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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
F15B15/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020140278
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035748
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591124514
【氏名又は名称】株式会社アサヒエンタープライズ
(73)【特許権者】
【識別番号】504392474
【氏名又は名称】飯塚 博道
(73)【特許権者】
【識別番号】520320756
【氏名又は名称】前田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 博道
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-012816(JP,U)
【文献】特開2006-118619(JP,A)
【文献】実開平06-030451(JP,U)
【文献】特開平02-042133(JP,A)
【文献】実開昭60-035904(JP,U)
【文献】国際公開第2006/001691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力フランジを有するシリンダ本体と、
前記シリンダ本体を収容する収容室を有するボディと、
前記シリンダ本体の後端に取り付けられて前記収容室に第一圧力室を形成する第一ダイヤフラムと、
前記シリンダ本体の前端に取り付けられて前記収容室に第二圧力室を形成する第二ダイヤフラムと、
前記ボディに形成されて前記第二圧力室に連通し、前記圧力フランジに臨んでフラッパとして機能する開口部を有するノズルと、
前記シリンダ本体の前端面に前記第二ダイヤフラムを挟んで固定されたプランジャと、
前記シリンダ本体の後端面に前記第一ダイヤフラムを挟んで固定されたベースと、
を備え、
前記第一圧力室と前記第二圧力室に圧縮空気を供給して、それぞれの内圧が均衡する位置に前記シリンダ本体を移動させる、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
圧力フランジを有するシリンダ本体と、
前記シリンダ本体を収容する収容室を有するボディと、
前記シリンダ本体の後端に取り付けられて前記収容室に第一圧力室を形成する第一ダイヤフラムと、
前記シリンダ本体の前端に取り付けられて前記収容室に第二圧力室を形成する第二ダイヤフラムと、
前記ボディに形成されて前記第二圧力室に連通し、前記圧力フランジに臨んでフラッパとして機能する開口部を有するノズルと、
前記第二圧力室に連通し、該第二圧力室の出力圧を測定する圧力センサと、
前記第一圧力室と前記第二圧力室に連通する電空レギュレータと、
を備え、
前記第一圧力室と前記第二圧力室に圧縮空気を供給して、それぞれの内圧が均衡する位置に前記シリンダ本体を移動させ
前記電空レギュレータは、前記第一圧力室に入力圧を供給し、前記圧力センサの測定信号に応じて前記入力圧を調整して、前記シリンダ本体を位置決めさせる、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
圧力フランジを有するシリンダ本体と、
前記シリンダ本体を収容する収容室を有するボディと、
前記シリンダ本体の後端に取り付けられて前記収容室に第一圧力室を形成する第一ダイヤフラムと、
前記シリンダ本体の前端に取り付けられて前記収容室に第二圧力室を形成する第二ダイヤフラムと、
前記ボディに形成されて前記第二圧力室に連通し、前記圧力フランジに臨んでフラッパとして機能する開口部を有するノズルと、
を備え、
前記第一圧力室と前記第二圧力室に圧縮空気を供給して、それぞれの内圧が均衡する位置に前記シリンダ本体を移動させ
前記ボディは、
前記第一圧力室を有する第一ボディと、
前記第二圧力室を有して、前記第一ボディとの間に前記第一ダイヤフラムの外周縁を挟持する第二ボディと、
前記第一ボディとの間に前記第二ダイヤフラムの外周縁を挟持する第三ボディと、
を備える、ことを特徴とするアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータに係り、特に圧力を入力し、この入力圧に応じた変位を出力するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
微小でかつ高精度の変位を取出す超微細位置決めが可能な、いわゆるナノアクチュエータとして、ピエゾアクチュエータやベローズアクチュエータがある。
ピエゾアクチュエータは、所定の方向に分極された圧電素子によって構成され、この圧電素子に対して電圧を印加することによって、歪変形を利用して変位を取出すものである。ピエゾアクチュエータは、ヒステリシスが大きいために閉ループ制御を行なうことが必要になる。また、ピエゾアクチュエータは、開発コストが高いために、量産を前提とした用途あるいは高コストを許容できる用途に限定され、量産を前提としない用途や低コストの用途には用いることができない。さらに、ピエゾアクチュエータは、印加電圧を高くしないと大きな変位量を取出せない欠点がある。
【0003】
ベローズアクチュエータは、このベローズに対して加わる力とこの力によるベローズの歪量とをフィードバックして位置制御を行なうようにしたアクチュエータである。ベローズアクチュエータは、歪量が移動量を決定するために、温度ドリフトが大きくなる。また、外乱ノイズの影響を受け易く、さらには精度を上げるには閉ループ制御が不可欠である。このため、低コスト化が難しいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4690693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアクチュエータは、空気圧等の圧力のバランスによって位置が決定され、温度ドリフトが小さく、外乱ノイズの影響を受け難い。また、ヒステリシスが小さくてオープンループでも十分に使用可能である。さらに、空気圧等の圧力による位置センサを用いることにより、オープンループでも高い精度が確保できる。
しかし、圧力バランスがボディに形成された弾性ヒンジ機構のバネ定数に拠るため、例えば横倒しにして使用したときに、後退時の再現性(ヒステリシスが大きい)が悪化するという欠点がある。
【0006】
本発明は、前進時と後退時のいずれにおいても高い再現性を維持することができるアクチュエータを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施態様に係るアクチュエータは、圧力フランジを有するシリンダ本体と、前記シリンダ本体を収容する収容室を有するボディと、前記シリンダ本体の後端に取り付けられて前記収容室に第一圧力室を形成する第一ダイヤフラムと、前記シリンダ本体の前端に取り付けられて前記収容室に第二圧力室を形成する第二ダイヤフラムと、前記ボディに形成されて前記第二圧力室に連通し、前記圧力フランジに臨んでフラッパとして機能する開口部を有するノズルと、を備え、前記第一圧力室と前記第二圧力室に圧縮空気を供給して、それぞれの内圧が均衡する位置に前記シリンダ本体を移動させる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の実施態様に係るアクチュエータは、前記シリンダ本体の前端面に前記第二ダイヤフラムを挟んで固定されたプランジャと、前記シリンダ本体の後端面に前記第一ダイヤフラムを挟んで固定されたベースと、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の実施態様に係るアクチュエータは、前記第二圧力室に連通する圧力センサと、前記第一圧力室と前記第二圧力室に連通する電空レギュレータと、を備え、前記圧力センサは、前記第二圧力室の出力圧を測定し、前記電空レギュレータは、前記第一圧力室に入力圧を供給し、前記圧力センサの測定信号に応じて前記入力圧を調整して、前記シリンダ本体を位置決めさせる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の実施態様に係るアクチュエータは、前記ボディは、前記第一圧力室を有する第一ボディと、前記第二圧力室を有して、前記第一ボディとの間に前記第一ダイヤフラムの外周縁を挟持する第二ボディと、前記第一ボディとの間に前記第二ダイヤフラムの外周縁を挟持する第三ボディと、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクチュエータは、空気圧等の圧力のバランスによってシリンダ本体の位置が決定され、温度ドリフトが小さく、外乱ノイズの影響を受け難い。また、例えば横倒しした場合であっても、前進時と後退時のいずれにおいても高い再現性を維持することができる(ヒステリシスが小さい)。さらに、クローズドループ制御によりナノメートルオーダーの高い精度で位置決め制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るアクチュエータ1を示す縦断面図である。
図2】アクチュエータ1を示す平面図である。
図3】アクチュエータ1をクローズドループ制御する際の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図示の実施の形態によって説明する。
図1図2は、本実施形態に係るアクチュエータ1を示す図である。
アクチュエータ1は、ほぼ円柱形をなすシリンダ10と、ほぼ立方体をなすボディ20と、を備える。ボディ20にシリンダ10を収容する収容室30が形成され、この収容室30に配置されたシリンダ10が前後方向(図1の上下方向)に微小移動する。
シリンダ10およびボディ20は、例えばステンレス鋼、炭素鋼、アルミ合金等から形成される。
【0014】
シリンダ10は、シリンダ本体11、ベース14およびプランジャ15を備える。前方から、プランジャ15、シリンダ本体11、ベース14の順に配置されて、ボルト(不図示)により連結される。
シリンダ本体11は、ボディ20(収容室30)のほぼ中央(中心)に収容される部材であり、前端側に配置された円柱形のロッド12と、後端側に配置された円盤形の圧力フランジ13とからなる。ロッド12は直径が例えば15mm、圧力フランジ13は直径が例えば26mmである。
圧力フランジ13の後端面には、第一ダイヤフラム17が取り付けられる。ロッド12の前端面には、第二ダイヤフラム18が取り付けられる。第一ダイヤフラム17、第二ダイヤフラム18は、金属製の薄板(薄膜)である。
シリンダ本体11は、収容室30のうち、後述する第二圧力室32に収容される。
【0015】
ベース14は、ボディ20(収容室30)の後端側に配置される円盤形の部材であり、第一ダイヤフラム17を挟んで圧力フランジ13の後端面に固定される。ベース14は、シリンダ本体11と協働して第一ダイヤフラム17の中央部を挟持する。つまり、シリンダ本体11とベース14の間に第一ダイヤフラム17が配置される。
ベース14は、圧力フランジ13よりも小さい直径を有する。ベース14は、直径が例えば20mmである。
ベース14は、収容室30のうち、後述する第一圧力室31に収容される。
【0016】
プランジャ15は、ボディ20(収容室30)の前端側に配置される円柱形の部材であり、第二ダイヤフラム18を挟んでロッド12の前端面に固定される。プランジャ15は、シリンダ本体11と協働して第二ダイヤフラム18の中央部を挟持する。つまり、シリンダ本体11とプランジャ15の間に第二ダイヤフラム18が配置される。
プランジャ15は、ロッド12と同一の直径を有する。プランジャ15は、直径が例えば15mmである。
プランジャ15は、収容室30のうち、後述する第三室35に収容され、その前端部がボディ20から突出する。この前端部には、外部機器等を固定するためのネジ穴等が設けられる。
【0017】
ボディ20は、第一ボディ21、第二ボディ22および第三ボディ23から構成される。前方から、第三ボディ23、第一ボディ21、第二ボディ22の順に配置されて、ボルトにより連結される。また、第二ボディ22は、第一ボディ21の外周を覆うように配置される。
第一ボディ21は、ボディ20のほぼ中央(中心)に配置される円柱形の部材であり、シリンダ本体11を収容する第二圧力室32を有する。
第二圧力室32は、第一ボディ21を前後方向に貫通する空間であり、ロッド12を収容する円筒形の第一空間33と、圧力フランジ13を収容する円筒形の第二空間34からなる。第一空間33の内径は、圧力フランジ13の直径(外径)よりも小さい。第二圧力室32の第二空間34は、後端側を向いて圧力フランジ13に臨む円環形平面を有する。
第二圧力室32には、供給圧力ポート41と出力圧力ポート43が連通する。
【0018】
供給圧力ポート41と出力圧力ポート43は、ボディ20の側面に開口する。
供給圧力ポート41から第二圧力室32に繋がる空圧路には、オリフィス42が設けられる。供給圧力ポート41に供給された圧縮空気は、オリフィス42により減圧されて第二圧力室32に流入する。
出力圧力ポート43は、供給圧力ポート41の空圧路の下流側(オリフィス42と第二圧力室32の間)に連通する。つまり、供給圧力ポート41から第二圧力室32に繋がる空圧路が第二圧力室32の近傍で分岐して、第二圧力室32と出力圧力ポート43にそれぞれ繋がる。これにより、出力圧力ポート43には、第二圧力室32に封入された圧縮空気と同一圧の圧縮空気が流入する。
【0019】
また、第二圧力室32には、ノズル45が連通する。ノズル45は、第二圧力室32の第二空間34に開口する。詳細には、ノズル45は、第二圧力室32(第二空間34)における、後端側を向いて圧力フランジ13に臨む円環形の平面に開口する。つまり、ノズル45の開口部46は、圧力フランジ13に僅かな隙間を隔てて臨む。これにより、ノズル45の開口部46と圧力フランジ13は、ノズルフラッパ(エアマイクロメータ)として機能する。
また、ノズル45は、ボディ20の側面に開口する。これにより、第二圧力室32に封入された圧縮空気は、開口部46からノズル45に流入して、大気開放される。
【0020】
第二ボディ22は、第一ボディ21の後端面に固定される四角柱形の部材であり、ベース14を収容する第一圧力室31を有する。
第二ボディ22は、第一ボディ21と協働して第一ダイヤフラム17の外周縁を挟持する。つまり、第一ダイヤフラム17は、第一ボディ21と第二ボディ22の間に配置されて、第一圧力室31を密封する。
第一圧力室31は、第二ボディ22の前端面を後端側に向けて円形に掘り込んだ空間である。第一圧力室31には、制御圧力ポート44が連通する。制御圧力ポート44は、ボディ20の側面に開口する。制御圧力ポート44に供給された圧縮空気は、第一圧力室31に流入する。
【0021】
第三ボディ23は、第一ボディ21の前端面に固定される四角板形の部材であり、プランジャ15を収容する第三室35を有する。
第三ボディ23は、第一ボディ21と協働して第二ダイヤフラム18の外周縁を挟持する。つまり、第二ダイヤフラム18は、第一ボディ21と第三ボディ23の間に配置されて、第二圧力室32を密封する。
第三室35は、第三ボディ23を前後方向に貫通する円筒形の空間である。第三室35は、ボディ20の前面に開口する。これにより、第三室35は、プランジャ15を露出させる。
【0022】
上述した通り、ボディ20には、シリンダ10を収容する収容室30が形成される。収容室30は、第一圧力室31、第二圧力室32および第三室35からなる。前方から、第三室35、第二圧力室32、第一圧力室31の順に配置され、第一ダイヤフラム17、第二ダイヤフラム18により区画される。
第一圧力室31は、後方に配置された密閉空間であり、制御圧力ポート44から圧縮空気が供給される。
第二圧力室32は、中央に配置された密閉空間である。供給圧力ポート41から圧縮空気が供給される。また、第二圧力室32に封入された圧縮空気は、ノズル45から流出して大気開放される。
ボディ20の内部には、Oリングが複数箇所に取付けられて、第一圧力室31、第二圧力室32およびこれらの圧力室に連通する空気路を密封する。
【0023】
第一圧力室31と第二圧力室32の圧力変動(内圧バランス)により、第一ダイヤフラム17と第二ダイヤフラム18が膨張収縮して前後方向に変位する。この第一ダイヤフラム17と第二ダイヤフラム18の変位に伴い、ベース14、シリンダ本体11、プランジャ15が一体(すなわちシリンダ10)となって前後方向に移動する。これにより、ボディ20の前面から突出したプランジャ15が前後方向に変位する。
【0024】
図3は、アクチュエータ1をクローズドループ制御する際の構成を示す模式図である。
出力圧力ポート43には、圧力センサ51が接続される。圧力センサ51は、出力圧力ポート43を介して、第二圧力室32の内圧を測定する。圧力センサ51の測定信号は、電空レギュレータ52に送信される。
供給圧力ポート41と制御圧力ポート44には、電空レギュレータ52が接続される。電空レギュレータ52は、比例制御弁であり、入力信号(コマンド信号)に比例した空気圧を連続的に制御する機器である。電空レギュレータ52の一次側ポートと供給圧力ポート41が繋げられ、二次側ポートと制御圧力ポート44が繋げられる。
【0025】
次に、アクチュエータ1の動作を説明する。
まず、電空レギュレータ52から供給圧力ポート41に供給圧Psを供給する。供給圧Psは、オリフィス42において減圧されて、第二圧力室32に供給される。
次に、電空レギュレータ52にコマンド信号CMDを入力して、電空レギュレータ52の一次側ポートからコマンド信号CMDに比例した入力圧Piを供給させる。入力圧Piは、制御圧力ポート44を経由して、第一圧力室31に供給される。
第一圧力室31に入力圧Piが供給されると、シリンダ10が前方向に移動して、ノズル45の開口部46と圧力フランジ13の距離(ギャップ)を減少させる。これにより、第二圧力室32の内圧(出力圧Po)が上昇する。
【0026】
ノズル45(開口部46)と圧力フランジ13は、ノズルフラッパとして機能する。ノズル45(開口部46)と圧力フランジ13は、エアマイクロメータ(ギャップセンサ、位置センサ)としても構成する。開口部46と圧力フランジ13の距離(ギャップ)に応じて、出力圧Poがノズル45を介してボディ20の外部に排気される。
そして、入力圧Piによる上方への押圧力と出力圧Poによる下方への押圧力とバランス(均衡)するように、開口部46と圧力フランジ13のギャップが一義的に定まる。つまり、シリンダ10が前後方向に移動して、入力圧Piと出力圧Poがバランスして、シリンダ10が停止する(位置決めされる)。
出力圧Poは、出力圧力ポート43を介して圧力センサ51により測定されて、電空レギュレータ52にフィードバックされる。電空レギュレータ52は、コマンド信号CMDと圧力センサ51の測定信号のオフセットが無くなるように積分をかけて、シリンダ10を正確に位置決めする。
したがって、シリンダ10の前後方向の位置に応じて、プランジャ15の前端部がボディ20に対して変位する。アクチュエータ1は、この変位を出力として取り出される。
【0027】
このように、アクチュエータ1のシリンダ10の位置決めは、供給圧Psと入力圧Piによって決まるために、極めて簡単な制御が可能になる。
しかも、シリンダ10は、一対のダイヤフラム17,18により保持されているので、前後方向の移動の際のヒステリシスが殆どなく、ヨーイングやピッチングも発生しない。つまり、前進時と後退時のいずれにおいても高い再現性を維持することができる。
したがって、アクチュエータ1は、シリンダ10の位置決めをナノメートルオーダーで行うことができる。アクチュエータ1の分解能は、例えば1/1000以下であり、シリンダ10の可動距離が100μmのとき、10nm以下の位置決め精度を有する。なお、シリンダ10の可動距離は、オリフィス42の内径とノズル45(開口部46)の内径の組み合わせで設定できる。
また、シリンダ10は、空気圧のバランスによって位置が決められるために、温度ドリフトが小さく、外乱ノイズの影響も受け難い。
また、ノズル45(開口部46)と圧力フランジ13によって構成されるエアマイクロメータを内蔵しており、オープンループ制御でも高い位置精度を確保できる。
さらに、アクチュエータ1は、クローズドループ制御を用いることにより、ヒステリシスが完全にない、リニアな制御を実現することができる。
【0028】
このようなアクチュエータ1は、例えば電子顕微鏡の焦点の位置決めや、半導体製造装置のステッパ上のレンズの焦点の調整、人工受精の卵子の位置決め等の各種の用途に広く適用可能である。
【0029】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 アクチュエータ
10 シリンダ
11 シリンダ本体
13 圧力フランジ
14 ベース
15 プランジャ
17 第一ダイヤフラム
18 第二ダイヤフラム
20 ボディ
21 第一ボディ
22 第二ボディ
23 第三ボディ
30 収容室
31 第一圧力室
32 第二圧力室
41 供給圧力ポート
42 オリフィス
43 出力圧力ポート
44 制御圧力ポート
45 ノズル
46 開口部
51 圧力センサ
52 電空レギュレータ
Pi 入力圧
Po 出力圧
Ps 供給圧
図1
図2
図3