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特許7509642編組チューブ連結構造及びワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】編組チューブ連結構造及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240625BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01B7/00 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020166799
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059207
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸寛
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が編組でチューブ状に形成された複数の編組チューブと、
各々が筒状に形成され、前記複数の編組チューブそれぞれにおける両端のうちの少なくとも一端の開口に、当該開口に連通して固定された複数のシェルと、
前記複数の編組チューブそれぞれの開口に固定された前記複数のシェル同士を、互いに着脱可能に連結する連結機構と、
を備え
前記連結機構が、
前記複数のシェルのうちの第1シェルの周面から突出した係止突起と、
前記複数のシェルのうちの第2シェルに、前記第1シェルが嵌入する筒状に設けられた少なくとも1つの嵌入口と、
前記嵌入口の周壁に設けられ、前記嵌入口に前記第1シェルが嵌入するとときに前記係止突起を受け入れて解除可能に係止される被係止部と、
を備えた機構であることを特徴とする編組チューブ連結構造。
【請求項2】
前記複数の編組チューブそれぞれが、導電性の編組で形成された電磁シールド用のチューブであり、
前記複数のシェルそれぞれが、導電性材料で形成され、前記複数の編組チューブそれぞれの開口に機械的に固定されるとともに電気的に接続され、
前記連結機構が、前記複数のシェル同士を機械的及び電気的に連結する機構であることを特徴とする請求項1に記載の編組チューブ連結構造。
【請求項3】
前記連結機構が、前記複数のシェル同士を一対一に連結する機構であることを特徴とする請求項1又は2に記載の編組チューブ連結構造。
【請求項4】
前記連結機構が、前記複数のシェル同士を一体多に連結する機構であることを特徴とする請求項1又は2に記載の編組チューブ連結構造。
【請求項5】
電線と、
各々が編組でチューブ状に形成された複数の編組チューブが繋げられて前記電線を内側に通す、請求項1~のうち何れか一項に記載の編組チューブ連結構造と、
を備えたことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編組チューブ連結構造及びワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両等に搭載されて配策されるワイヤハーネスとして、編組でチューブ状に形成された編組チューブの内側に電線が通されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。編組チューブは、絶縁性の編組で形成された絶縁目的のものや、導電性の編組で形成された電磁シールド目的のもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-079591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤハーネスは配策長や配策形状等において多くのバリエーションを持つが、現状では、個々の配策長や配策形状に合わせて適切な長さや形状の編組チューブがその都度形成される場合が多い。このような編組チューブの個別形成は、作業工数や材料コストの増大を招きかねない。ここで、複数の編組チューブを所望の長さや形状で繋げることが可能な編組チューブ連結構造があれば、汎用性が高く望ましい。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、複数の編組チューブを所望の長さや形状で繋げることができる編組チューブ連結構造、及び、そのような編組チューブ連結構造を備えるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、編組チューブ連結構造は、各々が編組でチューブ状に形成された複数の編組チューブと、各々が筒状に形成され、前記複数の編組チューブそれぞれにおける両端のうちの少なくとも一端の開口に、当該開口に連通して固定された複数のシェルと、前記複数の編組チューブそれぞれの開口に固定された前記複数のシェル同士を、互いに着脱可能に連結する連結機構と、を備え、前記連結機構が、前記複数のシェルのうちの第1シェルの周面から突出した係止突起と、前記複数のシェルのうちの第2シェルに、前記第1シェルが嵌入する筒状に設けられた少なくとも1つの嵌入口と、前記嵌入口の周壁に設けられ、前記嵌入口に前記第1シェルが嵌入するとときに前記係止突起を受け入れて解除可能に係止される被係止部と、を備えた機構であることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、ワイヤハーネスは、電線と、各々が編組でチューブ状に形成された複数の編組チューブが繋げられて前記電線を内側に通す、上述の編組チューブ連結構造と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の編組チューブ連結構造及びワイヤハーネスによれば、複数のシェル同士を、連結機構を介して適宜に組み合わせることで、ワイヤハーネスにおける様々な配策長や配策形状に応じて複数の編組チューブを所望の長さや形状で繋げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の編組チューブ連結構造を備えるワイヤハーネスを示す模式的な外観図である。
図2図1に示されているシェルと編組チューブの開口との固定構造を示す模式図である。
図3】第2実施形態の編組チューブ連結構造を備えるワイヤハーネスを示す模式的な外観図である。
図4図3に示されている第2実施形態の編組チューブ連結構造及びワイヤハーネスに対する変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、編組チューブ及びワイヤハーネスの一実施形態について説明する。まず、第1実施形態について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態の編組チューブ連結構造を備えるワイヤハーネスを示す模式的な外観図である。
【0012】
本実施形態のワイヤハーネス1は、例えば車両の床下配線等に利用されるものであり、電線束11と、編組チューブ連結構造12と、を備えている。
【0013】
電線束11は、複数本の電線111が束ねられたものである。尚、ここにいう電線111は被覆電線であるが、芯線は撚り線であってもよく、金属棒状の単線であってもよい。
【0014】
編組チューブ連結構造12は、各々が金属等の導電性材料からなる導電性の編組でチューブ状に形成された複数(本実施形態では2つ)の編組チューブ121aが繋げられて電線束11を内側に通す電磁シールド目的の構造物である。この編組チューブ連結構造12は、2つのシェル付きチューブ121と、両者を繋げるための連結機構122と、を備えている。シェル付きチューブ121は、編組チューブ121aの両端それぞれの開口に導電性のシェル121bが機械的に固定されるとともに電気的にも接続された電磁シールド用のチューブである。シェル121bは、金属等の導電性材料で形成され、編組チューブ121aの開口に連通して固定された筒状の部材であり、シェル121bと編組チューブ121aの開口との固定は、次のような構造によってなされている。
【0015】
図2は、図1に示されているシェルと編組チューブの開口との固定構造を示す模式図である。
【0016】
本実施形態では、シェル121bと編組チューブ121aの開口との固定が、導電性の加締めリング121cを用いた加締め構造によってなされる。まず、電線束11を内側に通した編組チューブ121aの一端が、編組の伸縮性を利用して拡径され、その拡径された一端が矢印D11で示されているように、筒状のシェル121bの周面に重なるように被せられる。そして、シェル121bに被せられた編組チューブ121aの一端に、加締めリング121cが、矢印D12で示されているように嵌め込まれる。その後、加締めリング121cに、矢印D13で示されているように径方向内側に力が加えられ、加締めリング121cが編組チューブ121aの一端越しにシェル121bへと加締められる。このような加締めを経て、編組チューブ121aの各開口にシェル121bが機械的に固定されるとともに電気的にも接続されて、シェル付きチューブ121が構成される。
【0017】
図1に示されている編組チューブ連結構造12は、このようなシェル付きチューブ121が2つ、連結機構122によって繋げられて構成されている。
【0018】
連結機構122は、一のシェル付きチューブ121のシェル121bと他の一のシェル付きチューブ121のシェル121bとを一対一に着脱可能に連結し、2つのシェル付きチューブ121を直線状に繋げるように設けられている。本実施形態では、連結機構122が、一のシェル付きチューブ121における一端側のシェル121bと、他のシェル付きチューブ121における一端側のシェル121bと、の2つのシェル121bに亘る機構となっている。即ち、連結機構122は、一方のシェル121bに設けられた係止突起122aと、他方のシェル121bに設けられた嵌入口122b及び被係止部122cと、を備えた機構となっている。以下、係止突起122aが設けられる方を、第1シェル付きチューブ121-1及び第1シェル121b-1と呼び、嵌入口122b及び被係止部122cが設けられる方を、第2シェル付きチューブ121-2及び第2シェル121b-2と呼ぶ。
【0019】
尚、本実施形態では、第1シェル付きチューブ121-1における第1シェル121b-1とは反対側のシェル121bは導電性の単なる筒部材となっている。このシェル121bには、所定の固定場所にシェル121bをネジ止め固定するための板状のブラケット121dが設けられている。また、他方のシェル付きチューブ121である第2シェル付きチューブ121-2における第2シェル121b-2とは反対側のシェル121bも単なる筒部材となっている。このシェル121bは、不図示のコネクタハウジングに収容されるとともに、このコネクタハウジングを介してワイヤハーネス1の搭載車両の金属ボディ等といったグラウンドに接地される。
【0020】
連結機構122における係止突起122aは、第1シェル付きチューブ121-1における第1シェル121b-1の周面から突出した突起である。嵌入口122bは、第2シェル付きチューブ121-2における第2シェル121b-2の編組チューブ121aとは反対側に、第1シェル121b-1が1つ嵌入する筒状に設けられた部位である。被係止部122cは、嵌入口122bの周壁に設けられ、嵌入口122bに第1シェル121b-1が嵌入するとときに係止突起122aを受け入れて解除可能に係止されるL字状のスリットとなっている。
【0021】
嵌入口122bに第1シェル121b-1が嵌入すると、係止突起122aが、被係止部122cにおける第1シェル121b-1の嵌入方向D14に沿ったL字の縦棒部分に進入する。その後、第1シェル121b-1が軸回りの回転方向D15に回されると、係止突起122aが嵌入方向D14に直交するL字の横棒部分に進入して係止する。この係止の解除時には、第1シェル121b-1が回転方向D15とは逆向きに回され、第1シェル121b-1が嵌入方向D14とは逆向きに嵌入口122bから引き抜かれる。この連結機構122では、第1シェル121b-1の外周面と、第2シェル121b-2における嵌入口122bの内周面と、の面接触によって、第1シェル121b-1と第2シェル121b-2とが電気的に接続される。また、第1シェル121b-1の係止突起122aが第2シェル121b-2の被係止部122cに係止することで、第1シェル121b-1と第2シェル121b-2とが機械的に連結される。
【0022】
以上に説明した第1実施形態の編組チューブ連結構造12によれば、2つのシェル付きチューブ121のシェル121b同士を、連結機構122を介して適宜に組み合わせることで、ワイヤハーネス1の配策長に応じた長さや形状を2段階で得ることができる。つまり、ワイヤハーネス1の配策長が短い場合には、1つのシェル付きチューブ121のみを用いて短い編組チューブ連結構造12とし、配策長が長い場合には、2つのシェル付きチューブ121を繋げて長い編組チューブ連結構造12を構成することができる。このように、本実施形態の編組チューブ連結構造12は、ワイヤハーネス1の配策長の長短に対応可能な汎用性の高い構造物となっている。
【0023】
また、本実施形態によれば、編組チューブ連結構造12を2つのシェル付きチューブ121という2つのチューブ単位に分割できる。このようなチューブ単位での分割により、ワイヤハーネス1の製造時における、電線束11への編組チューブ連結構造12の取付け作業等を、チューブ単位で分けた2つの工程で分担して行うことができる。そして、このような工程での分担作業により、ワイヤハーネス1の製造工程における作業負担を平準化することができる。
【0024】
ここで、本実施形態では、シェル付きチューブ121が、導電性の編組で形成された編組チューブ121aの開口に導電性のシェル121bが機械的に固定されるとともに電気的にも接続された電磁シールド用のチューブとなっている。そして、連結機構122が、2つのシェル121b同士を機械的及び電気的に連結する機構となっている。この構成によれば、編組チューブの中でも需要の高い電磁シールド目的の編組チューブの連結構造について、上述したような高い汎用性を得ることができる。
【0025】
また、本実施形態では、連結機構122が、第1シェル付きチューブ121-1の第1シェル121b-1における係止突起122aと、第2シェル付きチューブ121-2の第2シェル121bにおける嵌入口122b及び被係止部122cと、を備えている。この構成によれば、編組チューブ連結構造12における2つのシェル121b同士を、連結機構122における係止突起122aの被係止部122bに対する係止や解除という良好な作業性の下で着脱することができる。
【0026】
また、本実施形態では、連結機構122が、2つのシェル121b同士を一対一に連結する機構となっている。この構成によれば、シェル付きチューブ121の連結数を1つと2つの間で変更することで、編組チューブ連結構造12の全体としての長さを2段階で変更することができる。
【0027】
次に第2実施形態について説明する。上述の第1実施形態ではシェル121b同士が一対一に繋げられるのに対し、この第2実施形態は、シェル同士が一体多に繋げられる点が第1実施形態と異なっている。
【0028】
図3は、第2実施形態の編組チューブ連結構造を備えるワイヤハーネスを示す模式的な外観図である。
【0029】
本実施形態のワイヤハーネス2は、電線束21と、2つの一開口シェル付きチューブ221-1と、1つの二開口シェル付きチューブ221-2と、を備えている。尚、図3では、一開口シェル付きチューブ221-1及び二開口シェル付きチューブ221-2について、連結に係る一端側のシェルのみが示され、他端側のシェルについては図示が省略されている。
【0030】
一開口シェル付きチューブ221-1は、第1実施形態における第1シェル付きチューブ121-1と同等なもので、導電性の編組チューブ221a-1の端部に第1シェル221b-1が取り付けられた電磁シールド目的のものである。他方、二開口シェル付きチューブ221-2は、一開口シェル付きチューブ221-1の編組チューブ221a-1よりも大径の導電性の編組チューブ221a-2を有している。二開口シェル付きチューブ221-2は、この編組チューブ221a-2の端部に、第1シェル221b-1よりも大径の第2シェル221b-2が取り付けられた電磁シールド目的のものである。
【0031】
そして、本実施形態の連結機構222は、1つの二開口シェル付きチューブ221-2と2つの一開口シェル付きチューブ221-1を繋げて分岐形状の編組チューブ連結構造22を構成するように設けられている。即ち、連結機構222は、二開口シェル付きチューブ221-2の第2シェル221b-2と、他の2つの一開口シェル付きチューブ221-1の第1シェル221b-1とを一体多に着脱可能に連結する。
【0032】
この連結機構222は、2つの第1シェル221b-1それぞれに設けられた係止突起222aと、1つの第2シェル221b-2に設けられた2つの嵌入口222b及び2つの被係止部222cと、を備えている。本実施形態では、第2シェル221b-2における編組チューブ221a-2とは反対側に、各々に第1シェル221b-1が1つ嵌入する筒状の嵌入口222bが2つ、横並びに配列されて設けられている。係止突起222a、2つの嵌入口222b、及び2つの被係止部222c、のそれぞれは、上述した第1実施形態における係止突起122a、嵌入口122b、及び被係止部122c、と同等なものとなっている。
【0033】
本実施形態では、この連結機構222を介して分岐形状の編組チューブ連結構造22が構成される。また、この分岐形状の編組チューブ連結構造22の内部では、一束の電線束21が、例えば分流用のバスバを介した並列接続等により二束の電線束21aに分けられる。そして、各電線束21aが各一開口シェル付きチューブ221-1の内側に通されて分岐形状のワイヤハーネス2が構成されることとなる。
【0034】
図4は、図3に示されている第2実施形態の編組チューブ連結構造及びワイヤハーネスに対する変形例を示す模式図である。尚、この図4では、図3に示されている構成要素と同等な構成要素については図3と同じ符号が付されており、以下では、それら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0035】
この図4に示されている変形例では、二開口シェル付きチューブ321-2における第2シェル321b-2の形状が図3に示されている第2実施形態と異なっている。第2実施形態の第2シェル221b-2が、2つの嵌入口222の横並び配置を採用した形状であったのに対し、本変形例では、第2シェル321b-2において、連結機構322における2つの嵌入口322bが、互いの中心軸が直交する直交配置で設けられている。このような直交配置を採用したことで、第2シェル321b-2は、横並び配置を採用した第2実施形態の第2シェル221b-2のような大径でなくてもよく、一開口シェル付きチューブ221-1の第1シェル221b-1と同程度の径となっている。その結果、第2シェル321b-2に接続される編組チューブ321a-2も、一開口シェル付きチューブ221-1の編組チューブ221a-1と同程度の径となっている。直交配置された2つの嵌入口322bには、第2実施形態における被係止部222cと同等の被係止部322cが設けられている。本変形例では、2つの嵌入口322に2つの一開口シェル付きチューブ221-1の第1シェル221b-1が嵌入して、全体としてT字形に分岐した編組チューブ32が構成される。そして、この編組チューブ32に、一束の電線束21が二束の電線束21aに分岐するように通されてT字形に分岐したワイヤハーネス3が構成される。
【0036】
以上に説明した第2実施形態及び変形例の編組チューブ連結構造22,32によれば、3つのシェル同士を、連結機構222,322を介して適宜に組み合わせることで、全体として、ワイヤハーネス2,3の配策形状に応じた形状を得ることができる。つまり、分岐形状のワイヤハーネス2,3を得る場合には、二開口シェル付きチューブ221-2,322-2に2つの一開口シェル付きチューブ221-1を繋げて分岐形状の編組チューブ連結構造22,32を得ることができる。他方、分岐が不要な場合には、二開口シェル付きチューブ221-2,322-2に一開口シェル付きチューブ221-1を1つだけ繋げて非分岐形状の編組チューブ連結構造を得ることができる。
【0037】
また、図4に示されている変形例によれば、非分岐形状の編組チューブ連結構造について、次のような2パターンの形状を得ることもできる。即ち、二開口シェル付きチューブ322-2における編組チューブ221a-2の延出方向と同方向を向くように一開口シェル付きチューブ221-1を繋げると直線状の編組チューブ連結構造を得ることができる。他方、編組チューブ221a-2の延出方向に対する直交方向を向くように一開口シェル付きチューブ221-1を繋げるとL字状に折れ曲った形状の編組チューブ連結構造を得ることができる。
【0038】
このように、第2実施形態及び変形例の編組チューブ連結構造22,32は、ワイヤハーネス2,3の分岐/非分岐に対応可能な汎用性の高い編組チューブとなっている。尚、非分岐形状の編組チューブ連結構造を得る際に、相手方のシェルで塞がれずに開いたままで残る嵌入口には、不図示のシールドキャップ等が取り付けられて電磁シールド性能が担保されることとなる。
【0039】
また、第2実施形態及び変形例の編組チューブ連結構造22,32でも、上述の第1実施形態と同様に、ワイヤハーネス2,3の製造工程における作業負担を平準化することができる点や、電磁シールド目的に対応している点は言うまでもない。更に、第1実施形態と略同様の連結機構322を備えていることで、編組チューブ連結構造22,32における2つのシェル同士を良好な作業性の下で着脱することができる点も第1実施形態と同様である。
【0040】
ここで、第2実施形態及び変形例では、連結機構222,322が、3つのシェル同士を一体多に連結し、3つのシェル付きチューブを分岐形状で繋げるように設けられている。この構成によれば、上述したように一のシェルに連結する他のシェルの数を変更することで、編組チューブ連結構造22,32の全体としての分岐数、つまりは形状を変更することができる。
【0041】
尚、以上に説明した第1及び第2実施形態と変形例は編組チューブ連結構造及びワイヤハーネスの代表的な形態を示したに過ぎず、編組チューブ連結構造及びワイヤハーネスは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0042】
例えば、上述の第1及び第2実施形態と変形例では、ワイヤハーネスの一例として、車両の床下配線等に利用されるワイヤハーネス1~3が例示されているが、ワイヤハーネスはこれに限るものではない。ワイヤハーネスは、例えば、車両の車室内の配線等に利用されるものや、あるいは、車両以外の設置場所における配線に利用されるものであってもよく、具体的な配線態様を問うものではない。
【0043】
また、上述の第1及び第2実施形態と変形例では、ワイヤハーネスの一例として、電線111が複数本束ねられた電線束11,21を有するワイヤハーネス1~3が例示されている。しかしながら、ワイヤハーネスはこれに限るものではなく、電線が1本だけ設けられたもの等であってもよい。
【0044】
また、上述の第1実施形態では、編組チューブ連結構造の一例として、2つのシェル付きチューブが連結機構で連結される、長さを変更可能な編組チューブ連結構造12が例示されている。また、第2実施形態と変形例では、3つのシェル付きチューブが連結機構で連結される、分岐形状を変更可能な編組チューブ連結構造22,32が例示されている。しかしながら、編組チューブは、これらに限るものではなく、シェル付きチューブを一対一に連結する連結機構と、シェル付きチューブを一対多に連結する連結機構と、を組み合わせて長さと分岐形状との両方を変更可能としてもよい。また、シェル付きチューブの連結数についても、2つや3つに限るものではなく、適宜に設定し得るものである。例えば、一対一の連結機構を複数用い、複数のシェル付きチューブを直線状に連結して、長さを3段階以上で変更可能に構成してもよい。また、1つのシェル付きチューブに一対多の連結機構で連結した複数のシェル付きチューブそれぞれに、一対多の連結機構で更に複数のシェル付きチューブを連結してツリー形状を形成することとしてもよい。
【0045】
また、上述の第1及び第2実施形態と変形例では、編組チューブ連結構造の一例として、導電性のシェル付きチューブが連結機構で機械的に連結されて電気的にも接続される電磁シールド目的の編組チューブ連結構造12~32が例示されている。しかしながら、編組チューブ連結構造は、電磁シールド目的に限るものではなく、絶縁性のシェル付きチューブが連結機構で機械的に連結される絶縁目的のもの等であってもよい。ただし、連結機構を有する電磁シールド目的の編組チューブ連結構造12~32とすることで、需要の高い電磁シールドについて、汎用性の高い編組チューブ連結構造2,3を得ることができる点は上述した通りである。
【0046】
また、上述の第1及び第2実施形態と変形例では、連結機構の一例として、係止突起122a,222aと、嵌入口122b,222b,322bと、被係止部122c,222c,322cと、を備えた連結機構122,222,322が例示されている。しかしながら、連結機構は、これに限るものではなく、その具体的な機構態様を問うものではない。ただし、上記機構態様を採用することで、シェル同士を良好な作業性の下で着脱することができる点は上述した通りである。尚、係止突起、嵌入口、及び被係止部を備えた連結機構を採用する場合であっても、係止突起が係止する被係止部は、被係止部122c,222c,322cとして例示されているL字状のスリットに限るものでもない。被係止部は、例えば嵌入口の周壁内面に設けられたL字状の溝であってもよく、あるいは、嵌入口の周壁に設けられた貫通孔等であってもよい。
【0047】
上述の第1及び第2実施形態と変形例では、連結機構の一例として、一対一の連結機構122や、一体多の連結機構222,322が例示されている。しかしながら、連結機構は、これに限るものではなく、その具体的な連結態様を問うものではない。ただし、一対一の連結機構122によれば編組チューブ連結構造12の長さを変更することができる点や、一対多の連結機構122によれば編組チューブの形状を変更することができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3 ワイヤハーネス
11,21,21a 電線束
12,22,32 編組チューブ連結構造
111 電線
121 シェル付きチューブ
121-1 第1シェル付きチューブ
121-2 第2シェル付きチューブ
121a,221a-1,221a-2,321a-2 編組チューブ
121b シェル
121b-1,221b-1 第1シェル
121b-2,221b-2,321b-2 第2シェル
121c 加締めリング
121d ブラケット
122,222,322 連結機構
122a,222a 係止突起
122b,222b,322b 嵌入口
122c,222c,322c 被係止部
221-1 一開口シェル付きチューブ
221-2,321-2 二開口シェル付きチューブ
D11~D13 矢印
D14 嵌入方向
D15 回転方向
図1
図2
図3
図4