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特許7509698デコリンを含む多機能タンパク質分子およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】デコリンを含む多機能タンパク質分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240625BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20240625BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240625BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240625BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240625BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/78 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/64
A61K39/395 H
A61K38/17
A61P35/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020573436
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019039862
(87)【国際公開番号】W WO2020009938
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】62/693,766
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510337517
【氏名又は名称】キャタレント ファーマ ソリューションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ブレック,グレゴリー ティー.
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/214706(WO,A1)
【文献】特表2014-518508(JP,A)
【文献】国際公開第2018/195386(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/214707(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1789424(CN,A)
【文献】LIANG, H. et al.,A collagen-binding EGFR antibody fragment targeting tumors with a collagen-rich extracellular matrix,Scientific Reports,2016年,6: 18205,P. 1-14
【文献】DENIS, D. et al.,More than matrix: The multifaceted role of decorin in cancer,European Journal of Cell Biology,2013年,Vol. 92,P. 1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベバシズマブ、ラニビズマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブおよびペムブロリズマブからなる群から選択される抗体分子に連結された、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を有する少なくとも1つのデコリンコアタンパク質分子を含み、
前記デコリンコアタンパク質分子が、野生型デコリンコアタンパク質分子と比較して、4番目に変異を含む、多機能タンパク質分子。
【請求項2】
前記変異がセリンからアラニンへの変異である、請求項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項3】
前記デコリンコアタンパク質分子が、前記デコリンコアタンパク質分子の4番目におけるグリコサミノグリカン分子による実質的な修飾を欠く、請求項1に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項4】
前記多機能タンパク質分子が、前記デコリンコアタンパク質分子の2つ以上のコピーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項5】
前記デコリンコアタンパク質分子の機能的部分が、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、結合組織増殖因子(CTGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)、上皮成長因子受容体(EGFR)、ミオスタチンおよびC1qからなる群から選択されるシグナル伝達分子と結合する1つまたは複数のデコリンドメインを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項6】
前記TGF-β結合ドメインが、全長内因性ヒトデコリンのアミノ酸Asp45-Lys359または全長内因性ヒトデコリンのアミノ酸Leu155-Val260を含む、請求項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項7】
前記多機能タンパク質分子が、デコリンコアタンパク質分子の前記機能的部分の2つ以上のコピーを含む、請求項またはに記載の多機能タンパク質分子。
【請求項8】
前記デコリンコアタンパク質分子が、前記抗体の重鎖に作動可能に連結されている、請求項のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項9】
前記多機能タンパク質分子が融合タンパク質である、請求項1~のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項10】
前記デコリンコアタンパク質分子またはその機能的部分が、前記抗体分子に化学的に連結されている、請求項1~のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子をコードする、核酸または核酸のセット。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸または核酸のセットを含む、1つまたは複数のベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の1つまたは複数のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項14】
血管新生または腫瘍増殖によって特徴づけられる障害の治療に使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の多機能タンパク質分子、核酸分子またはベクターを含む組成物。
【請求項15】
前記腫瘍が、肺癌、結腸直腸癌、肝癌、乳癌、腎癌、子宮頸癌、卵巣癌および膠芽腫からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は2018年7月3日に出願された米国仮出願第62/693,766号の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、デコリンを含む多機能タンパク質分子およびその使用に関する。特に、本発明は、デコリンおよび抗体などの標的ポリペプチドを含む多機能タンパク質分子、その製造方法、ならびにその使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
VEGF
血管新生は、既存の血管から新しい血管が形成される生理的過程である。これは、中胚葉細胞前駆体からの内皮細胞の新規形成である脈管形成とは異なる。発生中の胚の最初の血管は脈管形成を介して形成され、その後、発生期および疾患におけるほとんど(すべてではないが)の血管増殖は血管新生を原因とする。
【0004】
血管新生は、創傷治癒および肉芽組織の形成だけでなく、増殖および発達においても正常および重要な過程である。しかし、腫瘍が良性の状態から悪性の状態に移行する際の基本的な段階でもあることから、癌の治療に血管新生阻害物質を用いる。
【0005】
もともと血管透過性因子(VPF)として知られていた血管内皮増殖因子(VEGF)は、脈管形成および血管新生を刺激する細胞によって産生されるシグナルタンパク質である。血行が不十分なときに組織への酸素供給を回復させる系の一部である。気管支喘息、真性糖尿病ではVEGFの血清濃度が高値である。VEGFの正常な機能は、胚発生期に新たな血管を作ること、損傷後に新たな血管を作ること、運動後に筋肉を作ること、閉塞した血管をバイパスするための新たな血管(側副血行路)を作ることである。
【0006】
VEGFが過剰発現すると、疾患の一因となりうる。固形癌は十分な血液の供給がなければ限られた大きさを超えて増殖することはできないが、VEGFを発現できる癌は増殖および転移することができる。VEGFの過剰発現は、眼および体の他の部分の網膜に血管疾患を引き起こす可能性がある。ベバシズマブおよびラニビズマブなどの薬物はVEGFを阻害し、これらの疾患を制御または遅らせることができる。
【0007】
VEGFは増殖因子のサブファミリーであり、具体的には、シスチンノット(cystine-knot)増殖因子の血小板由来増殖因子ファミリーである。これらは、脈管形成(胚循環系の新規形成)と血管新生(既存の血管系からの血管の増殖)の両方に関与する重要なシグナル伝達タンパク質である。
【0008】
チェックポイント阻害物質
免疫系の重要な部分は、体内の正常細胞と、「異質」と見える細胞とを判別する能力である。これにより、免疫系は、正常細胞をそのままにしつつ異質細胞を攻撃することができる。これを行うため、免疫系は、免疫反応を開始させるために活性化(または不活性化)される必要のある特定の免疫細胞上の分子である「チェックポイント」を用いる。癌細胞は、このチェックポイントを用いて免疫系による攻撃を避ける方法を見つけることがある。しかし、チェックポイントを標的とする薬剤が、癌治療として大いに期待できる。
【0009】
チェックポイント阻害物質は、免疫系攻撃に対する癌の主な防御の1つを克服しようとするものである。免疫系T細胞は、疾患または感染の徴候がないかどうか、絶えず体内を巡回する。別の細胞に遭遇すると、その表面上の、細胞の身元を示す印として機能する特定のタンパク質を探査する。タンパク質が、細胞が正常で健康であることを示していれば、T細胞は細胞をそのままにする。タンパク質が、細胞が感染しているかまたは癌細胞であることを示唆していれば、T細胞はそれに対する攻撃を導くことになる。T細胞がひとたび攻撃を開始すると、免疫系は一連の追加分子を増やして、攻撃が体内の正常組織に損傷を与えるのを防ぐ。これらの分子は免疫チェックポイントとして知られている。
【0010】
チェックポイント阻害物質は、癌細胞上のこれら正常なタンパク質、またはそれらに反応するT細胞上のタンパク質を妨害する。その結果、T細胞の癌性を認識して免疫系の攻撃を導くことを妨げていた、目隠しが取り除かれる。癌に関して、イピリムマブ(Yervoy社の登録商標)、ペムブロリズマブ(Keytruda社の登録商標)、ニボルマブ(Opdivo社の登録商標)を含む3つのチェックポイント阻害物質が、米国食品医薬品局から迅速承認を取得している。これらをはじめとする免疫チェックポイント治療は、今日の癌治療において最も有望な最前線の一つとなっている。
【0011】
VEGFまたは免疫チェックポイントを標的とするさらなる治療薬が必要である。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明は、デコリンを含む多機能タンパク質分子およびその使用に関する。特に、本発明は、デコリンおよび抗体などの標的ポリペプチドを含む多機能タンパク質分子、その製造方法、ならびにその使用に関する。
【0013】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、抗原結合タンパク質に連結された少なくとも1つのデコリン分子またはその機能的部分を含む多機能タンパク質分子を提供する。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態では、前記抗原結合タンパク質は、VEGF-A抗原結合タンパク質およびチェックポイント阻害抗原結合タンパク質からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、前記チェックポイント阻害抗原結合タンパク質は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、PD-L2、CD27、CD28、CD40、CD47、CD115、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、SIGLEC-7、TIGITおよび4-1BBからなる群から選択されるチェックポイント阻害タンパク質と結合する。いくつかの特に好ましい実施形態では、前記チェックポイント阻害抗原結合タンパク質は、PD-1、PD-L1、CTLA-4およびPD-L2からなる群から選択されるチェックポイント阻害タンパク質と結合する。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態では、前記抗原結合タンパク質は抗体である。いくつかの好ましい実施形態では、前記抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの好ましい実施形態では、前記モノクローナル抗体は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブおよびペムブロリズマブからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、前記デコリンポリペプチドはデコリンコアタンパク質である。いくつかの好ましい実施形態では、前記デコリンコアタンパク質は、前記成熟デコリンコアタンパク質の4番目に変異を含む。いくつかの好ましい実施形態では、この変異は、セリンからアラニンへの変異である。いくつかの好ましい実施形態では、前記デコリンコアタンパク質は、前記成熟デコリンコアタンパク質の4番目におけるグリコサミノグリカン分子による実質的な修飾を欠く。いくつかの好ましい実施形態では、前記融合タンパク質は、前記デコリンポリペプチドの2つ以上のコピーを含む。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、デコリン分子の前記少なくとも機能的部分は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、結合組織増殖因子(CTGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)、上皮成長因子受容体(EGFR)、ミオスタチンおよびC1qからなる群から選択されるシグナル伝達分子と結合する1つまたは複数のデコリンドメインを含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記TGF-β結合ドメインは、完全長内因性ヒトデコリンのアミノ酸Asp45-Lys359または全長内因性ヒトデコリンのアミノ酸Leu155-Val260を含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記多機能タンパク質分子は、デコリン分子の少なくとも機能的部分の2つ以上のコピーを含む。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、前記デコリン分子は、前記抗体の重鎖に作動可能に連結されている。いくつかの好ましい実施形態では、前記抗原結合タンパク質は二重特異性を有する。いくつかの好ましい実施形態では、前記抗原結合タンパク質は多重特異性を有する。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、前記多機能タンパク質分子は融合タンパク質である。いくつかの好ましい実施形態では、前記デコリン分子は、前記抗原結合タンパク質に化学的に連結されている。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、上記の多機能タンパク質分子をコードする、核酸または核酸のセットを提供する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、上記の核酸または核酸のセットを含む、1つまたは複数のベクターを提供する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、上記の1つまたは複数のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、細胞内において標的タンパク質およびシグナル伝達分子を阻害する方法であって、前記標的タンパク質の少なくとも1つの活性およびシグナル伝達タンパク質の少なくとも1つの活性を前記細胞内において阻害する条件下において、前記細胞を上記の多機能タンパク質分子、核酸分子またはベクターに接触させる工程を含み、前記標的タンパク質は、VEGF-1、PD-1、PD-L1、CTLA-4、PD-L2、CD27、CD28、CD40、CD47、CD115、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、SIGLEC-7、TIGITおよび4-1BBからなる群から選択される、方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、前記細胞はインビトロまたはインビボに存在する。いくつかの好ましい実施形態では、前記細胞は被検体内に存在する。いくつかの好ましい実施形態では、前記接触の結果、血管新生、PD-1活性、PD-L1活性、CTLA-4活性、PD-L2活性、CD27活性、CD28活性、CD40活性、CD47活性、CD115活性、CD122活性、CD137活性、OX40活性、GITR活性、ICOS活性、A2AR活性、B7-H3活性、B7-H4活性、BTLA活性、IDO活性、KIR活性、LAG3活性、NOX2活性、TIM-3活性、VISTA活性、SIGLEC-7活性、TIGIT活性および4-1BB活性からなる群から選択される活性が阻害される。いくつかの好ましい実施形態では、前記癌は、肺癌、結腸直腸癌、肝癌、乳癌、腎癌、子宮頸癌、卵巣癌および膠芽腫からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、前記シグナル伝達タンパク質は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、結合組織増殖因子(CTGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)、各種上皮成長因子受容体(EGFR)、ミオスタチンおよびC1qからなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、前記シグナル伝達タンパク質はトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)である。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、血管新生または腫瘍増殖によって特徴づけられる障害を治療する方法であって、被検体において血管新生または腫瘍増殖が阻害される条件下において、上記の多機能タンパク質分子、核酸分子またはベクターを前記被検体に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、前記腫瘍は、肺癌、結腸直腸癌、肝癌、乳癌、腎癌、子宮頸癌、卵巣癌および膠芽腫からなる群から選択される。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の融合タンパク質の概略図である。
図2は、本発明の発現コンストラクトのマップである。
図3は、本発明の発現コンストラクトのマップである。
図4は、ベバシズマブ融合タンパク質を発現するプールされたCHO細胞株からの培地のSDS-PAGEゲルである。レーン10:分子量標準物(STD)。レーン11:非還元培地試料(NR)。レーン12:還元培地試料(R)。
図5は、精製アベルマブ-ガラコリン融合分子のSDS-PAGEゲルである。レーン1:分子量マーカー。レーン2:非還元精製アベルマブ-ガラコリン融合物。レーン3:還元精製アベルマブ-ガラコリン融合物。
図6は、精製アベルマブ-ガラコリン融合分子のSEC-HPLCクロマトグラムである。モノマーの割合は98%より大きかった。
図7は、4つの治療の単回静脈内投与後のC57BL/6マウスMC-38ヒト結腸直腸癌モデルにおける腫瘍増殖のグラフである。
【0024】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0025】
本明細書で使用する「デコリン」という用語は、配列番号1、2または6と少なくとも80%同一である成熟タンパク質配列を有するタンパク質分子またはその一部を指す。
【0026】
本明細書で使用する「デコリンコアタンパク質」という用語は、成熟デコリンの4番目のアミノ酸に変異を有し、実質的に、4番目のアミノ酸にグリコサミノグリカン(GAG)での修飾を欠く(すなわち非GAG化)デコリンタンパク質分子を指す。
【0027】
本明細書で使用する「多機能タンパク質分子」という用語は、少なくとも2つの異なったソースに由来する2つ以上のポリペプチド部分(polypeptide sub-portion)を含むタンパク質分子を指す。多機能タンパク質分子が融合遺伝子によってコードされる組換え融合タンパク質であってもよく、またはポリペプチドの別のポリペプチドへの(例えば、共有結合修飾による)化学的付加によって作製されてもよい。例えば、本発明の融合タンパク質は、好ましくはリンカー配列を介して抗原結合タンパク質に連結された1つ以上のデコリン分子もしくはその機能的部分を含んでもよく、または、例えば修飾アミノ酸を介して、1つ以上のデコリン分子もしくはその機能的部分が抗原結合タンパク質に共有結合された「化学的融合物」であってもよい。
【0028】
本明細書で使用する「宿主細胞」という用語は、インビトロまたはインビボでの存在を問わず、任意の真核細胞(例えば、哺乳類細胞、トリ細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)を指す。
【0029】
本明細書で使用する「細胞培養」という用語は、インビトロでの全ての細胞培養を指す。(例えば、不死の表現型を有する)連続細胞株、初代細胞培養、有限な細胞株(例えば、非形質転換細胞)、ならびにインビトロで維持され、卵母細胞および胚を含む任意の他の細胞集団がこの用語に含まれる。
【0030】
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝要素を指し、ベクターは、適切な調節エレメントと関係づけられた時に複製可能であり、細胞間で遺伝子配列を転送することができる。したがって、この用語には、クローニング用ビヒクルおよび発現用ビヒクル、ならびにウイルスベクターが含まれる。
【0031】
本明細書で使用する「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対合則によって関係しているポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)への言及で使用される。例えば、配列「5'-A-G-T-3'」は、配列「3’-T-C-A-5’」と相補的である。相補性は、「部分的」であってよく、その際、核酸の塩基の一部のみが、塩基対合則にしたがってマッチしている。あるいは、核酸間で「完全(complete)」すなわち「完全(total)」相補性があってよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に著しく影響を与える。これは、増幅反応、および核酸間の結合に依存する検出法において特に重要である。
【0032】
核酸に関して使用される「相同性」および「%同一性」という用語は、相補性の程度を指す。部分的相同性(すなわち、部分的同一性)または完全相同性(すなわち、完全同一性)があってよい。部分的相補配列は、完全相補配列が標的核酸配列にハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害する配列であり、「実質的に相同」という機能的用語を使用するために言及される。完全相補配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ(サザンブロットまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を用いて調べることができる。実質的に相同な配列またはプローブ(すなわち、目的の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド)は、競合し、低ストリンジェンシー条件下で完全相同配列の標的配列への結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)を阻害する。これは、低ストリンジェンシー条件が非特異的結合を許すと言っているわけではなく、低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いへの結合が特異的(すなわち、選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的結合が存在しないことは、少しでも部分的な相補性の度合い(例えば、約30%未満の同一性)を欠く第2の標的の使用によって試験することができ、非特異的結合の非存在下で、プローブは、第2の非相補的標的にハイブリダイズしない。
【0033】
本明細書で使用する「作動可能な組み合わせ」、「作動可能な順序」および「作動可能に連結される」という用語は、特定の遺伝子の転写および/または所望のタンパク質分子の合成を指示することができる核酸分子が生成されるような方法での核酸配列の結合を指す。この用語は、機能タンパク質が生成されるような方法でのアミノ酸配列の結合も指す。
【0034】
本明細書で使用する「シグナル配列」という用語は、組み換えDNA配列に作動可能に連結される場合、組換えポリペプチドの分泌を引き起こすことができるシグナルペプチドをコードする任意のDNA配列を指す。一般に、シグナルペプチドは、一連の約15~30個の疎水性アミノ酸残基を含む(例えば、Zwizinski et al., J. Biol. Chem. 255(16):7973-77[1980]、Gray et al., Gene 39(2):247-54[1985]、およびMartial et al., Science 205:602-607[1979]参照)。かかる分泌シグナル配列は、好ましくは、組織特異的発現を目標とした細胞型から分泌されるポリペプチド(例えば、乳腺分泌細胞での発現および乳腺分泌細胞からの分泌のための分泌乳タンパク質)をコードする遺伝子に由来する。しかし、分泌DNA配列は、かかる配列に限定されるものではない。多くの細胞型および生物から分泌されるタンパク質の分泌DNA配列(例えば、t-PA、血清アルブミン、ラクトフェリン、および成長ホルモンの分泌シグナル、ならびに酵母、糸状菌、および細菌に由来するものなどの、分泌ポリペプチドをコードする微生物遺伝子の分泌シグナル)も用いてもよい。
【0035】
本明細書で使用する「精製された」という用語は、通常の環境から取り除かれるか、単離されるか、または分離される核酸配列またはアミノ酸配列のいずれか一方の分子を指す。したがって、「単離された核酸配列」は、精製された核酸配列である。「実質的に精製された」分子は、それらが通常なら関連づけられている他の成分を、少なくとも60%含まない、好ましくは、少なくとも75%含まない、より好ましくは少なくとも90%含まない。
【0036】
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらと同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはアミノ酸配列の変更を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸の変更の数は、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0037】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合相手(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する「結合親和性」とは、特に明記しない限り、結合対(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有結合親和性をいう。分子Xの相手Yに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書中に記載されるものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例示的実施形態を以下に記載する。
【0038】
「親和性成熟」抗体は、変化を有さない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の変化を有する抗体を指し、そのような変化は、抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらす。
【0039】
「抗体」という用語は、本明細書中で最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0040】
「抗体フラグメント」とは、インタクト抗体の一部を含み、インタクト抗体が結合する抗原に結合する、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ(diabody);直鎖状の抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
参照抗体としての「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおける抗体の抗原への参照抗体の結合を50%以上妨害し、逆に参照抗体は競合アッセイにおける抗体の抗原への抗体の結合を50%以上妨害する、抗体を指す。例示的な競合アッセイが本明細書に記載される。
【0042】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定のソースまたは種に由来し、一方、重鎖および/またはL鎖の残部が別の供給源または種に由来する抗体を指す。
【0043】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域の種類をいう。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAにさらに分けることができる。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0044】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域に起因する生物学的活性をいい、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC);食作用;細胞の表面にある受容体のダウンレギュレーション(例えば、B細胞受容体);およびB細胞活性化が挙げられる。
【0045】
薬剤、例えば医薬製剤の「有効量」とは、必要な投与量および期間で所望の治療的または予防的結果を達成するのに効果的な量を指す。
【0046】
「エピトープ」という用語は、抗原分子上における、抗体が結合する特定の部位を指す。
【0047】
本明細書中の「Fc領域」という語は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。当該用語は、天然の配列のFc領域および変異体のFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226またはPro230から当該重鎖のカルボキシル末端まで延在する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。本明細書において特に明記しない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載の、EUインデックスとも呼ばれる、EUのナンバリング方式にしたがう。
【0048】
「フレームワーク」すなわち「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3およびFR4からなる。したがって、HVR配列およびFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0049】
本明細書において、「完全長抗体」、「インタクト抗体」、および「完全な抗体」という用語は互換的に使用され、天然の抗体の構造と実質的に類似の構造を有するか、または本明細書中で定義されるようなFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0050】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を(細胞の子孫も含めて)指す。宿主細胞は、継代数に関係なく、一次形質転換細胞およびそれに由来する子孫を含む「形質転換体」および「形質転換細胞」を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量が完全に同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書に含まれる。
【0051】
「ヒト抗体」は、ヒトまたはヒト細胞によって産生されるか、またはヒト抗体レパートリーまたは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒトソースに由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義からは、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が特に除外される。
【0052】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般に、配列のサブグループはKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD(1991), vols.1-3におけるようなサブグループである。一実施形態において、VLについて、サブグループは前出のKabat et al.におけるようなサブグループカッパIである。一実施形態において、VHについて、サブグループは前出のKabat et al.におけるようなサブグループIIIである。
【0053】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のそれに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のそれに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化した形態」とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0054】
本明細書で使用する「超可変領域」すなわち「HVR」とは、配列が超可変であり、および/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、天然の4鎖抗体は、VH(H1、H2、H3)における3つ、およびVL(L1、L2、L3)における3つである、6つのHVRを含む。HVRは一般に、超可変ループおよび/または「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者はもっとも高い配列可変性であり、および/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)、および96-101(H3)で生じる。(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987).)例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24-34、L2の50-56、L3の89-97、H1の31-35B、H2の50-65およびH3の95-102で発生する。(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991) .)VHにおけるCDR1を除き、CDR1は一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」すなわち「SDR」を含む。SDRは、短縮CDRまたはa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-LC3、a-CDR-H1、a-CDR-H2およびa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31-34、L2の50-55、L3の89-96、H1の31-35B、H2の50-58およびH3の95-102において生じる(Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)参照)。特に明記しない限り、可変ドメイン中のHVR残基および他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、前出のKabat et al.に従ってナンバリングされる。
【0055】
「個体」または「被検体」は哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、サル))、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、個体または被検体はヒトである。
【0056】
「単離された抗体」とは、その自然界の構成要素から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定される95%または99%を超える純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87(2007)を参照のこと。
【0057】
「単離された核酸」とは、その自然界の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常核酸分子を含有する細胞中に含有される核酸分子を含む。しかし、核酸分子は染色体外に位置するか、またはその天然の染色体位置とは異なった染色体位置に存在する。
【0058】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。実質的に均一な抗体の集団とは、集団を含む個々の抗体(但し、例えば、天然に存在する変異を含むか、もしくはモノクローナル抗体調製物の産生の間に生じる、一般的に少量で存在する、変異抗体である可能性のある抗体を除く)が同一であり、および/または同じエピトープに結合する集団である。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられる。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるものとしての抗体の特徴を示しており、抗体が特定の方法によって産生されることを要求するものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含む遺伝子導入動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技法によって作製されることができ、このような方法およびモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法が、本明細書中に記載される。
【0059】
「天然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、約150,000ダルトンのヘテロテトラマーの糖タンパク質であり、2つの同一の軽鎖およびジスルフィド結合した2つの同一の重鎖から構成される。N末端からC末端まで、それぞれの重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、それぞれの軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、その後に定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0060】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性の割合(%)」とは、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合であって、両配列のアライメントを行い、必要に応じて配列同一性の最大割合を達成すべくギャップを導入した後における、配列同一性の一部として保存的置換を一切考慮しない、割合として定義される。アミノ酸配列同一性の割合を決定する目的でのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の範囲内の様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書の目的のために、アミノ酸配列同一性の割合の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.によって著作され、ソースコードは米国ワシントンDC、20559にユーザ文書とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、カリフォルニア州サウスサンフランシスコのGenentech,Inc.から公的に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティング・システムで使用するためにコンパイルする必要がある。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0061】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、特定のアミノ酸配列Bに対する特定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性の割合(これは特定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性の割合を有するかまたは含む、特定のアミノ酸配列Aとも表現できる)は、以下のように計算される:
X/Y比×100
(ここで、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2が当該プログラムのAとBとのアラインメントにおいて完全一致しているとスコア付けしたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性の割合はAに対するBのアミノ酸配列同一性の割合に等しくないことは言うまでもない。特に明記しない限り、本明細書で使用するすべてのアミノ酸配列同一性の割合の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載されるように得られる。
【0062】
「医薬製剤」という用語は、含有する有効成分の生物学的活性を効果的にし得る形態である製剤であって、さらに、製剤が投与される被検体に対する毒性が許容できない程高い追加的成分を含有しない製剤を指す。
【0063】
「薬学的に許容される担体」は、被検体に対して無毒である、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤を含むが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「治療(treatment)」(ならびに、治療する(treat)または治療している(treatintg)などのその文法的変化)とは、被治療個体の自然経過を変化させるための臨床的介入をいい、予防のために実施されるか、または臨床病理学の過程において実施されることができる。治療の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の軽減、転移の防止、疾患進行速度の低下、病状の改善または緩和、ならびに寛解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるため、または疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0065】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖(それぞれVHおよびVL)の可変ドメインは一般に類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al .Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co., page 91(2007)を参照のこと。)単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに充分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインをそれぞれ使用して単離され得る。(例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887(1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと。)
【0066】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用する場合、自身が連結される別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを包含する。あるベクターは、自身が作動可能に連結される核酸の発現を導くことができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0067】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、抗原結合タンパク質(例えば、免疫グロブリン分子、抗原分子の切断片、または一本鎖抗体)に作動可能に連結されたデコリン分子またはその機能的部分を含む多機能分子に関する。特に、本発明は、デコリンおよびVEGFまたは免疫チェックポイント標的ポリペプチド(好ましくはチェックポイント阻害物質)を含む融合ポリペプチド、その製造方法ならびにその使用に関する。本発明の実施形態は、目的の抗原結合タンパク質に融合されたデコリンポリペプチドを含む融合ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、およびそれらの使用を提供する。例示的な組成物および方法を本明細書に記載する。融合分子に利用されるデコリンは、野生型デコリン、デコリンコアタンパク質、またはこれらのタンパク質のいずれかの機能的部分(例えば、TGF-βに、または結合組織増殖因子(CTGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)、各種上皮成長因子受容体(EGFR)、ミオスタチンおよびC1qなどのその他シグナル伝達分子に結合する部分(複数可))であり得る。
【0068】
〔I.デコリン〕
好ましい実施形態では、本発明の多機能タンパク質分子は、1つ以上のデコリンポリペプチドまたはその機能的部分を含む。デコリンは、トランスフォーミング増殖因子βにより誘発されるプラスミノーゲン活性化物質阻害物質-1の発現を抑制することが示されている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wahab et al., Biochem J. 2002 Mar 15;362(Pt 3):643-649を参照のこと)。トランスフォーミング増殖因子β(TGF‐β)は、糖尿病性腎症などの硬化性腎臓疾患における細胞外基質(ECM)蓄積の重要なメディエータである。特定のメカニズムに限定されないが、デコリンおよびVEGF結合タンパク質の組み合わせは、VEGFの妨害と組み合わせてTGF-β活性を阻害することによって、VEGF結合タンパク質単独よりも有効性を改善することが意図される。
【0069】
天然のデコリンは、結合されたグリコサミノグリカンおよび90~140kDの平均分子量を有する糖タンパク質である。いくつかの好ましい実施形態では、デコリンは、デコリンコアタンパク質、すなわち、実質的非GAG化デコリンである。いくつかの実施形態では、デコリンコアタンパク質は、成熟デコリンコアタンパク質分子の4番目のアミノ酸(すなわち、N末端から4番目のアミノ酸)に変異を含む。いくつかの実施形態では、この変異は、セリンからアラニンへの変異である。いくつかの実施形態では、このデコリンコアタンパク質は、配列番号6(成熟デコリンコアタンパク質)と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であるが、ただし、このデコリンコアタンパク質は、成熟デコリンコアタンパク質分子の4番目のアミノ酸(すなわち、N末端から4番目のアミノ酸)に変異を含む。
【0070】
デコリンは、一般にプレプロタンパク質(pre-pro-protein)として発現される。本発明は、1つ以上のデコリン成熟ペプチド配列またはその機能的部分と作動可能に関連する抗原結合タンパク質を含む、多機能タンパク質分子を提供する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドのデコリンコアタンパク質部分は、配列番号6(成熟デコリンコアタンパク質)またはその機能的部分と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの実施形態では、デコリンコアタンパク質は、成熟デコリンコアタンパク質分子の4番目のアミノ酸(すなわち、N末端から4番目のアミノ酸)に変異を含む。
【0071】
本発明は、さらに、融合タンパク質をコードする核酸配列、およびこの核酸配列を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドのデコリンコアタンパク質部分は、配列番号5(成熟デコリンコアタンパク質)と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であるが、ただし、このデコリンコアタンパク質は、成熟デコリンコアタンパク質分子の4番目のアミノ酸(すなわち、N末端から4番目のアミノ酸)に変異を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、多機能タンパク質分子において利用されるデコリン分子は、当該デコリン分子の1つ以上の機能的部分を含んでよい。デコリン分子は、例えば(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)Jarvinen and Prince, BioMed Research Int'l, Vol.2015, Article ID 654765に記載されるような、多くの機能的部分またはドメインを有する。いくつかの好ましい実施形態では、デコリンの機能的部分が、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、結合組織増殖因子(CTGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-1R)、各種上皮成長因子受容体(EGFR)、ミオスタチンまたはC1qに結合するか、または他の方法で相互作用する。好ましいデコリンの機能的部分は、機能活性(例えば、上述のシグナル伝達分子の1つへの結合)を保持し、そして好ましくは、対応する天然のデコリン配列と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。好ましいデコリンの機能的部分は、完全長の天然のデコリン分子よりも短く、例えば、10~300個のアミノ酸の長さまたは長さ10~120個のアミノ酸の長さであり得る。例えば、デコリン分子の機能的部分は、配列番号64(完全長内因性ヒトデコリンのデコリンTGF-β結合ドメインAsp45-Lys359)、配列番号65(リンカーによって分離される、デコリンTGF-β結合ドメインAsp45-Lys359の2つのコピー)、配列番号66(完全長内因性ヒトデコリンのデコリンTGF-β結合ドメインLEU155-VAL260)、配列番号67(リンカーによって分離される、デコリンTGF-β結合ドメインLEU155-VAL260の2つのコピー)と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。
【0073】
例示的なデコリンポリペプチドおよびデコリンの精製方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2006038107号に記載されている。例示的なデコリン核酸配列およびデコリンアミノ酸配列は、以下、ならびに図1および2に提供される。
【0074】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】
【0075】
〔II.結合剤〕
本発明の好ましい実施形態は、目的の結合剤に作動可能に連結された1つ以上のデコリン分子またはその機能的部分(複数可)を含む多機能タンパク質分子を提供する。好ましい目的の結合剤としては、VEGF(血管内皮増殖因子)およびチェックポイント阻害タンパク質(例えば、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、PD-L1(プログラム細胞死リガンド1)、PD-L2(プログラム細胞死リガンド2)、CD27、CD28、CD40、CD47、CD115、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、SIGLEC-7、TIGITおよび4-1BB)などの分子に結合する一本鎖抗体などの、免疫グロブリンおよびそのフラグメントまたは誘導体を含む抗原結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
結合剤(例えば、抗原結合タンパク質)は一般に、標的と相互作用するか、または特異的に結合する。例えば、本明細書中に開示される結合剤は一般に、本明細書中で標的タンパク質と総称される、例えばVEGF、CTLA-4、PD-1またはPD-lの領域と特異的に相互作用する。標的タンパク質に「特異的に」結合するとは、標的タンパク質への結合の量が非標的タンパク質標的への結合(例えば、バックグランドで非特異的結合が存在し得る)の量よりも多いことを意味する。一般に、結合剤のタンパク質への特異的結合は例えば、タンパク質標的内のアミノ酸の特定の配列への結合によって達成され得る。これらの配列はエピトープと呼ばれ得る。エピトープを含む分子は、抗体のような結合剤を刺激するために使用されることができ、免疫原と呼ばれ得る。結合剤はまた、エピトープの一部として特異的な2次元構造および/または3次元構造を認識し得る。抗原結合タンパク質は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性を有し得る。
【0077】
結合剤とその標的との特異的相互作用または結合は、平衡反応の一種であると考えられる。一例において、特異的結合を定量することができる。定量は解離定数を使用してもよく、または、当技術分野において、Kdが、この場合においては結合した抗原またはエピトープから分離する抗体の傾向を記述する平衡定数の一種であることが知られている。したがって、Kdは、抗体がエピトープに対して有する親和性を表す。Kdが低いほど、結合剤の標的に対する親和性は高くなる。
【0078】
特定の実施形態では、結合剤はモノクローナル抗体である。抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、任意の適切なアイソタイプまたはアイソタイプサブクラスであってもよい。結合剤はまた、例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’一本鎖抗体、Fv、一本鎖、単一特異性抗体,二重特異性抗体、三重特異性抗体、多価抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、サメ抗体、ナノボディ(nanobody)(例えば、単一モノマー可変ドメインを含む抗体)、ラクダ科抗体(例えば、ラクダ科由来)、ミクロボディ(microbody)、イントラボディ(intrabody)(例えば、細胞内抗体)もしくは脱フコシル化抗体および/またはその誘導体などの抗体の誘導体であってもよい。結合剤および/または抗体の模倣物もまた、本発明の範疇にあると考えられる。結合剤はまた、それに結合した検出可能な標識および/またはエフェクター部分を含み得る。
【0079】
結合剤が免疫グロブリンまたはその誘導体などの抗原結合タンパク質である場合、その可変および/または相補性決定領域(「CDR」)に対応するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を参照して同定され得る。例えば、本明細書に記載のモノクローナル抗体であるか、これに由来するか、またはこれに関連する例示的な結合剤は、それぞれ1つ以上の定常および/または可変領域を含む重鎖および/または軽鎖を含むことができる。可変領域は、典型的には抗体の結合特異性を大部分決定する1つ以上のCDRを含む。これらのモノクローナル抗体は、可変領域をコードするヌクレオチド配列の分析によって同定され得る。モノクローナル抗体はまた、可変領域のアミノ酸配列(例えば、ヌクレオチド配列によってコードされる)の分析によって同定され得る。
【0080】
また、当業者が所望する任意の他のアミノ酸によって、本発明の多機能タンパク質分子のアミノ酸を置換することができる。例えば、当業者は、当技術分野で公知であるように特定のアミノ酸を他のものと置換することによって、保存的置換を行い得る。本明細書中に記載される抗原結合タンパク質のアミノ酸配列のいずれもまた、任意の順序および/または組み合わせで任意の他の可変領域および/またはCDRと組み合わせられて、ハイブリッドおよび/または融合結合剤を形成し得、そして/または標準技術を使用して他の重鎖および/または軽鎖可変領域に挿入され得る。これらは、任意の定常領域と組み合わせて使用され得る。
【0081】
CDR(相補性決定領域)は、抗体の特異的標的への結合に少なくとも部分的に関与する抗体由来のアミノ酸配列である。CDRはいくつかの技術および/またはスキームのいずれを用いて同定してもよいことが当業者によって理解される。本明細書中に示される結合剤のCDRは、これらの技術のいずれを用いて同定してもよい。例えば、当業者は、Kabatナンバリングスキーム、Chothiaナンバリングスキーム、Enhanced Chothiaナンバリングスキーム、および/または利用可能なCDR定義スキーム(例えば、AbM、contact定義、およびIまたはMacCullum, et al., J Mol. Biol,. 262(5):732-745, 1996に記載のもの)のいずれを用いてCDRを同定してもよい。種々のスキームのサマリーは、部分的に、例えば以下に基づいている:Kabat et al., "Sequences of Proteins of lmmunological Interest," 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, NIH publication No.91-3242(1991)、および、Al-Lazikani et al.,"Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins," J. Mol. Biol. 273:927-948, 1997。
【0082】
CDRを同定するためのこれらのシステムは当業者によって理解されるように、単に例示的であり、他のものが適切であり得る。このようにして同定されたCDRを用いて、適切な結合剤を同定することができる。例えば、本明細書に記載されるモノクローナル抗体の1つ以上の等価物である。そのようなCDRはまた、任意の順序および/または組み合わせで互いに組み合わせられて、ハイブリッドおよび/または融合結合剤を形成し得、そして/または標準技術を使用して他の重鎖および/または軽鎖可変領域に挿入され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質由来のCDR配列は、可変領域アミノ酸配列が由来するものと同じまたは異なった種(例えば、ヒト、ヤギ、ラット、ヒツジ、ニワトリ)の任意の抗体分子の定常領域に連結される。
【0084】
アスパラギン残基のアスパラギン酸またはイソアスパラギン酸への脱アミド化は、タンパク質への一般的な翻訳後修飾である。脱アミド化は、アスパラギンがアスパラギン-グリシンジペプチド(Asp-GlyまたはN-G;「NG」配列)の一部である場合、より高い頻度で起こり得る。脱アミド化は、タンパク質に有害な影響を及ぼし得る。一例では、脱アミド化がタンパク質の三次元構造の変化を引き起こす可能性がある。別の例では、抗体について、抗原への結合に影響を及ぼす領域(例えば、可変領域および/またはCDR)における脱アミド化は、潜在的に抗原への抗体結合の低下または喪失を引き起こし得る。
【0085】
したがって、いくつかの実施形態では、翻訳後の脱アミド化に対する感受性の高い可能性のあるアミノ酸残基を、より感受性が低いかまたは感受性のないアミノ酸残基と置換する。一例では、アスパラギンおよび/またはグリシンが、例えば、NG配列を排除する任意のアミノ酸などのNG配列を修飾するために置換される。
【0086】
抗体の定常領域は、例えば、ヒト(例えば、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgA1およびIgA2)、IgDおよびIgE)、イヌ科の動物(例えば、IgG(IgGA、IgGB、IgGC、IgGD)IgA、IgD、IgEおよびIgM)、ニワトリ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY)、ヤギ(例えば、IgG)、マウス(例えば、IgA、IgG、IgD、IgE、IgM)、ブタ(例えば、IgA、IgG、IgD、IgE、IgM)、ラット(例えば、IgA、IgG、IgD、IgE、IgM)、ネコ科の動物(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)および/またはそのフラグメントおよび/または誘導体(例えば、キメラ抗体として)のうちの任意より由来する。
【0087】
一例では、結合剤は修飾されたグリコシル化パターンを有する抗体である。例えば、IgG分子は、典型的にはN結合型オリゴ糖を含む。抗体重鎖に連結された二分岐複合型オリゴ糖を含むIgG分子もある。ヒトIgGでは、オリゴ糖は一般に、重鎖の297番目(N297)(抗体重鎖の定常Fc領域)でアスパラギン残基に連結される。一般に、フコースは、N297に最も近いオリゴ糖中のGLcNAC残基に結合する。フコースが存在しないと、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力が増強される可能性がある。フコースを取り除くと、抗体がFc受容体と相互作用する能力が増強されると考えられる。このタイプの抗体は「脱フコシル化」と呼ばれる。脱フコシル化抗体は、当技術分野で公知であり得る本明細書に記載の技術を使用して産生され得る。いくつかの実施形態では、抗体をコードする核酸配列は修飾されたグリコシル化能力(例えば、欠失された、修飾された、または減量されたフコシルトランスフェラーゼ)を有する細胞株において発現されてもよく、典型的なフコース部分を付加しなくてもよい。様々なこれらの細胞株が知られている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体はVEGFに結合するが、脱フコシル化オリゴ糖を含む。結合剤(例えば、抗体)は、Fc受容体との相互作用の減少をもたらし得る他の修飾を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の抗体分子に対して、代替的または追加的なアミノ酸置換を行ってもよい。
【0088】
上記のように、いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体または免疫グロブリンであり得る。「抗体」という用語は、未精製または部分的に精製された形態(例えば、ハイブリドーマ上清、腹水、ポリクローナル抗血清)、または精製された形態の、完全なまたは断片化された抗体を意味し得る。「精製された」抗体は、初めに見出された時に伴っていたタンパク質の少なくとも約50%から分離されたもの(例えば、ハイブリドーマ上清または腹水調製物の一部として)であり得る。「精製された」抗体は、初めに見出された時に伴っていたタンパク質の少なくとも約60%、75%、90%または95%から分離されたものであり得る。適切な誘導体はまた、フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2または一本鎖抗体(例えば、Fvなど))であってもよい。抗体は、例えばネズミ科の動物(例えば、ネズミハイブリドーマ細胞によって産生される)を含む任意の適切な起源または形態であり得るか、またはキメラ抗体などとして発現され得る。
【0089】
各種抗体を調製および利用する方法は、当業者に公知であり、本発明の実施にあたって好適である(例えば、Harlow, et al. Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988; Harlow, et al., Using Antibodies: A Laboratory Manual, Portable Protocol No.1, 1998; Kohler and Milstein, Nature, 256:495, 1975; Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986; Riechmann et al., Nature, 332:323-329, 1988; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596, 1992; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Hoogenboom et al., J Mol. Biol., 227:381, 1991;Marks et al., J Mol. Biol., 222:581, 1991; Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77, 1985; Boerner et al., J Immunol., 147(1):86-95, 1991; Marks et al., BioiTechnology 10, 779-783, 1992; Lonberg et al., Nature 368:856-859, 1994; Morrison, Nature 368:812-13, 1994; Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51, 1996; Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826, 1996; Lonberg and Huszar,Intern. Rev. Immunol. 13:65-93, 1995;ならびに米国特許第4,816,567号、同第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号および同第5,661,016号を参照のこと)。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態では、抗原結合タンパク質は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、CD27、CD28、CD40、CD47、CD115、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、SIGLEC-7、TIGITおよび4-1BBからなる群から選択されるチェックポイント阻害物質と結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、CD27、CD28、CD40、CD47、CD115、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、SIGLEC-7、TIGITおよび4-1BBからなる群から選択されるチェックポイント阻害物質の活性を阻害する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、VEGF(例えば、ベバシズマブ(Avastin社)、ラニビズマブ(Lucentis社)またはペガプタニブ(Macugen社))、もしくはCTLA-4(例えば、イピリムマブ(Yervoy社))、PD-L1(例えば、アテゾリズマブ(Tecentriq社)、アベルマブ(Bavencio社)またはデュルバルマブ(Imfinzi社))またはPD-1(例えば、ニボルマブ(Opdivo社)またはペムブロリズマブ(Keytruda社))などの免疫系チェックポイント分子を標的とする、市販のヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。
【0091】
ベバシズマブ(Avastin社)は、血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)を阻害することによって血管新生を妨害する組換えヒト化モノクローナル抗体である。VEGF-Aは増殖因子タンパク質であり、さまざまな疾患、とくに癌における血管新生を刺激する。ベバシズマブは米国で初めて利用可能となった血管新生阻害物質であった。
【0092】
イピリムマブ(Yervoy社)は、免疫系をダウンレギュレートするタンパク質受容体であるCTLA-4を標的にすることにより免疫系を活性化するモノクローナル抗体で、チェックポイント阻害薬に分類される。Tリンパ球は癌細胞を認識して破壊する。しかし、抑制機構はこの破壊を妨げる。イピリムマブは、この抑制機構を停止させ、リンパ球が癌細胞を破壊し続けることを可能にする。癌細胞は抗原を産生し、免疫系はこの抗原を用いて癌細胞を同定できる。抗原は、リンパ節における細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に抗原を提示する樹状細胞によって認識される。CTLは抗原によって癌細胞を認識し、破壊する。しかし、抗原とともに、樹状細胞は阻害シグナルを提示する。このシグナルは、CTL上の受容体である細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)に結合し、細胞傷害性反応を停止させる。これにより癌細胞は生存できるようになる。イピリムマブがCTLA-4に結合し、阻害シグナルを遮断することで、CTLは癌細胞を破壊できるようになる。
【0093】
アテゾリズマブ(Tecentriq社)は、タンパク質PD-L1に対するIgG1アイソタイプである、完全にヒト化され、改変モノクローナル抗体である。アベルマブ(Bavencio社)は、PD-L1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体である。デュルバルマブ(Imfinzi社)は、PD-L1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体である。これらの分子を合わせてPD-L1阻害物質と呼ぶこともあり、免疫チェックポイント阻害物質に分類される。PD-L1はある種の腫瘍に高発現することがあり、これにより、癌を認識して攻撃する可能性のある免疫細胞(特に細胞傷害性T-細胞)の活性化が低下する。PD-L1チェックポイント阻害物質は、PD-L1と、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびCD80受容体(B7-1R)との相互作用を妨害する。PD-L1を阻害すると、免疫阻害作用が取り除かれ、それによって抗腫瘍反応が生まれる。
【0094】
ニボルマブ(Opdivo社)は、PD-1に結合するヒトモノクローナル抗体である。ペムブロリズマブ(Keytruda社)は、PD-1に結合するヒト化抗体である。これらの分子を合わせてPD-L1阻害物質と呼ぶこともあり、免疫チェックポイント阻害物質に分類される。これらの分子は、T-細胞活性化の負の調節因子を妨害することによって作用し、それによって免疫系が腫瘍を攻撃できるようにする。これは免疫チェックポイント妨害の一例である。PD-1は活性化T細胞の表面にあるタンパク質である。前述したように、PD-L1またはPD-L2がPD-1に結合すると、T細胞は不活性になる。多くの癌細胞がPD-L1を作り、PD-L1はT細胞が腫瘍を攻撃するのを阻害する。ニボルマブはPD-L1がPD-1に結合するのを妨害し、T細胞を働かせる。
【0095】
参照される抗体の可変領域のCDRまたは可変領域は、必要に応じて(例えばクローニングによって)単離され、他のフレームワークまたは抗原結合タンパク質誘導体(例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’一本鎖抗体、Fv一本鎖、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多価抗体、ヒト化抗体、ナノボディ、ラクダ科抗体、ミクロボディまたはイントラボディ)に移植されることが、当業者には理解されよう。このように、本発明は、参照抗体由来であって、参照抗体の可変領域のCDRを参照することにより同定される抗原結合タンパク質を包含する。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブからの重鎖および軽鎖可変領域を含む。他の好ましい実施形態では、抗原結合タンパク質は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブからの重鎖および軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ全てを含む。
【0096】
〔III.多機能ポリペプチド〕
本発明の実施形態は、結合剤に作動可能に連結されたデコリンポリペプチドを含む融合ポリペプチドをコードする多機能ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを提供する。これらの結合剤、ポリペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクターおよび/または宿主細胞を含む組成物もまた、いくつかの実施形態において提供される。特定の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態では、前記多機能タンパク質分子中の結合剤は上記のような抗体である。VEGFを標的とする本発明のデコリン-抗体融合物の図を図1に示す。当業者は、本明細書に記載される他の抗原結合タンパク質が、図1に記載されるVEGF抗体の代わりに用いられ得ることを認識するであろう。図1を参照すると、融合タンパク質はVEGF(例えば、ベバシズマブ)に結合する抗体の重鎖および軽鎖を含む。デコリン分子は、ペプチドリンカーを介して各重鎖のC末端に作動可能に連結される。本発明は、いかなる特定のペプチドリンカーの使用、または抗原結合タンパク質のいかなる特定のアミノ酸へのデコリン分子の連結にも限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、デコリン分子は、抗体重鎖の1つまたは2つのいずれかのC末端を介して、抗体軽鎖の1つまたは2つのいずれかのC末端を介して、抗体重鎖の1つまたは2つのいずれかのN末端を介して、抗体軽鎖の1つまたは2つのいずれかのN末端を介して、またはデコリン分子などのポリペプチドの結合を可能にするように化学修飾された抗体重鎖の1つまたは2つのいずれかの定常領域におけるアミノ酸を介して、連結される。したがって、本発明の融合タンパク質は、1つまたは好ましくは2つのデコリン分子またはそれらの機能的部分を含んでもよく、2つを超えるデコリン分子またはそれらの機能的部分を含んでもよい。
【0098】
本発明の多機能タンパク質分子をコードする多数の核酸構築物を、実施例において提供する。以下の表に、配列の概要を示す。
【0099】
【表2-1】

【表2-2】
【0100】
このように、いくつかの好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質は、デコリン分子に、好ましくはデコリンコアタンパク質に作動可能に連結されたベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブからの重鎖および軽鎖可変領域を含む。他の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、デコリン分子に、好ましくはデコリンコアタンパク質に作動可能に連結されたベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブからの重鎖および軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ全てを含む。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態では、1つのデコリン分子(または、1つを超えるコピーが使用される場合は複数の分子)は、配列番号7と少なくとも80%、90%、95%、99%または100%同一であるデコリンコアタンパク質である。他の好ましい実施形態では、1つのデコリン分子(または、1つを超えるコピーが使用される場合は複数の分子)は、配列番号64または66と少なくとも80%、90%、95%、99%または100%同一であるデコリンTGF-β結合ドメインである。いくつかの好ましい実施形態では、デコリンコアタンパク質はTGF-βの活性を阻害する。いくつかの好ましい実施形態では、デコリンコアタンパク質は、デコリンコアタンパク質を非GAG化する1つ以上の変異を含む。いくつかの好ましい実施形態では、デコリンコアタンパク質は、成熟デコリンコアタンパク質分子の4番目のアミノ酸(すなわち、N末端から4番目のアミノ酸)に変異を含む。いくつかの好ましい実施形態では、デコリンコアタンパク質分子は、リンカー配列を介して標的抗体の重鎖または軽鎖に連結されている。本発明は、特定のリンカー配列に限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、リンカー配列は配列番号6である。いくつかの特に好ましい実施形態では、リンカー配列は、抗体の重鎖のN末端に結合され、重鎖とデコリンコアタンパク質との間に位置する。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、重鎖融合物は、以下の式により表すことができる。
重鎖タンパク質-リンカー-デコリンコアタンパク質
【0102】
他の好ましい実施形態では、融合物は、以下の式により表すことができる。
C末端重鎖タンパク質-リンカー-デコリン
C末端軽鎖タンパク質-リンカー-デコリン
デコリン-リンカー-N末端重鎖タンパク質
デコリン-リンカー-N末端軽鎖タンパク質
定常領域-リンカー-デコリン
ここで、デコリンは、上記したような野生型デコリン、デコリンコアタンパク質またはその機能的部分であってもよく、結合は、当技術分野で公知であるように融合タンパク質におけるようなアミド結合を介するものであるか、または抗原結合タンパク質のN末端、C末端または定常領域における化学修飾されたアミノ酸である。例えば、アルデヒド標識免疫グロブリン(Ig)ポリペプチドを、ホルミルグリシン生成酵素により変換して2-ホルミルグリシン(FGly)修飾Igポリペプチドを産生することができる。その後、FGly修飾Igポリペプチドを目的の部分に共有結合的および部位特異的に結合させてIg複合体を得ることができる。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,183,998号を参照のこと。)
【0103】
いくつかの好ましい実施形態では、分泌シグナル配列が重鎖タンパク質配列の前にあることにより、タンパク質産生中に宿主細胞からの分泌が可能である。同様に、いくつかの好ましい実施形態では、分泌シグナル配列が軽鎖タンパク質配列の前にあることにより、タンパク質産生中に宿主細胞からの分泌が可能である。
【0104】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がベバシズマブである場合、重鎖配列は、配列番号8と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号9と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はVEGF-Aに結合するかまたはこれを阻害する。
【0105】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がイピリムマブである場合、重鎖配列は、配列番号14と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号15と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はCTLA-4に結合するかまたはこれを阻害する。
【0106】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がアテゾリズマブである場合、重鎖配列は、配列番号20と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号21と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はPD-L1に結合するかまたはこれを阻害する。
【0107】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がアベルマブである場合、重鎖配列は、配列番号26と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号27と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はPD-L1に結合するかまたはこれを阻害する。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がデュルバルマブである場合、重鎖配列は、配列番号32と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号33と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はPD-L1に結合するかまたはこれを阻害する。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がニボルマブである場合、重鎖配列は、配列番号38と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号39と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はPD-1に結合するかまたはこれを阻害する。
【0110】
いくつかの好ましい実施形態では、標的分子がペムブロリズマブである場合、重鎖配列は、配列番号44と少なくとも90%、95%、99%または100%同一であり、軽鎖配列は、配列番号45と少なくとも90%、95%、99%または100%同一である。いくつかの好ましい実施形態では、標的分子はPD-1に結合するかまたはこれを阻害する。
【0111】
特定の実施形態では、融合タンパク質の調製物が提供される。このような調製物は例えば、未精製または精製融合タンパク質を含み得る。典型的には、このような調製物は、リン酸緩衝生理食塩水またはトリス緩衝生理食塩水(それぞれ、PBSまたはTBS)のような緩衝液を含む。調製物はまた、例えば、安定剤のような賦形剤を含有するように処方され得る。
【0112】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸発現コンストラクトをさらに提供する。したがって、いくつかの実施形態では、発現コンストラクトは、上記の融合タンパク質配列をコードし、そして選択された発現系における発現に必要とされるさらなる核酸配列と作動可能に関連する。
【0113】
一例では、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列がベクター系へと構築され、次いで宿主細胞で発現される。一例では、宿主細胞は培養細胞である。一例では、ベクター系は、融合タンパク質が発現される条件下で哺乳動物培養細胞において使用される。
【0114】
本発明の融合ポリヌクレオチドは、組換え技術によって融合ポリペプチドを生成させるために使用することができる。したがって、例えば、このポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現するための様々な発現ベクターのいずれか1つに含まれていてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ベクターには、レトロウイルスベクター、染色体配列、非染色体配列および合成DNA配列(例えば、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA;バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組合せに由来するベクター;ならびに、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病などのウイルスDNA)が含まれるが、これらに限定されない。どのベクターも、宿主内で複製可能であり、生存可能である限り、用いることができると企図される。いくつかの好ましい実施形態では、これらのベクターは、米国特許第6,852,510号および同第7,332,333号ならびに米国特許公開第200402335173号および同第20030224415号に記載されているようなレトロウイルスベクターであり、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの特に好ましい実施形態では、これらのベクターは、偽型のレトロウイルスベクターである。
【0115】
特に、本発明のいくつかの実施形態は、上記で大まかに説明した配列の1つ以上を含む組換え構築物を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、これらの構築物は、本発明の配列が順方向または逆方向に挿入されたプラスミドベクターまたはウイルスベクターなどのベクターを含む。さらに他の実施形態では、異種構造配列は、適切な段階で翻訳の開始配列および終結配列と共に組み立てられる。本発明の好ましい実施形態では、適切なDNA配列は、様々な手順のいずれかを用いてベクターに挿入される。一般に、このDNA配列は、当技術分野で公知の手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(複数可)に挿入される。
【0116】
多数の適切なベクターが、当業者に公知であり、市販されている。かかるベクターには、以下のベクターが含まれるが、これらに限定されない:1)細菌ベクター-pQE70、pQE60、pQE-9(キアゲン社)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pBluescript SK、pBSKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(ストラタジーン社)、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(ファルマシア社)、2)真核ベクター-pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXT1、pSG(ストラタジーン社)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(ファルマシア社)、および3)バキュロウイルスベクター-pPbacおよびpMbac(ストラタジーン社)。宿主内で複製可能であり、生存可能である限り、任意の他のプラスミドまたはベクターを用いてもよい。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサー、任意の必須のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位、転写終結配列、ならびに5’隣接非転写配列を含む。他の実施形態では、SV40スプライス部位、およびポリアデニル化部位由来のDNA配列を用いて、必要な非転写遺伝要素を提供してもよい。
【0117】
本発明の特定の実施形態では、発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を指示するための適切な発現制御配列(複数可)(プロモーター)に作動可能に連結されている。本発明において有用なプロモーターには、LTRプロモーターまたはSV40プロモーター、大腸菌のlacプロモーターまたはtrpプロモーター、ラムダファージのPプロモーターおよびPプロモーター、T3プロモーターおよびT7プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)極初期プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼプロモーター、およびマウスメタロチオネイン-Iプロモーターならびに原核細胞もしくは真核細胞またはウイルス内で遺伝子発現を制御することが知られている他のプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。本発明の他の実施形態では、組換え発現ベクターには、複製起点および宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー(例えば、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸還元酵素もしくはネオマイシン耐性、または大腸菌におけるテトラサイクリン耐性もしくはアンピシリン耐性)を含む。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態では、高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加する。エンハンサーは、通常約10~300塩基対であり、プロモーターに作用し、その転写を増加させるDNAのシス作用性エレメントである。本発明において有用なエンハンサーには、複製起点の100~270塩基対後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
他の実施形態では、発現ベクターは、翻訳開始のリボソーム結合部位および転写ターミネーターも含む。本発明のさらに他の実施形態では、このベクターは、発現を増幅するための適切な配列も含んでいてよい。
【0120】
さらなる実施形態では、本発明は、上記の構築物を含む宿主細胞を提供する。本発明のいくつかの実施形態では、この宿主細胞は、高等真核細胞(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞)である。本発明の他の実施形態では、この宿主細胞は、下等真核細胞(例えば、酵母細胞)である。本発明のさらに他の実施形態では、この宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)であり得る。宿主細胞の具体例としては、大腸菌、ネズミチフス菌、枯草菌、ならびにシュードモナス属、ストレプトミセス属、およびブドウ球菌の中の様々な種、ならびに出芽酵母、分裂酵母、ショウジョウバエS2細胞、スポドプテラSf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓線維芽細胞のCOS-7株(Gluzman,Cell 23:175[1981])、C127、3T3、293、293T、HeLaおよびBHKの細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
宿主細胞でこれらの構築物を従来の方法で使用し、組換え配列によってコードされる遺伝子産物を生成させることができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞へのこの構築物の導入は、レトロウイルス形質導入、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって達成することができる(例えば、Davis et al.[1986]Basic Methods in Molecular Biology参照)。あるいは、本発明のいくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、従来のペプチド合成機により合成によって生成させることができる。
【0122】
タンパク質は、適切なプロモーターの制御下で、哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞において発現させることができる。無細胞翻訳系も、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてかかるタンパク質を生成させるために使用することができる。原核生物宿主および真核生物宿主での使用に適切なクローニングベクターおよび発現ベクターについては、Sambrook,et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.によって記載されている。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態では、適切な宿主株の形質転換および培地中で適切な細胞密度になるまでの宿主株の増殖の後に、タンパク質が分泌され、細胞はさらなる期間培養される。本発明の他の実施形態では、細胞は、典型的には、遠心分離によって収集され、物理的または化学的手段によって破壊され、得られた粗抽出物はさらなる精製のために保持される。本発明のさらに他の実施形態では、タンパク質発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用を含む任意の便利な方法によって破壊することができる。
【0124】
さらなる実施形態は、融合タンパク質および任意で融合タンパク質を使用するために有用であり、必要であり、または充分である(例えば、治療、研究、およびスクリーニング用)他の成分を含む、キットを提供する。キットの融合タンパク質は、凍結された形態、凍結乾燥された形態、もしくはTBSまたはPBSなどの薬学的に許容される緩衝液中にある形態を含む、任意の適切な形態で提供されてよい。
【0125】
本明細書中に記載される融合タンパク質および/またはその誘導体はまた、インビトロまたはインビボでの使用のための組成物に組み込まれ得る。抗体、融合タンパク質またはそれらの誘導体は、例えば細胞傷害性薬物または毒素、もしくはそれらの活性フラグメント(例えば、とりわけ、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン)などの、機能的エフェクター部分に固定可能に結合されてもよい。
【0126】
機能的部分はまた、放射性化学物質を含み得る。一実施形態では、エフェクター部分は、結合剤に固定可能に結合され得る。一例では、検出可能な標識が化学結合によって結合剤に固定可能に結合される。一例では、化学結合は共有化学結合である。一例では、エフェクター部分は、結合剤に結合される。
【0127】
本明細書に記載の融合タンパク質は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の懸濁液などの注射用調製物として調製することができる。利用することができる適切なビヒクルおよび溶媒には、とりわけ、水、リンゲル溶液、および等張食塩液、TBSおよびPBSが含まれる。製剤は例えば、安定剤のような賦形剤を含有することができる。特定の用途において、抗体はインビトロでの使用に適している。他の用途において、抗体はインビボでの使用に適している。いずれの場合でも使用するのに適した調製物は、当技術分野で公知であり、特定の用途に応じて変化する。
【0128】
融合タンパク質は宿主への投与の前に、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わされ得る。薬学的に許容される担体は、生物学的にまたは他の点で望ましくないことのない物質であり、例えば、該物質は、望ましくない生物学的影響を引き起こすことなく、またはそれが含有される薬学的組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、被検体に投与することができる。担体は、当業者に周知であるように、当然、有効成分の分解を最小限に抑え、被検体中の有害な副作用を最小限に抑えるように選択される。適切な医薬担体およびその製剤は例えば、Remington s:The Science and Practice of Pharmacy,2 yt Edition,David BTroy,ed.,Lippicott Williams & Wilkins(2005)に記載されている。典型的には、製剤を等張にするために、適正量の薬学的に許容される塩が製剤に使用される。薬学的に許容される担体の例としては滅菌水、生理食塩水、リンゲル溶液のような緩衝溶液、およびデキストロースが挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、一般に約5~約8または約7~約7.5である。他の担体には、ポリペプチドまたはそのフラグメントを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性製剤が含まれる。マトリックスは成形品、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子の形態であってもよい。例えば投与される組成物の投与経路および濃度によっては、特定の担体がより好ましくあり得ることは、当業者に明らかである。担体は、ヒトまたは他の被検体へのポリペプチドおよび/またはそのフラグメントの投与に適したものである。
【0129】
薬学的組成物はまた、融合タンパク質に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤、アジュバント、免疫刺激剤を含み得る。薬学的組成物はまた、抗菌剤、抗炎症剤および麻酔剤のような1つ以上の有効成分を含み得る。
【0130】
〔IV.使用〕
本開示の実施形態は、研究、スクリーニング、および治療用途のための組成物および方法を提供する。例えば、本発明の実施形態は、本明細書中に記載される多機能タンパク質分子を使用して、様々な疾患を治療する方法を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、動物(例えば、ヒトおよび家畜動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物の患者)における、異常細胞、病変組織または病的状態または病状を治療するために使用される。これに関し、様々な疾患および病変が、本発明の方法および組成物を用いた治療および予防に影響を受けやすい。これらの疾患および状態の非限定的リストとしては、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳腫瘍、原発性脳腫瘍(carcinoma)、頭頸部癌、神経膠腫、膠芽腫、肝癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭部または頸部癌(head or neck carcinoma)、乳癌(breast carcinoma)、卵巣癌(ovarian carcinoma)、肺癌(lung carcinoma)、小細胞肺癌(small-cell lung carcinoma)、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌(cervical carcinoma)、精巣癌(testicular carcinoma)、膀胱癌(bladder carcinoma)、膵臓癌(pancreatic carcinoma)、胃癌(stomach carcinoma)、結腸癌(colon carcinoma)、前立腺癌(prostatic carcinoma)、泌尿生殖器癌(genitourinary carcinoma)、甲状腺癌(thyroid carcinoma)、食道癌(esophageal carcinoma)、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌(adrenal carcinoma)、腎細胞癌(renal cell carcinoma)、子宮内膜癌(endometrial carcinoma)、副腎皮質癌(adrenal cortex carcinoma)、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌(malignant carcinoid carcinoma)、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頸部過形成、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、ヘアリー細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織の肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、網膜芽細胞腫など、黄斑変性症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態は、有効量の本発明の融合ポリペプチドおよび少なくとも1つの追加的治療薬(化学療法抗腫瘍薬、アポトーシス調節剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤および抗炎症剤を含むがこれらに限定されない)を投与する方法および/または治療技術(例えば、外科的介入および/または放射線治療)を提供する。特定の実施形態では、追加的治療薬(複数可)は抗癌剤である。
【0133】
多くの適切な抗癌剤が、本発明の方法に使用されることが企図される。実際に、本発明は、アポトーシスを誘発する薬剤;ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA);ポリペプチド(例えば、酵素および抗体);生物学的模倣物;アルカロイド;アルキル化剤;抗腫瘍抗生物質;代謝拮抗物質;ホルモン;白金化合物、モノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えば、抗癌薬、毒素、デフェンシンに結合する抗体)、毒素;放射性核種;生物反応修飾物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-α)およびインターロイキン(例えば、IL-2));養子免疫療法薬剤;造血成長因子;腫瘍細胞分化を含む薬剤(例えば、オールトランス型レチノイン酸);遺伝子療法試薬(例えば、アンチセンス療法の試薬およびヌクレオチド);腫瘍ワクチン;血管新生阻害物質;プロテオソーム阻害物質:NF-КB調節因子;抗CDK化合物;HDAC阻害物質などの多数の抗癌剤の投与を企図するが、これに限定されない。本開示の化合物と同時投与するのに適した抗癌治療および化学療法化合物の多数の他の例が、当業者に知られている。
【0134】
特定の実施形態では、抗癌剤はアポトーシスを誘発または刺激する薬剤を含む。アポトーシスを誘発する薬剤としては、放射線(例えば、X線、ガンマ線、紫外線);腫瘍壊死因子(TNF)関連因子(例えば、TNFファミリー受容体タンパク質、TNFファミリーリガンド、TRAIL、TRAIL-R1またはTRAIL-R2に対する抗体);キナーゼ阻害物質(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害物質、血管増殖因子受容体(VGFR)キナーゼ阻害物質、線維芽細胞成長因子(FGFR)キナーゼ阻害物質、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)キナーゼ阻害物質、およびBcr-Ablキナーゼ阻害物質(GLEEVEC));アンチセンス分子;抗体(例えば、HERCEPTIN、RITUXAN、ZEVALINおよびAVASTIN);抗エストロゲン剤(例えば、ラロキシフェンおよびタモキシフェン);抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、ビカルタミド、フィナステライド、アミノグルテチミド、ケトコナゾールおよびコルチコステロイド);シクロオキシゲナーゼ2阻害物質(COX-2)(例えば、セレコキシブ、メロキシカム、NS-398、および非ステロイド抗炎症薬(NSAID));抗炎症薬(例えば、ブタゾリジン、DECADRON、DELTASONE、デキサメタゾン、デキサメタゾンインテンソール、DEXONE、HEXADROL、ヒドロキシクロロキン、METICORTEN、ORADEXON、ORASONE、オキシフェンブタゾン、PEDIAPRED、フェニルブタゾン、PLAQUENIL、プレドニゾロン、プレドニゾン、PRELONEおよびTANDEARIL);および癌化学療法薬(例えば、イリノテカン(CAMPTOSAR社)、CPT-11、フルダラビン(FLUDARA社)、ダカルバジン(DTIC社)、デキサメタゾン、ミトキサントロン、MYLOTARG、VP-16、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、ゲフィチニブ、ベバシズマブ、TAXOTEREまたはTAXOL);細胞内シグナル伝達分子、セラミドおよびサイトカイン;スタウロスポリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
さらに他の実施形態では、本発明の組成物および方法は、本発明の化合物、ならびにアルキル化剤、代謝拮抗物質および天然産物(例えば、ハーブおよび他の植物および/または動物由来の化合物)から選択される少なくとも1つの抗過剰増殖薬または抗腫瘍薬を提供する。
【0136】
本発明の組成物および方法における使用に適するアルキル化剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)窒素マスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン);およびクロランブシル);2)エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ);3)スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン);4)ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU);ロムスチン(CCNU);セムスチン(メチル-CCNU);およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン));および5)トリアジン(例えば、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミド-アゾールカルボキサミド)。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法における使用に適する代謝拮抗物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート(アメトプテリン));2)ピリミジンアナログ(例えば、フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)、およびシタラビン(シトシンアラビノシド));および3)プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2’-デオキシコホルマイシン))。
【0138】
さらなる実施形態では、本発明の組成物および方法における使用に適する化学療法薬としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン);2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド);3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC));4)酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ);5)生物反応修飾物質(例えば、インターフェロン-アルファ);6)白金配位錯体(例えば、シスプラチン(シス-DDP)およびカルボプラチン);7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン);8)置換された尿素(例えば、ヒドロキシ尿素);9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン;MIH));10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’-DDD)およびアミノグルテチミド);11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン);12)プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール);13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール);14)抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン);16)抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド):および17)ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(例えば、ロイプロリド)。
【0139】
癌治療の文脈において日常的に使用される任意の腫瘍溶解剤は、本発明の組成物および方法における使用を見出す。例えば、米国食品医薬品局は、米国での使用が承認された腫瘍溶解剤の処方を維持している。米国食品医薬品局の国際的な対応機関も同様の処方を維持している。以下の表は米国で使用するために承認された例示的な抗腫瘍薬のリストを提供し、当業者は、すべての米国で承認された化学療法剤に必要とされる「製品ラベル」が、例示的な薬剤について承認された適応症、投薬情報、毒性データなどを記載することを理解するであろう。
【0140】
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

【表3-5】

【表3-6】

【表3-7】

【表3-8】

【表3-9】

【表3-10】

【表3-11】

【表3-12】

【表3-13】
【0141】
抗癌剤には、抗癌活性を有することがわかっている化合物が含まれる。そのような化合物の例としては、3-AP、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート、17AAG、852A、ABI-007、ABR-217620、ABT-751、ADI-PEG20、AE-941、AG-013736、AGRO100、アラノシン、AMG706、抗体G250、抗新生物薬、AP23573、アパジコン、APC8015、アチプリモド、ATN-161、アトラセンタン、アザシチジン、BB-10901、BCX-1777、ベバシズマブ、BG00001、ビカルタミド、BMS247550、ボルテゾミブ、ブリオスタチン-1、ブセレリン、カルシトリオール、CCI-779、CDB-2914、セフィキシム、セツキシマブ、CG0070、シレンジタイド、クロファラビン、コンブレタスタチンA4リン酸塩、CP-675,206、CP-724,714、CpG7909、クルクミン、デシタビン、DENSPM、ドキセルカルシフェロール、E7070、E7389、エクテイナスシジン743、エファプロキシラル、エフロルニチン、EKB-569、エンザスタウリン、エルロチニブ、エクシスリンド、フェンレチニド、フラボピリドール、フルダラビン、フルタミド、ホテムスチン、FR901228、G17DT、ガリキシマブ、ゲフィチニブ、ゲニステイン、グルホスファミド、GTI-2040、ヒストレリン、HKI-272、ホモハリングトニン、HSPPC-96、hu14.18-インターロイキン-2融合タンパク質、HuMax-CD4、イロプロスト、イミキモド、インフリキシマブ、インターロイキン-12、IPI-504、イロフルベン、イキサベピロン、ラパチニブ、レナリドミド、レスタウルチニブ、ロイプロリド、LMB-9免疫毒素、ロナファルニブ、ルニリキシマブ(luniliximab)、マホスファミド、MB07133、MDX-010、MLN2704、モノクローナル抗体3F8、モノクローナル抗体J591、モテキサフィン、MS-275、MVA-MUC1-IL2、ニルタミド、ニトロカンプトテシン、ノラトレキシド二塩酸塩、ノルバデックス、NS-9、O6-ベンジルグアニン、オブリメルセンナトリウム、ONYX-015、オレゴボマブ、OSI-774、パニツムマブ、パラプラチン、PD-0325901、ペメトレキセド、PHY906、ピオグリタゾン、ピルフェニドン、ピキサントロン、PS-341、PSC833、PXD101、ピラゾロアクリジン、R115777、RAD001、ランピルナーゼ、レベッカマイシンアナログ、rhuアンギオスタチンタンパク質、rhuMab2C4、ロシグリタゾン、ルビテカン、S-1、S-8184、サトラプラチン、SB-、15992、SGN-0010、SGN-40、ソラフェニブ、SR31747A、ST1571、SU011248、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、スラミン、タラボスタット、タランパネル、タリキダル、テムシロリムス、TGFa-PE38免疫毒素、サリドマイド、サイマルファシン、チピファルニブ、チラパザミン、TLK286、トラベクテジン、グルクロン酸トリメトレキサート、TroVax、UCN-1、バルプロ酸、ビンフルニン、VNP40101M、ボロシキシマブ、ボリノスタット、VX-680、ZD1839、ZD6474、ジリュートン、およびゾスキダル三塩酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0142】
抗癌剤および他の治療薬のより詳細な説明については、当業者は、Physician's Desk ReferenceおよびGoodman and Gilmanの"Pharmaceutical Basis of Therapeutics" tenth edition, Eds. Hardman et al., 2002を含むがこれらに限定されない、任意の数の指示マニュアルを参照すること。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質物および1つ以上の治療薬または抗癌剤は、以下の条件のうちの1つ以上の下で動物に投与される:異なる周期で、異なる持続時間で、異なる濃度で、異なる投与経路によって、等。
【0144】
本発明の範囲内の融合タンパク質には、本明細書に記載されるすべての融合タンパク質が含まれるが、本発明の融合タンパク質はその意図された目的を達成するのに効果的な量で含有される。個々のニーズは異なるものの、各成分の有効量の最適範囲の決定は当技術分野の技術の範囲内である。典型的には、アポトーシスの誘発に応答する障害を治療される哺乳動物(例えばヒト)の体重に関して1日当たり0.0025~50mg/kgの用量の化合物、または同等量の薬学的に許容されるその塩を、当該哺乳動物に経口投与し得る。一実施形態において、約0.01~約25mg/kgが、このような障害を治療、改善、または防止するために経口投与される。筋肉内注射の場合、投与量は一般に経口用量の約1/2である。例えば、適切な筋肉内用量は、約0.0025~約25mg/kg、または約0.01~約5mg/kgである。
【0145】
単位経口用量は、約0.01~約1000mg、例えば、約0.1~約100mgの化合物を含むことができる。単位用量は、それぞれ約0.1~約10mg、好都合には約0.25~50mgの化合物またはその溶媒和物を含有する1つ以上の錠剤またはカプセルとして、1日1回以上投与され得る。
【0146】
局所製剤において、化合物は、担体1グラム当たり約0.01~100mgの濃度で存在し得る。一実施形態では、化合物は、約0.07~1.0mg/mL、例えば約0.1~0.5mg/mL、一実施形態では約0.4mg/mLの濃度で存在する。
【0147】
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物の有益な効果を経験し得る任意の患者に投与され得る。そのような患者の中で最も重要なものは哺乳動物、例えばヒトであるが、本発明はそのように限定されることを意図しない。他の患者には、家畜動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなど)が含まれる。
【0148】
化合物およびその薬学的組成物は、それらの意図される目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、口腔内、くも膜下、頭蓋内、鼻腔内または局所経路によるものであり得る。あるいはまたは同時に、投与は経口経路によるものであり得る。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康状態および体重、同時治療の種類(もしあれば)、治療の頻度、ならびに、所望の効果の性質に依存する。
【0149】
本発明の医薬製剤は、それ自体公知の方法で、例えば、従来の混合、造粒、糖衣錠製造、溶解、または凍結乾燥プロセスによって製造される。したがって、経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせることによって、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために所望または必要であれば、任意で得られた混合物を粉砕し、そして適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。
【0150】
適切な賦形剤は特に、ラクトースまたはスクロース等の糖類、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物、および/または、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム等のリン酸カルシウムなどのフィラー、ならびに、例えばトウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンを使用したデンプンペースト等のバインダーである。所望ならば、たとえば前記澱粉およびカルボキシメチル澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)等の崩壊剤を添加できる。補助剤はとりわけ、流量調節剤および滑沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアには、所望であれば胃液に対して抵抗性である、適切なコーティングが施される。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有することができる。胃液に耐性のあるコーティングを生成するために、アセチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレート等の適切なセルロース調製物の溶液が使用される。顔料または色素は例えば、識別のために、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0151】
経口的に使用できる他の医薬製剤は、ゼラチン製押しばめカプセル、ならびにゼラチンとグリセリンまたはソルビトールのような可塑剤とからなる封入軟カプセルである。押しばめカプセルは粒状の活性化合物を含むことができ、この粒状活性化合物は、ラクトース等のフィラー、澱粉等のバインダーおよび/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ならびに任意で安定剤と混合してもよい。軟カプセルでは、活性化合物が一実施形態では脂肪油、または流動パラフィンなどの適切な液体に溶解または懸濁される。さらに、安定剤を添加してもよい。
【0152】
直腸に使用することができる可能な医薬製剤の例としては坐剤が挙げられ、これは、1つ以上の活性化合物と坐剤基剤との組み合わせからなる。適切な坐剤基剤は例えば、天然または合成トリグリセリド、またはパラフィン炭化水素である。さらに、活性化合物と基剤との組み合わせ物からなるゼラチン直腸カプセルを使用することもできる。考えられる基剤物質としては、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0153】
非経口投与に好適な製剤としては、水溶性形態の活性化合物の水性溶液、例えば、水溶性塩およびアルカリ性溶液が挙げられる。さらに、適切な油性注射懸濁液として活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えばゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドまたはポリエチレングリコール-400)が挙げられる。水性注射懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。任意で、懸濁液は安定剤も含んでいてもよい。
【0154】
本発明の局所用組成物は一実施形態において、適切な担体の選択により、油、クリーム、ローション、軟膏などとして製剤化される。適切な担体としては、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分枝鎖脂肪または油、動物性脂肪および高分子量アルコール(C12より大きい)が挙げられる。担体は、有効成分が可溶性であるものであってもよい。乳化剤、安定剤、湿潤剤および酸化防止剤、ならびに所望であれば、色または芳香を付与する薬剤もまた含まれ得る。また、これらの局所製剤には、経皮浸透促進剤を使用することもできる。そのような促進剤の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,989,816号および同第4,444,762号に見出すことができる。
【0155】
軟膏は、有効成分の溶液をアーモンド油などの植物油中で温かい軟パラフィンと混合し、混合物を冷却させることによって製剤化することができる。そのような軟膏の典型的な例は、約30重量%のアーモンド油および約70重量%の白色軟パラフィンを含むものである。ローションは、有効成分を、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等の適切な高分子量アルコールに溶解することによって都合よく調製することができる。
【0156】
当業者は、上記が、本発明の特定の好ましい実施形態の詳細な説明を表すに過ぎないことを容易に認識するであろう。上記の組成物および方法の種々の変更および改変は、当該分野で利用可能な専門知識を使用して容易に実現することができ、本発明の範囲内である。
【0157】
〔実験〕
〔実施例1〕発現コンストラクト
本実施例では、融合タンパク質の組換え産生のために発現ベクターに挿入される発現コンストラクトの設計について説明する。
【0158】
<抗VEGF>
ベバシズマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号1):
【化1】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0159】
ベバシズマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号2):
【化2】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0160】
ベバシズマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号3):
【化3】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0161】
ベバシズマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号4):
【化4】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0162】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5):
MMSFVSLLLVGILFHATQA
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6):
SGGGGS
デコリン(配列番号7):
DEAAGIGPEVPDDRDFEPSLGPVCPFRCQCHLRVVQCSDLGLDKVPKDLPPDTTLLDLQNNKITEIKDGDFKNLKNLHALILVNNKISKVSPGAFTPLVKLERLYLSKNQLKELPEKMPKTLQELRAHENEITKVRKVTFNGLNQMIVIELGTNPLKSSGIENGAFQGMKKLSYIRIADTNITSIPQGLPPSLTELHLDGNKISRVDAASLKGLNNLAKLGLSFNSISAVDNGSLANTPHLRELHLDNNKLTRVPGGLAEHKYIQVVYLHNNNISVVGSSDFCPPGHNTKKASYSGVSLFSNPVQYWEIQPSTFRCVYVRSAIQLGNYK
ベバシズマブ重鎖タンパク質配列(配列番号8):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADFKRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
ベバシズマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号9):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKVLIYFTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSTVPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0163】
<抗CTLA4>
イピリムマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号10):
【化5】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0164】
イピリムマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号11):
【化6】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線の下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0165】
イピリムマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号12):
【化7】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0166】
イピリムマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号13):
【化8】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0167】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5)
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6)
デコリン(配列番号7)
イピリムマブ重鎖タンパク質配列(配列番号14):
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYTMHWVRQAPGKGLEWVTFISYDGNNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAIYYCARTGWLGPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
イピリムマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号15):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGAFSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0168】
<抗PD-L1>
アテゾリズマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号16):
【化9】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0169】
アテゾリズマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号17):
【化10】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0170】
アテゾリズマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号18):
【化11】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0171】
アテゾリズマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号19):
【化12】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0172】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5)
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6)
デコリン(配列番号7)
アテゾリズマブ重鎖タンパク質配列(配列番号20):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
アテゾリズマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号21):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0173】
<抗PD-L1>
アベルマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号22):
【化13】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0174】
アベルマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号23):
【化14】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0175】
アベルマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号24):
【化15】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0176】
アベルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号25):
【化16】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0177】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5)
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6)
デコリン(配列番号7)
アベルマブ重鎖タンパク質配列(配列番号26):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
アベルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号27):
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0178】
<抗PD-L1>
デュルバルマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号28):
【化17】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0179】
デュルバルマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号29):
【化18】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0180】
デュルバルマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号30):
【化19】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0181】
デュルバルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号31):
【化20】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0182】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5)
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6)
デコリン(配列番号7)
デュルバルマブ重鎖タンパク質配列(配列番号32):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
デュルバルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号33):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0183】
<抗PD-1>
ニボルマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号34):
【化21】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0184】
ニボルマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号35):
【化22】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0185】
ニボルマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号36):
【化23】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0186】
ニボルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号37):
【化24】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0187】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5)
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6)
デコリン(配列番号7)
ニボルマブ重鎖タンパク質配列(配列番号38):
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
ニボルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号39):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0188】
<抗PD-1>
ペムブロリズマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号40):
【化25】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0189】
ペムブロリズマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号41):
【化26】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0190】
ペムブロリズマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号42):
【化27】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0191】
ペムブロリズマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号43):
【化28】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0192】
<構成要素のアミノ酸配列>
重鎖および軽鎖のためのシグナル配列(配列番号5)
デコリンと重鎖との間のリンカー配列(配列番号6)
デコリン(配列番号7)
ペムブロリズマブ重鎖タンパク質配列(配列番号44):
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
ペムブロリズマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号45):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0193】
<抗PD-L1>
アベルマブ-ガラコリン融合重鎖遺伝子配列(配列番号50):
【化29】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0194】
アベルマブ-ガラコリン融合重鎖タンパク質配列(配列番号51):
【化30】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0195】
アベルマブ軽鎖遺伝子配列(配列番号52):
【化31】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。軽鎖のコード配列には直線で下線を付している。
【0196】
アベルマブ軽鎖タンパク質配列(配列番号53):
【化32】

シグナルペプチド配列は太字で示している。軽鎖配列には直線で下線を付している。
【0197】
<抗PD-L1>
いくつかの実施形態では、構築物は、各C重鎖遺伝子に結合したガラコリンまたは他のデコリン分子の2つ以上のコピー、もしくは、単一の統一体(single entity)として、または2つ以上のコピーとしての、前記重鎖遺伝子に結合した前記ガラコリン分子の一部(例えば、TGF-β結合部分)を含む。ガラコリン/デコリン分子には複数のTGF-β結合ドメインがある。これらのドメインは、任意の適切な構成で構成される。いくつかの実施形態では、上記の選択肢の各々は、2つ以上の標的に向けられた二重特異性または多重特異性抗体に結合する。例示的な配列を以下に示す。
【0198】
アベルマブ-ガラコリン2×融合重鎖遺伝子配列(配列番号54):
【化33-1】

【化33-2】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリンのコード配列には波線で下線を付している。
【0199】
アベルマブ-ガラコリン2×融合重鎖タンパク質配列(配列番号55):
【化34】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン配列には波線で下線を付している。
【0200】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのAsp45-Lys359)TGF-β結合ドメイン融合重鎖遺伝子配列(配列番号56):
【化35】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Asp45-Lys359)のコード配列には波線で下線を付している。
【0201】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのAsp45-Lys359)TGF-β結合ドメイン融合重鎖タンパク質配列(配列番号57):
【化36】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Asp45-Lys359)配列には波線で下線を付している。
【0202】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのAsp45-Lys359)TGF-β結合ドメイン2×融合重鎖遺伝子配列(配列番号58):
【化37-1】

【化37-2】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Asp45-Lys359)のコード配列には波線で下線を付している。
【0203】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのAsp45-Lys359)TGF-β結合ドメイン2×融合重鎖タンパク質配列(配列番号59):
【化38】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Asp45-Lys359)配列には波線で下線を付している。
【0204】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのLeu155-Val260)TGF-β結合ドメイン融合重鎖遺伝子配列(配列番号60):
【化39】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Leu155-Val260)のコード配列には波線で下線を付している。
【0205】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのLeu155-Val260)TGF-β結合ドメイン融合重鎖タンパク質配列(配列番号61):
【化40】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Leu155-Val260)配列には波線で下線を付している。
【0206】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのLeu155-Val260)TGF-β結合ドメイン2×融合重鎖遺伝子配列(配列番号62):
【化41】

シグナルペプチドのコード配列は太字で示している。重鎖のコード配列には直線で下線を付している。リンカーのコード配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Leu155-Val260)のコード配列には波線で下線を付している。
【0207】
アベルマブ-ガラコリン/デコリン(完全長内因性ヒトデコリンのLeu155-Val260)TGF-β結合ドメイン2×融合重鎖タンパク質配列(配列番号63):
【化42】

シグナルペプチド配列は太字で示している。重鎖配列には直線で下線を付している。リンカー配列はイタリック体で示している。ガラコリン/デコリン(Leu155-Val260)配列には波線で下線を付している。
【0208】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1に記載の融合タンパク質の産生のための発現細胞株の生成について説明する。
【0209】
<レトロベクターの産生>
上記に概説される発現コンストラクトを、MLV gag、pro、およびpolタンパク質を構成的に産生するHEK293細胞株に導入した。発現プラスミドを含む外被も、ベバシズマブ軽鎖(ベクターマップは図2参照)またはベバシズマブ重鎖-ガラコリン融合(ベクターマップは図3参照)遺伝子構築物のいずれかとの同時トランスフェクトに供した。2つの同時トランスフェクションによって、軽鎖-ガラコリンまたは重鎖-ガラコリンのいずれかに対する複製不能な高力価レトロベクターの産生がもたらされ、これを超遠心分離によって濃縮し、細胞形質導入に使用した(例えば、Bleck,G.T.2005 An alternative method for the rapid generation of stable, high-expressing mammalian cell lines (A Technical Review). Bioprocessing J.Setp/Oct.pp 1-7; Bleck, G. T., 2010. GPEx(登録商標)A Flexible Method for the Rapid Generation of Stable, High Expressing, Antibody Producing Mammalian Cell Lines Chapter 4 In: Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing, Biotechnology: Pharmaceutical Aspects, Edited by: S. J. Shire et al. (copy right) 2010 American Association of Pharmaceutical Scientists, DOI 10.1007/978-0-387-76643-0_4を参照)。
【0210】
まとめ:pCS-Biway(バイウェイ)LC-WPRE(新ori)、GDD2107.0003の特徴
【0211】
【表4】
【0212】
まとめ:pFCS-Biwayガラコリン-WPRE-SIN(新ori)、GDD2134.0001の特徴
【0213】
【表5】
【0214】
(レトロベクターを用いたGCHO細胞の形質導入)
週1回、4週間にわたって2回の軽鎖形質導入およびその後の2回の重鎖-ガラコリン形質導入を行う、GPEx(登録商標)チャイニーズハムスター卵巣(GCHO)親細胞株の細胞形質導入を複数サイクル実施することにより、ベバシズマブ-ガラコリン融合抗体プール細胞株を生成した。これらの形質導入を行い、2つの遺伝子産物の各々のプール細胞株を生成した。
【0215】
(細胞のプール集団からの、ベバシズマブ-ガラコリン融合物の流加生成)
形質導入後、2本の250mL振盪フラスコ中で、流加試験における生産性のために、ベバシズマブ-ガラコリン融合物のためのプール細胞株をスケールアップした。それぞれの振盪フラスコに、60mLのワーキングボリュームのPF CHO LS培地(HyClone)に1mLあたり300,000個の生存細胞を播種し、加湿された(70~80%)振盪インキュベーター内で、130rpm、5%CO、37℃でインキュベートした。2つの異なった飼料サプリメントを使用して、生成工程の間に培養物を4回供給した。生存率が70%以下になった時点で培養を終了した。融合抗体生成の確認はSDS-PAGEゲル分析(図4)およびELISAにより測定し、生成量を定量した。培養は、360mg/Lの融合抗体生成物を産生する。生成物は、SDS-PAGEにおいて、非還元条件下では単一のバンドを優勢的に示し、還元条件下では2つのバンド(重鎖-ガラコリン融合物および軽鎖)を示すという、予想通りの挙動をする。融合重鎖の約80kDaの大きさはその生成物の予想される大きさに一致し、軽鎖は通常の25kDaの大きさである。
【0216】
〔実施例3〕
本実施例では、アベルマブ-ガラコリン融合物の発現について説明する。
【0217】
配列番号50の遺伝子構築物をExpiCHO細胞に一過性にトランスフェクトし、融合分子の生成を250mLスケールで行った。採取日の融合物の力価は377mg/Lであった。融合物をMabSelectSuReタンパク質Aカラムで精製した。得られた精製タンパク質を、タンジェンシャルフローろ過を用いて20mMクエン酸ナトリウム、pH5.5、50mM塩化ナトリウムに緩衝液交換した。得られた物質をSDS-PAGEゲルおよびSEC-HPLCを用いて調べた。生成物はSDS-PAGEゲル上で期待されたサイズプロファイルを示し(図5)、SEC-HPLC上で非常に低い凝集レベルを示した(図6)。
【0218】
上記生成における生成物を、マウス腫瘍モデル研究における評価のために使用した。この研究では、C57BL/6マウスおよびMC-38ヒト結腸直腸癌細胞を用いた。40匹のC57BL/6マウスにMC-38細胞を皮下注射した。腫瘍を約100mmまで増殖させ、次いで、それぞれ10匹のマウスをそれぞれ4つの異なった治療に割り当てた。各群は単回投与治療IVを受け、その後の数日間にわたって腫瘍サイズを測定した。治療群はビヒクル、4mg/kgのガラコリン/デコリン、17mg/kgのアベルマブ/抗PD-L1または25mg/kgのアベルマブ/抗PD-L1-デコリン/ガラコリン融合物であった。
【0219】
腫瘍増殖は、ビヒクルおよびデコリン/ガラコリン単独と比較して、アベルマブ/抗PD-L1およびアベルマブ/抗PD-L1-デコリン/ガラコリン融合物による治療の両方によって阻害された(図7)。さらに、アベルマブ/抗PD-L1-デコリン/ガラコリン融合物による治療も、アベルマブ/抗PD-L1単独よりも効果的に増殖を阻害した。
【0220】
上記明細書で言及した全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および趣旨から逸脱することのない、本発明に記載の方法およびシステムの様々な変更および変形は、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明は、かかる特定の実施形態に不当に限定されるものではないことを理解すべきである。実際に、本発明の分野の当業者に明らかである本発明を実施するための記載された態様の種々の変更は、添付の特許請求の範囲内にあると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0221】
図1】本発明の融合タンパク質の概略図である。
図2】本発明の発現コンストラクトのマップである。
図3】本発明の発現コンストラクトのマップである。
図4-1】ベバシズマブ融合タンパク質を発現するプールされたCHO細胞株からの培地のSDS-PAGEゲルである。
図4-2】図4-1の続きである。
図5】精製アベルマブ-ガラコリン融合分子のSDS-PAGEゲルである。
図6】精製アベルマブ-ガラコリン融合分子のSEC-HPLCクロマトグラムである。
図7】4つの治療の単回静脈内投与後のC57BL/6マウスMC-38ヒト結腸直腸癌モデルにおける腫瘍増殖のグラフである。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
【配列表】
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