(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】後方視認装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/26 20220101AFI20240625BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60R1/26 200
B60R11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020210124
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 親彦
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-173389(JP,A)
【文献】特開2020-120375(JP,A)
【文献】特開2020-093612(JP,A)
【文献】特開2018-117223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00 - 1/04
B60R 1/08 - 1/31
B60R 11/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に設けられるウイング本体(31)と、
前記ウイング本体に取り付けられるウイングカバー(32)と、
前記ウイングカバー内で前記ウイング本体に取り付けられ、車外を撮影するカメラ(41)と、
を備え、
前記ウイングカバーは、表面にメッキ処理が施されたメッキ部(50)を有し、
前記カメラのカメラボデー(46)は、伝熱手段(51,52)を介して前記メッキ部に密着して
おり、
前記メッキ部は、前記ウイングカバーに設けられた複数のフィン(36)に形成されている、後方視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側部に設けられるドアミラー等の後方視認装置に用いられ、ミラーの代わりにカメラの映像で後方を視認することができるカメラモニターシステム(以下、CMS)が知られている。特許文献1に開示されたCMS用のドアミラーは、車両の側方に突き出す翼状のハウジングと、ハウジング内に設けられたカメラとを備えている。カメラを収納できる程度の大きさにハウジングを小さくすることで、装置の小型化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、CMSに使用するカメラは高解像カメラであるため、発熱量も多い。そのため従来は、表面積を大きくして十分な放熱性を確保するためにカメラボデーに多数のフィンを設けていた。しかし、カメラの高性能化に伴う発熱量の増加に対応するには不十分であり、放熱性のさらなる向上が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、カメラの放熱性が向上した後方視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の後方視認装置は、車両の側部に設けられるウイング本体と、ウイング本体に取り付けられるウイングカバーと、ウイングカバー内でウイング本体に取り付けられ、車外を撮影するカメラとを備える。
【0007】
ウイングカバーは、表面にメッキ処理が施されたメッキ部を有する。カメラのカメラボデーは、伝熱手段を介してメッキ部に密着している。これによりカメラの熱をウイングカバーからも積極的に放熱させることができ、カメラの放熱面積にウイングカバーの表面積を加算することができる。そのため、カメラの放熱性を向上させることができる。また、カメラのヒートシンクとして機能するカメラボデーを最小限に設定できるため、後方視認装置を小型化することができる。さらに、ウイングカバーをメッキすることにより、電磁波シールド効果も付与される。
【0008】
ここで、ウイングカバーは車外空間に露出しており、車両走行時に走行風を受ける。そのため、ウイングカバーはカメラの放熱部材として好適である。
【0009】
また、メッキ部は、ウイングカバーに設けられた複数のフィンに形成されている。これによりカメラの熱を効果的にウイングカバーに伝熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のドアミラー装置の外観を示す斜視図。
【
図2】
図1のドアミラー装置を矢印II方向から見た上面図。
【
図3】
図2のドアミラー装置を矢印III方向の車両後方から見た図。
【
図4】
図2のドアミラー装置のウイング上カバーおよび先端カバーを取り外した状態を示す図であって、ドアミラー装置の走行位置を示す図。
【
図5】
図2のドアミラー装置の回動軸心を通る断面図。
【
図8】
図4のカメラボデーおよびウイング下カバーの要部断面図。
【
図10】
図9のカメラボデーおよびウイング下カバーの要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。これらの実施形態の後方視認装置は、車両の側部であって左右の前席ドアの外側に設けられる一対のドアミラー装置であり、カメラの映像で後方を視認することができるカメラモニターシステム(以下、CMS)に用いられるものである。
【0012】
(第1実施形態)
図1~
図4に示すように、ドアミラー装置10は、車両の側部に設けられるベース20と、ベース20に対して回動可能に設けられたウイング30と、格納ユニット40、カメラ41およびターンランプ42を含む複数の電器とを備える。以下、格納ユニット40、カメラ41およびターンランプ42等の電子機器および電気機器を区別しない場合、単に「電器」と記載する。
【0013】
図4および
図5に示すように、ベース20は、車体に取り付けられてドアミラー装置10を支持するベース本体21と、ベース本体21をカバーするベースカバー22とを含む。ベースカバー22は、ベース上カバー23およびベース下カバー24を含む。ベース本体21には格納ユニット40が取り付けられている。格納ユニット40は、ベース本体21に固定された図示しない固定部と、内蔵する図示しないモータの動力により固定部に対して所定の回動軸心AXまわりに回動する回動部45とを有する。
【0014】
ウイング30は、回動部45に固定されたウイング本体31と、ウイング本体31をカバーするウイングカバー32とを含む。ウイングカバー32は、ウイング上カバー33、ウイング下カバー34および先端カバー35を含む。カメラ41は、ウイングカバー32内でウイング本体31に取り付けられており、先端カバー35の開口から車外を撮影できる。ターンランプ42は、ウイングカバー32に取り付けられており、アウターレンズが外部に露出するように配置されている。
【0015】
格納ユニット40が作動すると、ウイング本体31およびこれに取り付けられたウイングカバー32および電器が回動部45と一体に回動軸心AXまわりに回動する。
図4に示すウイング30は、走行位置(すなわち車両走行時の位置)に位置した状態である。ウイング30は、走行位置から、回動軸心AXまわりの周方向の一方に位置する格納位置まで格納ユニット40による格納作動によって回動可能である。
【0016】
ここで、ミラーを備える従来のドアミラー装置について考える。このタイプのドアミラー装置では、ミラーを収容できる比較的大きなハウジングが設けられる。そのため、カメラが比較的大きくても問題ない。しかし、CMS用のドアミラー装置10では、ミラーに代えてカメラを使用することによる装置の薄型化・小型化のメリットを享受するためには、カメラを小さくする必要がある。
【0017】
CMS用のカメラは高解像カメラであるため、発熱量も多い。そのため従来のCMS用のドアミラー装置では、表面積を大きくして十分な放熱性を確保するためにカメラボデーに多数のフィンを設けていた。しかし、カメラの高性能化に伴う発熱量の増加に対応するには不十分であり、放熱性のさらなる向上が望まれていた。
【0018】
この課題を解決するため、
図6、
図7および
図8に示すように、ウイング下カバー34は、表面にメッキ処理が施されたメッキ部50を有する。第1実施形態では、ウイングカバー32の全体にメッキ処理が施されている。そしてカメラ41のカメラボデー46は、伝熱手段としての高熱伝導シート51を介してメッキ部50に密着している。これによりカメラ41の熱をウイング下カバー34からも積極的に放熱させることができ、カメラ41の放熱面積にウイング下カバー34の表面積を加算することができる。そのため、カメラ41の放熱性を向上させることができる。また、カメラ41のヒートシンクとして機能するカメラボデー46を最小限に設定できるため、ドアミラー装置10を小型化することができる。さらに、ウイングカバー32をメッキすることにより、電磁波シールド効果も付与される。
【0019】
ウイングカバー32は車外空間に露出しており、車両走行時に走行風を受ける。そのため、ウイングカバー32はカメラ41の放熱部材として好適である。
【0020】
ウイング下カバー34には、複数のフィン36が設けられている。高熱伝導シート51は、複数のフィン36の先端部に密着している。つまり、メッキ部50は、ウイング下カバー34に設けられた複数のフィン36に形成されている。これによりカメラ41の熱を効果的にウイング下カバー34に伝熱させることができる。
【0021】
(第2実施形態)
第2実施形態では、
図9および
図10に示すように、カメラボデー46は複数の溝47を有する。メッキ部50が形成されたフィン36は溝47に挿入されている。溝47内には放熱グリス52が充填されている。カメラボデー46は、放熱グリス52を介してメッキ部50に密着している。これによりカメラボデー46とウイング下カバー34との接触面積がより大きくなり、カメラ41の熱を一層効果的にウイング下カバー34に伝熱させることができる。
【0022】
(他の実施形態)
他の実施形態では、ウイング下カバーにフィンが設けられず、カメラボデーがウイング下カバーのメッキされた平面または曲面に放熱手段を介して密着するように構成されてもよい。
他の実施形態では、ドアミラー装置に格納機能が備わっていなくてもよい。すなわちドアミラー装置は格納ユニットを備えず、ウイングが車体に直接固定されてもよい。
【0023】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
31 ウイング本体、32 ウイングカバー、36 フィン、
41 カメラ、46 カメラボデー、
50 メッキ部、51,52 伝熱手段。