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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】光電管
(51)【国際特許分類】
   H01J 47/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H01J47/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020169149
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061256
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】小玉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山田 将来
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-149858(JP,A)
【文献】特開2019-067495(JP,A)
【文献】特開2000-149767(JP,A)
【文献】特開平10-275587(JP,A)
【文献】実開昭51-017456(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0102720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 40/00-49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過部を含む筐体と、
前記筐体内に配置された光電面を含む電子放出部と、
前記筐体内において前記光透過部と前記光電面との間に配置された電子捕捉部と、
前記筐体内において前記光電面と向かい合うように前記電子捕捉部の少なくとも一部よりも前記光透過部側に配置され、光を通過させるように構成された導電層と、を備え、
前記電子捕捉部は、板状の部材であり、前記光透過部側から見た場合に前記筐体内の領域を分割するように配置されている、光電管。
【請求項2】
前記導電層は、前記筐体内において前記光電面と向かい合うように前記光透過部に沿って配置されている、請求項1に記載の光電管。
【請求項3】
前記筐体は、凹部を有する本体部を更に含み、
前記光透過部は、前記凹部の開口を塞ぐように前記本体部に取り付けられており、
前記電子放出部及び前記電子捕捉部は、前記本体部によって支持されており、
前記導電層は、前記光透過部によって支持されている、請求項1又は2に記載の光電管。
【請求項4】
前記電子放出部は、前記凹部の内面に配置されており、
前記電子捕捉部は、前記凹部の開口縁に掛け渡されており、
前記導電層は、前記光透過部における前記電子放出部側の表面に配置されている、請求項に記載の光電管。
【請求項5】
前記電子捕捉部に電気的に接続された第1導電部と、
前記導電層に電気的に接続された第2導電部と、を更に備え、
前記第1導電部の一部、前記第2導電部の一部及び前記電子放出部の一部は、前記本体部における前記光透過部とは反対側の表面において外部に露出している、請求項又はに記載の光電管。
【請求項6】
前記電子捕捉部に電気的に接続された第1導電部と、
前記導電層に電気的に接続された第2導電部と、
前記電子放出部と前記導電層とを電気的に接続する配線と、を更に備え、
前記第1導電部の一部及び前記第2導電部の一部は、前記本体部における前記光透過部とは反対側の表面において外部に露出している、請求項又はに記載の光電管。
【請求項7】
光透過部を含む筐体と、
前記筐体内に配置された光電面を含む電子放出部と、
前記筐体内において前記光透過部と前記光電面との間に配置された電子捕捉部と、
前記筐体内において前記光電面と向かい合うように前記電子捕捉部の少なくとも一部よりも前記光透過部側に配置され、光を通過させるように構成された導電層と、を備え、
前記筐体は、凹部を有する本体部を更に含み、
前記光透過部は、前記凹部の開口を塞ぐように前記本体部に取り付けられており、
前記電子放出部及び前記電子捕捉部は、前記本体部によって支持されており、
前記導電層は、前記光透過部によって支持されている、光電管。
【請求項8】
前記導電層は、前記筐体内において前記光電面と向かい合うように前記光透過部に沿って配置されている、請求項7に記載の光電管。
【請求項9】
前記電子捕捉部は、板状の部材であり、前記光透過部側から見た場合に前記筐体内の領域を分割するように配置されている、請求項7又は8に記載の光電管。
【請求項10】
前記電子放出部は、前記凹部の内面に配置されており、
前記電子捕捉部は、前記凹部の開口縁に掛け渡されており、
前記導電層は、前記光透過部における前記電子放出部側の表面に配置されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の光電管。
【請求項11】
前記電子捕捉部に電気的に接続された第1導電部と、
前記導電層に電気的に接続された第2導電部と、を更に備え、
前記第1導電部の一部、前記第2導電部の一部及び前記電子放出部の一部は、前記本体部における前記光透過部とは反対側の表面において外部に露出している、請求項7~10のいずれか一項に記載の光電管。
【請求項12】
前記電子捕捉部に電気的に接続された第1導電部と、
前記導電層に電気的に接続された第2導電部と、
前記電子放出部と前記導電層とを電気的に接続する配線と、を更に備え、
前記第1導電部の一部及び前記第2導電部の一部は、前記本体部における前記光透過部とは反対側の表面において外部に露出している、請求項7~10のいずれか一項に記載の光電管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電管に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過部を含む筐体と、筐体内に配置された光電面を含む電子放出部(光電陰極)と、光透過部における電子放出部側の表面に形成されたメッシュ状又はドット状の電子捕捉部(陽極)と、を備える光電管が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-067494号公報
【文献】特開2018-097925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光電管では、外部から光透過部に入射した光が光電面に至る確率を向上させるために、メッシュ状の電子捕捉部を粗く形成したり又はドット状の電子捕捉部を小さく形成したりすると、光電面から放出された光電子が電子捕捉部によって捕捉される確率が低下するおそれがある。その一方で、光電面から放出された光電子が電子捕捉部によって捕捉される確率を向上させるために、メッシュ状の電子捕捉部を密に形成したり又はドット状の電子捕捉部を大きく形成したりすると、外部から光透過部に入射した光が光電面に至る確率が低下するおそれがある。したがって、上述したような光電管の構成は、光の検出効率が高い構成とはいえない。
【0005】
本発明は、光の検出効率を向上させることができる光電管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光電管は、光透過部を含む筐体と、筐体内に配置された光電面を含む電子放出部と、筐体内において光透過部と光電面との間に配置された電子捕捉部と、筐体内において光電面と向かい合うように電子捕捉部の少なくとも一部よりも光透過部側に配置され、光を通過させるように構成された導電層と、を備える。
【0007】
上記光電管では、電子捕捉部が、筐体内において光透過部と光電面との間に配置されており、導電層が、筐体内において光電面と向かい合うように電子捕捉部の少なくとも一部よりも光透過部側に配置されている。このように、導電層とは別に電子捕捉部が設けられているため(つまり、導電層のみで光電子を捕捉する機能を担う必要がないため)、十分に光を透過させ得るように導電層を構成することができる。これにより、外部から光透過部に入射した光が光電面に至り易くなる。そのため、外部から光透過部に入射した光が光電面に至る確率を向上させることができる。また、例えば、電子捕捉部の電位を基準として負の電位を電子放出部に付与し、電子放出部の電位を基準として負の電位(又は電子放出部の電位と同電位)を導電層に付与することで、光電面から放出された光電子のうち一部の光電子が光透過部に向かって進行したとしても、当該一部の光電子と導電層との間に生じる斥力によって、当該一部の光電子が跳ね返されて電子捕捉部に至り易くなる。そのため、光電面から放出された光電子が電子捕捉部によって捕捉される確率を向上させることができる。以上により、上記光電管によれば、光の検出効率を向上させることができる。
【0008】
本発明の光電管では、導電層は、筐体内において光電面と向かい合うように光透過部に沿って配置されていてもよい。これによれば、光透過部に沿って導電層の効果を発揮させることができる。
【0009】
本発明の光電管では、電子捕捉部は、板状の部材であり、光透過部側から見た場合に筐体内の領域を分割するように配置されていてもよい。これによれば、大きい入射角で光透過部に入射した光も、電子捕捉部における一対の主面のそれぞれで反射されて光電面に至り易くなる。そのため、外部から光透過部に入射した光が光電面に至る確率を更に向上させることができる。また、光電面から放出された光電子が電子捕捉部における一対の主面のそれぞれに至り易くなる。そのため、光電面から放出された光電子が電子捕捉部によって捕捉される確率を更に向上させることができる。
【0010】
本発明の光電管では、筐体は、凹部を有する本体部を更に含み、光透過部は、凹部の開口を塞ぐように本体部に取り付けられており、電子放出部及び電子捕捉部は、本体部によって支持されており、導電層は、光透過部によって支持されていてもよい。これによれば、光電面、電子捕捉部及び導電層が精度良く配置された構成を、容易に且つ確実に実現することができる。
【0011】
本発明の光電管では、電子放出部は、凹部の内面に配置されており、電子捕捉部は、凹部の開口縁に掛け渡されており、導電層は、光透過部における電子放出部側の表面に配置されていてもよい。これによれば、光電面、電子捕捉部及び導電層が精度良く配置された構成を、効率の良いレイアウトで実現することができる。
【0012】
本発明の光電管は、電子捕捉部に電気的に接続された第1導電部と、導電層に電気的に接続された第2導電部と、を更に備え、第1導電部の一部、第2導電部の一部及び電子放出部の一部は、本体部における光透過部とは反対側の表面において外部に露出していてもよい。これによれば、光透過部への光の入射を妨げず且つ外部配線のアクセスが容易な同一面(本体部における光透過部とは反対側の表面)において、第1導電部の一部、第2導電部の一部及び電子放出部の一部のそれぞれに外部配線を電気的に接続することができる。また、電子放出部、電子捕捉部及び導電層のそれぞれに所望の電位を付与することができる。
【0013】
本発明の光電管は、電子捕捉部に電気的に接続された第1導電部と、導電層に電気的に接続された第2導電部と、電子放出部と導電層とを電気的に接続する配線と、を更に備え、第1導電部の一部及び第2導電部の一部は、本体部における光透過部とは反対側の表面において外部に露出していてもよい。これによれば、光透過部への光の入射を妨げず且つ外部配線のアクセスが容易な同一面(本体部における光透過部とは反対側の表面)において、第1導電部の一部及び第2導電部の一部のそれぞれに外部配線を電気的に接続することができる。また、外部配線を電気的に接続するための導電部の構造の単純化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光の検出効率を向上させることができる光電管を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の光電管の平面図である。
図2図1に示されるII-II線に沿っての光電管の断面図である。
図3図1に示されるIII-III線に沿っての光電管の断面図である。
図4図1に示される光電管の分解斜視図である。
図5】第1変形例の光電管の断面図である。
図6】第1変形例の光電管の断面図である。
図7】第2変形例の光電管の断面図である。
図8】第2変形例の光電管の電子捕捉部の斜視図である。
図9】第3変形例の光電管の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1図2及び図3に示されるように、光電管1は、筐体2と、電子放出部3と、電子捕捉部4と、導電層5と、一対の第1導電部(導電部)6と、第2導電部7と、を備えている。光電管1では、電子放出部3が光電陰極として機能し、電子捕捉部4が陽極として機能する。光電管1の検出対象の光は、例えば、紫外線である。
【0018】
筐体2は、本体部21と、光透過部22と、を含んでいる。本体部21は、Z軸方向における一方の側に開口する凹部23を有している。本体部21において、凹部23は、底壁24及び側壁25によって画定されている。凹部23と側壁25との間には、凹部23を略包囲するように形成された溝部26が設けられており、異なる電位が付与される部材間の耐電圧特性の向上が図られている。本体部21は、例えば、Z軸方向から見た場合に正方形状(一辺の長さ:10mm程度)を呈している板状の部材(厚さ:数mm程度)であり、絶縁性材料(例えばコバールガラス)によって形成されている。光透過部22は、凹部23の開口を塞ぐように本体部21に取り付けられている。光透過部22は、光電管1の検出対象の光を透過させる。光透過部22は、例えば、Z軸方向から見た場合に正方形状(一辺の長さ:10mm程度)を呈している板状の部材(厚さ:1mm以下)であり、絶縁性材料(例えば石英ガラス)によって形成されている。本実施形態では、筐体2内の領域は、高真空に維持されている。
【0019】
図4に示されるように、本体部21の側壁25の端面25a(光透過部22側の端面)には、下地層11が枠状に配置されている。光透過部22における電子放出部3側の表面22aには、光透過部22の外縁に沿って下地層12が枠状に配置されている。下地層11と下地層12との間には、接合層13が枠状に配置されている。光透過部22は、下地層11、下地層12及び接合層13によって、本体部21の側壁25に気密に接合されている。下地層11及び下地層12は、接合層13と本体部21との密着度、及び、接合層13と光透過部22との密着強度を高めるための金属層(いわゆるメタライズ層)であり、例えば、Cr/Ni/Cu又はTi/Pt/Auによって形成されている。接合層13は、導電性材料(例えば、In等の接合用金属、又はAuSn等の半田)によって形成されている。
【0020】
図1図2及び図3に示されるように、電子放出部3は、電極体31と、光電面32と、を含んでいる。電子放出部3は、光電面32が筐体2内に配置された状態で、筐体2の本体部21の凹部23によって保持されている。本実施形態では、電子放出部3は、本体部21の凹部23の内面23aに配置されており、電子放出部3の一部は、本体部21における光透過部22とは反対側の表面21aに開口する開口部21cを介して、表面21aにおいて外部に露出している。より具体的には、ボウル状を呈している電極体31が、例えば、融着又は接合部材による接合等によって、凹部23の内面23aに固定されており、凸部状に突出した電極体31の底部31aが、本体部21の開口部21cを介して、本体部21の表面21aにおいて外部に露出している。光電面32は、ボウル状を呈している電極体31の内面に沿って形成された光電変換膜である。電極体31は、導電性材料(例えばコバール等の金属材料)によって形成されており、光電面32は、例えば、CsTeによって形成されている。
【0021】
光電面32は、筐体2内において光透過部22側に向いた凹状の面である。すなわち、光電面32は、筐体2内において光透過部22とは反対側(すなわち、光透過部22から離れる側)に凹んでいる。光電面32は、底面32aと、側面32bと、を含んでいる。底面32aは、Z軸方向に垂直な平坦面である。側面32bは、底面32aから離れるほど(すなわち、光透過部22に近付くほど)傾きが増加するように湾曲している。側面32bは、傾きが連続するように底面32aに接続されている。底面32aは、光透過部22側から見た場合に円形状を呈しており、側面32bは、光透過部22側から見た場合に円環状を呈している。つまり、光電面32は、光透過部22側から見た場合に円形状を呈している。
【0022】
電子捕捉部4は、筐体2内において光透過部22と光電面32との間に配置されている。電子捕捉部4は、導電性材料(例えばコバール等の金属材料)によって形成された板状の部材(厚さ:0.4mm程度)であり、光透過部22側から見た場合に筐体2内の領域を分割するように配置されている。すなわち、電子捕捉部4は、電子捕捉部4の一対の主面4aがZ軸方向に平行となるように配置されている。各主面4aの縁部は、Y軸方向から見た場合に(板状部材の主平面と対向するように見た場合に)、凹部23の内面23aに沿って延在し且つ凹部23の内面23aに対向する略楕円形状(滑らかな円弧部と直線部とを備えた形状)を呈している。電子捕捉部4は、筐体2の本体部21によって支持されている。本実施形態では、電子捕捉部4は、本体部21の凹部23の開口縁23bに掛け渡されている。より具体的には、電子捕捉部4のうちX軸方向において外側に突出している一対の端部4bが、開口縁23bのうちX軸方向において対向している部分に配置されている。
【0023】
電子捕捉部4の一部41は、凹状の光電面32の内側の領域33内に位置している。すなわち、電子捕捉部4の一部41は、凹状の光電面32の開口縁32cに対して光透過部22とは反対側に位置している。電子捕捉部4における一部41以外の一部42は、凹状の光電面32の外側の領域(つまり領域33外)に位置している。すなわち、電子捕捉部4の一部42は、凹状の光電面32の開口縁32cに対して光透過部22側に位置している。電子捕捉部4の一部41の側面41a(一対の主面4aの間の側面であって光電面32と対向する側面)は、Y軸方向から見た場合に光電面32に沿って延在している。電子捕捉部4は、筐体2内において、側面41aと光電面32との距離が略均一になるように、所定の距離をとって光電面32から離れており、光電面32とは電気的に接続されていない。
【0024】
導電層5は、筐体2内において光電面32と向かい合うように電子捕捉部4よりも光透過部22に配置されている。本実施形態では、導電層5は、筐体2内において光電面32と向かい合うように光透過部22に沿って配置されている。導電層5は、筐体2内において、所定の距離をとって電子捕捉部4から離れており、電子捕捉部4とは電気的に接続されていない。本実施形態では、導電層5は、光透過部22の表面22aに配置されている。つまり、導電層5は、光透過部22によって支持されている。導電層5は、光電管1の検出対象の光を通過させるように構成されている。本実施形態では、導電層5は、光電管1の検出対象の光の波長に応じて選択された材料によって、当該波長に応じて設定された厚さで、膜状に形成されている。導電層5の材料は、例えば、Niであり、導電層5の厚さは、例えば、数nm程度である。
【0025】
図1及び図4に示されるように、導電層5は、光透過部22の表面22aにおいて、下地層12の内側に位置している。一例として、導電層5は、Z軸方向から見た場合に正方形状を呈しており、正方形枠状の下地層12の内側に位置している。導電層5の角部5aは、下地層12の突出部12aに重なっており、接合層13を介して下地層11の突出部11aに重なっている。これにより、導電層5、下地層11、下地層12及び接合層13は、互いに電気的に接続されている。角部5aは、導電層5のうちY軸方向において対向している一対の角部の一方である。突出部11aは、下地層11のうちY軸方向において対向している一対の角部の一方から内側に突出している部分であり、突出部12aは、下地層12のうちY軸方向において対向している一対の角部の一方から内側に突出している部分である。
【0026】
図1及び図2に示されるように、一対の第1導電部6は、電子捕捉部4に電気的に接続されており、各第1導電部6の一部は、本体部21の表面21aにおいて外部に露出している。より具体的には、各第1導電部6における光透過部22側の端部6aが、電子捕捉部4の一部42に設けられた各端部4bに電気的に接続されており、各第1導電部6における端部6aとは反対側の端部6bが、本体部21の表面21aにおいて外部に露出している。凹状の光電面32の内側の領域33外において、各第1導電部6が電子捕捉部4に電気的に接続されているため、電子捕捉部4及び一対の第1導電部6とは異なる電位が付与される光電面32から電子捕捉部4及び一対の第1導電部6が離間され、異なる電位が付与される部材間の耐電圧特性の向上が図られている。一例として、各第1導電部6は、本体部21の側壁25のうちX軸方向において対向している一対の角部のそれぞれにおいて、Z軸方向に延在している。一対の第1導電部6は、導電性材料(例えばコバール)によって、電子捕捉部4と一体的に形成されている。
【0027】
図1及び図3に示されるように、第2導電部7は、導電層5に電気的に接続されており、第2導電部7の一部は、本体部21の表面21aにおいて外部に露出している。より具体的には、第2導電部7における光透過部22側の端部7aが、下地層11の突出部11a、下地層12の突出部12a、及び接合層13(図4参照)を介して、導電層5の角部5aに電気的に接続されており、第2導電部7における端部7aとは反対側の端部7bが、本体部21の表面21aにおいて外部に露出している。一例として、第2導電部7は、本体部21の側壁25のうちY軸方向において対向している一対の角部の一方において、Z軸方向に延在している。第2導電部7は、導電性材料(例えばコバール)によって形成されている。
【0028】
以上のように構成された光電管1では、例えば、電子捕捉部4の電位(接地電位)を基準として負の電位が電子放出部3に付与され、電子放出部3の電位を基準として負の電位(又は電子放出部3の電位と同電位)が導電層5に付与される。この状態で、外部から光透過部22に入射した光が、光透過部22及び導電層5を透過して光電面32に至ると、光電子放出効果によって、光電面32から光電子が放出される。光電面32から放出された光電子のうち電子捕捉部4に向かって進行した光電子は、電子捕捉部4によって引き寄せられて電子捕捉部4に至る。光電面32から放出された光電子のうち光透過部22に向かって進行した光電子は、当該光電子と導電層5との間に生じる斥力によって跳ね返されて電子捕捉部4に至る。このように電子捕捉部4に至った光電子(電流)を検出することで、光を検出することができる。なお、できるだけ同一の電圧値を用いることで、光電管1への電力供給を簡素化するという観点では、電子放出部3と導電層5とを同電位とすることが好ましい。
【0029】
以上説明したように、光電管1では、電子捕捉部4が、筐体2内において光透過部22と光電面32との間に配置されており、導電層5が、筐体2内において光電面32と向かい合うように電子捕捉部4よりも光透過部22側に配置されている。このように、導電層5とは別に電子捕捉部4が設けられているため(つまり、導電層5のみで光電子を捕捉する機能を担う必要がないため)、十分に光を透過させ得るように導電層5を構成することができる。これにより、外部から光透過部22に入射した光が光電面32に至り易くなる。そのため、外部から光透過部22に入射した光が光電面32に至る確率を向上させることができる。また、例えば、電子捕捉部4の電位(接地電位)を基準として負の電位を電子放出部3に付与し、電子放出部3の電位を基準として負の電位(又は電子放出部3の電位と同電位)を導電層5に付与することで、光電面32から放出された光電子のうち一部の光電子が光透過部22に向かって進行したとしても、当該一部の光電子と導電層5との間に生じる斥力によって、当該一部の光電子が跳ね返されて電子捕捉部4に至り易くなる。そのため、光電面32から放出された光電子が電子捕捉部4によって捕捉される確率を向上させることができる。以上により、光電管1によれば、光の検出効率を向上させることができる。
【0030】
光電管1では、導電層5が、筐体2内において光電面32と向かい合うように光透過部22に沿って配置されている。これにより、光透過部22に沿って導電層5の効果を発揮させることができる。
【0031】
光電管1では、電子捕捉部4が、板状の部材であり、光透過部22側から見た場合に筐体2内の領域を分割するように配置されている。これにより、大きい入射角で光透過部22に入射した光も、電子捕捉部4における一対の主面4aのそれぞれで反射されて光電面32に至り易くなる。そのため、外部から光透過部22に入射した光が光電面32に至る確率を更に向上させることができる。また、光電面32から放出された光電子が電子捕捉部4における一対の主面4aのそれぞれに至り易くなる。そのため、光電面32から放出された光電子が電子捕捉部4によって捕捉される確率を更に向上させることができる。
【0032】
光電管1では、光透過部22が、凹部23の開口を塞ぐように本体部21に取り付けられており、電子放出部3及び電子捕捉部4が、本体部21によって支持されており、導電層5が、光透過部22によって支持されている。これにより、光電面32、電子捕捉部4及び導電層5が精度良く配置された構成を、容易に且つ確実に実現することができる。
【0033】
光電管1では、電子放出部3が、本体部21の凹部23の内面23aに配置されており、電子捕捉部4が、本体部21の凹部23の開口縁23bに掛け渡されており、導電層5が、光透過部22の表面22aに配置されている。これにより、光電面32、電子捕捉部4及び導電層5が精度良く配置された構成を、効率の良いレイアウトで実現することができる。また、電子放出部3、電子捕捉部4及び導電層5を安定的に保持することができ、耐震性の高い構造を得ることができる。
【0034】
光電管1では、電子捕捉部4に電気的に接続された各第1導電部6の一部、導電層5に電気的に接続された第2導電部7の一部、及び電子放出部3の一部が、本体部21の表面21aにおいて外部に露出していている。これにより、光透過部22への光の入射を妨げず且つ外部配線のアクセスが容易な同一面(本体部21の表面21a)において、各第1導電部6の一部、第2導電部7の一部及び電子放出部3の一部のそれぞれに外部配線を電気的に接続することができる。また、電子放出部3、電子捕捉部4及び導電層5のそれぞれに所望の電位を付与することができる。
【0035】
なお、光電管1は、一例として、次のように製造される。まず、電子放出部3、一体的に形成された電子捕捉部4及び一対の第1導電部6、並びに、第2導電部7(以下、「電子放出部3等」という)が治具にセットされる。続いて、電子放出部3等がセットされた治具上においてコバールガラス板の溶融及び再固化が実施されて、電子放出部3等と本体部21とがユニット化される。続いて、本体部21の表面21aが研磨されて、各第1導電部6の一部、第2導電部7の一部及び電子放出部3の一部が本体部21の表面21aにおいて外部に露出させられる。続いて、本体部21の側壁25の端面25aに下地層11が形成される。その一方で、光透過部22の表面22aに導電層5及び下地層12が形成される。続いて、高真空空間において、本体部21に形成された下地層11と光透過部22に形成された下地層12とが接合層13によって接合されて、光電管1が得られる。
【0036】
上述した各工程は、それぞれが光電管1となる複数の構成が二次元に並んだウェハ状態で実施され、最後に個々の光電管1が切り出される。これにより、組立工程の削減、延いては、製造コストの削減を図ることができ、小型化が図られた光電管1を量産することが可能となる。光電管1では、電子放出部3等と本体部21とがユニット化されているため、電子放出部3等の位置精度も向上し、振動及び衝撃による電子放出部3等の位置ずれも防止される。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されない。図5及び図6に示されるように、光電管1では、電子放出部3の一部が本体部21の表面21aにおいて外部に露出しておらず、電子放出部3と導電層5とが配線8によって電気的に接続されていてもよい。図5及び図6に示される光電管1では、本体部21が有する傾斜面21bに配線8が形成されている。傾斜面21bは、凹部23の開口縁23bから側壁25の端面25aに延在している。図5及び図6に示される光電管1では、光透過部22への光の入射を妨げず且つ外部配線のアクセスが容易な同一面(本体部21の表面21a)において、各第1導電部6の一部及び第2導電部7の一部のそれぞれに外部配線を電気的に接続することができ、例えば、電子捕捉部4の電位(接地電位)を基準として負の電位を電子放出部3及び導電層5に付与することができる。また、外部配線を電気的に接続するための導電部の構造の単純化を図ることができる。
【0038】
図5及び図6に示されるように、電子放出部3と導電層5とが配線8によって電気的に接続されている光電管1では、第2導電部7が設けられておらず、電子放出部3の一部が本体部21の表面21aにおいて外部に露出していてもよい。その場合にも、本体部21の表面21aにおいて外部に露出している各第1導電部6の一部及び電子放出部3の一部のそれぞれに外部配線を電気的に接続することで、例えば、電子捕捉部4の電位(接地電位)を基準として負の電位を電子放出部3及び導電層5に付与することができる。
【0039】
電子捕捉部4は、板状の部材に限定されない。一例として、図7及び図8に示されるように、電子捕捉部4は、複数の光通過開口4cを有するボウル状の部材であってもよい。図7に示される光電管1では、電子捕捉部4のうち底部を含む一部41が、光電面32の内側の領域33内に位置している。図7に示される光電管1では、光透過部22及び導電層5を透過した光が、複数の光通過開口4cを通過して光電面32に至る。なお、図7では、電子捕捉部4のうち断面部分以外の部分に形成された光通過開口4cの図示が省略されている。
【0040】
導電層5は、膜状に形成されたものに限定されない。一例として、図9に示されるように、導電層5は、メッシュ状に形成されたものであってもよい。つまり、導電層5は、光を通過させるように構成されていればよい。
【0041】
上記実施形態及び全ての変形例において、筐体2内の領域は、ネオン又は水素等の放電ガスが封入された領域であってもよい。上記実施形態及び全ての変形例において、一対の第1導電部6ではなく、1つの第1導電部6が電子捕捉部4に電気的に接続されていてもよい。
【0042】
上記実施形態及び全ての変形例において、導電層5は、筐体2内において光電面32と向かい合うように電子捕捉部4の少なくとも一部よりも光透過部22側に配置されていればよい。一例として、導電層5は、光透過部22と接触することなく、本体部21の側壁25の内側の空間に張られることで、本体部21によって支持されていてもよい。上記実施形態及び全ての変形例において、光電面32は、筐体2内において光透過部22側に向いた凹状の面でなくてもよく、例えば、平坦な面であってもよい。上記実施形態及び全ての変形例において、電子捕捉部4は、少なくとも一部41が凹状の光電面32の内側の領域33内に位置しているものでなくてもよく、例えば、電子捕捉部4の全部が凹状の光電面32の内側の領域33内に位置していなくてもよい。上記実施形態及び全ての変形例において、第1導電部6は、電子捕捉部4に直接的に接続されていてもよいし、電子捕捉部4に間接的に(すなわち、他の導電性部材を介して)接続されていてもよい。つまり、第1導電部6は、電子捕捉部4に電気的に接続されていればよい。上記実施形態及び全ての変形例において、第2導電部7は、導電層5に直接的に接続されていてもよいし、導電層5に間接的に(すなわち、他の導電性部材を介して)接続されていてもよい。つまり、第2導電部7は、導電層5に電気的に接続されていればよい。
【符号の説明】
【0043】
1…光電管、2…筐体、3…電子放出部、4…電子捕捉部、5…導電層、6…第1導電部、7…第2導電部、8…配線、21…本体部、21a…表面、22…光透過部、22a…表面、23…凹部、23a…内面、23b…開口縁、32…光電面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9