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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】セル電圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20240625BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20240625BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/0273
H01M8/2465
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020197446
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085653
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 拓士
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 一美
(72)【発明者】
【氏名】細井 知和
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-198429(JP,A)
【文献】特開2012-209231(JP,A)
【文献】特開2010-287384(JP,A)
【文献】特開2013-051036(JP,A)
【文献】特開2005-122911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックに含まれている単セルの電圧を測定するセル電圧測定装置であって、
前記単セルは、
膜電極ガス拡散層アセンブリを囲みつつ保持しているフレームと、
前記フレームに接しており、前記膜電極ガス拡散層アセンブリの一方の電極と導通している第1セパレータと、
前記第1セパレータとともに前記フレームを挟んでおり、前記膜電極ガス拡散層アセンブリの他方の電極と導通している第2セパレータと、
を備えており、前記フレームの外縁が前記第1セパレータと前記第2セパレータの外縁よりも突出しており、
前記セル電圧測定装置は、
電圧計に接続されている複数のコンタクトピンと、
積層されている複数の前記単セルの間隔と同じ間隔で複数の前記コンタクトピンを支持しているコンタクトユニットと、
前記コンタクトユニットを前記燃料電池スタックに対して進退させるアクチュエータであって、複数の前記コンタクトピンが複数の前記単セルの前記第1セパレータの外縁と前記第2セパレータの外縁に対向するように前記コンタクトユニットを支持している前記アクチュエータと、
を備えており、
複数の前記コンタクトピンは、前記コンタクトユニットの進退方向に弾性を有しているとともに、複数の前記コンタクトピンの並び方向にも弾性を有している、
セル電圧測定装置。
【請求項2】
前記コンタクトピンは、両端が前記コンタクトユニットに支持されている湾曲した金属棒である、請求項1に記載のセル電圧測定装置。
【請求項3】
前記コンタクトピンは、
一端が前記コンタクトユニットに支持される直線部と、
一端が前記直線部の他端につながっており、他端が前コンタクトユニットに支持されており、前記直線部よりも長い湾曲部と、
を備えており、前記直線部と前記湾曲部の連結部が略直角をなしている、
請求項2に記載のセル電圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、複数の単セルが積層されている燃料電池スタックの各々の単セルの電圧を測定するセル電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックは、複数の単セルを含んでいる。単セルとは、膜電極ガス拡散層アセンブリを囲みつつ保持しているフレームと、フレームを挟んでいる第1セパレータ及び第2セパレータを主要部品とするデバイスである。燃料電池スタックでは、複数の単セルが積層されており、それらが電気的に直列に接続されている。なお、説明の便宜上、膜電極ガス拡散層アセンブリ(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)を以下ではMEGAと称する。
【0003】
第1セパレータはMEGAの一方の電極に導通しており、第2セパレータは他方の電極に導通している。第1/第2セパレータを通じてMEGAが生成した電力を取り出す。燃料電池スタックでは、単セルの第1セパレータと、その単セルに隣接する単セルの第2セパレータが接触し、積層された複数の単セルが電気的に直列に接続される。特許文献1に開示されている燃料電池セルでは、フレームの外縁が第1/第2セパレータの外縁よりも突出している。
【0004】
単セルの電圧を計測するセルモニタを有する燃料電池スタックが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-192326号公報
【文献】特開2013-118047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池スタックの検査工程では、燃料電池スタックの各々の単セルの電圧を測定する装置(セル電圧測定装置)が必要とされている。セル電圧測定装置は、単セルの第1セパレータと第2セパレータにコンタクトピン(プローブピン)を当接させて単セルの電圧を計測する。燃料電池スタックでは、積層されている複数の単セルの間隔がばらつくことがある。すなわち、単セルの積層方向におけるセパレータの位置が設計値からずれることがある。また、燃料電池スタックでは、複数の単セルの積層方向からみてセパレータの位置がばらつくこともある。すなわち、複数の単セルの積層方向からみたときのセパレータの位置が、設計値からずれることがある。本明細書が開示する技術は、簡単な構造でセパレータの位置の設計値からのずれに対応することができるセル電圧測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示するセル電圧測定装置は、複数の単セルが積層されている燃料電池スタックの各々の単セルの電圧を測定する装置である。単セルは、MEGA(膜電極ガス拡散層アセンブリ)を囲みつつ保持しているフレームと、フレームを挟んでいる第1、第2セパレータを備える。第1セパレータは、フレームに接しており、MEGAの一方の電極と導通している。第2セパレータは、第1セパレータとともにフレームを挟んでおり、MEGAの他方の電極と導通している。フレームの外縁が第1セパレータと第2セパレータの外縁よりも突出している。
【0008】
本明細書が開示するセル電圧測定装置は、電圧計に接続されている複数のコンタクトピンと、複数のコンタクトピンを支持しているコンタクトユニットと、コンタクトユニットを燃料電池スタックに対して進退させるアクチュエータを備える。コンタクトユニットは、積層されている複数の単セルの間隔と同じ間隔で複数のコンタクトピンを支持している。より正確には、コンタクトユニットは、複数の単セルの設計上の間隔(間隔の設計値)と同じ間隔で複数のコンタクトピンを支持している。実際の単セルの間隔は設計値からずれることがある。
【0009】
アクチュエータは、複数のコンタクトピンが複数の単セルの第1セパレータの外縁と第2セパレータの外縁に対向するようにコンタクトユニットを支持する。複数のコンタクトピンのそれぞれは、コンタクトユニットの進退方向に弾性を有しているとともに、複数のコンタクトピンの並び方向にも弾性を有している。
【0010】
コンタクトピンの並び方向は、複数の単セルの積層方向、すなわち、セパレータの並び方向に一致する。コンタクトユニットが燃料電池スタックに近づいていくと、セパレータに接する前に、隣接するコンタクトピンの間にフレームが入り込む。単セルの間隔(すなわち隣り合うセパレータの実際の間隔)がコンタクトピンの間隔(別言すれば、単セルの間隔の設計値)からずれていても、並び方向に弾性を有しているコンタクトピンはフレームに誘導されて並び方向に撓み、隣り合うフレームの間、すなわちセパレータの外縁に対向するようになる。並び方向の弾性によって複数のコンタクトピンは間隔がばらついている複数の単セルのセパレータに接することができる。
【0011】
また、コンタクトピンはコンタクトユニットの進退方向にも弾性を有している。セパレータの外縁の位置が設計値(設計上の外縁の位置)からコンタクトユニットの進退方向でずれていても、突出したセパレータに接したコンタクトピンは後退方向に撓み、コンタクトユニットはさらに前進することができる。奥に位置するセパレータにもコンタクトピンが接することができる。コンタクトユニットの進退方向の弾性によって複数のコンタクトピンは位置がばらついている複数のセパレータに接することができる。
【0012】
本明細書が開示するセル電圧測定装置は、簡単な構造でセパレータの位置の設計値からのずれに対応することができる。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】燃料電池スタックの斜視図と単セルの分解斜視図である。
図2】燃料電池スタックの正面図である。
図3図2のIII-III線でカットした燃料電池スタックの断面図とセル電圧測定装置の断面図である。
図4】セル電圧測定装置の側面図である。
図5】コンタクトピンの動きを説明する図である(セパレータとの接触前)。
図6】コンタクトピンの動きを説明する図である(セパレータとの接触後)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例のセル電圧測定装置の説明に先立って、燃料電池スタックと単セルについて説明する。図1に、燃料電池スタック2の斜視図と単セル10の分解斜視図を示す。燃料電池スタック2は、複数の単セル10が積層された構造を有している。なお、図中の座標系のX方向が複数の単セル10の積層方向に相当する。他の図でも、X方向が積層方向を表す。図1では、1個の単セル10のみに符号10を付し、残りの単セルに対しては符号を省略した。
【0015】
単セル10は、フレーム13、第1セパレータ11、第2セパレータ12を備えている。フレーム13は、樹脂で作られている本体と、その両面に設けられている接着層の3層構造を有している。図1では3層構造の図示は省略した。フレーム13の内側には、MEGA14(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly:膜電極ガス拡散層アセンブリ)が保持されている。別言すれば、フレーム13は、MEGA14を囲んでいるとともにMEGA14を保持している。図1では、理解を助けるために、MEGA14にハッチングを付してある。
【0016】
MEGA14の詳細な構造については説明を省略するが、MEGA14が水素と酸素を反応させて電気を生成する。第1セパレータ11と第2セパレータ12が、MEGA14を含むフレーム13を挟んでいる。第1セパレータ11と第2セパレータ12のそれぞれの表面には導電性の金属膜が設けられており、それらの金属膜がMEGA14と接し、生成された電気を取り出す。フレーム13は絶縁体で作られており、第1セパレータ11と第2セパレータ12を絶縁する。
【0017】
フレーム13、第1セパレータ11、第2セパレータ12のY方向の両側には6個の貫通孔が設けられている。2個の貫通孔は、水素ガスの流路に相当し、別の2個の貫通孔は、酸素(空気)の流路に相当し、残りの2個の貫通孔は、冷媒の流路に相当する。
【0018】
図2に、燃料電池スタック2の正面図を示す。図3に、図2のIII-III線に沿った燃料電池スタック2の断面図を示す。図3は、複数の単セル10の外縁を横断する断面を示している。図3には、セル電圧測定装置20の断面も示してある。燃料電池スタック2は多数の単セル10を含んでいるが、図3は一部の単セル10のみを示してある。図3では、左右両端の単セル10にのみ符号を付し、残りの単セルには符号を省略した。また、図3では、1個のスペーサ19にのみ符号を付し、残りのスペーサには符号を省略した。スペーサ19については次に述べる。
【0019】
先に述べたように、単セル10は、フレーム13と、フレーム13を挟む第1/第2セパレータ11/12を備えている。図3によく示されているように、フレーム13の外縁131は、距離Wdだけ、第1セパレータ11の外縁111と第2セパレータ12の外縁121よりも外側へ突出している。ここで「外側」とは、単セル10を平面視したときの外側を意味する。
【0020】
隣り合う単セル10の間には絶縁性のスペーサ19が挟まれている。スペーサ19は、隣り合う単セル10の間隔Ptを一定に保つ。ただし、スペーサ19の幅のばらつきや単セル10の厚みのばらつきなどにより、間隔Ptは設計値からばらつくことがある。
【0021】
図3に示されているように、第1セパレータ11と第2セパレータ12は、積層方向(図中のX方向)に沿って見たときの中心側ではフレーム13に接している。先に述べたように、フレーム13の中心には、発電デバイスであるMEGA14が位置する。第1セパレータ11はMEGA14の一方の電極に接しており、第2セパレータ12は他方の電極に接している。
【0022】
第1セパレータ11の外縁111と第2セパレータ12の外縁121は、フレーム13から離間している。単セル10の第1セパレータ11の外縁111は、その隣の単セル10の第2セパレータ12の外縁121と接しており、両者は導通する。隣り合う単セルの一方の単セル10の第1セパレータ11と他方の単セル10の第2セパレータ12が導通することで、積層された複数の単セル10が電気的に直列に接続される。以下では、第1セパレータ11と第2セパレータ12を合わせてセパレータと総称することがある。
【0023】
図3に示されているように、隣り合う単セル10の間隔Ptは、第1セパレータ11の外縁111と第2セパレータ12の外縁121の接合部とこれに隣り合う接合部との間隔Ptに等しい。単セル10の厚みは非常に薄く、間隔Ptは概ね1~10[mm]である。図3(および以降の図)では、理解を助けるために単セル10、フレーム13、セパレータ11、12の厚みを誇張して描いてある。
【0024】
次に、セル電圧測定装置20について説明する。セル電圧測定装置20は、燃料電池スタック2にて積層された単セル10のそれぞれの電圧を測定する。セル電圧測定装置20は、積層された複数の単セル10の電圧を同時に計測することができる。
【0025】
セル電圧測定装置20は、複数のコンタクトピン21と、コンタクトユニット22と、アクチュエータ23と、基部24を備える。図示は省略しているが、セル電圧測定装置20は、燃料電池スタック2を支持する台も備える。コンタクトユニット22は、複数のコンタクトピン21を支持する。燃料電池スタック2がセル電圧測定装置20に設置されると、複数のコンタクトピン21は、単セル10の並び方向と同じ方向に並ぶ。コンタクトユニット22は、積層されている複数の単セル10の間隔Ptと同じ間隔Ptで複数のコンタクトピン21を支持する。コンタクトピン21の径は、間隔Ptよりも小さく、隣り合う単セル10のフレーム13の間に入り込むことができるサイズである。
【0026】
複数のコンタクトピン21は導電性の金属で作られており、電圧計29に接続されている。図3では、コンタクトピン21と電圧計29との間の電気的接続を破線で模式的に示してある。電圧計29は、隣り合うコンタクトピン21の間の電圧を計測する。
【0027】
アクチュエータ23は、コンタクトユニット22を支持しており、燃料電池スタック2(単セル10)に対してコンタクトユニット22を進退させることができる。アクチュエータ23は、基部24に取り付けられており、アクチュエータ23の先端にコンタクトユニット22が取り付けられている。図3に示されているように、アクチュエータ23は、複数のコンタクトピン21が複数の単セル10の第1セパレータ11の外縁111と第2セパレータ12の外縁121に対向するようにコンタクトユニット22を支持する。
【0028】
アクチュエータ23がコンタクトユニット22を燃料電池スタック2に向けて前進させると、それぞれのコンタクトピン21は対応する第1セパレータ11の外縁111と第2セパレータ12の外縁121に接する。隣り合うコンタクトピン21が単セル10の第1セパレータ11および第2セパレータ12に接すると、電圧計29がその単セル10の電圧を計測することができるようになる。
【0029】
ここで、間隔Ptは、隣り合う単セル10の間の設計上の間隔を意味する。先に述べたように、スペーサ19の幅のばらつきや単セル10の厚みのばらつきなどにより、実際の間隔Ptがばらつくことがある。間隔Ptがばらつくと、セル電圧測定装置20を燃料電池スタック2に近づけた際、1個あるいはいくつかのコンタクトピン21が対応する第1セパレータ11(あるいは第2セパレータ12)と接触不良を生じ、単セル10の電圧が正確に計測できなくなるおそれがある。
【0030】
セル電圧測定装置20は、単セル10の間隔Ptのばらつきに対応できるように、弾性を有するコンタクトピン21を採用している。図4にセル電圧測定装置20の側面図を示す。
【0031】
コンタクトピン21は、導電性の金属製の細棒で作られている。コンタクトピン21は、一端がコンタクトユニット22に支持される直線部211と、一端が直線部211の他端につながっており、他端がコンタクトユニット22に支持されている湾曲部212を備える。湾曲部212は、直線部211よりも長い。直線部211と湾曲部212の連結箇所213が略直角をなしている。図4(および他の図)では、理解を助けるために、コンタクトピン21の太さを誇張して描いてある。
【0032】
金属細棒で作られているコンタクトピン21は、図中のX方向、Y方向、Z方向のいずれにも弾性を有している。別言すれば、コンタクトピン21は、コンタクトユニット22の進退方向(Z方向)に弾性を有しているとともに、複数のコンタクトピン21の並び方向(X方向)にも弾性を有している。コンタクトピン21は、進退方向と並び方向の両方に直交する方向(Y方向)にも弾性を有している。
【0033】
コンタクトピン21のX方向の弾性により、単セル10の間隔Ptがばらついても、コンタクトピン21は対応するセパレータの外縁(外縁111または外縁121)にしっかりと接することができる。同時に、Z方向の弾性により、セパレータのY/Z方向の位置がばらついても、コンタクトピン21は対応するセパレータの外縁(外縁111または外縁121)にしっかりと接することができる。
【0034】
コンタクトピン21の弾性の効果を図5図6を参照して説明する。図5は、コンタクトピン21がセパレータに接する前の燃料電池スタック2とセル電圧測定装置20の断面を示しており、図6は、コンタクトピン21がセパレータに接した後の断面を示している。説明の便宜上、4個の単セルを、夫々、単セル10a、10b、10c、10dと称する。また、3個のコンタクトピン21を、夫々、コンタクトピン21a、21b、21cと称する。いずれかの単セルを区別なく示す場合は単セル10と表記し、いずれかのコンタクトピンを区別なく示す場合にはコンタクトピン21と表記する。
【0035】
単セル10aの第2セパレータ12aの外縁121aは、他の第2セパレータ12の外縁121と第1セパレータ11の外縁111よりも距離Daだけ突出している。また、単セル10cと単セル10dの間隔Ptdは、他の単セル間の間隔Ptよりも小さい。座標系のZ方向に沿って見ると、単セル10dのフレーム13dは、コンタクトピン21cと距離Dbだけ重なる。別言すると、積層方向における単セル10dの位置が設計値からずれている。
【0036】
セル電圧測定装置20を燃料電池スタック2に近づけると、単セル10aの第2セパレータ12aの外縁121aは、他の単セル10のセパレータよりも先にコンタクトピン21aに接する。また、セル電圧測定装置20を燃料電池スタック2に近づけると、コンタクトピン21cは、単セル10dのフレーム13dの外縁131dと接触する。
【0037】
図6の矢印Aが示すように、コンタクトユニット22を燃料電池スタック2に近づける。コンタクトピン21b、21cがセパレータに接触するのに先立ってコンタクトピン21aが第2セパレータ12aの外縁に接する。先に述べたように、コンタクトピン21は、Z方向(すなわち、コンタクトユニット22の進退方向)に弾性を有している。それゆえ、コンタクトユニット22をさらに前進させると、コンタクトピン21aは、第2セパレータ12aに接触したまま、-Z方向に撓む。図6の二点鎖線21a(1)が当初のコンタクトピン21aの形状であり、実線21a(2)が、撓んだ後のコンタクトピン21aの形状である。コンタクトピン21aがーZ方向に撓むので、他のコンタクトピン21b、21cも、それぞれ、対応するセパレータの外縁に接することができるようになる。
【0038】
図6の二点鎖線21c(1)は、当初のコンタクトピン21cの形状を示している。コンタクトユニット22が燃料電池スタック2に近づいていくと、コンタクトピン21cは単セル10dのフレーム13dの外縁131dに接する。コンタクトピン21の先端は丸まっており、コンタクトユニット22をさらに燃料電池スタック2に近づけると、コンタクトピン21cのX方向の弾性によって、コンタクトピン21cは、X方向に撓む(図6の矢印B参照)。その結果、コンタクトピン21cは、単セル10dのフレーム13dと単セル10cのフレーム13cの間に入り込み、第2セパレータ12cの外縁と第1セパレータ11dの外縁に対向するようになる。そのままコンタクトユニット22をさらに前進させると、コンタクトピン21cは対応するセパレータの外縁に接する。
【0039】
フレーム13の外縁131がセパレータの外縁111、121よりも突出しているので、コンタクトピン21がフレーム13と対向している場合、セパレータと接触するのに先立ってコンタクトピン21はフレーム13の外縁131に当接する。コンタクトピン21の先端は丸まっており、コンタクトユニット22が前進するのに伴って、コンタクトピン21はX方向に撓み、フレーム13と隣のフレーム13の間に案内される。すなわち、単セル10の間隔がばらついていても(積層方向における単セルの位置が設計値からずれていても)、コンタクトピン21の先端はフレーム13の外縁131に案内されて対応するセパレータの外縁に対向し、外縁に当接するようになる。
【0040】
セル電圧測定装置20は、積層されている複数の単セル10の全てのセパレータにコンタクトピンが接することができるので、複数の単セル10のそれぞれの電圧を確実に測定することができる。
【0041】
以上説明したように、セル電圧測定装置20は、コンタクトピン21がX方向とZ方向の弾性を有しており、セパレータの位置が設計値からずれていても、コンタクトピンが撓んでセパレータに接することができるので、単セルの電圧を正確に測定することができる。セル電圧測定装置20は、一列に並んだ3個以上のコンタクトピン21を有しており、複数の単セル10の電圧を同時に確実に計測することができる。
【0042】
セル電圧測定装置20のその他の特徴と利点を述べる。コンタクトピン21は、図4に示した形状を有する。直線部211の長さが短いので、Z方向の弾性はX方向の弾性よりも高い。Z方向の弾性が高いことによって、コンタクトピン21の先端はしっかりとセパレータの外縁に押し付けられる。X方向の弾性が低いことによって、単セルの間隔のずれに応じてコンタクトピン21の先端はX方向に撓み、対応するセパレータの外縁に接することができる。
【0043】
コンタクトピン21の直線部211と湾曲部212の連結箇所213が略直角をなしている。湾曲部212の直線部211の側の端は、セパレータの外縁と平行になる。コンタクトピン21のセパレータ外縁と平行な部位が外縁に当接する。コンタクトピン21とセパレータとの間に広い接触面積が確保できるので、コンタクトピン21とセパレータの間の電気抵抗を抑えることができる。
【0044】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。1個のコンタクトユニット22に支持されている複数のコンタクトピン21は、燃料電池スタック2が備えている全ての単セル10のうち、いくつかの単セル10の電圧を同時に計測できるものであればよい。セル電圧測定装置20は、コンタクトユニット22を単セルの積層方向(図中のX方向)に移動させる別のアクチュエータを備えていてもよい。セル電圧測定装置20は、コンタクトユニット22をX方向に沿って移動させ、異なる単セルの電圧を測定するようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2:燃料電池スタック
10:単セル
11:第1セパレータ
12:第2セパレータ
13:フレーム
19:スペーサ
20:セル電圧測定装置
21:コンタクトピン
22:コンタクトユニット
23:アクチュエータ
24:基部
29:電圧計
111、121、131:外縁
211:直線部
212:湾曲部
213:連結箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6