(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】織機のフレーム
(51)【国際特許分類】
D03D 49/02 20060101AFI20240625BHJP
D03C 9/06 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
D03D49/02
D03C9/06 Z
(21)【出願番号】P 2020165232
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山 和也
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-149962(JP,A)
【文献】特開2004-084110(JP,A)
【文献】実開昭62-106980(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0569200(KR,B1)
【文献】英国特許出願公開第02139253(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/02
D03C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサイドフレームを含むと共に各サイドフレーム
が開口装置の綜絖枠の上下動を案内する綜絖枠ガイドを支持するフレームであって、
各サイドフレームの内側面における取付部に取り付けられると共に前記綜絖枠ガイドよりも巻取り側に上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の巻取り側梁材を含む複数の梁材によって両サイドフレームが連結されて構成された織機のフレームにおいて、
一対の前記サイドフレームのうちの少なくとも一方は、前記内側面のうちの経糸方向における前記綜絖枠ガイドを支持する位置に位置する部分を基準面とした上で、
上側の前記巻取り側梁材を取り付ける前記取付部が、前記基準面よりも前記フレームにおける内側に位置するオフセット取付部であるように形成されている
ことを特徴とする織機のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のサイドフレームを含むと共に各サイドフレームが開口装置の綜絖枠の上下動を案内する綜絖枠ガイドを支持するフレームであって、各サイドフレームの内側面における取付部に取り付けられると共に前記綜絖枠ガイドよりも巻取り側に上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の巻取り側梁材を含む複数の梁材によって両サイドフレームが連結されて構成された織機のフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な織機におけるフレームは、例えば特許文献1に開示されているように、一対のサイドフレームを複数の梁材で連結して構成されている。具体的には、そのフレームは、筐体形状の一対のサイドフレームを含むと共に、各サイドフレームの内側面に長尺の梁材が取り付けられることで、両サイドフレームが複数の梁材によって連結された構成となっている。
【0003】
また、織機は、開口装置における綜絖枠の上下動を案内するための一対の綜絖枠ガイドを備えている。そして、その綜絖枠ガイドは、フレームにおける各サイドフレームに支持されるかたちで織機上に設けられている。
【0004】
なお、織機は、製織する織物の織幅を基準としてその仕様が定められている。そして、織機に搭載される綜絖枠は、その織機において製織し得る最大の織幅に応じた幅のものとなっている。また、その織機においては、綜絖枠は、前記のように一対の綜絖枠ガイドによって上下動を案内されるが、その各綜絖枠ガイドは、対応するサイドフレームに取り付けられたブラケット等によって支持されている。
【0005】
そのため、その一対の綜絖枠ガイドの間隔は、織機の幅方向における両ブラケットの位置によって画定される。したがって、そのブラケットが取り付けられる両サイドフレームの間隔は、その各サイドフレームに対しブラケットを介して支持される一対の綜絖枠ガイドが綜絖枠を前記のように案内し得る間隔で配置された状態となるように設定される。すなわち、フレームにおける一対のサイドフレームの間隔は、そのブラケットが取り付けられる位置(経糸方向における綜絖枠ガイドを支持する位置)の間隔が前記のような綜絖枠ガイドの配置を実現するようなものとされており、綜絖枠の幅を踏まえたそのブラケットが取り付けられる位置の間隔を基準として定められている。
【0006】
因みに、多くの織機では、そのブラケットは、サイドフレームの内側面に対し取り付けられている。すなわち、サイドフレームにおけるブラケットが取り付けられる位置は、その内側面となっている。また、その内側面は、若干の凹凸はあるものの、概ね平面状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのような織機においては、筬を支持するロッキング軸が両サイドフレームに支持されているため、製織中の筬打ち動作に伴い、両サイドフレームに激しい振動(所謂、筬打ち振動)が発生することが知られている。そして、そのような織機においては、その筬打ち振動の発生に伴い、織機のフレーム全体が激しく振動してしまう場合がある。特に、近年においては織機の運転が高速化される傾向にあり、そのような織機の高速化に伴い、その振動はより激しいものとなる。そして、織機のフレーム全体が激しく振動すると、そのフレームに支持された各装置が振動し、製織に悪影響を及ぼして製織される織布の品質が低下する、と言った問題が生じる場合がある。
【0009】
以上のような従来の織機のフレームに鑑み、本発明は、前記のような複数の梁材によって両サイドフレームが連結されて構成されたフレームを有する織機において、前記した筬打ち振動に対する耐震性を向上させることのできるフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一対のサイドフレームを含むと共に各サイドフレームが開口装置の綜絖枠の上下動を案内する綜絖枠ガイドを支持するフレームであって、各サイドフレームの内側面における取付部に取り付けられると共に前記綜絖枠ガイドよりも巻取り側に上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の巻取り側梁材を含む複数の梁材によって両サイドフレームが連結されて構成された織機のフレームを前提とする。
【0011】
その上で、本発明は、一対の前記サイドフレームのうちの少なくとも一方は、前記内側面のうちの経糸方向における前記綜絖枠ガイドを支持する位置に位置する部分を基準面とした上で、上側の前記巻取り側梁材を取り付ける前記取付部が、前記基準面よりも前記フレームにおける内側に位置するオフセット取付部であるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記のような複数の梁材によって一対のサイドフレームが連結されて構成されたフレームを有する織機において、複数の前記梁材のうちの少なくとも1つ(以下、「対象梁材」と言う)について、その対象梁材を取り付ける取付部が、前記した基準面よりも織機の幅方向における内側に位置するオフセット取付部であるように形成された構成とされる。それにより、そのフレームは筬打ち振動に対する耐震性が向上されたものとなる。より詳しくは、以下の通りである。
【0013】
前述のように、織機のフレームにおいて、一対のサイドフレームの間隔は、各綜絖枠ガイドに対応するブラケットが取り付けられる位置の間隔を基準として定められている。その上で、本発明によれば、そのように間隔が定められる一対のサイドフレームのうちの少なくとも一方において、前記対象梁材が取り付けられる取付部が、前記基準面よりも前記内側に位置するオフセット取付部であるように形成されている。したがって、フレーム(サイドフレーム)がそのように構成された場合、フレームが従来のように構成されている場合と比べ、対象梁材の長さ寸法は小さくなる。
【0014】
そして、そのように長さ寸法が小さくなることで、対象梁材は、フレームにおける上下方向及び前後方向に撓みにくいものとなる。その結果として、そのような梁材によりサイドフレームが連結されて構成されたフレームは、全体として上下方向及び前後方向に振動しにくいものとなる。すなわち、そのフレームは、耐震性が向上されたものとなる。したがって、そのようなフレームによれば、従来の構成のフレームにおいて前記のような筬打ち振動が発生する状態でも、フレーム全体の振動が可及的に小さくなるため、振動に起因する織布の品質の低下を防止することができる。
【0015】
しかも、本発明の織機のフレームにおいて、前記した対象梁材を巻取り側に上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の巻取り側梁材のうちの上側の梁材とする、すなわち、オフセット取付部をその上側の梁材が取り付けられる前記取付部とすることで、フレームの耐震性の向上をより効果的に図ることができる。
【0016】
詳しくは、一般的な織機においては、筬打ち振動を発生させるロッキング軸のサイドフレームにおける支持位置は、フレームの前後方向における前記綜絖枠ガイドに対する巻取り側となっている。そのため、前後方向において、複数の梁材のうちの綜絖枠ガイドに対する巻取り側の梁材である巻取り側梁材は、綜絖枠ガイドに対する送出し側の梁材である送出し側梁材と比べ、ロッキング軸からの距離が短いことに起因して筬打ち振動の影響を受け易い。また、各サイドフレームは、アンカーボルトにより織機の設置面に対して強固に固定されている。したがって、各サイドフレームは、その上側の部分が下側の部分と比べて振動の発生し易いものとなっている。そのため、上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の梁材を比べた場合、上側の梁材の方が下側の梁材よりも筬打ち振動の影響を受け易い。
【0017】
これらのことから、前記複数の梁材のうちの筬打ち振動の影響を受け易い梁材である前記巻取り側梁材のうちの上側の梁材を前記対象梁材とすることで、フレームの耐震性の向上をより効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明が適用される織機のフレームの上面図である。
【
図3】
図1の織機のフレームの部分拡大斜視図である。
【
図4】
図1の織機のフレームの部分拡大断面図である。
【0019】
以下では、
図1~
図4に基づき、本発明が適用された織機のフレームの一実施形態(本実施例)について説明する。
【0020】
織機において、フレーム1は、一対のサイドフレーム2、2を主体とし、その両サイドフレーム2、2が4本の梁材3a、3b、3c、3dで連結された構成となっている。なお、各サイドフレーム2は、内部に空間を有する筐体形状に形成されている。そして、両サイドフレーム2、2は、その幅方向(厚さ方向=織機の幅方向)において対向した状態で、梁材3a、3b、3c、3dによって連結されている。
【0021】
また、織機においては、その前後方向における一方において、両サイドフレーム2、2に支持されるかたちで、経糸Tを送り出すための経糸ビーム6が備えられている。さらに、その織機の前記前後方向における他方側には、製織された織布を巻き取るための巻取ビーム8が、両サイドフレーム2、2に支持されるかたちで備えられている。
【0022】
さらに、織機は、開口装置における綜絖枠11の上下動を案内するための一対の綜絖枠ガイド12、12を備えている。その各綜絖枠ガイド12は、対応するサイドフレーム2に取り付けられたブラケット14によって支持されるかたちで織機上に設けられている。そして、そのブラケット14は、対応するサイドフレーム2に対し、そのサイドフレーム2の内側面9に固定されるかたちで取り付けられている。
【0023】
なお、各ブラケット14は、フレームに対し取り付けられる板状の支持板14aと、支持板14aの一方の端面から突出するように支持板14aに取り付けられた支持シャフト14bとから成っている。そして、各ブラケット14は、支持シャフト14bがサイドフレーム2の上面よりも上方に位置すると共に、支持シャフト14bが織機の内側を向くようなかたちで、前記のようにサイドフレーム2の内側面9に固定されている。但し、その取り付け位置は、前記前後方向に関しては、支持シャフト14bがサイドフレーム2の略中央となっている。
【0024】
そして、各綜絖枠ガイド12は、そのブラケット14における支持シャフト14bの先端部に取り付けられるかたちで、そのブラケット14を介して対応するサイドフレーム2に支持されている。したがって、前記幅方向におけるサイドフレーム2と綜絖枠ガイド12との位置関係は、サイドフレーム2の内側面9から略ブラケット14分だけ綜絖枠ガイド12が離間するようなものとなっている。
【0025】
その綜絖枠ガイド12は、前記のようにサイドフレーム2に支持された状態において、上下方向(鉛直方向)に間隔を空けて設けられた状態となる2つの案内部12bを有している。また、その各案内部12bは、その織機に備えられる複数枚の綜絖枠11の上下動を案内するための複数の案内溝を有している。そして、その織機においては、各綜絖枠11は、その両側部が一対の綜絖枠ガイド12、12の案内溝に案内されて設けられた状態となる。
【0026】
このように、各綜絖枠ガイド12における案内溝の位置が、その織機における各サイドフレーム2の側において、綜絖枠11を案内する位置となる。そして、その案内位置は、前記のようなサイドフレーム2と綜絖枠ガイド12との位置関係から、サイドフレーム2(内側面9)の位置によって画定される。したがって、そのサイドフレーム2の内側面9におけるブラケット14を取り付ける部分(面)が、その案内位置を画定する基準面10となっている。
【0027】
因みに、織機においては、製織する織物Wの織幅を基準としてその仕様が定められている。そして、その織機に搭載される綜絖枠11は、その織機の仕様(製織し得る最大の織幅)に応じた幅のものとなっている。したがって、そのような綜絖枠11を案内すべく設けられた一対の綜絖枠ガイド12、12を支持する一対のサイドフレーム2、2の間隔は、その綜絖枠11の幅、及び前記したサイドフレーム2と綜絖枠ガイド12との位置関係を踏まえたものとして設定される。そして、そのように間隔が設定される一対のサイドフレーム2、2に含まれる一対の前記した基準面10、10の間隔も、そのサイドフレーム2、2の間隔に応じて画定される。
【0028】
その上で、その一対のサイドフレーム2、2を連結する前記4本の梁材について、そのうちの2本の梁材3a、3bが前記前後方向における巻取りビーム側8に配置される巻取り側の梁材(巻取り側梁材3a、3b)として設けられており、残りの2本の梁材3c、3dが前記前後方向における経糸ビーム6側に配置される送出し側の梁材(送出し側梁材3c、3d)として設けられている。巻取り側梁材3a、3bは、上下方向に互いに位置を異ならせて配置されており、上側の梁材3aが所謂フロントトップステーであり、下側の梁材3bが所謂フロントボトムステーである。また、送出し側梁材3c、3dも、上下方向に互いに位置を異ならせて配置されており、上側の梁材3cが所謂リアトップステーであり、下側の梁材3dが所謂リアボトムステーである。
【0029】
なお、フロントトップステー3a及びリアトップステー3cは、その両端部に形成されたフランジを有している。また、そのフランジには、固定のためのボルトが挿通される貫通孔が複数形成されている。そして、フロントトップステー3a及びリアトップステー3cは、各フランジの貫通孔に挿通された固定用ボルトが対応するサイドフレーム2の内側面9に開口するように形成された貫通孔に挿通され、その固定用ボルトにナットが螺合されることで、各サイドフレーム2(内側面9)に対し固定されている。このように、フロントトップステー3a及びリアトップステー3cは、各サイドフレーム2の内側面9における設定された取り付け部分である取付部に固定されることで、両サイドフレーム2、2を連結している。
【0030】
また、フロントボトムステー3b及びリアボトムステー3dは、断面形状が略コの字型の梁材であり、その両端部に端部を塞ぐように形成された端壁を有している。また、その端壁には、固定のためのボルトが挿入される貫通孔が複数形成されている。そして、フロントボトムステー3b及びリアボトムステー3dは、各端壁の貫通孔に挿通された固定用ボルトが対応するサイドフレーム2の内側面9に開口するように形成された貫通孔に挿通され、その固定用ボルトにナットが螺合されることで、各サイドフレーム2(内側面9)に対し固定されている。このように、フロントボトムステー3b及びリアボトムステー3dは、各サイドフレーム2の内側面9における設定された取り付け部分である取付部に固定されることで、両サイドフレーム2、2を連結している。
【0031】
織機における主軸16は、フロントトップステー3aと平行な方向、すなわち、織機の幅方向(以下、単に、「幅方向」と言う。)と平行を成す向きで、その両端部において両サイドフレーム2、2によって支持されている。なお、その主軸16の支持位置は、前記前後方向に関しては、フロントトップステー3aとブラケット14(綜絖枠ガイド12)との間の位置となっており、上下方向に関しては、その上端(上縁)がフロントトップステー3aの下面の近傍となるような位置となっている。
【0032】
また、織機は、筬5を揺動駆動する筬打ち機構を備えている。そして、その筬打ち機構においては、筬5は、複数のスレーソード等を介してロッキング軸4に支持されている。その上で、そのロッキング軸4は、前記幅方向と平行を成す向きで、その両端部において両サイドフレーム2、2によって支持されている。なお、そのロッキング軸4の支持位置は、前記前後方向に関しては、前述の主軸16とほぼ同じ位置となっており、上下方向に関しては、主軸16に対する上方であってフロントトップステー3aと重複する位置となっている。
【0033】
さらに、その織機は、製織された織布Wを織布密度に応じた速度で巻取りビーム8側へ送る巻取機構を備えている。そして、その巻取機構は、服巻ロール15、及び押圧機構(図示せず)によって服巻ロール15に押圧されるように設けられた一対のプレスロール15b、15bを含んでいる。その上で、その服巻ロール15は、前記幅方向と平行を成す向きで、その両端部において両サイドフレーム2、2によって支持されている。なお、その服巻ロール15の支持位置は、前記前後方向に関しては、フロントトップステー3aに対し前記した主軸16とは反体側の位置となっており、上下方向に関しては、フロントトップステー3aと重複する位置となっている。
【0034】
以上のような織機のフレーム1において、本発明では、一対のサイドフレームの両方又は一方における前記した複数の各取付部のうちの少なくとも1つが、前記した基準面10よりもフレーム1における内側に位置するオフセット取付部であるように形成される。そして、本実施例は、両サイドフレーム2、2におけるフロントトップステー3a及びリアトップステー3cの各前記取付部をそのオフセット取付部とした例である。そのような本実施例の織機のフレーム1について、詳しくは、以下の通りである。
【0035】
各サイドフレーム2において、その内側面9は、フロントトップステー3aのための前記取付部が基準面10に対しフレーム1の内側に位置するように、前記幅方向に見て前記取付部となる範囲の部分が、基準面10を含む部分に対し突出するように形成されている。その結果として、その前記取付部は、その位置が基準面10に対しフレーム1の内側であるものとなっており、本発明で言うオフセット取付部17となっている。すなわち、本実施例では、フロントトップステー3aのための前記取付部が、(第1の)オフセット取付部17となっている。
【0036】
また、そのような各サイドフレーム2の内側面9において、リアトップステー3cのための前記取付部についても、その前記取付部が基準面10に対しフレーム1の内側に位置するように、前記幅方向に見て前記取付部となる範囲の部分を基準面10を含む部分に対し突出させるように内側面9が形成されている。その結果として、その前記取付部は、その位置が基準面10に対しフレーム1の内側であるものとなっており、本発明で言うオフセット取付部18となっている。すなわち、本実施例では、そのリアトップステー3cのための前記取付部も、(第2の)オフセット取付部18となっている。
【0037】
なお、本実施例では、フロントトップステー3aのための前記取付部である第1のオフセット取付部17は、前記幅方向に見て、フロントトップステー3aが取り付けられる部分だけではなく、それよりも広い範囲に亘って形成されたものとなっている。具体的には、第1のオフセット取付部17は、フロントトップステー3aが取り付けられる部分に加え、主軸16、ロッキング軸4及び服巻ロール15の各支持位置を含む範囲に亘るものとなっている。
【0038】
そこで、各サイドフレーム2における内側の側壁(内側壁)には、その第1のオフセット取付部17に対応する部分に、主軸16、ロッキング軸4及び服巻ロール15を支持するための各軸受22a、22b、22cが配置される貫通孔23a、23b、23cが形成されている。そして、その各貫通孔23a、23b、23cには、軸受22a、22b、22cを配置するための軸受ホルダ19、20、21が取り付けられている。その上で、主軸16、ロッキング軸4及び服巻ロール15は、その軸受ホルダ19、20、21によって各サイドフレーム2に配置された各軸受22a、22b、22cにより、両サイドフレーム2、2によって支持されている。
【0039】
各軸受ホルダ19、20、21について、それらの構成はいずれも同じであるため、ロッキング軸4用の軸受ホルダ20を例に説明すると、その軸受ホルダ20は、貫通孔20cを有する円筒形状の嵌挿部20aを主体として構成されている。また、その軸受ホルダ20は、嵌挿部20aの軸線方向における一端側に形成されたフランジ部20bを有している。
【0040】
なお、その嵌挿部20aについて、その嵌挿部20aは、その貫通孔20cの内径が軸受22bを嵌装した状態で収容する大きさであるように形成されたものとなっている。但し、その嵌挿部20aは、その貫通孔20cの内径が前記一端側の端部において小さくなるように形成されている。すなわち、貫通孔20cは、軸受22bを収容する部分(収容部分)と、その収容部分に対する前記一端側の小径の部分(小径部分)とで形成されている。したがって、嵌挿部20aは、その一端部側の端部に、その貫通孔20cにおける前記小径部分が形成された端部壁20eを有している。但し、その端部壁20eに形成される貫通孔20cの前記小径部分の内径は、ロッキング軸4における軸受22bに支持される部分である軸部分の外径と略一致する大きさとなっている。
【0041】
また、フランジ部20bは、前記のように嵌挿部20aの前記一端側に形成されており、その厚さが前記した嵌挿部20aにおける端部壁20eの厚さよりも厚くなるように形成されている。具体的には、そのフランジ部20bの厚さは、端部壁20eの厚さとの差が軸受22bの幅の略1/2となるような厚さとなっている。そして、そのフランジ部20bには、軸受ホルダ20をサイドフレーム2(第1のオフセット取付部17)に固定するためのボルト25が挿通される貫通孔が複数形成されている。
【0042】
その上で、軸受ホルダ20は、その嵌挿部20aが貫通孔23bに嵌装された状態で、サイドフレーム2に対し固定される。したがって、貫通孔23bは、その内径が嵌挿部20aの外径に応じた大きさであるように形成されている。また、そのサイドフレーム2に対する軸受ホルダ20の固定は、フランジ部20bの前記貫通孔に挿通された固定用ボルト25が対応するオフセット取付部17に開口するように形成された雌ネジ孔に螺装されることで行われている。
【0043】
そして、軸受22bは、貫通孔20cにおける前記収容部分に嵌装されると共に、その一端側を端部壁20eに当接させた状態で、軸受ホルダ20内に収容されている。また、そのように収容された状態では、軸受22bは、前記軸線方向において、その幅の中央が軸受ホルダ20におけるフランジ部20bの前記他端側を向く端面の位置と略一致する状態となっている。したがって、軸受ホルダ20が前記のようにサイドフレーム2に取り付けられた状態では、軸受22bは、織機の幅方向において、その幅の中央がサイドフレーム2におけるオフセット取付部17の位置と略一致する状態となっている。すなわち、その構成によれば、前記幅方向に関し、ロッキング軸4の前記軸部分を支持する軸受22bの位置、すなわち、ロッキング軸4の支持位置は、同じ軸受ホルダをフランジ部が基準面10に当接するようにサイドフレーム2に取り付ける場合と比べ、フレーム1の内側の位置となる。
【0044】
以上のように、本実施例の織機のフレーム1においては、両サイドフレーム2、2におけるフロントトップステー3a及びリアトップステー3cのための各前記取付部が、前記のようなオフセット取付部17、18であるように形成されている。それにより、フロントトップステー3a及びリアトップステー3cは、その前記取付部が前記幅方向において基準面10と同じ位置に形成されている従来のフレームの場合と比べ、その長さ寸法が小さいものとなっている。したがって、フレーム1は、従来のように構成されたものと比べ、フロントトップステー3a及びリアトップステー3cが上下方向及び前後方向に撓みにくいものとなっており、それに伴い、全体として上下方向及び前後方向に振動しにくいものとなっていて、筬打ち振動に対する耐震性が向上されたものとなっている。
【0045】
また、本実施例では、フロントトップステー3aのための前記取付部がオフセット取付部17であるように形成されており、上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の巻取り側梁材3a、3bのうちの上側の梁材3aが取り付けられる前記取付部がオフセット取付部17であるように形成されている。そのように、フレーム1は、より筬打ち振動の影響を受け易いフロントトップステー3aが前記のように撓みにくいものとなっているため、それに伴い、その耐震性の向上がより効果的に図られたものとなっている。
【0046】
また、本実施例では、フロントトップステー3aを前記対象梁材とした場合のオフセット取付部17は、前記幅方向に見て、フロントトップステー3aが取り付けられる部分に加え、主軸16、ロッキング軸4、及び、服巻ロール15の各支持位置を含む部分に亘るものとなっており、各サイドフレーム2は、その内側面9におけるフロントトップステー3aのための前記取付部に対する前後の部分が基準面10を含む部分に対し突出するように形成されたものとなっている。それにより、各サイドフレーム2は、前記幅方向に見て前記取付部となる範囲の部分のみが基準面10よりも突出するように形成される場合と比べ、オフセット取付部17の前記前後方向における寸法が大きいものとなっているので、前記取付部を含む内側壁の部分が前記前後方向に撓みにくくなっている。
【0047】
しかも、本実施例では、オフセット取付部17は、その突出するように形成された部分が平坦面であるように、その全体に亘って前記突出量が同じであるように形成されており、前記取付部に対する前後の部分における前記突出量が同じ量となっている。それにより、各サイドフレーム2は、前記取付部に対する前後の部分が基準面10を含む部分よりも突出するように形成される場合であっても前記取付部に対する前後の部分における前記突出量が互いに異なるように形成される場合と比べ、前記取付部を含む内側壁の部分が前記前後方向の両側へ撓みにくいものとなっている。したがって、フレーム1は、各サイドフレーム2自身が前記のように撓みにくいものとなっているため、それに伴い、その耐震性の向上がより効果的に図られたものとなっている。
【0048】
さらに、本実施例では、リアトップステー3cのための前記取付部がオフセット取付部18であるように形成されており、上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の送出し側梁材3c、3dのうちの上側の梁材3cが取り付けられる前記取付部がオフセット取付部18であるように形成されている。したがって、そのフレーム1は、ビーム振動に対する耐震性についてもその向上がより効果的に図られたものとなっている。
【0049】
因みに、そのビーム振動について、織機においては、製織の1サイクル中に開口運動や筬打ち動作によって経糸Tの張力変動が発生するため、その張力変動が加振力となり、経糸ビーム6にその回転方向及び経糸Tの引き出し方向(上下方向)の振動が発生する場合があることが知られている。そして、そのビーム振動は、各サイドフレーム2に対し加振力として送出し側において作用するため、送出し側梁材であるリアトップステー3c及びリアボトムステー3dは、そのビーム振動の影響を受け易い。但し、各サイドフレーム2は、アンカーボルトにより織機の設置面に対して強固に固定されているため、その上側の部分が下側の部分と比べて振動の発生し易いものとなっている。そのため、上下方向に位置を異ならせて設けられた2本の送出し側梁材を比べた場合、リアトップステー3cの方がリアボトムステー3dよりもビーム振動の影響を受け易くなっている。
【0050】
以上では本発明の織機のフレームの一実施例について説明したが、本発明による織機のフレームは、前記実施例に限定されるものではなく、以下のような変形した例でも実施が可能である。
【0051】
(1)フロントトップステー3aを前記対象梁材とした場合のオフセット取付部17について、前記実施例では、そのオフセット取付部17は、前記幅方向に見て、フロントトップステー3aが取り付けられる部分に加え、主軸16、ロッキング軸4、及び、服巻ロール15の各支持位置を含む範囲に亘るものとなっている。しかし、本発明の織機のフレームにおいては、そのオフセット取付部は、少なくともその対象梁材が取り付けられる範囲において形成されていれば良い。したがって、前記のようにフロントトップステー3aを前記対象梁材とする場合であっても、そのオフセット取付部は、フロントトップステー3aが取り付けられる部分のみの範囲に亘るものであってもよいし、各前記支持位置のうちの2つ又は1つを含む範囲に亘るものであっても良い。
【0052】
(2)前記実施例では、フロントトップステー3a及びリアトップステー3cのための前記取付部を、本発明によるオフセット取付部17、18としている。すなわち、巻取り側における2本の梁材3a、3b及び送出し側の2本の梁材3c、3dのそれぞれにおける上側の梁材3a、3cを前記対象梁材とし、その前記取付部をオフセット取付部17、18としている。しかし、本発明による織機のフレームにおいて、そのフレームは、両サイドフレーム2、2を連結する複数の梁材のうちの巻取り側における上側の梁材3aを前記対象梁材とし、その前記対象梁材のための前記取付部をオフセット取付部としたものであれば良い。
【0053】
したがって、例えば前記実施例のように構成されたフレーム1の場合で言うと、巻取り側における2本の梁材3a、3b及び/又は送出し側の2本の梁材3c、3dについて、前記実施例のように上側の梁材3a、3cを前記対象梁材とするのに代えて、巻取り側における上側の梁材3aのみを前記対象梁材とし、その前記取付部をオフセット取付部としたものであっても良い。また、巻取り側における2本の梁材3a、3bを前記対象梁材とし、その前記取付部をオフセット取付部としたものであっても良い。さらには、フレーム1における全ての梁材3a、3b、3c、3dを前記対象梁材とし、それらの前記取付部の全てをオフセット取付部としても良い。
【0054】
(3)また、前記実施例では、一対のサイドフレーム2、2のうちの両方において、前記対象梁材のための前記取付部を本発明によるオフセット取付部としている。すなわち、前記対象梁材のための両側の前記取付部の両方をオフセット取付部としている。しかし、本発明の織機のフレームにおいては、そのフレームは、前記対象梁材のための両前記取付部のうちの一方のみがオフセット取付部とされているものであっても良い。
【0055】
但し、前記実施例のように2以上の梁材を前記対象梁材とする場合においては、その全ての前記対象梁材の前記取付部が前記実施例のように同じに形成されるのには限らず、前記対象梁材のうちの一部のための前記取付部がその他の前記対象梁材のための前記取付部と異なるように形成されていても良い。例えば、前記実施例のように2本の梁材を前記対象梁材とする場合において、一方の前記対象梁材のための前記取付部を両方ともがオフセット取付部であるようにすると共に、他方の前記対象梁材のための前記取付部を一方のみがオフセット取付部であるようにしても良い。
【0056】
また、2以上の前記対象梁材のための前記取付部が一方のみにおいてオフセット取付部とされる場合において、そのオフセット取付部とされる前記取付部は、全てが同じ側のサイドフレームにおける前記取付部であるのには限られず、一部の前記対象梁材のためのオフセット取付部が、それ以外の前記対象梁材のためのオフセット取付部とは反対の側のサイドフレームにおける前記取付部であるようにしても良い。
【0057】
(4)前記実施例では、本発明が適用される織機のフレーム1は、両サイドフレーム2、2が4本の梁材3a、3b、3c、3dで連結された構成になっている。しかし、織機によっては、そのフレームは、両サイドフレームを連結する梁材が3本以下のものや、5本以上のものも存在する。そして、本発明は、そのような織機のフレームにも適用可能である。
【0058】
なお、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 フレーム
2 サイドフレーム
3a フロントトップステー
3b フロントボトムステー
3c リアトップステー
3d リアボトムステー
4 ロッキング軸
5 筬
6 経糸ビーム
7 ビームサポート
8 巻取ビーム
9 内側面
10 基準面
11 綜絖枠
12 綜絖枠ガイド
12b 案内部
14 ブラケット
15 服巻ロール
15b プレスロール15b
16 主軸
17 オフセット取付部
18 オフセット取付部
19 軸受ホルダ
20 軸受ホルダ
20a 嵌挿部
20b フランジ部
20c 貫通孔
20e 端部壁
21 軸受ホルダ
22a 軸受
22b 軸受
22c 軸受
23a 貫通孔
23b 貫通孔
23c 貫通孔
25 ボルト
T 経糸
W 織布
B 織幅方向(幅方向)
E 経糸方向(前後方向)
F 送出し側
G 巻取り側