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特許7509650部品実装面積の増加を抑えつつ異なる電源仕様に対応した配線板、電源回路およびモータ駆動装置
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  • 特許-部品実装面積の増加を抑えつつ異なる電源仕様に対応した配線板、電源回路およびモータ駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】部品実装面積の増加を抑えつつ異なる電源仕様に対応した配線板、電源回路およびモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240625BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240625BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240625BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/02 C
H05K1/18 A
H02M7/48 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020174591
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065846
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 快
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-004789(JP,A)
【文献】特開2016-035962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/18
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1素子の第1端子および第2端子、並びに、第2素子の第3端子および第4端子の接続に基づいて、異なる電源仕様に対応させる配線板であって、
直流電源の高電位電圧が印加される第1導体と、前記直流電源の低電位電圧が印加される第2導体と、前記直流電源の前記高電位電圧および前記低電位電圧から絶縁され、前記第1導体および前記第2導体の間に設けられた第3導体と、を備え、
前記第1導体は、第1電源仕様および前記第1電源仕様よりも高い第2電源仕様のときに、前記第1素子の前記第1端子を接続する第1接続部と、前記第1電源仕様のときに、前記第2素子の前記第3端子を接続する第2接続部と、を備え、
前記第2導体は、前記第1電源仕様のときに、前記第1素子の前記第2端子を接続する第3接続部と、前記第1電源仕様および前記第2電源仕様のときに、前記第2素子の前記第4端子を接続する第4接続部と、を備え、
前記第3導体は、前記第2電源仕様のときに、前記第1素子の前記第2端子を接続する第5接続部と、前記第2電源仕様のときに、前記第2素子の前記第3端子を接続する第6接続部と、を備え、
前記第1電源仕様のとき、前記第1素子および前記第2素子を前記第1導体と前記第2導体の間に並列に接続し、
前記第2電源仕様のとき、前記第1素子および前記第2素子を前記第3導体を介して前記第1導体と前記第2導体の間に直列に接続し、
前記第1電源仕様のときに使用する前記第1素子および前記第2素子は、前記第2電源仕様のときに使用する前記第1素子および前記第2素子とは端子間の距離が異なるものであり、
前記第1電源仕様のときに使用する前記第1素子の前記第1端子および前記第2端子間の第1距離は、前記第2電源仕様のときに使用する前記第1素子の前記第1端子および前記第2端子間の第2距離よりも長く、
前記第1電源仕様のときに使用する前記第2素子の前記第3端子および前記第4端子間の第3距離は、前記第2電源仕様のときに使用する前記第2素子の前記第3端子および前記第4端子間の第4距離よりも長い、
ことを特徴とする配線板。
【請求項2】
前記第1導体および前記第2導体は、所定の間隙を介して前記第3導体を囲むように設けられ、前記第1接続部および前記第3接続部と前記第4接続部および前記第2接続部は、前記第5接続部および前記第6接続部を結ぶ線分の中心に対して、180°の回転対称の位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項3】
前記第1接続部乃至前記第6接続部は、前記第1端子乃至前記第4端子を前記第1導体乃至前記第3導体のいずれかと電気的に接続するスルーホールである、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線板。
【請求項4】
前記第1導体の前記第1接続部および前記第2導体の前記第3接続部を結ぶ第1線分は、前記第1導体の前記第2接続部および前記第2導体の前記第4接続部を結ぶ第2線分とほぼ平行である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項5】
前記第3導体の前記第5接続部は、前記第1線分上に位置し、
前記第3導体の前記第6接続部は、前記第2線分上に位置する、
ことを特徴とする請求項に記載の配線板。
【請求項6】
前記第1距離は、前記第3距離に等しく、
前記第2距離は、前記第4距離に等しい、
ことを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項7】
前記第1導体、前記第2導体および前記第3導体は、それぞれ樹脂により一体成型された金属板である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項8】
前記第1導体、前記第2導体および前記第3導体は、それぞれ一層または多層の金属配線パターンである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項9】
前記第1素子および前記第2素子は、第1電解コンデンサおよび第2電解コンデンサであり、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の配線板と、前記第1電解コンデンサおよび前記第2電解コンデンサと、を備える、
ことを特徴とする電源回路。
【請求項10】
前記第2電源仕様の電圧は、前記第1電源仕様の電圧のほぼ2倍である、
ことを特徴とする請求項に記載の電源回路。
【請求項11】
交流電源電圧からコンバータにより生成された直流電圧を受け取り、前記第1電解コンデンサおよび前記第2電解コンデンサで平滑する請求項または請求項10に記載の電源回路と、
前記電源回路からの前記直流電圧に基づいて、モータを駆動する交流電力を生成する複数のパワー素子と、を備える、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項12】
前記モータは、工作機械、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、或いは、各種ロボット内に設けられたモータである、
ことを特徴とする請求項11に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装面積の増加を抑えつつ異なる電源仕様に対応した配線板、電源回路およびモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のモータ駆動装置メーカでは、一般的に入力電源仕様に応じたラインアップを持つことが多い。すなわち、工作機械、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、或いは、各種ロボット内に設けられたモータを駆動するモータ駆動装置は、例えば、それら工作機械やロボットが使用される各国の電源仕様(三相200Vや三相400Vなど)に対応したものが求められる。
【0003】
そのため、モータ駆動装置の内部で使用する配線板(電源回路)は、製造を合理化し価格を低廉化するために、電源仕様に依存することなく共通化するのが好ましい。しかしながら、電源回路の主回路平滑用の電解コンデンサ(コンバータの直流出力電圧を平滑化するための電解コンデンサ)は、低い入力電源仕様(例えば、三相200V入力)では1個で耐圧を満足するが、高い入力電源仕様(例えば、三相400V入力)の場合は2個直列に接続して耐圧を満たす必要があり、配線板の共通化を難しくしている。
【0004】
ところで、従来、電解コンデンサなどの複数の電源素子を接続する配線板を使用した電源回路(モータ駆動装置)としては、様々なものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-097222号公報
【文献】国際公開第2015/037537号
【文献】特開2014-036509号公報
【文献】特開2010-288415号公報
【文献】特開2007-312566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、例えば、三相200V入力および三相400V入力といった異なる電源仕様に対して、共通の配線板(電源回路,モータ駆動装置)を使用するのは難しいといった問題がある。これに対して、従来、金属製のバスバー(bus bar)を用いて、2つの電解コンデンサを並列接続と直列接続に切り替えて使用する手法が提案されている。
【0007】
しかしながら、バスバーを使用して電源仕様によらず配線板を共通化するものは、バスバーを実装するために占有面積(実装面積)が増加し、さらに、バスバーにより電流経路が延伸するために電解コンデンサの高周波特性が劣化するといった問題がある。
【0008】
ここで、電解コンデンサの高周波特性の劣化は、例えば、交流電源から供給された交流電圧(電力)をコンバータ(整流器)により直流電圧に一旦変換し、その直流電圧を平滑化するために使用する電解コンデンサなどで問題になる。なお、電解コンデンサにより平滑化された直流電圧は、例えば、インバータにより交流電圧に変換され、その交流電圧がモータ駆動電圧としてモータに供給される。
【0009】
本明細書では、配線板に取り付ける素子として2つの電解コンデンサを例にとって説明するが、本発明の適用において、使用する素子(第1素子および第2素子)は、同じ規格(同一の耐圧および容量)の2つの電解コンデンサに限定されるものではなく、適用可能な規格の異なる電解コンデンサであってもよく、さらに、電解コンデンサ以外の素子であってもよい。
【0010】
本発明に係る実施形態は、上述した課題に鑑み、部品実装面積の増加を抑えつつ異なる電源仕様に対応した配線板、電源回路およびモータ駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、第1素子の第1端子および第2端子、並びに、第2素子の第3端子および第4端子の接続に基づいて、異なる電源仕様に対応させる配線板であって、直流電源の高電位電圧が印加される第1導体と、前記直流電源の低電位電圧が印加される第2導体と、前記直流電源の前記高電位電圧および前記低電位電圧から絶縁され、前記第1導体および前記第2導体の間に設けられた第3導体と、を備える配線板が提供される。
【0012】
前記第1導体は、第1電源仕様および前記第1電源仕様よりも高い第2電源仕様のときに、前記第1素子の前記第1端子を接続する第1接続部と、前記第1電源仕様のときに、前記第2素子の前記第3端子を接続する第2接続部と、を備える。前記第2導体は、前記第1電源仕様のときに、前記第1素子の前記第2端子を接続する第3接続部と、前記第1電源仕様および前記第2電源仕様のときに、前記第2素子の前記第4端子を接続する第4接続部と、を備える。前記第3導体は、前記第2電源仕様のときに、前記第1素子の前記第2端子を接続する第5接続部と、前記第2電源仕様のときに、前記第2素子の前記第3端子を接続する第6接続部と、を備える。
【0013】
前記第1電源仕様のとき、前記第1素子および前記第2素子を前記第1導体と前記第2導体の間に並列に接続し、前記第2電源仕様のとき、前記第1素子および前記第2素子を前記第3導体を介して前記第1導体と前記第2導体の間に直列に接続する。前記第1電源仕様のときに使用する前記第1素子および前記第2素子は、前記第2電源仕様のときに使用する前記第1素子および前記第2素子とは端子間の距離が異なるものであり、前記第1電源仕様のときに使用する前記第1素子の前記第1端子および前記第2端子間の第1距離は、前記第2電源仕様のときに使用する前記第1素子の前記第1端子および前記第2端子間の第2距離よりも長い。前記第1電源仕様のときに使用する前記第2素子の前記第3端子および前記第4端子間の第3距離は、前記第2電源仕様のときに使用する前記第2素子の前記第3端子および前記第4端子間の第4距離よりも長い。
【発明の効果】
【0014】
開示の配線板、電源回路およびモータ駆動装置によれば、部品実装面積の増加を抑えつつ異なる電源仕様に対応させることができるという効果を奏する。
【0015】
本発明の目的および効果は、特に請求項において指摘される構成要素および組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。前述の一般的な説明および後述の詳細な説明の両方は、例示的および説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、従来の電源回路の一例を説明するための図(その1)である。
図2図2は、従来の電源回路の一例を説明するための図(その2)である。
図3図3は、第1実施例に係る電源回路の一例を説明するための図である。
図4図4は、図3に示す電源回路の具体例を示す図である。
図5図5は、第2実施例に係る電源回路の一例を説明するための図である。
図6図6は、図5に示す電源回路の具体例を示す図である。
図7図7は、第1実施例の電源回路の構成例を説明するための図である。
図8図8は、図2を参照して説明した従来の電源回路の一例と、第1実施例および第2実施例の電源回路の例における実装面積を比較して示す図である。
図9図9は、図2を参照して説明した従来の電源回路の一例と、第1実施例および第2実施例の電源回路の例におけるリップル電流経路を比較して示す図(その1)である。
図10図10は、図2を参照して説明した従来の電源回路の一例と、第1実施例および第2実施例の電源回路の例におけるリップル電流経路を比較して示す図(その2)である。
図11図11は、第1実施例および第2実施例の電源回路を使用したモータ駆動装置の一実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、配線板、電源回路およびモータ駆動装置の実施例を詳述する前に、従来の電源回路およびその問題点を、図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、従来の電源回路(配線板)の一例を説明するための図であり、三相200V入力の電源仕様および三相400V入力の電源仕様における、2つの電解コンデンサの接続を説明するためのものである。
【0018】
ここで、図1(a)は、2つの電解コンデンサを並列および直列に接続した状態を示す回路図であり、図1(b)は、2つの電解コンデンサの接続をバスバーにより切り替える様子を説明するための図である。また、図2(a)は、従来の電源回路に使用する2つの電解コンデンサおよび2本のバスバーを示す斜視図であり、図2(b)は、2つの電解コンデンサ、および、2本または1本のバスバーを配線板に取り付けた様子を上面から見た図である。
【0019】
図1(a),図1(b)および図2(a),図2(b)において、参照符号E01,E02は電解コンデンサ、BB,BB11,BB12,BB2は金属製のバスバー、RS0は配線板、TH01~TH04およびTH11~TH14は配線板に開けられたスルーホール、そして、P0,N0,CL,CHは、配線板に形成された金属配線パターンなどの導体を示す。なお、電解コンデンサE01,E02は、耐圧が450Vで、同じ容量(例えば、1200μF)を有しているものとする。
【0020】
図1(a)の左図に示されるように、例えば、三相200V入力の電源仕様(第1電源仕様)のときは、耐圧450Vの2つの電解コンデンサE01およびE02を、直流電源の高電位電圧が印加される高電位導体P0と直流電源の低電位電圧が印加される低電位導体N0の間に並列に接続する。これにより、電解コンデンサE01およびE02を、三相200V入力の電源仕様に対して余裕を持たせて、すなわち、200V×√2+リップル電圧よりも十分に大きい耐圧450Vで、2つの電解コンデンサE01,E02の容量を合算した容量として、導体P0と導体N0の間に接続する。
【0021】
また、図1(a)の右図に示されるように、例えば、三相400V入力の電源仕様(第2電源仕様)のときは、耐圧450Vの2つの電解コンデンサE01およびE02を、導体P0と導体N0の間に直列に接続する。これにより、電解コンデンサE01およびE02を、三相400V入力の電源仕様に対して余裕を持たせて、すなわち、耐圧900Vで、1つの電解コンデンサE01(E02)の容量として、導体P0と導体N0の間に接続する。
【0022】
ここで、図1(b)に示されるように、第1電源仕様のときは、スルーホールTH11とTH14をバスバーBB11で接続すると共に、スルーホールTH13とTH12をバスバーBB12で接続し、また、第2電源仕様のときは、スルーホールTH13とTH14をバスバーBB2で接続する。
【0023】
具体的に、図2(b)に示されるように、例えば、配線板RS0に対して、4つの長方形状の導体P0,CH,CL,N0を設け、導体P0に開けたスルーホールTH01および導体CHに開けたスルーホールTH03を介して、電解コンデンサE01の正極端子および負極端子を導体P0および導体CHに接続する。さらに、導体CLに開けたスルーホールTH04および導体N0に開けたスルーホールTH02を介して、電解コンデンサE02の正極端子および負極端子を導体CLおよび導体N0に接続する。
【0024】
すなわち、4つの導体P0,CH,CL,N0にそれぞれ開けたスルーホールTH11,TH13,TH14,TH12に対して、2本のバスバーBB11,BB12、或いは、1本のバスバーBB2を使用して、2つの電解コンデンサE01,E02を、導体P0とN0の間に、並列に、或いは、直列に切り替えて接続する。これにより、三相200V入力および三相400V入力の異なる電源仕様に対して、同一の配線板RS0を使用することが可能になる。
【0025】
上述した従来例では、同一の配線板RS0を異なる電源仕様に対応させるために、図2(a)に示されるように、2つの電解コンデンサE01,E02の他に、複数のバスバーBBが必要になる。具体的に、配線板RS0において、スルーホールTH11とTH14、TH13とTH12、および、TH13とTH14の距離がすべて等しい場合は、同じ長さのバスバーBBを2本または1本差し替えて使用し、また、スルーホールTH11とTH14およびTH13とTH12の距離が、スルーホールTH13とTH14の距離と異なる場合には、さらに、異なる長さのバスバーBB(BB2)を準備する必要がある。
【0026】
上述した従来例では、図2(b)から明らかなように、配線板RS0に開ける4つのスルーホールTH11~TH14により、電解コンデンサE01,E02を配線板RS0に実装するための面積が増大する。また、バスバーBBという追加の部品が必要になるだけでなく、バスバーBBをスルーホールTH11~TH14に差し込む作業も必要になる。
【0027】
さらに、例えば、バスバーBB(BB11,BB12およびBB2)を1種類に共通化するために、スルーホールTH11とTH14、TH13とTH12、および、TH13とTH14の距離を一致させると、バスバーBBの差し間違いが生じる虞れがある。その上、バスバーBBによる接続で電流経路が延伸するため、回路のインピーダンスが増加して電解コンデンサの高周波特性が劣化するといった問題も生じる。なお、このような問題は、配線板に取り付ける素子が電解コンデンサの場合にだけ生じるものではなく、様々な素子を配線板に取り付ける場合も生じ得る。
【0028】
以下、配線板、電源回路およびモータ駆動装置の実施例を、添付図面を参照して詳述する。図3は、第1実施例に係る電源回路(配線板)の一例を説明するための図であり、図3(a)は、2つの電解コンデンサを底面から見た図、また、図3(b)および図3(c)は、前述した図1(a)および図2(b)に対応する図である。
【0029】
図3(a)~図3(c)において、参照符号E1,E2,E1',E2'は電解コンデンサ、RSは配線板、TH1~TH6は配線板に開けられたスルーホール、そして、P,N,Cは、配線板に形成された導体を示す。なお、電解コンデンサE1,E2,E1',E2'は、耐圧が450Vで、同じ容量(例えば、1200μF)を有しているものとする。
【0030】
図3(a)に示されるように、本第1実施例では、端子間の距離が異なる2種類の電解コンデンサE1,E2およびE1',E2'を使用する。すなわち、電解コンデンサE1,E2は、正極端子T11,T21と負極端子T12,T22の距離がL1とされ、また、電解コンデンサE1',E2'は、正極端子T11',T21'と負極端子T12',T22'の距離がL1よりも短いL2とされている。
【0031】
図3(b)および図3(c)に示されるように、本第1実施例において、直流電源の高電位電圧が印加される高電位導体(第1導体)Pと直流電源の低電位電圧が印加される低電位導体(第2導体)Nの間に、2つの電解コンデンサを並列に接続する場合は、電解コンデンサE1,E2を使用し、また、2つの電解コンデンサを直列に接続する場合は、電解コンデンサE1',E2'を使用する。
【0032】
そして、例えば、三相200V入力の電源仕様(第1電源仕様)のとき、第1導体Pと第2導体Nの間に、端子間距離が長い2つの電解コンデンサE1およびE2を並列に接続する。また、例えば、三相400V入力の電源仕様(第2電源仕様)のとき、第1導体Pと第2導体Nの間に、端子間距離が短い2つの電解コンデンサE1'およびE2'を直列に接続する。なお、第2電源仕様の場合、直流電源の高電位電圧および低電位電圧から絶縁され、第1導体Pおよび第2導体Nの間に設けられた中間電位導体(第3導体)Cを使用して、第1導体Pと第2導体Nの間に、電解コンデンサE1',E2'を直列に接続する。すなわち、第1導体Pおよび第2導体Nは、所定の間隙を介して第3導体Cを囲むように設けるのが好ましい。
【0033】
第1導体Pには、2つのスルーホールTH1(第1接続部)およびTH2(第2接続部)が設けられ、また、第2導体Nには、2つのスルーホールTH3(第3接続部)およびTH4(第4接続部)が設けられている。さらに、第3導体Cには、2つのスルーホールTH5(第5接続部)およびTH6(第5接続部)が設けられている。すなわち、第1導体P,第2導体Nおよび第3導体Cが形成された配線板RSには、6つのスルーホールTH1~TH6が開けられている。
【0034】
ここで、図3(a)および図3(c)に示されるように、配線板RSにおける第1接続部TH1と第3接続部TH3の距離、および、第2接続部TH2と第4接続部TH4の距離は、第1電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1,E2の端子間距離L1とされている。また、配線板RSにおける第1接続部TH1と第5接続部TH5の距離、および、第4接続部TH4と第6接続部TH6の距離は、第2電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1',E2'の端子間距離L2とされている。
【0035】
すなわち、第1電源仕様(例えば、三相200V入力の電源仕様)のとき、電解コンデンサ(第1素子)E1の第1端子(正極端子)T11を第1導体(高電位導体)Pの第1接続部(スルーホール)TH1に挿入し、電解コンデンサE1の第2端子(負極端子)T12を第2導体(低電位導体)Nの第3接続部TH3に挿入する。さらに、第1電源仕様のとき、電解コンデンサ(第2素子)E2の第3端子(正極端子)T21を第1導体Pの第2接続部TH2に挿入し、電解コンデンサE2の第4端子(負極端子)T22を第2導体Nの第4接続部TH4に挿入する。そして、はんだ付け(フロー方式)などにより、電解コンデンサE1,E2の端子T11,T12,T21,T22を導体P,Nに接続(電気的に接続)する。
【0036】
また、第2電源仕様(例えば、三相400V入力の電源仕様)のとき、電解コンデンサ(第1素子)E1'の第1端子(正極端子)T11'を第1導体Pの第1接続部TH1に挿入し、電解コンデンサE1'の第2端子(負極端子)T12'を第3導体Cの第5接続部TH5に挿入する。さらに、第2電源仕様のとき、電解コンデンサ(第2素子)E2'の第3端子(正極端子)T21'を第3導体Cの第6接続部TH6に挿入し、電解コンデンサE2'の第4端子(負極端子)T22'を第2導体Nの第4接続部TH4に挿入する。そして、はんだ付けなどにより電解コンデンサE1',E2'の端子T11',T12',T21',T22'を導体P,N,Cに接続する。
【0037】
すなわち、第1電源仕様および第2電源仕様の両方において、第1素子E1,E1'の第1端子T11,T11'は、第1接続部TH1により第1導体Pに接続され、第2素子E2,E2'の第4端子T22,T22'は、第4接続部TH4により第2導体Nに接続される。
【0038】
そして、第1電源仕様のとき、第1素子E1の第2端子T12は、第3接続部TH3により第2導体Nに接続され、第2素子E2の第3端子T21は、第2接続部TH2により第1導体Pに接続される。これにより、第1電源仕様のとき、第1素子E1および第2素子E2が、第1導体Pと第2導体Nの間に並列に接続される。
【0039】
また、第2電源仕様のとき、第1素子E1'の第2端子T12'は、第5接続部TH5により第3導体Cに接続され、第2素子E2'の第3端子T21'は、第6接続部TH6により第3導体Cに接続される。これにより、第2電源仕様のとき、第1素子E1'および第2素子E2'が、第1導体Pと第2導体Nの間に第3導体Cを介して直列に接続される。
【0040】
ここで、第1電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1,E2の端子間距離L1と、第2電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1',E2'の端子間距離L2の比率は、例えば、L1:L2=10:6程度にするのが好ましい。すなわち、L1:L2=10:5に設定すると、第5接続部TH5が、第1接続部TH1と第3接続部TH3を結ぶ線分の中央に位置することになるため、第2電源仕様のとき、例えば、電解コンデンサE1'の端子T11',T12'が、接続部TH1,TH5および接続部TH5,TH3のいずれにも挿入することが可能になるため、誤接続が生じる虞がある。そこで、電解コンデンサE1'の端子間距離L2は、電解コンデンサE1'の端子T11',T12'が必ず接続部TH1,TH5にしか挿入できないように、電解コンデンサE1の端子間距離L1の半分からある程度ずらして誤接続が生じないようにするのが好ましい。
【0041】
また、配線板RSにおいて、第1導体Pおよび第2導体Nは、例えば、配線板の絶縁規格に基づく所定の間隙を介して第3導体Cを囲むように設けるのが好ましい。さらに、配線板RSにおいて、対称性を維持して実装面積を低減するために、例えば、第1接続部TH1および3接続部TH3と第4接続部TH4および2接続部TH2は、第5接続部TH5および第6接続部TH6を結ぶ線分LS0の中心CPに対して、180°の回転対称の位置に配置するのが好ましい。また、第1導体Pの第1接続部TH1および第2導体Nの第3接続部TH3を結ぶ線分(第1線分)LS1は、第1導体Pの第2接続部TH2および第2導体Nの第4接続部TH4を結ぶ線分(第2線分)LS2とほぼ平行で、さらに、第3導体Cの第5接続部TH5は、第1線分LS1上に位置し、第3導体Cの第6接続部TH6は、第2線分LS2上に位置するのが好ましい。
【0042】
図4は、図3に示す電源回路の具体例を示す図であり、図4(a)は、図3(a)に対応し、図4(b)は、図3(c)に対応する。図4(a)および図4(b)に示されるように、例えば、第1電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1,E2と、第2電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1',E2'は、外径が40mmと等しく、また、耐圧および容量も等しい(耐圧450V、容量1200μF)。
【0043】
ここで、第1電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1,E2の端子間距離(T11,T21とT12,T22の間の距離)は30mmで、第2電源仕様のときに使用する電解コンデンサE1',E2'の端子間距離(T11',T21'とT12',T22'の間の距離)は18mmとされている。そして、図3を参照して説明したように、第1電源仕様と第2電源仕様に応じて、2つの電解コンデンサE1,E2またはE1',E2'を選択し、対応する接続部(スルーホール)TH1~TH6を介して導体P,N,Cに接続する。
【0044】
図5は、第2実施例に係る電源回路(配線板)の一例を説明するための図である。図3および図4を参照して説明した第1実施例の電源回路では、第1電源仕様と第2電源仕様に応じて、異なる端子間距離の電解コンデンサE1,E2またはE1',E2'を選択して使用したが、本第2実施例の電源回路では、第1電源仕様および第2電源仕様で同じ端子間距離Lの電解コンデンサE1,E2を使用する。図5(a)は、2つの電解コンデンサ(第1素子および第2素子)E1,E2を底面から見た図、また、図5(b)および図5(c)は、前述した第1実施例の図3(b)および図3(c)に対応する図である。
【0045】
図5(c)と前述した図3(c)の比較から明らかなように、第2実施例の電源回路において、第1電源仕様(例えば、三相200V入力の電源仕様)および第2電源仕様(例えば、三相400V入力の電源仕様)の両方で、第1素子E1の第1端子T1は、第1接続部(スルーホール)TH1により第1導体(高電位導体)Pに接続され、第2素子E2の第4端子T2は、第4接続部TH4により第2導体(低電位導体)Nに接続される。
【0046】
そして、第1電源仕様のとき、第1素子E1の第2端子T2は、第3接続部TH3により第2導体Nに接続され、第2素子E2の第3端子T1は、第2接続部TH2により第1導体Pに接続される。これにより、第1素子E1および第2素子E2が、第1導体Pと第2導体Nの間に並列に接続される。
【0047】
また、第2電源仕様のとき、第1素子E1の第2端子T2は、第5接続部TH5により第3導体Cに接続され、第2素子E2の第3端子T1は、第6接続部TH6により第3導体Cに接続される。これにより、第1素子E1および第2素子E2が、第1導体Pと第2導体Nの間に第3導体Cを介して直列に接続される。
【0048】
図5(a)および図5(c)に示されるように、配線板RSにおける第1接続部TH1と第3接続部TH3の距離、第1接続部TH1と第5接続部TH5の距離、第4接続部TH4と第2接続部TH2の距離、および、第4接続部TH4と第6接続部TH6の距離は、それぞれ電解コンデンサE1,E2の端子間距離Lとされている。また、第1接続部TH1と第3接続部TH3を結ぶ線分(第3線分)と、第1接続部TH1と第5接続部TH5を結ぶ線分(第4線分)がなす角(第1鋭角)は、第4接続部TH4と第2接続部TH2を結ぶ線分(第5線分)と、第4接続部TH4と第6接続部TH6の距離を結ぶ線分(第6線分)がなす角(第2鋭角)と等しく、例えば、20°程度の角度にするのが好ましい。
【0049】
ここで、図5(c)と前述した図3(c)の比較から明らかなように、配線板RSにおいて、第1導体Pおよび第2導体Nは、例えば、配線板の絶縁規格に基づく所定の間隙を介して第3導体Cを囲むように設けるのが好ましい。また、配線板RSにおいて、対称性を維持して実装面積を低減するために、例えば、第1接続部TH1および3接続部TH3と第4接続部TH4および2接続部TH2は、第5接続部TH5および第6接続部TH6を結ぶ線分LS0の中心CPに対して、180°の回転対称の位置に配置するのが好ましい。
【0050】
図6は、図5に示す電源回路の具体例を示す図であり、図6(a)は、図5(a)に対応し、図6(b)は、図5(c)に対応する。なお、図6(c)は、スルーホール(接続部)の絶縁距離を説明するための図である。図6(a)および図6(c)に示されるように、第2実施例が適用される電源回路(配線板)において、使用する2つの電解コンデンサE1,E2は、第1電源仕様および第2電源仕様で同じものであり、例えば、外径が40mmで、端子間距離(T1とT2の間の距離)が20mmとされている。なお、耐圧および容量は、例えば、第1実施例と同様に、等しいものが使用される。
【0051】
そして、第1電源仕様(例えば、三相200V入力)のとき、第1電解コンデンサE1を接続部TH1とTH3の間に接続し、第2電解コンデンサE2を接続部TH2とTH4の間に接続し、これにより、電解コンデンサE1およびE2を導体Pと導体Nの間に、並列に接続する。
【0052】
また、第2電源仕様(例えば、三相400V入力)のとき、第1電解コンデンサE1を接続部TH1とTH5の間に接続し、第2電解コンデンサE2を接続部TH4とTH6の間に接続し、これにより、電解コンデンサE1およびE2を、導体Pと導体Nの間に導体Cを介して直列に接続する。
【0053】
ここで、配線板RSにおいて、導体P-C間並びに導体C-N間には、例えば、規格上3mmの空隙を設けて電気的な絶縁を取る必要がある。また、図6(c)に示されるように、スルーホール(接続部)TH1~TH6のランド径(ランドの外径)を3.4mmとすると、例えば、導体Nに設けた第3接続部TH3と導体Cに設けた第5接続部TH5の距離、並びに、導体Pに設けた第2接続部TH2と導体Cに設けた第6接続部TH6の距離は、それぞれ6.4mm以上に設定する必要がある。なお、これらの値は、単なる例であり、使用する電源電圧や適用する配線板の仕様などにより、様々に変化するのは言うまでもない。
【0054】
上述したように、第1接続部TH1と第3接続部TH3を結ぶ第3線分と、第1接続部TH1と第5接続部TH5を結ぶ第4線分がなす第1鋭角、並びに、第4接続部TH4と第2接続部TH2を結ぶ第5線分と、第4接続部TH4と第6接続部TH6の距離を結ぶ第6線分がなす第2鋭角は、より小さく(より鋭く)設定することにより実装面積を低減することができるが、適用する配線板RSの絶縁規格(仕様)などに基づいて、できるだけ小さい角度に決定するのが好ましい。すなわち、上記第1鋭角および第2鋭角の大きさは、適用する配線板(電源回路)における導体P,N,C間や絶縁部TH1~TH6の規格などに基づいて適切な値(例えば、15°~30°程度)に設定されるが、より小さくした方が実装面積の低減につながることになる。
【0055】
図7は、第1実施例の電源回路(配線板)の構成例を説明するための図であり、図7(a)は、配線板RSを上面から見た図である。図7(b)および図7(c)は、第1導体P,第2導体Nおよび第3導体Cが、それぞれ所定の厚さおよび形状を有する銅やアルミニウムなどの金属板とされ、これらの金属板を樹脂により一体成型して構成された配線板RSを示す。図7(d)は、第1導体P,第2導体Nおよび第3導体Cが、それぞれ所定の形状を有する多層の金属配線パターンとして構成された配線板RSを示す。
【0056】
ここで、図7(b)は、第1電源仕様(例えば、三相200V入力)のとき、図7(a)の*L-*L線から見た第1および第2電解コンデンサE1,E2の端子と導体の接続を説明するための図であり、図7(c)は、第2電源仕様(例えば、三相400V入力)のとき、図7(a)の*L-*L線から見た第1および第2電解コンデンサE1',E2'の端子と導体の接続を説明するための図である。なお、図7(d)は、図7(b)に対応する図である。
【0057】
まず、第1電源仕様のとき、図7(b)に示されるように、端子間距離の長い2つの電解コンデンサE2およびE1を使用し、それぞれの端子T21,T22およびT11,T12を、対応する接続部TH2,TH4およびTH1,TH3により、第1導体P,第2導体Nに接続するようになっている。これにより、電解コンデンサE1,E2は、第1導体Pと第2導体Nの間に並列に接続される。このとき、第3導体Cは、2つの電解コンデンサE2およびE1の端子間に、絶縁された状態で放置されることになる。
【0058】
次に、第2電源仕様のとき、図7(c)に示されるように、端子間距離の短い2つの電解コンデンサE2'およびE1'を使用し、第2電解コンデンサE2'の第4端子T22'は、第4接続部TH4により第2導体Nに接続され、第2電解コンデンサE2'の第3端子T21'は、第6接続部TH6により第3導体Cに接続される。また、第1電解コンデンサE1'の第1端子T11'は、第1接続部TH1により第1導体Pに接続され、第1電解コンデンサE1'の第2端子T12'は、第5接続部TH5により第2導体Cに接続される。これにより、電解コンデンサE1',E2'は、第1導体Pと第2導体Nの間に、第3導体Cを介して直列に接続される。
【0059】
上述したように、図7(d)は、図7(b)に対応する図であり、図7(b)における金属板の導体P,N,Cが、多層の配線パターンWPにより構成された配線板RSを示す。なお、図7(d)では、インピーダンスを下げるために、積層された同じ形状を有する複数の配線パターンを使用して2つの電解コンデンサE1,E2(E1',E2')の接続を切り替えているが、適用する配線板の規格により、例えば、一層の金属配線パターンを使用してもよいのは言うまでもない。
【0060】
図8は、図2を参照して説明した従来の電源回路の一例と、第1実施例および第2実施例の電源回路の例における実装面積を比較して示す図である。ここで、図8(a)は、従来例を示す図2(b)に対応し、図8(b)は、第1実施例を示す図3(c)に対応し、そして、図8(c)は、第2実施例を示す図5(c)に対応する。なお、図8(a)~図8(c)において、電解コンデンサE01,E02,E1,E2,E1',E2'の外径を40mm、バスバーBB11,BB12の長さを10mm、そして、導体P-C間並びに導体C-N間の絶縁距離を3mmとする。
【0061】
このとき、それぞれの図8(a),図8(b),図8(c)において太い破線で囲んだ部分の実装面積(占有面積)SS0,SS1,SS2は、それぞれ、SS0=38.4cm2,SS1=35.9cm2,SS2=35.9cm2になる。すなわち、図8(b)に示す第1実施例および図8(c)に示す第2実施例によれば、図8(a)に示す従来例よりも、実装面積を6.5%程度削減することが可能なのが分かる。
【0062】
すなわち、図8(a)~図8(c)において、各導体P,N,C;P0,N0,CH,CLのサイズやバスバーBB11,BB12,BB2の大きさなどは、単なる例であるが、第1および第2実施例による実装面積SS1およびSS2は、従来例の実装面積SS0よりも低減することが可能なのが分かる。なお、各図におけるそれぞれの寸法や大きさは、単なる例であり、様々な変形および変更が可能なのは言うまでもない。また、本明細書では、耐圧および容量が等しい2つの電解コンデンサを例として説明しているが、対象とする素子は、適用可能であれば、規格の異なる電解コンデンサでもよく、また、電解コンデンサ以外の素子であってもよいのは、前述した通りである。
【0063】
図9および図10は、図2を参照して説明した従来の電源回路の一例と、第1実施例および第2実施例の電源回路の例におけるリップル電流経路(電流経路)を比較して示す図である。ここで、図9(a)~図9(c)は、三相200V入力の電源仕様(第1電源仕様)のときの電流経路を示し、図10(a)~図10(c)は、三相400V入力の電源仕様(第2電源仕様)のときの電流経路を示す。また、図9(a)および図10(a)は、従来の電源回路の一例のものであり、図9(b)および図10(b)は、第1実施例の電源回路の一例のものであり、そして、図9(c)および図10(c)は、第2実施例の電源回路の一例のものである。なお、図9(a)~図9(c)および図10(a)~図10(c)において、電流経路は、それぞれ太い破線の矢印で示されている。
【0064】
第1電源仕様のとき、図9(a)に示されるように、従来の電源回路の一例において、第1電解コンデンサE01の正極端子には、高電位電源側から接続部TH01に向かう電流経路があり、負極端子には、低電位電源側から接続部TH12,バスバーBB12,接続部TH13を経由して接続部TH03に向かう電流経路がある。また、第2電解コンデンサE02の正極端子には、高電位電源側から接続部TH11,バスバーBB11,接続部TH14を経由して接続部TH04に向かう電流経路があり、負極端子には、低電位電源側から接続部TH02に向かう電流経路がある。
【0065】
これに対して、第1電源仕様のとき、図9(b)に示されるように、第1実施例の電源回路の一例において、第1電解コンデンサE1の正極端子には、高電位電源側から接続部TH1に向かう電流経路があり、負極端子には、低電位電源側から接続部TH3に向かう電流経路がある。また、第2電解コンデンサE2の正極端子には、高電位電源側から接続部TH2に向かう電流経路があり、負極端子には、低電位電源側から接続部TH4に向かう電流経路がある。
【0066】
また、第1電源仕様のとき、図9(c)に示されるように、第2実施例の電源回路の一例において、第1電解コンデンサE1の正極端子には、高電位電源側から接続部TH1に向かう電流経路があり、負極端子には、低電位電源側から接続部TH3に向かう電流経路がある。また、第2電解コンデンサE2の正極端子には、高電位電源側から接続部TH2に向かう電流経路があり、負極端子には、低電位電源側から接続部TH4に向かう電流経路がある。
【0067】
ここで、図9(a)と、図9(b)および図9(c)の比較から明らかなように、図9(a)に示す従来の電源回路の一例における電流経路は、図9(b)に示す第1実施例の電源回路の一例における電流経路および図9(c)に示す第2実施例の電源回路の一例における電流経路よりも長くなっていることが分かる。すなわち、図9(a)に示す従来の電源回路の一例では、導体CLおよび導体CHは、それぞれバスバーBB11およびBB12を介して導体P0および導体N0に接続されるため電流経路が長くなり、これがインダクタンス成分となって、電解コンデンサE01およびE02の高周波特性を悪化させていた。これに対して、図9(b)に示す第1実施例の電源回路の一例、および、図9(c)に示す第2実施例の電源回路の一例は、図9(a)に示すバスバーを経由することなく電流経路が形成され、さらに、基板配線(前述した図7(b)および図7(c)に示す金属板、並びに、図7(d)に示す多層の金属配線パターンを含む)の最短経路で電流が流れるため、図9(a)に示す従来例に対して、電解コンデンサE1,E2の高周波特性を改善させることができる。
【0068】
次に、第2電源仕様のとき、図10(a)に示されるように、従来の電源回路の一例において、第1電解コンデンサE01の正極端子には、高電位電源側から接続部TH01に向かう電流経路(リップル電流経路)IP01があり、第2電解コンデンサE02の負極端子には、低電位電源側から接続部TH02に向かう電流経路IP02があり、そして、第1電解コンデンサE01の負極端子と第2電解コンデンサE02の正極端子間には、接続部TH13,バスバーBB2,接続部TH14を経由する電流経路IP03がある。
【0069】
これに対して、第2電源仕様のとき、図10(b)に示されるように、第1実施例の電源回路の一例において、第1電解コンデンサE1'の正極端子には、高電位電源側から接続部TH1に向かう電流経路IP1'があり、第2電解コンデンサE2'の負極端子には、低電位電源側から接続部TH4に向かう電流経路IP2'があり、そして、第1電解コンデンサE1'の負極端子と第2電解コンデンサE2'の正極端子間には、電流経路IP3'がある。また、第2電源仕様のとき、図10(c)に示されるように、第2実施例の電源回路の一例において、第1電解コンデンサE1の正極端子には、高電位電源側から接続部TH1に向かう電流経路IP1があり、第2電解コンデンサE2の負極端子には、低電位電源側から接続部TH4に向かう電流経路IP2があり、そして、第1電解コンデンサE1の負極端子と第2電解コンデンサE2の正極端子間には、電流経路IP3がある。
【0070】
図10(a)と、図10(b)および図10(c)の比較から明らかなように、第2電源仕様においても、図10(a)に示す従来の電源回路の一例における電流経路IP01~IP03の合計は、図10(b)に示す第1実施例の電源回路の一例における電流経路IP1'~IP3'の合計および図10(c)に示す第2実施例の電源回路の一例における電流経路IP1~IP3の合計よりも長くなっている。また、図10(a)に示す従来の電源回路の一例では、導体CLおよび導体CHは、バスバーBB2を介して接続されるため、電流経路が長くなり、これがインダクタンス成分になって、電解コンデンサE01およびE02の高周波特性を悪化させていた。
【0071】
これに対して、図10(b)に示す第1実施例の電源回路の一例、および、図10(c)に示す第2実施例の電源回路の一例は、上述した第1電源仕様と同様に、第2電源仕様においても、図10(a)に示すバスバーを経由することなく電流経路が形成され、さらに、基板配線の最短経路で電流が流れるため、図10(a)に示す従来例に対して、電解コンデンサE1,E2(E1',E2')の高周波特性を改善させることができる。このように、本実施形態の電源回路(配線板)によれば、素子を搭載する実装面積の増加を抑えるだけでなく、素子の電気的な特性の低下も抑制することが可能になる。
【0072】
図11は、第1実施例および第2実施例の電源回路を使用したモータ駆動装置の一実施形態を説明するための図である。図100において、参照符号10は電源回路、11a,11b,12a,12b,13a,13bはパワー素子、20はモータ、そして、100はモータ駆動装置を示す。本実施形態のモータ駆動装置100は、例えば、三相400Vや三相200Vといった異なる電源仕様の交流電圧を受け取って直流電圧(電力)DCを出力するコンバータの出力を受け取り、モータ(三相交流モータ)20を駆動する。
【0073】
図11に示されるように、モータ駆動装置100は、コンバータからの直流電圧(直流電源)DCを受け取って平滑する電解コンデンサ(素子E:E1,E2,E1',E2')を含む電源回路10、並びに、平滑された直流電圧から三相交流電圧を生成してモータ20を駆動制御するパワー素子11a,11b,12a,12b,13a,13bを備える。ここで、パワー素子11a,11b,12a,12b,13a,13bは、例えば、それぞれIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのパワー半導体と還流ダイオードにより構成され、直流電圧の高電位側と低電位側に対してそれぞれ三相分設けられ、それらのパワー素子をスイッチング制御して、三相交流電圧を生成し、モータ20を駆動制御するようになっている。
【0074】
ここで、電源回路10は、図3図10を参照して説明した第1実施例または第2実施例の電源回路である。また、電源回路10で使用する素子E(E1,E2,E1',E2')は、電解コンデンサに限定されないのは前述した通りである。なお、モータ20としては、例えば、工作機械、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、或いは、各種ロボット内に設けられたモータを適用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に使用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではない。また、明細書のそのような記載は、発明の利点および欠点を示すものでもない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0076】
10 電源回路
11a,11b,12a,12b,13a,13b パワー素子
20 モータ
100 モータ駆動装置
BB,BB11,BB12,BB2
C 第3導体(中間電位導体)
E 素子
E01,E1,E1' 第1素子(第1電解コンデンサ)
E02,E2,E2' 第2素子(第2電解コンデンサ)
N 第2導体(低電位導体)
P 第1導体(高電位導体)
T1,T2,T11,T12,T11',T12',T21,T22,T21',T22' 端子
TH01~TH06,TH11~TH14 接続部(スルーホール)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11