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特許7509641塗装用スプレーガンの塗料容器用のインナースリーブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】塗装用スプレーガンの塗料容器用のインナースリーブ
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/24 20060101AFI20240625BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20240625BHJP
【FI】
B05B7/24
B05B15/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166543
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057997
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】520381908
【氏名又は名称】F.C.ワークス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391007253
【氏名又は名称】大和化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】奥田 道弘
(72)【発明者】
【氏名】平山 雅英
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-224735(JP,A)
【文献】特表2001-508698(JP,A)
【文献】特表2016-516569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/24
B05B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付ノズルのニードル弁を内蔵するシリンダーの上方に開放型の塗料容器を備える塗装用スプレーガンの、該塗料容器内に装着可能な薄肉合成樹脂製のインナースリーブであって、
前記インナースリーブは、前記塗料容器の内面に密着する形状の上部が円筒部、及び下部が円錐部からなる筒体であって、
前記円筒部上方は一部を防溢壁で封鎖した開口部を有し、
前記円錐部下方には、前記塗料容器への装着時に、前記シリンダー内の位置で、ノズル側に向けて開口する塗料供給孔を設けてなることを特徴とする、インナースリーブ。
【請求項2】
前記開口部の周縁には直径の対向位置に一対の切欠部を設けてなり、該切欠部からの鉛直下方線に沿って折り畳み可能としたことを特徴とする、請求項1に記載したインナースリーブ。
【請求項3】
前記円錐部は、前記塗料供給孔の周縁の一部を下方に延長した突起部を設けてなり、前記突起部には前記ニードル弁を跨いで嵌合可能な凹部を有することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載したインナースリーブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載したインナースリーブのいずれかを装着してなる塗装用スプレーガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用スプレーガンの塗料容器に内挿して、塗料を塗料容器の内面に接触させることなく収容可能な内壁として機能する使い捨て可能なインナースリーブ、および該インナースリーブを装着した塗装用スプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
スプレーガンは、コンプレッサーの圧縮空気を利用して、塗料などの液体を霧状に噴射して対象に吹きつける塗装装置であり、ニードル弁と吹付ノズルを備えるシリンダーに持ち手や引き金を設けた、その名のとおりピストルのような形状の本体と、本体に塗料を供給するタンク状の塗料容器とからなる。スプレーガンには、重力式、吸上式、圧送式がある。重力式は、本体よりも上方に塗料容器を設け、塗料が重力により落ちてくることで本体に供給される。吸上式は、本体の下方に塗料容器を設け、本体内の気圧を下げることで塗料が吸い上げられて本体に供給される。圧送式は、外部のポンプでタンクから塗料を圧送して本体に供給する。建築物の外壁塗装工事等では、吐出料が大きく塗料の供給が容易な重力式のスプレーガンが多用されている。
【0003】
図1は広く普及している重力式スプレーガン2の一例であり、図2はその断面図である。例示しているのは、塗料容器の容量が大きく、液体塗料だけでなく、リシン塗装用の液体・固体が混合された粘度の大きな塗材の吹付にも用いられる、通称「万能ガン」と呼ばれている重力式スプレーガンである。この例では、シリンダー21の上に取り付けられた塗料容器20に持ち手23が設けられている。塗料容器20は上部が円筒形・下部が円錐形の筒体で、作業中でも随時塗料を追加できるように上方は開口しているが、壁面等の高い位置を塗装するためにスプレーガンを傾けた際に塗料が溢れることを防ぐために、開口部の後方側の一部には天板24が設けられている。塗料容器20に投入した塗料は自重によって連結孔26からシリンダー21内に供給され、ニードル弁27により吐出量を調整されてノズル22から噴射される。
【0004】
スプレーガンの問題点の一つは、塗料容器の洗浄である。内面に塗料が付着した塗料容器の洗浄は面倒なだけでなく、洗浄用溶剤と塗料が混じった廃液は環境負荷の高い産業廃棄物となる。そのため、工事現場では、塗料を変更する際にはスプレーガン自体を交換し、作業終了後も現場での洗浄は行えず、処理設備のある作業場に持ち帰って洗浄あるいは処分せざるを得なかった。
【0005】
かかる問題に対して、特許文献1に示されるように、塗料容器の中に塗料を入れる袋体を挿入して内壁とし、作業後は袋体を使い捨てとする液体収容カップが提案されている。また、特許文献2には、合成樹脂製の使い捨て塗料液体収容カップが提案されている。
【文献】特開2005-224735号公開公報
【文献】WO1998/032539号国際公開公報
【0006】
しかし、特許文献1に開示された液体収容カップのように、内壁を袋体とした場合は、下方のシリンダーへの供給孔の部分に専用コネクタを設けなければならず、天板を有する一般的な液体容器を備えたスプレーガンには袋体を固定しにくく、専用の液体収容カップを使用しなければならない。また、モルタル外壁の施工に用いられるリシン塗装にはアクリル樹脂系塗料に石灰岩等の寒水石を混合した塗材が用いられる。かかる液体・固体の混合物で、液体塗料よりも粘度が極めて大きい塗材の場合、コネクタが目詰まりを起こすだけでなく、塗材が袋体の内面に固着し易く、シリンダーへの塗材スムースな供給が困難となり、袋体が捩れたり破れたりするおそれもある。
【0007】
また、特許文献2に開示された液体収容カップは、成形体であるインナースリーブを開示しているが、該インナースリーブの下部に設けられた塗料供給孔は、単にシリンダー内に向けて開口するチューブ状の形態であり、リシン等の固体を含む高粘度の塗料をスムースに供給可能なものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決しようとするものであり、一般に普及している塗装用スプレーガンの塗料容器に内挿することで、リシン等の固体を含む高粘度の塗料を塗料容器の内面に接触させることなく収容し、スムースにシリンダーに供給可能な内壁として機能する、使い捨て可能なインナースリーブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前項の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、吹付ノズルのニードル弁を内蔵するシリンダーの上方に開放型の塗料容器を備える塗装用スプレーガンの該塗料容器内に装着可能な薄肉合成樹脂製のインナースリーブであって、前記インナースリーブは、前記塗料容器の内面に密着する形状の上部が円筒部、及び下部が円錐部からなる筒体であって、前記円筒部上方は一部を防溢壁で封鎖した開口部を有し、前記円錐部下方には、前記塗料容器への装着時に、前記シリンダー内の位置でノズル側に向けて開口する塗料供給孔を設けてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したインナースリーブであって、前記開口部の周縁には直径の対向位置に一対の切欠部を設けてなり、該切欠部からの鉛直下方線に沿って折り畳み可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載したインナースリーブであって、前記円錐部は、前記塗料供給孔の周縁の一部を下方に延長した突起部を設けてなり、前記突起部には前記ニードル弁を跨いで嵌合可能な凹部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3に記載したインナースリーブのいずれかを装着してなる塗装用スプレーガンである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係るインナースリーブは、薄肉合成樹脂製であるため、リシン等の固体を含む高粘度の塗料に対しても滑りが良く、シリンダーへスムースに塗料が供給されるだけでなく、塗料中の寒水石等の固形物との摩擦にも強く、捩れたり破れたりしにくい。また、下部の塗料供給孔がシリンダー内の位置で開口しているため、塗料容器の内面に塗料が付着するおそれがなく、専用コネクターも不要である。さらに、円筒部上方の開口部の一部を防溢壁で封鎖しているため、塗料の溢れ止めの天板を備えた広く普及している既製のスプレーガンの塗料容器に適用可能である。
【0014】
請求項2に係るインナースリーブは、開口部周縁に一対の切欠部を設け、該切欠部から下方への鉛直線に沿って折り畳み可能としているため、開口部の一部が天板で封鎖された塗料容器にも容易に内挿可能である。また、折り畳んだ状態で保管できるため、嵩張らず保管が容易である。
【0015】
請求項3に係るインナースリーブは、塗料供給孔の周縁の一部に凹部を有する突起部を設け、凹部をシリンダー内のニードル弁に嵌合可能としているため、塗料容器に内挿する際に方向決めが容易で、嵌合後は方向が固定されるため、内挿後のインナースリーブが不用意に回転して塗料供給孔の方向がずれることが防がれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図3は本発明に係るインナースリーブ1の一実施形態に側面図、図4はノズル側からみた正面図、図5は平面図である。また、図6はインナースリーブ1を内挿した状態のスプレーガン2の断面図である。
【0017】
インナースリーブ1は、上方の円筒部10下方の円錐部11が一体成形された筒体であり、上方の開口部12は、後方約3分の1を防溢壁13で封鎖しているため、略半月型の形状となっている。円錐部11下部の頂点に当たる部分は、中心軸よりも前方側に偏った位置に塗料供給孔15を設けた挿入部14としており、挿入部14の中心軸よりも後方側は、塗料容器20からシリンダー21にかけての接続部の内壁に設けられた曲面部25に沿う形で前方に向けて湾曲した形状としている。
【0018】
インナースリーブ1を塗料容器20に内挿した際には、塗料供給孔15を有する挿入部14は連結孔26を通してシリンダー21内に嵌入し、塗料供給孔15は前方のノズル22側に向けて開口する。また、塗料供給孔15を連結孔26の半分弱程度の大きさとすることで、リシン塗料のような固体混じりの塗料でもスムースにシリンダー内に供給でき、かつ、塗料容器20の内面には塗料が触れないようにできる。
【0019】
また、本実施形態では、塗料供給孔15の後方の周縁部の一部で挿入部14を下方に延長させて、その先端に凹部を有する突起部16を設けている。該凹部はシリンダー内のニードル弁27の直径に対応した略半円形としているため、凹部がニードル弁27を跨ぐ形で突起部16が嵌合して固定される。かかる構成により、インナースリーブ1を塗料容器に内挿する際に位置決めが容易になり、内挿後のインナースリーブが不用意に回転して塗料供給孔の方向がずれることが防がれる。
【0020】
また、本実施形態では、開口部12の周縁全体に渡って外側に張り出す形のフランジ17を設けており、インナースリーブ1を塗料容器20に内挿した際には、フランジ17が塗料容器20の開口部の外周縁に当接することでインナースリーブ1が上方でも固定される。
【0021】
さらに、開口部12の外周縁には、シリンダー21の軸線に直交する直径の対向位置に一対の切欠部18を設けており、該切欠部18からの鉛直下方線に沿ってインナースリーブ1を折り畳み可能としているため、折り畳んだ状態で保管すれば嵩張らないし、畳んだ状態で塗料容器20の開口部から内挿してから開くことができるため、装着も容易となる。
【0022】
インナースリーブ1は、合成樹脂のダイレクトブロー成形またはアキュームレーター式ブロー成形によって一体的に成形可能であり、合成樹脂としては、極性が小さいために塗料が付着しにくく成形性も高いLD(Low Density:低密度)ポリエチレンが好適である。また、同じく低極性で成形性が高いだけでなく、塩素を含まないので焼却してもダイオキシンが発生しないEVA(Ethylen Vinyl Acetate Copolymer:エチレン酢酸共重合体樹脂)や、非極性TPP(Triphenylphosphine:トリフェルニホスフィン)樹脂も好適である。さらに、高コストではあるがより低極性であるシリコン樹脂あるいはフッ素樹脂(テフロン(登録商標))を用いた場合、インナースリーブ1への塗料の付着を大幅に抑制できて洗浄がし易くなり、反復再使用に好適となる。
【0023】
なお、インナースリーブ1をブロー成形する場合、塗料供給孔15や突起部16を設けた挿入部14を一体成形しようとすると金型が複雑となるためコスト高となりがちである。また、装着対象の重力式スプレーガン2(万能ガン)のシリンダー21の構造が異なる場合も、それに対応した金型が必要となるため、やはりコスト高となる可能性がある。これに対しては、インナースリーブ1を図3、4中に示した「A-A」線の上下に分けた2ピース構造とし、上部ピースをブロー成形、下部ピースを射出成形によって別々に成形し、下部ピースに上部ピースを嵌合させてインナースリーブ1として一体化させることでコストダウンが可能となる。
【0024】
以上、本発明に係る厚肉容器の構造について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良又は変更が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るインナースリーブは、建築物の外壁塗装に用いられるリシン等の固体を含む高粘度の塗料を使用する重力式スプレーガンへの適用に好適である。工事現場でのスプレーガンの洗浄作業を不要とし、作業後に洗浄廃液を発生させないため、塗装工事による環境負荷の低減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一般的な重力式スプレーガン(万能ガン)の例示写真
図2】一般的な重力式スプレーガン(万能ガン)の断面図
図3】実施形態に係るインナースリーブ1の側面図
図4】実施形態に係るインナースリーブ1の正面図
図5】実施形態に係るインナースリーブ1の平面図
図6】インナースリーブ1を内挿した状態のスプレーガンの断面図
【符号の説明】
【0027】
1 インナースリーブ
10 円筒部
11 円錐部
12 開口部
13 防溢壁
14 挿入部
15 塗料供給孔
16 突起部
17 フランジ
18 切欠部
2 万能ガン
20 塗料容器
21 シリンダー
22 ノズル
23 塗料調整つまみ
24 天板
25 曲面部
26 連結孔
27 ニードル弁
28 持手

図1
図2
図3
図4
図5
図6