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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】組電池の監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/20 20060101AFI20240625BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20240625BHJP
   H02H 3/20 20060101ALI20240625BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240625BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02H7/20
H02H3/08 L
H02H3/20 A
H02J7/00 S
H01M10/48 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020171059
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062882
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 高広
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕宣
(72)【発明者】
【氏名】足立 大海
(72)【発明者】
【氏名】本多 健
(72)【発明者】
【氏名】山川 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 日出光
(72)【発明者】
【氏名】榊原 雅大
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134962(JP,A)
【文献】特開2015-096018(JP,A)
【文献】特開2018-190677(JP,A)
【文献】特開2017-077053(JP,A)
【文献】特開2007-043822(JP,A)
【文献】特開2014-235997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/20
H02H 3/08
H02H 3/20
H02J 7/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池側に設けた第1コネクタと、監視回路側に設けた第2コネクタとを接続し、前記組電池の状態を監視する、組電池の監視装置であって、
前記組電池と前記第1コネクタとを接続する第1電圧検出線に設けられた第1電力ヒューズと、
前記監視回路と前記第2コネクタとを接続する第2電圧検出線に設けられた第2電力ヒューズと
前記第2電力ヒューズと直列に前記第2電圧検出線に設けられた第3電力ヒューズとを備え、
前記第1電力ヒューズの定格電流は、前記第2電力ヒューズの定格電流および前記第3電力ヒューズの定格電流よりも小さく設定される、組電池の監視装置。
【請求項2】
組電池側に設けた第1コネクタと、監視回路側に設けた第2コネクタとを接続し、前記組電池の状態を監視する、組電池の監視装置であって、
前記組電池と前記第1コネクタとを接続する第1電圧検出線に設けられた第1電力ヒューズと、
前記監視回路と前記第2コネクタとを接続する第2電圧検出線に設けられた第2電力ヒューズと、
前記第1電力ヒューズと直列に前記第1電圧検出線に設けられた第3電力ヒューズとを備え、
前記第1電力ヒューズの定格電流および前記第3電力ヒューズの定格電流は、前記第2電力ヒューズの定格電流よりも小さく設定される、組電池の監視装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池の監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車および電気自動車等の電動車両では、複数の単電池(電池セル)を直列に接続した組電池を電力源とし、当該電力源から供給される電力を用いて走行駆動用モータを駆動している。組電池において、各単電池の電圧は、監視回路によって監視されている。たとえば、特開2014-7883号公報(特許文献1)では、組電池の各電池セル(単電池)の両端子を電圧検出用の検出ラインを用いて監視回路に接続し、各単電池の電圧を監視している。電圧検出用の検出ラインには、所定電流値以上の電流が流れた際に組電池と監視回路との間の電気的接続を遮断するヒューズが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-7883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電圧検出用の検出ライン(電圧検出線)にヒューズを設けることにより、組電池に発生した過電圧から監視回路を保護している。しかし、電圧検出線に所定電流値以上の大電流が流れヒューズが溶断したあと、溶断後のヒューズ端子に高電圧が印加される場合がある。溶断後のヒューズ端子に高電圧が印加されると、ヒューズ端子間にアーク放電が生じ、アーク電流が監視回路に入力される可能性がある。
【0005】
また、監視回路の搭載を容易にするため、組電池側の電圧検出線と監視回路側の電圧検出線とをコネクタを介して接続する場合がある。この場合、電動車両への搭載性を向上させるために、コネクタ同士の距離が比較的小さくされる場合が多い。そうすると、隣り合うコネクタ端子間の絶縁距離が比較的小さくなる。このため、隣り合うコネクタ端子間の電位差が大きくなると、コネクタ端子間でアーク放電が生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ヒューズ溶断後に発生したアーク電流から監視回路を保護するとともに、隣り合うコネクタ端子間のアーク放電の発生を抑制することができる組電池の監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の組電池の監視装置は、組電池側に設けた第1コネクタと、監視回路側に設けた第2コネクタとを接続し、組電池の状態を監視する監視装置であって、組電池と第1コネクタとを接続する第1電圧検出線に設けられた第1電力ヒューズと、監視回路と第2コネクタとを接続する第2電圧検出線に設けられた第2電力ヒューズとを備える。第1電力ヒューズの定格電流は、第2電力ヒューズの定格電流よりも小さく設定される。
【0008】
この構成によれば、第1電力ヒューズの定格電流が、第2電力ヒューズの定格電流よりも小さく設定されている。そのため、組電池に過電圧が発生し電圧検出線(第1電圧検出線および第2電圧検出線)に大きな電流が流れると、第2電力ヒューズよりも第1電力ヒューズが先に溶断して、組電池と第1コネクタとの電気的接続が遮断される。ゆえに、組電池と監視回路との電気的接続も遮断されるので、組電池に発生した過電圧から監視回路を保護することができる。
【0009】
第1電力ヒューズが溶断した後において、溶断後の第1電力ヒューズの端子に高電圧が印加されると、溶断した第1電力ヒューズの端子間にアーク放電が生じ得る。そうすると、監視回路と第2コネクタとを接続する第2電圧検出線に大きな電流(アーク電流)が流れる。このような場合には、アーク電流により、第2電力ヒューズが溶断し、第2コネクタと監視回路との電気的接続が遮断される。よって、アーク電流から監視回路を保護することができる。
【0010】
また、組電池に生じた過電圧により、組電池と第1コネクタとを接続する第1電圧検出線に設けられた第1電力ヒューズが最初に溶断し、組電池と第1コネクタとの電気的接続が遮断されるので、隣り合う第1コネクタ端子間の絶縁距離が小さくても(短くても)、隣り合う第1コネクタ間のアーク放電を抑止できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ヒューズ溶断後に発生したアーク電流から監視回路を保護するとともに、隣り合うコネクタ端子間のアーク放電の発生を抑制することができる組電池の監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る組電池の監視装置の全体構成図である。
図2】組電池に過電圧が発生した場合における、組電池の監視装置の動作を示す図(その1)である。
図3】組電池に過電圧が発生した場合における、組電池の監視装置の動作を示す図(その2)である。
図4】変形例1に係る組電池の監視装置の全体構成図である。
図5】変形例2に係る組電池の監視装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る組電池の監視装置1の全体構成図である。組電池の監視装置1は、蓄電装置1Aと、電池ECU(Electronic Control Unit)1Bとを含む。蓄電装置1Aには、たとえば、組電池2と、第1コネクタ21と、第1電力ヒューズ22とが含まれる。電池ECU1Bには、たとえば、監視回路3と、第2コネクタ31と、第2電力ヒューズ32と、ツェナーダイオード33と、コンデンサ34と、インダクタ35とが含まれる。
【0015】
組電池2は、たとえば、ハイブリッド自動車および電気自動車等の電動車両の走行用駆動モータを駆動する電力源であり、図示しないPCU(Power Control Unit)を介して、走行用駆動モータに電力を供給する。組電池2は、複数の単電池(電池セル)20を、電気的に直列に接続したものである。単電池(電池セル)20は、たとえば、リチウムイオン電池およびニッケル水素電池等の二次電池から構成される。
【0016】
監視回路3は、単電池20の電圧を監視する回路である。電池ECUには、監視回路3の他に、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等が含まれる(いずれも図示せず)。監視回路3は、単電池20の電圧状態等を検出し、検出した単電池20の電圧状態等を示す信号を、CPUに出力する。
【0017】
組電池2を構成する各単電池20の出力端子には、電圧検出線L1の一端が接続されている。電圧検出線L1の他端には第1コネクタ21が接続されている。電圧検出線L1には、第1電力ヒューズ22が設けられている。すなわち、単電池20と第1コネクタ21との間には、第1電力ヒューズ22が設けられている。第1電力ヒューズ22は、組電池2(単電池20)に過電流が発生し、電圧検出線L1に第1所定値以上の電流(過電流)が流れた場合に溶断し、単電池20の出力端子と第1コネクタ21との電気的接続を遮断する。電圧検出線L1、第1コネクタ21、および、第1電力ヒューズ22は、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)40に実装されている。FPC40は、組電池2(単電池20)に接続されている。なお、第1電力ヒューズ22は、たとえば、パターンヒューズとしてFPC40に形成されてもよい。
【0018】
電圧検出線L2の一端は、第2コネクタ31に接続され、電圧検出線L2の他端は、監視回路3に接続される。第2コネクタ31と第1コネクタ21とが接続されることにより、電圧検出線L1と電圧検出線L2とが結線される。電圧検出線L2には、第2電力ヒューズ32が設けられている。第2電力ヒューズ32は、電圧検出線L2に第2所定値以上の電流(過電流)が流れた場合に溶断し、第2コネクタ31と監視回路3との電気的接続を遮断する。なお、第2電力ヒューズ32も、たとえば、パターンヒューズとして基板等に形成されてもよい。
【0019】
電圧検出線L1に設けられた第1電力ヒューズ22の定格電流は、電圧検出線L2に設けられた第2電力ヒューズ32の定格電流より小さく設定されている。すなわち、上述した第1電力ヒューズ22が溶断し得る第1所定値以上の電流の大きさは、第2電力ヒューズ32が溶断し得る第2所定値以上の電流の大きさよりも小さい。
【0020】
隣接する電圧検出線L2間には、ツェナーダイオード33が設けられている。単電池20の両端子に接続された一対の検出ライン(ある単電池20の正極端子に接続された電圧検出線L1および電圧検出線L2、ならびに、上記ある単電池20の負極端子に接続された電圧検出線L1および電圧検出線L2)において、単電池20の正極端子側に接続された電圧検出線L2にツェナーダイオード33のカソードが接続され、単電池20の負極端子側の電圧検出線L2にツェナーダイオード33のアノードが接続される。ツェナーダイオード33の降伏電圧は、組電池2(単電池20)に過電圧が発生したときの電圧より小さく設定されており、たとえば、単電池20の満充電時の電圧の数倍に設定されている。また、電圧検出線L2には、インダクタ35が設けられている。本実施の形態においては、インダクタ35は、第2電力ヒューズ32と監視回路3との間に設けられている。インダクタ35は、隣接する電圧検出線L2間に接続されたコンデンサ34とともにLC回路を構成し、高周波ノイズをカットする。なお、コンデンサ34およびインダクタ35は、省略することも可能である。なお、電圧検出線L1は、本開示に係る「第1電圧検出線」の一例に相当する。電圧検出線L2は、本開示に係る「第2電圧検出線」の一例に相当する。
【0021】
以上のように構成された、本実施の形態の組電池の監視装置1において、たとえば、単電池20同士を接続するバスバーが外れる場合がある。PCUは、組電池2からの電圧VBを平滑化して昇降圧コンバータに供給するコンデンサを備えており、このコンデンサの電圧をVLと表わすと、バスバーが外れた単電池20の両端子の電圧検出線L1間には、「PCUのコンデンサ電圧VL-当該単電池の電圧Vb」の過電圧が発生する。
【0022】
図2および図3は、組電池2に過電圧が発生した場合における、組電池の監視装置1の動作を示す図である。図2(A)において、位置Sにおいてバスバー外れ等により単電池20-1と単電池20-2との接続が遮断されたことを想定する。単電池20-1と単電池20-2との接続が遮断されると、単電池20-1の負極端子に接続された電圧検出線L1-1と、単電池20-2の負極端子に接続された電圧検出線L1-2との間に「PCUのコンデンサ電圧VL-単電池20-2の電圧Vb2」の過電圧が印加される。このため、単電池20-1の負極端子に接続された電圧検出線L1-1と単電池20-2の負極端子に接続された電圧検出線L1-2とに過電流が流れる。この際、第1電力ヒューズ22の定格電流は第2電力ヒューズ32の定格電流よりも小さくされているので、第2電力ヒューズ32よりも第1電力ヒューズ22が先に溶断し、単電池20と第1コネクタ21との電気的接続が遮断される。ゆえに、電圧検出線L1-1および電圧検出線L1-2を介して監視回路3に過電流が流れることが抑制される。第1電力ヒューズ22が溶断することにより、監視回路3を過電圧から保護することができる。
【0023】
単電池20-1の負極端子に接続された電圧検出線L1-1に設けられた第1電力ヒューズ22と、単電池20-2の負極端子に接続された電圧検出線L1-2に設けられた第1電力ヒューズ22とが溶断すると、単電池20-1と隣り合う単電池20(単電池20-1の正極側の単電池)との間、および、単電池20-2と隣り合う単電池20(単電池20-2の負極側の単電池)との間に過電圧が発生し、図2(A)の矢印AR1で示すように、第1電力ヒューズ22が順次溶断する。この場合において、第1電力ヒューズ22の特性ばらつきに起因して、最上段あるいは最下段の何れかの第1電力ヒューズ22が溶断せずに残る頻度が高い。図2(A)においては、最上段の第1電力ヒューズ22が溶断せずに残っているケースを示している。
【0024】
図2(A)に示すように、最上段の第1電力ヒューズ22が残った場合、組電池2に接続される負荷(たとえばPCU)の態様に応じて、組電池2の電圧VB、PCUのコンデンサ電圧VLあるいはPCUのシステム電圧VH等の高電圧が、最上段の第1電力ヒューズ22を介して電圧検出線L1および電圧検出線L2に印加され、ツェナーダイオード33の降伏電圧を超える。このとき、溶断した第1電力ヒューズの端子間距離(エレメント間距離)が短いと、溶断した第1電力ヒューズ22の端子間(エレメント間)でアーク放電が生じる場合がある。図2(B)では、溶断した最下段の第1電力ヒューズ22の端子間でアーク放電が発生したケースを示している。
【0025】
図2(B)に示すように、最下段の第1電力ヒューズ22の端子間でアーク放電が生じると、矢印AR2のようにアーク電流が流れ、第2電力ヒューズ32より定格電流の小さい最上段の第1電力ヒューズ22が溶断する。これにより、組電池2と監視回路3との電気的接続が遮断され、監視回路3が過電圧から保護される。なお、ツェナーダイオード33は、過電圧が印加された際に、短絡故障(ショート故障)するように構成されている。
【0026】
図3(A)は、組電池2に接続された電圧検出線L1に設けられた第1電力ヒューズ22のすべてが溶断し、監視回路3を過電圧から保護したあとの状態を示している。この状態においても、組電池2に接続される負荷の態様に応じて、組電池2の電圧VB、PCUのコンデンサ電圧VLあるいはPCUのシステム電圧VH等の高電圧が、溶断した第1電力ヒューズ22の端子に印加される場合がある。溶断した第1電力ヒューズ22の端子に高電圧が印加されると、溶断した第1電力ヒューズの端子間距離が短い箇所の端子間でアーク放電が生じる場合がある。たとえば、最下段の第1電力ヒューズ22の端子間距離が短い場合、図3(B)に示すように、当該第1電力ヒューズ22の端子間にアーク放電が生じてアーク電流が電圧検出線L2に流れる(矢印AR3)。アーク電流が流れると、最下段の電圧検出線L2に設けられた第2電力ヒューズ32が溶断し、第2コネクタ31と監視回路3との電気的接続が遮断される。これにより、監視回路3にアーク電流が流れることが抑制される。
【0027】
続いて、たとえば上段から2段目の第1電力ヒューズ22の端子間距離が短い場合は、図3(B)に示すように、当該第1電力ヒューズ22の端子間にアーク放電が生じて電圧検出線L2にアーク電流が流れる(矢印AR4)。アーク電流が流れると、2段目の電圧検出線L2に設けられた第2電力ヒューズ32が溶断し、第2コネクタ31と監視回路3との電気的接続が遮断される。これにより、監視回路3にアーク電流が流れることが抑制される。
【0028】
このように、溶断した第1電力ヒューズ22の端子間距離と、当該第1電力ヒューズ22の端子に印加される高電圧との関係から、第1電力ヒューズ22の端子間にアーク放電が生じると、対応する第2電力ヒューズ32が順次溶断して、第2コネクタ31と監視回路3との電気的接続が遮断され、アーク電流から監視回路3が保護される。
【0029】
第1電力ヒューズ22および第2電力ヒューズ32の両方が溶断すると、溶断した第1電力ヒューズ22の端子と溶断した第2電力ヒューズ32の端子との距離が絶縁距離となる。検出ライン(電圧検出線L1および電圧検出線L2)において、2つのヒューズ(第1電力ヒューズ22および第2電力ヒューズ32)が設けられることにより、ヒューズが溶断した際の絶縁距離を大きく確保することができる。大きな絶縁距離を確保することにより、アーク放電が発生することを抑止できる。
【0030】
組電池2(単電池20)に生じた過電圧により、仮に、電圧検出線L2に設けた第2電力ヒューズ32が最初に溶断すると、溶断していない第1電力ヒューズ22を介して、第1コネクタ21に高電圧が印加される場合がある。そうすると、隣り合う第1コネクタ21の端子間の絶縁距離が小さい場合(短い場合)、隣り合う第1コネクタ21間でアーク放電が生じる可能性がある。本実施の形態では、組電池2と第1コネクタ21の間の電圧検出線L1に設けられた第1電力ヒューズ22が第2電力ヒューズ32よりも先に溶断する。これにより、組電池2(単電池20)と第1コネクタ21との電気的接続が遮断される。組電池2(単電池20)と第1コネクタ21との電気的接続を遮断することにより、隣り合う第1コネクタ21の端子間の絶縁距離が小さくても(短くても)、隣り合う第1コネクタ21間でアーク放電が発生することを抑制することができる。
【0031】
本実施の形態では、第1電力ヒューズ22は、組電池2に接続されるFPC40に実装されている。また、第2電力ヒューズ32は、第2コネクタ31と監視回路3とを接続する電圧検出線L2に設けられている。FPC40に、第1電力ヒューズ22に加えて第2電力ヒューズ32を実装すると、第2電力ヒューズ32を実装する面積が必要になるので、FPC40の体格を大きくする必要がある。また、防水処理のため第2電力ヒューズ32のポッティング処理を行なう必要があり、コスト増加を招く。本実施の形態では、第2電力ヒューズ32を電圧検出線L2に設けると共に、FPC40に第1電力ヒューズ22を設けているので、FPC40の小型化およびコスト増加の抑制を図ることができる。
【0032】
なお、本実施の形態の説明において、組電池2の過電圧発生時、図2(A)に示すように、最上段の第1電力ヒューズ22が溶断せずに残るケースを説明したが、組電池2の過電圧発生時、全ての第1電力ヒューズ22が溶断し、図3(A)に示す状態になる場合もある。
【0033】
なお、本実施の形態においては、蓄電装置1Aに1つの組電池2(電池ブロック)が含まれる例について説明したが、蓄電装置1Aに複数の組電池2(電池ブロック)が含まれてもよい。この場合には、たとえば、直列に接続された各組電池2(電池ブロック)毎に、監視回路3を設ければよい。
【0034】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る組電池の監視装置10の全体構成図である。この変形例1では、電圧検出線L2に、第2電力ヒューズ32と直列に第3電力ヒューズ36が設けられている。第3電力ヒューズ36は、第2電力ヒューズ32とインダクタ35との間に設けられる。電圧検出線L2に第3電力ヒューズ36を追加した以外の組電池の監視装置10の構成は、実施の形態に係る組電池の監視装置1と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0035】
第3電力ヒューズ36の定格電流は、第2電力ヒューズ32の定格電流と同一に設定されている。第1電力ヒューズ22の定格電流は、第2電力ヒューズ32および第3電力ヒューズ36の定格電流より小さく設定されている。この変形例1においても、実施の形態と同様に、組電池2(単電池20)に過電圧が生じると、第1電力ヒューズ22の定格電流が第2電力ヒューズ32および第3電力ヒューズ36の定格電流よりも小さく設定されていることにより、第2電力ヒューズ32および第3電力ヒューズ36よりも第1電力ヒューズ22が先に溶断する。これにより、単電池20と第1コネクタ21との間の電気的接続が遮断される。よって、単電池20と監視回路3との電気的接続も遮断される。第1電力ヒューズ22が溶断することにより、監視回路3を過電圧から保護することができる。
【0036】
溶断した第1電力ヒューズ22の端子に高電圧が印加されると、端子間距離が短い第1電力ヒューズにおいて、端子間でアーク放電が生じ得る。溶断した第1電力ヒューズ22の端子間でアーク放電が生じると、電圧検出線L2にアーク電流が流れる。そうすると、第2電力ヒューズ32および第3電力ヒューズ36が順次溶断して、第2コネクタ31と監視回路3との電気的接続が遮断される。これにより、アーク電流から監視回路3が保護される。この変形例1では、第1電力ヒューズ22、第2電力ヒューズ32および第3電力ヒューズ36が溶断すると、実施の形態に対して第3電力ヒューズ36の分だけ、溶断した電力ヒューズ間の端子間距離を長くすることができる。すなわち、電力ヒューズ端子間の絶縁距離を大きくすることができる。ゆえに、溶断した電力ヒューズの端子間でアーク放電が発生することを抑制することができ、監視回路3をアーク電流から保護することができる。
【0037】
変形例1では、第3電力ヒューズ36の定格電流を第2電力ヒューズ32の定格電流と同一としているが、第3電力ヒューズ36の定格電流は、第1電力ヒューズ22の定格電流より大きければ、第2電力ヒューズ32と異なっていてもよい。また、第1電力ヒューズ22より定格電流の大きな電力ヒューズを、電圧検出線L2に3個以上直列に設けるようにしてもよい。これにより、溶断した電力ヒューズ間の端子間距離をさらに長くすることができ、さらに大きな絶縁距離を確保することができる。
【0038】
(変形例2)
図5は、変形例2に係る組電池の監視装置11の全体構成図である。この変形例2では、電圧検出線L1に、第1電力ヒューズ22と直列に第4電力ヒューズ23が設けられている。第4電力ヒューズ23は、電圧検出線L1に設けられ、第1電力ヒューズ22と第1コネクタ21との間に設けられる。電圧検出線L1、第1コネクタ21、第1電力ヒューズ22、および第4電力ヒューズ23は、FPC40に実装されている。第1電力ヒューズ22および第4電力ヒューズ23は、パターンヒューズとしてFPC40に形成されてもよい。電圧検出線L1に第4電力ヒューズ23を追加した以外の組電池の監視装置11の構成は、実施の形態に係る組電池の監視装置1と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0039】
第4電力ヒューズ23の定格電流は、第1電力ヒューズ22の定格電流と同一、または、第1電力ヒューズ22の定格電流よりも小さく設定されている。この変形例2においても、実施の形態と同様に、組電池2(単電池20)に過電圧が生じると、第1電力ヒューズ22の定格電流および第4電力ヒューズ23の定格電流が第2電力ヒューズ32の定格電流よりも小さく設定されていることにより、第2電力ヒューズ32よりも第1電力ヒューズ22および第4電力ヒューズ23が先に溶断する。これにより、単電池20と第1コネクタ21との間の電気的接続が遮断される。よって、単電池20と監視回路3との電気的接続も遮断される。第1電力ヒューズ22および/または第4電力ヒューズ23が溶断することにより、監視回路3を過電圧から保護することができる。
【0040】
さらに、第2電力ヒューズ32より定格電流の小さな電力ヒューズを、電圧検出線L1に3個以上直列に設けるようにしてもよい。これにより、溶断した電力ヒューズ間の端子間距離をさらに長くすることができ、さらに大きな絶縁距離を確保することができる。
【0041】
(他の変形例)
実施の形態においては、電圧検出線L1のそれぞれに第1電力ヒューズ22が設けられる例について説明した。たとえば、ある1つの電圧検出線L1においては、第1電力ヒューズ22を省略してもよい。この場合においても、上記ある1つの電圧検出線L1以外の電圧検出線L1に設けられた第1電力ヒューズ22が溶断することにより、監視回路3に過電流が流れることを抑制することができる。上記により、第1電力ヒューズ22の使用個数を減らすことができる。
【0042】
また、電圧検出線L1には、その定格電流が、第2電力ヒューズ32の定格電流よりも小さくなることを条件として、複数の第1電力ヒューズ22が並列に設けられてもよい。
【0043】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
(I)組電池(2)側に設けた第1コネクタ(21)と、監視回路(3)側に設けた第2コネクタ(31)とを接続し、組電池(2)の状態を監視する組電池の監視装置(1)であって、組電池(2)と第1コネクタ(21)とを接続する第1電圧検出線(L1)に設けられた第1電力ヒューズ(22)と、監視回路(3)と第2コネクタ(31)を接続する第2電圧検出線(L2)に設けられた第2電力ヒューズ(32)とを備え、第1電力ヒューズ(22)の定格電流は、第2電力ヒューズ(32)の定格電流よりも小さく設定される、組電池(2)の監視装置(1)。
【0044】
(II)上記Iにおいて、第1電圧検出線(L1)および第1電力ヒューズ(22)は、組電池(2)に接続されるFPC(フレキシブルプリント基板)(40)に実装されている。
【0045】
この構成によれば、第1電力ヒューズがFPCに実装され、第2電力ヒューズは第2電圧検出線に設けられる。第1電力ヒューズおよび第2電力ヒューズをFCに実装する場合に比べ、FPCの体格(実装面積)を比較的小さくできる。
【0046】
(III)上記IまたはIIにおいて、第2電圧検出線(L2)に、第2電力ヒューズ(32)と直列に第3電力ヒューズ(36)が設けられ、第3電力ヒューズ(36)の定格電流は第1電力ヒューズ(22)の定格電流より大きい。
【0047】
この構成によれば、溶断した電力ヒューズ間の端子間距離を長くすることができ、電力ヒューズ端子間の絶縁距離を大きくできるので、溶断した電力ヒューズの端子間でアーク放電が発生することを抑制することができ、監視回路をアーク電流から保護することができる。
【0048】
(IV)上記I~IIIにおいて、組電池(2)は複数の単電池(20)を電気的に直列に接続したものであり、第1電圧検出線(L1)は、各単電池(20)の出力端子に接続される。
【0049】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1,10,11 監視装置、1A 蓄電装置、1B 電池ECU、2 組電池、3 監視回路、20 単電池、21 第1コネクタ、22 第1電力ヒューズ、23 第4電力ヒューズ、31 第2コネクタ、 32 第2電力ヒューズ、33 ツェナーダイオード、34 コンデンサ、35 インダクタ、36 第3電力ヒューズ、40 FPC(フレキシブルプリント基板)、L1 第1電圧検出線、L2 第2電圧検出線。
図1
図2
図3
図4
図5