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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電線用ブーツ及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240625BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02G3/04 068
H01B7/00 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020202364
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090156
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 光利
(72)【発明者】
【氏名】横山 悟史
(72)【発明者】
【氏名】小川 真由
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525958(JP,A)
【文献】特表2010-523000(JP,A)
【文献】特開2007-159258(JP,A)
【文献】特開2017-098010(JP,A)
【文献】特開2016-062869(JP,A)
【文献】特開2018-174637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の保護対象部を内方に収容させる筒状の外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく前記外装部材の一端部を収容させることが可能なブーツ本体と、
前記ブーツ本体の前記内周壁から突出させた当該ブーツ本体の筒軸と同軸の少なくとも1つの環状体と、
を有し、
前記環状体は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部を前記外装部材の筒軸と同軸の筒状部へと弾性変形させることが可能で、かつ、前記外装部材の外周壁に前記筒状部の内周壁を周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成されることを特徴とした電線用ブーツ。
【請求項2】
前記環状体は、前記外装部材として、前記外周壁側で山となる環状の山部と前記外周壁側で谷となる環状の谷部とが筒軸方向に交互に並べられたコルゲートチューブを用いる場合、少なくとも1つの前記山部に対して弾性変形後の前記筒状部の前記内周壁を周方向で全周に亘って密着させるものとして形成されることを特徴とした請求項1に記載の電線用ブーツ。
【請求項3】
前記環状体は、前記外装部材として、前記外周壁側で山となる環状の山部と前記外周壁側で谷となる環状の谷部とが筒軸方向に交互に並べられたコルゲートチューブを用いる場合、1つの前記山部に対して弾性変形後の前記筒状部の前記内周壁を周方向で全周に亘って密着させ、かつ、筒軸方向で当該山部と隣り合う1つの前記谷部を前記筒状部が周方向で全周に亘って覆い隠すものとして形成されることを特徴とした請求項1に記載の電線用ブーツ。
【請求項4】
電線と、
前記電線の保護対象部を内方に収容させる筒状の外装部材と、
前記外装部材の一端部側に一端側を被せ、かつ、他端側を当該他端側との間の隙間を埋めた状態でブーツ保持部に保持させる電線用ブーツと、
を備え、
前記電線用ブーツは、筒状の前記外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく前記外装部材の前記一端部を収容させることが可能なブーツ本体と、前記ブーツ本体の前記内周壁から突出させた当該ブーツ本体の筒軸と同軸の少なくとも1つの環状体と、を有し、
前記環状体は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部を前記外装部材の筒軸と同軸の筒状部へと弾性変形させることが可能で、かつ、前記外装部材の外周壁に前記筒状部の内周壁を周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成されることを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項5】
電線と、
前記電線の保護対象部を内方に収容させる筒状の外装部材と、
前記外装部材の一方の端部側に一端側を被せ、かつ、他端側を当該他端側との間の隙間を埋めた状態で第1ブーツ保持部に保持させる第1電線用ブーツと、
前記外装部材の他方の端部に一端側を被せ、かつ、他端側を当該他端側との間の隙間を埋めた状態で第2ブーツ保持部に保持させる第2電線用ブーツと、
を備え、
前記第1電線用ブーツと前記第2電線用ブーツは、筒状の前記外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく前記外装部材の前記一方の端部を収容させることが可能なブーツ本体と、前記ブーツ本体の前記内周壁から突出させた当該ブーツ本体の筒軸と同軸の少なくとも1つの環状体と、をそれぞれに有し、
前記環状体は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部を前記外装部材の筒軸と同軸の筒状部へと弾性変形させることが可能で、かつ、前記外装部材の外周壁に前記筒状部の内周壁を周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成されることを特徴としたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線用ブーツ及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスにおいては、筒状の電線用ブーツを電線に被せることがある。その電線用ブーツは、電線に対しての防水や防塵を図るためのものであり、合成ゴム等の柔軟性を持たせた材料で成形されている。例えば、下記の特許文献1には、電線に被せたゴムブーツについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-220974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤハーネスにおいては、電線と周辺部品との干渉を防ぐために、電線の保護対象部を筒状の外装部材(例えば、コルゲートチューブ)の内方に収容させることがある。そして、このワイヤハーネスにおいては、その外装部材の中の電線に対する防水や防塵を図るべく、外装部材の外周壁側と電線用ブーツの内周壁側とを周方向で全周に亘って密着させた状態で、この外装部材に対して電線用ブーツを被せる場合がある。この場合、電線用ブーツは、外装部材への密着性を高めるために、その内周壁の成す内部空間における筒軸方向に対する直交断面の断面積が、外装部材の筒軸方向に対する直交断面における外殻線の内側の断面積よりも小さくなるように成形される。よって、電線用ブーツは、外装部材に対して組み付ける際に、その柔軟性を利用して、その内部空間の断面積が外装部材の断面積よりも大きくなるように拡管させた状態で保持させ、その中に外装部材に差し入れてから保持状態の解除と共に縮管させることによって、内周壁側を外装部材の外周壁側に密着させる。従来のワイヤハーネスは、このような電線用ブーツの拡管作業を必要とするので、電線用ブーツを外装部材に組み付ける際に一手間かかる。
【0005】
そこで、本発明は、外装部材に対する組付け作業性に優れた電線用ブーツ及びワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明に係る電線用ブーツは、電線の保護対象部を内方に収容させる筒状の外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく前記外装部材の一端部を収容させることが可能なブーツ本体と、前記ブーツ本体の前記内周壁から突出させた当該ブーツ本体の筒軸と同軸の少なくとも1つの環状体と、を有し、前記環状体は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部を前記外装部材の筒軸と同軸の筒状部へと弾性変形させることが可能で、かつ、前記外装部材の外周壁に前記筒状部の内周壁を周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成されることを特徴としている。
【0007】
また、上記目的を達成する為、本発明に係るワイヤハーネスは、電線と、前記電線の保護対象部を内方に収容させる筒状の外装部材と、前記外装部材の一端部側に一端側を被せ、かつ、他端側を当該他端側との間の隙間を埋めた状態でブーツ保持部に保持させる電線用ブーツと、を備え、前記電線用ブーツは、筒状の前記外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく前記外装部材の前記一端部を収容させることが可能なブーツ本体と、前記ブーツ本体の前記内周壁から突出させた当該ブーツ本体の筒軸と同軸の少なくとも1つの環状体と、を有し、前記環状体は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部を前記外装部材の筒軸と同軸の筒状部へと弾性変形させることが可能で、かつ、前記外装部材の外周壁に前記筒状部の内周壁を周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成されることを特徴としている。
【0008】
また、上記目的を達成する為、本発明に係るワイヤハーネスは、電線と、前記電線の保護対象部を内方に収容させる筒状の外装部材と、前記外装部材の一方の端部側に一端側を被せ、かつ、他端側を当該他端側との間の隙間を埋めた状態で第1ブーツ保持部に保持させる第1電線用ブーツと、前記外装部材の他方の端部に一端側を被せ、かつ、他端側を当該他端側との間の隙間を埋めた状態で第2ブーツ保持部に保持させる第2電線用ブーツと、を備え、前記第1電線用ブーツと前記第2電線用ブーツは、筒状の前記外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく前記外装部材の前記一方の端部を収容させることが可能なブーツ本体と、前記ブーツ本体の前記内周壁から突出させた当該ブーツ本体の筒軸と同軸の少なくとも1つの環状体と、をそれぞれに有し、前記環状体は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部を前記外装部材の筒軸と同軸の筒状部へと弾性変形させることが可能で、かつ、前記外装部材の外周壁に前記筒状部の内周壁を周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電線用ブーツは、ブーツ本体の内周壁と外装部材の外周壁との間の環状の隙間を環状体で埋めることができる。よって、この電線用ブーツは、外部の水や塵埃を外装部材の一端部の開口にまで到達させないので、その外装部材の一端部の開口から当該外装部材の中への水の浸入や塵埃の侵入を抑止することができる。このため、この電線用ブーツは、その中の電線に対する防水性能と防塵性能を確保することができる。更に、この電線用ブーツのブーツ本体は、外装部材よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁の内側に当該内周壁に接触させることなく外装部材の一端部を収容させ得るものとして形成されている。よって、この電線用ブーツは、外装部材をブーツ本体の中へと収容する際に、従来のように拡管させなくても、外装部材をブーツ本体の中に挿入することができるので、外装部材に対する組付け作業性に優れている。従って、本発明に係る電線用ブーツは、その中の電線に対する防水性能と防塵性能を確保しながらも、外装部材に対する組付け作業性に優れたものとなっている。また、本発明に係るワイヤハーネスは、このような電線用ブーツを具備するものであり、この電線用ブーツが得られる効果を同様に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態とその変形形態の電線用ブーツ及びワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の電線用ブーツを適用した際の図1のX-X線断面図である。
図3図3は、変形形態の電線用ブーツを適用した際の図1のX-X線断面図である。
図4図4は、実施形態における組付け前の電線用ブーツと外装部材を示す分解斜視図である。
図5図5は、図4のX-X線断面図である。
図6図6は、変形形態における組付け前の電線用ブーツと外装部材を示す分解斜視図である。
図7図7は、図6のX-X線断面図である。
図8図8は、ワイヤハーネスの具体例の1つについて説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電線用ブーツ及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
本発明に係る電線用ブーツ及びワイヤハーネスの実施形態を図1から図8に基づいて説明する。
【0013】
図1及び図2の符号10Aは、実施形態の電線用ブーツを示す。そして、図1及び図3の符号10Bは、その実施形態の変形形態の電線用ブーツを示す。但し、以下においては、実施形態の電線用ブーツ10Aと変形形態の電線用ブーツ10Bとで共通の説明になる場合、符号10を用いて電線用ブーツを示すことにする。また、図1から図3の符号WHは、その実施形態の電線用ブーツ10A又は変形形態の電線用ブーツ10Bが構成要素の1つとして設けられた実施形態又は変形形態のワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネスWHは、その実施形態の電線用ブーツ10A又は変形形態の電線用ブーツ10Bの他に、電線Weと、この電線Weが周辺部品に干渉することを防ぐ外装部材20と、を少なくとも備えている。
【0014】
先ず、外装部材20について説明する。
【0015】
外装部材20は、合成樹脂等の絶縁性材料で筒状に成形される。この外装部材20は、その内方に電線Weの保護対象部を収容させることによって、その保護対象部を周辺部品に干渉させないように保護するものである。この外装部材20においては、1本又は複数本の電線Weの保護対象部を内方に収容させ、その電線Weを筒軸方向における双方の端部20a,20bの開口20a,20bから外方に引き出させる(図2及び図3)。
【0016】
ここで示す外装部材20としては、外周壁側で山となる環状の山部21と外周壁側で谷となる環状の谷部22とが筒軸方向に交互に並べられたコルゲートチューブを用いる(図1から図7)。ここでは、円環状の山部21と円環状の谷部22とが交互に並べられた円筒形状のコルゲートチューブを外装部材20として用いている。但し、外装部材20は、外周壁に凹凸の無い筒形状(例えば、筒軸方向に対する直交断面形状が電線用ブーツ10における後述するブーツ本体11との相似形)を成すものであってもよい。
【0017】
続いて、電線用ブーツ10(電線用ブーツ10A,10B)について説明する。
【0018】
電線用ブーツ10は、柔軟性と弾性を持たせるべく、合成ゴムを用いて成形される。この電線用ブーツ10は、その一端10a側の開口10aから外装部材20の一端部(一方の端部20a又は他方の端部20b)を内部空間に挿入させる(図1から図7)。そして、この電線用ブーツ10は、その外装部材20の一端部側に一端10a側を被せ、この一端10a側の内方で当該一端10a側を外装部材20の一端部に対して周方向で全周に亘って密着させる(図1から図3)。尚、ここで示す電線用ブーツ10は、その他端10b側にまで外装部材20の一端部を挿入させている(図2及び図3)。
【0019】
また、この電線用ブーツ10は、その他端10b側を当該他端10b側との間の隙間を埋めた状態でブーツ保持部Caaに保持させる(図2及び図3)。そのブーツ保持部Caaは、例えば、電線Weを電気接続させる電気機器(補機等)又は電線Weを他の電線Weに電気接続させるための中継器等の筐体Caの一部として形成されている。例えば、このブーツ保持部Caaは、電線用ブーツ10の他端10b側を収容させ、この他端10b側の外周壁が周方向で全周に亘って密着されることによって、この他端10b側を当該他端10b側との間の隙間を埋めた状態で保持するものであってもよい。また、このブーツ保持部Caaは、電線用ブーツ10の他端10b側が被せられ、この他端10b側の内方で当該他端10b側が周方向で全周に亘って密着されることによって、この他端10b側を当該他端10b側との間の隙間を埋めた状態で保持するものであってもよい。
【0020】
尚、この電線用ブーツ10は、一端10a側を外装部材20の一端部に対して周方向で全周に亘って密着させると共に、それとは別の外装部材20の一端部(一方の端部20a又は他方の端部20b)に他端10b側を被せ、この他端10b側の内方で当該他端10b側を外装部材20の一端部に対して周方向で全周に亘って密着させてもよい。
【0021】
この電線用ブーツ10は、筒状のブーツ本体11と、このブーツ本体11の中に設けた少なくとも1つの環状体12と、を有する(図1から図7)。実施形態の電線用ブーツ10Aは、その環状体12を1つ有するものとして例示している。一方、変形形態の電線用ブーツ10Bは、その環状体12を2つ有するものとして例示している。
【0022】
ブーツ本体11は、外装部材20よりも大きな筒状に形成される。そして、このブーツ本体11は、その内周壁11aの内側に当該内周壁11aに接触させることなく外装部材20の一端部(一方の端部20a又は他方の端部20b)を収容させることが可能な形状のものとして形成される(図2及び図3)。つまり、ブーツ本体11は、その内周壁11aの成す内部空間における筒軸方向に対する直交断面の断面積が、外装部材20の外周壁の筒軸方向に対する直交断面における外殻線の内側の断面積よりも大きくなるように形成される。ここで示すブーツ本体11は、その内周壁11aの成す内部空間における筒軸方向に対する直交断面の断面積が、外装部材20の山部21の筒軸方向に対する直交断面における外殻線の内側の断面積よりも大きくなるように形成されている。そして、ここで示すブーツ本体11は、円筒形状に形成されている。
【0023】
環状体12は、ブーツ本体11の中で少なくとも外装部材20が収容されている場所にだけ設ければよい。ここで示す電線用ブーツ10は、一端10a側にだけ環状体12を設けている(図2図3図5及び図7)。
【0024】
この環状体12は、ブーツ本体11の内周壁11aから突出させた当該ブーツ本体11の筒軸と同軸の環状形に形成される。この環状体12は、外周部側の起点から内周面までの間の環状部12a(図4から図7)を外装部材20の筒軸と同軸の筒状部12b(図2及び図3)へと弾性変形させることが可能で、かつ、外装部材20の外周壁に筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って密着させることが可能なものとして形成される。よって、この環状体12は、そのような弾性変形を可能にするべく、平板の環状形に形成される(図4から図7)。そして、この環状体12は、その環状部12aの内周面12aの成す内部空間における筒軸方向に対する直交断面の断面積が、外装部材20の山部21の筒軸方向に対する直交断面における外殻線の内側の断面積よりも小さくなるように形成される(図5及び図7)。つまり、環状体12は、ブーツ本体11の中に外装部材20が挿入されてきたときに、この外装部材20の一端部(一方の端部20a又は他方の端部20b)の端面で環状部12aの環状面が押動され且つ筒状部12bへと弾性変形させられる形状に形成される。ここで示す環状体12は、平板の円環状形に形成されている。
【0025】
電線用ブーツ10は、このようなブーツ本体11と環状体12とが設けられているので、ブーツ本体11の内周壁11aと外装部材20の外周壁との間の環状の隙間を環状体12で埋めることができる。よって、この電線用ブーツ10は、少なくとも1つの環状体12が一端10a側の開口10aに設けられている場合、その一端10a側の開口10aからブーツ本体11の内周壁11aと外装部材20の外周壁との間への外部からの水の浸入や塵埃の侵入を抑止することができる。また、この電線用ブーツ10は、環状体12が一端10a側の開口10aよりも奥に設けられている場合、その一端10a側の開口10aからブーツ本体11の内周壁11aと外装部材20の外周壁との間に外部から入り込んだ水や塵埃を環状体12でせき止めることができる。電線用ブーツ10は、環状体12の配置がその何れの場合であっても、外部の水や塵埃を外装部材20の一端部の開口(一方の端部20aの開口20a又は他方の端部20bの開口20b)にまで到達させないので、その外装部材20の一端部の開口から当該外装部材20の中への水の浸入や塵埃の侵入を抑止することができる。従って、この電線用ブーツ10は、その中の電線Weに対する防水性能と防塵性能を確保することができる。
【0026】
具体的に、環状体12は、この例示の如く外装部材20としてコルゲートチューブを用いる場合、少なくとも1つの山部21に対して弾性変形後の筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って密着させるものとして形成される(図2図3図5及び図7)。
【0027】
例えば、この環状体12は、1つの山部21に対してだけ弾性変形後の筒状部12bを密着させる場合、外装部材20の挿入に伴う環状部12aの弾性変形によって、その山部21の頂部の外周壁(この例示では頂面)に対して周方向で全周に亘って内周壁12bを密着させた円筒形状の筒状部12bが形作られるものとして形成される。これにより、この電線用ブーツ10は、ブーツ本体11の内周壁11aと山部21の頂部の外周壁(この例示では頂面)との間の環状の隙間を環状体12で埋めることができるので、先に示した防水性能と防塵性能を確保することができる。
【0028】
但し、環状体12は、このように、1つの山部21の頂部の外周壁に対してだけ弾性変形後の筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って密着させる場合、筒軸方向における外装部材20の相対的な位置関係にずれが生じたときに、その1つの山部21に対して筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って密着させ難くなってしまう可能性がある。従って、環状体12は、1つの山部21に対してだけ弾性変形後の筒状部12bを密着させる場合、外装部材20の挿入に伴う環状部12aの弾性変形によって、その山部21の頂部の外周壁(この例示では頂面)に対して周方向で全周に亘って内周壁12bを密着させた円筒形状の筒状部12bが形作られることが可能で、かつ、筒軸方向における外装部材20の相対的な位置関係にずれが生じたときに、その山部21の頂部と谷部22の谷底とを繋ぐ傾斜面又は山部21の頂部における当該傾斜面との境界部分に対して周方向で全周に亘って内周壁12bを密着させた円錐筒形状の筒状部12bが形作られることが可能なものとして形成されることが望ましい。この環状体12は、筒軸方向における外装部材20の相対的な位置関係にずれが生じたときに、筒状部12bが谷部22に入り込んで円錐筒形状となり、この筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って山部21の外周壁に密着させる。
【0029】
しかしながら、環状体12においては、円筒形状の筒状部12bと円錐筒形状の筒状部12bの双方への弾性変形を考慮した場合、山部21の外周壁に対する筒状部12bの密着度合いが外装部材20の相対的な位置毎にばらついて、その位置毎に防水性能や防塵性能が異なるものになってしまう可能性がある。
【0030】
そこで、環状体12は、この例示の如く外装部材20としてコルゲートチューブを用いる場合、筒軸方向における外装部材20の相対的な位置ずれを考慮して、1つの山部21に対して弾性変形後の筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って密着させ、かつ、筒軸方向で当該山部21と隣り合う1つの谷部22を筒状部12bが周方向で全周に亘って覆い隠すものとして形成されることが望ましい(図2図3図5及び図7)。これにより、この電線用ブーツ10は、筒軸方向における外装部材20の相対的な位置に拘わらず、ブーツ本体11の内周壁11aと少なくとも1つの山部21の頂部の外周壁(この例示では頂面)との間の環状の隙間を環状体12で埋めることができる。従って、この電線用ブーツ10は、筒軸方向における外装部材20の相対的な位置に拘わらず、先に示した防水性能と防塵性能を確保することができる。
【0031】
ここで示す環状体12は、その防水性能と防塵性能をより確実に得るために、1つの谷部22を筒軸方向で挟んで隣り合う2つの山部21に対して弾性変形後の筒状部12bの内周壁12bを周方向で全周に亘って密着させている(図2図3図5及び図7)。
【0032】
ここで、このワイヤハーネスWHにおいては、電線用ブーツ10における一端10a側の開口10aを塞ぐべく、この一端10a側の外周壁から外装部材20の外周壁(一端10a側の開口10aから飛び出ている部分の外周壁)に亘って隙間無くテープ(図示略)を巻き付けてもよい。これにより、このワイヤハーネスWHにおいては、より高い防水性能と防塵性能を得ることができる。
【0033】
ところで、ここまでで示したワイヤハーネスWHにおいては、外装部材20の一方の端部20aに電線用ブーツ10の一端10a側を被せることで、その一方の端部20aの開口20aを外部から遮断しているが、この外装部材20の他方の端部20bについて言及していない。これは、その他方の端部20bの開口20bについては、一方の端部20aとは別の電線用ブーツ10で外部から遮断してもよく、他方の端部20bを箱内に収める等の別の方法で外部から遮断してもよいからである。以下においては、ワイヤハーネスWHの具体例の1つとして、実施形態の電線用ブーツ10Aが用いられた前者の構成を示す(図8)。ここでは、一方の電線用ブーツ10Aを「第1電線用ブーツ10A1」と称し、他方の電線用ブーツ10Aを「第2電線用ブーツ10A2」と称する。また、ここでは、第1電線用ブーツ10A1を保持するための一方のブーツ保持部Caaを「第1ブーツ保持部」Caa1と称し、第2電線用ブーツ10A2を保持するための他方のブーツ保持部Caaを「第2ブーツ保持部」Caa2と称する。
【0034】
ここで示すワイヤハーネスWHは、電線Weと、外装部材20と、外装部材20の一方の端部20a側に一端10a側を被せる第1電線用ブーツ10A1と、外装部材20の他方の端部20b側に一端10a側を被せる第2電線用ブーツ10A2と、を備える(図8)。
【0035】
第1電線用ブーツ10A1は、外装部材20の一方の端部20a側に一端10a側を被せ、かつ、他端10b側を当該他端10b側との間の隙間を埋めた状態で第1ブーツ保持部Caa1に保持させる(図8)。また、第2電線用ブーツ10A2は、外装部材20の他方の端部20b側に一端10a側を被せ、かつ、他端10b側を当該他端10b側との間の隙間を埋めた状態で第2ブーツ保持部Caa2に保持させる(図8)。そして、この第1電線用ブーツ10A1と第2電線用ブーツ10A2は、先に示したブーツ本体11と、一端10a側に設けた少なくとも1つの環状体12と、をそれぞれに有する(図8)。ここで示す第1電線用ブーツ10A1と第2電線用ブーツ10A2は、ブーツ本体11と、一端10a側に設けた1つの環状体12と、をそれぞれに有している。第1電線用ブーツ10A1と第2電線用ブーツ10A2のそれぞれの環状体12は、先の例示と同じ形状のものとして形成されている(図8)。
【0036】
以上示したように、電線用ブーツ10(電線用ブーツ10A,10B)は、ブーツ本体11の内周壁11aと外装部材20の外周壁との間の環状の隙間を環状体12で埋めることができる。よって、この電線用ブーツ10は、外部の水や塵埃を外装部材20の一端部の開口(一方の端部20aの開口20a又は他方の端部20bの開口20b)にまで到達させないので、その外装部材20の一端部の開口から当該外装部材20の中への水の浸入や塵埃の侵入を抑止することができる。このため、この電線用ブーツ10は、その中の電線Weに対する防水性能と防塵性能を確保することができる。更に、この電線用ブーツ10(電線用ブーツ10A,10B)は、ブーツ本体11の内周壁11aの成す内部空間における筒軸方向に対する直交断面の断面積が、外装部材20の外周壁の筒軸方向に対する直交断面における外殻線の内側の断面積よりも大きくなるように形成されている。つまり、ブーツ本体11は、外装部材20よりも大きな筒状に形成され、かつ、その内周壁11aの内側に当該内周壁11aに接触させることなく外装部材20の一端部を収容させ得るものとして形成されている。よって、この電線用ブーツ10は、外装部材20をブーツ本体11の中へと収容する際に、従来のように拡管させなくても、外装部材20をブーツ本体11の中に挿入することができるので、外装部材20に対する組付け作業性に優れている。従って、この電線用ブーツ10(電線用ブーツ10A,10B)は、その中の電線Weに対する防水性能と防塵性能を確保しながらも、外装部材20に対する組付け作業性に優れたものとなっている。そして、この電線用ブーツ10は、その簡便な組付け作業故、原価の低減に寄与するものとなっている。
【0037】
また、この電線用ブーツ10は、環状体12を複数設けることによって(例えば、変形形態の電線用ブーツ10Bのように2つの環状体12を設けることによって)、環状体12が1つの実施形態の電線用ブーツ10Aと比較して、より高い防水性能と防塵性能を得ることができる。そして、この電線用ブーツ10においては、環状体12を複数設ける場合、外装部材20の外周壁に対するそれぞれの弾性変形後の筒状部12bの密着度合いのばらつきを抑え且つ密着性を高めるべく、それぞれの弾性変形後の筒状部12bが互いに重なり合わない形状の環状体12を形成することが望ましい。また、この電線用ブーツ10においては、コルゲートチューブとしての外装部材20に対応させた環状体12を複数設ける場合、全ての環状体12を同じ形状のものとして形成してもよく、弾性変形後の筒状部12bの形状が例えば先の例示の如く異なる異形状の環状体12を混在させてもよい。
【0038】
また、ワイヤハーネスWHは、このような電線用ブーツ10(電線用ブーツ10A,10B)を具備するものであり、この電線用ブーツ10(電線用ブーツ10A,10B)が得られる効果を同様に奏することができる。
【符号の説明】
【0039】
10,10A,10B 電線用ブーツ
10A1 第1電線用ブーツ
10A2 第2電線用ブーツ
10a 一端
10b 他端
11 ブーツ本体
11a 内周壁
12 環状体
12a 環状部
12b 筒状部
12b 内周壁
20 外装部材
20a 一方の端部(一端部)
20b 他方の端部(一端部)
21 山部
22 谷部
Caa ブーツ保持部
Caa1 第1ブーツ保持部
Caa2 第2ブーツ保持部
We 電線
WH ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8