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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/285 20060101AFI20240625BHJP
   C07C 59/01 20060101ALI20240625BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240625BHJP
   C01B 39/46 20060101ALI20240625BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20240625BHJP
   C07D 325/00 20060101ALI20240625BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C07C51/285
C07C59/01
B01J37/04 102
C01B39/46
B01J29/70 Z
C07D325/00
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020168398
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060742
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隆介
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059682(JP,A)
【文献】米国特許第04870192(US,A)
【文献】特表2016-539074(JP,A)
【文献】特開2009-073736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C01B
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
betaゼオライト触媒を用いて、溶媒中、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得る工程(反応工程)を含み、
前記触媒において、SiO2/Al23(モル比)が15~200の範囲であり、かつ、酸量(mmol/gbeta)をAl量(mmol/gbeta)で除した値(酸量/Al量)が0.5以上である、6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【請求項2】
前記betaゼオライト触媒が、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む反応混合物に、種結晶としてbetaゼオライトを加えて反応させることで製造した種結晶法betaゼオライトを用いて得られる触媒である、請求項1に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【請求項3】
前記betaゼオライト触媒が、ケイフッ化アンモニウムとbetaゼオライトとを反応させる方法により脱アルミニウム処理を行ったbetaゼオライトを用いて得られる触媒である、請求項1に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、水とニトリル基を有する有機化合物とを含有する混合溶媒であり、該混合溶媒において、前記水と前記ニトリル基を有する有機化合物との質量比(水/有機化合物)が0.05~30である、請求項1~3のいずれか一項に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【請求項5】
前記ニトリル基を有する有機化合物が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アジポニトリル、及びベンゾニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項4に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【請求項6】
下記式(1)で示される有機過酸化物の生成量が、理論生成モル量に対して2.0モル%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【化1】
【請求項7】
前記6-ヒドロキシカプロン酸の収率が、理論生成モル量に対して30モル%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6-ヒドロキシカプロン酸は医薬品、樹脂原料、繊維原料及び有機合成中間体等として有用な化合物である。6-ヒドロキシカプロン酸は、例えば、シクロヘキサノンから誘導されるε-カプロラクトンを加水分解することで製造される。このとき、環状ケトンからラクトンを製造する方法としてBaeyer-Villiger反応(以下「BV反応」と記す。)が知られている。
【0003】
具体的には、例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1、非特許文献2では、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させ、ε―カプロラクトンを製造する方法が開示され、それらの実施例ではシクロヘキサノンを原料としたε-カプロラクトンの合成法が開示されている。なお、ここでは副生成物として6-ヒドロキシカプロン酸が生成することが報告されている。また、シクロヘキサノンと過酸化水素との反応におけるその他の副生成物として、例えば、非特許文献2には、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneが副生することが開示されている。7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは、下記式(1)で表される構造を持つ水溶性及び反応性が低い有機過酸化物の1種である。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-209305号公報
【文献】特開2015-227317号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Catalysis Today,2018,307,293
【文献】Catal. Sci. Technol.,2016,6,2787-2795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
6-ヒドロキシカプロン酸が、シクロヘキサノンと過酸化水素とから直接得られる合成方法があれば、6-ヒドロキシカプロン酸の簡便な合成方法として有用である。
【0008】
非特許文献1には、Alを含むbetaゼオライト触媒存在下、アセトニトリルを溶媒として過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させ、主たる生成物としてε―カプロラクトンを製造する方法が開示されている。また、非特許文献1の実施例には、6-ヒドロキシカプロン酸も併せて得られることが開示されているが、その収率は10モル%以下に留まる。
【0009】
非特許文献2には、betaゼオライト触媒存在下、ジオキサンを溶媒として過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させ、ε―カプロラクトンを製造する方法が開示されている。また、非特許文献2の実施例には、Alを含むbetaゼオライトを使った場合に、6-ヒドロキシカプロン酸が少量生成し、さらに、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneが選択率12モル%で生成することが開示されている。一方で、非特許文献2の実施例には、Snを含むbetaゼオライトを触媒としてシクロヘキサノンの過酸化反応を行う場合、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは生成しないが、6-ヒドロキシカプロン酸の選択率は20モル%以下に留まることが開示されている。
【0010】
特許文献1には、Sn含有触媒存在下、アセトニトリル、水、酢酸等を溶媒とし、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させ、ε―カプロラクトンを製造する方法が開示されている。また、特許文献1の実施例には、シクロヘキサノンを原料としたε-カプロラクトンの合成法が開示されている。ここでは、その加水分解生成物である6-ヒドロキシカプロン酸が少量生成することが開示されている。
【0011】
Sn含有触媒を用いてシクロヘキサノンの過酸化反応を行う場合、アセトニトリル水溶液又は水溶媒下では、シクロヘキサノンの転化率が60モル%以下と低く、シクロヘキサノンを効率的に転化できていない。一方で、酢酸水溶液を溶媒とする場合、6-ヒドロキシカプロン酸の収率は87モル%と向上するが、酢酸は反応器を侵しやすく分離にも困難を伴うため、酢酸溶媒の使用は工業的に好ましくない。
【0012】
特許文献2には、Snを含むbetaゼオライト触媒存在下、ジオキサンを溶媒として過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させ、ε-カプロラクトンを製造する方法が開示されている。また、特許文献2の実施例には、シクロヘキサノンと過酸化水素とから、ε-カプロラクトンが高収率で得られることが開示されているが、シクロヘキサノンの転化率は60モル%以下と低く、6-ヒドロキシカプロン酸の収率は10モル%以下に留まる。
【0013】
有機溶媒としてジオキサンを用いた場合、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは転化せず、反応系中に残存する。7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは水溶性が低く、過酸化水素水溶液に含まれる水によって、反応系中で析出し、反応装置を汚染する可能性が高い。
【0014】
非特許文献1に記載の方法のように、有機溶媒を反応液中に含まれる水に対して50倍以上使用する反応系では、シクロヘキサノンの転化率が低く、6-ヒドロキシカプロン酸の収率も低いため、工業的に好ましくない。
【0015】
そこで、本発明では、シクロヘキサノンの転化率を高めつつ、6-ヒドロキシカプロン酸を収率よく与える製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、過酸化水素とシクロヘキサノンとの反応において、溶媒中、SiO2/Al23(モル比)が15~200の範囲であり、かつ、酸量(mmol/gbeta)をAl量(mmol/gbeta)で除した値(酸量/Al量)が0.5以上であるbetaゼオライト触媒を用いることで、シクロヘキサノンの転化率を高めつつ、6-ヒドロキシカプロン酸を収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
betaゼオライト触媒を用いて、溶媒中、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得る工程(反応工程)を含み、
前記触媒において、SiO2/Al23(モル比)が15~200の範囲であり、かつ、酸量(mmol/gbeta)をAl量(mmol/gbeta)で除した値(酸量/Al量)が0.5以上である、6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
[2]
前記betaゼオライト触媒が、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む反応混合物に、種結晶としてbetaゼオライトを加えて反応させることで製造した種結晶法betaゼオライトを用いて得られる触媒である、[1]に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
[3]
前記betaゼオライト触媒が、ケイフッ化アンモニウムとbetaゼオライトとを反応させる方法により脱アルミニウム処理を行ったbetaゼオライトを用いて得られる触媒である、[1]に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
[4]
前記溶媒が、水とニトリル基を有する有機化合物とを含有する混合溶媒であり、該混合溶媒において、前記水と前記ニトリル基を有する有機化合物との質量比(水/有機化合物)が0.05~30である、[1]~[3]のいずれかに記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
[5]
前記ニトリル基を有する有機化合物が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アジポニトリル、及びベンゾニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、[4]に記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
[6]
下記式(1)で示される有機過酸化物の生成量が、理論生成モル量に対して2.0モル%未満である、[1]~[5]のいずれかに記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【化2】
[7]
前記6-ヒドロキシカプロン酸の収率が、理論生成モル量に対して30モル%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、過酸化水素を酸化剤とした環境調和な反応系により、シクロヘキサノンの転化率を高めつつ、収率よく6-ヒドロキシカプロン酸を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法は、betaゼオライト触媒を用いて、溶媒中、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得る工程(反応工程)を含み、前記触媒におけるSiO2/Al23(モル比)が15~200の範囲であり、かつ、酸量(mmol/gbeta)をAl量(mmol/gbeta)で除した値(酸量/Al量)が0.5以上である。本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法は、上記特定のbetaゼオライト触媒を用いて上記工程を含むことにより、シクロヘキサノンの転化率を高めつつ、収率よく6-ヒドロキシカプロン酸を製造する方法を提供できる。
【0021】
この要因は、本実施形態に用いるbetaゼオライト触媒は酸量が多く、本反応に有効な活性成分量が多いためであると考えられるが、要因はこれに限定されない。
【0022】
[1]触媒
(betaゼオライト触媒)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法においては、特に限定しないが、シクロヘキサノンの転化率に優れるとともに、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れるという観点から、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む反応混合物に、種結晶としてbetaゼオライトを加えて反応させることで製造したbetaゼオライト(以下、「種結晶法betaゼオライト」とも記す)、又は、有機構造規定剤(以下「OSDA」とも記す)を使用して製造したbetaゼオライト(以下、「OSDA法betaゼオライト」とも記す)を用いることが好ましい。特に、本実施形態に用いるbetaゼオライト触媒は、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む反応混合物に、種結晶としてbetaゼオライトを加えて反応させることで製造した種結晶法betaゼオライトを用いた触媒であることが好ましい。betaゼオライト触媒としてこのような触媒を用いると、シクロヘキサノンの転化率に一層優れるとともに、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に一層優れる傾向にある。なお、betaゼオライト触媒は、反応液に溶解しない不均一系触媒として機能する。
【0023】
種結晶法betaゼオライトと異なり、OSDA法betaゼオライトは、熱処理によってOSDAを除去する工程を行うことが好ましい。ただし、OSDAは熱処理時に分解するため、OSDA法betaゼオライトに熱処理を行った場合、使用したOSDAを再利用することはできず、環境負荷が大きくなる場合がある。
【0024】
(種結晶)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、種結晶法betaゼオライトを製造する際に使用する種結晶はbetaゼオライトが好ましい。種結晶として使用するbetaゼオライトは特に限定せず、OSDAを使用して製造したOSDA法betaゼオライトを使用してもよいし、種結晶法betaゼオライトを使用してもよい。種結晶として使用するbetaゼオライトにおけるSiO2/Al23(モル比)(SiO2のモル量をAl23のモル量で除した値)は、特に限定しないが、例えば、5~200の範囲が好ましい。また、種結晶として使用するbetaゼオライトのカチオン種は特に限定しないが、例えばアンモニウム型が好ましい。
【0025】
(シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む反応混合物)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、種結晶と混合されるシリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を混合した反応混合物のモル比は特に限定しないが、例えば、SiO2/Al23(モル比)が40~200であることが好ましく、Na2O/SiO2(モル比)が0.24~0.4であることが好ましく、H2O/SiO2が10~50であることが好ましい。
【0026】
(シリカ源)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、反応混合物を得るために用いられるシリカ源は、特に限定しないが、シリカ及び水中でケイ酸イオンの生成が可能なケイ素含有化合物を用いることができる。具体的には、特に限定しないが、例えば、微粉状シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸ナトリウム、アルミノシリケートゲルなどが挙げられる。これらのシリカ源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(アルミナ源)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、アルミナ源としては、特に限定しないが、例えば、水溶性アルミニウム含有化合物を用いることができる。具体的には、例えば、アルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。これらのアルミナ源は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(アルカリ源)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、アルカリ源としては、特に限定しないが、例えば、水酸化ナトリウムを用いることができる。なお、シリカ源としてケイ酸ナトリウムを用いた場合やアルミナ源としてアルミン酸ナトリウムを用いた場合、そこに含まれるアルカリ金属成分であるナトリウムは同時にNaOHとみなされる。したがって、前記のNa2Oは反応混合物中のすべてのアルカリ成分の和として計算される。
【0029】
(触媒の使用量)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、betaゼオライト触媒の使用量としては、反応速度に優れるとともに、反応後の触媒を分離しやすいという観点から、例えば、シクロヘキサノン1質量部に対して、0.01~1.0質量部であることが好ましく、0.05~0.8質量部であることがより好ましく、0.1~0.6質量部であることがさらに好ましい。
【0030】
(触媒に含まれるアルミニウムの量)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23(モル比)(SiO2のモル量をAl23のモル量で除した値)は、15~200の範囲である。betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23(モル比)がこのような範囲であると、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れる。本実施形態において、SiO2/Al23(モル比)は、誘導結合プラズマ(以下「ICP」とも記す)発光分光分析などの汎用な方法で測定でき、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定できる。betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23(モル比)は、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れるという観点から、15~200の範囲であり、20~100の範囲であることが好ましい。
【0031】
betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23(モル比)が前記範囲であるとシクロヘキサノンの転化率に優れるとともに、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れる理由は明らかではないが本発明者らは以下のように推定している。
【0032】
シクロヘキサノンの転化はアルミニウム(Al)上で起こるため、betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23モル比が200以下であると、触媒中のAlが適度に存在することになり、シクロヘキサノンの転化率が向上する。そのため、6-ヒドロキシカプロン酸を高収率に得ることができると考えられる。一方、betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23モル比が15以上である場合、ゼオライト細孔内の親水性が低いため、シクロヘキサノンがゼオライト細孔内に侵入しやすくなり、シクロヘキサノンの転化率が向上する。そのため、6-ヒドロキシカプロン酸を高収率に得ることができると考えられる。
【0033】
(SiO2/Al23モル比の調整)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、betaゼオライト触媒におけるSiO2/Al23モル比を調整する方法は特に限定しないが、脱アルミニウム処理を行う方法が挙げられる。脱アルミニウム処理としては、特に限定しないが、例えば、ケイフッ化アンモニウムとbetaゼオライトとを反応させる方法、硝酸とbetaゼオライトとを反応させる方法、水蒸気とbetaゼオライトとを反応させる方法などが挙げられる。これらのSiO2/Al23モル比を調整する方法は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シクロヘキサノンの転化率に優れるとともに、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れる観点から、ケイフッ化アンモニウムとbetaゼオライトとを反応させる方法が好ましく、ケイフッ化アンモニウムとbetaゼオライトを反応させる方法と硝酸とbetaゼオライトとを反応させる方法を組み合わせることがより好ましい。特に、本実施形態に用いるbetaゼオライト触媒は、ケイフッ化アンモニウムとbetaゼオライトとを反応させる方法により脱アルミニウム処理を行ったbetaゼオライトを用いて得られる触媒であることが好ましい。betaゼオライト触媒としてこのような触媒を用いると、シクロヘキサノンの転化率に一層優れるとともに、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に一層優れる傾向にある。
【0034】
この理由は明らかではないが本発明者らは以下のように推定している。ケイフッ化アンモニウムはbetaゼオライトに含まれるAlと反応し、生じた欠陥にSiが挿入される。そのため、betaゼオライトに導入される欠陥の量は少なく、結晶化度を維持したままSiO2/Al23モル比を調整できる。硝酸はbetaゼオライト中に存在する余剰なAlと反応し、触媒活性の低いAl活性種を除去できる。そのため、ケイフッ化アンモニウムや硝酸とbetaゼオライトとを反応させる方法により脱アルミニウム処理を行ったbetaゼオライトを用いて得られる触媒は、betaゼオライト中のAlが適度に存在することになり、シクロヘキサノンの転化率を向上させつつ、6-ヒドロキシカプロン酸を高収率に得ることができると考えられる。
【0035】
(触媒に含まれる酸量とAl量との比)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、betaゼオライト触媒に含まれる酸量(mmol/gbeta)をAl量(mmol/gbeta)で除した値(以下「酸量/Al量」とも記す)としては、シクロヘキサノンの転化率に優れるとともに、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れるという観点から、特に限定しないが、例えば、0.5以上であり、0.5以上1.0以下であることが好ましく、0.52以上0.95以下であることがより好ましく、0.55以上0.90以下であることがさらに好ましい。
【0036】
betaゼオライト触媒における酸量/Al量を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む反応混合物に、種結晶としてbetaゼオライトを加えて反応させることでbetaゼオライトを製造し、得られたbetaゼオライトを、水蒸気、ケイフッ化アンモニウムや硝酸を用いて脱アルミニウム処理を適度に行うことによりbetaゼオライト触媒における酸量/Al量を適宜調整する方法が挙げられる。
【0037】
なお、本実施形態において、betaゼオライト触媒に含まれる酸量(mmol/gbeta)は昇温脱離法で測定でき、betaゼオライト触媒に含まれるAl量(mmol/gbeta)は、ICP発光分光分析で測定できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0038】
また、本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、触媒における酸量/Al量が前記範囲であり、種結晶法betaゼオライトを用いると6-ヒドロキシカプロン酸の収率に一層優れる。この理由は明らかではないが本発明者らは以下のように推定している。
【0039】
例えば、種結晶法betaゼオライトは結晶化度が高く、欠陥が少ないため、触媒に含まれるAl量に対して、有効に働く酸量の比は高い。一方、例えば、OSDA法betaゼオライトは、OSDAを除去する工程でbetaゼオライトに欠陥が導入されるため、触媒に含まれるAl量に対して、有効に働く酸量の比は低い。そのため、有効に働く酸量が多い種結晶法betaゼオライトは、シクロヘキサノンの転化を促進しやすく、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れると考えられる。
【0040】
(カチオン種)
betaゼオライト触媒に含まれるカチオン種は特に限定しないが、例えば、アルカリ金属カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム等のカチオン)、アルカリ土類金属カチオン(例えば、マグネシウム、カルシウム等のカチオン)、プロトン、又はアンモニウムカチオンを含む化合物が好ましく、シクロヘキサノンの転化率及び6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れるという観点からプロトンが好ましい。
【0041】
[2]溶媒
(水)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、反応工程に用いる溶媒として、過酸化反応に対する反応性が低い水を用いることが好ましい。水を溶媒として用いる場合、水の使用量は、シクロヘキサノン1質量部に対して、例えば、0.1~30質量部であることが好ましく、0.3~15質量部であることがより好ましく、0.5~7質量部であることがさらに好ましい。
【0042】
(有機化合物)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において、中間生成物である7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの転化を促進するために、反応工程に用いる溶媒として、有機化合物を水と組み合わせて使用することもできる。有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ペンタン、ヘキサン)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、アルコール系溶媒(例えば、エチレングリコール、エタノール、メタノール、t-ブタノール)、エステル系溶媒(例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル)を使用することができる。中でも、ニトリル基を有する有機化合物が好ましい。ニトリル基を有する有機化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アジポニトリル、及びベンゾニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する有機化合物が好ましい。溶媒として有機化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、溶媒として有機化合物を使用しなくてもよい。
【0043】
溶媒として有機化合物を使用する場合、有機化合物の使用量は、シクロヘキサノン1質量部に対して、特に限定しないが、例えば、0~50質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましく、3~7質量部であることがさらに好ましい。
【0044】
(混合溶媒における水と有機化合物との質量比)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法では、反応工程に用いる溶媒として、有機化合物と水とを含有する混合溶媒を使用することが好ましく、水とニトリル基を有する有機化合物とを含有する混合溶媒を使用することがより好ましい。当該混合溶媒を使用することで、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの転化を促進し、6-ヒドロキシカプロン酸の収率をより向上させることもできる。
【0045】
溶媒として、水と有機化合物とを含有する混合溶媒を使用する場合、混合溶媒における水と有機化合物との質量比(水/有機化合物)は、特に限定しないが、例えば、0.05以上が好ましく、0.05~30であることがより好ましく、0.1~20であることがさらに好ましく、0.2~20であることがよりさらに好ましく、0.3~15であることが特に好ましい。
【0046】
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法では、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは、触媒によって転化し、対応する6-ヒドロキシカプロン酸が生成する。このとき、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの転化反応が進行すると、6-ヒドロキシカプロン酸の収率は向上し、工業的に好ましい。
【0047】
7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは水溶性が低く、多量の水存在下では析出する場合がある。本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において前記混合溶媒を用いる場合、混合溶媒における水と有機化合物との質量比(水/有機化合物)は0.05以上が好ましく、水の存在量を適度な範囲に制御することにより、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの転化反応が進行し、6-ヒドロキシカプロン酸の収率が向上する傾向がある。
【0048】
この要因は、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneが反応系中で析出することが抑制され、固体触媒との接触を良好となることが考えられるが要因はこれに限定しない。また、本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において前記混合溶媒を用いる場合、混合溶媒における水と有機化合物との質量比(水/有機化合物)が0.05~30の範囲内では、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneをより効率的に活性化することができる傾向にある。この時、活性化された7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは、有機化合物により溶媒和され、転化反応に供することができると考えられるが、要因はこれに限定されない。さらに、本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法において前記混合溶媒を用いる場合、混合溶媒における水と有機化合物との質量比(水/有機化合物)が0.05未満では、過酸化水素水に含まれる水と比べて大過剰の溶媒を使用することが必要な場合がある。
【0049】
[3]原料
(過酸化水素)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法では、酸化剤として、過酸化水素を使用することができる。過酸化水素の使用量としては、シクロヘキサノンに対して例えば、0.1~2モル当量であることが好ましく、0.9~1.5モル当量であることがより好ましく、1.05~1.1モル当量がさらに好ましい。過酸化水素を含有した水溶液(以下、単に過酸化水素水という。)を用いる場合、過酸化水素水中の過酸化水素濃度は任意に調整することができ、特に限定はしないが、30~65質量%が好ましい。
【0050】
(シクロヘキサノン)
本実施形態の6-ヒドロキシカプロン酸の製造方法においては、シクロヘキサノンを原料とする。
【0051】
[4]反応工程
反応工程は、触媒存在下、シクロヘキサノンと過酸化水素とを反応させる工程である。また、本実施形態の製造方法は、上記反応工程により得られた6-ヒドロキシカプロン酸を精製する分離工程を含んでもよい。分離工程における方法としては、特に限定されないが、例えば、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶等の分離方法や、これらを組み合わせた分離方法が用いられる。
【0052】
[5]反応条件
反応工程において、反応温度は、例えば、6-ヒドロキシカプロン酸を収率よく得る観点から、40~130℃が好ましく、50~120℃であることがより好ましく、60~110℃であることがさらに好ましく、70~100℃であることがよりさらに好ましい。
【0053】
反応工程は、特に限定されないが、例えば、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方法により行うことができる。反応時間としては、例えば、0.1~24時間であることが好ましく、0.5~10時間であることがより好ましく、0.5~4時間であることがさらに好ましい。
【0054】
[6]反応生成物
反応工程において、反応の生成物は、6-ヒドロキシカプロン酸、ε―カプロラクトン、アジピン酸、6-ヒドロキシカプロン酸ダイマー、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneを含んでいてもよい。反応の生成物は、特に限定されないが、例えば、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0055】
[7]6-ヒドロキシカプロン酸の収率
本実施形態の製造方法は、前述のとおり、6-ヒドロキシカプロン酸の収率に優れる。6-ヒドロキシカプロン酸の収率は、理論生成モル量に対して、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、75モル%以上であることがよりさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。6-ヒドロキシカプロン酸の収率の上限は、例えば100モル%である。なお、収率の算出は、実施例に記載の方法による。
【0056】
反応工程における、6-ヒドロキシカプロン酸の生成比率は、6-ヒドロキシカプロン酸及びε―カプロラクトンの合計量に対して、50モル%以上であることが好ましく、65モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。当該6-ヒドロキシカプロン酸の生成比率の上限は、例えば100モル%である。
【0057】
なお、本実施形態において、6―ヒドロキシカプロン酸の収率等、各生成物の収率は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0058】
[8]有機過酸化物
本実施形態の製造方法は、前述のとおり、下記式(1)で表される有機過酸化物、すなわち、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneが生じる可能性がある。
【0059】
【化3】
7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneは、脂溶性が高く、水溶性は低いため、水が存在すると反応装置全体に固着し、反応液の攪拌や流通を阻害する可能性がある。よって、本実施形態の製造方法において、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの生成量は、理論生成モル量に対して、例えば、2.0モル%未満であることが好ましく、1.0モル%未満であることが好ましく、0.5モル%未満であることがより好ましい。7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの生成量の下限は例えば0モル%である。なお、生成量の算出は、実施例に記載の方法による。
【0060】
7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの生成量を前記範囲に制御する方法としては、例えば、上述したとおり、反応工程に用いる混合溶媒の一部として、ニトリル基を有する有機化合物を使用して、その使用量を上記所定の範囲に調整する方法が挙げられる。
【0061】
なお、本実施形態において、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの収率(生成量)は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【実施例
【0062】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって制限されるものではない。
【0063】
液体クロマトグラフィー及びICP発光分光分析の分析条件を以下に示す。
(分析条件)
(逆相液体クロマトグラフィー)
装置:島津LC-20AD
カラム:ODS-80Ts
条件:
・溶離液:アセトニトリル/0.01Mリン酸水溶液=5/95(v/v)
・検出器:UV (使用波長:190nm)
・カラム温度:40℃
・流量:1mL/分
内標: バレルアミド
【0064】
(順相液体クロマトグラフィー)
装置:島津LC-10ADVp
カラム:5SIL-4E
条件:
・溶離液:クロロホルム/イソプロピルアルコール=99/1(v/v)
・検出器:UV (使用波長:275nm)
・カラム温度:40℃
・流量:1mL/分
【0065】
(収率、転化率、選択率及び生成量)
収率、転化率、選択率及び生成量は以下の式で算出した。ヒドロキシカプロン酸ダイマー等のシクロヘキサノン二分子が縮合して生成する化合物は、生成モル量を2倍し、シクロヘキサノン換算とした。
収率(モル%)=〔化合物の生成モル量〕/〔シクロヘキサノンの仕込みモル量〕×100
転化率(モル%)=〔シクロヘキサノンの仕込みモル量-シクロヘキサノンの残存モル量〕/〔シクロヘキサノンの仕込みモル量〕×100
選択率(モル%)=〔化合物の生成モル量〕/〔シクロヘキサノンの仕込みモル量-シクロヘキサノンの残存モル量〕×100
7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの生成量(モル%)=〔7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの生成モル量〕×2/〔シクロヘキサノンの仕込みモル量〕×100
【0066】
(SiO2/Al23モル比及びAl量;ICP発光分光分析法)
SiO2/Al23モル比及びAl量は、装置:株式会社日立ハイテクサイエンス社製ICP PS3520UVDDIIを用いて、ICP発光分光分析法により測定した。
【0067】
(酸量)
酸量は、昇温脱離法(以下「TPD」とも記す)を用いて次の方法で測定した。
約0.05gの試料を対象に前処理としてHeガス中で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持し、その後100℃まで冷却した。次に、試料温度100℃で、ヘリウムガスで希釈したアンモニアガス(ヘリウム中のアンモニアの濃度は5容量%。以下「5%NH3-He」ともいう。)を添加しアンモニアを吸着させた。その後、物理吸着したアンモニアを除去するために、30分ヘリウムガス中でパージした。その後、ヘリウムガス流量30mL/分、昇温速度10℃/分の条件で100℃から700℃まで昇温し、脱離量を測定した。脱離したアンモニアの検出にはTCDを用いた。測定で得られたTCDシグナルにおける面積の算出は正規分布などによるフィッティングは用いず、前記温度区間内のシグナルの積算値とした。別途5%NH3-Heバランスガスを所定流量で流したときの流量と面積との関係を利用した検量線を用いて、TCDシグナルの面積値をアンモニアの脱離量に換算した。更に、その値を本測定終了後の試料の質量で除することで、betaゼオライト触媒1gあたりの300~500℃におけるNH3脱離量(mmol/gbeta)の値を算出し、これを酸量とした。
【0068】
[製造例]
<製造例1>
(種結晶の合成)
テトラエチルアンモニウムヒドロキシドをOSDAとして用い、アルミン酸ナトリウムをアルミナ源、微粉状シリカ(Mizukasil P707)をシリカ源とする従来公知の方法により、165℃、96時間、攪拌加熱を行って、SiO2/Al23モル比が28のOSDA法betaゼオライトを合成した。これらを電気炉中で空気を流通しながら550℃で10時間焼成して、有機物を含まない種結晶を製造した。
【0069】
(種結晶法betaゼオライトの合成)
純水13.9gに、アルミン酸ナトリウム0.235gと、36%水酸化ナトリウム1.828gとを溶解して水溶液を得た。微粉状シリカ(Cab-O-sil、M-5)2.024gと、前記の種結晶0.202gを混合した混合物を、少しずつ前記の水溶液に添加して攪拌混合し、SiO2/Al23=40、Na2O/SiO2=0.275、H2O/SiO2=25の組成からなる反応混合物を得た。この反応混合物を60mLのステンレス製密閉容器に入れて、熟成及び攪拌することなしに140℃で46時間、自生圧力下で静置加熱した。密閉容器を冷却後、生成物を濾過、温水洗浄して白色粉末を得た。X線回折測定及びICP発光分光分析によって、この生成物(白色粉末)は、不純物を含まないナトリウム型のOSDAを含まない(以下「OSDA不含」とも記す)の種結晶法betaゼオライトであることを確認した。ICP発光分光分析の結果、その種結晶法betaゼオライトにおけるSiO2/Al23モル比は10.0であった。
【0070】
(アンモニウム型betaゼオライトの合成)
前記のナトリウム型のOSDA不含の種結晶法betaゼオライト1gを2mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液30mLに分散させた。この分散液を80℃で24時間保持した。その後、分散液の濾過を行い、次いで十分な量の蒸留水で洗浄し、100℃で一晩乾燥させた。このようにしてOSDA不含のアンモニウム型betaゼオライトを得た。
【0071】
(脱アルミニウム-1)
前記OSDA不含のアンモニウム型betaゼオライト10gを300mLの純水に分散させて分散液を得た。脱アルミニウム剤としてケイフッ化アンモニウム粉末試薬26.75gを前記OSDA不含のアンモニウム型betaゼオライトの分散液に添加して(ケイフッ化アンモニウム水溶液0.5mol/L相当)溶液を得た。この溶液を60℃、3時間加熱した。その後、濾過及び純水による洗浄を繰り返して含水粉末を得た。得られた含水粉末を100℃12時間以上乾燥して脱アルミニウムbetaゼオライトを得た。
【0072】
(ゼオライトの焼成)
上記脱アルミニウム-1工程で得られた脱アルミニウムbetaゼオライト1gを500mL/分の乾燥空気流中で、500℃において2時間にわたり焼成してbetaゼオライト触媒(以下、「Beta-1」と記す)を得た。ICP発光分光分析の結果、Beta-1におけるSiO2/Al23モル比は20.0であった。
【0073】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いて、得られたBeta-1におけるAl量(mmol/gbeta)(以下、『A』とも記す。)及び酸量(mmol/gbeta)(以下、『B』とも記す。)を測定した。測定結果を表1に示す。B/Aはbetaゼオライト触媒に含まれるAlが酸点として機能した割合を示し、大きいほど有効な酸点が存在することを意味する。表1に示す通り、Beta-1のB/Aの値は0.55であった。
【0074】
<製造例2>
上記Beta-1の製造例1において、脱アルミニウム-1工程の後処理として、ゼオライトの焼成工程の前に以下に示す脱アルミニウム-2の工程をさらに行った。それ以外は上記Beta-1の製造例1と同様にして、betaゼオライト触媒(以下、「Beta-2」と記す)を得た。ICP発光分光分析の結果、Beta-2におけるSiO2/Al23モル比は52.0であった。
【0075】
(脱アルミニウム-2)
硝酸を水に溶解して1mol/Lの硝酸水溶液を得た。上記Beta-1の製造例1において、脱アルミニウム-1工程にて得られた脱アルミニウムbetaゼオライトの粉末10gを1mol/Lの濃度の硝酸水溶液50mLに分散させ、これを攪拌して酸処理(脱アルミニウム)をした。温度は95℃、攪拌時間は15時間とした。その後、濾過及び純水による洗浄を繰り返した。得られた含水粉末を100℃12時間以上乾燥して粉末を得た。
【0076】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いてB/Aを算出した結果を表1に示す。表1に示す通り、Beta-2のB/Aの値は0.89であった。
【0077】
<製造例3>
(水蒸気加熱)
上記Beta-1の製造例1において、アンモニウム型betaゼオライトの合成にて得られたアンモニウム型betaゼオライト10gを水蒸気に曝露する前処理を行った。当該ゼオライトを、水蒸気分圧約7kPaの空気流1.2L/分の下に500℃で20時間にわたり曝露して粉末を得た。
【0078】
(脱アルミニウム-1)
上記水蒸気加熱工程にて得られた粉末10gを300mLの水に分散させてbetaゼオライト分散液を得た。脱アルミニウム剤としてケイフッ化アンモニウム粉末試薬53.5gを前記betaゼオライト分散液に添加して(ケイフッ化アンモニウム水溶液1mol/L相当)溶液を得た。この溶液を60℃、3時間加熱した。その後、濾過及び純水による洗浄を繰り返して含水粉末を得た。得られた含水粉末を100℃12時間以上乾燥して粉末を得た。
【0079】
(脱アルミニウム-2)
硝酸を水に溶解して0.1mol/Lの硝酸水溶液を得た。上記脱アルミニウム-1工程にて得られた粉末10gを0.1mol/Lの濃度の硝酸水溶液50mLに分散させ、これを攪拌して酸処理(脱アルミニウム)をした。当該酸処理(脱アルミニウム)において、温度は95℃、攪拌時間は15時間とした。その後、濾過及び純水による洗浄を繰り返して含水粉末を得た。得られた含水粉末を100℃12時間以上乾燥して脱アルミニウムbetaゼオライトを得た。
【0080】
(ゼオライトの焼成)
上記脱アルミニウム-2工程で得られた脱アルミニウムbetaゼオライトを500mL/分の乾燥空気流中で、500℃において2時間にわたり焼成してbetaゼオライト触媒(以下、「Beta-3」と記す)を得た。ICP発光分光分析の結果、Beta-3におけるSiO2/Al23モル比は94.0であった。
【0081】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いてB/Aを算出した結果を表1に示す。表1に示す通り、Beta-3のB/Aの値は0.83であった。
【0082】
<製造例4>
上記Beta-2の製造例2において、脱アルミニウム-1工程を以下のように変更した。それ以外は上記Beta-2の製造例2と同様にしてbetaゼオライト触媒(以下、「Beta-4」と記す)を得た。ICP発光分光分析の結果、Beta-4におけるSiO2/Al23モル比は51.0であった。
【0083】
(脱アルミニウム-1)
上記Beta-2の製造例2においてアンモニウム型betaゼオライトの合成にて得られたアンモニウム型betaゼオライト10gを30mLの水に分散させて分散液を得た。脱アルミニウム剤としてケイフッ化アンモニウム粉末試薬5.35gを前記アンモニウム型betaゼオライト分散液に添加して(ケイフッ化アンモニウム水溶液1mol/L相当)溶液を得た。この溶液を60℃、3時間加熱した。その後、濾過及び純水による洗浄を繰り返して含水粉末を得た。得られた含水粉末を100℃12時間以上乾燥して粉末を得た。
【0084】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いてB/Aを算出した結果を表1に示す。表1に示す通り、Beta-4のB/Aの値は0.68であった。
【0085】
<製造例5、6、7>
(Beta-5、Beta-6、Beta-7の合成法)
水59.4g、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド89.6g、塩化ナトリウム0.53g、塩化カリウム1.44gをビーカー内で攪拌し、微粉状シリカ29.54gを加えて均一化させた。その後、水20g、水酸化ナトリウム0.33g、アルミン酸ナトリウム1.79gを加えてゲルを得た。得られたゲルをオートクレーブに入れ、密閉した状態で135℃に加熱し、20時間攪拌を行った。オートクレーブをクエンチし、pH=9になるまで水洗を行った後、500℃で焼成することでbetaゼオライトを得た。得られたbetaゼオライトは80℃の濃度の異なる各硝酸(1M、3M、10M)と5時間反応させることで脱アルミニウム(Al)処理を行い、大過剰の水で洗浄を行った。得られたbetaゼオライト触媒を、用いた各硝酸の濃度1M、3M及び10Mの順に、それぞれ、Beta-5、Beta-6及びBeta-7とした。ICP発光分光分析の結果、Beta-5、Beta-6及びBeta-7におけるSiO2/Al23モル比は、順に、32.0、40.0及び430.0であった。
【0086】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いてB/Aを算出した結果を表1に示す。表1に示す通り、Beta-5、Beta-6及びBeta-7のB/Aの値は、順に0.45、0.43及び0.35であり、種結晶を用いて製造した種結晶法betaゼオライトに比べてB/Aの値が小さく、Alが酸点として機能した割合は低いことがわかった。
【0087】
<製造例8>
上記Beta-1の製造例1において、脱アルミニウム-1工程を行わず、そのままbetaゼオライトの焼成を行った。それ以外は上記Beta-1の製造例1と同様にしてbetaゼオライト触媒(以下、「Beta-8」と記す)を得た。ICP発光分光分析の結果、Beta-8におけるSiO2/Al23モル比は10.0であった。
【0088】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いてB/Aを算出した結果を表1に示す。表1に示す通り、Beta-8のB/Aの値は0.46であった。Beta-8におけるSiO2/Al23比が10.0であり、Al量が多いのも関わらず、B/Aの値が小さい理由は明らかではないが本発明者らは以下のように推定している。脱アルミニウム工程を行っていない種結晶を用いて製造した種結晶法betaゼオライトでは、酸点として機能しないAlが除去されていない。そのため、相対的にB/Aの値が小さくなると考えられる。
【0089】
<製造例9>
上記Beta-3の製造例3において、脱アルミニウム-2工程を以下のように変更した。それ以外は上記Beta-3の製造例3と同様にしてbetaゼオライト触媒(以下、「Beta-9」と記す)を得た。ICP発光分光分析の結果、Beta-9におけるSiO2/Al23モル比は212.0であった。
【0090】
(脱アルミニウム-2)
硝酸を水に溶解して1mol/Lの硝酸水溶液を得た。上記Beta-3の製造例3の脱アルミニウム-1工程にて得られた粉末10gを1mol/Lの濃度の硝酸水溶液50mLに分散させ、これを攪拌して酸処理(脱アルミニウム)をした。当該酸処理(脱アルミニウム)において、温度は95℃、攪拌時間は15時間とした。その後、濾過及び純水による洗浄を繰り返して含水粉末を得た。得られた含水粉末を100℃12時間以上乾燥して粉末を得た。
【0091】
(Alが酸点として機能した割合)
ICP発光分光分析法及び昇温脱離法を用いてB/Aを算出した結果を表1に示す。表1に示す通り、Beta-9のB/Aの値は0.48であり、過剰な脱アルミニウム処理を行うとAlが酸点として機能した割合は下がることがわかった。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例1]
ガラス製容器にスターラーチップ、シクロヘキサノン3.93g(40mmol)、Beta-1(プロトン型、SiO2/Al23比=20)2.0g、34.8質量%過酸化水素水4.1g(42mmol)、水24gを加え、80℃にて1時間攪拌して、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させた。反応条件を表2に示す。その後、反応液を室温まで冷却し、エタノールとバレルアミドとを加え、液相を一相にした後に、触媒をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は94.6モル%、6-ヒドロキシカプロン酸の収率は80.6モル%、ε-カプロラクトンの収率は0.2モル%、アジピン酸の収率は1.5モル%、ヒドロキシカプロン酸ダイマーの収率は3.2モル%であり、これらの合計選択率は90.4モル%であった。合計選択率は6-ヒドロキシカプロン酸、ε-カプロラクトン、アジピン酸、ヒドロキシカプロン酸ダイマーの合計収率をシクロヘキサノンの転化率で割り、100を掛けることで算出した。また、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneが0.5モル%生成していた。なお、6-ヒドロキシカプロン酸、ε-カプロラクトン、アジピン酸、ヒドロキシカプロン酸ダイマーの収率は逆相液体クロマトグラフィーを使用して内部標準法で測定した。7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの収率は順相液体クロマトグラフィーを使用して絶対検量法で測定した。反応結果を表3に示す。
【0094】
[実施例2]
表2に示すとおり、触媒をBeta-2(プロトン型、SiO2/Al23比=52)とした以外は、実施例1と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。表3中の6-ヒドロキシカプロン酸、ε-カプロラクトン、アジピン酸、ヒドロキシカプロン酸ダイマーで表される項目は収率を表している。
【0095】
[実施例3]
表2に示すとおり、触媒をBeta-3(プロトン型、SiO2/Al23比=94)とした以外は、実施例1と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。
【0096】
[実施例4~6]
ガラス製容器にスターラーチップ、シクロヘキサノン3.93g(40mmol)、Beta-4(プロトン型、SiO2/Al23比=51)2.0g、34.8質量%過酸化水素水4.3g(44mmol)、溶媒として、水と、必要に応じてニトリル基を有する有機化合物(ニトリル溶媒)とを組み合わせた混合溶媒を加え、80℃にて2時間攪拌して、過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させた。ここで用いた溶媒は、表2に示すとおり、実施例4では水を1.2g、アセトニトリルを10.8gとし、実施例5ではアセトニトリルを24gとし、実施例6では水を10.8g、アセトニトリルを1.2gとした。その後、反応液を室温まで冷却し、エタノールとバレルアミドとを加え、液相を一相にした後に、触媒をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。反応結果を以下表3にまとめた。
表3に示すとおり、実施例4~6では、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの収率はいずれも0.5モル%未満であり、水のみを溶媒としたものに比べて低いことがわかった。また、表3に示すとおり、実施例4~6では、水のみを溶媒とした実施例1に比べて合計選択率が高いことがわかった。
【0097】
[実施例7]
表2に示すとおり、溶媒をプロピオニトリル及び水としたこと以外は実施例4と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。
【0098】
[実施例8及び9]
表2に示すとおり、触媒をBeta-1、Beta-3としたこと以外は実施例4と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。
【0099】
[比較例1~3]
表2に示すとおり、触媒をBeta-5(プロトン型、SiO2/Al23比=32)、Beta-6(プロトン型、SiO2/Al23比=40)、Beta-7(プロトン型、SiO2/Al23比=430)とした以外は、実施例1と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。表3に示すとおり、本比較例1~3で用いたbetaゼオライトはOSDA(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を用いて製造されており、種結晶を用いて製造した種結晶法betaゼオライトを用いた場合に比べてシクロヘキサノンの転化率と6-ヒドロキシカプロン酸との収率が低いことがわかった。また、表3に示すとおり、比較例1~3では、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの収率はいずれも2モル%以上であり、7,8,15,16-Tetraoxadispiro[5.2.5.2]hexadecaneの副生を抑制できないことがわかった。
【0100】
[比較例4]
表2に示すとおり、触媒をBeta-8(プロトン型、SiO2/Al23比=10)とした以外は、実施例1と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。表3に示すとおり、比較例4のように、多量のAlを含む触媒を用いた場合、シクロヘキサノンの転化率と6-ヒドロキシカプロン酸との収率が低いことがわかった。
【0101】
[比較例5]
表2に示すとおり、触媒をBeta-9(プロトン型、SiO2/Al23比=212)とした以外は、実施例1と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。表3に示すとおり、比較例5のように、少量のAlを含む触媒を用いた場合、シクロヘキサノンの転化率と6-ヒドロキシカプロン酸との収率が低いことがわかった。
【0102】
[比較例6、7]
表2に示すとおり、触媒をBeta-8又はBeta-9とし、実施例4と同様にして過酸化水素とシクロヘキサノンとを反応させて6-ヒドロキシカプロン酸を得た。反応結果を以下の表3にまとめた。表3に示すとおり、比較例6又は7のように、少量又は多量のAlを含む触媒を用いた場合、シクロヘキサノンの転化率と6-ヒドロキシカプロン酸との収率が低いことがわかった。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、シクロヘキサノンの過酸化反応により、6-ヒドロキシカプロン酸を製造する方法として好適である。