(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240625BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240625BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61F13/15 142
A61F13/511 110
A61F13/511 400
A61F13/534 100
A61F13/534 210
A61F13/534 220
(21)【出願番号】P 2020210381
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 早紀
(72)【発明者】
【氏名】長島 啓介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 富美子
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217465(JP,A)
【文献】特開2012-239531(JP,A)
【文献】特開2010-115479(JP,A)
【文献】特開2018-023473(JP,A)
【文献】特開2017-113513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート及び両シート間に位置する吸収体を備え、
前記表面シートと裏面シートとの間に、抗菌剤が施された部材が配置されており、
前記部材は、その幅が、前記表面シートの幅よりも小さく、且つ少なくとも股下部に位置しており、
前記表面シートは複数本の直線状エンボス部を有し、
前記直線状エンボス部は、その延びる方向が異なる第1エンボス部及び第2エンボス部を有し、
第1エンボス部及び第2エンボス部は互いに交差するように延びており、
前記表面シートにおいては、
第1エンボス部と第2エンボス部とが交差する位置が、エンボス加工が施されていない非エンボス部となっており、
前記表面シートは、第1エンボス部と第2エンボス部とが交差して画成された複数種の凸状領域を有し、
複数種の前記凸状領域は、厚みが相違する少なくとも3種類の領域を有し、
最も厚みが大きい領域を大凸部、次に厚みが大きい領域を中凸部、最も厚みが小さい領域を小凸部としたとき、1つの該小凸部の周囲に該大凸部及び該中凸部のみが存在するように、これらの凸部が配置されており、
平面視において、前記抗菌剤が施されている前記部材と、前記表面シートにおける前記非エンボス部とが重なって
おり、
隣り合う第1エンボス部のピッチ及び隣り合う第2エンボス部のピッチは、該ピッチが狭い狭ピッチとピッチが広い広ピッチとからなり、前記狭ピッチと前記広ピッチが交互に位置するよう配置されており、
第1エンボス部における前記広ピッチ/前記狭ピッチの値が1.11以上1.91以下であり、
第2エンボス部における前記広ピッチ/前記狭ピッチの値が1.11以上1.91以下である、吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートは、肌対向面側に配される上部繊維層と、非肌対向面側に配される下部繊維層とを備えており、
上部繊維層を構成する繊維の繊度よりも、下部繊維層を構成する繊維の繊度の方が小さい、請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートは、肌対向面側に配される上部繊維層と、非肌対向面側に配される下部繊維層とを備えており、
下部繊維層を構成する繊維の接触角よりも、上部繊維層を構成する繊維の接触角の方が大きい、請求項
1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体が、前記表面シートに近い側に位置する第1吸収層と、前記裏面シートに近い側に位置する第3吸収層と、両吸収層の間に位置する第2吸収層とを備え、
前記抗菌剤が第2吸収層に施されており、
第1吸収層に含まれる吸水性ポリマーの坪量よりも、第2吸収層に含まれる吸水性ポリマーの坪量の方が高い、請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
第2吸収層が、第1繊維シートと、第2繊維シートと、両繊維シート間に位置する吸水性ポリマーとを備えた吸収性シートからなり、
第1繊維シートの繊維存在密度が第2繊維シートの繊維存在密度よりも高く、
前記抗菌剤が第1繊維シートに施されており、
第2吸収層は、前記吸収性シートが折り畳まれて、第1繊維シートどうしが対向する部位を有する、請求項
4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
第2吸収層は、前記吸収性シートが折り畳まれて、第1繊維シートと第2繊維シートとが対向する部位を更に有する、請求項
5に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生理用ナプキンや使い捨ておむつをはじめとする各種の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤を配合した吸収性物品に関する従来の技術としては例えば特許文献1及び2に記載のものが知られている。これらの文献においては、経血や尿などの体液を吸収・保持する吸収体に抗菌剤が配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-110443号公報
【文献】特開2019-162401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着用者から排泄された体液が、直ちに抗菌剤と接触する場合には、抗菌剤による抗菌効果が有効に発現し、臭いの発生が効果的に抑制される。しかし、着用者から排泄された体液が直ちに吸収体に吸収されず、表面シートを伝って面方向に拡散する場合には、体液が抗菌剤と接触するまでに時間を要することから、抗菌効果が速やかに発現しない場合がある。特に、表面シートに線状のエンボスが形成されている場合には、該線状のエンボスに案内されて体液が表面シートの面方向に拡散しやすいので、体液が抗菌剤と接触するまでに長時間を要することがある。
したがって本発明の課題は、抗菌剤が配された吸収性物品の改良にあり、更に詳細には排泄された体液が抗菌剤に接触しやすい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表面シート、裏面シート及び両シート間に位置する吸収体を備え、
前記表面シートと裏面シートとの間に、抗菌剤が施された部材が配置されており、
前記部材は、その幅が、前記表面シートの幅よりも小さく、且つ少なくとも股下部に位置しており、
前記表面シートは複数本の直線状エンボス部を有し、複数の該直線状エンボス部は互いに交差するように延びており、
前記表面シートにおいては、前記直線状エンボス部が交差する位置が、エンボス加工が施されていない非エンボス部となっており、
平面視において、前記抗菌剤が施されている前記部材と、前記表面シートにおける前記非エンボス部とが重なっている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着用者から排泄された体液が表面シートを伝って拡散しづらく、該体液が抗菌剤に接触しやすい吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品に用いられる表面シートに形成されるエンボス部のパターンの一実施形態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す表面シートの別の実施形態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体の一実施形態を示す幅方向に沿う厚み方向断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体の別の実施形態を示す幅方向に沿う厚み方向断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体の更に別の実施形態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体のまた更に別の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の吸収性物品は、着用者の身体に装着されて、着用者から排泄される経血や尿などの体液を吸収保持するために用いられる。そのような吸収性物品としては例えば生理用ナプキン、パンティライナ、失禁パッド、使い捨ておむつなどが挙げられるが、これらに限られない。
【0009】
吸収性物品は一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。そして吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の長手方向の中央部又はその近傍に位置している。
【0010】
吸収性物品は一般に、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に位置する吸収体とを備える。表面シートとしては、液透過性を有するシート、例えば不織布などを用いることができる。表面シートは、例えば1枚又は2枚以上の不織布を用いて構成することができる。
【0011】
一方、裏面シートとしては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0012】
吸収体は、吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体、吸水性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸水性ポリマーが担持された吸収性シートなどから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0013】
上述の表面シート、裏面シート及び吸収体に加え、吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の長手方向に沿う両側部に、長手方向に沿って延びる防漏カフが吸収性物品に配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝って吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
【0014】
吸収性物品は更に、非肌対向面の表面に粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層は、吸収性物品の着用状態において、該吸収性物品を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。
【0015】
吸収性物品には抗菌剤が施されている。抗菌剤は、表面シートと裏面シートとの間に位置する部材に施されている。抗菌剤が施されている部材としては、例えば吸収体や、表面シートと吸収体の間に配置されるサブレイヤーシートなどが挙げられる。吸収体が、吸収性コアと該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを備える場合には、抗菌剤は、吸収性コア又はコアラップシートのいずれか一方に施されているか、あるいは吸収性コア及びコアラップシートの双方に施されている。
【0016】
抗菌剤が施されている部材が上述したいずれのものあっても、該部材は、その幅が、表面シートの幅よりも小さいことが、吸収性物品を着用した際に、着用者の肌と、抗菌剤が施されている部材が配された領域とが密着し易くなり、体液との接触が起こり易い点から有利である。この利点を一層顕著なものとする観点から、抗菌剤が施されている部材の幅は、表面シートの幅の20%以上65%以下であることが好ましく、30%以上55%以下であることが更に好ましく、40%以上45%以下であることが一層好ましい。
【0017】
また、抗菌剤が施されている部材が配された領域が着用者の肌と一層密着し易くする観点から、抗菌剤が施されている部材の長さは表面シートの長さよりも短いことが好ましい。具体的には、表面シートの長さの20%以上60%以下であることが好ましく、25%以上50%以下であることが更に好ましい。
【0018】
表面シートの長さ及び幅は、吸収性物品を平面視した状態で測定される値である。したがって、例えば表面シートの両側部域が折り曲げられて、折り曲げられた部分が吸収体の非肌対向面側に配置される場合には、上述の定義に従う表面シートの幅は、該表面シートの実際の幅よりも小さくなる。
また、抗菌剤が施されている部材の長さ及び幅とは、該抗菌剤が該部材の全域に施されている場合には、吸収性物品を平面視した状態で測定される値である。一方、前記抗菌剤が前記部材の一部にのみ施されている場合には、該部材のうち、該抗菌剤が施されている領域を平面視した状態で測定される値である。
【0019】
抗菌剤が施されている部材は、吸収性物品における少なくとも股下部に位置していることが、着用者から排泄された体液を抗菌剤と効率的に接触させる観点から好ましい。吸収性物品における股下部とは、該吸収性物品を着用者の身体に装着させた状態において、着用者の排泄部に対向する部位のことである。ここで排泄部とは生理用ナプキンであれば膣口であり、おむつであれば排尿部のことである。一般的には、おむつや昼用のナプキン等のような吸収性物品では、吸収性物品を仮想的に長手方向に三等分したときの中央の部位のことである。ただし、夜用のナプキン等、臀部を広く覆うように後方部が長い物品である場合はこの限りではなく、例えば、ウイングを有する場合にはウイングの存在する縦方向の長さの範囲が股下部である。
【0020】
図1には、本発明の吸収性物品における表面シートの一実施形態が示されている。同図に示す表面シート10は、該表面シート10のいずれの位置においても坪量が実質的に同じになっている。「坪量が実質的に同じ」とは、意図的に坪量を部分的に変更することを排除し、且つ、表面シートの製造条件の意図的でない変動に起因して表面シートの坪量が不可避的に部分的に変動することを許容する趣旨である。
表面シート10は、その肌対向面に複数本の直線状エンボス部(以下、単に「エンボス部」ともいう。)11,12を有している。エンボス部11,12は、表面シート10を構成する繊維が、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工によって圧密化された部位である。したがって、エンボス部11,12は、表面シート10におけるエンボス部以外の部位よりも厚みが小さくなっている。
エンボス部11,12は、吸収性物品の着用状態において着用者から排泄された体液を該吸収性物品の面方向に誘導して、該吸収性物品全体の液吸収能を有効に利用する目的で形成される。
【0021】
エンボス部11,12は、
図1中、右上から左下へ向かう方向に延びる第1エンボス部11と、同図中、左上から右下へ向かう方向に延びる第2エンボス部12との2種類のエンボス部から構成されている。
第1エンボス部11は複数本形成されている。複数の第1エンボス部11は、互いに平行に延びている。
同様に、第2エンボス部12も複数本形成されている、複数の第2エンボス部12は、互いに平行に延びている。
第1エンボス部11及び第2エンボス部12はそれらの延びる方向が異なっている。つまり第1エンボス部11及び第2エンボス部12は互いに交差するように延びている。その結果、表面シート10は、複数の第1エンボス部11及び複数の第2エンボス部が交差して形成された複数の多角形領域、具体的には四辺形領域を有する。上述のとおり、第1エンボス部11及び第2エンボス部12は、表面シート10におけるエンボス部11,12以外の部位よりも厚みが小さくなっていることから、前記の多角形領域は、第1エンボス部11及び第2エンボス部12に対して相対的に凸部になっている。したがって以下の説明では、この多角形領域のことを「多角形凸状領域」ともいう。
一方、第1エンボス部11及び第2エンボス部12は、多角形凸状領域に対して相対的に凹部になっている。
【0022】
互いに平行に延びている複数の第1エンボス部11における隣り合う第1エンボス部11のピッチは、
図1に示すとおり、狭ピッチP1及び広ピッチP2の2種類のピッチからなることが好ましい。
複数の第1エンボス部11は、
図1に示すとおり、狭ピッチP1と広ピッチP2とが交互に位置するように配置されていることが好ましい。
狭ピッチP1及び広ピッチP2の寸法の関係は、P2/P1の値が好ましくは1.11以上1.91以下、更に好ましくは1.39以上1.53以下に設定されていることが、表面シート上で第1エンボス部11に沿った体液の拡散を防ぐ点から好ましい。
【0023】
一方、第2エンボス部12に関しては、互いに平行に延びている複数の第2エンボス部12における隣り合う第2エンボス部12のピッチは、
図1に示すとおり、狭ピッチQ1及び広ピッチQ2の2種類のピッチからなることが好ましい。
複数の第2エンボス部12は、
図1に示すとおり、狭ピッチQ1と広ピッチQ2とが交互に位置するように配置されていることが好ましい。
狭ピッチQ1及び広ピッチQ2の寸法の関係は、Q2/Q1の値が好ましくは1.11以上1.91以下、更に好ましくは1.39以上1.53以下に設定されていることが、表面シート上で第2エンボス部12に沿った体液の拡散を防ぐ点から好ましい。
【0024】
特に、第1エンボス部11における狭ピッチP1と、第2エンボス部12における狭ピッチQ1とは同じ寸法であることが好ましい。同様に、第1エンボス部11における広ピッチP2と、第2エンボス部12における広ピッチQ2とは同じ寸法であることが好ましい。各ピッチがこのような寸法関係にあることで、表面シート10には、面積及び厚みが異なる3種類の多角形凸状領域が形成される。これら3種類の多角形凸状領域のうち、最も厚みが大きい領域を大凸部21、次に厚みが大きい領域を中凸部22、最も厚みが小さい領域を小凸部23と呼ぶこととする。
【0025】
本実施形態においては、最も厚みが大きい大凸部21は、最も面積が大きい領域でもあり、最も厚みが小さい小凸部23は、最も面積が小さい領域でもある。また、厚みが大凸部21よりも小さく且つ小凸部23よりも大きい中凸部22は、面積も大凸部21よりも小さく且つ小凸部23よりも大きくなっている。このように大凸部21、中凸部22及び小凸部23を形成するためには、例えば表面シートを製造するときの原料繊維として、熱の付与によって伸長可能な繊維である熱伸長性繊維を用い、熱エンボス加工によって第1エンボス部11及び第2エンボス部12を形成すればよい。
【0026】
大凸部21、中凸部22及び小凸部23の配置関係に着目すると、
図1に示すとおり、1つの小凸部23の周囲に大凸部21及び中凸部22のみが存在するように、これら3種類の凸部が配置されている。詳細には、1つの小凸部23の周囲に4個の大凸部21と、4個の中凸部22とが位置している。そして、大凸部21と中凸部22とが交互に配置されている。
【0027】
図2に示すとおり、表面シート10においては、第1エンボス部11と第2エンボス部12とが交差する位置が、エンボス加工が施されていない非エンボス部13となっている。非エンボス部13においては、表面シート10を構成する繊維は圧密化されていない。したがって非エンボス部13の厚みは、第1エンボス部11の厚み及び第2エンボス部12の厚みよりも大きくなっている。なお、非エンボス部13には表面シート10を構成する繊維が存在しているので、該非エンボス部は貫通孔ではない。
図2において、符号13で示す非エンボス部の部分に円が描かれているところ、この円は非エンボス部が存在する領域を視覚化する目的で描いたものであり、実際の表面シート10に円が付されている訳ではない(後述する
図3についても同じ。)。
【0028】
第1エンボス部11と第2エンボス部12とが交差する位置が非エンボス部13になっていることで、
図2に示すとおり、第1エンボス部11は、短エンボス線11aと、長エンボス線11bとが交互に且つ直列に配置されたエンボス線列から構成される。
同様に、第2エンボス部12は、短エンボス線12aと、長エンボス線12bとが交互に且つ直列に配置されたエンボス線列から構成される。
第1エンボス部11における短エンボス線11aと、第2エンボス部12における短エンボス線12aとは同寸法であることが好ましい。同様に、第1エンボス部11における長エンボス線11bと、第2エンボス部12における長エンボス線12bとは同寸法であることが好ましい。
【0029】
本実施形態の吸収性物品においては、該吸収性物品を平面視したとき、上述した非エンボス部13と、抗菌剤が施されている部材とが重なっていることが有利である。このような位置関係を採用することで、着用者から排泄された体液が、表面シート10を透過しやすくなり、表面シート10の面方向への拡散が起こりづらくなる。その結果、体液と抗菌剤の接触が効率的に生じ、体液から生じる臭いを効果的に抑制することができる。詳細は以下に述べるとおりである。
第1エンボス部11及び第2エンボス部12を表面シート10に形成することで、着用者から排泄された体液は、これらのエンボス部11,12に誘導されて、吸収性物品の面方向に広がる。その結果、吸収性物品全体が有する液吸収能を効率的に利用できる。一方で、着用者から排泄された体液が吸収性物品の面方向に広がることは、抗菌剤と接触する体液の量が減少したり、抗菌剤と体液との接触に時間を要したりするという不都合が生じるおそれがある。このように、体液を吸収性物品の面方向に拡散させて、吸収性物品全体が有する液吸収能を効率的に利用することと、体液を抗菌剤に効率的に接触させることとは二律背反の関係にある。これに対して本発明においては、体液を誘導するために表面シートに形成した第1エンボス部11及び第2エンボス部12の交点を非エンボス部13とすることで、該非エンボス部13を通じての体液の十分且つ迅速な透過を実現させている。これによって、体液を吸収性物品の面方向に拡散させつつ、抗菌剤と接触する体液の量を増加させて体液を抗菌剤に効率的に接触させることが可能となる。
【0030】
非エンボス部13を通じての体液の十分且つ迅速な透過を実現させる観点から、第1エンボス部11を構成する短エンボス線11aと長エンボス線11bとの間隔は、0.5mm以上5mm以下に設定することが好ましく、更に好ましくは0.8mm以上3mm以下である。
第2エンボス部12を構成する短エンボス線12aと長エンボス線12bとの間隔も前記と同様である。
【0031】
本発明によって奏される上述の効果は、第1エンボス部11及び第2エンボス部12によって画成される多角形凸状領域が1種類であっても十分に奏されるが、
図1に示す実施形態のとおり、多角形凸状領域が複数種類であると、上述の効果が一層顕著なものとなる。その理由は以下に述べるとおりである。
図1に示す3種類の多角形凸状領域である大凸部21、中凸部22及び小凸部23においては、上述のとおり小凸部23の厚みが最も小さくなっている。したがって、着用者の肌に最も接し易いのが大凸部21であり、最も接し難いのが小凸部23である。しかも、小凸部23は大凸部21及び中凸部22のみよって囲まれているので、大凸部21と中凸部22により外力が緩衝されて小凸部23は厚み方向の変形が生じにくい。特に、
図1及び2に示すように、大凸部21を囲む多角形領域が菱形であり、中凸部22を囲む多角形領域が平行四辺形であり、小凸部23と中凸部22とを区画するエンボス線が該平行四辺形の短辺であると、大凸部21に加わった力が小凸部23に一層伝わり難くなる。このため、小凸部23を囲繞する多角形領域では、エンボス部11,12及び非エンボス部13の領域が維持され易くなるので、体液は面方向への拡散性と液透過性とを両立し易くなる。また、本実施形態の表面シート10では、均一な坪量、つまりどの位置においても坪量が同じであるので、各凸部の繊維存在密度を比較すると、小凸部23が最も高く、次いで中凸部22が高く、大凸部21の繊維存在密度が最も低くなっている。したがって小凸部23における体液の吸収は、中凸部22及び大凸部21に比べて遅くなりがちであり、小凸部23が吸収しきれなかった体液は、表面シート10の面方向に拡散しやすい傾向にある。しかし、小凸部23の周囲には上述のとおり中凸部22及び大凸部21のみが存在しているので、小凸部23が吸収しきれなかった体液は、繊維存在密度が相対的に低い中凸部22及び大凸部21によって効率的に吸収される。その結果、体液が表面シート10の面方向へ過度に拡散することが防止され、より多くの体液が抗菌剤と接触しやすくなる。なお、ここで「坪量が同じ」とは、表面シート10における各凸部、各エンボス部及びエンボス部間それぞれの坪量が厳密に同じ値であることの他、その差が5%以内である場合も含み、当該差は好ましくは3%以内、更に好ましくは1%以内である。
これに対して多角形凸状領域が1種類の場合には、体液が表面シート10の面方向へ過度に拡散してしまう場合があり(多角形凸状領域が過度に小面積の場合)、あるいは表面シート10の面方向への体液の拡散が不十分になってしまう場合がある(多角形凸状領域が過度に大面積の場合)。
【0032】
非エンボス部13を通じての体液の十分且つ迅速な透過を実現させる観点から、表面シート10は、その肌対向面側から非肌対向面側へ向けて体液を引き込みやすい構造を有していることが望ましい。この観点から表面シート10として、肌対向面側に配される上部繊維層と、非肌対向面側に配される下部繊維層とを備えたものを用い、上部繊維層を構成する繊維の繊度よりも、下部繊維層を構成する繊維の繊度を小さくすることが好ましい。このとき、上部繊維層を構成する繊維のうち最も平均繊維径が小さい繊維の平均繊維径よりも、下部繊維層を構成する繊維の平均繊維径が小さければ良い。このような構造を有する表面シートは、その肌対向面側から非肌対向面側へ向けて体液を引き込みやすいので、該表面シートにおける肌対向面に体液が滞留しづらくなり、多くの体液が抗菌剤と接触しやすくなる。上部繊維層を構成する繊維のうち、最も平均繊維径が小さい繊維の平均繊維径は、繊維の繊度(デシテックス:dtex)で表したときに、好ましくは2.0dtex以上、より好ましくは2.5dtex以上、更に好ましくは3.0dtex以上であり、好ましくは8.0dtex以下、より好ましくは7.0dtex以下、更に好ましくは6.0dtex以下である。同様に、下部繊維層を構成する繊維の平均繊維径は、繊度で表して、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.2dtex以上、更に好ましくは1.5dtex以上であり、好ましくは5.0dtex以下、より好ましくは4.0dtex以下、更に好ましくは3.0dtex以下である。
【0033】
非エンボス部13を通じての体液の十分且つ迅速な透過を実現させる観点から、表面シート10は、その肌対向面側から非肌対向面側へ向けて親水性に勾配を有していることも望ましい。具体的には、表面シート10は、その肌対向面側よりも非肌対向面側の方が親水性が高いことが望ましい。この目的のために、表面シート10として、肌対向面側に配される上部繊維層と、非肌対向面側に配される下部繊維層とを備えたものを用い、下部繊維層を構成する繊維の接触角よりも、上部繊維層を構成する繊維の接触角を大きくすることが好ましい。このような構造を有する表面シートも、その肌対向面側から非肌対向面側へ向けて体液を引き込みやすいので、該表面シートにおける肌対向面に体液が滞留しづらくなり、多くの体液が抗菌剤と接触しやすくなる。上部繊維層を構成する繊維と水との接着角は、下部繊維層を構成する繊維と水との接触角よりも大きくなることを条件として、好ましくは60°以上95°以下、より好ましくは65°以上90°以下、更に好ましくは70°以上85°以下である。同様に、下部吸収層を構成する繊維と水との接触角は、好ましくは55°以上90°以下、より好ましくは60°以上85°以下、更に好ましくは65°以上80°以下である。
繊維の接触角は、繊維を構成する樹脂の種類や繊維に施す親水化剤の種類によって調整できる。また繊維の接触角の測定は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2019-097690号公報の段落0045に記載の方法に準じて行うことができる。
【0034】
図3には、
図2に示す表面シート10の別の実施形態が示されている。
図3に示す実施形態の表面シート10は、第1エンボス部11及び第2エンボス部12に加えて、散点状に配置されたドット状エンボス部14を更に有している。ドット状エンボス部14は、表面シート10を構成する繊維を圧密化することによって形成されている。ドット状エンボス部14は、長手方向Xに沿って複数個が間隔を置いて直列配置されたドット状エンボス部列をなしている。ドット状エンボス部列は、幅方向Yに間隔を置いて複数列配置されている。各ドット状エンボス部列においては、ドット状エンボス部14の配置のピッチは一定になっている。隣り合うドット状エンボス部においては、ドット状エンボス部14の配置の位相が半ピッチ分ずれている。
【0035】
表面シート10にドット状エンボス部14が形成されていることで、表面シート10には、ドット状エンボス部14の形成による繊維存在密度の高い領域と、ドット状エンボス部14(並びに第1エンボス部11及び第2エンボス部12)が形成されていない繊維存在密度の低い領域とが存在することになる。繊維存在密度の高い部分では、体液の引き込み性が、繊維存在密度の低い部分に比べて高いことから、本実施形態の表面シート10は、繊維存在密度が一定である表面シートに比べて、体液が表面シート10に素早く引き込まれ、表面シート10の面方向への体液の拡散が抑制される。その結果、より多くの体液が抗菌剤と接触するようになる。
【0036】
図4には、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体の一実施形態が模式的に示されている。同図に示す吸収体30は、表面シート(図示せず)に近い側に位置する第1吸収層31と、裏面シート(図示せず)に近い側に位置する第3吸収層33と、両吸収層31,33の間に位置する第2吸収層32とを備えている。第1吸収層31と第2吸収層32とは互いに異なる材料から構成されている。第1吸収層31と第3吸収層33とは、互いに異なる材料から構成されていてもよく、あるいは同一の材料から構成されていてもよい。
図4においては、1枚の吸収性シート36が折り畳まれて、第1吸収層31と第3吸収層33とを構成している状態が示されている。
【0037】
吸収性シート36は、吸水性繊維及び吸水性ポリマーを含むシート材料から構成されていることが好ましい。したがって、第1吸収層31及び第3吸収層33も吸水性繊維及び吸水性ポリマーを含んでいる。吸収性シート36としては例えば特開平8-246395号公報に記載のものを用いることができるが、これに限られない。
【0038】
第2吸収層32も吸水性繊維及び吸水性ポリマーを含んでいることが好ましい。第2吸収層32は、吸水性繊維及び吸水性ポリマーを含む吸収性シートであり得る。あるいは第2吸収層32は、吸水性繊維及び吸水性ポリマーが混合された積繊体であり得る。第2吸収層32が如何なる形態のものであっても、
図4に示す実施形態の吸収体30においては抗菌剤が第2吸収層32に含まれていることが好ましい。そして、抗菌剤が第2吸収層32に含まれていることを条件として、第1吸収層31に含まれる吸水性ポリマーの坪量よりも、第2吸収層32に含まれる吸水性ポリマーの坪量の方が高いことが好ましい。吸収体30がこのような構造を有することによって、抗菌剤が施されている部位である第2吸収層32へ多くの体液を到達させることが可能となる。この理由は以下に述べるとおりである。
非エンボス部13を透過してきた体液は、吸収体30における第1吸収層31に達する。第1吸収層31は、第2吸収層32に比べて吸水性ポリマーの坪量が低いことから、体液のうちの大半は第1吸収層31に吸収されず、第1吸収層31を透過して第2吸収層32に達する。第2吸収層32は、第1吸収層31に比べて吸水性ポリマーの坪量が高いことから、第2吸収層32に達した体液は、その大半が第2吸収層32で吸収される。第2吸収層32には抗菌剤が施されていることから、第2吸収層32に吸収された体液には抗菌剤が作用して、臭いの発生が効果的に抑制される。しかも、体液が第2吸収層32に吸収された後、第1吸収層31に含まれる吸水性ポリマーが膨潤するので、仮に第2吸収層32に吸収された体液から臭いが生じたとしても、その臭いは膨潤した吸水性ポリマーが含まれている第1吸収層31によって、吸収体30外への放散が阻止される。
【0039】
以上の説明から明らかなとおり、
図4に示す吸収体30においては、第2吸収層32に抗菌剤が施されていることが好ましく、第1吸収層31及び第3吸収層33に抗菌剤が施されていることは要求されない。勿論、第1吸収層31及び第3吸収層33に抗菌剤が施されていることは妨げられないが、経済的な観点からは、第1吸収層31及び第3吸収層33には抗菌剤が非存在であることが好ましい。
【0040】
第2吸収層32が吸収性シートからなる場合、該吸収性シートは、
図4に示すとおり、第1繊維シート32aと、第2繊維シート32bと、両繊維シート間に位置する吸水性ポリマー32cとを備えることができる。この場合、第1繊維シート32aと、第2繊維シート32bとで繊維存在密度を異ならせることができる。特に、第1繊維シート32a及び第2繊維シート32bのうち、先に体液と接触するシート、すなわち、肌対向面側に位置するシートである第2繊維シート32bの繊維存在密度よりも、第1繊維シート32aの繊維存在密度が高いことが、毛管力に起因する体液の引き込み性を高める観点から好ましい。更に、繊維存在密度の高い第1繊維シート32aに抗菌剤が施されていることが好ましい。第2吸収層32をこのような構造にすることによって、より多量の体液が抗菌剤と接触するようになり、体液から発生する臭いが一層抑制される。
【0041】
特に、吸収性シートからなる第2吸収層32が、
図4に示すとおり折り畳まれて、繊維存在密度が高い第1繊維シート32aどうしが対向する部位を有する構造である場合には、体液が第1繊維シート32aに確実に保持されて、第3吸収層33及び/又は第1吸収層31への体液の滲み出しが起こりづらくなるので、この観点からも体液から発生する臭いが一層抑制される。
【0042】
以上の説明から明らかなとおり、第2吸収層32が第1繊維シート32aと、第2繊維シート32bとを備えており、第1繊維シート32aに抗菌剤が施されていれば本発明の効果が奏されるので、第2繊維シート32bに抗菌剤が施されていることは要求されない。勿論、第2繊維シート32bに抗菌剤が施されていることは妨げられないが、経済的な観点からは、第2繊維シート32bには抗菌剤が非存在であることが好ましい。
【0043】
図5には、
図4に示す実施形態の吸収体30の変形例が示されている。
図5に示す吸収体30は、第2吸収層32を構成する吸収性シートの折り畳み方が
図4に示す実施形態と異なり、それ以外の点については
図4に示す実施形態と同様である。
図5に示す吸収体30における第2吸収層32は、これを構成する吸収性シートが折り畳まれて、第1繊維シート32aどうしが対向する部位を有し、更に第1繊維シート32aと第2繊維シート32bとが対向する部位も有している。つまり第2吸収層32は、これを厚み方向に沿って見たときに、第1繊維シート32aと第2繊維シート32bとが交互に積層された部位を有している。第2吸収層32がこのような構造を有していることによって、多量の体液が排泄された場合であっても、第2吸収層32内で体液を確実に吸収保持することが可能となる。
【0044】
図6には、
図4及び
図5に示す実施形態の吸収体30の平面図が示されている。
図6に示すとおり、吸収体30は、長手方向X及び幅方向Yを有する縦長の形状をしており、長手方向の中央域に第2吸収層32を有している。吸収体30のうち、第2吸収層32が配置されている領域が、吸収性物品における股下部に相当する。吸収体30のうち、第2吸収層32が配置されている領域は、
図4及び
図5に示すとおり、その他の領域に比べて厚みが大きくなっている。
【0045】
図6に示すとおり、吸収体30の平面視において、第1吸収層31と第2吸収層32とが重なる領域には、長手方向Xに沿って延びるスリット部34が多数形成されている。スリット部34は、第1吸収層31を貫通して第2吸収層32まで達している。スリット部34は第2吸収層32を貫通していてもよく、あるいは貫通していなくてもよい。
吸収体30にこのようなスリット部34が形成されていることで、該スリット部34を通じて体液が第2吸収層32まで円滑に且つ素早く到達するようになる。その結果、第2吸収層32に施されている抗菌剤に多量の体液が接触するようになり、体液から発生する臭いを一層抑制することができる。
その上、スリット部34が吸収体30の長手方向Xに延びるように形成されていることで、スリット部34内に到達した体液が該スリット部34に沿って長手方向Xに拡散しやすくなるので、吸収体30の全体の液吸収能を有効に活用することができ、そのことによっても、第2吸収層32に施されている抗菌剤に多量の体液が接触するようになる。
【0046】
スリット部34は、長手方向Xに沿って複数個が間隔を置いて直列配置されたスリット部列34aをなしている。スリット部列34aは、幅方向Yに間隔を置いて複数列配置されている。各スリット部列34aにおいては、スリット部34の配置のピッチは一定になっている。隣り合うスリット部列34aにおいては、スリット部34の配置の位相が相違している。
【0047】
図7には、
図6に示す吸収体30の変形例が示されている。
図7に示す吸収体30においては、抗菌剤が施されている第2吸収層32を囲むように閉じた形状の圧搾部35が第1吸収層31及び第3吸収層33に形成されている。圧搾部35は、第1吸収層31及び第3吸収層33並びに表面シート(図示せず)を一体的に圧密化することで形成されている。
【0048】
圧搾部35は、主として長手方向Xに沿って延びる一対の縦圧搾部35aと、主として幅方向Yに沿って延びる一対の横圧搾部35bとからなっている。
図7では圧搾部35が連続した状態が示されているが、実質的に閉じた形状となる限りにおいて、圧搾部35は不連続に形成されていてもよい。
【0049】
第2吸収層32を囲むように圧搾部35を形成することで、体液が一度に多量に排泄された場合に、表面シート10の表面を伝って体液が幅方向Yへ向けて流れ出ることが圧搾部35によって阻止され、圧搾部35内に留まりやすくなる。その結果、より多くの体液を第2吸収層32に施されている抗菌剤と接触させることができる。
【0050】
以上の各実施形態において用いられる抗菌剤としては、当該技術分野において抗菌用途に用いられるものを特に制限なく用いることができる。例えば、抗菌性の金属、抗菌性金属担持物、有機系抗菌剤等が挙げられる。
抗菌性を有する金属としては、銅、銀、金、鉛、ニッケル、錫、亜鉛、鉄、ジルコニウム等が挙げられる。
抗菌性金属担持物としては、銀ゼオライト、銀担持ジビニルベンゼン/2-ビニルピリジン共重合体(例えば特開2006-307404号公報記載のもの)、アルミニウム・銀・ナトリウム硝酸ケイ酸塩(例えば特開2005-232654号公報記載のもの)、銀又は亜鉛を担持した二酸化ケイ素・酸化亜鉛・酸化アルミニウムの複合物(具体的には、抗菌性金属を担持した金属置換カンクリナイト様鉱物)、リン酸銀ジルコニウム、銀・亜鉛ゼオライトの混合物、等の水難溶性ないし水不溶性の抗菌剤が挙げられる。
有機系抗菌剤としては、第4級アンモニウム塩が好ましく、その中でも水難溶性のベンザルコニウムクロライド、セチルリン酸化ベンザルコニウム等が好適に挙げられる。
【0051】
抗菌剤の使用量は、吸収性物品に必要十分な抗菌効果を付与できる範囲で適切に調整できる。例えば上述した第2吸収層32に抗菌剤が施されている場合には、該第2吸収層32の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上12質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下の割合で抗菌剤が施されている。
【0052】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば表面シート10に形成する直線状エンボス部のパターンは
図1及び
図2に示すものに限られず、例えば三角形や六角形の多角形凸状領域が形成されるパターンで直線状エンボス部を形成してもよい。
【0053】
また、吸収体30として、吸収性シートに代えて、吸水性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体を用いてもよい。
【0054】
更に、吸収体30として、
図6に示すスリット部34と
図7に示す圧搾部35とを組み合わせたものを用いてもよい。
【0055】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
表面シート、裏面シート及び両シート間に位置する吸収体を備え、
前記表面シートと裏面シートとの間に、抗菌剤が施された部材が配置されており、
前記部材は、その幅が、前記表面シートの幅よりも小さく、且つ少なくとも股下部に位置しており、
前記表面シートは複数本の直線状エンボス部を有し、複数の該直線状エンボス部は互いに交差するように延びており、
前記表面シートにおいては、前記直線状エンボス部が交差する位置が、エンボス加工が施されていない非エンボス部となっており、
平面視において、前記抗菌剤が施されている前記部材と、前記表面シートにおける前記非エンボス部とが重なっている、吸収性物品。
【0056】
<2>
前記表面シートは、複数の前記直線状エンボス部が交差して画成された複数種の凸状領域を有する、<1>に記載の吸収性物品。
<3>
複数種の前記凸状領域は、厚みが相違する少なくとも3種類の領域を有し、最も厚みが大きい領域を大凸部、次に厚みが大きい領域を中凸部、最も厚みが小さい領域を小凸部としたとき、1つの該小凸部の周囲に該大凸部及び該中凸部のみが存在するように、これらの凸部が配置されている、<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記大凸部を囲む多角形領域が菱形であり、前記中凸部を囲む多角形領域が平行四辺形であり、前記小凸部と前記中凸部とを区画するエンボス線が該平行四辺形の短辺である、<3>に記載の吸収性物品
<5>
前記表面シートは、肌対向面側に配される上部繊維層と、非肌対向面側に配される下部繊維層とを備えており、上部繊維層を構成する繊維の繊度よりも、下部繊維層を構成する繊維の繊度の方が小さい、<1>から<4>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<6>
前記上部繊維層を構成する繊維のうち、最も平均繊維径が小さい繊維の平均繊維径は、2.0dtex以上、8.0dtex以下である、<5>に記載の吸収性物品。
【0057】
<7>
前記下部繊維層を構成する繊維の平均繊維径は、1.0dtex以上、5.0dtex以下である、<5>又は<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記表面シートは、肌対向面側に配される上部繊維層と、非肌対向面側に配される下部繊維層とを備えており、下部繊維層を構成する繊維の接触角よりも、上部繊維層を構成する繊維の接触角の方が大きい、<1>から<7>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<9>
前記吸収体が、前記表面シートに近い側に位置する第1吸収層と、前記裏面シートに近い側に位置する第3吸収層と、両吸収層の間に位置する第2吸収層とを備え、
前記抗菌剤が第2吸収層に施されており、
第1吸収層に含まれる吸水性ポリマーの坪量よりも、第2吸収層に含まれる吸水性ポリマーの坪量の方が高い、<1>から<8>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<10>
第2吸収層が、第1繊維シートと、第2繊維シートと、両繊維シート間に位置する吸水性ポリマーとを備えた吸収性シートからなり、
第1繊維シートの繊維存在密度が第2繊維シートの繊維存在密度よりも高く、
前記抗菌剤が第1繊維シートに施されており、
第2吸収層は、前記吸収性シートが折り畳まれて、第1繊維シートどうしが対向する部位を有する、<9>に記載の吸収性物品。
<11>
第2吸収層は、前記吸収性シートが折り畳まれて、第1繊維シートと第2繊維シートとが対向する部位を更に有する、<10>に記載の吸収性物品。
【0058】
<12>
前記吸収体は、第2吸収層が配置されている領域が、その他の領域に比べて厚みが大きくなっている、<9>から<11>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<13>
前記吸収体の平面視において、第1吸収層と第2吸収層とが重なる領域には、長手方向に沿って延びる複数のスリット部が、第1吸収層を貫通して第2吸収層まで達するように形成されている<9>から<12>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<14>
前記抗菌剤が施されている前記部材の幅は、前記表面シートの幅の20%以上65%以下である、<1>から<13>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<15>
前記抗菌剤が施されている前記部材の長さは前記表面シートの長さよりも短い、<1>から<14>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<16>
前記抗菌剤が施されている前記部材の長さは、前記表面シートの長さの20%以上60%以下である<15>に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0059】
10 表面シート
11 第1エンボス部
12 第2エンボス部
13 非エンボス部
14 ドット状エンボス部
21 大凸部
22 中凸部
23 小凸部
30 吸収体
31 第1吸収層
32 第2吸収層
33 第3吸収層
34 スリット部
35 圧搾部