(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】輪状形成ベルトの配置及び固定のための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20240625BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61B17/04
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2020564169
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 US2019032216
(87)【国際公開番号】W WO2019222213
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512240408
【氏名又は名称】マフィン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MUFFIN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ハヴェル, ウィリアム, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ニューカーク, ジェレミー, ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ハドリー, リタ
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ, ユン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-502749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の周りに配置されるための圧縮ベルトに接続された張力縫合糸に張力をかけるための張力装置であって、
心臓の周りに配置されるための圧縮ベルトに接続された張力縫合糸と、
ルーメン及び前記ルーメンの遠位開口を有し、前記遠位開口の周りに端面を有する管状外側部材と、
前記張力縫合糸が周りを通る端部を有し、前記端部が前記遠位開口を越えて延びるようにして前記ルーメン内に位置する第1のワイヤと、
2つの脚部の間に端部ループを有し、前記脚部の少なくとも一部が前記ルーメン内となり前記端部ループが前記遠位開口を越えて前記管状外側部材の外側となるようにして前記ルーメン内に位置する第2のワイヤと、
を備え、
前記第1のワイヤが、真っ直ぐな端部を有し、前記第2のワイヤの前記端部ループを通っており、且つ前記第1のワイヤが、前記第2のワイヤに対して引き込み可能とされており、
前記第1のワイヤの前記端部
が前記第2のワイヤの前記端部ループを越えて延び
ている伸張形態において、前記張力縫合糸は、前記第2のワイヤの前記端部ループの下を延びるか又は前記第2のワイヤの前記端部ループを通って延び
、前記第2のワイヤの前記端部ループと前記管状外側部材の前記端面との間で前記第1のワイヤの前記端部の周りを通っていて、前記第2のワイヤを引っ張ることにより前記第2のワイヤが前記張力縫合糸に係合して前記張力縫合糸を引っ張り、前記第1のワイヤが、前記引っ張りの間、前記張力縫合糸を前記第2のワイヤに対して固定するようにされ
、
前記第1のワイヤの前記端部が前記第2のワイヤの前記端部ループを通っては延びずに前記端部ループの下方にある引き込み形態においては、前記張力縫合糸が前記端部ループと前記管状外側部材の前記端面との間から抜けられるようにされた、張力装置。
【請求項2】
前記ルーメンが内径を有し、前記端部ループが前記ルーメンの前記内径よりも大きい最大横寸法を有する、請求項1に記載の張力装置。
【請求項3】
前記ルーメンが前記第1のワイヤ及び第2のワイヤの前記ルーメン内の部分の直径の合計と同じか僅かに大きい直径を有し、それにより前記張力縫合糸が前記ルーメン内に引っ張られないようにされた、請求項1に記載の張力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、身体内、例えば心臓の周りに治療装置を送達するための装置及び方法に関する。特に、(輪状形成ベルトのような)治療装置を配置する、張力をかける、及び係止するための装置が開示されている。本発明は、アメリカ合衆国国立衛生研究所、アメリカ合衆国保険福祉省との共同研究開発契約の成果の中で創作された。米国政府は、本発明の一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの装置が補助的な三尖弁又は僧帽弁の逆流の治療のために提案されている。一例として、心臓の房室(AV)の溝の周りに送達される圧縮ベルトが既に開示されている(米国特許出願第62/580、033号を参照、これは参照によりその全体がここに組み込まれる)。ベルトによって心臓にかけられる圧縮は、伸びた三尖弁及び/又は僧帽弁の輪のサイズを縮小する。特定の例では、圧縮ベルトは、長さを短くできて、短くなったときに断面直径が拡大する、柔軟なメッシュを含む。そのようなより広い拡張は、AV溝に沿った圧縮力に寄与し、冠状動脈又は静脈を通る流れを妨害するリスクを最小限にする。圧縮ベルトは、ベルトの中央ルーメンを通る1つ以上の張力縫合糸又は束ねた糸を用いて短くされる。縫合糸が引っ張られると、ベルトの2つの端部が互いに向かって引き寄せられる。ベルトは、さらに張力がかけられ、長さ方向に短くされて径方向に拡張される。
【0003】
特定の実施形態においては、縫合糸は係止装置を通る。縫合糸は、ベルトに張力をかけている間、係止装置を通して引っ張られるか又はそうでなければ動かされる。要求を満たす張力がかけられていると判断されると、係止装置は縫合糸を張力がかけられた状態又は位置に保持する。したがって、ベルトはその張力がかけられた状態に維持され、AV溝で心臓に圧縮を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような係止装置は、特に心臓へのアプローチが低侵襲で(例えば右心耳への静脈及び/又は動脈アクセスによって)行われる場合に、その心臓の状況及び位置において使用することが難しくなる虞がある。係止装置は、小さく、十分な時間に亘る身体内での使用に適し、張力縫合糸を必要に応じて保持するのに適切であり、そして遠隔で配置して作動させることができなければならない。また、ベルトを配置するための、縫合糸に張力をかけて縫合糸を係止するための、そしてこれらの物を容易に解放するための、低侵襲装置が必要になる。後述する装置の実施形態は、必要に応じて、縫合糸を所定位置に係止し、張力縫合糸を操作し、係止装置を固定、設定、及び解放し、並びに張力縫合糸を解放することに対する要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
とりわけ、埋め込み装置に張力を与えることを含む低侵襲手術のための装置の実施形態が示されている。例えば心臓のための輪状形成ベルトは、取り付けられた張力縫合糸を介するなどして張力がかけられて、それが治療中に保持される必要がある。張力装置、縫合糸係止具、及び送達装置の実施形態が、ここに開示されている。
【0006】
輪状形成ベルトに接続されたもののような張力縫合糸に張力をかけるための張力装置の実施形態は、ルーメン及びルーメンの遠位開口を有し、遠位開口の周りに端面を有する管状外側部材を含むことができる。張力縫合糸が周りを通る端部を有する第1のワイヤは、端部が遠位開口を越えて延びるようにしてルーメン内に位置するようにしてルーメン内に位置する。第2のワイヤは二つの脚部の間に端部ループを有し、脚部の少なくとも一部がルーメン内となり端部ループが遠位開口を越えて管状外側部材の外側となるようにしてルーメン内に位置する。伸張形態において、第1のワイヤの端部は第2のワイヤの端部ループを越えて延びる。張力縫合糸は、(a)第2のワイヤの端部ループの下を通るか、又は(b)第2のワイヤの端部ループを通り、これにより第2のワイヤを引っ張ることにより張力縫合糸が係合して張力縫合糸が引っ張られる。第1のワイヤは、引っ張りの間、張力縫合糸を第2のワイヤに対して固定する。張力縫合糸がルーメンの中に引っ張られることを防止するために、ルーメンは第1のワイヤ及び第2のワイヤのルーメン内の部分の直径の合計と同じか僅かに大きい直径を有する。
【0007】
特定の実施形態においては、外側部材のルーメンが内径を有し、端部ループがルーメンの内径よりも大きくされている(より大きい最大横寸法を有する)。第1のワイヤは、第2のワイヤの端部ループを通る真っ直ぐな端部を有することができ、また第1のワイヤの時期尚早な引き抜きを防止するために端部に又はそれに近接して湾曲部を含むことができる。そのような場合の伸張形態では、張力縫合糸は第2のワイヤの端部ループと管状外側部材の端面との間で第1のワイヤの端部の周りを通る。第1のワイヤは第2のワイヤに対して引き込み可能にできる。そのような引き込み形態において、第1のワイヤの端部は第2のワイヤの端部ループを通っては延びずに端部ループの下方にあり、それにより張力縫合糸が端部ループと管状外側部材の端面との間から抜けられるようにされる。他の実施形態においては、第1のワイヤの端部は少なくとも1つの脚部につながったループ状端部を含み、伸張形態において、第2のワイヤの端部ループの少なくとも一部が、管状外側部材の端面と第1のワイヤのループ状端部の少なくとも一部との間にある。張力縫合糸は、第2のワイヤの端部ループを通って、第1のワイヤのループ状端部の下方で第1のワイヤの少なくとも1つの脚部の周りを通る。このような場合には、第1のワイヤは第2のワイヤに対して引き込み可能とされる。その引き込み形態において、第1のワイヤのループ状端部は第2のワイヤに対して引き込まれて、張力縫合糸が少なくとも1つの脚部又は第1のワイヤのループ状端部の周りを通らないようにすることができる。
【0008】
張力縫合糸を張力のかかった状態に保持するための縫合糸係止具の実施形態は、遠位面と近位面との間を延びて横方向で分離している第1及び第2の貫通孔を有することができる。ハウジングはまた、近位面に近接した位置で側面を通って第1の貫通孔に連通する側孔を有する。開口部を有するスネアが第1の貫通孔内にあり、第1の貫通孔を通って長手方向に動かされるようにされる。側孔を備える実施形態においては、アンカーワイヤが第1の貫通孔の近位部分を通りさらに側孔を通るようにできる。縫合糸係止具は開放形態を有し、開放形態では、スネアの開口部が少なくとも部分的に第1の貫通孔の外にあり、且つ張力縫合糸が、縫合糸の開口部とハウジングの第2の貫通孔とを通る。縫合糸は、スネアとハウジングの第2の貫通孔とに対して自由に移動可能である。係止形態においては、スネアの開口部が第1の貫通孔内にあり、張力縫合糸がスネアの移動に抗して蛇行形態に保持される。
【0009】
特定の例においては、スネアは板状本体であり、開口部は張力縫合糸を通すことができる中央アイレットである。スネアは、張力縫合糸の一部を取り付けるための上部アイレットと、トリガーワイヤを収容するための下部アイレットとを含むことができる。トリガーワイヤはトリガーワイヤの端に固定されたボールを含むことができ、ボールはスネアの下部アイレット内に嵌められており、トリガーワイヤ及びボールを引っ張ることによりスネアがハウジングの第1の貫通孔を通して引っ張られる。スネアの実施形態は、スネアの近位部分につながっていて近位部分から延びた少なくとも1つのタブを有することができる。開放形態においては、少なくとも1つのタブは、ハウジングの第1の貫通孔の壁によってスネアの本体に向かって曲げられて、該壁に対して付勢された状態にある。係止形態においては、少なくとも1つのタブは、ハウジングの近位面を越え、スネアから外側に枢動しており、これにより少なくとも1つのタブが、スネアが第1の貫通孔の中へ引き込まれることを防止するようにされる。そのような例の中で、スネアが2つの側部タブを含むことができ、両方のタブが、開放形態において、スネアの平面内でスネアの本体に向かって曲げられるようにできる。代りに又は追加で、少なくとも1つのタブはスネアの平面の外に延びるようにでき、開放形態においては少なくとも1つのタブはスネアの平面に向かって曲げられ、係止形態においては少なくとも1つのタブはスネアの平面から離れるように枢動するようにすることができる。他の実施形態のスネアは糸状体を含み、開口部が糸状体のループである。ハウジングが、第1の貫通孔に差し込み部(inset)を含み、係止形態において張力縫合糸が差し込み部に係合するようにできる。
【0010】
輪状形成ベルトのための統合的送達システムの実施形態は、送達シースと、送達シース内に配置された、内部ルーメンを有する押し込みカテーテルと、押し込みカテーテルの遠位端に接続された(上述の実施形態のような)縫合糸係止具と、張力縫合糸を有し送達シース内で押し込みカテーテルのそばにある輪状形成ベルトと、押し込みカテーテルのルーメン内の縫合糸係止具の近位に配置された、張力縫合糸に張力をかけるための(上述の実施形態のような)張力装置と、を備える。張力縫合糸の第1の端部又はループは、縫合糸係止具の一部に固定され、張力縫合糸の中間部分は縫合糸係止具を通り、張力縫合糸の第2の端部又はループは張力装置に接続されている。
【0011】
特定の実施形態においては、押し込みカテーテルのルーメンが、第1の内径を有する近位部分と、第1の内径よりも大きい第2の内径を有する端部チャンバーとを含むことができる。縫合糸係止具は、押し込みカテーテルの端部チャンバー内に嵌め込まれているようにできる。縫合糸係止具が近位の側孔を含み、押し込みカテーテルが遠位端に側孔を含み、2つの側孔は少なくとも重なっている。セーフティー及び/又はアンカーワイヤは、縫合糸係止具の側孔及び押し込みカテーテルの側孔を通って延びて縫合糸係止具と押し込みカテーテルとを一緒に保持することができる。トリガーワイヤは縫合糸係止具に接続されて、縫合糸係止具は、トリガーワイヤによって、張力縫合糸を縫合糸係止具内に係止するために係止形態に動かされる。トリガーワイヤ及びセーフティー/アンカーワイヤは押し込みカテーテルのルーメンを通って延びることができる。
【0012】
張力器アセンブリの実施形態の特定の特徴は、以下のいくつか又は全てを含むことができる。管状外側部材又はカニューレは張力縫合糸の端の双方向制御を可能とするために使用され、すなわち縫合糸は押されることも引っ張られることも可能である。縫合糸を押す能力は、押し込みカテーテル及び送達シース内での摩擦抵抗の心配なしに、縫合糸上の及び輪状形成ベルトの周りの張力を解放することができるので、重要となり得る。管状部材又はカニューレの内径は張力縫合糸がカニューレ内に引っ張られるのを防止する大きさとされる。保持ワイヤが所定位置にある限りは、保持ワイヤは張力縫合糸のループを保持する。解放ワイヤ又はループは、張力縫合糸を保持ワイヤに対して所定位置に係止又は固定するが、保持ワイヤから引き抜かれると縫合糸を容易に解放する。ループ形状を用いた解放ワイヤは、閾値の張力が解放ワイヤにかけられることなく保持ワイヤが引き抜かれて、ループがカニューレの中に崩れるように入ることを防止する。(真っ直ぐなワイヤであるかループであるかに関わらず)解放ワイヤの丸められた端部は、他の送達システム構造の中を傷つけないか又はえぐりにくいようにする。
【0013】
縫合糸係止具アセンブリの実施形態の特定の特徴は、以下のいくつかの又は全てを含むことができる。ハウジングの形状は、押し込みカテーテルの端部の中に嵌め込まれるか又は固定されるようにできる。縫合糸を係止することによりスネアアプローチが用いられ、縫合糸を把持点の中に引っ張って縫合糸を係止するために縫合糸に蛇行した(例えばS字)の配置を生じさせる。ハウジングはスネア及び縫合糸のための入口点に円錐状面又は面取り面を有することができ、係止具がスネア上での引張力又はハウジング上での押圧力に最小限で関与できるようにする。ハウジングは、張力縫合糸を円滑に係止具に通して後述の押し込み具のルーメンの中に通すための(スネアのための孔から離れた)貫通孔を有することができる。一実施形態のスネアは、ベルトの端部の一方を(例えば張力縫合糸の一部を介して)しっかりと取り付けるためのアイレットをスネアの上部に有することができ、また張力縫合糸を通すための中央アイレットを有することができる。これらのアイレットは滑らかな端縁を設けるために研磨されて、それらを通る縫合糸の破断を防止することができる。スネアの下部アイレットは、トリガーワイヤの端に取り付けられたボールを閉じ込め、ボールは、スネアがハウジングの中に十分に引っ張られたときに、係止具から解放できる。スネアはその頂部で拡大した幅を有し、スネアがハウジングの全体を通過して摺動することを防止する。1つ以上のラッチタブの組がスネアに設けられ、タブはスネアが下に引っ張られたときにハウジングの下部から出て広がる。そのようなラッチタブの位置は、トリガーボールがスネアから抜け出る前にそれらがハウジングの下部から出るようにされる。ハウジングの側孔は、係止具を押し込みカテーテルに固定して、時期尚早にスネアがハウジングを通って下方に通過すること及び係止具が係止することを防止する役割を果たすワイヤのための取付け点を提供する。
【0014】
送達のための方法は、示された順序において又はユーザーが好む別の順序において、以下のステップの1つ以上を含むことができる。輪状形成ベルトは始めに送達フレームに装填され、送達フレームは縫合糸係止具及び押し込みカテーテルの遠位側の位置で送達シースに装填され始める。送達シースが後方に引っ張られてフレームを外に出すか、又はフレームが送達シースから延ばされて、フレーム及びベルトが拡張されて心臓が取り囲まれる。まだフレームに装填されているベルトは、張力縫合糸が張力器によって保持されるか又は拡張器に係止されている間に張力器を押し込みカテーテル内で下方に摺動させることによって、張力がかけられる。余分なベルトのたるみが取られると、送達フレームは押し込みカテーテルに沿って引き抜かれる。ベルトの張力は、張力器をさらに位置調整する(張力縫合糸を引っ張るか又は押し込む)ことによって、例えば張力器を押し込みカテーテル内で縫合糸係止具及び輪状形成ベルトに向かって又はそれらから離れるように摺動させることによって、調整される。適切な張力がもたらされると、セーフティー/アンカーワイヤが引っ張られ、これにより係止トリガーワイヤが制限されなくなり又はそうでなければその使用が可能となり、係止具を係止できるようになる。セーフティー/アンカーワイヤを引っ張ることにより、縫合糸係止具を押し込みカテーテルから解放することが可能となる。次に、係止トリガーワイヤが引っ張られ、スネアがハウジングの中に更を動き、張力縫合糸を係止位置にまで引っ張るようにする。トリガーワイヤを引っ張ることにより、スネアが所定位置に固定されトリガーワイヤの端のボールが抜け出ることが可能となる。代わりに、係止トリガーワイヤをその場に保持し、スネアをその位置に留めながら係止ハウジングを前方に押すように押し込みカテーテルを進め、その結果として同様な係止、固定、及びトリガーワイヤの解放を行うことができる。解放ワイヤ又はループが張力器から引っ張られて、張力縫合糸が張力器から解放されるようにする。ベルト、張力縫合糸、及び係止具を身体内に残したまま、送達シースは引き抜かれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示にかかる張力装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】本開示にかかる張力装置の一実施形態の斜視図である。
【
図3】本開示にかかる、張力縫合糸が開放状態すなわち非係止状態にある、縫合糸係止具の一実施形態の斜視図である。
【
図4】
図3の実施形態の係止状態における斜視図である。
【
図7】
図6の実施形態の
図6の左側から見た部分断面図である。
【
図8】
図3の実施形態のハウジングの一実施形態の斜視図である。
【
図10】
図3の実施形態のスネアの一実施形態の斜視図である。
【
図12】
図8のようなハウジングの実施形態とともに使用可能なスネアの一実施形態の斜視図である。
【
図13】本開示にかかる、張力縫合糸が開放状態すなわち非係止状態にある、縫合糸係止具の一実施形態の断面図である。
【
図14】医療装置のための統合的送達システムの一実施形態の部分断面図であり、この実施形態においては医療装置は輪状形成ベルトとして示されており、上述の図に示された構成を含む。
【
図15】トリガー及びセーフティー/アンカーワイヤの構造を示す、
図3の実施形態の部分断面図である。
【
図16】トリガー及びセーフティー/アンカーワイヤの構造を示す、
図3の実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は様々な形態で具体化できるが、本開示の原理の理解を促進する目的のために、ここでは図面に示された実施形態を参照し、特定の用語はその実施形態を説明するために使用されている。しかしながら、それにより開示の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。記載された実施形態における如何なる変更及び更なる修正、並びにここに記載されたような本開示の原理の更なる用途が、本開示に関連する当業者が通常想い到るように、考えられる。
【0017】
ここで図面を参照して、
図1には縫合糸22に張力をかけるための張力装置20の一実施形態が示されている。縫合糸22は、心臓のAV溝に又はそれに近接して配置された又は配置されるための圧縮ベルト(
図14)を通してあるか又はそうでなければそれに取り付けられている。特定の実施形態においては、ベルトがそのように配置されたときに、縫合糸22を引っ張るか又はそうでなければ縫合糸22に張力をかけることによって、(1)ベルトの圧縮力が心臓を圧縮し、(2)ベルトの長さが短くなると同時に管状のベルトが幅広になって、静脈、動脈、又は他の心内構造物を保護するようになる。
【0018】
装置20は、例えば述するようにシース又はカテーテルを通して、低侵襲に配置することが可能であり、縫合糸22に接続される。特定の実施形態においては、装置20は、縫合糸22に直接係合し、心臓の周りへの圧縮ベルトの配置の前にそのように係合することができる。装置20は、チューブ又はカニューレ30と、第1の解放及び固定ワイヤ32と、第2の保持ワイヤ34とを含む。チューブ30は、ホルダー及びワイヤ32、34のための通路として機能し、ワイヤ32、34が通って延びるルーメン36を有する。特定の実施形態においては、チューブ30は、柔軟な素材からなり、脈管構造を通る通路を屈曲することなく移動できる。例示的な素材には、ニチノール又はステンレスが含まれる。チューブ30の内径は、張力縫合糸22がチューブ30の端部内に引っ張られるのを防止するか又は制限するために、小さくすることができ、例えばワイヤ32、34を収容するのにちょうどの大きさとすることができる。チューブ30の先端38が丸まった先端縁を有するようにして、(後述する)押し込みカテーテルのような張力器20が通って動く部品の内側を先端38がえぐるリスクを最小限にするようにできる。ワイヤ32、34は生体適合性のある、例えばニチノール又はステンレスとすることができる。
【0019】
図1の実施形態におけるワイヤ32は、真っ直ぐな部材であり、チューブ30の開口部40にまで通って延びる端部42を有する。ここで使用されるように、「ワイヤ」は、ここに記載されているようにして縫合糸22に張力をかけるのに十分な剛性を有する細長い部材を意味する。それは、金属、又はそのような特性を有する他の、物質からなるものにできる。ワイヤ32は、全体的に又は部分42において、一定の直径を有することができる。図示の実施形態においては、部分42(又はワイヤ32の全体)の最大幅は、チューブ30のルーメン36の幅よりも十分に小さく、例えばルーメン36の幅の半分かそれ以下である。図示の実施形態においては、ワイヤ32は、ルーメン36内又はルーメン36の開口部40において中心に位置し、縫合糸22のための中央アンカー又は支持体として機能する。
【0020】
図示の実施形態においては、ワイヤ32は端部42を含む全体に亘って真っ直ぐである。代わりに、ワイヤ32は、端部42に又は真っ直ぐな端部42に続いて、湾曲部を含むことができる。例えば、湾曲部はワイヤ32の一部に端部42への境界としてヒートセットされることもできるし、湾曲部は先端38を越えて位置する、すなわちルーメン36から露出しているようにすることもできる。湾曲部は、初期形態において又は張力器20がここに記載されるように縫合糸22に張力をかけるのに適したモードにあるときに、チューブ30の先端38を越えた端部42の少なくとも一部に配置できる。このようにして、湾曲部及び/又は端部42は、後にさらに述べるように、時期尚早に又は意図せずにワイヤ32が引き抜かれるのを防止することを助ける。特定の例においては、湾曲部は、鈍角、直角、又は鋭角のような平面内角度をワイヤ32に形成することができるが、ワイヤ32(又は端部42)が、チューブ30、張力器20の他の部品、及び/又は送達シース又はその中の他のコンポーネント(後に詳述する)の内側を損傷させないか又はそれらと干渉しないように鈍角(例えば135度よりも大きい)であるのが好ましい。他の実施形態においては、部分的な螺旋(ピッグテール)又は他の湾曲形状のような、より複雑な湾曲部(又は2以上の湾曲部)がワイヤ32に設けられてもよい。
【0021】
ワイヤ34は、
図1の実施形態においては、ループ状の部材である。特定の実施形態においては、ワイヤ34は、2つの脚部52、54の間にループ50を有する。ループ50は、図示の実施形態においては、脚部52、54の間にギャップ56を有する閉じていない部分として示されている。他の実施形態においては、ループ50は、脚部52、54が互いにつながって(例えば溶接又は接着されて)又は巻き付けられ若しくは捻られて、閉じていてもよい。ループ50は、この実施形態においては、チューブ30の外にすなわち開口部40を越えて延びており、ループ50の反対側の部分の外表面の間で測定される最大外幅を有し、それは開口部40の内径よりも大きい又は端面38での若しくはその近くでのチューブ30の外径よりも大きい。そのような実施形態においては、ループ50のサイズが、ループ50が開口部40を通してチューブ30の中に引き込まれることを防止する。見られるように、ループ50は、ワイヤ32及び/又はルーメン36の中心軸線に対して傾斜した又は直角な平面内にある。脚部52、54の一方又は両方がルーメン36内に延びている。そのような脚部52及び/又は54は、チューブ30の全体を通って延びるか、又は制御装置(図示しない)に動作可能に接続されるようにできる。
【0022】
この実施形態の装置20においては、第1の真っ直ぐなワイヤ32は、チューブ30のルーメン36内で中心(又はおおよそ中心)を延びている。ワイヤ32はまた、ワイヤ34のループ50を通って延びている。すなわち、ループ50はワイヤ32の少なくとも一部の周りを通り、一方又は両方の脚部52、54はワイヤ34の少なくとも一部に並行してルーメン内に延びている。両端が圧縮ベルトに接続された張力縫合糸22は、装置20に係合するループ又は輪60を有する。図示の実施形態においては、縫合糸22は、ワイヤ34のループ50の下(すなわちループ50とチューブ30の端部38との間)、ワイヤ32の周り、そして再びループ50の下を通る。
図1に見られるように、ワイヤ34のループ50はワイヤ32の概して一方の側の周りを通り、縫合糸22のループ60はワイヤ32の概して他方の側の周りを通る。したがって、縫合糸22は、(1)ワイヤ32が取り除かれるか、又は(2)縫合糸22が切断されるか圧縮ベルトから取り外されなければ、装置20から取り外すことができない。
【0023】
動作中は、上述の通り張力縫合糸22のループ60は、ワイヤ34のループ50の下及びワイヤ32の周りを通り、装置20に実質的に係止される。ハンドル(図示しない)が、チューブ30及びワイヤ32に、そしていくつかの実施形態ではワイヤ34にも接続されて、ユーザーがチューブ30、ワイヤ32、及び/又はワイヤ34を進めたり後退させたりすることができる。張力を調整するために、ユーザーはハンドルを操作して、チューブ30、ワイヤ32、及びワイヤ34の位置を個別に又は一緒に制御する。例えば、少なくともワイヤ34を、好ましくはチューブ30及びおそらくワイヤ32を有するユニットとして引き込むことにより、縫合糸22がワイヤ34と共に引っ張られる。ワイヤ34のループ50は縫合糸22のループ60に係合し、そして縫合糸22は圧縮ベルトに固定されてワイヤ32の周りでループ状になっているので、縫合糸22はワイヤ34と共に引っ張られる。チューブ30の硬い性質により、縫合糸22の位置の双方向への制御が可能となる、すなわちチューブ30(及び/又はワイヤ32、34)はループ60及び縫合糸22を送達シース(
図14)内で引っ張ることも押すこともできる。すなわち、チューブ30を進めることにより、端部38が縫合糸22に係合してそれを単体で又はワイヤ34のループ50と共に前に動かすことが可能となる。例えばチューブ30を進めることにより、縫合糸22のループ60がチューブ30の面38とワイヤ34のループ50との間に把持され、チューブ30及びワイヤ34が前に動くと、縫合糸22も前に動く。縫合糸22にすでに張力がかかっている場合には、その張力はチューブ30及び/又はワイヤ34を前進させることによって低減できる。
【0024】
ワイヤ34及び/又はチューブ30を引き込むことによって縫合糸22に適切な大きさの張力がかけられると、後述するように、張力は縫合糸係止具を使用して、又は別の適した係止機構により、係止される。係止されると、縫合糸22は、ワイヤ32をチューブ30のルーメン36の中に又はそれを通して引くことにより、装置20から解放される。ワイヤ32が上述のような湾曲部を含む実施形態においては、湾曲部が引き込むことに対する抵抗を加え、時期尚早な又は意図しない解放からの保護を提供する。例えば、湾曲部によって生じる端部42と先端38及び/又はワイヤ34との間の係合により、ワイヤ32の引っ張りが打ち勝たなければならない僅かな抵抗がもたらされる。ワイヤ32を引っ張ることにより湾曲部で又はそれに隣接した位置でワイヤ32が(例えば、湾曲部を縮小させるかまたは無くして)真っ直ぐになり、ワイヤ32がチューブ30のルーメン36を通って又はその中に動くことが可能となる。ワイヤ32がハンドル(図示しない)に操作可能に接続されている実施形態においては、操作者は、ワイヤ34及びチューブ30の位置を維持しながら、ハンドルを操作してワイヤ32を引き込む。ワイヤ32の前端部が縫合糸22のループ60を過ぎる(及び/又はワイヤ34のループ50を過ぎる)と、縫合糸22はループ50とチューブ30との間から自由に通過して、装置20から解放される。
【0025】
装置20は、スタンドアローン装置であるか若しくはその一部とすることができ、又は別の装置のコンポーネントとすることもできる。例えば、装置20に関連して上述した構造及び特徴は、圧縮ベルトの後方の装置20と縫合糸22を保持するための係止機構とを備える後述する統合的配置装置のような、圧縮ベルトのための送達装置内に組み込むことができることを理解されたい。圧縮ベルト及び関連した係止機構がその送達装置から送達されると、縫合糸22に張力をかける装置20の操作が可能になる。
【0026】
要約すると、そのチューブ30を備える張力器20の使用により、張力縫合糸22の端部の双方向制御が可能となり、すなわち、縫合糸は押されることも引っ張られることも可能となる。縫合糸22を押す能力は、送達装置(例えば後述する押し込みカテーテル及び/又は送達シース)内での摩擦抵抗の心配なしに輪状形成ベルトの周りの張力を解放することができるので、重要となる。解放トリガーワイヤ32が所定位置にある限りは、保持トリガーループ50が張力縫合糸22のループ60を維持する。ワイヤ32が後方に引っ張られる又は引かれると、張力縫合糸22を所定位置に係止する解放トリガーワイヤ32又はトリガーループは、縫合糸22を容易に解放する。解放トリガーワイヤ32の端部は(後述する)他の送達システム構造の中を傷つけないか又はえぐりにくいように、丸められている。解放トリガーは、閾値の張力がかけられることなく引き込まれてループがチューブ30内に崩れるように入ることを防止するために、ループ形状を使用することができる。
【0027】
関連する実施形態において、張力装置20’が示されている。大部分において、装置20’は装置20と同じである。主な違いは、装置20のワイヤ32がループ状ワイヤ32’に置き換えられていて、装置20’は2つのループ状ワイヤ32’及び34’を有していることである。この実施形態においてチューブ30’は、チューブ30と同じであり、中央ルーメン36’を有する。この実施形態においてワイヤ34’は、ルーメン36’の中心軸線に平行な平面内にあるループ50’を含む。この実施形態の装置20’においては、ワイヤ32’(ループ33’及び脚部35’、37’を備えている)は、チューブ30’のルーメン36’内で中心(又はほぼ中心)を延びる。ワイヤ32’(又は、特に一方又は両方の脚部35’、37’)は、ワイヤ32に関連して上述したように1つ以上の湾曲部を含むことができ、特定の実施形態においては、湾曲部はワイヤ34’から離れてループ33’を旋回または湾曲させる。ワイヤ34’もワイヤ32’と並行してルーメン36’内に又はそれを通って延びて、それによりループ50’及びループ33’が互いに隣り合って概して平行になっている。圧縮ベルトに接続された張力縫合糸22’は、装置20’に係合するループ60’を有する。図示の実施形態においては、縫合糸22’はワイヤ34’のループ50’を通り、ワイヤ32’のループ33’の下方部分(及び/又は脚部35’、37’)を周り、そしてループ50’を通って戻る。
図2の例に見られるように、縫合糸22’のループ60’は、ワイヤ32’のループ33’の直径または最大幅よりも直径が小さい。したがって、縫合糸22’は、(1)ワイヤ32’が取り除かれるか、又は(2)縫合糸22’が切断されるか若しくは圧縮ベルトから取り外されなければ、装置20’から取り外すことができない。
【0028】
装置20’の実施形態の操作は、基本的に装置20の説明された実施形態と同一である。少なくともワイヤ32’、特定の例においてはチューブ30’及びワイヤ32’、34’の組み合わせは、(例えば図示しないハンドルによって)引き込まれたり進められたりして、張力縫合糸22’のループ60’の位置を制御する。上述の通り、装置20’(又はそれの適当な部品)を引き込むことにより、縫合糸22’は引っ張られて張力がかけられた状態となり、また装置20’を進めることにより、張力を低減させ及び/又は縫合糸22’を再配置する。操作者が縫合糸22’を解放する準備ができたとき、例えば適切な張力が縫合糸22’にかけられて係止されたときに、ワイヤ32’は縫合糸22’のループ60’を通して引っ張られ、縫合糸22’をワイヤ34’のループ50’を通して簡単に抜き出せるようにさせる。
【0029】
ワイヤ32’は好ましくは、そのループ33’が保持ワイヤ34’のループ50’の曲率半径よりも大きい曲率半径を有するように、ヒートセットされるか又はそうでなければ構成される。そのようにして、装置20’自体を組み立てるとき、又はそれを別の装置(例えば上述の圧縮ベルトのための送達システム)の中に組み込むときに、ワイヤ34’が縫合糸22’を通って又はルーメン36’の中に不意に引っ張られ難くなる。真っ直ぐなワイヤ32に代えてループ状ワイヤ32’を使用することの別の利点は、ワイヤ32’の先端又は前端としてのループ33’が、真っ直ぐなワイヤ32の先端に比べてより非侵襲的であることである。
【0030】
係止コンセプト
ここで
図3-13を参照すると、縫合糸22(例えばここに説明するように圧縮ベルト(
図14)に接続されている)が非係止状態においては自由に通ってスライドできるようにするが、係止されると恒久的に縫合糸22の動きを制限するようにした、縫合糸係止具80の実施形態が示されている。図示の実施形態においては、係止具80は2つのコンポーネント、すなわちハウジング部品82及びスネア部品84を含む。後に詳述するように、スネア84はハウジング82に入ってハウジング82内で移動可能である。縫合糸22はスネア84及びハウジング82を通り、係止具80が係止されていないときにはそれらに対して移動可能である。係止具80は、スネア84をハウジング82に対して動かして縫合糸22を把持又は挟むようにして、係止される。
【0031】
ハウジング82の図示の実施形態は、硬くて、ハウジング82の直径が狭い領域92から広い領域94に変わる外側段部90を備える概して筒状の形状である。狭い領域92によりハウジング82は押し込みカテーテル(
図14)に係合又は嵌め込むことが可能となる。その嵌め込みは、送達の間に係止具82の位置を一定に保ち、且つ縫合糸22に張力をかける間に縫合糸22が係止具80を通して引っ張られたときに反対向きの静止摩擦をもたらす、ぴったりとした嵌め合いである。係止具80はまた、スネア84を収容する第1の貫通孔96と、縫合糸22の一部のためのハウジング82を通る通路を提供する第2の貫通孔98を含む。ハウジング82には小さな側孔100が設けられており、それは係止具80と圧縮ベルトとを押し込みカテーテルに係止して係止具80の時期尚早な作動を防止するセーフティーワイヤのための係止点としての役割を果たす。
【0032】
貫通孔96は、ハウジング82の上面すなわち遠位面102から下面すなわち近位面104にまで延びる。孔96は、図示の実施形態においては真っ直ぐ(すなわち直線状)であり、壁106によって境界されている。特定の例では、孔96は、上面102(広い領域94の端部)と下面104(狭い領域92の端部)の両方に対して直角で、狭い領域92及び広い領域94の円柱状側面に対して平行である中心長手軸線を有する。孔96は、この実施形態においては、第2の横寸法よりも小さい第1の横寸法を有する楕円形であり、これらの横寸法は互いに垂直である。特定の例においては、孔96は、概して、対向する平面と角の4分の1円柱状面とを有する、角丸長方形の形状である。
【0033】
第1及び第2の横寸法が一定である図示の実施形態においては、壁106は下側の近位部分106aを有する。上面102に隣接した位置で孔96は、図示の実施形態においては、両方の横寸法で広くなり、特定の実施形態においてはハウジング82内の壁部分106aから上面102のより大きい直径に向かって拡大する円錐状の壁部分又は面取り面106bを有する。拡大部分106bは、縫合糸22を損傷させたり応力点を与えたりする鋭い角、特に90度の角を限定するか無くし、また後にさらに述べるように縫合糸22が容易に入れるようにする。横寸法は、後に詳述するように、スネア84を収容する大きさとされ、特定の実施形態においては大きい方の横寸法は小さい方の横寸法の2倍の大きさとされる。
【0034】
貫通孔98は、図示の実施形態においては、2つの平らなすなわち平面状の中間区分110aと2つの端の半円柱状区分110bとを備える壁110を有する楕円形の孔である。小さい方の横寸法は平面状区分110aの間で測定され、大きい方の横寸法は区分110bの中心の間で測定される。特定の実施形態においては、孔98の大きい方の横寸法は、孔96の壁区分106aの大きい方の横寸法と同じかほぼ同じである。孔98の小さい方の横寸法も、孔96の小さい方の横寸法と同じかほぼ同じである。孔98は上面102から下面104にまで延びている。孔96、98のどの部分も重なったり交差したりしないように、孔98及びその壁110は孔96及びその壁106から分離している。孔98は、この実施形態においては、孔96の中心長手軸線と平行で且つ面102、104に直角な中心長手軸線を有する。孔96は、面102、104に角を有していてもよく、又は傾斜が付けられるか若しくはそうでなければ角を最小にするように処理されていてもよい。
【0035】
孔100は、ハウジング82の狭い領域92にあり、下面104に近接しているが交差はしていない。孔100は、図示の実施形態においては、円柱状壁112を有し、ハウジング82の外表面から孔96にまで延びている。図示の実施形態においては、孔100は、孔96の中心長手軸線に垂直で、且つ面102、104に平行な中心長手軸線を有する。孔100の内径は小さく、例えばトリガーワイヤ又は他の制御機構を通すのにちょうどの大きさである。
【0036】
スネア84は、図示の実施形態においては、最1及び第2の端部122、124並びに中間部分126を有する、薄い板状本体120を有する。反対側の平面128、130は、端部122、124及び部分126を通って延びる。端部122は、丸みを帯びた端部の角134を備えていて中間部分126よりも幅広のドーム形状の頭部132を有する。図示の実施形態においては、頭部132は、中間部分126に垂直で概して端部124に向かって面する面138を有する両側の尖った段部又はボス136で、中間部分126につながっている。頭部132は、楕円形又は長円形の上部アイレット140を含み、上部アイレット140は、特定の実施形態においては円形または円柱形の144a、144bの間の上部及び下部の平面142a、142bを有する。アイレット140は、面128から面130にまで頭部132の全体を通って延びて、各面に開口を備える。
【0037】
中間部分126は、各ボス136から端部124に向かって延びる2つの真っ直ぐな側面146を有する。尖った段部又は突部148は、各側面146から差し込み(inset)されている。中央アイレット150は、中間部分126を通って延び、各面128、130に開口を備える。図示の実施形態においては、アイレット150は、丸みを帯びた角を備える四角形(例えば正方形)の形状である。アイレット150は、特定の実施形態においては、ボス148よりもボス136の近くに配置されており、一例では、アイレット150の端部124に最も近い端縁は、ボス136からボス148の間の長さの3分の1から5分の2の位置にある。下部アイレット154は、少なくとも部分的に中間部分126にある。図示の実施形態においては、アイレット154は、円形であり、本体120を完全に貫通して延びて、面128、130に開口を備える。アイレット154は、ボス148の平面(例えば
図11を参照)を横断している。
【0038】
端部124は、タブ162、164を含む底部分160を含む。タブ162、164は概してL字状であり、それぞれが本体120から延びる先端部166と、先端部166から延びる脚部168とを有する。図示の実施形態においては、各脚部168は、直線状であり、先端部166から、本体120の中心長手軸線から(例えば中心長手軸線に対して斜めに)離れて端部122に向かって延びる。図面(例えば
図10-11)に示されるように、各脚部168は、本体120との間にチャンネル170を画定している。例えばそのようなチャンネル170は、それぞれの脚部168に対して平行であり、脚部168と隣接するボス148との間に出口172を備える。そのような実施形態においては、脚部168及びボス148に近接する本体120の部分は実質的にV字状である。アイレット154は少なくとも部分的に本体120のV字状の部分の中にあり、一方又は両方の先端166は、
図11に最もよく示されているように、V字状の部分の頂点で本体102に係合している。タブ162、164は、本体120の中心長手軸線に向かって、またそれから離れるように、後に詳述するように、例えばそれぞれの先端部166又はそれぞれの脚部168がそれらの先端部166につながる点の周りで枢動できる。
【0039】
本体120は直線状の板であり、図示の実施形態においては、直線状の板に、アイレット140、150、及び154が切削され、縫合糸22の損傷の可能性が限定されるようにするためにそれぞれのエッジが滑らかになるように研磨されている。特定の実施形態においては、タブ162、164は、チャンネル170を作り出す本体120への切削によって形成されている。他の実施形態においては、本体120は、成型または他の工程により形成することができる。ハウジング82と同様に、スネア84は、ステンレス、チタン、強固なポリマー、又は同様な素材や組成物のような、剛性のある生体適合性の材料とすることができる。
【0040】
スネア84は、ハウジング82の孔96の中に入り、アイレット140とアイレット150の少なくとも一部とがハウジング82の面102を越えて出る開放位置から、タブ162、164がハウジング82の面104から延びてこの面104に対して係止される係止位置にまで移動可能となっている。スネア84の部分のそれぞれの幅は、縫合糸係止具80のそのような移動及び係止が可能となるように選択される。一例では、本体120の中間部分126の幅Wは、ハウジング82の孔96の内径(すなわち、壁106bの互いに反対側の部分の間の大きい方の寸法)よりも小さいか又は等しい。タブ162、164は、応力を受けておらず且つ折曲げられていない状態で、ハウジング82の孔96の内径(すなわち、壁106bの互いに反対側の部分の間の大きい方の寸法)よりも小さい、(例えばそれぞれのボス148に隣接している)最大幅を有する。本体120の頭部132は、その幅が、孔96の部分106bよりは大きいが、孔96の面取り面又は円錐状区分106aの寸法に等しいか又はそれより小さい。
【0041】
特定の実施形態においては、スネア84の下のアイレット154は、トリガーワイヤの端に取り付けられたボール(例えば、
図14の222、224を参照)を閉じ込めるか又は保持する。ワイヤの一部は、ハウジング82の貫通孔96に沿ってスネア84と共に通る。ワイヤが引っ張られると、その端に固定されたボールはスネア84をさらに孔96内へと押し下げる。スネア84がハウジング82を通して十分に引っ張られると、ボールはハウジング82の底面104を通過する。特定の例においては、ボールは、タブ162、164が面104を通過してスネア84をハウジング82に対して係止するように拡がるのと同時に又はそのすぐ後に、底面104を通過する。このようにして、ワイヤとボールは、縫合糸係止具80から取り外されて、配置装置から引き抜かれる。側孔100を通る別のワイヤ(例えば
図14の220)が、係止具80を送達装置に保持するか又はそれを補助し、及び/又はスネア84が時期尚早にハウジング82を下方に通過するのを防止する。
【0042】
このように、スネア84は、ベルトに固定するための上のアイレット140、非係止状態では張力縫合糸22の自由な通過を可能とするが係止状態では張力縫合糸22の動きを制限する第2の中央のアイレット150、及び係止作動のためにトリガーワイヤと共に使用される下のアイレット154を有する。スネア84の頂部近くでの幅は僅かに増加していて、スネア84がハウジング82を完全に通り抜けて引っ張られるのを防止する。スネア84の下部には一組のタブ162、164があり、最下部又は最近位位置にまで引っ張られてタブ162、164がハウジング82の底面104の下方に延びたときに、タブ162、164がスネアの本体126よりも幅広に延びて飛び出し、スネア84を所定位置に留める(ラッチする)。上及び中央のアイレット140、150は、好ましくは電解研磨または機械研磨されてエッジが丸められおり、縫合糸が切断されたり裂かれたりすることなく円滑に通過することができるようになっている。
【0043】
張力縫合糸の通路及び係止作動
使用時、張力縫合糸22は、スネア84の中央アイレット150を通して張力縫合糸22が取り付けられている輪状形成ベルトから、さらにハウジング82の貫通孔98を通って延びている。ベルトは、例えば縫合糸22の反対側の端によってスネア84の頭部132のアイレット140に取り付けられている。縫合糸22は、孔98の全体を通り、そして(上述の装置20の実施形態のような)張力装置にまで又はそれに向かって延びている。非係止状態(例えば
図3-4)において、スネア84は、中央アイレット150がハウジング82の表面102を(例えば完全に上に)通過しているように、ハウジング82に対して配置されている。縫合糸22はアイレット150及び貫通孔98を通って自由に且つ円滑に移動可能となり、上述のように縫合糸22を張力がかけられた状態とすることが可能となる。タブ162、164は、貫通孔96内にあり、貫通孔96の内壁106によって本体120のV字状の部分に対して内側に押されている。この状態において、一方又は両方のチャンネル170が、応力を受けていない状態から部分的に又は完全に閉じられるか又は狭められており、タブ162、164は孔96の内壁106に対して付勢されている。
【0044】
係止状態(例えば
図5-7)とするために、スネア84がハウジング82を通して引っ張られるか、そうでなければ押し込まれる。図示の実施形態においては、スネア84は、少なくとも、中央アイレット150の端縁(例えば頭部132に最も近い端縁)が張力縫合糸22をスネア84と共に貫通孔96の中に引っ張り、且つタブ162、164がハウジング82の面104を超えて動く程度にまで押し込まれる。縫合糸22を孔96の中に(面取り面又は円錐状部分106aにまで又はそれを通して)引っ張ることにより、スネア84及びハウジング82は、縫合糸22を180度の湾曲、S字状、又は同様な蛇行形態にさせる。縫合糸22は、このようにしてスネア84(例えばアイレット150の端縁、及び/又は本体120の面128、130)と孔96の内壁106との間に挟まれる。上述のように、孔96の幾つかの実施形態では、縫合糸22が非係止状態から係止状態に円滑に移行することを可能とし(例えばスネアへの最小限の引っ張り力で及び/又はハウジングへの最小限の押圧力で係止具と係合することを可能とし)、係止工程中の縫合糸22の損傷を最小限にする、面取りされた又は円錐状の部分106aを含むことができる。既に述べたように、図示の実施形態においては、タブ162、164はハウジング82の面104を越えて移動して係止位置に至る。タブ162、164が面104を通過すると、孔96の内壁106によるタブ162、164への内側への力が解放されて、タブ162、164は外側に動いてチャンネル170が開放または拡大する。
図5及び7に見られるように、開いたタブ162、164は、ハウジング82の面104上に拡がり、スネア84がハウジング82の孔96の中に引き込まれるのを防止して、係止具80が係止された状態を確実に維持する。
【0045】
他の実施形態の係止装置も考えられる。例えば、縫合糸係止具80’はハウジング82を有し、スネア84’は同様な又は同一のスネア84を有していて、主な違いは少なくとも1つの中央のタブ162’である。この実施形態においては、タブ162’は、本体120’から切削されるか又は本体120’に形成されるが、本体120’の平面から外に曲げられている。タブ162’は、スネア84’がハウジング82の孔96の中に挿入されたときに、少なくとも部分的に孔96の内壁106によって内側に押し込まれてタブ162’に付勢が生じるように、本体120’から離れて所定距離を延びている。スネア84の動作と同様に、スネア84’が、タブ162’がハウジング82から出るのに十分なだけ貫通孔96内で動かされたとき(すなわちタブ162’がハウジング82の面104を通過したとき)に、タブ162’は、タブ162’の少なくとも一部が面104に当接するのに十分な距離だけ外に跳ねる。タブ162、164と同様に、タブ162’を備えるこの実施形態では、ハウジング82にあるときには引っ込んで閉じ込められるが、ハウジング82から出てきた後には外側に跳ねてスネア84’がハウジング82の中に戻るのを防止するラッチを提供する。
【0046】
スネア84’は、スネア84に関連して上述したのと実質的に同様に、長方形(例えば正方形)である中央アイレット150’を含む。上部アイレット140’はこの実施形態においては円形であり、一番下のアイレット178’は、長方形(例えば正方形)であり、タブ162’の外側への曲げによって形成されたスロット170’に連通している。ここに説明する実施形態においては、もう一つの円形のアイレット154’が一番下のアイレット178’と中央アイレット150’との間にある。この追加のアイレット154’は、スネア84の下部アイレット154と同じようにして同じ目的で使用することができる。
【0047】
図13に示す縫合糸係止具80”の実施形態においては、スネア84”は、板状本体又は板ではなく、糸状体180”によって形成されている。ハウジング82”は、上述の孔96と同様な貫通孔96”を含み、円錐状の又は面取りされた部分106a”と一定寸法(例えば断面寸法がそれぞれ一定の長方形、又は円柱形)の部分106b”を備える。この実施形態においては、最大幅一定寸法の部分(例えば円柱形部分の直径)は、縫合糸22の幅の2倍よりも小さい。糸状体180”は、二重にされ、そうでなければループ182”に形成されている。スネア84”のループ182”はスネア84のアイレット150に相当し、縫合糸22はループ182”を通過し、ハウジング82”の(この実施形態においてはハウジング82の孔98と同一である)貫通孔98”を下に進む。
【0048】
この実施形態の操作は係止具20及びスネア84の操作と同様であり、縫合糸22はループ182”を通して引っ張ることでピンと張られる。糸状体180”を引っ張ることにより、ループ182”は孔96”の中へ又はさらに孔96”を通って動く。ループ182”は縫合糸22の輪を孔96”の中に引っ張り、(縫合糸22の直径の2倍を有する)輪を(孔96”の上半分である)円錐状の/面取りされた部分106a”の壁、及び/又は貫通孔96”の一定直径の部分106b”に対して押し付ける。縫合糸22の輪は孔96”の壁に押し付けられ、縫合糸22は張力がかかった状態でハウジング82”に係止される。特定の実施形態においては、ハウジング82”は、縫合糸22の輪のための留め部として機能する差し込み部(inset)又はボス184”を孔96”内に含む。輪が差し込み部184”を越えて引っ張られると、縫合糸22は、孔96”の壁の押し付けによって保持されるだけでなく、縫合糸22の輪の側面に対する差し込み部184”のエッジによっても保持される。別の実施形態においては、内側の差し込み部184”が設けられておらず、縫合糸22の輪はハウジング82”の下面104”の孔96”の開口部を通して引っ張られる。開口部のエッジが、縫合糸22の輪が面104”の開口部を通って戻ることに対する抵抗または圧力を与える。
【0049】
統合的送達アセンブリ
統合的送達アセンブリ200が提供され、その実施形態が
図14に示されている。この実施形態においては、送達アセンブリ200は、大腿静脈アクセスサイトと心膜腔との間で右心耳の孔を通る導管としての役割を果たす心膜アクセスシース202のようなアクセスカテーテル又はシース内で操作されるように設計されている。図示の実施形態は、(
図14では既に送達されている)ベルトBを送達するためのフレーム204、及び押し込みカテーテル206を含む。
図14では心臓は簡素化のために図示されていないが、ベルトBはフレーム204を使用して心臓の周りに送達されているものとする。縫合糸係止具80の実施形態は押し込みカテーテル206に繋がれて示されており、張力縫合糸22は、ベルトBの一部であるか又はベルトBに取り付けられていて、上述のように係止具80を通って延びている。張力器20の実施形態は、ここで説明されるように、押し込みカテーテル206の中で係止具80の下方にあり、縫合糸22に接続されている。
【0050】
シース202は、アセンブリ200の一部であり、ベルトBが配置されるか若しくはアセンブリ200の他の形態が使用されるときに導入されるか若しくは配置されるようにすることができ、又はシース202は、異なるときに又は異なる目的のために配置され、ベルトBをアセンブリ200の他の形態に渡すために使用される別個の部品とすることもできる。上述のように、シース202は心膜アクセスシースとすることができ、少なくとも内径によってアセンブリ200の部品を一体として容易に通過させることを可能とする。
【0051】
押し込みカテーテル206は、シース202内の管状部材であり、図示の実施形態においては概して一定の直径であるが遠位端212では広がっているルーメン210を有する。遠位端212は、中央エリアから端部212にルーメン210を広げて端部212にチャンバー216を形成するレッジ又はボス214を含み、チャンバー216は概してレッジ214及び側壁218によって画定される。チャンバー216は、縫合糸係止具80をチャンバー216内に固定できるようにする下方の狭くされた部分又は差し込み部92(例えば
図3)のような、縫合糸係止具80の一部を収容する大きさとされている。押し込みカテーテル206は、好ましくは、圧縮力がかけられたときに圧縮に耐えられる良いコラム強さを有する材料から作られている。好ましい材料はビニルである。係止具80は、チャンバー216の少なくとも一部の中に嵌められるか又は圧入され、例えばカテーテル206の端部212により縫合糸係止具80が把持された状態となる。
【0052】
図示の実施形態のカテーテル206は、チャンバー216を囲む壁に側孔219を含む。孔219は、縫合糸係止具80がカテーテル206に固定されたときに、縫合糸係止具80のハウジング82の側孔100の近く又は隣接するようにされている。カテーテル206は、縫合糸係止具80及び関連構造をシース202の外に押し出す、及び/又はアセンブリ200の配置または操作の間に縫合糸係止具80又は他の構造の位置を調整するように、シース202内で少なくとも長手方向に移動可能である。カテーテル206はまた、使用中に必要であるように及び/又はシース202内の(フレーム204のような)他の構造によって許容されるように、シース202に対して横方向/又は回転方向に移動可能とすることができる。
【0053】
縫合糸係止具80は、図示の実施形態においては上述のように配置されたハウジング82及びスネア84を含むが、ここに記載の縫合糸係止具の他の実施形態または部品を使用することもできることを理解されたい。スネア84の遠位端は、例えばベルトBの一端に固定されている縫合糸22の端部をスネア84に結ぶことによって、ベルトBに固定又は接続されている。特定の実施形態においては、ベルトBの一端からの縫合糸22の端部は、アイレット140を通してスネア84の頭部132の周りでループ状にされて結ばれている。縫合糸22はベルトBを通っている。縫合糸22は、ベルトBの他端から延びて、スネア84の第2のより大きいアイレット(例えば中央アイレット150)を通り、ハウジング82を貫通する孔98の中に入ってそれを通り、チャンバー216又は押し込みカテーテル206のルーメン210の他の部分の中に出る。
【0054】
張力器アセンブリ20は、ルーメン210で縫合糸係止具80の近位側にあり、上述のどの構成又は実施形態とすることも又はそれらを含むこともできる。張力器20は、既に述べたように、張力縫合糸22の自由端の位置を制御するために使用される。
【0055】
アセンブリ200は、この実施形態においては、縫合糸係止具80の摩擦抵抗を制御する一対のトリガーワイヤ220、222を含む。ワイヤ220、222は、特定の実施形態においては、ニチノール又はステンレスからなる。ルーメン210内を押し込みカテーテル206の左側を通って延びるように示されているセーフティーアンカートリガーワイヤ220は、スネア84がハウジング82の中に引っ張られることを防止して、時期尚早に張力縫合糸22が動くことを制限する。また、係止ハウジング82を押し込みカテーテル206に固定する働きもする。ワイヤ220は、(スネア84が中にある)孔96の下端部内へ進み、側孔100を介してハウジング82から出るようにして、縫合糸係止具80のハウジング82を通る。ワイヤ220は次に押し込みカテーテル206の側孔219を通過して、縫合糸係止具80のハウジング82を押し込みカテーテル206に対して効果的に動かないように留める。ワイヤ220は、特定の実施形態においてはカテーテル206の外側の周りを部分的に又は完全に延びるようにでき(例えば
図16)、またニチノールのような丈夫な形状記憶合金からなるようにすることができる。ワイヤ220はスネア84のために使用される貫通孔96の中に入っているため、ワイヤ220を取り外す前にスネア84が孔96を通って近位方向に動くことを防止又は制限して、係止具80の係止を防止する。
【0056】
係止トリガーワイヤ222は縫合糸係止具80の関連で上述した通りである。図示の実施形態においては、ワイヤ222はセーフティーアンカートリガーワイヤ220のすぐ右にある。ワイヤ222は遠位端に溶接または固定された小さなボール224を有し、ボール224はスネア84の下部アイレット154に嵌め込まれている。
図15-16の例では、ワイヤ222は、支持部材又は板226を含み、この支持部材又は板226は、ボール224が固定される孔228と、セーフティーワイヤ220が通って延びて支持部材226及びスネア84の遠位側への移動が防止または制限されるようにするスロット230とを有する。縫合糸係止具80が組み立てられてはいるが係止はされていないときに、ボール224は、孔228に固定され、その少なくとも一部(例えば半分又はそれ以上)が孔228からアイレット154の中に延びる。ボール224は、好ましくは放射線不透過性であり又はそうでなければ蛍光透視法又は他のイメージシステムで視認可能であり、それによりユーザーは縫合糸係止具80の配置及び/又は係合の手順の間に確認することができる。
【0057】
スネア84及び/又は支持部材226が防止または制限されないように、セーフティー/アンカートリガーワイヤ220を孔219及び100から取り除いて縫合糸係止具80のハウジング82の外にして、セーフティー/アンカートリガーワイヤ220が引き抜かれた後に、ワイヤ222を引っ張るか又は係止具80をカテーテル206によって前に押しながらワイヤ22を動かないように保持することによって、ワイヤ222は係止具80に対して動かされる。スネア84に嵌め込まれたボール224は、スネア84を(もしあれば支持部材226と共に)孔96を通してハウジング82の中のより奥へ引っ張る。特定の実施形態においては、ワイヤ222は、(上述のように)縫合糸22をハウジング82に対して(例えば面106aに対して)完全に固定することなく部分的に固定するように操作される。縫合糸22の近位部分は、(
図3-6で見て左側から)緩められて、ある程度のたるみがもたらされる。次にワイヤ222が更に引っ張られて、縫合糸22のそのようなたるみ部分をハウジング82の中へ(例えばルーメン96の中へ)引き込み、係止具縫合糸を完全に係止する。そのようなたるみをもたらすことにより、縫合糸22に過度な張力をかけることなく完全な係止を可能とし、縫合糸22が破断するリスクを低減させるか又は無くす。上述の通り、スネア84は、張力縫合糸22をハウジング82の中に一緒に引っ張り、縫合糸22を縫合糸係止具80に係止する。タブ162、164(例えば
図5、7)は、それらがハウジング82の底面104を通過すると跳ね上がり、スネア84が孔96を通って遠位方向に戻り縫合糸22を解放することを防止する。
【0058】
スネア84が下に引っ張られると、ボール224はハウジング84の下に出てスネア84のアイレット154の外に出る。 ボール224(及びもしあれば支持部材226)は最終的にハウジング82を通過する。ボール224がスネア84から自由となり、ワイヤ220は既に取り除かれているため、縫合糸係止具80及び係止された縫合糸22はカテーテル206から解放可能となる。ベルトBが心臓の周りに配置されて縫合糸22が治療に適するように締められた状態で、アセンブリ200は治療部位から取り除くことが可能となる。ベルトB及び/又は縫合糸係止具80の配置及び係合を確認するために、処置の間に蛍光透視法又は他の画像検査法が使用される。
【0059】
アセンブリ200を使用する特定の方法においては、ベルトBは始めに送達フレーム204に装填される。フレーム204はベルトBとともに、押し込みカテーテル206と押し込みカテーテル206の遠位端に固定された縫合糸係止具80との遠位側の位置で、送達シース202内に装填される。フレーム204とベルトBは、フレーム204を送達シース202の遠位端から外に動かすことによって、又はシース202をフレーム204に対して後方に引っ張ることによって、送達シース202から出される。外に出されると、フレーム204は拡張し、ユーザーはフレーム204と輪状形成ベルトBとで心臓を取り囲む。
【0060】
特定の実施形態においては、ベルトBは、フレーム204にまだ装填されている間に、張力がかけられる。張力器20は、張力縫合糸22が上述のように張力器20に係止されているか又はそうでなければ保持されている間に、押し込みカテーテル206の中で近位側(
図14での下側)に摺動される。例えば、張力器20が、ハウジング82の孔98と縫合糸係止具80のスネア84のアイレット150とを通して縫合糸22を引っ張る。(縫合糸22が取り付けられている)ベルトBが、ユーザーが望むように、血管または他の心内構造物を損傷させることなく、例えば心臓の特定の部分の周り及び/又はそれ自体に圧縮力をかけるように、張力がかけられる。ベルトBのたるみが取られると、送達フレーム204はベルトBの中から引き出されて押し込みカテーテル206と並行にシース202の中に引き込まれる。縫合糸22の、よってベルトBの張力は、張力器20を更に位置調整することによって調整可能である。例えば、張力器20をカテーテル206及びシース202に対して遠位方向(
図14で見て上方法)に摺動することにより張力が解放されてベルトBが緩められ、張力器をカテーテル206及びシース202に対して近位方向に摺動させることにより張力がかけられてベルトBが締められる。
【0061】
所望の治療に適切な張力が縫合糸22にもたらされると、セーフティー/アンカートリガーワイヤ220がカテーテル206の側孔219及びハウジング82の側孔100を通して引っ張られて、それによりワイヤ22の遠位端がカテーテル206のルーメン210内になる。次に、ワイヤ220がスネア84の更なるハウジング82内への移動をもはや制限しないので、縫合糸係止具80が設定可能になる。係止トリガーワイヤ222が引っ張られて、スネア84がハウジング82の中へ更に近位方向に引っ張られる。スネア84(及び特に図示の実施形態においてはアイレット150の端縁)が、張力縫合糸22を係止位置に、例えばハウジング8の孔96に引っ張って、縫合糸22を蛇行形態とし、及び/又はスネア84とハウジング82の孔96の壁106とに対して縫合糸22をくさび留めする。タブ162、164はスネア84を所定位置にラッチし、ワイヤ222の遠位端のボール224は上述のようにスネア84から抜け出る。ワイヤ222を引っ張ってスネア84をハウジング82を通して動かすのに代えて、ワイヤ222をその位置に保持した状態を維持して押し込みカテーテル206を進めることによって、ワイヤ222をカテーテル206に対して動かすこともできる。
【0062】
ベルトBが配置され、ベルトBに縫合糸22を介して張力がかけられて、張力が縫合糸係止具80によって係止された状態で、張力器20は縫合糸22から解放される。図示の実施形態においては、解放ワイヤ及び/又はループ32、33’(上述のような)は、張力器20から引っ張られる。それにより縫合糸22は張力器20から解放される。ベルトB、張力縫合糸22、及び縫合糸係止具を80身体内に残したまま、送達シース202は、押し込みカテーテル206、フレーム204及び/又はその中の張力器20とともに、治療部位から引き抜かれる。アセンブリ200の部品は、引き抜くための全てのステップが完了するまで待つのではなく、それらの使用が完了した後により早い段階で引き抜くことができることを理解されたい。例えばフレーム204が上述のようにベルトBから引き抜かれたら、張力器20からの縫合糸22の解放に続いてではなく、その時にフレーム204を送達シース202及び身体から取り除くことができる。
【0063】
アセンブリ200はまた、例えば間違い、緊急事態、又はベルトBが取り除かれるべき他の兆候があったときに、ベルトBが心臓の周りに配置された後に係止に先立って、ベルトBを患者から引き抜くための方法を提供する。一例においては、ベルトBを取り外す決定がなされると、張力縫合糸22が張力器20から解放され、張力器20が押し込みカテーテル206及び/又は送達シース202に沿って又はその外に引き出される。縫合糸係止具80はワイヤ222によって押し込みカテーテル206に固定されたままとなっており、ボール224は縫合糸係止具80のスネア84に係合されたままとなっている。すなわち、いずれのトリガーワイヤ220、222も縫合糸係止具80から引っ張られていない。次に、送達シース202が押し込みカテーテル206及びカテーテル206に接続された縫合糸係止具80と共に引き抜かれ、張力縫合糸22がハウジング82の孔98と縫合糸係止具80のスネア84のアイレット150とを通して抜かれる。縫合糸22とスネア84の上部アイレット140との間の接続は維持され、それにより縫合糸係止具80を(ボール224とワイヤ222とがスネア84がハウジング82につながれている状態を維持して)引き抜くことにより、ベルトBが心臓の周りで引っ張られてアセンブリ200と共に身体の外に出る。
【0064】
上述の特徴は、患者の外側に配置された操作ハンドル又はシステムに、直接的に又は構造を介して、接続できることを理解されたい。したがって、張力器20のワイヤ32及び/又は34、並びに幾つかの実施形態では張力器20のチューブ30は、押し込みカテーテル206及び/又は送達シース202を通って直接的または他の構造を介してハンドルにまで延びているようにすることができ、それによりワイヤ32、34及び/又は張力器20は、必要に応じて操作者によって全体として引っ込められたり延ばされたりすることができる。同様に、ワイヤ220、222は押し込みカテーテル206及び/又は送達シース202を通って(直接的に又は他の構造を介して)同様な又は異なるハンドルにまで延びることができ、それによりワイヤ220、222は操作者によって適切に引っ込めることができる。そのようなハンドル、又は分離した部品を、ベルトBを配置してフレーム204を引き込むために使用することができる。
【0065】
本開示は図面及び上述の記載において詳細に例示及び説明されてきたが、これは例示的であり特性を限定するものではない。本開示では選択された実施形態のみが示され説明されており、本明細書または以下の特許請求の範囲に記載される開示の精神に含まれるすべての同等物、変更、および修正が保護されるべきである。1つまたは複数の特定の構造または実施形態に関して特に説明される特徴は、本明細書に開示される他の構造または実施形態に組み込まれるか、または他の方法で使用されてもよいことが理解されよう。
【0066】
以下の番号付きの項は、本発明を理解するのに有用であり得る特定の実施形態を示す。
1. 輪状形成ベルトに接続された張力縫合糸に張力をかけるための張力装置であって、
ルーメン及び前記ルーメンの遠位開口を有し、前記遠位開口の周りに端面を有する管状外側部材と、
前記張力縫合糸が通る端部を有し、前記端部が前記遠位開口を越えて延びるようにして前記ルーメン内に位置する第1のワイヤと、
2つの脚部の間に端部ループを有し、前記脚部の少なくとも一部が前記ルーメン内となり前記端部ループが前記遠位開口を越えて前記管状外側部材の外側となるようにして前記ルーメン内に位置する第2のワイヤと、
を備え、
伸張形態において、前記第1のワイヤの前記端部は前記第2のワイヤの前記端部ループを越えて延び、前記張力縫合糸は前記第2のワイヤの前記端部ループの下を延びるか又は前記第2のワイヤの前記端部ループを通って延び、それにより、前記第2のワイヤを引っ張ることにより前記張力縫合糸が係合して前記張力縫合糸が引っ張られ、前記第1のワイヤが、前記引っ張りの間、前記張力縫合糸を前記第2のワイヤに対して固定するようにされた、張力装置。
2. 前記ルーメンが内径を有し、前記端部ループが前記ルーメンの前記内径よりも大きい最大横寸法を有する、第1項に記載の張力装置。
3. 前記第1のワイヤが、真っ直ぐな端部を有し、前記第2のワイヤの前記端部ループを通っており、前記伸張形態において前記張力縫合糸が、前記第2のワイヤの前記端部ループと前記管状外側部材の前記端面との間で前記第1のワイヤの前記端部の周りを通る、第1項又は2項に記載の張力装置。
4. 前記第1のワイヤが前記第2のワイヤに対して引き込み可能とされ、引き込み形態において、前記第1のワイヤの前記端部は前記第2のワイヤの前記端部ループを通っては延びずに前記端部ループの下方にあり、それにより前記張力縫合糸が前記端部ループと前記管状外側部材の前記端面との間から抜けられるようにされた、第3項に記載の張力装置。
5. 前記第1のワイヤの前記端部が少なくとも1つの脚部につながったループ状端部を含み、前記伸張形態において、前記第2のワイヤの前記端部ループの少なくとも一部が、前記管状外側部材の前記端面と前記第1のワイヤの前記ループ状端部の少なくとも一部との間にあり、前記張力縫合糸が、前記第2のワイヤの前記端部ループを通って、前記第1のワイヤの前記ループ状端部の下方で前記第1のワイヤの前記少なくとも1つの脚部の周りを通る、第1項乃至4項の何れか一項に記載の張力装置。
6. 前記第1のワイヤが前記第2のワイヤに対して引き込み可能とされ、引き込み形態において、前記第1のワイヤの前記ループ状端部が前記第2のワイヤに対して引き込まれて、前記張力縫合糸が前記少なくとも1つの脚部又は前記第1のワイヤの前記ループ状端部の周りを通らないようにされる、第5項に記載の張力装置。
7. 前記ルーメンが前記第1のワイヤ及び第2のワイヤの前記ルーメン内の部分の直径の合計と同じか僅かに大きい直径を有し、それにより前記張力縫合糸が前記ルーメン内に引っ張られないようにされた、第1項乃至6項の何れか一項に記載の張力装置。
8. 張力縫合糸を張力のかかった状態に保持するための縫合糸係止具であって、
遠位面と近位面との間を延びて横方向で分離している第1及び第2の貫通孔、及び前記近位面に近接した位置で側面を通って前記第1の貫通孔に連通する側孔を有する、ハウジングと、
開口部を有し、前記第1の貫通孔内にあって、前記第1の貫通孔を通って長手方向に動かされるようにされたスネアと、
前記第1の貫通孔の近位部分を通りさらに前記側孔を通るアンカーワイヤと、
を備え、
前記縫合糸係止具が、開放形態と係止形態とを有し、前記開放形態では、前記スネアの前記開口部が少なくとも部分的に前記第1の貫通孔の外にあり、且つ前記張力縫合糸が、前記縫合糸の前記開口部と前記ハウジングの前記第2の貫通孔とを通り、前記スネアと前記ハウジングの前記第2の貫通孔とに対して自由に移動可能であり、前記係止形態では、前記スネアの前記開口部が前記第1の貫通孔内にあり、前記張力縫合糸が前記スネアの移動に抗して蛇行形態に保持される、縫合糸係止具。
9. 前記スネアが板状本体であり、前記開口部が前記張力縫合糸を通すことができる中央アイレットであり、前記スネアが、前記張力縫合糸の一部を取り付けるための上部アイレットと、トリガーワイヤを収容するための下部アイレットとを含む、第8項に記載の縫合糸係止具。
10. 前記トリガーワイヤが前記トリガーワイヤの端に固定されたボールを含み、前記ボールは前記スネアの前記下部アイレット内に嵌められており、前記トリガーワイヤ及びボールを引っ張ることにより前記スネアが前記ハウジングの前記第1の貫通孔を通して引っ張られるようにされた、第9項に記載の縫合糸係止具。
11. 前記スネアが少なくとも1つのタブを含み、前記少なくとも1つのタブは前記スネアの近位部分につながっていて前記近位部分から延びており、前記開放形態においては、前記少なくとも1つのタブは前記スネアの前記本体に向かって曲げられて前記ハウジングの前記第1の貫通孔の壁に対して付勢された状態にあり、前記係止形態においては、前記少なくとも1つのタブは、前記ハウジングの前記近位面を越え、前記スネアから外側に枢動しており、これにより前記少なくとも1つのタブが、前記スネアが前記第1の貫通孔の中へ引き込まれることを防止するようにされた、第8項乃至10項の何れか一項に記載の縫合糸係止具。
12. 前記スネアが2つの側部タブを含み、両方のタブが、前記開放形態において、前記スネアの平面内で前記スネアの前記本体に向かって曲げられる、第11項に記載の縫合糸係止具。
13. 前記少なくとも1つのタブが前記スネアの平面の外に延びており、前記開放形態においては前記少なくとも1つのタブは前記スネアの前記平面に向かって曲げられ、前記係止形態においては前記少なくとも1つのタブは前記スネアの前記平面から離れるように枢動する、第11項に記載の縫合糸係止具。
14 前記スネアが糸状体を含み、前記開口部が前記糸状体のループである、第8項乃至13項の何れか一項に記載の縫合糸係止具。
15. 前記ハウジングが前記第1の貫通孔に差し込み部を含み、前記係止形態において前記張力縫合糸が前記差し込み部に係合する、第8項乃至13項の何れか一項に記載の縫合糸係止具。
16. 輪状形成ベルトのための統合的送達システムであって、
送達シースと、
前記送達シース内に配置された、内部ルーメンを有する押し込みカテーテルと、
前記押し込みカテーテルの遠位端に接続された縫合糸係止具と、
張力縫合糸を有し、前記送達シース内で前記押し込みカテーテルのそばにある輪状形成ベルトと、
前記押し込みカテーテルのルーメン内の前記縫合糸係止具の近位に配置された、前記張力縫合糸に張力をかけるための張力装置と、
を備え、
前記張力縫合糸の第1の端部は前記縫合糸係止具の一部に固定され、前記張力縫合糸の中間部分は前記縫合糸係止具を通り、前記張力縫合糸の第2の端部は前記張力装置に接続されている、統合的送達システム。
17. 前記押し込みカテーテルの前記ルーメンが、第1の内径を有する近位部分と、前記第1の内径よりも大きい第2の内径を有する端部チャンバーとを含み、前記縫合糸係止具は、前記押し込みカテーテルの前記端部チャンバー内に嵌め込まれている、第16項に記載のシステム。
18. 前記縫合糸係止具が請求項8に記載の縫合糸係止具である、第8項又は9項に記載のシステム。
19. 前記縫合糸係止具が近位の側孔を含み、前記押し込みカテーテルが遠位端に側孔を含み、前記縫合糸係止具の前記側孔と前記押し込みカテーテルの前記側孔とが少なくとも部分的に重なっており、前記縫合糸係止具の前記側孔及び前記押し込みカテーテルの前記側孔を通って延びて前記縫合糸係止具と押し込みカテーテルとを一緒に保持するセーフティー/アンカーワイヤをさらに備える、第16項乃至18項の何れか一項に記載のシステム。
20. 前記縫合糸係止具に接続されて、前記張力縫合糸を前記縫合糸係止具内に係止するトリガーワイヤをさらに備え、前記トリガーワイヤ及び前記セーフティー/アンカーワイヤが前記押し込みカテーテルの前記ルーメンを通って延びている、第19項に記載のシステム。