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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240625BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B17/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020211590
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098191
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博明
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-048211(JP,A)
【文献】特開2011-187005(JP,A)
【文献】特開2020-003896(JP,A)
【文献】特開平02-250496(JP,A)
【文献】特開2019-016172(JP,A)
【文献】特開2017-187891(JP,A)
【文献】特開2002-245564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0206421(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末機器と防災用制御盤と少なくとも一の中継増幅盤とを備える防災システムであって、
前記防災用制御盤は、各端末機器において試験が開始される時点から終了する時点までの期間が他の端末機器の前記期間と重複するように前記複数の端末機器に前記試験の開始を指示し、
前記複数の端末機器は、前記防災用制御盤の指示に従って前記試験を開始し、
前記複数の端末機器は、前記防災用制御盤から電力が供給される二以上の端末機器が同一のグループに含まれず、且つ各中継増幅盤から電力が供給される二以上の端末機器が前記同一のグループに含まれないように、複数のグループに分けられ、
前記防災用制御盤は、前記同一のグループに含まれる少なくとも二の端末機器の前記期間が重複するように、前記試験の開始を指示する
防災システム。
【請求項2】
複数の端末機器と防災用制御盤とを備える防災システムであって、
前記防災用制御盤は、各端末機器において試験が開始される時点から終了する時点までの期間が他の端末機器の前記期間と重複するように前記複数の端末機器に前記試験の開始を指示し、
前記複数の端末機器は、前記防災用制御盤の指示に従って前記試験を開始し、
前記防災用制御盤は、前記複数の端末機器の前記試験がそれぞれ異なるタイミングで開始されるように、前記試験の開始を指示し、
前記複数の端末機器は、前記試験において発光し、
前記防災用制御盤は、前記複数の端末機器の発光期間が重ならないように、前記試験の開始を指示す
災システム。
【請求項3】
複数の端末機器と防災用制御盤とを備える防災システムであって、
前記防災用制御盤は、各端末機器において試験が開始される時点から終了する時点までの期間が他の端末機器の前記期間と重複するように前記複数の端末機器に前記試験の開始を指示し、
前記複数の端末機器は、前記防災用制御盤の指示に従って前記試験を開始し、
前記複数の端末機器は、前記複数の端末機器に電力を供給する電源に近い方から順に、前記電源からの距離が離れるほど構成台数が少なくなるように、複数のグループに分けられ
前記防災用制御盤は、同一のグループに含まれる少なくとも二の端末機器の前記期間が重複するように、前記試験の開始を指示する
災システム。
【請求項4】
前記防災用制御盤は、前記同一のグループに含まれる前記少なくとも二の端末機器の前記試験が一斉に開始されるように、前記試験の開始を指示する
請求項1に記載の防災システム。
【請求項5】
前記防災用制御盤は、前記同一のグループに含まれる前記少なくとも二の端末機器の前記試験がそれぞれ異なるタイミングで開始されるように、前記試験の開始を指示する
請求項1に記載の防災システム。
【請求項6】
前記複数の端末機器は、電源系統の異なる端末機器が同一のグループに含まれるように、前記複数のグループに分けられる
請求項に記載の防災システム。
【請求項7】
前記複数の端末機器は、隣り合う端末機器が同一のグループに含まれないように、前記複数のグループに分けられる
請求項に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の火災検知器の試験を行う技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-187784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防災用制御盤の制御の下、この防災用制御盤に接続された複数の火災検知器等の複数の端末機器の試験を一台ずつ順番に行うと、端末機器の試験に時間がかかる。
【0005】
本発明は、複数の端末機器の試験に要する時間を短縮することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の端末機器と防災用制御盤とを備える防災システムであって、前記防災用制御盤は、各端末機器において試験が開始される時点から終了する時点までの期間が他の端末機器の前記期間と重複するように前記複数の端末機器に前記試験の開始を指示し、前記複数の端末機器は、前記防災用制御盤の指示に従って前記試験を開始する防災システムを提供する。
【0007】
前記防災用制御盤は、前記複数の端末機器の前記試験が一斉に開始されるように、前記試験の開始を指示してもよい。
【0008】
前記防災用制御盤は、前記複数の端末機器の前記試験がそれぞれ異なるタイミングで開始されるように、前記試験の開始を指示してもよい。
【0009】
前記複数の端末機器は、前記試験において発光し、前記防災用制御盤は、前記複数の端末機器の発光期間が重ならないように、前記試験の開始を指示してもよい。
【0010】
前記複数の端末機器は、複数のグループに分けられ、前記防災用制御盤は、同一のグループに含まれる少なくとも二の端末機器の前記期間が重複するように、前記試験の開始を指示してもよい。
【0011】
前記複数の端末機器は、電源系統の異なる端末機器が同一のグループに含まれるように、前記複数のグループに分けられてもよい。
【0012】
前記複数の端末機器は、前記複数の端末機器に電力を供給する電源に近い方から順に、前記電源からの距離が離れるほど構成台数が少なくなるように、前記複数のグループに分けられてもよい。
【0013】
前記複数の端末機器は、隣り合う端末機器が同一のグループに含まれないように、前記複数のグループに分けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の端末機器の試験に要する時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る防災システムの一例を示す図である。
図2】防災受信盤の構成の一例を示す図である。
図3】火災検知器の構成の一例を示す図である。
図4】複数の火災検知器をグループ化する第3の方法の一例を示す図である。
図5】複数の火災検知器の監視領域の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係るグループテーブルの一例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る防災システムの動作の一例を示すシーケンスチャートである。
図8】試験の開始を指示するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図9】試験の開始を指示するタイミングの別の例を示すタイミングチャートである。
図10】試験の開始を指示するタイミングの別の例を示すタイミングチャートである。
図11】第2実施形態に係る防災システムの一例を示す図である。
図12】信号変換器の構成の一例を示す図である。
図13】第2実施形態に係るグループテーブルの一例を示す図である。
図14】第2実施形態に係る防災システムの動作の一例を示すシーケンスチャートである。
図15】変形例に係る防災システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る防災システム10の一例を示す図である。防災システム10は、火災を迅速に発見し、火災による被害を最小限に抑えるためのシステムである。防災システム10は、例えばトンネルに設置される。防災システム10は、防災受信盤100と、中継増幅盤200A、200B、200C(以下、総称して「中継増幅盤200」ともいう。)と、複数の火災検知器300とを備える。なお、図1では、主に火災検知器300の試験に関する構成だけが示されており、その他の構成については省略されている。また、中継増幅盤200の台数は図1に示される例に限定されない。中継増幅盤200の台数は、3台より少なくてもよいし、3台より多くてもよい。
【0017】
防災受信盤100は、例えばトンネルの電気室に設けられる。複数の中継増幅盤200は、例えばトンネル内に所定の間隔、例えば800m間隔で設けられる。複数の火災検知器300は、例えばトンネル内に所定の間隔、例えば25m~50m間隔で設けられる。複数の火災検知器300の設置間隔は、複数の中継増幅盤200の設置間隔よりも小さい。
【0018】
防災受信盤100、複数の中継増幅盤200、及び複数の火災検知器300は、信号線400及び電源線401を介して接続されている。より詳細には、信号線400及び電源線401の一端には、防災受信盤100が接続されている。信号線400及び電源線401の他端には、中継増幅盤200Cが接続されている。防災受信盤100と中継増幅盤200Cとの間には、防災受信盤100に近い方から順に、中継増幅盤200Aと200Bとが接続されている。防災受信盤100と中継増幅盤200Aの間には、複数の火災検知器300が接続されている。中継増幅盤200Aと200Bとの間、中継増幅盤200Bと200Cとの間には、それぞれ、複数の火災検知器300が接続されている。
【0019】
防災受信盤100は、電源101を備える。電源101は、防災受信盤100と中継増幅盤200Aとの間に接続されている複数の火災検知器300に電力を供給する。電源101から電力が供給される火災検知器300は、第1電源系統に属する。
【0020】
中継増幅盤200A及び200Bは、それぞれ、電源201A及び201Bを備える。電源201Aは、中継増幅盤200Aと中継増幅盤200Bとの間に接続されている複数の火災検知器300に電力を供給する。電源201Aから電力が供給される火災検知器300は、第2電源系統に属する。電源201Bは、中継増幅盤200Bと中継増幅盤200Cとの間に接続されている複数の火災検知器300に電力を供給する。電源201Bから電力が供給される火災検知器300は、第3電源系統に属する。
【0021】
<防災受信盤100>
防災受信盤100は、防災受信盤100に接続されている端末機器から信号を受信し、端末機器を制御する装置である。また、防災受信盤100は、複数の火災検知器300の試験が並行して行われるように、各火災検知器300が試験を開始するタイミングを制御する。防災受信盤100は、本発明に係る「防災用制御盤」の一例である。
【0022】
図2は、防災受信盤100の構成の一例を示す図である。防災受信盤100は、図1に示される電源101に加えて、制御部111と、記憶部112と、通信部113とを備える。なお、図2では、電源101の図示が省略されている。
【0023】
制御部111は、プロセッサとも呼ばれ、防災受信盤100の各部の制御及び各種の処理を行う。制御部111には、例えばCPU(Central Processing Unit)が含まれる。記憶部112は、メモリとも呼ばれ、各種のデータ及びプログラムを記憶する。記憶部112には、例えばROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びRAM(Random Access Memory)のうち少なくとも一つが含まれる。記憶部112には、防災受信盤100の機能を実現するためのプログラムとグループテーブル123とが記憶される。通信部113は、防災受信盤100を信号線400に接続するための通信インターフェースである。通信部113は、信号線400を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。
【0024】
制御部111は、生成手段121と、指示手段122として機能する。これらの機能は、制御部111が記憶部112に記憶されたプログラムを実行して、制御部111が演算を行い又は防災受信盤100の各部を制御することにより実現される。
【0025】
生成手段121は、複数の火災検知器300を複数のグループに分けることにより複数のグループを生成する。例えば記憶部112には、防災システム10の構成を示す構成情報が予め記憶されている。この構成情報には、例えば各火災検知器300の識別子及び設置場所を示す情報が含まれる。生成手段121は、この構成情報に基づいてグループ分けを行う。
【0026】
指示手段122は、生成手段121により生成された各グループに含まれる少なくとも二の火災検知器300の試験を実行する期間(以下、「試験実行期間」という。)が重複するように、これらの火災検知器300に試験の開始を指示する。この試験実行期間とは、各火災検知器300において試験が開始される時点から試験が終了する時点までの期間をいう。複数の火災検知器300の試験実行期間は、全て重なっていてもよいし、一部だけが重なっていてもよい。
【0027】
<中継増幅盤200>
中継増幅盤200は、防災受信盤100と火災検知器300との間でやり取りされる信号を中継増幅する装置である。なお、図1に示される中継増幅盤200のうち、信号線400の一端に接続された中継増幅盤200Cは、終端器としての役割を担う。
【0028】
<火災検知器300>
火災検知器300は、火災を検知して防災受信盤100に火災信号を送信する。例えば火災検知器300は、二波長ちらつき式という検知原理を利用して炎を検知する。ただし、火災検知器300が火災を検知する方法は、二波長ちらつき式に限定されず、他の方法であってもよい。また、火災検知器300は、防災受信盤100の制御の下、火災検知器300が正常に動作するかを確認するための試験を行う。この試験には、機能試験と汚損試験とが含まれる。機能試験は、火災検知が正常に機能するかを確認するための試験である。汚損試験は、受光窓301の汚損状態を確認するための試験である。火災検知器300の試験にかかる時間は、1台当たり概ね15~20秒である。火災検知器300は、本発明に係る「端末機器」の一例である。
【0029】
図3は、火災検知器300の構成の一例を示す図である。火災検知器300は、制御部311と、記憶部312と、通信部313と、第1火災検知部314と、第2火災検知部315と、第1発光部316と、第2発光部317とを備える。なお、図3では、主に火災検知器300の試験に関する構成だけが示されており、その他の構成については省略されている。
【0030】
制御部311、記憶部312、及び通信部313は、基本的には上述した制御部111、記憶部112、及び通信部113と同様である。ただし、記憶部312には、火災検知器300の機能を実現するためのプログラムが記憶される。通信部313は、火災検知器300を信号線400に接続するための通信インターフェースである。通信部313は、信号線400を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。
【0031】
第1火災検知部314は、火災検知器300に向かって右側の監視領域を監視する。第1火災検知部314には、炎の検知に用いられる受光部318aが含まれる。第2火災検知部315は、火災検知器300に向かって左側の監視領域を監視する。第2火災検知部315には、炎の検知に用いられる受光部318bが含まれる。このように、火災検知器300は、第1火災検知部314と第2火災検知部315とで火災検知器300の左右の空間を別々に監視する。また、図1に示されるように、火災検知器300の筐体には、光透過性を有する受光窓301が設けられる。受光部318a及び318bは、受光窓301を介して火災光を受光する。なお、以下の説明では、受光部318a及び318bを総称する場合には「受光部318」という。
【0032】
第1発光部316は、機能試験の際に発光する。第1発光部316は、受光部318に試験光を照射する。なお、第1発光部316は二つ設けられ、一方は第1火災検知部314の受光部318aに試験光を照射し、他方は受光部318bに試験光を照射してもよい。第2発光部317は、汚損試験の際に発光する。第2発光部317は、受光窓301を介して受光部318に試験光を照射する。受光部318は、汚損試験の際に第2発光部317から受光窓301を介して照射された試験光を受光する。なお、図3に示される例では、受光部318が汚損試験にも用いられているが、受光部318とは別に汚損試験用の受光部が設けられてもよい。第1発光部316又は第2発光部317が発光している期間は、第1発光部316及び第2発光部317が発光していない期間に比べて、消費電流が多くなる。
【0033】
制御部311は、第1試験手段321と、第2試験手段322と、送信手段323として機能する。これらの機能は、制御部311が記憶部312に記憶されたプログラムを実行して、制御部311が演算を行い又は火災検知器300の各部を制御することにより実現される。
【0034】
第1試験手段321は、防災受信盤100の制御の下、機能試験を行う。例えば第1試験手段321は、防災受信盤100の指示に従って機能試験を開始し、第1発光部316を発光させる。第1試験手段321は、第1火災検知部314及び第2火災検知部315における試験光の受光状況によって、火災検知が正常に機能するか否かを判定する。
【0035】
第2試験手段322は、機能試験が行われた後、汚損試験を行う。例えば第2試験手段322は、機能試験の発光が終了した後、第2発光部317を発光させる。第2試験手段322は、受光部318が受光窓301を介して受光した試験光の受光量の基準値からの減光率に応じて、受光窓301の汚損状態を判定する。この基準値には、例えば受光窓301が汚損していない状態において受光部318が受光窓301を介して受光した試験光の受光量が用いられる。
【0036】
送信手段323は、機能試験及び汚損試験の試験結果を防災受信盤100に送信する。
【0037】
<グループ分け>
防災受信盤100は、例えば初期設定において、複数の火災検知器300を複数のグループに分けることにより複数のグループを生成し、これらのグループの情報をグループテーブル123に格納する。グループを生成する方法としては、例えば以下の第1の方法~第4の方法がある。
【0038】
第1の方法は、複数の火災検知器300を所定の台数毎にグループ化する方法である。所定の台数は、例えば同時に発光した際の消費電流がシステムの許容電流以下となるような台数に決定される。このシステムの許容電流は、例えば電源101、201A、又は201Bの電源容量を含む要因を考慮して予め決められる。ここでは、所定の台数が16台であるものとする。例えば図1に示される防災システム10では、防災受信盤100に近い方から順に、複数の火災検知器300が16台ずつグループ化される。これにより、それぞれ16台ずつ火災検知器300を含む複数のグループが生成される。
【0039】
第2の方法は、電源系統の異なる火災検知器300が同一のグループに含まれるように、グループ化する方法である。言い換えると、第2の方法では、電源系統の同じ火災検知器300は同一のグループには含まれないようにグループ化される。例えば図1に示される防災システム10では、第1電源系統に属する火災検知器300と、第2電源系統に属する火災検知器300と、第3電源系統に属する火災検知器300とが、一台ずつ選択されてグループ化される。これにより、それぞれ第1電源系統に属する火災検知器300と第2電源系統に属する火災検知器300と第3電源系統に属する火災検知器300とを一台ずつ含む複数のグループが生成される。
【0040】
第3の方法は、各火災検知器300に電力を供給する電源101、201A、又は201Bに近い方から順に火災検知器300をグループ化していく方法であって、電源101、201A、又は201Bからの距離が離れるほど構成台数が少なくなるようにグループ化する方法である。電源101、201A、又は201Bからの距離が離れるほど、線路抵抗による電圧降下が大きくなるため、火災検知器300に印加される電圧が小さくなることから、並行して試験を実行し得る火災検知器300の台数が制限される。そのため、各火災検知器300に電力を供給する電源101、201A、又は201Bからその火災検知器300までの距離が大きくなるほど、同一のグループに含まれる火災検知器300の台数が少なくなるようにグループ化される。各グループに含まれる火災検知器300の台数は、例えば電圧降下後の電圧により並行して試験を実行し得る台数に決定される。
【0041】
図4は、複数の火災検知器300をグループ化する第3の方法の一例を示す図である。図4に示される例では、まず第1電源系統に属する複数の火災検知器300について、電源101からの距離が近い順に16台の火災検知器300がグループ化されて第1グループが生成される。この第1グループには、16台の火災検知器300が含まれる。続いて第1グループに含まれる火災検知器300を除いて、電源101からの距離が近い順に14台の火災検知器300がグループ化されて第2グループが生成される。第2グループには、14台の火災検知器300が含まれる。続いて第1グループ及び第2グループに含まれる火災検知器300を除いて、電源101から距離が近い順に12台の火災検知器300がグループ化されて第3グループが生成される。第3グループには、12台の火災検知器300が含まれる。このように、電源101からの距離が離れるほど、グループに含まれる火災検知器300の台数は少なくなる。第2電源系統に属する火災検知器300、第3電源系統に属する火災検知器300についても、同様に、それぞれ、電源201A、201Bからの距離が近い順に、電源201A、201Bからの距離が離れるほど、グループに含まれる火災検知器300の台数が少なくなるようにグループ化される。
【0042】
第4の方法は、隣り合う火災検知器300が同一のグループに含まれないようにグループ化する方法である。言い換えると、第4の方法では、隣り合わない火災検知器300が同一のグループに含まれるようにグループ化される。
【0043】
火災検知器300の試験中は、その火災検知器300による火災の監視は行われない。しかし、複数の火災検知器300は、隣り合う火災検知器300が同一の監視領域を監視する二重監視を行っている。そこで、隣り合う火災検知器300が同一のグループに含まれないようにグループ化すれば、同一グループの火災検知器300の試験が並行して行われても、その試験中に火災の監視が行われない無監視領域が生じない。
【0044】
図5は、複数の火災検知器300の監視領域の一例を示す図である。この例では、複数の火災検知器300には、火災検知器300H~300Jが含まれる。ここでは、火災検知器300H、300I、300Jの構成については、それぞれ、符号の末尾に「H」、「I」、「J」を付して説明する。図5に示される例では、監視領域501は、火災検知器300Hの第1火災検知部314Hと、火災検知器300Iの第2火災検知部315Iとの両方で監視されている。したがって、火災検知器300Hの試験が行われて第1火災検知部314Hによる監視が中断されても、火災検知器300Iの試験が行われていなければ、火災検知器300Iの第2火災検知部315Iにより監視領域501に対する監視が継続される。同様に、監視領域502は、火災検知器300Iの第1火災検知部314Iと、火災検知器300Jの第2火災検知部315Jとの両方で監視されている。したがって、火災検知器300Iの試験が行われて第1火災検知部314Iによる監視が中断されても、火災検知器300Jの試験が行われていなければ、火災検知器300Jの第2火災検知部315Jにより監視領域502に対する監視が継続される。
【0045】
図5に示される例では、火災検知器300Hと300Iとは隣り合っているため、同一のグループに含まれないようにグループ化される。同様に、火災検知器300Iと300Jとは隣り合っているため、同一のグループに含まれないようにグループ化される。例えば防災受信盤100から近い順に番号が付され、奇数番目の火災検知器300がグループ化されて第1グループが生成される。続いて、偶数番目の火災検知器300がグループ化されて第2グループが生成される。このようにグループ化すると、隣り合う火災検知器300は同一のグループに含まれない。また、別の方法として、防災受信盤100から近い順に所定台数おきにグループ化されて複数のグループが生成されてもよい。例えば所定台数が10台である場合には、防災受信盤100から近い順に番号が付されたときに、まず1番目の火災検知器300と、11番目の火災検知器300と、21番目の火災検知器300と、・・・がグループ化されて第1グループが生成される。続いて2番目の火災検知器300と、12番目の火災検知器300と、22番目の火災検知器300と、・・・がグループ化され第2グループが生成される。このようにグループ化した場合でも、隣り合う火災検知器300は同一のグループに含まれない。
【0046】
図6は、第1実施形態に係るグループテーブル123の一例を示す図である。グループテーブル123には、グループIDと、端末IDとが含まれる。グループIDは、グループを一意に識別する識別子である。端末IDは、火災検知器300を一意に識別する識別子である。各グループIDには、そのグループに含まれる火災検知器300の端末IDが関連付けられる。図6に示す例では、グループIDが「001」のグループには、火災検知器300A~300Cが含まれる。
【0047】
<動作>
図7は、第1実施形態に係る防災システム10の動作の一例を示すシーケンスチャートである。この動作のステップS11において、防災受信盤100の指示手段122は、例えば保守員の操作に応じて、試験の開始を指示する試験開始信号を各火災検知器300に送信する。防災受信盤100から試験開始信号を受信すると、火災検知器300は試験モードに移行し、火災検知器300の試験が開始される。ステップS12において、火災検知器300の第1試験手段321は、第1発光部316を発光(以下、「第1発光」という。)させる。この第1発光により、第1発光部316から受光部318に試験光が照射される。ステップS13において、第1発光が終了した後、火災検知器300の第2試験手段322は、第2発光部317を発光(以下、「第2発光」という。)させる。この第2発光により、第2発光部317から受光窓301を介して受光部318に試験光が照射される。
【0048】
ステップS14において、火災検知器300の第1試験手段321及び第2試験手段322は、それぞれ、機能試験及び汚損試験の結果を判定する。例えば第1試験手段321は、受光部318において第1発光部316から受光された試験光の受光量が閾値より大きい場合には、火災検知が正常に機能していると判定する。一方、第1試験手段321は、第1火災検知部314及び第2火災検知部315において第1発光部316から受光された試験光の受光量が閾値以下である場合には、火災検知が正常に機能していないと判定する。なお、試験光の受光量が閾値以下である場合には、受光部318において試験光が検知されない場合も含まれる。また、例えば第2試験手段322は、受光部318において第2発光部317から受光窓301を介して受光された試験光の受光量の基準値からの減光率が所定値以下である場合には、受光窓301が汚損していないと判定する。一方、第2試験手段322は、受光部318において第2発光部317から受光窓301を介して受光された試験光の受光量の基準値からの減光率が所定値より大きい場合には、受光窓301が汚損していると判定する。
【0049】
ステップS15において、火災検知器300の送信手段323は、試験が終了したことを示す試験終了信号とステップS14において判定された試験結果とを防災受信盤100に送信する。この試験結果には、機能試験の結果と汚損試験の結果とが含まれる。試験終了信号及び試験結果が送信されると、火災検知器300は試験モードから通常の監視モードに移行し、火災検知器300の試験が終了する。
【0050】
図7に示される処理は、グループ毎に順番に行われる。最初のグループに含まれる全ての火災検知器300について図7に示される処理が完了すると、次のグループに含まれる火災検知器300について図7に示される処理が行われる。このようにして、全てのグループについて処理が完了するまで、図7に示される処理が繰り返される。
【0051】
上述したステップS11において、防災受信盤100の指示手段122は、同一グループに含まれる複数の火災検知器300の試験が並行して行われるように、各火災検知器300に試験開始信号を送信する。試験の開始を指示するタイミングには、いくつかの例がある。
【0052】
<試験開始タイミング>
図8は、試験の開始を指示するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。図8に示される例では、同一グループに含まれる全ての火災検知器300の試験が一斉に開始されるように、火災検知器300の試験の開始が指示される。なお、ここでいう「一斉」とは、完全に同時でなくてもよく、多少のずれがあってもよい。ここでは、図6に示されるように、グループIDが「001」のグループには、火災検知器300A~300Cが含まれるものとする。
【0053】
図8の時刻t1において、防災受信盤100から火災検知器300A~300Cのそれぞれに試験開始信号が送信される。時刻t2において、火災検知器300A~300Cの各第1発光部316の発光が開始される。時刻t3において、火災検知器300A~300Cの各第1発光部316の発光が終了する。このように、火災検知器300A~300Cは一斉に第1発光を行う。次に、時刻t4において、火災検知器300A~300Cの各第2発光部317の発光が開始される。時刻t5において、火災検知器300A~300Cの各第2発光部317の発光が終了する。このように、火災検知器300A~300Cは一斉に第2発光を行う。次に、時刻t6において、火災検知器300から防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果が送信される。以上説明した時刻t1~t6までの期間が火災検知器300A~300Cの試験実行期間TA~TCとなる。試験実行期間TA~TCは全て重なっている。
【0054】
図8に示す例において、グループ化の方法には、上述した第1の方法~第4の方法のいずれが採用されてもよい。例えば上述した第2の方法が採用され、電源系統の異なる火災検知器300が同一のグループに含まれるようにグループ化された場合には、同一グループに含まれる火災検知器300はいずれも電源系統が異なることから、これらの火災検知器300が同時に発光することができる。または、上述した第3の方法が採用され、各火災検知器300に電力を供給する電源101、201A、又は201Bに近い方から順に、電源101、201A、又は201Bからの距離が離れるほど構成台数が少なくなるようにグループ化された場合には、電源101、201A、又は201Bから離れるに従って電圧降下が大きくなったとしても各グループには電圧降下後の電圧により同時に発光し得る台数の火災検知器300しか含まれていないことから、同一グループに含まれる全ての火災検知器300が同時に発光することができる。
【0055】
図9は、試験の開始を指示するタイミングの別の例を示すタイミングチャートである。図9に示される例では、同一グループに含まれる全ての火災検知器300の試験がそれぞれ異なるタイミングで開始され、且つ、これらの火災検知器300のうち少なくとも二つの火災検知器300の発光期間が重なるように、試験の開始が指示される。ここでは、図6に示されるように、グループIDが「001」のグループには、火災検知器300A~300Cが含まれるものとする。
【0056】
図9の時刻t11において、防災受信盤100から最初の火災検知器300Aに試験開始信号が送信される。時刻t12において、防災受信盤100から次の火災検知器300Bに試験開始信号が送信される。時刻t11からt12までの期間の長さは、火災検知器300Aの試験実行期間TAの長さより短い。ここで、時刻t12は、火災検知器300Aの発光期間TA1と火災検知器300Bの発光期間TB1とが一部重なるような時刻に設定される。各火災検知器300は、試験開始信号を受信してから所定時間経過後に同じ長さの発光期間だけ第1発光及び第2発光を行うようになっている。したがって、時刻t11と発光期間の長さとに基づいて逆算することにより、時刻t12が得られる。例えば各火災検知器300の発光期間の長さが2秒である場合には、時刻t11から2秒未満の時刻に試験開始信号が送信されれば、火災検知器300Aの発光期間TA1と火災検知器300Bの発光期間TB1とが一部重なる。そのため、時刻t12は、時刻t11より後の時刻であって、時刻t11から2秒未満の時刻に設定される。
【0057】
時刻t13において、防災受信盤100から次の火災検知器300Cに試験開始信号が送信される。時刻t12からt13までの期間の長さは、火災検知器300Bの試験実行期間TBの長さより短い。時刻t13も、時刻t12と同様に、火災検知器300Bの発光期間TB1と火災検知器300Cの発光期間TC1とが一部重なるような時刻に設定される。
【0058】
時刻t14において、火災検知器300Aの第1発光部316の発光が開始される。時刻t16において、火災検知器300Aの第1発光部316の発光が終了する。時刻t14~t16までの期間が火災検知器300Aの第1発光の発光期間TA1となる。
【0059】
時刻t16より前の時刻t15において、火災検知器300Bの第1発光部316の発光が開始される。時刻t16より後の時刻t18において、火災検知器300Bの第1発光部316の発光が終了する。時刻t15~t18までの期間が火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1となる。
【0060】
時刻t18より前の時刻t17において、火災検知器300Cの第1発光部316の発光が開始される。時刻t18より後の時刻t19において、火災検知器300Cの第1発光部316の発光が終了する。時刻t17~t19までの期間が火災検知器300Cの第1発光の発光期間TC1となる。
【0061】
図9に示されるように、火災検知器300Aの第1発光の発光期間TA1と、火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1とは一部重なる。また、火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1と、火災検知器300Cの第1発光の発光期間TC1とは一部重なる。
【0062】
第2発光についても第1発光と同様に、火災検知器300Aの第2発光の発光期間TA2と火災検知器300Bの第2発光の発光期間TB2とは一部重なる。火災検知器300Bの第2発光の発光期間TB2と火災検知器300Cの第2発光の発光期間TC2とは一部重なる。
【0063】
時刻t20において、火災検知器300Aから防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果が送信される。時刻t11~t20までの期間が火災検知器300Aの試験実行期間TAとなる。次に、時刻t21において、火災検知器300Bから防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果が送信される。時刻t12~t21までが火災検知器300Bの試験実行期間TBとなる。次に、時刻t22において、火災検知器300Cから防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果を防災受信盤100が送信される。時刻t13~t22までの期間が火災検知器300Cの試験実行期間TCとなる。試験実行期間TA~TCは、一部が重なる。言い換えると、試験実行期間TA~TCは、試験実行期間TA~TCの長さより短い時間ずつずれている。
【0064】
図9に示す例において、グループ化の方法には、上述した第1の方法~第4の方法のいずれが採用されてもよい。例えば上述した第1の方法が採用され、所定の台数毎にグループ化された場合において、システムの許容電流により同時に発光し得る火災検知器300の台数が制限されているときでも、同一のグループに含まれる複数の火災検知器300のうち制限された台数の火災検知器300の発光期間だけが重なるようにすることができるため、システムの許容電流の超過が防止される。加えて、図8に示される例が採用される場合に一のグループに含めることが可能な火災検知器300の台数より多くの火災検知器300を一のグループに含めることができる。
【0065】
図10は、試験の開始を指示するタイミングの別の例を示すタイミングチャートである。図10に示される例では、同一グループに含まれる全ての火災検知器300の試験がそれぞれ異なるタイミングで開始され、且つ、これらの火災検知器300のそれぞれの発光期間が重ならないように、試験の開始が指示される。ここでは、図6に示されるように、グループIDが「001」のグループには、火災検知器300A~300Cが含まれるものとする。
【0066】
図10の時刻t31において、防災受信盤100から最初の火災検知器300Aに試験開始信号が送信される。時刻t32において、防災受信盤100から次の火災検知器300Bに試験開始信号が送信される。時刻t31からt32までの期間の長さは、火災検知器300Aの試験実行期間TAの長さより短い。ここで、時刻t32は、火災検知器300Aの第1発光の発光期間TA1及び第2発光の発光期間TA2と火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1とが重ならないような時刻に設定される。上述したように、各火災検知器300は、試験開始信号を受信してから所定時間経過後に同じ長さの発光期間だけ第1発光及び第2発光を行うようになっている。したがって、時刻t31、発光期間の長さ、及び第1発光と第2発光との時間間隔に基づいて逆算することにより、時刻t32が得られる。例えば各火災検知器300の発光期間の長さが2秒、第1発光と第2発光との時間間隔が4秒である場合には、時刻t31から2秒超4秒未満の時間が経過した時刻に試験開始信号が送信されれば、火災検知器300Aの第1発光の発光期間TA1及び第2発光の発光期間TA2と、火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1とは重ならない。そのため、時刻t32は、時刻t31から2秒超4秒未満の時間が経過した時刻に設定される。
【0067】
時刻t33において、防災受信盤100から次の火災検知器300Cに試験開始信号が送信される。時刻t32からt33までの期間の長さは、火災検知器300Bの試験実行期間TBの長さより短い。時刻t33も、時刻t32と同様に、火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1及び第2発光の発光期間TB2と火災検知器300Cの第1発光の発光期間TC1とが重ならないような時刻に設定される。
【0068】
時刻t34において、火災検知器300Aの第1発光部316の発光が開始される。時刻t35において、火災検知器300Aの第1発光部316の発光が終了する。時刻t34~t35までの期間が火災検知器300Aの第1発光の発光期間TA1となる。
【0069】
時刻t35より後の時刻t36において、火災検知器300Bの第1発光部316の発光が開始される。時刻t37において、火災検知器300Bの第1発光部316の発光が終了する。時刻t36~t37までの期間が火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1となる。
【0070】
時刻t37より後の時刻t38において、火災検知器300Cの第1発光部316の発光が開始される。時刻t39において、火災検知器300Cの第1発光部316の発光が終了する。時刻t38~t39までの期間が火災検知器300Cの第1発光の発光期間TC1となる。
【0071】
図10に示されるように、火災検知器300Aの第1発光の発光期間TA1と、火災検知器300Bの第1発光の発光期間TB1と、火災検知器300Cの第1発光の発光期間TC1とは、いずれも重ならない。
【0072】
第2発光についても第1発光と同様に、火災検知器300Aの第2発光の発光期間TA2と、火災検知器300Bの第2発光の発光期間TB2と、火災検知器300Cの第2発光の発光期間TC2とは、いずれも重ならない。
【0073】
時刻t40において、火災検知器300Aから防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果が送信される。時刻t31~t40までの期間が火災検知器300Aの試験実行期間TAとなる。次に、時刻t41において、火災検知器300Bから防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果が送信される。時刻t32~t41までの期間が火災検知器300Bの試験実行期間TBとなる。次に、時刻t42において、火災検知器300Cから防災受信盤100に試験終了信号及び試験結果が送信される。時刻t33~t42までの期間が火災検知器300Cの試験実行期間TCとなる。試験実行期間TA~TCは、一部が重なる。言い換えると、試験実行期間TA~TCは、試験実行期間TA~TCの長さより短い時間ずつずれている。
【0074】
図10に示す例において、グループ化の方法には、上述した第1の方法~第4の方法のいずれが採用されてもよい。例えば上述した第1の方法が採用され、所定の台数毎にグループ化された場合において、システムの許容電流により複数の火災検知器300が同時に発光することが許容されないときでも、同一のグループに含まれる複数の火災検知器300の間で発光期間が重ならないため、システムの許容電流の超過が防止される。加えて、図8に示される例が採用される場合に一のグループに含めることが可能な火災検知器300の台数より多くの火災検知器300を一のグループに含めることができる。
【0075】
なお、図8図10に示されるいずれのタイミングで試験の開始を指示するかは、予め設定されていてもよいし、保守員の操作に応じて又は所定の条件に従って切り替えられてもよい。
【0076】
以上説明した第1実施形態によれば、複数の火災検知器300の試験が並行して行われるため、これらの火災検知器300の試験に要する時間が短縮される。特に、図8に示されるように、同一グループに含まれる全ての火災検知器300の試験が一斉に開始される場合には、複数の火災検知器300の試験が順番に行われる場合に比べて、これらの火災検知器300の試験に要する時間がさらに短縮される。または、図9に示されるように、同一グループに含まれる少なくとも二つの火災検知器300の発光期間が重なるように火災検知器300の試験が開始される場合には、同一グループに含まれる全ての火災検知器300の試験が一斉に開始される場合に比べて、試験に要する最大電流が少なくなる。または、図10に示されるように、同一グループに含まれる火災検知器300のそれぞれの発光期間が重ならないように火災検知器300の試験が開始される場合には、同一グループに含まれる少なくとも二つの火災検知器300の発光期間が重なるように火災検知器300の試験が開始される場合に比べて、試験に要する最大電流が少なくなる。
【0077】
さらに、上述した第1の方法のように、複数の火災検知器300が所定の台数毎にグループ化される場合には、火災検知器300の台数が多い場合でも、各グループに含まれる火災検知器300の試験を並行して行うことができる。または、上述した第2の方法のように、電源系統の異なる火災検知器300が同一のグループに含まれるようにグループ化される場合には、グループに含まれる火災検知器300を試験において同時に発光させることができる。または、上述した第3の方法のように、各火災検知器300に電力を供給する電源101、201A、又は201Bから近い順に、電源101、201A、又は201Bからの距離が離れるほど構成台数が少なくなるようにグループ化される場合には、電源101、201A、又は201Bから離れるほど電圧降下が大きくなっても、グループに含まれる火災検知器300を試験において同時に発光させることができる。または、上述した第4の方法のように、隣り合う火災検知器300が同一のグループに含まれないようにグループ化される場合には、同一グループに含まれる火災検知器300の試験が並行して行われても、その試験中に火災の監視が行われない無監視領域が生じない。
【0078】
2.第2実施形態
第2実施形態は、第1実施形態とは試験の対象となる装置が異なる。ただし、複数の装置の試験が並行して行われる点は、第1実施形態と同様である。
【0079】
図11は、第2実施形態に係る防災システム30の一例を示す図である。防災システム30は、防災受信盤100と、中継増幅盤200A、200B、及び200Cと、複数の信号変換器500と、複数の押釦式通報装置600とを備える。なお、図11では、主に信号変換器500の試験に関する構成だけが示されており、その他の構成については省略されている。また、図1と同様に、中継増幅盤200の台数は図11に示される例に限定されない。中継増幅盤200の台数は、3台より少なくてもよいし、3台より多くてもよい。
【0080】
複数の信号変換器500は、例えばトンネル内に所定の間隔で設けられる。複数の信号変換器500の設置間隔は、複数の中継増幅盤200の設置間隔よりも小さい。押釦式通報装置600は、例えばトンネル内に所定の間隔で設置された消火栓に設けられる。
【0081】
防災受信盤100、複数の中継増幅盤200、複数の信号変換器500、及び押釦式通報装置600は、信号線410及び電源線411を介して接続されている。より詳細には、防災受信盤100と中継増幅盤200A、200B、及び200Cは、第1実施形態に係る防災システム10と同様に信号線410及び電源線411に接続されている。防災受信盤100と中継増幅盤200Aの間、中継増幅盤200Aと200Bとの間、中継増幅盤200Bと200Cとの間には、それぞれ、複数の信号変換器500が接続されている。また、複数の信号変換器500には、複数の押釦式通報装置600が1台ずつ接続されている。
【0082】
第2実施形態では、防災受信盤100は電源102を備える。電源102は、防災受信盤100と中継増幅盤200Aとの間に接続されている複数の信号変換器500に電力を供給する。電源102から電力が供給される信号変換器500は、第4電源系統に属する。
【0083】
中継増幅盤200A及び200Bは、それぞれ、電源202A及び202Bを備える。電源202Aは、中継増幅盤200Aと中継増幅盤200Bとの間に接続されている複数の信号変換器500に電力を供給する。電源202Aから電力が供給される信号変換器500は、第5電源系統に属する。電源202Bは、中継増幅盤200Bと中継増幅盤200Cとの間に接続されている複数の信号変換器500に電力を供給する。電源202Bから電力が供給される信号変換器500は、第6電源系統に属する。
【0084】
第2実施形態では、複数の信号変換器500の試験が並行して行われる。第2実施形態に係る防災システム30の防災受信盤100及び中継増幅盤200の構成は、基本的には、第1実施形態に係る防災システム10の防災受信盤100及び中継増幅盤200の構成と同様である。
【0085】
押釦式通報装置600は、事故や火災の発生時等の非常時に一般の利用者により使用される押釦601を有する。押釦601が押されると、押釦式通報装置600は信号変換器500を介して防災受信盤100に通報を行う。
【0086】
信号変換器500は、防災受信盤100と押釦式通報装置600との間の通信方式を変換するための装置である。信号変換器500は、自装置に接続された押釦式通報装置600の押釦601が押されると、押下信号を防災受信盤100に送信する。信号変換器500は、本発明に係る「端末機器」の一例である。
【0087】
図12は、信号変換器500の構成の一例を示す図である。信号変換器500は、制御部511と、記憶部512と、通信部513と、検出回路514とを備える。なお、図12では、主に信号変換器500の試験に関する構成だけが示されており、その他の構成については省略されている。
【0088】
制御部511、記憶部512、及び通信部513は、基本的には第1実施形態に係る防災受信盤100の制御部111、記憶部112、及び通信部113と同様である。ただし、記憶部512には、信号変換器500の機能を実現するためのプログラムが記憶される。通信部513は、信号変換器500を信号線410に接続するための通信インターフェースである。通信部513は、信号線410を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。
【0089】
検出回路514は、押釦式通報装置600の押釦601が押されたことを検出する。
【0090】
制御部511は、試験手段521と、送信手段522として機能する。これらの機能は、制御部511が記憶部512に記憶されたプログラムを実行して、制御部511が演算を行い又は信号変換器500の各部を制御することにより実現される。
【0091】
試験手段521は、防災受信盤100の制御の下、信号変換器500の試験を行う。例えば試験手段521は、防災受信盤100の指示に従って試験を開始し、押釦式通報装置600の押釦601の疑似的な押下に応じて検出回路514が正常に動作するかを確認するための試験を行う。検出回路514において押釦601の疑似的な押下がオンになっている期間は、押釦601の疑似的な押下がオフになっている期間に比べて、電流消費が多くなる。
【0092】
送信手段522は、試験結果を防災受信盤100に送信する。
【0093】
防災受信盤100は、例えば初期設定において、複数の信号変換器500を複数のグループに分けることにより複数のグループを生成し、これらのグループの情報をグループテーブル124に格納する。グループを生成する方法は、基本的には、第1実施形態において説明した方法と同様である。ただし、第2実施形態では、信号変換器500は火災検知器300と異なり二重監視を行っていないため、隣り合う試験対象が同一のグループに含まれないようにグループ化する第4の方法は用いられない。
【0094】
図13は、第2実施形態に係るグループテーブル124の一例を示す図である。グループテーブル124は、防災受信盤100の記憶部112に記憶される。グループテーブル124には、グループIDと、端末IDとが含まれる。グループIDは、グループを一意に識別する識別子である。端末IDは、信号変換器500を一意に識別する識別子である。各グループIDには、そのグループに含まれる信号変換器500の端末IDが関連付けられる。図13に示す例では、グループIDが「011」のグループには、信号変換器500A~500Cが含まれる。
【0095】
図14は、第2実施形態に係る防災システム30の動作の一例を示すシーケンスチャートである。この動作のステップS21において、防災受信盤100の指示手段122は、試験の開始を指示する試験開始信号を各信号変換器500に送信する。防災受信盤100から試験開始信号を受信すると、信号変換器500は試験モードに移行し、信号変換器500の試験が開始される。ステップS22において、信号変換器500の試験手段521は、検出回路514を動かして押釦601の疑似的な押下をオンにする。ステップS23において、試験手段521は、検出回路514により押釦601の疑似的な押下が検出されたか否かを判定する。検出回路514が押釦601の疑似的な押下に応じた出力を行った場合には、押釦601の疑似的な押下が検出されたと判定される。押釦601の疑似的な押下が検出されたと判定された場合には、検出回路514が正常に動作していることを示す。一方、押釦601の疑似的な押下に応じた出力が行われない場合には、押釦601の疑似的な押下が検出されないと判定される。押釦601の疑似的な押下が検出されないと判定された場合には、検出回路514が正常に動作していないことを示す。
【0096】
ステップS24において、信号変換器500の試験手段521は、検出回路514を動かして押釦601の疑似的な押下をオフにする。ステップS25において、試験が終了したことを示す試験終了信号とステップS23において判定された試験結果とを防災受信盤100に送信する。試験終了信号及び試験結果が送信されると、信号変換器500は試験モードから通常モードに移行し、信号変換器500の試験が終了する。
【0097】
図14に示される処理は、グループ毎に順番に行われる。最初のグループに含まれる全ての信号変換器500について図14に示される処理が完了すると、次のグループに含まれる信号変換器500について図14に示される処理が行われる。このようにして、全てのグループについて処理が完了するまで、図14に示される処理が繰り返される。
【0098】
第2実施形態に係る試験の開始を指示するタイミングは、第1実施形態において説明した図8図10に示されるタイミングと同様である。ただし、第2実施形態では、第1発光及び第2発光に代えて、検出回路514において押釦601の疑似的な押下がオンになる。ここでは、図13に示されるように、グループIDが「011」のグループには、信号変換器500A~500Cが含まれるものとする。例えば図8に示される例と同様に、同一グループに含まれる全ての信号変換器500A、500B、及び500Cの試験が一斉に開始されるように、信号変換器500の試験の開始が指示される。または、図9に示される例と同様に、同一グループに含まれる信号変換器500A~500Cの試験がそれぞれ異なるタイミングで開始され、且つ、これらの信号変換器500のうち少なくとも二つの信号変換器500の検出回路514において押釦601の疑似的な押下がオンになる期間が重なるように、試験の開始が指示される。または、図10に示される例と同様に、同一グループに含まれる信号変換器500A~500Cの試験がそれぞれ異なるタイミングで開始され、且つ、これらの信号変換器500の検出回路514において押釦601の疑似的な押下がオンになる期間が重ならないように、試験の開始が指示される。
【0099】
以上説明した第2実施形態によれば、複数の信号変換器500の試験が並行して行われるため、これらの信号変換器500の試験に要する時間が短縮される。
【0100】
3.変形例
本発明は、上述した各実施形態に限定されない。上述した各実施形態は、以下の変形例のように変形して実施されてもよい。各実施形態と変形例とは、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。同様に、以下の変形例は、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。
【0101】
例えば防災システムは、第1実施形態に係る図1に示される構成と、第2実施形態に係る図11に示される構成とを両方とも備えてもよい。この変形例では、防災受信盤100には、中継増幅盤200A~200Cに加えて、複数の火災検知器300と、複数の信号変換器500及び複数の押釦式通報装置600とが接続される。防災受信盤100は、火災検知器300に電力を供給する電源101と、信号変換器500及び押釦式通報装置600に電力を供給する電源102とを備える。同様に、中継増幅盤200Aは、火災検知器300に電力を供給する電源201Aと信号変換器500及び押釦式通報装置600に電力を供給する電源202Aとを備える。中継増幅盤200Bは、火災検知器300に電力を供給する電源201Bと信号変換器500及び押釦式通報装置600に電力を供給する電源202Bとを備える。そして、防災受信盤100は、火災検知器300の試験と信号変換器500の試験との両方について試験を開始するタイミングを制御する。この変形例によれば、火災検知器300の試験に要する時間と信号変換器500の試験に要する時間とが両方とも短縮される。
【0102】
上述した各実施形態において、防災システム10又は30は、中継増幅盤200を備えなくてもよい。図15は、この変形例に係る防災システム50の一例を示す図である。防災システム50は、防災受信盤100と、複数の火災検知器300とを備える。防災受信盤100及び複数の火災検知器300は、信号線400及び電源線401を介して接続されている。図1に示される例と同様に、防災受信盤100は電源101を備える。ただし、防災システム50においては、電源101は、電源線401に接続されている全ての火災検知器300に電力を供給する。また、この変形例において、複数の火災検知器300又は信号変換器500をグループ化する方法は、システム構成に応じて選択されてもよい。例えば、図15に示される防災システム50のように中継増幅盤200を備えていない構成の場合には、各火災検知器300に電力を供給する電源101に近い方から順に、電源101からの距離が離れるほど構成台数が少なくなるようにグループ化する第3の方法が採用されてもよい。
【0103】
上述した各実施形態において、信号変換器500に接続される装置は、押釦式通報装置600に限定されない。例えば信号変換器500には、消火栓又は水噴霧自動弁が接続されてもよい。この変形例では、信号変換器500の検出回路514では、消火栓又は水噴霧自動弁の疑似的な操作がオンにされる。検出回路514が正常に動作している場合には、消火栓又は水噴霧自動弁の疑似的な操作がオンになると、検出回路514によりこの操作が検出される。一方、検出回路514が正常に動作していない場合には、消火栓又は水噴霧自動弁の疑似的な操作がオンになっても、検出回路514によりこの操作が検出されない。
【0104】
上述した各実施形態において、複数の火災検知器300又は複数の信号変換器500は必ずしも複数のグループに分けられなくてもよい。例えば火災検知器300又は信号変換器500の台数が少ない場合には、グループ分けは行われなくてもよい。この変形例では、防災受信盤100の指示手段122は、防災受信盤100に接続された全ての火災検知器300又は信号変換器500の試験が並行して行われるように、試験の開始を指示する。
【0105】
上述した各実施形態において、防災システム10又は30の設置場所は、トンネルに限定されない。防災システム10又は30は、火災が発生し得る場所であれば、どこに設置されてもよい。また、防災用制御盤は、防災受信盤100に限定されない。例えば防災受信盤100に代えて火災受信機が防災用制御盤として用いられてもよい。
【0106】
上述した各実施形態において、防災システム10又は30の構成は上述した例に限定されない。防災システム10又は30は、上述した装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。また、防災システム10又は30の機能を有する主体は、上述した例に限定されない。例えば防災受信盤100の機能は、複数の装置が協働することにより実現されてもよい。
【0107】
上述した各実施形態において、防災システム10又は30の動作は上述した例に限定されない。防災システム10又は30の処理手順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよい。また、防災システム10又は30の一部の処理手順が省略されてもよい。
【0108】
本発明の別の形態は、防災システム10又は30、防災受信盤100、火災検知器300、信号変換器500において行われる処理のステップを有する方法を提供してもよい。また、本発明の更に別の形態は、防災受信盤100、火災検知器300、又は信号変換器500において実行されるプログラムを提供してもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネット等を介したダウンロードによって提供されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10、30、50:防災システム、100:防災受信盤、121:生成手段、122:指示手段、200:中継増幅盤、300:火災検知器、321:第1試験手段、322:第2試験手段、323:送信手段、500:信号変換器、521:試験手段、522:送信手段、600:押釦式通報装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15