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  • 特許-給電装置及び給電ケース 図1
  • 特許-給電装置及び給電ケース 図2
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  • 特許-給電装置及び給電ケース 図4
  • 特許-給電装置及び給電ケース 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】給電装置及び給電ケース
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20240625BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020213038
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099344
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】大塚 竜也
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/95326(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/95483(WO,A1)
【文献】特開2018-85876(JP,A)
【文献】特開2016-136810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してスライド方向にスライド自在に支持されたシートに設けられた電装部品に少なくとも給電を行う配索材と、
前記配索材の一部を収容するケース本体、及び、前記ケース本体に収容された前記配索材の他の一部を外部に導出するケース側開口部を有するケースと、
前記スライド方向の両端が開口し、前記ケース側開口部から導出された前記配索材の他の一部を保持するスライド部材を前記スライド方向にスライド自在に支持するレール部材と、
前記レール部材から前記スライド方向と直交する幅方向のうち前記ケース側に延在するブラケットと、を備え、
前記ケース本体に収容された配索材は、
前記スライド部材の移動に応じて前記ケース側開口部から前記ケース本体の内外に出し入れされ、
前記ブラケットは、
締結部材が挿通される係止孔を有し、
前記ケース本体は、
前記ケース側開口部と前記レール部材の前記スライド方向の一方のレール側開口部とを連通させた連通状態において、前記係止孔と直交方向において対向する締結孔を有し、
前記締結孔は、
前記ケース本体を前記スライド方向及び前記幅方向と直交する方向から見た場合において、前記ケース本体のうち、当該ケース本体に収容された前記配索材が配置される配索材配置領域とは異なる配索材非配置領域に形成されている、
ことを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記配索材非配置領域は、
前記ケース本体に収容された配索材が前記ケース本体の外部に最も長く引き出された状態において、前記ケース本体のうち、当該ケース本体に収容された前記配索材に囲まれた領域である、
請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記レール部材に対して前記ケースを固定する複数の固定構造を備え、
複数の前記固定構造のうちの一つは、
前記係止孔と、前記締結孔とを有し、
前記係止孔は、
前記レール部材に対して前記ケースが固定された固定状態で、前記締結孔に対して前記車体側に対向し、
前記締結部材が前記締結孔、前記係止孔の順に挿通された状態で、当該締結部材により前記ケース本体に対して前記ブラケットが締結されることで前記ケースと前記レール部材とが連結される、
請求項1または2に記載の給電装置。
【請求項4】
車体に対してスライド方向にスライド自在に支持されたシートに設けられた電装部品に少なくとも給電を行う配索材と、
前記配索材の一部を収容するケース本体、及び、前記ケース本体に収容された前記配索材の他の一部を外部に導出するケース側開口部を有するケースと、を備え、
前記ケースは、
前記スライド方向の両端が開口し、前記ケース側開口部から外部に導出された前記配索材の他の一部を保持するスライド部材を前記スライド方向にスライド自在に支持するレール部材から前記スライド方向と直交する幅方向のうち前記ケース側に延在するブラケットに固定され、
前記ケース本体に収容された配索材は、
前記スライド部材の移動に応じて前記ケース側開口部から前記ケース本体の内外に出し入れされ、
前記ブラケットは、
締結部材が挿通される係止孔を有し、
前記ケース本体は、
前記ケース側開口部と前記レール部材の前記スライド方向の一方のレール側開口部とを連通させた連通状態において、前記係止孔と直交方向において対向する締結孔を有し、
前記締結孔は、
前記ケース本体を前記スライド方向及び前記幅方向と直交する方向から見た場合において、前記ケース本体のうち、当該ケース本体に収容された前記配索材が配置される配索材配置領域とは異なる配索材非配置領域に形成される、
ことを特徴とする給電ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置及び給電ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、車体に固定されたスライドレール上をスライド自在に移動するスライドシートが搭載されている。スライドシートに電装部品を設けている場合、車両に搭載されたバッテリ等の電源から当該電装部品に電力を供給するために給電装置が用いられる。給電装置は、例えば、電源と電装部品とを電気的に接続するためのワイヤハーネスと、ワイヤハーネスの一部を収容する給電ケースとを備えている。給電装置は、スライドシートの移動に応じて、ワイヤハーネスが給電ケースに収容されたり、引き出されたりする構造を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-136810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、給電ケースから導出された配索材の一部を保持するスライド部材をスライド方向にスライド自在に支持するレール部材に対して、給電ケースを2箇所でボルト締め固定している。ボルト締め固定される2箇所のうちの一方は、給電ケース内から外部に配索材が挿通される開口部とレール部材のスライド方向の一方の端部との連結部にあり、一般的な締付け工具をボルトヘッドに装着するスペースが足りないことから、専用工具を用いて固定している。そのため、レール部材に給電ケースを固定する際の作業性について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、レール部材にケースを固定する際の作業性を向上させることができる給電装置及び給電ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る給電装置は、車体に対してスライド方向にスライド自在に支持されたシートに設けられた電装部品に少なくとも給電を行う配索材と、前記配索材の一部を収容するケース本体、及び、前記ケース本体に収容された前記配索材の他の一部を外部に導出する開口部を有するケースと、前記スライド方向の両端が開口し、前記開口部から導出された前記配索材の他の一部を保持するスライド部材を前記スライド方向にスライド自在に支持するレール部材と、前記レール部材から前記スライド方向と直交する幅方向のうち前記ケース側に延在するブラケットと、を備え、前記ケース本体に収容された配索材は、前記スライド部材の移動に応じて前記開口部から前記ケース本体の内外に出し入れされ、前記ブラケットは、締結部材が挿通される係止孔を有し、前記ケース本体は、前記開口部と前記レール部材の前記スライド方向の一方の開口部とを連通させた連通状態において、前記係止孔と直交方向において対向する締結孔を有し、前記締結孔は、前記ケース本体を前記スライド方向及び前記幅方向と直交する方向から見た場合において、前記ケース本体のうち、当該ケース本体に収容された前記配索材が配置される配索材配置領域とは異なる配索材非配置領域に形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る給電装置及び給電ケースは、レール部材にケースを固定する際の作業性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る給電装置が適用された車両の一部の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る給電装置が適用された車両の一部の概略構成を示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係る給電装置の概略構成を示す部分分解平面図である。
図4図4は、給電装置におけるレール部材とケースとを固定する固定構造の一例を示す平面図である。
図5図5は、給電装置におけるレール部材とケースとを固定する固定構造の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る給電装置及び給電ケースの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1及び図2に示す給電装置1は、例えば、自動車等の車両(不図示)に対してスライドレールユニット3と共に固定され、車両のスライドシート100に設けられた電装部品101に給電するものである。スライドレールユニット3は、車体とスライドシート100との間に介在し、車体に対してスライドシート100をスライド方向にスライド自在に支持するものである。スライド方向は、例えば、車両の前後方向である。電装部品101は、例えば、シートヒータ、スピーカ、液晶モニタ等で構成される。スライドレールユニット3は、一般的には、車両の幅方向に間隔をあけて一対で設けられる。なお、本実施形態では、一対のスライドレールユニット3における一方のみを説明し、他方のスライドレールユニット3についてはその説明を省略する。スライドシート100は、一対のスライドレールユニット3により支持される。本実施形態のスライドレールユニット3は、シート側スライド部材5と、レール部材7とを含んで構成される。
【0011】
ここで、図示のX方向は、スライドシート100及びシート側スライド部材5のスライド方向であり、かつ給電装置1のスライド方向とする。X方向のうち、X1方向を第1スライド方向、X2方向を第2スライド方向とする。Y方向は、本実施形態における給電装置1の幅方向とし、スライド方向と直交する方向である。Z方向は、給電装置1の上下方向とし、スライド方向および幅方向と直交する方向である。なお、スライド方向は、例えば、給電装置1が車体に固定された状態で、車両の前後方向に沿うものである。上下方向は、例えば、給電装置1が車体に固定された状態で、鉛直方向に沿うものである。
【0012】
シート側スライド部材5は、レール部材7に対してスライド方向にスライド自在に支持されており、レール部材7が車体に固定された状態で車両の前後方向にスライド移動する。シート側スライド部材5は、スライドシート100を支持しており、当該スライドシート100と共に、レール部材7上をスライド方向にスライド移動する。シート側スライド部材5は、レール部材7に組み付けられた状態で、スライド方向のいずれか一方に外力が加わると、外力の加圧方向側に移動する。シート側スライド部材5は、例えば、ロック機構(不図示)により、レール部材7の長手方向(スライド方向)における任意の位置での固定が可能となる。なお、図5に示すシート側スライド部材5は、簡略化されたものである。
【0013】
レール部材7は、スライド方向に延在して形成され、シート側スライド部材5をスライド方向にスライド自在に支持する。また、レール部材7は、スライド方向と直交する幅方向の移動を規制する。レール部材7は、例えば、鉄、ステンレス等の金属材料により構成される。レール部材7は、スライド方向から見た断面形状が、凹状に形成される。レール部材7は、スライド方向の両端がそれぞれ開口し、一方の開口部31からシート側スライド部材5、及び、給電側スライド部材6が挿入される。レール部材7は、ブラケット35を有する。
【0014】
ブラケット35は、図3及び図4に示すように、レール部材7の上下方向から見た場合、S字状またはクランク状に形成されている。ブラケット35は、例えば、鉄、ステンレス等の金属材料により構成される。ブラケット35は、レール部材7の上下方向から見た場合、レール部材7からスライド方向と直交する幅方向のうち給電ケース2側に延在する。ブラケット35は、レール部材7の上下方向から見た場合、幅方向のうち給電ケース2側の端部35bがレール部材7のスライド方向の一方のレール端部30の下面側に溶接固定されている。ブラケット35は、レール部材7の上下方向から見た場合、幅方向のうちレール部材7側の端部35bと反対側に係止孔35aを有する。
【0015】
係止孔35aは、図5に示すように、締結部材であるボルト40が挿通される貫通孔である。係止孔35aは、レール部材7に対してケースを固定する複数の固定構造のうちの1つである。本実施形態の係止孔35aは、レール部材7に対して給電ケース2が固定された固定状態で、給電ケース2側に設けられた締結孔23に対して車体側に対向するものである。係止孔35aは、図5に示すように、レール部材7の下方側つまり車体側に、ボルト40に対応するウェルドナット41が溶接されている。
【0016】
給電側スライド部材6は、給電ケース2から導出されるワイヤハーネスWHの一部を保持し、レール部材7に取り付けられるものである。給電側スライド部材6は、例えば、合成樹脂等により構成される。給電側スライド部材6は、レール部材7に対してスライド自在に支持され、当該レール部材7によりスライド方向と直交する直交方向における移動が規制される。給電側スライド部材6は、当該給電側スライド部材6及びシート側スライド部材5がレール部材7に対してスライド方向にスライド自在に支持された支持状態において、当該シート側スライド部材5に連結される。
【0017】
給電装置1は、図3に示すように、ワイヤハーネスWHと、給電ケース2とを含んで構成される。
【0018】
ワイヤハーネスWHは、配索材の一例であり、スライドシート100に設けられた電装部品101に給電を行うものである。ワイヤハーネスWHは、例えば、電線または複数の電線が束ねられた電線束である。電線は、複数本の導電性の金属素線からなる導体部(芯線)の外側を絶縁性の被覆部によって覆われたものである。ワイヤハーネスWHは、コルゲートチューブ、樹脂テープ、プロテクタ等の外装部材、固定具など種々の構成部品を含んで構成されている。ワイヤハーネスWHは、延在方向の一部が給電ケース2に収容される。ワイヤハーネスWHは、少なくとも給電ケース2内に収容されている部分の断面形状が円形状を有し、当該ワイヤハーネスWHが有する剛性(復元性)によって給電ケース2内でJ字またはU字状に屈曲する。
【0019】
給電ケース2は、ワイヤハーネスWHの一部を収容し、スライドシート100の移動に伴うワイヤハーネスWHのたるみを吸収するものである。給電ケース2は、例えば、合成樹脂等により構成される。給電ケース2は、スライド方向と並行にレール部材7に沿って配置され、レール部材7のスライド方向の一方の端部にスライド方向と直交する幅方向の一方にオフセットした状態で連結される。給電ケース2は、レール部材7に対して固定構造により2箇所で固定される。給電ケース2は、一方において、レール部材7の幅方向の一方の側面に設けられたブラケット(不図示)の締結孔と、給電ケース2に設けられたブラケット20bの締結孔とを、ナットとボルトで締結することで、レール部材7に固定される。給電ケース2は、他方において、レール部材7からスライド方向と直交する幅方向のうち給電ケース2側に延在するブラケット35の係止孔35aと、給電ケース2に設けられた締結孔23とを、カラー42を介してウェルドナット41とボルト40で締結することで、レール部材7に固定される。給電ケース2は、スライドレールユニット3に固定された状態で、車体に固定される。給電ケース2は、ケース本体20と、開口部21と、締結孔23とを有する。
【0020】
ケース本体20は、内部にワイヤハーネスWHの一部を収容する部分である。例えば、アッパーケースと、ロアケースとで構成される。アッパーケースは、ロアケースに対して係止構造により係止される。アッパーケースおよびロアケースは、係止構造により係止された状態で、収容空間部を形成する。収容空間部は、ワイヤハーネスWHの一部が収容される。
【0021】
開口部21は、ケース本体20に設けられ、ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHの他の一部を外部に導出する部分である。開口部21は、スライドシート100のスライド移動に応じてワイヤハーネスWHの一部が出入りする部分である。開口部21は、ケース本体20のスライド方向の一方の端部(例えばX1方向側)から幅方向の一方に突出したオフセット部20aに形成され、第1スライド方向から第2スライド方向に向けて開口する。開口部21は、レール部材7に対して給電ケース2が固定された固定状態で、レール部材7の内部空間と連通する。ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHは、給電側スライド部材6の移動に応じて開口部21からケース本体20の内外に出し入れされる。
【0022】
締結孔23は、ケース本体20の開口部21とレール部材7のスライド方向の一方の開口部31とを連通させた連通状態において、係止孔35aと直交方向において対向する貫通孔である。締結孔23と係止孔35aとの直交方向は、例えばケース本体20の上下方向である。締結孔23は、ケース本体20に形成されている。締結孔23は、ケース本体20を構成するアッパーケースの第1スライド方向側の端部から第2スライド方向側に形成されている。締結孔23は、ケース本体20の上面に設けられた凹部22の底部に設けられている。凹部22は、アッパーケースの上方向から下方向に向けて凹むように形成されている。凹部22は、上下方向から見て円形状に形成される。締結孔23は、ケース本体20をスライド方向及び幅方向と直交する上下方向から見た場合において、ケース本体20のうち、当該ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHが配置される配索材配置領域25とは異なる配索材非配置領域27に形成されている。配索材配置領域25は、図1に示すように、ケース本体20のうち、収容されたワイヤハーネスWHが給電側スライド部材6の移動に応じて開口部21から当該ケース本体20の内外に出し入れされた場合において、当該ワイヤハーネスWHの移動軌跡を含む空間である。一方、配索材非配置領域27は、ケース本体20のうち、配索材配置領域25を除く空間である。本実施形態の締結孔23は、ケース本体20を上下方向から見た場合において、ケース本体20のうち、配索材非配置領域27に形成される。締結孔23には、樹脂製のケース本体20を保護するために、例えば、金属製のカラー42が嵌入されている。
【0023】
次に、レール部材7に対する給電ケース2の固定作業について説明する。給電装置1は、例えば、当該給電装置1の組立工場にて組み立てられ、車両の組立を行う車両工場に納品される。一方、スライドレールユニット3は、スライドレールユニット3の組立工場にて組立てられ、上記車両工場に納品される。なお、従来、給電装置1は、スライドレールユニット3の組立工場に納品され、スライドレールユニット3に組み付けられた後、車両工場に納品されている。そのため、車両工場では、給電装置1とスライドレールユニット3とがアッセンブリーされた状態で、車体のフロアパネル102に対して固定される(図5)。
【0024】
車両工場における組立作業者(以下、単に「作業者」とする)は、図3に示すように、ワイヤハーネスWHの一部を保持した給電側スライド部材6を、レール部材7の第1スライド方向の開口部31から挿入し、第2スライド方向に向けてスライド移動させる。このとき、シート側スライド部材5は、レール部材7のスライド方向における所定の位置(例えば、中央位置)に固定されているものとする。
【0025】
次に、作業者は、シート側スライド部材5に対して給電側スライド部材6を連結する。このとき、給電側スライド部材6及びシート側スライド部材5は、いずれもレール部材7に組み付けられた状態にある。
【0026】
次に、作業者は、給電側スライド部材6及びシート側スライド部材5がレール部材7に組み付けられた状態で、レール部材7を第2スライド方向から第1スライド方向側に向けて移動させる。その後、レール部材7の第1スライド方向側のレール端部30が、ケース本体20のオフセット部20aに当接すると、係止孔35aは、締結孔23に対して車体側に対向する。次に、作業者は、ボルト40が締結孔23、係止孔35aの順に挿通された状態で、当該ボルト40によりケース本体20に対してブラケット35を締結することで給電ケース2とレール部材7とを連結する。
【0027】
次に、作業者は、レール部材7のブラケットに対して給電ケース2のブラケット20bを、締結部材であるボルト及びナットで締結して、給電ケース2とレール部材7とを連結する。作業者は、給電装置1とスライドレールユニット3とを組み合わせた後、これらをアッセンブリーした状態で車体のフロアパネル102に取り付ける。
【0028】
以上のように、本実施形態における給電装置1は、ワイヤハーネスWHの一部を収容する給電ケース2と、スライド方向の両端が開口するレール部材7と、レール部材7からスライド方向と直交する幅方向のうち給電ケース2側に延在するブラケット35と、を備える。ブラケット35は、ボルト40が挿通される係止孔35aを有する。ケース本体20は、上記連通状態において、係止孔35aと直交方向において対向する締結孔23を有する。締結孔23は、ケース本体20を上下方向から見た場合に、ケース本体20のうち、当該ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHが配置される配索材配置領域25とは異なる配索材非配置領域27に形成される。
【0029】
上記構成により、従来、レール部材7に給電ケース2を固定する際に、当該レール部材7と当該ケース本体20とを連結する箇所を専用工具で締結する必要があったが、当該箇所の位置を変えることで、固定する作業を簡略化し作業性を向上させることができる。この結果、作業コストを削減することができる。また、専用工具を用意することなく、一般的な工具で固定作業が可能になることから、作業を行う場所が限定されず、組立部品を集約することが可能となり、輸送コストを削減することができる。
【0030】
また、給電装置1は、配索材非配置領域27が、ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHがケース本体20の外部に最も長く引き出された状態において、ケース本体20のうち、当該ケース本体20に収容されたワイヤハーネスWHに囲まれた領域である。これにより、ケース本体20内のデッドスペースを有効活用し、給電ケース2全体のサイズを変更することなく、ケース本体20の上面側に締結孔23を形成することができる。
【0031】
また、給電装置1は、係止孔35aが、レール部材7に対して給電ケース2が固定された固定状態で、締結孔23に対して車体側に対向する。そして、ボルト40が締結孔23、係止孔35aの順に挿通された状態で、当該ボルト40によりケース本体20に対してブラケット35が締結されることで給電ケース2とレール部材7とが連結される。これにより、ケース本体20に対してブラケット35を車体側から固定することが可能となり、ケース本体20の上面側にブラケット35を固定することで生じる段差を抑制することができる。この結果、例えば、ケース本体20の上面に敷かれるカーペット103の平坦を維持することができ、カーペット103に対する段差の影響を低減することができる(図5)。さらに、カーペット103に段差があることよりユーザが感じるであろう違和感を抑制することができる。また、締結孔23は、ケース本体20に設けられた凹部22の底面に設けられていることから、当該凹部22によりボルト40の頭部の上方側への突出を防止し、カーペット103の平坦を維持することが可能となる。
【0032】
なお、上記実施形態では、ブラケット35は、レール部材7のレール端部30の下面側に溶接固定されているが、これに限定されず、端部35bが上方向側に屈曲し、レール端部30の幅方向の側面のうちケース本体側に溶接固定されていてもよい。
【0033】
また、ブラケット35は、レール部材7の上下方向から見た場合、S字状またはクランク状に形成されているが、これに限定されず、直線状に形成されていてもよいし、他の形状に形成されていてよい。
【符号の説明】
【0034】
1 給電装置
2 給電ケース
3 スライドレールユニット
5 シート側スライド部材
6 給電側スライド部材
7 レール部材
20 ケース本体
20a オフセット部
20b ブラケット
21 開口部
22 凹部
23 締結孔
25 配索材配置領域
27 配索材非配置領域
30 レール端部
31 開口部
35 ブラケット
35a 係止孔
40 ボルト
41 ウェルドナット
42 カラー
100 スライドシート
101 電装部品
102 フロアパネル
103 カーペット
WH ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5