んで形成されている、
請求項1~10のいずれか1項に記載の固体炭素回収型エネルギー供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体炭素回収型エネルギー供給システム、および固体炭素回収型エネルギー供給方法に関し、特に炭化水素燃料を用いて電気や熱などのエネルギーを創出して利用するとともに、発生する二酸化炭素中の炭素を固体炭素として回収する、固体炭素回収型のエネルギー供給システム、および固体炭素回収型のエネルギー供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素系の燃料を用いて燃焼反応や電気化学反応により、電気、熱などのエネルギーを得る場合、エネルギーを得る反応の際に二酸化炭素が発生する。この二酸化炭素は、大気中に排出されると地球温暖化の原因になるため、エネルギー効率の向上による排出量の削減や、排気ガスや大気中から回収して地下の二酸化炭素貯留槽に高圧の液化二酸化炭素として圧入する固定化が求められている。
そこで従来、発電システムにおける発電反応に伴う二酸化炭素を外部へ排出しないために、使用後のオフガスや排ガスから二酸化炭素ガスを分離回収することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6692394号
【文献】日本エネルギー学会 第4回新エネルギー・水素部会シンポジウム カーボンリサイクルの新機軸 発表資料「触媒反応工学と常温作動のメタン化技術で拓くCO2資源化プロセス 静岡大学大学院 総合科学技術研究科 福原長寿」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回収した二酸化炭素ガスを地下深部の二酸化炭素貯留槽等に固定化するためには、気体で回収された二酸化炭素を圧縮液化したり、パイプラインを敷設して二酸化炭素の貯留槽サイトまで輸送したり、貯留槽サイトでさらに圧縮して地下数千メートルの貯留槽に圧入する処理が必要となり、回収した二酸化炭素の輸送や圧入において多大なエネルギーを消費するとともに、輸送や圧入のインフラ整備に多大な時間と手間がかかるという課題がある。
また、前述のエネルギー消費に伴って二酸化炭素が発生し、大気放散される場合には、正味の二酸化炭素固定化量が減少し、温暖化対策としての有効性が減少してしまうという課題がある。
【0005】
さらに、前述の二酸化炭素貯留槽は地層の状況などの諸条件により、場所や貯留量が限定されるため、発電システムや熱供給システムの設置場所によっては、貯留サイトまでの輸送距離が延び、圧入固定化できる二酸化炭素の量が限定されてしまう課題がある。
固定化等するためには、液化等の処理が必要になり手間がかかる。
【0006】
また、非特許文献2には、メタンのドライリフォーミングで合成ガスの製造と炭素の回収を図ることが記載されている。しかしながら、エネルギー供給システムにおいて、どのように炭素の回収を行うかについては記載されてない。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、炭化水素系の燃料を用いたエネルギー供給の際に、簡易に二酸化炭素を固体炭素として回収することが可能な固体炭素回収型エネルギー供給システム、および、固体炭素回収型エネルギー供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、改質触媒が収納された改質空間を有し、炭化水素を含む燃料ガスを前記改質空間内の二酸化炭素で二酸化炭素改質して水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成する改質部と、前記改質部の下流側に設けられ、前記改質部から送出された前記改質ガスから固体炭素を析出させる炭素析出部と、前記炭素析出部よりも下流側に設けられ、前記炭素析出部から送出された前記改質ガスを消費してエネルギーを得るガス消費部と、を備えている。
【0009】
請求項1に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、改質部、炭素析出部を備えている。改質部は、改質触媒が収納された改質空間を有し、炭化水素を含む燃料ガスを改質空間内の二酸化炭素で二酸化炭素改質して水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成する。炭素析出部は、改質部の下流側に設けられ、改質部から送出された改質ガスから固体炭素を析出させる。このように、固体炭素を析出させることにより、二酸化炭素を別途固定化することなく、簡易に固定化処理することができる。
【0010】
炭素析出部から送出された改質ガスは、炭素析出部よりも下流側に設けられたガス消費部で消費されエネルギーが得られる。
【0011】
請求項2に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記ガス消費部から排出された利用後改質ガスから水を分離する水分離部と、前記水分離部で水が分離された前記利用後改質ガスを前記改質部へ供給するガス循環路と、を備えている。
【0012】
請求項2に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、水分離部で水が分離された利用後改質ガス中の二酸化炭素を改質部へ供給することにより、外部に二酸化炭素を排出せず、二酸化炭素改質の原料として用いることができる。
【0013】
請求項3に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記炭素析出部よりも下流側且つ前記ガス消費部よりも上流側に設けられ、前記炭素析出部から送出された前記改質ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を測定して前記炭素析出部で析出された炭素量に関する析出炭素情報を出力する炭素情報出力部と、を備えている。
【0014】
請求項3に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムでは、炭素情報出力部で炭素析出部から送出された改質ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を測定することにより、炭素析出部で析出された炭素量に関する析出炭素情報を得ることができる。この析出炭素情報に基づいて、炭素析出部の交換等を行い、改質ガスの流れを維持することができる。また、改質ガスの流路閉塞に伴うシステム停止や故障を未然に防ぐことができる。
【0015】
請求項4に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、複数の前記炭素析出部と、前記炭素情報出力部から出力された前記析出炭素情報に基づいて、前記複数の炭素析出部の内、前記改質部からの前記改質ガスの送出先となる前記炭素析出部を切り換える切換部と、を備えている。
【0016】
請求項4に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、複数の前記炭素析出部を備えており、炭素情報出力部から出力された析出炭素情報に基づいて複数の炭素析出部の内、改質ガスの送出先となる炭素析出部を切り換える。これにより、析出された炭素量の多い炭素析出部への改質ガスの供給を停止して、交換などの作業を行うことができる。
【0017】
請求項5に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記ガス消費部は、前記改質ガスを発電反応に用いる燃料電池セルスタックであり、前記燃料ガスは前記燃料電池セルスタックの燃料極へ供給される。
【0018】
請求項5に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、改質ガスを用いて、燃料電池での発電を行うことができる。
【0019】
請求項6に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記燃料極から排出された燃料極オフガスから水素、一酸化炭素、及び炭化水素の少なくとも1つを除去する除去部と、前記除去部で水素、一酸化炭素、及び炭化水素の少なくとも1つを除去された前記燃料極オフガスを前記改質部へ供給するオフガス循環路と、を備えている。
【0020】
請求項6に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、除去部で水素、一酸化炭素、及び炭化水素の少なくとも1つを除去した後の燃料極オフガスの二酸化炭素濃度を高くして、改質部へ供給することができる。
【0021】
請求項7に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記燃料電池セルスタックの空気極から排出された空気極オフガスと前記改質部及び前記炭素析出部の少なくとも一方と熱交換を行うオフガス熱交換部、を備えている。
【0022】
請求項7に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、空気極オフガス、燃料極オフガスの熱を改質部及び炭素析出部の一方または両方の加熱に有効利用することができる。
【0023】
請求項8に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記ガス消費部は、前記燃料ガスを燃焼させる燃焼部を有し、前記燃焼部へ前記燃料ガス及び酸化剤ガスが供給される。
【0024】
請求項8に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、改質ガスを燃焼させて、燃焼によるエネルギーを用いて、発電や熱交換を行うことができる。
【0025】
請求項9に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記燃焼部から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部と、前記二酸化炭素分離部で分離された二酸化炭素を前記改質部へ供給する二酸化炭素循環路と、を備えている。
【0026】
請求項9に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、二酸化炭素分離部で分離された二酸化炭素を改質部へ原料として供給することができる。
【0027】
請求項10に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムは、前記燃焼部から排出された燃焼排ガスと前記改質部及び前記炭素析出部の少なくとも一方と熱交換を行う燃焼排ガス熱交換部、を備えている。
【0028】
請求項10に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムによれば、燃焼排ガスの熱を改質部及び炭素析出部の一方または両方加熱に有効利用することができる。
【0029】
請求項11に係る固体炭素回収型エネルギー供給方法は、炭化水素を含む燃料ガスを改質空間で二酸化炭素改質して水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、前記改質空間の下流側に設けられた炭素析出部で前記改質ガスから固体炭素を析出させ、前記炭素析出部よりも下流側に設けられたガス消費部で、前記炭素析出部から送出された前記改質ガスを消費してエネルギーを得る。
【0030】
請求項11に係る固体炭素回収型エネルギー供給方法では、炭化水素を含む燃料ガスを改質空間で二酸化炭素改質して水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成し、改質空間の下流側に設けられた炭素析出部で改質ガスから固体炭素を析出させる。
【0031】
このように、固体炭素を析出させることにより、二酸化炭素を別途固定化することなく、簡易に固定化処理することができる。
【0032】
炭素析出部から送出された改質ガスは、炭素析出部よりも下流側に設けられたガス消費部で消費されエネルギーが得られる。
【0033】
請求項12に係る固体炭素回収型エネルギー供給方法は、ガス消費部から排出された利用後改質ガスから水を分離し、水が分離された前記利用後改質ガスを前記改質空間へ供給する。
【0034】
請求項12に係る固体炭素回収型エネルギー供給方法によれば、水が分離された利用後改質ガス中の二酸化炭素を改質空間へ供給することにより、外部に二酸化炭素を排出せず、二酸化炭素改質の原料として用いることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る固体炭素回収型エネルギー供給システム、固体炭素回収型エネルギー供給方法によれば、簡易に二酸化炭素の固定化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの改質部及び炭素析出部の、(A)は側方からみた内部の概略図であり、(B)は(A)のB-B線の断面図である。
図3】第1実施形態に係る燃料電池システムの制御系のブロック図である。
図4】第1実施形態の炭素析出監視処理のフローチャートである。
図5】第1実施形態の変形例に係る燃料電池システムの概略図である。
図6】第1実施形態の他の変形例に係る燃料電池システムの概略図である。
図7】第2実施形態に係る燃料電池システムの概略図である。
図8】第3実施形態に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムの概略図である。
図9】第4実施形態に係る固体炭素回収型エネルギー供給システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0038】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の固体炭素回収型エネルギー供給システムの一例としての第1実施形態に係る燃料電池システム10Aが示されている。燃料電池システム10Aは、主要な構成として、改質部12A、12B、炭素析出部14A、14B、燃料電池セルスタック16、凝縮器20、排熱投入型吸収式冷凍機22を備えている。また、燃料供給ブロワB1、空気ブロワB2、循環ブロワB3、ポンプP1、冷却塔24を備えている。さらに、図3に示されるように、燃料電池システム10Aを制御する制御部30を備えている。
【0039】
燃料供給ブロワB1は、燃料供給管R1の一端に接続されており、燃料供給管R1の上流側から燃料ガスを供給する。燃料供給管R1の他端は、分岐バルブV1で2分岐され、改質部12Aと改質部12Bに接続されている。
【0040】
本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能な炭化水素系ガスであれば特に限定されず、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。なお、炭化水素系ガスとしては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。
【0041】
また、炭化水素系ガスとして、バイオガスや消化ガスを用いることもできる。バイオガスや消化ガスは二酸化炭素を含んでいるので、二酸化炭素改質を行う場合に、改質用に別途二酸化炭素を供給する必要がないことに加え、バイオガスや消化ガス中の二酸化炭素を固体炭素に変換できるため、燃料ガスとして、好適である。さらに、バイオガスや消化ガス中の二酸化炭素は大気中の二酸化炭素を吸収したバイオマス起源のものであるため、固体炭素として回収して固定化すれば、大気中の二酸化炭素を効率よく回収し、削減することになるため、地球温暖化対策としての大気中の二酸化炭素削減効果が大きく、燃料ガスとして好適である。
【0042】
燃料ガスとしてのメタンは、燃料供給管R1に設けられた分岐バルブV1を介して、改質部12A、または改質部12Bへ送出される。本実施形態では、燃料ガスを燃料電池セルスタック16へ供給する経路を2経路有しており、一方の経路に改質部12A、炭素析出部14Aが設けられ、他方の経路に改質部12B、炭素析出部14Bが設けられている。一方の経路と他方の経路への燃料ガスの供給は、炭素析出状態に応じて随時切り換えられる。
【0043】
改質部12Aでは、メタンを二酸化炭素改質し、水素および一酸化炭素を含む改質ガスを生成する。図2に示されるように、改質部12Aには、改質空間12ARが設けられ、改質空間12ARには、改質触媒Cが充填されている。改質触媒Cとしては、アルミナ担持ニッケル(Ni/Al3)のほか、マグネシア担持ニッケル(Ni/MgO)、アルミニウム・マグネシウム担持ニッケル(Ni/AlMgO4)およびこれらの混合物などを用いることができる。メタンと二酸化炭素により、以下の式(1)の反応により改質が行われる。改質部12Bは、改質部12Aと同様の構成とされている。
【0044】
CH+CO→2H+2CO …(1)
【0045】
炭素析出部14Aは、筒状の管体14AKとされており、ステンレス、鉄など管を用いることができる。炭素析出部14Aは、改質部12Aの下流側に設けられており、連続空間14AC、及び、析出空間14ARを有している。
【0046】
連続空間14ACは、改質空間12ARと連続され、改質空間12ARから改質ガスが流入する。連続空間14ACの内壁14ACW(管体14AKの内壁)は、凹凸のない面一とされ、改質ガスの乱流が抑制されている。この連続空間14ACを有することにより、後述する析出空間14ARにおける乱流の影響で、改質部12Aに収納された改質触媒C上に固体炭素が析出することが抑制されている。
【0047】
析出空間14ARは、連続空間14ACの下流側に連続形成されており、連続空間14ACから改質ガスが流入する。析出空間14ARは、改質空間12ARと連続形成されている。析出空間14ARにおける管体14AKの内壁14AKWには、内壁14AKWから内側へ突出するリブ14ALが複数か所に設けられている。リブ14ALにより、析出空間14ARを通過する改質ガスに乱流が生じる。本実施形態では、周方向に4箇所、長手方向に等間隔で形成されている。炭素析出部14Bは、炭素析出部14Aと同様の構成とされ、改質部12Bと連結されている。炭素析出部14Aでは、以下の式(2)(3)の反応により、固体炭素が析出する。
【0048】
なお、析出空間14ARは、炭素析出による流路閉塞を伴いながらも一定のガス流量を維持するうえでは、リブを設けず凹凸のない面一の単管で構成してもよいし、一方で炭素析出をさらに促進する流路系を構成する場合には、流路内での炭素析出面積を増大させるため、管路内にステンレスや鉄など、金属製のハニカムプレートを挿入してもよい。
【0049】
CH→C+2H …(2)
2CO→C+2CO …(3)
【0050】
改質部12A、12B、および炭素析出部14A、14Bは、高温部13内に配置されている。高温部13は、断熱材等により区画されており、後述する空気極オフガスにより加熱され、内部が高温に維持されている。
【0051】
分岐バルブV1は、燃料供給管R1からの燃料ガスの供給先を、改質部12Aまたは改質部12Bのいずれかに切り換える。分岐バルブV1は、制御部30と接続されており、制御部30により切り換えが行われる。
【0052】
炭素析出部14A、炭素析出部14Bの下流端には、改質ガス管R2が接続されている。各々の改質ガス管R2は、合流バルブV2で合流し、合流バルブV2を介して燃料電池セルスタック16の燃料極16Aと接続されている。合流バルブV2は、分岐バルブV1と連動して制御され、改質部12A側に燃料ガスが供給されているときには、炭素析出部14A側の流路が開状態とされ、改質部12B側に燃料ガスが供給されているときには、炭素析出部14B側の流路が開状態とされる。
【0053】
炭素析出部14A、炭素析出部14Bに接続された改質ガス管R2には、各々、流量計15A、15Bが設けられている。流量計15A、15Bにより、炭素析出部14A、14Bから送出された改質ガスの流量が測定される。流量計15A、15Bは、制御部30と接続されており、流量計15A、15Bから制御部30へ測定された流量データが送信される。なお、流量計15A、15Bに代えて、圧力計を各々設けてもよい。
【0054】
改質部12Aと炭素析出部14Aは、燃料供給管R1、改質ガス管R2から取り外し可能とされており、随時取り換えを行うことができる構成とされている。
【0055】
燃料電池セルスタック16は、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が用いられており、電解質層16Cと、当該電解質層16Cの表裏面にそれぞれ積層された燃料極16A、及び空気極16Bと、を有している。
【0056】
燃料電池セルスタック16の燃料極16Aには、燃料供給管R1の一端が接続されており、燃料供給管R1の他端は図示しないガス源に接続されている。ガス源からは、燃料供給ブロワB1により燃料ガスが送出される。なお、本実施形態では、燃料ガスとしてメタンを用いるが、改質により水素を生成可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、バイオガス、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。原料ガスに不純物が含まれる場合、脱硫器等が必要になるが、図では省略されている。
【0057】
燃料電池セルスタック16の空気極16Bには、空気供給管R5の一端が接続されている。空気供給管R5の他端には、空気ブロワB2が接続されている。空気ブロワB2により、空気極16Bへ空気(酸化剤ガス)が供給される。空気極16Bでは、下記(4)式に示すように、空気中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質層16Cを通って燃料電池セルスタック16の燃料極16Aに到達する。
【0058】
(空気極反応)
1/2O+2e →O2- …(4)
【0059】
また、空気極16Bには、空気極16Bから空気極オフガスを送出する空気極オフガス管R6が接続されている。
【0060】
一方、燃料電池セルスタック16の燃料極16Aでは、下記(5)式及び(6)式に示すように、電解質層16Cを通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と電子が生成される。燃料極16Aで生成された電子が燃料極16Aから外部回路(不図示)を通って空気極16Bに移動することで、各燃料電池セルにおいて発電される。また、各燃料電池セルは、発電時に発熱する。
【0061】
(燃料極反応)
+O2- →HO+2e …(5)
CO+O2- →CO+2e …(6)
【0062】
燃料電池セルスタック16の燃料極16Aには燃料極オフガス管R3の一端が接続されており、燃料極オフガス管R3には、燃料極16Aから燃料極オフガスが排出される。燃料極オフガスには、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
【0063】
燃料極オフガス管R3の他端には、凝縮器20が接続されている。凝縮器20により、燃料極オフガス中の水が凝縮される。凝縮器20には、水排出管R20が接続されており、水排出管R20から水が排出され水タンク21へ送出される。凝縮器20には、冷却水循環流路22Aが配管されており、後述する排熱投入型吸収式冷凍機22からの冷却水が循環供給され、燃料極オフガスが冷却される。これにより、燃焼オフガス中の水蒸気が凝縮する。
【0064】
凝縮器20には循環ガス管R4の一端が接続されており、水除去後の燃料極オフガスが循環ガス管R4へ送出される。循環ガス管R4の他端は、ガスミキサGMを介して燃料供給管R1と接続されている。循環ガス管R4には、循環ブロワB3が設けられている。燃料極オフガスは、循環ブロワB3により燃料供給管R1へ向かって送出され、ガスミキサGMで燃料ガスと混合されて、改質部12A、12Bへ供給される。
【0065】
空気極オフガス管R6は、高温部熱交換配管R6Aと冷凍機熱交換配管R6Bに分岐されている。高温部熱交換配管R6Aは、高温部13内で熱交換が行われるように配設されている。空気極オフガスにより、高温部13の温度が500℃~700℃程度に維持され、改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bが加熱される。冷凍機熱交換配管R6Bは、後述する排熱投入型吸収式冷凍機22と接続されている。
【0066】
排熱投入型吸収式冷凍機22は、排熱を用いて冷熱を生成するヒートポンプであり、一例として蒸気/排熱投入型吸収式冷凍機を用いることができる。蒸気/排熱投入型吸収式冷凍機では、空気極オフガスの熱により、水蒸気を吸収した吸収液(例えば、臭化リチウム水溶液やアンモニア水溶液)を加熱することにより吸収液から水を分離させて再生する。吸収液を加熱して冷却された空気極オフガスは、排熱投入型吸収式冷凍機22の外部に排気される。
【0067】
加熱により再生された吸収液は、水蒸気を吸収することにより水の蒸発を促進し、冷熱の生成に寄与する。排熱投入型吸収式冷凍機22は、放熱回路24Aを介して冷却塔24と接続されている。放熱回路24Aには、ポンプ(不図示)が設置されており、当該ポンプにより放熱回路24Aに冷却水が供給される。排熱投入型吸収式冷凍機22で吸収液が水蒸気を吸収するときに生じる吸収熱は、放熱回路24Aを流れる冷却水を介して冷却塔24から大気へ放出される。
【0068】
排熱投入型吸収式冷凍機22で生成された冷熱は、冷却水循環流路22Aを流れる冷却水を介して凝縮器20へ送られ、凝縮器20で燃料極オフガスが冷却され、燃料極オフガス中の水蒸気が凝縮除去され、水タンク21へ貯留される。
【0069】
水タンク21は、冷却水循環流路22A、放熱回路24A、及び、排熱投入型吸収式冷凍機22の熱媒としての水が流れる熱媒流路(不図示)と接続されている。冷却水循環流路22A、放熱回路24A、及び、熱媒流路では、水が不足した場合に、水タンク21からポンプP1により適宜水が補充される。
【0070】
制御部30は燃料電池システム10Aの全体を制御するものであり、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。メモリには、後述する炭素析出監視処理、炭素析出状態の指標となる流量変動閾値Fや、通常運転時の処理に必要なデータや手順等が記憶されている。図3に示されるように、制御部30は、分岐バルブV1、合流バルブV2、流量計15A、15Bと接続されている。分岐バルブV1、合流バルブV2は、制御部30により制御される。なお、図3は、燃料電池システム10Aにおける制御部30の接続関係の一部を示すものであり、図3では図示していないが、制御部30は他の機器とも接続されている。
【0071】
流量変動閾値Fは、炭素析出部14A、14Bにおける炭素析出状態の指標となる値であり、燃料供給ブロワB1の出力に応じた、炭素析出量がゼロのときの流量F0からの許容変化量である。改質ガス管R2を流れる改質ガスの流量変化が流量変動閾値F以上となった場合に、改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bの取り換え時期となる。
【0072】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0073】
燃料電池システム10Aにおいては、燃料供給ブロワB1により、ガス源から燃料ガスが燃料供給管R1へ送出される。また、循環ガス管R4から、主に二酸化炭素、一酸化炭素、水素を含む燃料極オフガスがガスミキサGMを介して燃料供給管R1へ送出される。
【0074】
分岐バルブV1、合流バルブV2は、改質部12A、炭素析出部14Aの経路、または、改質部12B、炭素析出部14Bの経路が開放されるように制御される。改質部12A、12Bでは、燃料ガスが二酸化炭素改質され、水素、一酸化炭素を含む改質ガスが、炭素析出部14A、14Bへ送出される。
【0075】
炭素析出部14A、14Bでは、連続空間14AC、14BCに改質ガスが流入し、連続空間14AC、14BCを通過した改質ガスが析出空間14AR、14BRでリブ14AL、14BLに当たり、乱流が生じる。析出空間14AR、14BRの内壁14AKW、14BKWには、前述の式(2)(3)の反応により、固体炭素が析出する。
【0076】
炭素析出部14A、14Bを通過した改質ガスは、燃料電池セルスタック16の燃料極16Aに供給される。燃料電池セルスタック16では、空気ブロワB2からの空気が空気極16Bへ供給され、発電反応により発電が行われ、不図示の電気配線から電気が取り出される。
【0077】
燃料極16Aから排出された燃料極オフガスは、凝縮器20へ送られて水が凝縮により除去され、燃料供給管R1へ戻される。空気極16Bから排出された空気極オフガスの一部は、高温部13での熱交換に用いられ、一部は排熱投入型吸収式冷凍機22での熱交換に用いられる。
【0078】
ここで、制御部30で実行される炭素析出監視処理について説明する。燃料電池システム10Aの運転中に、制御部30では、図4に示される炭素析出監視処理が実行される。
【0079】
ステップS10で、流量計15A、または流量計15Bで測定された流量を取得し、ステップS12で、取得した流量から流量変動値F1を算出する。流量変動値F1は、燃料供給ブロワB1での出力に応じて、炭素析出量がゼロのときの改質ガス管R2における流量F0と取得した流量との差分により求めることができる。
【0080】
ステップS14で、流量変動値F1が、あらかじめ記録された流量変動閾値F以上かどうかを判断し、判断が肯定された場合には、ステップS16へ進む。判断が否定された場合には、流量変動値F1が流量変動閾値F以上になるまで待機する。
【0081】
ステップS16で、分岐バルブV1を切り換え、ステップS18で、合流バルブV2を切り換える。この切り換えにより、燃料ガスの供給先が切り換わる。改質部12A、炭素析出部14Aを使用していた場合には、改質部12B、炭素析出部14Bへ切り換わり、改質部12B、炭素析出部14Bを使用していた場合には、改質部12B、炭素析出部14Aへ切り換わる。当該切り換えにより、燃料ガスの供給が停止された側の、改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bの取り換え作業を行うことができる。これにより、流路閉塞に伴うシステムへの影響を低減すると共に、連続的に燃料ガスの供給と炭素の回収を行うことができる。
【0082】
ステップS18の後、ステップS10へ戻り、上記の処理を繰り返す。
【0083】
本実施形態の燃料電池システム10Aによれば、炭素析出部14A、14Bで、改質ガスから固体炭素を析出させる。このように、固体炭素を析出させることにより、簡易に処理することができる。これにより、炭化水素燃料利用での発電時に発生する二酸化炭素を、輸送や固定化が簡易に行える固体炭素として簡易に回収することができる。
特に化石燃料起源の炭化水素燃料を利用するエネルギー供給システムでは、エネルギー創出時に発生する二酸化炭素の排出を削減して固定化が容易な固体炭素として回収することで、回収した固体炭素を固定化すれば、化石燃料を利用しながら、二酸化炭素の大気放出を伴わない、カーボンニュートラルなエネルギー供給が可能となる。
【0084】
また、燃料極16Aから排出された燃料極オフガスに含まれる二酸化炭素を改質部12A、12Bへ戻して、二酸化炭素改質に利用するので、燃料電池システム10Aの運転により生成される二酸化炭素を、外部に排出することなく、固体炭素化して回収することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、改質部12での二酸化炭素改質用の二酸化炭素を、燃料極オフガスを戻すことにより供給したが、燃料ガスとしてバイオガスや消化ガスを用いる場合には、燃料ガスに二酸化炭素が含まれているため、必ずしも燃料極オフガスを改質部12へ戻す必要はない。また、改質部12への二酸化炭素の供給は、大気中の二酸化炭素や工場からの排ガス等に含まれる二酸化炭素を用いてもよい。
バイオガス中に含まれる二酸化炭素や大気中に含まれる二酸化炭素を混合し、これらの一部を固体炭素として回収し、固定化することで、大気中に蓄積した二酸化炭素を回収して削減することが可能となる。
【0086】
なお、本実施形態では、燃料極オフガスについて、未反応の一酸化炭素や水素が残ったまま水のみを除去して改質部12A、12Bへ供給したが、図5に示されるように、燃料電池セルスタック16の下流側に、酸化部18を設けてもよい。酸化部18は、燃料極流路18Aと空気極流路18Bを区画するように酸素透過膜18Cを設け、空気極流路18Bから燃料極流路18A側へ酸素を移動させる。これにより、式(7)(8)のように、燃料極オフガス中の水素や一酸化炭素等が酸化反応により除去される。
【0087】
2H+O→2HO … (7)
2CO+O→2CO … (8)
【0088】
また、図6に示されるように、燃料電池セルスタック16の下流側に、水素除去部19を設けてもよい。水素除去部19は、燃料極流路19Aと空気極流路19Bを区画するように水素透過膜19Cを設け、燃料極流路19Aから空気極流路19B側へ水素を移動させる。これにより、燃料極オフガスから水素を除去することができる。
【0089】
また、本実施形態では、複数の改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bを有し、炭素析出監視処理により、燃料ガスの供給先を切り換える。したがって、燃料電池システム10Aを停止させることなく、燃料ガスの供給が停止された側の改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bを容易に交換することができる。
【0090】
また、本実施形態では、空気極オフガスを高温部13の温度を維持し、改質部12A,12B、炭素析出部14A、14Bの加熱に使用するので、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。さらに、気極オフガスを排熱投入型吸収式冷凍機22での冷熱生成時における熱交換に使用するので、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0091】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態の燃料電池システム10Bでは、図7に示されるように、燃料電池セルスタック16に代えて、水素イオン伝導型固体酸化物形燃料電池(PCFC:Proton Ceramic Solid Oxide Fuel Cell)の燃料電池セルスタック17が用いられている。燃料電池セルスタック17は、燃料極17A、空気極17B,電解質層17Cを有している。
【0093】
合流バルブV2と燃料極17Aの間には、水蒸気供給管R7Bが接続されており、燃料極17Aに水蒸気が供給される。水蒸気供給管R7Bは、気化器28と接続されている。気化器28には、水タンク21から水が供給される。供給された水(液相)は、気化器28において、燃料極オフガス管R3を流れる燃料極オフガスにより加熱され、気化される。
【0094】
燃料極17Aでは、下記(9)式に示すように、改質部12Aで未改質の燃料ガスが水蒸気改質され、水素と一酸化炭素が生成される。また、下記(10)式に示すように、生成された一酸化炭素と水とのシフト反応により二酸化炭素と水素が生成される。
【0095】
CH+HO→3H+CO …(9)
CO+HO→CO+H …(10)
【0096】
そして、燃料極17Aにおいて、下記(11)式に示すように、水素が水素イオンと電子とに分離される。
【0097】
(燃料極反応)
→2H+2e…(11)
【0098】
水素イオンは、電解質層17Cを通って空気極17Bへ移動する。電子は、外部回路(不図示)を通って空気極17Bへ移動する。これにより、燃料電池セルスタック17において発電される。発電時に、燃料電池セルスタック17は、発熱する。
【0099】
空気極17Bでは、下記(12)式に示すように、電解質層17Cを通って燃料極17Aから移動してきた水素イオン、外部回路を通って燃料極16Aから移動した電子が、空気中の酸素と反応して水蒸気が生成される。
【0100】
(空気極反応)
2H+2e+1/2O →HO …(12)
【0101】
本実施形態の燃料電池システム10Bでも、第1実施形態と同様に、炭素析出部14A、14Bで、改質ガスから固体炭素を析出させるので、二酸化炭素を、簡易に処理することができる。これにより、炭化水素燃料利用での発電時に発生する二酸化炭素を、輸送や固定化が簡易に行える固体炭素として簡易に回収することができる。
【0102】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0103】
本実施形態では、ガス消費装置として、燃料を燃焼させて得たエネルギーで発電を行う、エネルギー供給システム10Cについて説明する。ガスエンジンやガスタービン発電機を用いることができるが、本実施形態ではガスエンジンを例に説明する。
【0104】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の燃料ガスを用いることができる。
【0105】
図8に示されるように、改質ガス管R2の下流端、及び、空気供給管R5の下流端は、ガスエンジン40と接続されている。改質ガス管R2からは、ガスエンジン40の燃料室(不図示)に、改質ガスが供給され、空気供給管R5からは、ガスエンジン40の燃焼室に空気が供給される。改質ガスは、空気により燃焼室で燃焼される。
【0106】
ガスエンジン40には、燃焼排ガス管R8が接続されており、燃焼室から燃焼排ガスが燃焼排ガス管R8に送出される。燃焼排ガス管R8は、高温部熱交換配管R8Aと冷凍機熱交換配管R8Bに分岐されている。高温部熱交換配管R8Aは、高温部13内で熱交換が行われるように配設されている。燃焼排ガスにより、高温部13の温度が500℃~700℃程度に維持され、改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bが加熱される。
【0107】
冷凍機熱交換配管R8Bは、排熱投入型吸収式冷凍機22と接続されている。燃焼排ガスは、排熱投入型吸収式冷凍機22での熱交換により冷却され、凝縮器20へ送られてさらに冷却される。これにより、燃焼排ガス中の水蒸気が除去される。
【0108】
凝縮器20には、循環ガス管R10Aの一端が接続され、循環ガス管R10Aの他端は、二酸化炭素分離部31に接続されている。二酸化炭素分離部31は、二酸化炭素分離膜33で区画された非透過部32と透過部34を有している。二酸化炭素分離膜33は、二酸化炭素を選択的に透過させる膜で形成されている。循環ガス管R10Aは、非透過部32と接続されており、凝縮器20で水分が除去された後の燃焼排ガスは、二酸化炭素分離部31の非透過部32へ供給される。非透過部32へ供給された燃焼排ガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素分離膜33を透過して透過部34へ移動する。非透過部32に残った燃焼排ガス成分は、排ガス管R11から排出される。
【0109】
二酸化炭素分離部31の透過部34には、循環ガス管R10Bの一端が接続され、循環ガス管R10Bの他端は、ガスミキサGMを介して燃料供給管R1と接続されている。循環ガス管R10Bには、循環ブロワB3が設けられている。二酸化炭素分離部31で分離された二酸化炭素は、循環ブロワB3により燃料供給管R1へ向かって送出され、ガスミキサGMで燃料ガスと混合されて、改質部12A、12Bへ供給される。
【0110】
本実施形態のエネルギー供給システム10Cでも、炭素析出部14A、14Bで、改質ガスから固体炭素を析出させる。このように、固体炭素を析出させることにより、簡易に処理することができる。これにより、炭化水素燃料利用での発電時に発生する二酸化炭素を、輸送や固定化が簡易に行える固体炭素として簡易に回収することができる。
【0111】
また、ガスエンジン40から排出された燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を改質部12A、12Bへ戻して、二酸化炭素改質に利用するので、エネルギー供給システム10Cの運転により生成される二酸化炭素を、外部に排出することなく、固体炭素化して回収することができる。
【0112】
[第4実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1~第3実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0113】
本実施形態では、ガス消費装置として、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを利用する、エネルギー供給システム10Dについて説明する。ガス給湯器やガスボイラを用いることができるが、本実施形態ではガス給湯器を例に説明する。
【0114】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の燃料ガスを用いることができる。
【0115】
図9に示されるように、改質ガス管R2の下流端、及び、空気供給管R5の下流端は、ガス給湯器44と接続されている。改質ガス管R2からは、ガス給湯器44の燃料室(不図示)に、改質ガスが供給され、空気供給管R5からは、ガス給湯器44の燃焼室に空気が供給される。改質ガスは、空気により燃焼室で燃焼される。
【0116】
ガス給湯器44には、熱交換配管46が設けられており、熱交換配管46には、水が供給される。熱交換配管46は、燃焼室での燃焼熱により、内部を流れる水が加熱されるように配設されている。
【0117】
ガス給湯器44には、燃焼排ガス管R8が接続されており、燃焼室から燃焼排ガスが燃焼排ガス管R8に送出される。
【0118】
本実施形態のエネルギー供給システム10Dでも、炭素析出部14A、14Bで、改質ガスから固体炭素を析出させる。このように、固体炭素を析出させることにより、簡易に処理することができる。れにより、炭化水素燃料利用での発電時に発生する二酸化炭素を、輸送や固定化が簡易に行える固体炭素として簡易に回収することができる。
【0119】
また、ガス給湯器44から排出された燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を改質部12A、12Bへ戻して、二酸化炭素改質に利用するので、エネルギー供給システム10Cの運転により生成される二酸化炭素を、外部に排出することなく、固体炭素化して回収することができる。
【0120】
なお、前述の第1~第4実施形態では、炭素析出部14A、14Bの析出空間14ARにおける管体14AKの内壁14AKWにリブ14ALを設けて、炭素の析出を促進したが、リブ14ALは必ずしも必要ではない。リブ14ALに代えて、内壁14AKWの表面に粗面化処理を施したり、細かい凹凸を形成したりしてもよい。
【0121】
また、前述の第1~第4実施形態では、各ガス消費装置(燃料電池セルスタック16、ガスエンジン40、ガス給湯器44)から排出されたガスに含まれる二酸化炭素を改質部12A、12Bでの二酸化炭素改質に用いたが、他の二酸化炭素を用いてもよい。
【0122】
また、前述の第1~第4実施形態では、改質部12A、12B、炭素析出部14A、14Bのセットを2組設置したが、3組以上設置してもよいし、1組でもよい。2組以上設けることにより、燃料ガスの供給を停止することなく、炭素析出部14A、14Bの交換を行うことができる。
【0123】
また、前述の第1~第4実施形態では、排熱投入型吸収式冷凍機22を用いて冷熱を生成したが、排熱投入型吸収式冷凍機22に代えて他の排熱を利用するヒートポンプ、例えば、吸着式冷凍機を用いて冷熱を生成してもよい。
さらに、排熱を利用して排気ガス中の水分を除去(除湿)するうえでは、排熱利用型のデシカント空調機を利用して、ガス中の過剰な水分を除去してもよい。
【符号の説明】
【0124】
10A、10B 燃料電池システム(固体炭素回収型エネルギー供給システム)
10C、10D エネルギー供給システム
12A、12B 改質部
12AR、12BR 改質空間
C 改質触媒
13 高温部(オフガス熱交換部、燃焼排ガス熱交換部)
14A、14B 炭素析出部
15A、15B 流量計(炭素情報出力部)
16、17 燃料電池セルスタック(ガス消費部)
16A、17A 燃料極
16B、17B 空気極
18 酸化部(除去部)
19 水素除去部(除去部)
20 凝縮器(水分離部)
31 二酸化炭素分離部
30 制御部(切換部)
40 ガスエンジン(ガス消費部)
44 ガス給湯器(ガス消費部)
R4 循環ガス管(オフガス循環路)
R10B 循環ガス管(二酸化炭素循環路)
V1 分岐バルブ(切換部)
V2 合流バルブ(切換部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9