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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】毛髪繊維を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 7/02 20060101AFI20240625BHJP
   A45D 7/00 20060101ALI20240625BHJP
   A45D 7/06 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A45D7/02 A
A45D7/00 A
A45D7/06
A61K8/00
A61Q5/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020534556
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018084637
(87)【国際公開番号】W WO2019121267
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】1763172
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】サンディ・ラピーズ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニア・ヌッツォ
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/017158(WO,A1)
【文献】特開平10-094417(JP,A)
【文献】特開2004-208921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0000319(US,A1)
【文献】特表2017-515590(JP,A)
【文献】特開2008-272505(JP,A)
【文献】特表2005-530581(JP,A)
【文献】特開2011-005149(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017111(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの毛髪繊維を処理する方法であって、
前記方法が、装置であって、前記装置の2つのアームの間に挿入された前記毛髪繊維の一部にわたる前記装置の動きによって、前記毛髪繊維上で連続的に前記方法の様々な工程を実行するように構成される、トングを形成するように一緒につながれた2つのアームを含む、装置によるものであり、前記方法が、
(i)前記毛髪繊維を梳かす工程、
(ii)前記毛髪繊維に蒸気を発射する工程であって、前記毛髪繊維に発射される前記蒸気の流量が、厳密に1g/分未満且つ厳密に0g/分超であり、蒸気の前記発射が、他方のアームにおける少なくとも1つの蒸気出口に面する一方のアームにおける溝によって形成される閉鎖空間において行われ、前記閉鎖空間が、蒸気の蓄積を可能とする、工程、
(iii)前記毛髪繊維を、少なくとも2つのプレートであって、前記プレートの一方が、前記アームの一方によって有され、他方のプレートが、他方のアームによって有される、少なくとも2つのプレートと接触させることによる、蒸気のない熱処理によって前記毛髪繊維を毛髪整形する工程であって、前記プレートの少なくとも1つが、加熱プレートであり、前記プレートが、前記少なくとも1つの蒸気出口及び前記溝に対してオフセットされている、工程
を含み、
工程(ii)及び(iii)が、前記毛髪繊維の同じ区域にわたって、別々に行われ、前記溝が、それ自身の加熱系を含まず、こうした系と関係せず、前記毛髪繊維の前記同じ区域が、蒸気適用の工程(ii)前に及び蒸気適用の工程(ii)中にいずれかのプレートの間において把持されず、
処理工程が、以下の順序:(i)、(ii)、次に(iii)で実行される、方法。
【請求項2】
発射される蒸気の流量が、0.7g/分から0.9g/分までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも工程(ii)及び(iii)が、毛髪繊維の房当たり1回の通過で実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iii)の前記熱処理が、90℃から230℃までの範囲の温度で実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)で、前記毛髪繊維が、前記少なくとも1つの蒸気出口と前記溝との間を通過させられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記毛髪繊維に少なくとも1つの美容組成物を適用する追加の工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの美容組成物が、溶媒、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、染料前駆体、直接染料、シリコーン若しくは非シリコーン及び固定若しくは非固定ポリマー、脂肪性物質、還元剤、酸化剤、UV遮蔽剤、コンディショニング剤、フリーラジカル対抗剤、封鎖剤若しくは安定化剤、酸化防止剤、酸性化剤、アルカリ剤、揮発性若しくは不揮発性シリコーン、反応性若しくは化学的不活性ポリマー、顔料、固体有機若しくは無機粒子、ビタミン、植物抽出物、又は浸透促進剤若しくは繊維膨潤剤から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの美容組成物を適用する前記追加の工程が、前記毛髪繊維を梳かす工程(i)の後で且つ前記毛髪繊維に蒸気を発射する工程(ii)の前に行なわれる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記毛髪繊維に美容組成物を適用する工程を含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪繊維、より詳細には(ヒトの)毛髪を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スムージングトングで毛髪繊維を平滑にすることは公知である。これらのトングは、ブロー乾燥とは対照的に、毛髪繊維を引っ張ることなく高温で毛髪繊維を平滑にすることを可能にする。しかしながら、良好で平滑な外観を得るためにトングの通過を数回実行することが必要であり、これは処理時間をかなり延長する。そのうえ、スムージングトングを繰り返し使用すると、前記繊維が曝露される温度に起因して、時には毛髪繊維に損傷を引き起こすおそれがある。
【0003】
毛髪繊維の処理に蒸気を使用することは公知であり、例えば、加熱プレートを用いる処理と組み合わせて、毛髪上に蒸気が噴霧又は拡散される。こうした方法は、毛髪繊維処理用の装置を用いて、及び/又は異なる美容毛髪処理と組み合わせて実行され得る。例として、文献、EP659395、EP659393、EP659396、EP659397、US2004/0000319、US2004/0045570、JP2000157322、EP1396207、EP1515628、EP1515629、EP1516554、FR2967017及びWO2004/002262が挙げられる。
【0004】
国際出願WO2014/064660は、毛髪に美容製品を適用する、毛髪を蒸気に曝露する、前記毛髪を熱処理に供する及び毛髪を梳かすことを可能にする、器具を記載している。
【0005】
そのうえ、毛髪繊維を梳かすこと、毛髪繊維に組成物を適用すること、蒸気の適用により毛髪繊維を処理すること、並びに加熱プレートを使用する伝導及び/又は放射によって毛髪繊維を熱処理することを含む、毛髪繊維を処理する方法は、国際出願WO2017/017158から公知である。
【0006】
最後に、トングを形成するように構成された2つのアームを有するポータブル処理ユニットを含み、相互に向かい合って配置されたプレートによって規定され、毛髪の房(lock)を同時に把持することを可能にする2つの加熱接触面とともに提供される、ヘアスタイリング装置は、公報FR3020930及びWO2015/173507から公知である。この処理ユニットは、2つの表面の第1の表面から第2の表面の方へ蒸気を拡散するように構成された、蒸気拡散手段を含む。アームの1つは、接触面の1つの下流又は上流に配置された櫛を含む。この装置を使用して実行される処理方法は、したがって、毛髪の房のために以下のプロセス、梳かすこと、接触面間の房を把持して熱処理すること、蒸気を適用して次に接触面間の房を熱処理すること、を実行することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP659395
【文献】EP659393
【文献】EP659396
【文献】EP659397
【文献】US2004/0000319
【文献】US2004/0045570
【文献】JP2000157322
【文献】EP1396207
【文献】EP1515628
【文献】EP1515629
【文献】EP1516554
【文献】FR2967017
【文献】WO2004/002262
【文献】WO2014/064660
【文献】WO2017/017158
【文献】FR3020930
【文献】WO2015/173507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術の方法は、毛髪繊維で得られる結果の観点から、特にボリューム及び扱いやすさの観点から、完全に満足できるものではない。
【0009】
したがって、良好な美容結果を得ながら、実行が容易かつ速やかであり、毛髪繊維を大切にする、毛髪繊維処理の新規方法を開発する要求が存在する。
【0010】
効果的に毛髪繊維を平滑にする、高性能な方法への要求も更に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これらの要求のすべて又はいくつかを満たすことを目的とし、毛髪繊維を処理する方法であって、
(i)前記繊維を梳かす工程、
(ii)適用される蒸気の流量(flow rate)が厳密に1g/分未満である、前記繊維に蒸気を適用する工程、
(iii)伝導及び/又は放射による、特に少なくとも1つの加熱プレートとの接触による、蒸気のない熱処理によって前記繊維を毛髪整形する(hair shape)工程
を含み、
工程(ii)及び工程(iii)は分離されている、
方法によって満たされる。
【0012】
本発明によれば、毛髪繊維に蒸気を適用する工程と、蒸気のない熱処理によって毛髪繊維を毛髪整形する工程とは分離されており、換言すると、毛髪繊維の同じ区域にわたってそれらは同時に行なわれない。他方では毛髪繊維の同じ区域は、両方の工程が同時でない限り両方の工程に供されてもよい。
【0013】
「毛髪繊維」という用語は、ヒトのケラチン繊維、及び、例えば個人の自然の頭髪の外観を改良するために、様々な手段によって、特に接着結合によって、時に個人の自然の頭髪に追加される、「エクステンション」として公知の合成繊維も更に包含する。
【0014】
蒸気は、好ましくは、添加物を含む又は含まない水蒸気である。添加物は、溶媒及び油剤から好ましくは選択される。蒸気は、好ましくは水のみからなる。
【0015】
毛髪繊維に蒸気を適用する工程(ii)は、好ましくは閉鎖空間で実行される。したがって、この閉鎖空間は、この空間に蒸気を蓄積するために提供される。したがって、蒸気流量は、毛髪繊維を濡れ過ぎずに満足に加湿するために、1g/分未満に低減される。
【0016】
蒸気のない熱処理の工程(iii)は、毛髪繊維を少なくとも1つの高温表面、特に2つの高温表面と接触させることによって実行することができ、表面は、特に1つ又は複数の加熱プレートから形成され、加熱プレートは、処理された房に沿って装置を移動させると、毛髪繊維に張力を加えることもでき、それによって、毛髪繊維を平滑にする、スタイル付けする、又はもつれを解くことが可能になる。
【0017】
工程(iii)は、蒸気のない毛髪繊維の熱処理は別として、前記毛髪繊維を特にプレート間で把持することを含んでもよい。この場合、本発明によれば、蒸気を適用する工程(ii)が関係する毛髪繊維の区域を把持することはない。言いかえれば、したがって、蒸気はプレート間で把持されていない毛髪繊維の区域に向けられる。その結果、また蒸気を適用する工程(ii)の前に、毛髪繊維は工程(i)で梳かされるという事実の結果として、毛髪繊維は蒸気でよりよく含侵される。したがって、低減された流量を適用することが、繊維に蒸気を含侵させるのに十分である。
【0018】
1g/分未満の低減された流量で蒸気を適用することが、蒸気適用装置の電力消費を制限し、この装置の水(添加物を含む又は含まない)タンクの自律性を増加させることを特に可能にし得ることに留意すべきである。
【0019】
工程(iii)の熱処理は、90℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更により好ましくは170℃以上、及び/又は230℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下の温度で実行され得る。したがって工程(iii)の熱処理は、90℃から230℃まで、好ましくは120℃から210℃の間、より優先的には170℃から210℃までの範囲の温度で有利に実行される。
【0020】
好ましくは、少なくとも工程(ii)及び(iii)は、頭髪の処理のために同じ装置内で実行される。前記装置は少なくとも2つのプレートを含んでもよく、これらの少なくとも1つは加熱プレートであり、これらのプレートは相互に向かい合って配置され、工程(iii)を実行するために毛髪繊維はその間を通過する。この装置は有利には、工程(ii)を実行するために、所与の瞬間にプレート間に含まれる毛髪繊維以外の、毛髪繊維の区域に作用する、少なくとも1つの蒸気出口も含む。装置は、前記少なくとも1つの蒸気出口に面する溝を好ましくは有し、前記少なくとも1つの蒸気出口及びこの溝は、プレートに対してオフセットされている。
【0021】
前記少なくとも1つの蒸気出口は、少なくとも1つの蒸気出口ノズル、特に1列のノズルによって形成され得る。前記少なくとも1つの蒸気出口は、好ましくは、毛髪繊維が装置内を移動する方向に対して、装置上のプレートの上流にオフセットされる。したがって、処理される房に沿って装置が移動するとき、毛髪繊維の所与の区域は、プレート間を通過する前に最初に蒸気への曝露に供される。
【0022】
頭髪を処理するための装置は、したがって、毛髪繊維の同じ房の上で、少なくとも工程(ii)及び(iii)を連続的に実行するように構成される。
【0023】
工程(ii)では、したがって、毛髪繊維は、前記少なくとも1つの蒸気出口と上述の溝の間を通過させられる。
【0024】
上述の溝は、蒸気適用の区域とプレートによる蒸気のない熱処理の区域を明確に分離することを可能にし、それが工程(ii)及び(iii)を明確に分離することを可能にする。
【0025】
溝は、蒸気を受け取るための少なくとも部分的に閉鎖空間を作り出すことを可能にし、蒸気の蓄積を可能にする。これは、低減された流量のみを必要とする一方で、蒸気適用の有効性を増加させることを可能にし得る。
【0026】
溝はそれ自身の加熱系を含まず、こうした系と関係しない。言いかえれば、溝の境界を定める表面は、表面と接触した際に、向けられた蒸気によってのみ加熱される。特に、熱流は加熱プレートの外部で生成されるので、表面は加熱プレートから顕著な熱流を受け取らない。
【0027】
梳かす工程(i)は、頭髪を処理するための同じ装置内で実行されてもよく、この装置は、好ましくは前記少なくとも1つの蒸気出口の上流に配置された櫛も含むことができる。この場合、櫛は、櫛が含む歯によって形成されるバリアを介して、前記少なくとも1つの蒸気出口のまわりの蒸気適用区域での蒸気の部分的な閉じ込めに貢献することができる。
【0028】
変形形態として、櫛は蒸気を適用する装置上に存在しなくてもよく、したがって、梳かす工程は、例えば、この装置を使用する工程(ii)及び(iii)を実行する前に、独立して実行される。
【0029】
適用される蒸気の流量は、好ましくは0.7g/分から0.9g/分まで、更に良好には0.75g/分から0.85g/分までの範囲である。
【0030】
処理工程は、以下の順、(i)、(ii)、次に(iii)で好ましくは実行される。
【0031】
少なくとも工程(ii)及び(iii)は、毛髪繊維の房当たり1回の通過で実行され得る。
【0032】
方法は、少なくとも1つの美容組成物、特に美容ケア組成物を毛髪繊維に適用する追加の工程を含んでもよい。この場合、追加の工程は、毛髪繊維を梳かす工程(i)の後、かつ毛髪繊維に蒸気を適用する工程(ii)の後に行なわれ得る。またこの場合、それは毛髪繊維を処理するための装置内で実行され得る。
【0033】
変形形態として、この追加の工程は、それが行なわれる場合、梳かす工程(i)の前に、かつ/又は頭髪を処理するための装置の外部で実行され得る。この場合、方法は、工程(i)と工程(ii)の間に、毛髪繊維に少なくとも1つの美容組成物を適用する追加の工程を含まず、梳かす工程(i)の直後に、蒸気を適用する工程(ii)が続く。またこの場合、工程(i)及び(ii)を実行する装置は、添加物を含む又は含まない水用の、工程(ii)で蒸気を適用するための可能性のあるタンクは別として、美容組成物のいかなるカートリッジも含有しない。
【0034】
本発明による方法は、蒸気の適用前及び適用中に、プレート間で毛髪繊維を把持する工程を提供しない。このため、蒸気を適用するための工程(ii)及び/又は蒸気のない熱処理のための工程(iii)の前に、プレートに対する摩擦は存在しない。したがって、少なくとも1つの美容組成物を毛髪繊維に適用する追加の工程が行なわれる場合、毛髪繊維は、プレート間にあらかじめ摩擦が存在した場合より、毛髪繊維上により多量の組成物を蒸気の適用中に保持する。
【0035】
一変形形態では、方法は、少なくとも1つの美容組成物を毛髪繊維に適用する工程を含まなくてもよい。
【0036】
好ましくは、すべての連続工程は、毛髪繊維の同じ房に対して、5分以下、更により良好には1分以下、なお更により良好には30秒以下、優先的には15秒以下の連続工程間の期間で実行される。
【0037】
より好ましくは、方法は1回の梳かす工程を含み、方法の単純化を、処理の効率がそれによって影響を受けることなく、可能にする。
【0038】
方法が、少なくとも1つの美容組成物を適用する追加の工程を含む場合、美容組成物は、22℃及び1013.25hPa、並びに1s-1の剪断速度で、好ましくは400cps以下、更に良好には200cps以下の粘度を有する。前記少なくとも1つの組成物は、水性又は無水であり得る。前記少なくとも1つの美容組成物は、溶媒、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、染料前駆体、直接染料、シリコーン若しくは非シリコーン及び固定若しくは非固定ポリマー、脂肪性物質、特に鉱物、植物若しくは合成油、及びワックス、還元剤、酸化剤、UV遮蔽剤、コンディショニング剤、フリーラジカル対抗剤(agent for combating free radical)、封鎖剤若しくは安定化剤、酸化防止剤、酸性化剤、アルカリ剤、揮発性若しくは不揮発性シリコーン、反応性若しくは化学的不活性ポリマー、顔料、固体有機若しくは無機粒子、ビタミン、植物抽出物、又は浸透促進剤(propenetrating agent)若しくは繊維膨潤剤から選択される少なくとも1つの成分を含んでもよい。
【0039】
少なくとも1つの美容組成物を適用する追加の工程は、それが行なわれる場合、すすぐ工程、毛髪繊維を洗浄する工程、例えば固定ゲル、毛髪整形ムース、ラッカー若しくはクリーム形態のリーブインコンディショナーを使用する、毛髪整形若しくは形状を制御する工程、永久、半永久若しくは暫定的染色工程、還元剤及び任意選択で固定剤(fixative)を使用する永久変形工程、特に水酸化ナトリウム若しくは炭酸グアニジンによるアルカリ矯正(alkaline straightening)工程が、先行しても又は続いてもよい。
【0040】
本発明は、非限定的で例示的実施形態の以下の詳細な記述を読み、添付の図を研究することによって、より良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による方法の例示的な実施形態を説明する略図である。
図2】本発明による方法を実行するために使用され得る、頭髪処理用装置の例の断面での部分的な模式的描写の図である。
図3】従来技術を例示する、図2に類似した図である。
図4図2による装置及び図3による装置を用いた毛髪繊維の房の処理の比較のために、伸び計を用いて実行した実験の基本的な略図である。
図5】下記の様々な処理後の毛髪繊維の3つの房を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に説明される例では、本発明による方法は、毛髪繊維を処理するための装置によって毛髪繊維の房に実行される、連続的な3つの工程1、2及び3を含む。装置は、特に、トングを形成する、装置の2つのアームの間に挿入された毛髪繊維の一部にわたる、毛髪繊維の房に沿った前記装置の動きによって、毛髪繊維上で連続的に、方法の様々な工程を実行するように構成される。
【0043】
工程1は毛髪繊維を梳かす工程であり、毛髪繊維を分離することを可能にする。この工程1の後に、工程2で房は、この例では0.8g/分に等しい量で蒸気を受ける。次に工程2とは分離されて、しかしその直後に、毛髪繊維を平滑にする目的で、毛髪繊維は工程3での伝導及び/又は放射による蒸気のない熱処理に供される。
【0044】
この目的のために、図2に部分的に図式的に描かれた、トングを形成するために一緒に関節でつながれた2つのアームを含む、頭髪を処理するための装置10が使用され得る。
【0045】
したがって、工程1は櫛11によって実行され、その1つの歯12は、この図の梳かす区域4に見ることができる。
【0046】
工程2は1列の蒸気出口ノズル13によって実行され、その1つは、図2の蒸気適用区域5に見ることができる。ノズル13のこの列は、毛髪繊維の処理中に毛髪繊維の房に垂直な軸Xに沿って、軸Xに沿ってノズル13によって放出された蒸気を閉じ込めることを可能にする溝14と面する。ノズル13は装置の1方のアームによって支えられるが、溝14は他方のアームによって規定される。房は、ノズル13の列と溝14の間を通過する。溝14は、それ自体の加熱手段を有さない。
【0047】
最終的に、蒸気のない熱処理のための区域6で、装置10のアームのうちの1つによってそれぞれ支えられ、相互に向かい合う2つのプレート15の間で、房を通過させ把持することによって工程3は実行される。少なくとも1つの抵抗加熱要素16は、プレート15の少なくとも1つを加熱することを可能にする。蒸気適用区域5と蒸気のない熱処理のための区域6は、装置上でこのように分離されている。
【0048】
図3に例示する装置10'は従来技術に由来し、蒸気適用区域5'は、加熱表面との接触による、伝導/放射による熱処理のための2つの区域6'と6''の間に配置されている。したがって装置10'の中へ通過する毛髪繊維の房は、梳かす区域4'で梳かす工程に供され、区域6'の加熱プレート15'間で熱処理及び把持を受け、次に、区域5'で蒸気の適用及び区域6"で別の熱処理を受ける。
【0049】
比較テスト
例えば上述のように頭髪の処理のために装置10を使用する、本発明による方法に従う毛髪繊維の房の処理を、例えば、毛髪繊維の同じ部分にわたって工程(ii)及び(iii)が同時に実行されるという事実によって装置10と異なる頭髪の処理のために、装置10'を使用する従来技術の方法に従う毛髪繊維の房の処理と比較した。未処理の対照房も観察した。
【0050】
比較を実行するために、動力計によって力が制御された方式で、スムーシングアイロンの加熱プレートをクランプするシステムを装備した、Lloyd LS1型伸び計を使用する。基本的な略図を図4に与える。伸び計は、房Mがスムーシングアイロンを通る動きの速度を制御することを可能にする。伸び計は、1つの装置から別の装置まで図4に例示する矢印の方向に房が動く間に、加熱プレートから毛髪繊維に同一の圧力を加えるように、圧力の制御を可能にする。
【0051】
2房のタイプ4カール状の毛髪繊維(2.7g/27cm)を、以下の実験条件下で、上に示したように処理した。
【0052】
この例での動く速度は一定であり、108cm/分に固定する。加熱プレート20のクランプする力は、房の軸に対する直線軸に沿って5Nに制御される。
【0053】
プレートの加熱温度は200℃である。蒸気の流量は0.8g/分である。
【0054】
各房に対して、装置の1回の通過を実施する。
【0055】
毛髪繊維の3つの房M1、M2及びM3に対して得られた結果を、図5に例示する。
【0056】
房M1は未処理の対照房である。それはカール状である。
【0057】
房M2は、図3に例示する装置10'でのように、上に記載した実験条件下で処理した。
【0058】
房M3は、本発明に従う方法による図2に例示する装置10でのように、同じ実験条件を用いて処理した。
【0059】
定性的に、これらの房M1、M2及びM3は5人の評価者の委員会によって、扱いやすさの基準(相互に対する繊維のアラインメント)に関して、以下の降順:M3はM2より優れ、M2はM1よりはるかに優れている(M3>M2>>M1)で分類された。
【0060】
視覚的に、ボリュームの観点から、房M1、M2及びM3はボリュームの基準に関しても以下の降順:M3はM2と同等以上、M2はM1よりはるかに優れている(M3≧M2>>M1)で評価された。
【0061】
用具のクランピングを同一にし、毛髪繊維の房の動きの速度を同一にして、梳かす工程、蒸気適用の工程、及び特に2つのプレート間の蒸気のない熱処理工程を含む、本発明による方法を実行することは、梳かす工程、2つのプレート間の熱処理工程、蒸気適用の工程、及び2つのプレート間の熱処理工程を含む、本発明以外の方法を実行することより、最初の通過から、視覚的スムージング(繊維のアラインメント及びボリュームの低減)の観点からより効果的である。
【符号の説明】
【0062】
4 梳かす区域
5 蒸気適用区域
6 熱処理のための区域
10 頭髪を処理するための装置
11 櫛
12 歯
13 蒸気出口ノズル
14 溝
15 加熱プレート
16 抵抗加熱要素
4' 梳かす区域
5' 蒸気適用区域
6' 熱処理のための区域
6'' 別の熱処理のための区域
10' 頭髪を処理するための装置
15' 加熱プレート
M 房
M1 未処理の対照房
M2 装置10'で処理された房
M3 装置10で処理された房
図1
図2
図3
図4
図5