(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】粉体搬送装置
(51)【国際特許分類】
F27B 7/16 20060101AFI20240625BHJP
C10J 3/72 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F27B7/16
C10J3/72 J
(21)【出願番号】P 2020159506
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】平間 道郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】杉村 枝里子
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021067(JP,A)
【文献】特開2008-111016(JP,A)
【文献】特開2013-216944(JP,A)
【文献】特開2017-190923(JP,A)
【文献】実開昭58-015637(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/16
C10J 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体搬送装置であって、
所定の回転軸に沿って延びる筒状であり、前記回転軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転軸に平行な軸方向に延びるとともに前記回転筒状部の内部を仕切る少なくとも1つの板状部材を有し、前記軸方向に延びる複数の搬送空間を形成する隔壁部と、
を備え、
前記複数の搬送空間に粉体およびガスが供給され、
前記複数の搬送空間のそれぞれにおいて、前記回転筒状部の回転に伴って前記粉体を前記軸方向に搬送する搬送構造が設けられ、
前記搬送構造が、
搬送空間の内部において前記軸方向に延びる軸部と、
前記軸部と前記搬送空間の内側面とを接続するとともに、前記軸部を周回しつつ前記軸部に沿って延びるガイド板と、
を備え
、
前記ガイド板において前記搬送空間の前記内側面と接続する部位の、前記軸方向に対する傾斜角が、前記軸部を1周する間に変動することを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の粉体搬送装置であって、
前記ガイド板が、前記軸部を1周する間において、前記軸部に略垂直な部位を含むことを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の粉体搬送装置であって、
前記複数の搬送空間にそれぞれ設けられる複数の搬送構造が、
前記回転筒状部の回転に伴って前記粉体を前記軸方向の一方側に搬送する第1搬送構造と、
前記回転筒状部の回転に伴って前記粉体を前記軸方向の他方側に搬送する第2搬送構造と、
を含むことを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の粉体搬送装置であって、
前記回転筒状部において、前記軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、
前記粉体搬送装置が、
前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解ガスを改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、
をさらに備え、
前記複数の搬送空間を形成する前記隔壁部が前記改質部に設けられ、
前記複数の搬送空間に前記チャーおよび前記熱分解ガスが供給されることを特徴とする粉体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリーキルンが利用されている。ロータリーキルンでは、中心軸を中心として回転する円筒状の回転筒状部が設けられる。回転筒状部の一方側の端部には、被処理物の供給口が設けられ、他方側の端部には、排出口が設けられる。一般的なロータリーキルンでは、回転筒状部の中心軸を傾斜させることにより、被処理物が排出口に向かって移動する。また、中心軸が水平となる水平置きのロータリーキルンでは、被処理物が連続的に供給口から供給され、排出口の堰をオーバーフローしたものが外部に排出される。この場合、被処理物の供給口への投入が、被処理物のドライビングフォースとなる。
【0003】
また、特許文献1の装置では、内部にスパイラル面が設けられた複数の小円筒体が回転筒状部内に固定される。当該装置では、中心軸を中心とする回転筒状部の回転に伴って、各スパイラル面も当該中心軸の周囲を回転することにより、中心軸方向のドライビングフォースが生み出される。実際には、対となる小円筒体においてスパイラル面を互いに反対方向にすることにより、一方では、粉体が排出口側に進行し、他方では粉体がその反対側に進行する。特許文献1の装置では、小円筒体の内部において、所定のガスを粉体(ここでは、チャー)の層に貫流させ、固気接触を促進することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、粉体とガスとの固気接触を生じさせて改質ガス等を生成する装置において、回転筒状部の内部にて粉体の層を適切に保持するには、粉体がガスにより流される速度(終末速度)を超えないように、ガスの流速を調整(低減)する必要がある。この場合に、所望のガス流量、すなわち、ガス生産量を確保するために、搬送空間である小円筒体の断面積(軸方向に垂直な断面積)を大きくすることが考えられる。しかしながら、特許文献1の装置では、小円筒体の増大に伴って回転筒状部の外径が大きくなるため、搬送空間の断面積の増大は容易ではない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、固気接触を良好に生じさせる装置において、搬送空間の断面積を容易に大きくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、粉体搬送装置であって、所定の回転軸に沿って延びる筒状であり、前記回転軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転軸に平行な軸方向に延びるとともに前記回転筒状部の内部を仕切る少なくとも1つの板状部材を有し、前記軸方向に延びる複数の搬送空間を形成する隔壁部とを備え、前記複数の搬送空間に粉体およびガスが供給され、前記複数の搬送空間のそれぞれにおいて、前記回転筒状部の回転に伴って前記粉体を前記軸方向に搬送する搬送構造が設けられ、前記搬送構造が、搬送空間の内部において前記軸方向に延びる軸部と、前記軸部と前記搬送空間の内側面とを接続するとともに、前記軸部を周回しつつ前記軸部に沿って延びるガイド板とを備え、前記ガイド板において前記搬送空間の前記内側面と接続する部位の、前記軸方向に対する傾斜角が、前記軸部を1周する間に変動する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粉体搬送装置であって、前記ガイド板が、前記軸部を1周する間において、前記軸部に略垂直な部位を含む。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の粉体搬送装置であって、前記複数の搬送空間にそれぞれ設けられる複数の搬送構造が、前記回転筒状部の回転に伴って前記粉体を前記軸方向の一方側に搬送する第1搬送構造と、前記回転筒状部の回転に伴って前記粉体を前記軸方向の他方側に搬送する第2搬送構造とを含む。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の粉体搬送装置であって、前記回転筒状部において、前記軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記粉体搬送装置が、前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解ガスを改質することにより、改質ガスを生成する改質部とをさらに備え、前記複数の搬送空間を形成する前記隔壁部が前記改質部に設けられ、前記複数の搬送空間に前記チャーおよび前記熱分解ガスが供給される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固気接触を良好に生じさせる粉体搬送装置において、搬送空間の断面積を容易に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】隔壁部および搬送構造の他の例を示す図である。
【
図6】隔壁部および搬送構造の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るガス化装置1の構成を示す図である。
図1では、一部の構成を除き、後述の回転軸J1を含む面におけるガス化装置1の断面を示している。ガス化装置1は、外熱式ロータリーキルン(間接加熱式ロータリーキルン)であり、バイオマス等の被処理物をガス化して、燃料ガスである改質ガスを生成する装置である。改質ガスは、例えば、ガスエンジン等での発電に利用される。被処理物は、例えば、一般廃棄物、産業廃棄物、下水汚泥、木質バイオマス等である。
【0015】
ガス化装置1は、回転筒状部21と、外筒部26と、被処理物供給部31と、ガス導入部32と、熱分解部4と、改質部5と、制御部(図示省略)とを備える。制御部は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、ガス化装置1の全体制御を担う。回転筒状部21は、回転軸J1に沿って延びる筒状であり、例えば金属または合金等により形成される(回転筒状部21内に設けられる他の構成において同様)。典型的には、回転筒状部21は、回転軸J1を中心とする筒状であり、回転軸J1に垂直な回転筒状部21の断面形状は、円形である。後述するように、当該断面形状は、円形以外であってもよい。
図1の例では、回転筒状部21の回転軸J1は略水平である。ガス化装置1の設計によっては、回転軸J1が水平方向に対して傾斜してもよい。
【0016】
回転筒状部21において、回転軸J1に平行な方向(以下、「軸方向」という。)における一方側の端部開口は供給口211であり、他方側の端部開口は排出口212である。後述するように、回転筒状部21の内部では、供給口211から排出口212に向かって熱分解部4および改質部5が順に設けられる。回転筒状部21の内部において供給口211の近傍には、供給側環状部23が設けられる。供給側環状部23は、回転軸J1を中心とする周方向の全周に亘って回転筒状部21の内周面から突出する環状部材である。回転筒状部21の内周面からの供給側環状部23の高さ(回転筒状部21の内周面に垂直な方向における供給側環状部23の内周面の高さ)は、全周に亘ってほぼ一定である。
【0017】
回転筒状部21の内部において排出口212の近傍には、排出側環状部24が設けられる。排出側環状部24は、周方向の全周に亘って回転筒状部21の内周面から突出する環状部材である。回転筒状部21の内周面からの排出側環状部24の高さ(回転筒状部21の内周面に垂直な方向における排出側環状部24の内周面の高さ)は、排出口212に近づくに従って漸次小さくなる。すなわち、排出側環状部24の内周面は、排出口212に近づくに従って直径が大きくなる円錐台面である。後述するチャーは、排出側環状部24の内周面により排出口212へと案内される。軸方向の各位置では、排出側環状部24の高さは全周に亘ってほぼ一定である。
【0018】
回転筒状部21の供給口211側の端部には、フランジ部213が設けられる。フランジ部213は、回転軸J1を中心とする円環状の板部材である。フランジ部213の下方には、一対のローラ221が設けられる。一対のローラ221は、
図1の紙面に垂直な方向に離間する。フランジ部213は、一対のローラ221により回転可能に支持される。
【0019】
また、回転筒状部21の外周面において、排出口212側の端部近傍には、フランジ部214が設けられる。フランジ部213と同様に、フランジ部214も、回転軸J1を中心とする円環状の板部材であり、一対のローラ222により回転可能に支持される。ガス化装置1では、モータおよび減速機を有する回転機構22がローラ221に接続されており、回転機構22がローラ221を回転することにより、回転筒状部21が回転軸J1を中心として連続的に回転する。回転筒状部21の回転速度は、例えば一定である。回転筒状部21を回転する構造は適宜変更されてよい。
【0020】
外筒部26は、回転軸J1を中心とする筒状であり、例えば金属または合金等により形成される。外筒部26は、2個のフランジ部213,214の間において回転筒状部21の周囲を囲み、回転筒状部21の外周面との間に筒状空間260を形成する。回転軸J1を中心とする径方向における、回転筒状部21と外筒部26との間の幅、すなわち筒状空間260の幅は、全長に亘ってほぼ一定である。軸方向における外筒部26の両端部には、環状壁261,262が設けられる。各環状壁261,262は、回転軸J1を中心とする円環状の部材であり、外筒部26から回転筒状部21に向かって突出する。環状壁261,262における回転筒状部21側の端面は、例えば摺動部材を介して回転筒状部21の外周面と接する。これにより、環状壁261,262と回転筒状部21との間に、シール構造が形成される。外筒部26は、回転しない固定体である。
【0021】
外筒部26には、流出口263および流入口264が形成される。流出口263は、供給口211側の環状壁261の近傍に設けられ、筒状空間260に接続する。流入口264は、排出口212側の環状壁262の近傍に設けられ、筒状空間260に接続する。流入口264には、所定の熱源流体が供給される。流入口264における熱源流体の温度は、例えば900~1100℃である。熱源流体は、筒状空間260を流れて、流出口263から排出される。筒状空間260を流れる熱源流体により回転筒状部21の外周面が加熱される。
【0022】
被処理物供給部31は、ホッパ311と、スクリューフィーダ312とを備える。ホッパ311には、被処理物が貯留される。スクリューフィーダ312は、回転機構313と、スクリュー314とを備える。スクリュー314は、ホッパ311の内部から回転筒状部21の供給口211まで回転軸J1に沿って延びる。回転機構313は、モータおよび減速機を有し、スクリュー314を回転する。これにより、ホッパ311内の被処理物が供給口211から回転筒状部21の内部に供給される。被処理物供給部31による回転筒状部21内への被処理物の供給は、連続的であっても、断続的であってもよい。スクリュー314のスクリュー軸315は中空である。スクリュー軸315の中空部には、後述の導入管321が設けられる。導入管321は、回転軸J1に沿って延びる。
【0023】
熱分解部4は、回転筒状部21の内部において供給口211側に設けられる。熱分解部4は、仕切板41と、ガイド部42とを備える。仕切板41は、回転軸J1に平行な板部材であり、回転軸J1上に配置される。回転軸J1に垂直な方向における仕切板41の両端部は、回転筒状部21の内周面に固定される。回転軸J1に沿って見た場合における回転筒状部21の内部空間は、仕切板41により二等分される。仕切板41の板厚(主面間の厚さ)は、比較的大きく、回転軸J1上に貫通孔411が設けられる。貫通孔411内には、既述の導入管321が挿入される。
【0024】
ガイド部42は、複数の線状突起421を備える。一部の線状突起421は、仕切板41の一方の主面から突出し、残りの線状突起421は、仕切板41の他方の主面から突出する。仕切板41の各主面に設けられる線状突起421は、互いに平行である。
図1の例では、全ての線状突起421が、軸方向に対して傾斜した同一方向に延びる。
図1では、実線で示す仕切板41を回転軸J1を中心として180度回転させた場合に、手前側に配置される線状突起421を二点鎖線で示している。二点鎖線の線状突起421の傾斜方向は、実線の線状突起421の傾斜方向と逆向き(回転軸J1に対して反転した方向)となる。
【0025】
仕切板41は、回転筒状部21の回転に伴って、回転軸J1を中心として回転する。仕切板41の回転において、仕切板41の一方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物(後述のチャーを含む。)が線状突起421により供給口211側へと送られる。当該被処理物は、回転筒状部21の下端部において供給側環状部23と衝突し、仕切板41の近傍に留まる。また、仕切板41の他方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物が線状突起421により供給口211とは反対側へと送られる。後述するように、仕切板41と改質部5との間にはチャーが滞留しており、当該被処理物は、仕切板41の近傍に留まり易くなる。以上のように、ガイド部42では、回転筒状部21の一の回転角度範囲において被処理物が供給口211側に向かって送られ、回転筒状部21の他の回転角度範囲において被処理物が供給口211とは反対側に向かって送られる。その結果、軸方向における仕切板41の両端部近傍の間で被処理物が往復(循環)しつつ、熱分解部4において被処理物が滞留する。
【0026】
既述のように、筒状空間260を流れる熱源流体により回転筒状部21は加熱されている。熱分解部4では、被処理物を、例えば400℃以上の温度(好ましくは、700℃以下)で加熱することにより、熱分解が発生し、熱分解ガスおよびチャーが生成される。図示省略の誘引ファン等により排出口212は減圧されており、熱分解ガスは、排出口212に向かって流れる。熱分解ガスは、タールの蒸気(常温で液体となる。)および微粒子のチャー等を含んでもよい。熱分解ガスに含まれないチャー(例えば、上記微粒子のチャーよりも大きいチャー)は、熱分解部4にて滞留する。実際には、当該チャーの大部分は、仕切板41の回転により粉砕され、粉体となる。被処理物供給部31から被処理物が供給されることにより、熱分解部4にて滞留するチャーの一部は、改質部5側(排出口212側)へと押し出される。以下の説明では、単に「チャー」という場合は、熱分解ガスに含まれないチャーを意味するものとする。なお、被処理物に不燃物が含まれる場合には、当該不燃物もチャーと共に移動する。
【0027】
図2は、熱分解部4側から回転軸J1に沿って見た場合における改質部5を示す図である。既述のように、改質部5は、回転筒状部21の内部において熱分解部4と排出口212との間に設けられる。
図1および
図2に示すように、改質部5は、隔壁部51を備える。隔壁部51は、複数の板状部材511と、1つの接続部512とを備える。接続部512は、軸方向に延びる棒部材である。
図2の例では、軸方向に垂直な接続部512の断面形状は略円形であるが、接続部512の断面形状は、矩形、多角形等、他の形状であってもよい。例えば、接続部512は、中実の部材である。接続部512は、両端面に蓋部が取り付けられた中空の部材(密閉部材)であってもよい。接続部512では、熱分解ガスおよびチャーが内部を通過することが不能とされる。このように、接続部512を中実の部材または密閉部材とすることで、熱分解ガスの通り抜けを防ぎ、後述するように、搬送路56では、チャーと熱分解ガスとの良好な固気接触(固気反応)が実現される。
【0028】
各板状部材511は、軸方向に略平行な平板状であり、軸方向に延びる。板状部材511において、軸方向(長手方向)および厚さ方向に略平行な一方の側面が接続部512に固定され、他方の側面が回転筒状部21の内周面に固定される。改質部5では、複数の板状部材511により回転筒状部21の内部が仕切られ、軸方向に延びる複数の空間52が形成される。後述するように、各空間52では、チャーが搬送されるため、以下、当該空間52を「搬送空間52」という。各搬送空間52は、2個の板状部材511および回転筒状部21により囲まれる空間である。換言すると、当該空間を囲む2個の板状部材511の面(厚さ方向に垂直な面)、および、回転筒状部21の内周面の一部が、当該搬送空間52の内側面を構成する。好ましい複数の板状部材511は、周方向に等角度間隔にて接続部512に対して取り付けられ、複数の搬送空間52が同じ容積となる。
【0029】
軸方向に垂直な各搬送空間52の断面形状は、非円形であり、
図2の例では、接続部512から広がる略扇形である。搬送空間52の断面形状は、軸方向における搬送空間52の全体においてほぼ一定である。回転筒状部21の内部において隔壁部51が設けられる空間では、複数の搬送空間52が、隔壁部51を除く全体を占める。
図1および
図2の例では、4個の板状部材511が90度間隔にて接続部512に取り付けられ、4個の搬送空間52が形成される。また、4個の搬送空間52の断面形状は、同一である(回転対称である)。ガス化装置1の設計によっては、複数の板状部材511が異なる角度間隔にて接続部512に取り付けられてもよく、複数の搬送空間52の断面形状が相違してもよい。後述するように、搬送空間52の個数は2個であってもよく、3個または5個以上であってもよい。
【0030】
複数の搬送空間52には、複数の搬送構造53a,53bがそれぞれ設けられる。複数の搬送構造53a,53bは、回転筒状部21に固定されており、回転筒状部21と共に(一体的に)回転軸J1を中心として回転する。
図2の例では、接続部512を挟んで対向する2個の搬送空間52に、同じ搬送構造53a(以下、「第1搬送構造53a」という。)が設けられ、残りの2個の搬送空間52に、同じ搬送構造53b(以下、「第2搬送構造53b」という。)が設けられる。第1搬送構造53aは、回転筒状部21の回転に伴ってチャーを軸方向の一方側に搬送し、第2搬送構造53bは、回転筒状部21の回転に伴ってチャーを軸方向の他方側に搬送する。ここでは、第1搬送構造53aは、チャーを排出口212側に搬送し、第2搬送構造53aは、チャーを供給口211側(熱分解部4側)に搬送する。
【0031】
図3Aは、第1搬送構造53aを示す斜視図であり、
図3Bは、第2搬送構造53bを示す斜視図である。
図3Aおよび
図3Bでは、熱分解部4側から排出口212側に向かう方向を矢印A1にて示している。各搬送構造53a,53bは、軸部54と、ガイド板55とを備える。軸部54は、搬送空間52の内部に設けられる。詳細には、軸部54は、搬送空間52の内側面から離れた位置(例えば、搬送空間52の中央近傍)に配置され、例えば、軸方向における搬送空間52の一端から他端まで延びる。
図2の例では、軸方向に垂直な軸部54の断面形状は、搬送空間52の断面形状と同様に、略扇形である。軸部54の断面形状は、軸方向における搬送空間52の全体においてほぼ一定であり、軸部54は、略扇形柱である。各搬送空間52に配置される軸部54において、平面である2個の側面541(扇形の半径に対応する側面541)は、当該搬送空間52を形成する2個の板状部材511に略平行である。
【0032】
ガイド板55は、軸部54を周回しつつ軸部54に沿って延びる。
図2、
図3Aおよび
図3Bの例では、ガイド板55は、複数の平板の集合であり、複数の第1平板部551と、複数の第2平板部552と、複数の第3平板部553と、複数の第4平板部554とを備える。第1ないし第3平板部551~553は、略矩形である。
図2のように、熱分解部4側から排出口212側に向かってガイド板55を見た場合に、第1平板部551は、軸部54の一方の側面541と当該側面541に対向する板状部材511との間に配置され、両者に略垂直に接続する。第3平板部553は、軸部54の他方の側面541と当該側面541に対向する板状部材511との間に配置され、両者に略垂直に接続する。第2平板部552は、第1平板部551、第3平板部553、および、2個の板状部材511に囲まれる領域に配置される。第1平板部551および第2平板部552の互いに対向する辺同士が接続し、第2平板部552および第3平板部553の互いに対向する辺同士が接続する。第2平板部552の残りの2辺は、当該2個の板状部材511に略垂直に接続する。
【0033】
図3Aおよび
図3Bに示すように、第1平板部551では、第2平板部552と接続する辺が、当該辺に対向する辺よりも排出口212側に配置されるように、第1平板部551の法線が軸方向に対して傾斜する。また、第3平板部553では、第2平板部552と接続する辺が、当該辺に対向する辺よりも供給口211側に配置されるように、第3平板部553の法線が軸方向に対して傾斜する。第2平板部552の法線は、軸方向に略平行である、すなわち、第2平板部552は、軸方向に略垂直(例えば、軸方向となす角度が80~90度)である。実際には、複数の第1平板部551は、互いに平行な状態で軸方向に一定の間隔(以下、「平板間隔」という。)で配列される。複数の第2平板部552も、互いに平行な状態で軸方向に上記平板間隔で配列され、複数の第3平板部553も、互いに平行な状態で軸方向に上記平板間隔で配列される。
【0034】
図2のように、熱分解部4側から排出口212側に向かってガイド板55を見た場合に、搬送空間52の領域のうち、第1ないし第3平板部551~553、並びに、軸部54を除く略円弧状領域に、第4平板部554が配置される。第4平板部554は、当該略円弧状領域と同形状である。第4平板部554は、第3平板部553、軸部54、2個の板状部材511、および、回転筒状部21の内周面に接続する。第4平板部554の法線は、軸方向に略平行である、すなわち、第4平板部554は、軸方向に略垂直である。既述のように、第1および第3平板部551,553は排出口212側に傾斜しており、
図2中の第4平板部554は、最も手前の第1平板部551よりも背後に位置する。当該第4平板部554は、当該第1平板部551の背後に位置する他の第1平板部551と接続する。複数の第4平板部554は、互いに平行な状態で軸方向に上記平板間隔で配列される。
【0035】
ガイド板55では、熱分解部4側から排出口212側に向かって、第1平板部551、第2平板部552、第3平板部553および第4平板部554が順に接続され、当該第4平板部554に対して、当該第1平板部551の排出口212側に隣接する第1平板部551が接続される。このようにして、軸部54と搬送空間52の内側面とを接続するとともに、軸部54を周回しつつ軸部54に沿って延びるガイド板55が、複数の第1ないし第4平板部551~554により構成される。ガイド板55は、例えば軸部54の一端から他端まで設けられる。
【0036】
図3Aおよび
図3Bの例では、第1平板部551の個数、第2平板部552の個数、および、第3平板部553の個数が互いに同じであり、第4平板部554の個数が、各平板部551~553の個数よりも1つだけ少ない。したがって、ガイド板55において最も排出口212側には、第3平板部553が配置される。既述のように、第1および第3平板部551,553の法線が、軸方向に対して傾斜し、第2および第4平板部552,554の法線が、軸方向に対して略平行となる。各搬送構造53a,53bでは、ガイド板55が軸部54を1周する間に、ガイド板55において搬送空間52の内側面と接続する部位の、軸方向に対する傾斜角が変動する。
【0037】
各搬送空間52では、搬送空間52の内側面、軸部54およびガイド板55により、軸部54を周回しつつ軸部54に沿って延びる経路56(後述するように、チャーの搬送に利用されるため、以下、「搬送路56」という。)が形成される。各搬送空間52では、熱分解部4から供給される熱分解ガスおよびチャーが、搬送路56のみを通過可能である。
図2では、搬送路56の一部を矢印A2にて示している。搬送構造53a,53bでは、回転筒状部21が回転を停止した状態において、
図2のように、回転軸J1に沿って各搬送構造53a,53bを見た場合に、搬送路56の方向が真っ直ぐとなる第1および第3平板部551,553は、軸方向に対して傾斜する。一方、搬送路56の方向が真っ直ぐとならない(切り替わる)第2および第4平板部552,554は、軸方向に略垂直とされる。このように、ガイド板55は、搬送路56の方向が切り替わる位置において、軸方向に略垂直な部位(踊り場)が設けられる折り返し階段状となっており、これにより、ガイド板55を容易に作製することが可能となる。
【0038】
図3Aに示す第1搬送構造53aでは、熱分解部4側から排出口212側に向かって、第1平板部551、第2平板部552、第3平板部553および第4平板部554が、軸部54の周囲を時計回りに配置される。すなわち、第1搬送構造53aでは、熱分解部4側から排出口212側に向かって時計回りに進むガイド板55および搬送路56が設けられる。
図3Bに示す第2搬送構造53bでは、熱分解部4側から排出口212側に向かって、第1平板部551、第2平板部552、第3平板部553および第4平板部554が、軸部54の周囲を反時計回りに配置される。すなわち、第2搬送構造53bでは、熱分解部4側から排出口212側に向かって反時計回りに進むガイド板55および搬送路56が設けられる。
【0039】
本実施の形態では、供給口211側から排出口212側を向いて見た場合に、回転筒状部21は、回転軸J1を中心として反時計回りに回転する。第1搬送構造53aが設けられる搬送空間52では、下部に位置するチャーが、回転筒状部21の回転に伴って、搬送路56内を熱分解部4側から排出口212側へと向かって搬送され、排出口212側の端部において搬送空間52の外部に排出される。このとき、回転筒状部21の下端部において排出側環状部24が堰となることにより、排出側環状部24と改質部5との間の空間においてある程度の量のチャーが滞留する(貯留される)。好ましいガス化装置1では、回転軸J1に沿って見た場合に、排出側環状部24の一部が、第1搬送構造53aおよび第2搬送構造53bの軸部54と重なる。
【0040】
また、第2搬送構造53bが設けられる搬送空間52では、下部に位置するチャーが、回転筒状部21の回転に伴って、搬送路56内を排出口212側から熱分解部4側へと向かって搬送され、熱分解部4側の端部において搬送空間52の外部に排出される。これにより、チャーが熱分解部4と改質部5との間の空間に戻される。なお、第2搬送構造53bの排出口212側の端部において、回転筒状部21の回転に伴って、チャーを搬送空間52の内部に取り入れる構造が設けられてもよい(第1搬送構造53aの熱分解部4側の端部において同様)。
【0041】
以上のように、改質部5では、第1搬送構造53aが設けられる搬送空間52、および、第2搬送構造53bが設けられる搬送空間52を、チャー(および、不燃物)が常時循環する。これにより、ある程度の量のチャーが複数の搬送空間52の搬送路56に充填された状態が維持される。実際には、熱分解部4で生成されたチャーが改質部5に順次供給されるため、余剰のチャーは、排出側環状部24を超えて排出口212から排出される。
【0042】
搬送路56では、回転筒状部21の回転角度位置に応じて、搬送空間52の下端と軸部54との間に広がる空間の大きさが変動する。したがって、当該空間の大きさが比較的小さい回転角度範囲では、当該空間においてチャーを軸部54まで密に充填することが、より確実に実現される。ガス化装置1では、全ての回転角度範囲において、チャーが軸部54まで密に充填されるように、被処理物の供給量や、搬送空間52および軸部54の形状等が決定されることが好ましい。なお、改質部5では、複数の搬送空間52が設けられるのであるならば、搬送空間52の個数は任意に変更されてよい。この場合に、第1搬送構造53aおよび第2搬送構造53bの個数は同じであっても、異なっていてもよい。また、周方向における第1搬送構造53aおよび第2搬送構造53bの配置も、任意に決定されてよい。
【0043】
図1に示すガス導入部32は、導入管321と、混合ガス供給部326とを備える。既述のように、導入管321は、スクリュー軸315の中空部、および、仕切板41の貫通孔411を貫通する。混合ガス供給部326は、導入管321に接続される。導入管321の先端は、改質部5に直接的に対向する位置に配置される。導入管321の当該先端には、噴出口が設けられる。
【0044】
混合ガス供給部326が、酸素含有ガスおよび水蒸気を含む混合ガスを導入管321に供給することにより、導入管321の噴出口から混合ガスが噴出される。酸素含有ガスは、例えば空気または酸素富化空気であり、本実施の形態では、予熱された高温の空気である。混合ガスの温度は、例えば200~300℃である。当該噴出口から噴出された混合ガスは、複数の搬送空間52に向かって流れる熱分解ガスに混合され、熱分解ガスに含まれる可燃性のガスや、タールの蒸気が部分燃焼する(すなわち、一部の熱分解ガスが燃焼する)。なお、酸素含有ガスの加熱および水蒸気の生成には、ガス化装置1で生成される改質ガスや、改質ガスを利用するガスエンジンの排ガス等の熱が用いられてよい。
【0045】
既述のように、複数の搬送空間52の搬送路56には、ある程度の量のチャーが充填されている。熱分解部4側から排出口212側へと向かって搬送路56を流れる熱分解ガスの大部分は、搬送路56内に存在するチャー間の隙間を通過して、改質部5と排出口212との間の空間へと到達する。すなわち、搬送路56では、チャーと熱分解ガスとの良好な固気接触(固気反応)が実現される。このとき、熱分解ガスに残存するタール、および、微粒子のチャーが搬送路56内のチャーの細孔等に捕集(トラップ)される。
【0046】
また、熱分解ガスの部分燃焼により、搬送路56内のチャー、および、搬送路56を流れる熱分解ガスが高温となっている。さらに、熱分解ガスに混合される混合ガスには、水蒸気が含まれる。その結果、熱分解ガスに含まれる炭化水素ガス等が、水蒸気改質反応により、水素(H2)や一酸化炭素(CO)等のガスに転換される(すなわち、水蒸気改質される)。また、チャーに捕集されたタールおよび微粒子のチャー、並びに、チャー自体も、水蒸気改質される。もちろん、熱分解ガスに含まれ、かつ、チャーに捕集されないタールおよび微粒子のチャーも水蒸気改質されてよい。
【0047】
以上のように、熱分解部4から熱分解ガスおよびチャーが送られる改質部5では、熱分解ガスの部分燃焼を伴って熱分解ガスおよびチャーを水蒸気改質することにより、改質ガスが生成される。改質部5におけるチャーおよび熱分解ガスの温度は、例えば700℃以上であり、好ましくは800℃以上であり、より好ましくは900℃以上である。当該温度は、例えば1100℃以下である。改質ガスは、排出口212を介して回転筒状部21から排出される。
【0048】
排出口212には、分離部33が接続される。分離部33は、鉛直方向に延びる管である。分離部33では、改質ガスは上方に向かって流れ、例えば、ボイラ等を通過した後、ガスエンジン等に供給される。また、排出口212から排出されたチャーは、分離部33において下方に向かって落下し、回収される。分離部33の下部は、チャー回収部である。チャー回収部では、不燃物等、チャー以外の物質も回収される。なお、改質ガスは、ガスエンジン以外に、ガスタービン式、または、燃料電池(固体酸化物形燃料電池(SOFC)等)式の発電装置において用いられてもよい。また、改質ガスは、燃料ガスとして様々な用途に用いられてよく、さらに、液体に変換することにより液体燃料として用いられてもよい。
【0049】
ここで、比較例のガス化装置について説明する。比較例のガス化装置では、特許第4547244号公報(上記特許文献1)のように、複数の小円筒体が回転筒状部内において互いに平行に配置されて固定される。各小円筒体の内部には、全体に亘って一様に傾斜するスパイラル板が設けられており、回転筒状部の回転に伴って、軸方向にチャーが搬送される。このように、比較例のガス化装置では、回転筒状部内に設けられる複数の小円筒体のそれぞれが搬送空間となる。
【0050】
ところで、回転筒状部の内部において、チャーの層を適切に保持するには、チャーがガスにより流される速度(終末速度)を超えないように、熱分解ガスの流速を低減する必要がある。また、熱分解ガスを十分に改質するには、改質部においてある程度のガス滞留時間を確保することが好ましく、この点においても、熱分解ガスの流速を低減する必要がある。この場合に、改質ガスの所望の流量(生産量)を確保するために、搬送空間の断面積を大きくすることが考えられるが、比較例のガス化装置では、小円筒体の増大に伴って回転筒状部の外径が大きくなるため、搬送空間の断面積の増大は容易ではない。
【0051】
これに対し、ガス化装置1では、複数の板状部材511を有する隔壁部51が改質部5に設けられ、当該複数の板状部材511により回転筒状部21の内部を仕切ることにより、軸方向に延びる複数の搬送空間52が形成される。これにより、複数の小円筒体を設ける比較例に比べて、搬送空間52の断面積を容易に大きくすることができる。換言すると、回転筒状部21の内部空間を有効活用することができる。その結果、熱分解ガスの流速を低減しつつ、改質ガスの所望の流量を確保することが可能となる。また、各搬送空間52では、軸方向に延びる軸部54と、軸部54を周回しつつ軸部54に沿って延びるガイド板55とを含む搬送構造53a,53bが設けられ、回転筒状部21の回転に伴ってチャーが軸方向に搬送される。これにより、各搬送構造53a,53bにおいて固気接触を良好に生じさせることができる。
【0052】
さらに、複数の搬送構造53a,53bが、回転筒状部21の回転に伴ってチャーを軸方向の一方側に搬送する第1搬送構造53aと、回転筒状部21の回転に伴ってチャーを軸方向の他方側に搬送する第2搬送構造53bとを含む。これにより、チャーを軸方向に往復させることができ、長時間に亘ってチャーを熱分解ガスと接触させることができる。なお、ガス化装置1の設計によっては、チャーを排出口212側に搬送する搬送構造のみが設けられてもよい。
【0053】
図3Aおよび
図3Bの搬送構造53a,53bでは、ガイド板55において搬送空間52の内側面と接続する部位の、軸方向に対する傾斜角が、軸部54を1周する間に変動する。このように、傾斜角の変動を許容することにより、比較例のガス化装置のように、傾斜角が一定であるスパイラル板を設ける場合に比べて、ガイド板55の設計の自由度が高くなり、ガイド板55を容易に製造することが可能となる。ガイド板55が、軸部54を1周する間において、軸部54に略垂直な部位を含むことにより、ガイド板55をさらに容易に製造することができる。
【0054】
上記ガス化装置1では様々な変形が可能である。
【0055】
搬送構造53a,53bの設計によっては、ガイド板55において搬送空間52の内側面と接続する部位の、軸方向に対する傾斜角が一定とされてもよい。また、第1ないし第4平板部551~554の全ての法線が、軸方向に対して傾斜してもよい。すなわち、ガイド板55が、軸部54に略垂直な部位を含まなくてもよい。搬送構造53a,53bでは、平板部を用いることにより、ガイド板55を容易に形成することが可能であるが、ガイド板55の一部または全部において曲面板が用いられてもよい。
図3Aおよび
図3Bの例では、軸方向に重なる複数の平板部(例えば、複数の第1平板部551)が、互いに平行な状態で軸方向に一定の間隔で配列されるが、軸方向に垂直な面に対する平板部の傾き、および、軸方向に隣接する2つの平板部の間隔が、当該複数の平板部の一部または全部において相違してもよい。例えば、回転筒状部21の回転に伴ってチャーが移動する、回転軸J1に沿う方向をチャー進行方向として、チャー進行方向の前側(下流側)における平板部の間隔が、チャー進行方向の後側(上流側)における当該間隔よりも小さくなるように、平板部の傾きが変更されてもよい。好ましい例では、チャー進行方向の後側から前側に向かって、平板部の間隔(ピッチ)が漸次小さくなる。もちろん、複数の第2平板部552、複数の第3平板部553、および、複数の第4平板部554において同様である。また、後述の
図4ないし
図7のガイド板55においても、軸方向において互いに重なる複数の平板部の傾きおよび間隔が軸方向に沿って変動してもよい。
【0056】
軸方向に垂直な軸部54の断面形状は様々に変更されてよい。
図4では、様々な断面形状の軸部54を例示している。
図4の左上の搬送空間52には、略円柱の軸部54が設けられ、左下の搬送空間52には、略四角柱の軸部54が設けられる。また、右上の搬送空間52には、断面形状がL字状の軸部54が設けられ、右下の搬送空間52には、略扇形柱の軸部54(
図2の軸部54と同様)が設けられる。いずれの形状の軸部54を採用する場合でも、軸部54と搬送空間52の内側面とを接続するとともに、軸部54を周回しつつ軸部54に沿って延びるガイド板55を設けることにより、チャーを軸方向に搬送する搬送構造53a,53bが実現可能である。
【0057】
図5に示すように、単一の板状部材511を有する隔壁部51が設けられ、軸方向に延びる2個の搬送空間52が形成されてもよい。このように、隔壁部51は、軸方向に延びるとともに回転筒状部21の内部を仕切る少なくとも1つの板状部材を有していればよく、これにより、軸方向に延びる複数の搬送空間52を形成することが可能となる。
図6に示すように、板状部材511の厚さは変動してもよい。板状部材511の厚さの最大値は、板状部材511の幅(軸方向および厚さ方向に垂直な幅)よりも小さいことが好ましく、当該幅の半分以下であることがより好ましい。ガス化装置1では、板状部材511の厚さや断面形状等を変更することにより、所望の断面積の搬送空間52を容易に実現可能である。
【0058】
なお、
図5の例では、軸方向に垂直な各搬送空間52の断面形状は、略半円形であり、軸部54の断面形状も、略半円形である。ガイド板55では、例えば、法線が軸方向に対して傾斜する略矩形の第1平板部551と、法線が軸方向に対して略平行である略U字状の第2平板部552とが交互に接続される。
図6の例では、軸方向に垂直な各搬送空間52の断面形状は、略扇形であり、軸部54の断面形状も、略扇形である。ガイド板55では、例えば、法線が軸方向に対して傾斜する略矩形の第1平板部551と、法線が軸方向に対して傾斜する略矩形の第2平板部552と、法線が軸方向に対して略平行である略U字状の第3平板部553とが順に接続される。
【0059】
軸方向に垂直な回転筒状部21の断面形状は、円形以外に、三角形、矩形、多角形等、様々に変更されてよい。
図7に示す回転筒状部21は、角筒状であり、回転軸J1に垂直な回転筒状部21の断面形状は、略矩形である。なお、回転筒状部21における回転軸J1は、必ずしも回転筒状部21の中心軸である必要はない。
【0060】
図7の例では、90度間隔にて配置される4個の板状部材511により回転筒状部21の内部が仕切られ、4個の搬送空間52が形成される。回転軸J1に垂直な各搬送空間52の断面形状は略矩形である。このように、搬送空間52の断面形状は、扇形(半円を含む。)に限定されず、回転筒状部21および隔壁部51の形状に応じて適宜変更されてよい。また、複数の搬送空間52において、一の搬送空間52の断面形状と、他の一の搬送空間52の断面形状とが相違してもよい。なお、
図7の各搬送空間52には、断面形状が略矩形である軸部54が設けられ、ガイド板55では、複数の略矩形の平板部が軸部54を周回しつつ軸部54に沿って配置される。
【0061】
ガス化装置1において、熱分解部4の構造は、適宜変更されてよく、例えば、回転筒状部21の内周面上に複数の攪拌羽根を設ける等、仕切板41を用いない構造が採用されてもよい。
【0062】
上記実施の形態では、熱分解部4および改質部5の双方において、筒状空間260を流れる熱源流体による間接加熱が行われるが、熱分解ガスの部分燃焼の熱を利用する改質部5では、熱源流体による間接加熱が省略されてもよい。また、間接加熱のみにより改質部5において必要な温度が確保される場合には、熱分解ガスの部分燃焼が省略されてもよい。ガス化装置1を含むシステムでは、例えば、分離部33において回収されたチャーを燃焼することにより得られる熱を、熱分解部4(または改質部5)における被処理物の間接加熱に利用することにより、エネルギー効率を高くすることが可能であるが、システムの設計によっては、被処理物またはチャーの加熱が、電気等により行われてもよい。
【0063】
ガス導入部32において、排出口212および改質部5を貫通する導入管が設けられてもよい。この場合、例えば、
図1および
図2に示す接続部512が中空とされ、当該導入管が、接続部512内に挿入される。当該導入管の噴出口(先端)は、軸方向において熱分解部4と改質部5との間に配置され、噴出口から混合ガスが噴出される。また、ガス化装置1の設計によっては、回転筒状部21の内部への酸素含有ガスおよび水蒸気の供給が省略されてもよい。この場合でも、改質部5に充填されたチャーにより、熱分解ガスに含まれるタールが捕集(トラップ)されるため、熱分解ガスの改質が可能である。
【0064】
上記ガス化装置1では、回転筒状部21、隔壁部51および搬送構造53a,53bにより、粉体であるチャーを搬送しつつ当該粉体と熱分解ガスとの接触(固気接触)を良好に生じさせる粉体搬送装置が実現されるが、当該粉体搬送装置の構成は、ガス化装置1以外において用いられてもよい。この場合も、隔壁部51により形成される複数の搬送空間52に所定の粉体およびガスが供給され、当該粉体を搬送しつつ当該粉体と当該ガスとの接触が促進される。粉体搬送装置では、必ずしも内部が加熱される必要はない。
【0065】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0066】
4 熱分解部
5 改質部
21 回転筒状部
51 隔壁部
52 搬送空間
53a,53b 搬送構造
54 軸部
55 ガイド板
211 供給口
212 排出口
511 板状部材
J1 回転軸