(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】編成方法、及び編地
(51)【国際特許分類】
D04B 1/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
D04B1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020185433
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】上道 和也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-3176(JP,A)
【文献】特開2017-115282(JP,A)
【文献】特開2010-156087(JP,A)
【文献】特許第6765691(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する前針床と後針床とを備える横編機によってリブ様編地部を編成するための編成方法において、
ベース編目列のウエール方向に連続してリブ様編目列を編成する工程Aと、
前記リブ様編目列を新たなベース編目列と規定する工程Bとを繰り返すことで、前記リブ様編地部を編成し、
前記ベース編目列は、2個以上の表目からなるグループと、2個以上の裏目からなるグループとが交互に並んだ構成を備え、
前記リブ様編目列は、前記ベース編目列の各表目のウエール方向に連続する表目と、前記ベース編目列の各裏目のウエール方向に連続する裏目とを備え、
前記工程Aでは、前記リブ様編目列を複数の分割編目列に分けて順次編成し、
1番目に編成する分割編目列を、前記ベース編目列の全ての表目が第一針床に係止され、前記ベース編目列の全ての裏目が第二針床に係止された状態でリブ編成し、
2番目以降に編成される分割編目列を、前記ベース編目列の全ての表目及び既に編成された分割編目列の全ての表目が前記第一針床に係止され、前記ベース編目列の全ての裏目及び前記既に編成された分割編目列の全ての裏目が第二針床に係止された状態でリブ編成し、
前記第一針床は前記前針床又は前記後針床であり、
前記第二針床は前記第一針床に対向する針床である編成方法。
【請求項2】
各分割編目列を1×1のリブ編成によって編成する請求項1に記載の編成方法。
【請求項3】
各分割編目列を2×2のリブ編成によって編成する請求項1に記載の編成方法。
【請求項4】
前記工程Aの後に、各リブ様編目列に備わる複数の表目の少なくとも一部に、弾性糸を用いてタックを行う請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の編成方法。
【請求項5】
2個以上の表目からなるグループと2個以上の裏目からなるグループとが編幅方向に交互に並ぶリブパターンを模した複数のリブ様編目列がウエール方向に連続することで構成されたリブ様編地部を備える編地において、
各リブ様編目列は、編幅方向の編目の形成位置が異なる複数の分割編目列を含み、
各分割編目列は、少なくとも一つの表目からなるグループと、少なくとも一つの裏目からなるグループとが編幅方向に交互に並んだリブパターンを備え、
各分割編目列における表目と裏目とをつなぐシンカーループが、他の分割編目列における裏目の表側を横切る編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リブ様編地部を編成するための編成方法、及びリブ様編地部を備える編地に関する。
【背景技術】
【0002】
セーターの裾などに伸縮性を有するリブ組織が用いられる。リブ組織が用いられる箇所は、しっかりした構造であることが求められる。しっかりとしたリブ組織を編成するには、編糸の数を多くしたり、編糸を太くしたりする必要がある。しかし、リブ組織を編成する編針のフックの大きさによっては、編糸の数を多くしたり、編糸を太くしたりすると、編糸がフックに入らなくなる恐れがある。
【0003】
上記事情に鑑み、特許文献1には、リブパターンを模したリブ様編地部を編成する方法が開示されている。リブパターンは、少なくとも一つの表目からなるグループと、少なくとも一つの裏目からなるグループとが編幅方向に交互に並んだ配列である。特許文献1に開示されるリブ様編地部は、割増やしを利用して二層の編地部を接合することで構成されている。二層の編地部からなるリブ様編地部はしっかりしており、型崩れし難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の編成方法では、横編機の第一針床に係止される第一編地部と第二針床に係止される第二編地部とを接合するため、リブ様編地部を筒状に編成することができない。そのため、特許文献1とは異なるリブ様編地部の編成方法が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、伸縮性に優れ、しっかりしたリブ様編地部を編成するための編成方法、及びその編成方法によって得られた編地を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>本発明の編成方法は、
互いに対向する前針床と後針床とを備える横編機によってリブ様編地部を編成するための編成方法において、
ベース編目列のウエール方向に連続してリブ様編目列を編成する工程Aと、
前記リブ様編目列を新たなベース編目列と規定する工程Bとを繰り返すことで、前記リブ様編地部を編成し、
前記ベース編目列は、2個以上の表目からなるグループと、2個以上の裏目からなるグループとが交互に並んだ構成を備え、
前記リブ様編目列は、前記ベース編目列の各表目のウエール方向に連続する表目と、前記ベース編目列の各裏目のウエール方向に連続する裏目とを備え、
前記工程Aでは、前記リブ様編目列を複数の分割編目列に分けて順次編成し、
1番目に編成する分割編目列を、前記ベース編目列の全ての表目が第一針床に係止され、前記ベース編目列の全ての裏目が第二針床に係止された状態でリブ編成し、
2番目以降に編成される分割編目列を、前記ベース編目列の全ての表目及び既に編成された分割編目列の全ての表目が前記第一針床に係止され、前記ベース編目列の全ての裏目及び前記既に編成された分割編目列の全ての裏目が第二針床に係止された状態でリブ編成し、
前記第一針床は前記前針床又は前記後針床であり、
前記第二針床は前記第一針床に対向する針床である。
【0008】
ここで、表目は、リブ様編地部の裏側から表側に向かって旧編目から引き出される編目である。裏目は、リブ様編地部の表側から裏側に向かって旧編目から引き出される編目である。リブ編成は、1個以上の表目からなるグループと、1個以上の裏目からなるグループとを交互に連続して編成する公知の編成方法である。例えば、1×1のリブ編成は、表目と裏目とを交互に編成するリブ編成である。
【0009】
<2>本発明の編成方法の一形態として、
各分割編目列を1×1のリブ編成によって編成する形態が挙げられる。
【0010】
<3>本発明の編成方法の一形態として、
各分割編目列を2×2のリブ編成によって編成する形態が挙げられる。
【0011】
<4>本発明の編成方法の一形態として、
前記工程Aの後に、各リブ様編目列に備わる複数の表目の少なくとも一部に、弾性糸を用いてタックを行う形態が挙げられる。
【0012】
<5>本発明の編地は、
2個以上の表目からなるグループと2個以上の裏目からなるグループとが編幅方向に交互に並ぶリブパターンを模した複数のリブ様編目列がウエール方向に連続することで構成されたリブ様編地部を備える編地において、
各リブ様編目列は、編幅方向の編目の形成位置が異なる複数の分割編目列を含み、
各分割編目列は、少なくとも一つの表目からなるグループと、少なくとも一つの裏目からなるグループとが編幅方向に交互に並んだリブパターンを備え、
各分割編目列における表目と裏目とをつなぐシンカーループが、他の分割編目列における裏目の表側を横切る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の編成方法によれば、伸縮性を有し、しっかりしたリブ様編地部が編成される。
本発明の編成方法では、リブ様編目列を複数の分割編目列に分けて編成している。そうすることで、複数の分割編目列が厚み方向に重なり、リブ様編目列が厚くなる。また、本発明の編成方法では、各分割編目列を編成する際、その分割編目列の編成に関与しない編目も第二針床に移動させている。その結果、各分割編目列における表目と裏目とをつなぐシンカーループが、他の分割編目列における裏目の表側を横切る。このようなシンカーループを備えるリブ様編地部は、
図4を参照する実施形態で詳述するように、伸縮性に優れる。
【0014】
上記形態<2>の編成方法によれば、一般的なリブ組織よりも凹凸が小さいすっきりした見た目を有するリブ様編地部が得られる。このリブ様編地部は一般的なリブ組織に匹敵する伸縮性を持つ。
【0015】
上記形態<3>の編成方法によれば、1×1のリブ編成を繰り返すことでリブ様編目列を編成する場合に比べて編成効率に優れる。この編成方法によって得られたリブ様編組織は、一般的なリブ組織とほとんど変わらない見た目を有する。
【0016】
上記形態<4>の編成方法によれば、リブ様編地部の伸縮性が向上される。また、タックによって弾性糸がリブ様編地部に配置されることで、弾性糸がリブ様編地部の表側に露出しない。
【0017】
本発明の編地は、伸縮性を有し、しっかりとしたリブ様編地部を有する。
本発明の編地では、複数の分割編目列が厚み方向に重なってリブ様編地部が形成されている。従って、リブ様編地部がしっかりしている。また、本発明の編地では、各分割編目列における表目と裏目とをつなぐシンカーループが、他の分割編目列における裏目の表側を横切っている。このような配置を備えるシンカーループは、
図4を参照する実施形態で詳述するように、編糸の動きを規制し難い。そのため、リブ様編地部の伸縮性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態1に示されるセーターの概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に示されるリブ様編地部の第一の編成工程図である。
【
図3】
図3は、第一の編成工程図に続く第二の編成工程図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に示されるリブ様編地部のループ図である。
【
図5】
図5は、比較例であるリブ様編地部のループ図である。
【
図6】
図6は、3×3のリブパターンを模したリブ様編地部を編成する手順の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、4×4のリブパターンを模したリブ様編地部を編成する手順の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、4×4のリブパターンを模したリブ様編地部を編成する手順の別例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
実施形態1では、本発明の編成方法を用いて、2×2のリブパターンを模したリブ様編地部5を備える編地を編成する例を
図1から
図5に基づいて説明する。
図1に示されるように、本例の編地100はセーターである。セーターの裾101、袖口102、及び衿103は、厚みがあるしっかりした構造を備え、かつ伸縮性に優れることが求められる。本例では、裾101、袖口102、及び衿103を本発明の編成方法によって編成されるリブ様編地部5によって構成する。ここで、本例の編成方法によって編成される編地100は、ニットウェアに限定されるわけではなく、例えばカバーなどの産業資材であっても良い。
【0020】
リブ様編地部5の具体的な編成工程を
図2,3に基づいて説明する。
図2,3には、4枚ベッド横編機を用いて、隣接する編目の間に空針が無い総針編成によってリブ様編地部5を編成する例が示されている。以降、4枚ベッド横編機に備わる下部前針床、上部前針床、下部後針床、及び上部後針床をそれぞれ、FD、FU、BD、及びBUと表記する。FDとBDは互いに対向する位置に配置されている。FUとBUは、FDとBDの上方において互いに対向する位置に配置されている。本例とは異なり、隣接する編目の間に空針を設けた針抜き編成を行う場合、2枚ベッド横編機によって本例のリブ様編地部を編成することもできる。
【0021】
図2,3の左欄の「S+数字」は編成工程の番号を示す。右欄には針床における編目の係止状態が示されている。黒点は編針を、大文字アルファベットは、FD、FU、BD、BUに備わる編針の位置を示す。丸マークとダイヤマークはそれぞれ、編地100の外側から見て表目となる編目と裏目となる編目を示す。各編成工程で新たに編成される部分は太線で示され、新たに編成された編目は塗り潰して示されている。逆三角マークは給糸口8を示す。直線矢印は目移しを示す。
【0022】
図2のS0には、BDの編針A~Lにベース編目列1が係止され、FDの編針A~Lに別のベース編目列6が係止された状態が示されている。ベース編目列1とベース編目列6とは筒状に繋がっている。ベース編目列1は、2個の表目11からなるグループと、2個の裏目12からなるグループとが編幅方向に交互に並んだ構成を備える。ベース編目列6は、2個の表目61からなるグループと、2個の裏目62からなるグループとが編幅方向に交互に並んだ構成を備える。ベース編目列1の両端部にはそれぞれ表目11が一つずつ配置されており、ベース編目列6の両端部にはそれぞれ表目61が一つずつ配置されている。そのため、ベース編目列1とベース編目列6とで構成される筒状編目列は、2×2のリブパターンを備える。
【0023】
S0の状態から、ベース編目列1のウエール方向に連続してリブ様編目列2(
図3のS12参照)を編成する(工程Aに相当)と共に、ベース編目列6のウエール方向に連続してリブ様編目列7(
図3のS12参照)を編成する(工程Aに相当)。リブ様編目列2とリブ様編目列7とは筒状につながる。リブ様編目列2は、
図2のS2及び
図3のS8に示されるように、二つの分割編目列2A,2Bに分けて順次編成される。リブ様編目列7は、
図2のS5及び
図3のS11に示されるように、二つの分割編目列7A,7Bに分けて順次編成される。
【0024】
S1では、BDの編針B,C,F,G,J,Kに係止される裏目12をそれぞれ、FUの編針B,C,F,G,J,Kに移動させる。その結果、ベース編目列1に備わる全ての表目11がBDに係止され、全ての裏目12がFUに係止された状態になる。このS1はいわば、リブ様編目列2を編成するために、表目11と裏目12とをそれぞれ前後に対向する別々の針床に振り分ける準備工程である。リブ様編目列2の編成においては、BDが第一針床、FUが第二針床である。
【0025】
S2では、給糸口8を右方向に移動させ、1×1のリブ編成によって分割編目列2Aを編成する。分割編目列2Aは、裏目22と表目21とを編幅方向に交互に編成する1×1のリブ編成によって編成される。具体的には、FUの編針B、BDの編針D、FUの編針F、BDの編針H、FUの編針J、及びBDの編針Lに順次、裏目22、表目21、裏目22、表目21、裏目22、及び表目21を編成する。分割編目列2Aの表目21と裏目22とをつなぐシンカーループ3A,4Aのうち、ベース編目列1の裏目12を横切るシンカーループ3Aは、裏目12の表側を横切る。シンカーループ3A,4Aのうち、ベース編目列1の表目11を横切るシンカーループ4Aは、表目11の裏側を横切る。ここで、本例における表側は筒の外側であり、裏側は筒の内側である。
【0026】
S3では、FUの編針B,C,F,G,J,Kに係止される裏目12,22を、BDの編針B,C,F,G,J,Kに移動させる。このS3によって、リブ様編目列2の編成はいったん休止される。次のS4では、ベース編目列6のウエール方向に続くリブ様編目列7の編成が開始される。
【0027】
S4では、FDの編針B,C,F,G,J,Kに係止されるベース編目列6の裏目62をそれぞれ、BUの編針B,C,F,G,J,Kに移動させる。その結果、ベース編目列6に備わる全ての表目61がFDに係止され、全ての裏目62がBUに係止された状態になる。S4は、リブ様編目列7を編成するために、表目61と裏目62とをそれぞれ前後に対向する別々の針床に振り分ける準備工程である。リブ様編目列7の編成においては、FDが第一針床、BUが第二針床である。
【0028】
S5では、給糸口8を左方向に移動させ、1×1のリブ編成によって分割編目列7Aを編成する。分割編目列7Aは、裏目72と表目71とを編幅方向に交互に編成する1×1のリブ編成によって編成される。具体的には、BUの編針K、FDの編針I、BUの編針G、FDの編針E、BUの編針C、及びFDの編針Aに順次、裏目72、表目71、裏目72、表目71、裏目72、及び表目71を編成する。分割編目列7Aの表目71と裏目72とをつなぐシンカーループ3A,4Aのうち、ベース編目列6の裏目62を横切るシンカーループ3Aは、裏目62の表側を横切る。シンカーループ3A,4Aのうち、ベース編目列6の表目61を横切るシンカーループ4Aは、表目61の裏側を横切る。
【0029】
S6では、BUの編針B,C,F,G,J,Kに係止される裏目62,72を、FDの編針B,C,F,G,J,Kに移動させる。このS6によって、リブ様編目列7の編成はいったん休止される。次のS7では、ベース編目列1のウエール方向に続くリブ様編目列2の編成が開始される。
【0030】
図3のS7では、BDの編針B,C,F,G,J,Kに係止される裏目12,22を、FUの編針B,C,F,G,J,Kに移動させる。その結果、ベース編目列1の全ての表目11及び分割編目列2Aの全ての表目21がBDに係止され、ベース編目列1の全ての裏目12及び分割編目列2Aの全ての裏目22がFUに係止された状態になる。
【0031】
S8では、給糸口8を右方向に移動させ、1×1のリブ編成によって2番目の分割編目列2Bを編成する。分割編目列2Bは、ベース編目列1の編目のうち、分割編目列2Aを編成しなかった編目のウエール方向に連続して編成される。具体的には、BDの編針A、FUの編針C、BDの編針E、FUの編針G,BDの編針I、及びFUの編針Kに順次、表目21、裏目22、表目21、裏目22、表目21、及び裏目22を編成する。分割編目列2Bの表目21と裏目22とをつなぐシンカーループ3Bは、分割編目列2Aの裏目22の表側を横切る。分割編目列2Bの表目21と裏目22とをつなぐシンカーループ4Bは、分割編目列2Aの表目21の裏側を横切る。
【0032】
S9では、分割編目列2A,2Bの裏目22をBDに移動させる。その結果、
図2のS0に示されるベース編目列1のウエール方向に連続するリブ様編目列2がBDに係止された状態になる。
【0033】
S10では、FDに係止される全ての裏目62,72をBUに移動させる。その結果、ベース編目列6の全ての表目61及び分割編目列7Aの全ての表目71がFDに係止され、ベース編目列6の全ての裏目62及び分割編目列7Aの全ての裏目72がBUに係止された状態になる。
【0034】
S11では、給糸口8を左方向に移動させ、1×1のリブ編成によって2番目の分割編目列7Bを編成する。分割編目列7Bは、ベース編目列6の編目のうち、分割編目列7Aを編成しなかった編目のウエール方向に連続して編成される。具体的には、FDの編針L、BUの編針J、FDの編針H、BUの編針F、FDの編針D、及びBUの編針Bに順次、表目71、裏目72、表目71、裏目72、表目71、及び裏目72を編成する。分割編目列7Bの表目71と裏目72とをつなぐシンカーループ3Bは、分割編目列7Aの裏目72の表側を横切る。分割編目列7Bの表目71と裏目72とをつなぐシンカーループ4Bは、分割編目列7Aの表目71の裏側を横切る。
【0035】
S12では、分割編目列7A,7Bの裏目72をFDに移動させる。以降、S12のリブ様編目列2,7を新たなベース編目列1,6と規定し(工程Bに相当)、S1~S12の編成を繰り返すことで、
図1に示される筒状のリブ様編地部5が編成される。この場合、表目21,71を新たなベース編目列1,6の表目11,61と規定し、裏目22,72を新たなベース編目列1,6の裏目12,62と規定する。
【0036】
図4は、上記編成工程によって得られたリブ様編地部5のうち、ベース編目列1とリブ様編目列2のループ図である。ループ図における大文字アルファベットは、
図2,3の編針の位置に対応している。リブ様編目列2を構成する分割編目列2Aは、他の編目列1,2Bよりも太い線で示されている。
【0037】
このループ図に示されるように、分割編目列2Aにおける表目21と裏目22とをつなぐシンカーループ3Aは、他の分割編目列2Bにおける裏目22の表側を横切る。分割編目列2Bにおける表目21と裏目22とをつなぐシンカーループ3Bも、他の分割編目列2Aにおける裏目22の表側を横切る。これらシンカーループ3A,3Bが裏目22の表側を横切るのは、S2,S8において分割編目列2A,2Bを編成する際、S1,S7において分割編目列2A,2Bの編成に関与しない裏目12,22も第二針床であるFUに移動させておいたからである。このような配置を備えるシンカーループ3A,3Bは、丸で囲った部分に示されるように、ベース編目列1の裏目12を前後から挟んでいない。一方、分割編目列2Aのシンカーループ4Aは分割編目列2Bの表目21の裏側を横切る。分割編目列2Bのシンカーループ4Bも分割編目列2Aの表目21の裏側を横切る。このような配置を備えるシンカーループ4A,4Bは、四角で囲った部分に示されるように、ベース編目列1の表目11を前後から挟んでいない。シンカーループ3A,3B,4A,4Bによって編糸の動きが規制され難いため、本例のリブ様編地部5は伸縮性に優れる。
【0038】
本例とは異なり、S1,S7において、分割編目列2A,2Bの編成に関与しない裏目12,22を移動させなかった場合、例えば、
図2のS1においてBDの編針B,F,Jの裏目12のみを移動させた場合、
図5のループ図に示されるようなリブ様編地部50が得られる。
図5に示されるリブ様編地部50では、分割編目列2Aのシンカーループ3Aが分割編目列2Bにおける裏目22の裏側を横切る。分割編目列2Bのシンカーループ3Bが分割編目列2Aにおける裏目22の裏側を横切る。このような配置を備えるシンカーループ3A,3Bは、丸で囲った部分に示されるように、ベース編目列1の裏目12を前後から挟み込む。その結果、編糸の動きが規制されるため、リブ様編地部50の伸縮性が大幅に低下する。
【0039】
≪変形例≫
S12の後に、弾性糸を給糸する給糸口を用いて、リブ様編目列2,7に備わる複数の表目21の少なくとも一部にタックを行っても良い。この編成によって、リブ様編地部5に弾性糸が編み込まれる。その結果、リブ様編地部5の伸縮性が向上する。タックによってリブ様編地部5に配置された弾性糸は、リブ様編地部5の表側から見え難い。従って、弾性糸によってリブ様編地部5の見栄えが損なわれることは無い。
【0040】
本例のリブ様編地部5は、複数の給糸口を用いて編成することもできる。例えば、
図2のS2の後、給糸口8とは別の給糸口を用いて
図3のS8を行う。次いで、S3,S4,S5を行った後、前記別の給糸口を用いて
図3のS11を行う。この場合、
図2のS6、及び
図3のS7,S9,S10が省略される。従って、二つの給糸口を用いた編成は、一つの給糸口を用いた編成に比べて、効率的にリブ様編地部5を編成できる。
【0041】
<その他の実施形態>
リブ様編地部5のリブパターンは2×2のリブパターンに限定されない。その他のリブパターンの編成例を
図6から
図8に基づいて説明する。
図6から
図8では、紙面下側の針床が第一針床、紙面上側の針床が第二針床である。
図6から
図8において編成されるリブ様編地部5は筒状構造ではなく、単層構造である。
【0042】
図6では、リブ様編目列2を三つの分割編目列2A,2B,2Cに分けて編成している。この編成によって3×3のリブパターンを模したリブ様編地部5が編成される。ここで、連続する三つの表目21からなる表目グループ21Xと、その表目グループ21Xに近接する表目グループ21Yとの間の空針の数は、裏目グループ22Xに含まれる裏目22の数よりも少なくても多くても良い。空針の数が少なくなれば、表目21と裏目22とをつなぐシンカーループが短くなる。その結果、編目が詰んだリブ様編地部5が編成される。
【0043】
分割編目列2A,2B,2Cを編成する順番は特に限定されない。例えば、分割編目列2A→分割編目列2B→分割編目列2Cの順番でも良いし、分割編目列2B→分割編目列2A→分割編目列2Cの順番でも良い。また、分割編目列2A,2B,2Cの表目21と裏目22の位置も特に限定されない。
図6では、分割編目列2Aは、表目グループ21X,21Yの左側の表目21と、裏目グループ22Xの左側の裏目22とで構成されている。本例とは異なり、分割編目列2Aは、表目グループ21Xの左側の表目21と、裏目グループ22Xの中央の裏目22とで構成されていても良い。
【0044】
3×3のリブパターンを模したリブ様編目列2は、1×1のリブ編成によって編成された分割編目列と、2×2のリブ編成によって編成された分割編目列とによって構成することもできる。この場合、リブ編成の回数が減る。リブ編成の回数が減ることで、編目を横切るシンカーループの本数が減るため、リブ様編地部5が伸び易くなる。その他、3×3のリブパターンを模したリブ様編目列2は、1×2のリブ編成によって編成された分割編目列と、2×1のリブ編成によって編成された分割編目列とによって構成することもできる。リブ編成の回数が調整されることで、リブ様編地部5の見栄えが大きく変化することなく、リブ様編地部5の伸縮度合いが調整される。
【0045】
図7,
図8では、2×2のリブ編成によって編成された二つの分割編目列2A,2Bによって、4×4のリブパターンを模したリブ様編目列2を編成している。
図7の分割編目列2A,2Bの二つの表目21はそれぞれ隣接する二つの編針に係止されている。分割編目列2A,2Bの二つの裏目22はそれぞれ隣接する二つの編針に係止されている。一方、
図8の分割編目列2A,2Bの二つの表目21は一つ置きの編針に係止されている。分割編目列2A,2Bの二つの裏目22も一つ置きの編針に係止されている。2×2のリブ編成を2回行うことで、4×4のリブパターンを模したリブ様編目列2が効率的に編成される。
【符号の説明】
【0046】
1,6 ベース編目列
2,7 リブ様編目列
2A,2B,2C,7A,7B 分割編目列
11,21,61,71 表目
12,22,62,72 裏目
21X,21Y 表目グループ
22X 裏目グループ
3A,3B,4A,4B シンカーループ
5,50 リブ様編地部
8 給糸口
100 編地、101 裾、102 袖、103 衿