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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】2成分型硬化吹付材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/00 20060101AFI20240625BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240625BHJP
【FI】
C09D175/00
C09D7/63
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021013467
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117008
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】川那部 恒
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133496(WO,A1)
【文献】特開2005-139255(JP,A)
【文献】特開平3-162411(JP,A)
【文献】特開平9-132632(JP,A)
【文献】特開平8-027123(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00ー18/87;71/00-71/04
C09D 1/00-10/00;101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とを備え、
前記主剤は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含み、
前記硬化剤は、ポリアミンと、ポリオールと、触媒とを含み、
前記触媒は、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸とを含む、2成分型硬化吹付材。
【請求項2】
遊離の前記カルボン酸の含有割合が、
カルボン酸の前記金属塩と、遊離の前記カルボン酸との総量に対して、20質量%以上である、請求項1に記載の2成分型硬化吹付材。
【請求項3】
前記主剤が、さらに、可塑剤を含む、請求項1または2に記載の2成分型硬化吹付材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分型硬化吹付材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2成分型硬化吹付材が知られている。2成分型硬化吹付材は、建築材料として使用されている。建築材料としては、例えば、床材、防水材、工業用ライニング材、厚膜保護材および防錆材が挙げられる。
【0003】
2成分型硬化吹付材は、例えば、主剤および硬化剤を含んでいる。主剤および硬化剤は、別々に準備される。2成分型硬化吹付材の使用時には、主剤および硬化剤のそれぞれが、公知のスプレー装置に充填され、所定の混合比で混合される。そして、主剤および硬化剤の混合物が、施工面にスプレー塗布される。
【0004】
2成分型硬化吹付材として、より具体的には、以下の2成分型硬化吹付材が提案されている。すなわち、主剤(A成分)が、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)と、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートと、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)と、ポリエーテルジオール(PPG)とを反応させて得られるプレポリマーを含んでいる。また、B成分(硬化剤)が、ポリエーテルジオールと、ジエチルトルエンジアミンと、オクチル酸鉛とを含んでいる(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-49409公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、2成分型硬化吹付材には、作業性の観点から、主剤および硬化剤の反応におけるゲルタイムの短縮が要求される。
【0007】
そこで、ゲルタイムを短縮させる観点から、主剤(A成分)として、キシリレンジイソシアネート系プレポリマーおよびキシリレンジイソシアネート単量体を使用することが検討される。しかし、このような2成分型硬化吹付材は、ゲルタイムを短縮できるが、貯蔵安定性が十分ではない場合がある。
【0008】
本発明は、優れたゲルタイムおよび貯蔵安定性を有する2成分型硬化吹付材である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、主剤と硬化剤とを備え、前記主剤は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含み、前記硬化剤は、ポリアミンと、ポリオールと、触媒とを含み、前記触媒は、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸とを含む、2成分型硬化吹付材を、含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、遊離の前記カルボン酸の含有割合が、カルボン酸の前記金属塩と、遊離の前記カルボン酸との総量に対して、20質量%以上である、上記[1]に記載の2成分型硬化吹付材を、含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記主剤が、さらに、可塑剤を含む、上記[1]または[2]に記載の2成分型硬化吹付材を、含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の2成分型硬化吹付材は、主剤と硬化剤とを備える。そして、主剤が、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含み、硬化剤が、ポリオール、ポリアミンおよび触媒を含む。また、硬化剤において、触媒は、カルボン酸の金属塩と遊離のカルボン酸とを併有する。そのため、本発明の2成分型硬化吹付材は、優れたゲルタイムおよび貯蔵安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.2成分型硬化吹付材
本発明の2成分型硬化吹付材は、主剤と硬化剤とを備える。具体的には、2成分型硬化吹付材は、スプレー塗布するためのコーティングキットであって、主剤と硬化剤とを別々に備える。
【0014】
2.主剤
2-1.ポリイソシアネート組成物
主剤は、ポリイソシアネート組成物を含有する。ポリイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含有する。すなわち、主剤は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含有する。
【0015】
キシリレンジイソシアネートとしては、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、および、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートおよび1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0016】
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、1分子中に1つ以上のアロファネート基を含有する。キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのアルコール変性体である。
【0017】
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、例えば、キシリレンジイソシアネートとアルコールとをウレタン化反応させ、その後、反応生成物(ウレタン化合物)をアロファネート化触媒の存在下でアロファネート化反応させることによって、得られる。
【0018】
より具体的には、この方法では、まず、キシリレンジイソシアネートとアルコールとを、ウレタン化反応させ、キシリレンジイソシアネートのウレタン化合物を得る。
【0019】
アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコールおよび芳香族アルコールが挙げられる。アルコールとして、好ましくは、脂肪族アルコールが挙げられる。脂肪族アルコールとしては、例えば、1価の脂肪族アルコール、および、2価の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0020】
1価の脂肪族アルコールとしては、例えば、直鎖状の1価脂肪族アルコール、および、分岐状の1価脂肪族アルコールが挙げられる。直鎖状の1価脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-デカノールおよびn-ドデカノールが挙げられる。分岐状の1価脂肪族アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、および、イソヘキサノールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0021】
2価の脂肪族アルコールとしては、直鎖状の2価脂肪族アルコール、分岐状の2価脂肪族アルコール、および、脂環式の2価脂肪族アルコールが挙げられる。直鎖状の2価脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。分岐状の2価脂肪族アルコールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、および、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが挙げられる。脂環式の2価脂肪族アルコールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、および、水素化ビスフェノールAが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0022】
また、アルコールの分子構造は、分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有していれば、特に制限されない。例えば、アルコールは、公知の基を有することができる。基としては、例えば、エステル基、エーテル基、シクロヘキサン環および芳香環が挙げられる。
【0023】
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用できる。アルコールとして、好ましくは、脂肪族アルコールが挙げられ、より好ましくは、1価の脂肪族アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、分岐状の1価脂肪族アルコールが挙げられる。
【0024】
換言すれば、ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、キシリレンジイソシアネートと脂肪族アルコールとの反応生成物を含む。また、ポリイソシアネート組成物は、より好ましくは、キシリレンジイソシアネートと1価の脂肪族アルコールとの反応生成物を含む。また、ポリイソシアネート組成物は、さらに好ましくは、キシリレンジイソシアネートと分岐状の1価の脂肪族アルコールとの反応生成物を含む。
【0025】
また、脂肪族アルコールとしては、好ましくは、炭素数が1~20の脂肪族アルコール、より好ましくは、炭素数が2~20の脂肪族アルコール、さらに好ましくは、炭素数が2~8の脂肪族アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数が2~6の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0026】
アルコールの配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、好ましくは、2.0質量部以上、より好ましくは、3.0質量部以上、より好ましくは、3.5質量部以上である。また、アルコールの配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0027】
また、アルコールのヒドロキシ基に対する、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、イソシアネート基過剰である。具体的には、当量比(NCO/OH)は、例えば、5以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、15以上、さらに好ましくは、20以上である。また、当量比(NCO/OH)は、例えば、1000以下、好ましくは、100以下、より好ましくは、50以下である。
【0028】
また、必要に応じて、上記したアルコールと、その他の化合物とを、適宜の割合で併用できる。その他の化合物としては、例えば、チオール類、オキシム類、ラクタム類、フェノール類およびβジケトン類が挙げられる。
【0029】
ウレタン化反応における反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下である。また、反応温度が、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、60℃以上である。また、反応温度が、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下、より好ましくは、80℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.05時間以上、好ましくは、0.2時間以上、より好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、3時間以上である。また、反応時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下、より好ましくは、4時間以下である。
【0030】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、公知のウレタン化触媒を、適宜の割合で添加してもよい。ウレタン化触媒としては、例えば、アミン類、有機金属化合物およびカリウム塩が挙げられる。これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用できる。なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。好ましくは、ウレタン化触媒は、添加されない。つまり、ウレタン化反応は、無触媒で進行する。
【0031】
次いで、キシリレンジイソシアネートとアルコールとの反応生成物(ウレタン化合物)を、アロファネート化反応させる。アロファネート化反応では、例えば、ウレタン化反応により得られる反応液に、アロファネート化触媒を配合し、加熱する。
【0032】
アロファネート化触媒としては、例えば、ビスマス含有触媒が挙げられる。ビスマス含有触媒は、ビスマスを含有していれば特に制限されないが、例えば、ビスマスのカルボン酸塩(カルボン酸ビスマス)が挙げられる。
【0033】
カルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族カルボン酸、飽和単環カルボン酸、飽和複環カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、芳香脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸が挙げられる。飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オクチル酸および2-エチルヘキサン酸が挙げられる。飽和単環カルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸およびシクロペンタンカルボン酸が挙げられる。飽和複環カルボン酸としては、例えば、ビシクロ(4.4.0)デカン-2-カルボン酸が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸およびトール油脂肪酸が挙げられる。芳香脂肪族カルボン酸としては、例えば、ジフェニル酢酸が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸およびトルイル酸が挙げられる。これらカルボン酸は、単独使用または2種類以上併用できる。カルボン酸として、好ましくは、飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0034】
これらアロファネート化触媒は、単独使用または2種類以上併用できる。アロファネート化触媒として、好ましくは、ビスマス含有触媒、より好ましくは、カルボン酸ビスマスが挙げられる。
【0035】
ビスマス含有触媒において、ビスマスの含有割合(Bi濃度)は、ビスマス含有触媒の固形分の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、25質量%以上、より好ましくは、30質量%以上である。また、ビスマスの含有割合(Bi濃度)は、ビスマス含有触媒の固形分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。なお、ビスマスの含有割合(Bi濃度)は、ビスマス含有触媒の固形分の総量(例えば、ビスマス金属およびカルボン酸の総量)に対するビスマス金属の質量割合である。ビスマスの含有割合(Bi濃度)は、蛍光X線分析などにより、測定することができる。
【0036】
また、アロファネート化触媒は、固形分100%として使用されてもよい。また、アロファネート化触媒は、公知の有機溶媒に溶解した触媒溶液として使用されてもよい。
【0037】
アロファネート化触媒(固形分)の添加割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、より好ましくは、0.01質量部以上である。また、アロファネート化触媒(固形分)の添加割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.3質量部以下、好ましくは、0.2質量部以下、より好ましくは、0.1質量部以下である。
【0038】
アロファネート化反応の反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下である。また、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上、より好ましくは、40℃以上、さらに好ましくは、60℃以上、とりわけ好ましくは、70℃以上である。また、反応温度が、例えば、160℃以下、好ましくは、140℃以下、より好ましくは、120℃以下、さらに好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、5時間以上、さらに好ましくは、8時間以上である。また、反応時間が、例えば、16時間以下、より好ましくは、14時間以下、さらに好ましくは、12時間以下である。
【0039】
そして、上記のアロファネート化反応では、好ましくは、任意のタイミングで、触媒失活剤を添加し、反応を停止させる。触媒失活剤を添加するタイミングは、例えば、ウレタン基/アロファネート基のIR比が、所定値に到達した時点である。IR比は、赤外分光法(IR法)により測定される。IR比の所定値としては、例えば、0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。
【0040】
触媒失活剤としては、例えば、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、および、ベンゾイルクロリドが挙げられる。触媒失活剤は、単独使用または2種類以上併用できる。また、触媒失活剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0041】
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を得ることができる。
【0042】
また、上記のウレタン化反応およびアロファネート化反応では、必要により、公知の有機溶媒を、適宜の割合で配合できる。また、上記のウレタン化反応およびアロファネート化反応では、必要に応じて、添加剤を、適宜の割合で配合できる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤および助触媒が挙げられる。なお、有機溶媒および添加剤の配合のタイミングは、特に制限されない。
【0043】
そして、この方法では、上記アロファネート化反応の終了後、必要に応じて、得られる反応混合液から、未反応のキシリレンジイソシアネートを、公知の方法で除去できる。除去方法としては、例えば、薄膜蒸留(スミス蒸留)および抽出が挙げられる。また、未反応のキシリレンジイソシアネートとともに、触媒、反応溶媒および/または触媒失活剤が除去されてもよい。
【0044】
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含有するポリイソシアネート組成物が得られる。換言すれば、ポリイソシアネート組成物は、主成分として、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含有する。
【0045】
ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体の含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、92質量%以上、さらに好ましくは、95質量%以上、とりわけ好ましくは、98質量%以上である。また、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体の含有割合は、例えば、100質量%以下である。
【0046】
なお、上記の方法において、キシリレンジイソシアネートのウレタン化反応およびアロファネート化反応では、反応条件によっては、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体に加え、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体が副生成物として得られる。つまり、ポリイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体と、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体とを含有できる。
【0047】
その他のキシリレンジイソシアネート誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、および、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン誘導体が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート組成物の総量に対して、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体の含有割合は、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、8質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下、とりわけ好ましくは、2質量%以下である。また、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体の含有割合は、例えば、0質量%以上である。
【0049】
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度(固形分100質量%)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、16質量%以上であり、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。
【0050】
また、ポリイソシアネート組成物のイソシアネートモノマー濃度(未反応のキシリレンジイソシアネートの濃度)は、例えば、5質量%以下、好ましくは、2質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下である。
【0051】
また、ポリイソシアネート組成物には、必要により、公知の有機溶媒を適宜の割合で添加して、固形分濃度を調整することができる。ポリイソシアネート組成物の希釈液において、ポリイソシアネート組成物の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、100質量%以下である。
【0052】
2-2.可塑剤
主剤は、好ましくは、さらに、可塑剤を含有する。主剤が可塑剤を含有していれば、優れた伸び率を有する硬化物が得られる。
【0053】
可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステルおよびフタル酸エステルが挙げられる。アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、および、アジピン酸ジ-n-アルキルが挙げられる。フタル酸エステルとしては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、および、フタル酸ジ-n-アルキルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。可塑剤として、好ましくは、フタル酸エステルが挙げられ、より好ましくは、フタル酸ジイソノニル(DINP)が挙げられる。
【0054】
可塑剤の配合割合は、主剤に対して、例えば、1質量%以上である。また、可塑剤の配合割合は、主剤に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは、18質量%以下である。
【0055】
2-3.主剤の調製
上記ポリイソシアネート組成物を、主剤として使用できる。また、必要により、ポリイソシアネート組成物に可塑剤を添加し、混合物を主剤として使用できる。
【0056】
主剤において、イソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上である。また、イソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、20質量%以下である。
【0057】
主剤の粘度(25℃)は、例えば、2000mPa・s以下、好ましくは、1500mPa・s以下である。また、主剤の粘度(25℃)は、例えば、100mPa・s以上である。
【0058】
上記の粘度が、上記範囲であれば、主剤を、容易にスプレー噴射することができる。なお、主剤の粘度は、東機産業社製スピンドル型回転粘度計TV-25 L型などにより求めることができる。
【0059】
3.硬化剤
硬化剤は、ポリアミンと、ポリオールと、触媒とを含む。
【0060】
3-1.ポリアミン
ポリアミンは、活性水素基としてのアミノ基を、1分子中に2つ以上有する化合物である。ポリアミンとしては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、第1級アミノ基および第2級アミノ基を併有するアルコキシシリル化合物、ヒドラジン、および、ヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0061】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、および、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。芳香族ポリアミンとして、好ましくは、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。
【0062】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-キシリレンジアミンおよび1,4-キシリレンジアミンが挙げられる。
【0063】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、および、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0064】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、および、1,3-ジアミノペンタンが挙げられる。
【0065】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール、および、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノールが挙げられる。
【0066】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンエーテルジアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンが挙げられる。
【0067】
第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、および、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0068】
第1級アミノ基および第2級アミノ基を併有する化合物としては、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0069】
ヒドラジンとしては、例えば、無水ヒドラジンおよびヒドラジン水和物が挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、例えば、コハク酸ジヒドラジド、および、アジピン酸ジヒドラジドが挙げられる。
【0070】
ポリアミンは、単独使用または2種類以上併用できる。ポリアミンとして、好ましくは、芳香族ポリアミンが挙げられ、より好ましくは、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。
【0071】
3-2.ポリオール
ポリオールは、活性水素基としての水酸基を1分子中に2つ以上有する化合物である。ポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールおよびマクロポリオールが挙げられる。
【0072】
低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。なお、低分子量ポリオールの分子量は、例えば、40以上であり、例えば、400未満、好ましくは、300未満である。
【0073】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が400未満になるように、2~4価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も挙げられる。
【0074】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0075】
マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、400以上、好ましくは、500以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下、さらに好ましくは、2000以下である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。
【0076】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0077】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0078】
ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールは、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2~3のアルキレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドとして、より具体的には、例えば、エチレンオキサイド(IUPAC名:オキシラン)、プロピレンオキサイド(1,2-プロピレンオキサイド(IUPAC名:メチルオキシラン))、および、トリエチレンオキサイド(1,3-プロピレンオキサイド)が挙げられる。これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。アルキレンオキサイドとして、好ましくは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとして、より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシトリエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0079】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物が挙げられる。また、ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールも挙げられる。非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールでは、テトラヒドロフランと、アルキル置換テトラヒドロフランおよび/または2価アルコールとが共重合される。
【0080】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0081】
多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、その他のカルボン酸、酸無水物および酸ハライドが挙げられる。飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸およびセバシン酸が挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸およびナフタレンジカルボン酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。その他のカルボン酸としては、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸が挙げられる。酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水アルキルコハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、および、無水トリメリット酸が挙げられる。酸ハライドとしては、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライドおよびセバシン酸ジクロライドが挙げられる。
【0082】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0083】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリバレロラクトンポリオールが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールを開始剤として、ラクトン類を開環重合して得られる。ラクトン類としては、例えば、ε-カプロラクトンおよびγ-バレロラクトンが挙げられる。また、ポリエステルポリオールとして、ポリカプロラクトンポリオールに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
【0084】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物が挙げられる。また、上記開環重合物と、2価アルコールとを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールも挙げられる。
【0085】
これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。マクロポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルジオールが挙げられる。
【0086】
ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。ポリオールとして、好ましくは、低分子量ポリオールとマクロポリオールとの併用が挙げられる。
【0087】
低分子量ポリオールとマクロポリオールとが併用される場合、低分子量ポリオールとマクロポリオールとの総量100質量部に対して、低分子量ポリオールが、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上である。また、低分子量ポリオールが、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。また、マクロポリオールが、例えば、95質量部以上、好ましくは、97質量部以上である。また、マクロポリオールが、例えば、99.9質量部以下、好ましくは、99.8質量部以下である。
【0088】
また、ゲルタイム、硬度および引張強度の観点から、低分子量ポリオールとマクロポリオールとの総量100質量部に対して、低分子量ポリオールが、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2.0質量部以上、さらに好ましくは、2.5質量部以上である。また、低分子量ポリオールが、好ましくは、3質量部以下である。
【0089】
また、伸び率の観点から、低分子量ポリオールとマクロポリオールとの総量100質量部に対して、低分子量ポリオールが、好ましくは、0.5質量部以上である。また、低分子量ポリオールが、好ましくは、2.5質量部以下、より好ましくは、2.0質量部以下、さらに好ましくは、1.5質量部以下である。
【0090】
3-3.触媒
触媒は、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸とを含む。触媒は、好ましくは、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸とからなる。
【0091】
カルボン酸の金属塩は、ウレタン化反応を促進する触媒(ウレタン化触媒)である。カルボン酸の金属塩としては、例えば、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩、カルボン酸錫塩、カルボン酸ニッケル塩、カルボン酸コバルト塩、および、カルボン酸銅塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0092】
カルボン酸の金属塩として、好ましくは、ゲルタイムをより一層短くする観点から、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩、および、カルボン酸錫塩が挙げられる。すなわち、カルボン酸の金属塩として、好ましくは、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩、および、カルボン酸錫塩からなる群から1種が選択される。
【0093】
カルボン酸鉛塩としては、例えば、オクチル酸鉛、ネオデカン酸鉛、ステアリン酸鉛、および、オレイン酸鉛が挙げられる。カルボン酸鉛塩として、好ましくは、オクチル酸鉛およびネオデカン酸鉛が挙げられ、より好ましくは、オクチル酸鉛が挙げられる。
【0094】
カルボン酸ビスマス塩としては、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマスおよびオレイン酸ビスマスが挙げられる。カルボン酸ビスマス塩として、好ましくは、オクチル酸ビスマスおよびネオデカン酸ビスマスが挙げられ、より好ましくは、オクチル酸ビスマスが挙げられる。
【0095】
カルボン酸錫塩としては、例えば、オクチル酸錫、ネオデカン酸錫、ステアリン酸錫、オレイン酸錫およびラウリル酸錫が挙げられる。
【0096】
カルボン酸の金属塩として、さらに好ましくは、カルボン酸鉛塩およびカルボン酸ビスマス塩が挙げられ、とりわけ好ましくは、カルボン酸ビスマス塩が挙げられる。
【0097】
遊離のカルボン酸は、ウレア化反応を促進する触媒(ウレア化触媒)である。遊離のカルボン酸としては、例えば、遊離のオクチル酸、遊離のナフテン酸、遊離のオクテン酸、遊離のオクチル酸、および、遊離のネオデカン酸が挙げられる。遊離のカルボン酸として、好ましくは、遊離のオクチル酸が挙げられる。
【0098】
カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸との総量に対して、カルボン酸の金属塩の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、とりわけ好ましくは、55質量%以上である。また、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸との総量に対して、カルボン酸の金属塩の含有割合が、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下、とりわけ好ましくは、60質量%以下である。カルボン酸の金属塩の含有割合が上記範囲であれば、とりわけ優れたゲルタイムおよび貯蔵安定性を有する2成分型硬化吹付材が得られる。
【0099】
また、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸との総量に対して、遊離のカルボン酸の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、とりわけ好ましくは、40質量%以上である。また、カルボン酸の金属塩と、遊離のカルボン酸との総量に対して、遊離のカルボン酸の含有割合が、例えば、99質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下、とりわけ好ましくは、50質量%以下、とりわけ好ましくは、45質量%以下である。遊離のカルボン酸の含有割合が上記範囲であれば、とりわけ優れたゲルタイムおよび貯蔵安定性を有する2成分型硬化吹付材が得られる。
【0100】
なお、触媒は、遊離のカルボン酸とカルボン酸の金属塩とを混合することによって調製できる。また、遊離のカルボン酸とカルボン酸の金属塩との混合物を、市販品として入手することもできる。
【0101】
3-4.硬化剤の調製
硬化剤を調製するには、ポリアミンとポリオールと触媒とを、公知の方法で混合する。
【0102】
ポリアミンおよびポリオールの総量100質量部に対して、ポリアミンの配合割合は、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上である。また、ポリアミンの配合割合は、例えば、40質量部以下である。また、ポリオールの配合割合は、例えば、60質量部以上、好ましくは、80質量部以上である。また、ポリオールの配合割合は、例えば、90質量部以下である。
【0103】
また、ポリアミンおよびポリオールの総量100質量部に対して、触媒の配合割合は、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。また、触媒の配合割合は、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0104】
これにより、硬化剤が得られる。
【0105】
硬化剤の粘度(25℃)は、例えば、1000mPa・s以下、好ましくは、700mPa・s以下、より好ましくは、500mPa・s以下である。また、硬化剤の粘度(25℃)は、例えば、100mPa・s以上である。
【0106】
上記の粘度が、上記上限以下であれば、硬化剤を、容易にスプレー噴射することができる。なお、硬化剤の粘度は、東機産業社製スピンドル型回転粘度計TV-25 L型などにより求めることができる。
【0107】
4.2成分型硬化吹付材の使用方法
2成分型硬化吹付材の使用方法は、2成分型硬化吹付材を準備する第1工程と、2成分型硬化吹付材を、施工面にスプレー塗布する第2工程とを備える。
【0108】
第1工程では、2成分型硬化吹付材を準備する。具体的には、上記した方法によって、主剤および硬化剤のそれぞれを調製する。
【0109】
また、2成分型硬化吹付材は、主剤および硬化剤の混合前に、必要に応じて、適宜保存される。上記の2成分型硬化吹付材は、優れた貯蔵安定性を有しているため、主剤および硬化剤を準備した後、適宜期間保存しても、主剤および硬化剤の濁りおよび沈殿を抑制できる。
【0110】
2成分型硬化吹付材の保存期間は、保存温度および保存湿度にもよるが、常温(25℃)下では、例えば、1週間以上、好ましくは、2週間以上である。また、2成分型硬化吹付材の保存期間は、通常、12ヶ月以下である。
【0111】
第2工程では、2成分型硬化吹付材を、施工面にスプレー塗布する。具体的には、まず、主剤および硬化剤のそれぞれを公知のスプレー装置に送液する。
【0112】
スプレー装置は、例えば、ミキシングチャンバーを有しており、主剤および硬化剤が、ミキシングチャンバー内で所定の混合比(当量比、体積比)で混合される。そして、主剤および硬化剤の混合物が、噴出口から噴出され、施工面に塗布される。また、スタティックミキサーにより、主剤および硬化剤を、混合および塗布することもできる。
【0113】
主剤および硬化剤の混合比は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、主剤に対する硬化剤の体積比が、例えば、0.2倍以上、好ましくは、0.25倍以上である。また、主剤に対する硬化剤の体積比が、例えば、5.0倍以下、好ましくは、4.0倍以下である。とりわけ好ましくは、主剤に対する硬化剤の体積比は、1.0である。
【0114】
また、主剤および硬化剤の混合比は、硬化剤中の活性水素基(水酸基、アミノ基)に対する、主剤中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が所定値となるように調整される。より具体的には、当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、0.6以上、好ましくは、1.0以上である。また、当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、2以下である。また、噴出圧力(液圧力)は、例えば、0.8N/mm以上である。また、噴出圧力(液圧力)は、例えば、1.5N/mm以下である。
【0115】
これにより、主剤および硬化剤の混合物が、施工面にスプレー塗布され、その後、施工面において硬化する。これにより、硬化膜として、ウレタンウレア膜が得られる。
【0116】
硬化における所要時間は、ゲルタイムと称される。ゲルタイムは、例えば、5秒以上、好ましくは、10秒以上である。また、硬化時間は、例えば、20秒以下、好ましくは、18秒以下、より好ましくは、15秒以下である。
【0117】
ゲルタイムが上記下限を上回っていれば、公知のスプレー装置に2成分型硬化吹付材が固着することを抑制できる。また、ゲルタイムが上記下限を上回っていれば、スプレー塗布を数回繰返す場合に、層間剥離を抑制できる。
【0118】
さらに、ゲルタイムが上記上限を下回っていれば、立面に2成分型硬化吹付材をスプレー塗布した場合に、液だれが生じることを抑制できる。
【0119】
すなわち、ゲルタイムが上記範囲内であれば、2成分型硬化吹付材を、平場および立面に対して、連続してスプレー塗布することができる。
【0120】
また、スプレー装置を用いる場合には、主剤および硬化剤を、予め装置内で混合する。そのため、ゲルタイムが短すぎると、装置内に2成分型硬化吹付材が固着する場合がある。一方、この2成分型硬化吹付材は、ゲルタイムが上記範囲であるため、主剤および硬化剤を、予め装置内で混合しても、良好に噴出できる。
【0121】
なお、上記のスプレー塗布する際に、主剤および硬化剤の粘度を低くする観点から、必要により、主剤および硬化剤を、予め加熱できる。加熱温度は、例えば、20℃以上、70℃以下である。
【0122】
また、必要により、上記のスプレー塗布を、数回繰返し、硬化膜の厚みを所定の厚みに調整することもできる。スプレー塗布を繰り返す場合には、1回のスプレー塗布で形成される硬化膜の厚みが、例えば、0.3mm以上0.6mm以下である。
【0123】
また、硬化膜の厚み(合計厚み)は、例えば、0.5mm以上であり、また、例えば、4mm以下である。
【0124】
また、上記の2成分型硬化吹付材を用いて得られる硬化膜は、優れた物性を有する。
【0125】
例えば、硬化膜のショアA硬度(JIS K7312(1996)に準拠)は、例えば、80A以上、好ましくは、87A以上、より好ましくは、89A以上である。また、硬化膜のショアD硬度は、例えば、60D以下である。
【0126】
また、硬化膜の引張強度(JIS A6021(2011)に準拠)は、例えば、6.0MPa以上、好ましくは、10MPa以上である。また、硬化膜の引張強度は、例えば、30MPa以下である。
【0127】
また、硬化膜の引裂強度(JIS A6021(2011)に準拠)は、例えば、30N/mm以上、好ましくは、45N/mm以上、より好ましくは、55N/mm以上である。また、硬化膜の引裂強度は、例えば、95N/mm以下である。
【0128】
また、硬化膜の破断時伸び(JIS A6021(2011)に準拠)は、例えば、200%以上、好ましくは、350%以上、より好ましくは、450%以上である。また、硬化膜の破断時伸びは、例えば、480%以下である。
【0129】
そして、この2成分型硬化吹付材によれば、上記した物性に優れる硬化膜を形成することができる。そのため、2成分型硬化吹付材は、建築材料として、好適に用いられる。建築材料としては、例えば、建材用途の床材、防水材、工業用のライニング材、厚膜保護材および防錆材が挙げられる。
【0130】
5.作用効果
そして、本発明の2成分型硬化吹付材は、主剤と硬化剤とを備える。そして、主剤が、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含み、硬化剤が、ポリオール、ポリアミンおよび触媒を含む。また、硬化剤において、触媒は、カルボン酸の金属塩と遊離のカルボン酸とを併有する。そのため、本発明の2成分型硬化吹付材は、優れたゲルタイムおよび貯蔵安定性を有する。
【実施例
【0131】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0132】
1.ポリイソシアネート組成物
製造例1
撹拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,3-キシリレンジイソシアネート(三井化学社製、m-XDI(以下、m-XDI-1))100質量部と、イソブタノール(IBA)15.8質量部(当量比NCO/OH=5)と、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト(酸化防止剤)0.06質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](酸化防止剤)0.06質量部とを仕込み、75℃で3.5時間、ウレタン化反応させた。これにより、ウレタン化合物を得た。
【0133】
次いで、ウレタン化合物を含む反応液に、アロファネート化触媒としてのXK-628(商品名、楠本化成社製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合31質量%)を0.06質量部添加し、90℃で11時間、アロファネート化反応させ、ウレタン結合のアロファネート結合への変換がほぼ完了したことを確認し(ウレタン基/アロファネート基のIR比率が0.1以下)、オルトトルエンスルホンアミド(反応停止剤)0.10質量部を添加してアロファネート化反応を停止させた。
【0134】
なお、ウレタン基/アロファネート基のIR比は、以下の条件で測定した。すなわち、日本分光社製FT/IR-4100を用いてサンプルを測定し、3430cm-1付近の高さと、ウレタン基ピークと3270cm-1付近のアロファネート基ピークの高さとを、それぞれ算出し、ウレタン基/アロファネート基のIR比を測定した。
【0135】
そして、アロファネート化反応における反応液から、薄膜蒸留装置(真空度:0.05kPa、温度150℃)により、未反応のイソブタノールおよび1,3-キシリレンジイソシアネートを留去(除去)した。
【0136】
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含むポリイソシアネート組成物を得た。ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は16.2質量%であった。
【0137】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した結果、ポリイソシアネート組成物において、アロファネート誘導体の含有量は81質量%であり、ウレトジオン誘導体の含有割合が4質量%であり、イソシアヌレート誘導体の含有量が1.5質量%であり、キシリレンジイソシアネート単量体の含有量が0.4質量%であった。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定条件を以下に示す。
【0138】
<GPC測定>
ポリイソシアネート組成物のサンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における各ピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率を求めた。
【0139】
そして、ポリスチレン換算分子量400~500の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn400-500面積率)を、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の含有割合とした。また、ポリスチレン換算分子量600~880の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn600-880面積率)を、アロファネート3分子体の含有割合とした。そして、これらの合計を、アロファネート誘導体の含有割合とした。
【0140】
また、ポリスチレン換算分子量300~400の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn300-400面積率)を、ウレトジオン誘導体の含有割合とした。さらに、ポリスチレン換算分子量500~600の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn500-600面積率)を、イソシアヌレート誘導体の含有割合とした。
【0141】
なお、GPC測定においては、サンプルを約0.04g採取し、メタノールでメチルウレタン化させた後、過剰のメタノールを除去し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
(1)分析装置 : Alliance(Waters)
(2)ポンプ : Alliance 2695(Waters)
(3)検出器 : 2414型示差屈折検出器(Waters)
(4)溶離液 : Tetrahydrofuran
(5)分離カラム :Plgel GUARD + Plgel 5μmMixed-C×3本(50×7.5mm,300×7.5mm)
メーカー ; Polymer Laboratories
品番 ; PL1110-6500
(6)測定温度 : 40℃
(7)流速 : 1mL/min
(8)サンプル注入量 : 100μL
(9)解析装置 : EMPOWERデータ処理装置(Waters)
・システム補正
(1)標準物質名 : Polystyrene
(2)検量線作成方法 : 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイムと分子量のグラフを作成。
(3)注入量、注入濃度 : 100μL、 1mg/mL
【0142】
2.主剤
調製例1(主剤1、XDIアロファネート)
製造例1のポリイソシアネート組成物837gと、可塑剤(フタル酸ジイソノニル、DINP、新日本理化社製)163gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で30分間攪拌し、主剤1を得た。
【0143】
主剤1のイソシアネート基濃度は13.5%、粘度(25℃)は980mPa・s、液比重は1.14、XDIモノマー含有量は0.3%であった。
【0144】
調製例2(主剤2、XDIアロファネート)
製造例1のポリイソシアネート組成物925gと、可塑剤(DINP)75gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で30分間攪拌し、主剤2を得た。
【0145】
主剤2のイソシアネート基濃度は15.0%、粘度(25℃)は1,350mPa・s、液比重は1.15、XDIモノマー含有量は0.4%であった。
【0146】
調製例3(主剤3、HDIアロファネート)
タケネートD-178NL(HDIアロファネート、三井化学社製)790gと、可塑剤(DINP)210gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で30分間攪拌し、主剤3を得た。
【0147】
主剤3のイソシアネート基濃度は15.0%、粘度(25℃)は1100mPa・s、液比重は1.01、HDIモノマー含有量は0.4%であった。
【0148】
調製例4(主剤4、XDIプレポリマー、モノマー多量)
タケネート500(キシリレンジイソシアネート、XDI、三井化学社製)348gと、アクトコールD-2000(平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール、三井化学社製)489gと、可塑剤(DINP)163gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、90℃で4時間攪拌して反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成した。これにより、主剤4を得た。
【0149】
主剤4のイソシアネート基濃度は13.5%、粘度(25℃)は500mPa・s、液比重は1.14、XDIモノマー含有量は25%であった。
【0150】
調製例5(主剤5、XDIプレポリマー、モノマー少量)
タケネート500(キシリレンジイソシアネート、XDI、三井化学社製)616gと、アクトコールD-400(平均分子量400のポリオキシプロピレンジオール、三井化学社製)301gと、1,4-ブタンジオール(三菱ケミカル社製)83gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、90℃で4時間攪拌して反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成した。これにより、主剤5を得た。
【0151】
主剤5のイソシアネート基濃度は13.5%、粘度(25℃)は180,000mPa・s、液比重は1.10、XDIモノマー含有量は4%であった。
【0152】
調製例6 主剤6(IPDIプレポリマー、モノマー含有)
VESTANAT IPDI(イソホロンジイソシアネート、IPDI、エボニックジャパン社製)445gと、アクトコールD-2000(平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール、三井化学社製)392gと、可塑剤(DINP)163gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、触媒としてオクチル酸第一錫0.1gを添加し、90℃で4時間攪拌して反応させ、主剤6を得た。
【0153】
主剤6のイソシアネート基濃度は13.5%、粘度(25℃)は600mPa・s、液比重は1.05、IPDIモノマー含有量は25%であった。
【0154】
調製例7(主剤7、XDIアロファネート)
可塑剤を添加せず、製造例1のポリイソシアネート組成物を、主剤7とした。
【0155】
主剤7のイソシアネート基濃度は16.2%、粘度(25℃)は2000mPa・s、液比重は1.17、XDIモノマー含有量は0.4%であった。
【0156】
3.硬化剤
準備例1(硬化剤1)
DETDA80(2,4-異性体/2,6-異性体混合比80/20のジエチルトルエンジアミン、ロンザジャパン社製)229.5gと、アクトコールED-56(ポリオキシエチレン含有ポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量2000、MCNS社製)698.3gと、1,4-ブタンジオール7.2gと、イルガノックス1010(安定剤、BASFジャパン社製)5gと、ネオスタンU-600(触媒、オクチル酸ビスマスおよびオクチル酸の混合物、オクチル酸ビスマス58質量%、オクチル酸42質量%、日東化成社製)60gとを、1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤1を得た。硬化剤1の粘度(25℃)は420mPa・s、液比重は1.03であった。
【0157】
準備例2(硬化剤2)
DETDA80 214.2gと、ED-56 706.2gと、1,4-ブタンジオール1.5gと、イルガノックス1010 5gと、ネオスタンU-600 60gとを、1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤2を得た。硬化剤2の粘度(25℃)は380mPa・s、液比重は1.03であった。
【0158】
準備例3(硬化剤3)
DETDA80 225.6gと、ED-56 684.4gと、1,4-ブタンジオール17.8gと、イルガノックス1010 5.5gと、ネオスタンU-600 66.7gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤3を得た。硬化剤3の粘度(25℃)は400mPa・s、液比重は1.03であった。
【0159】
準備例4(硬化剤4)
DETDA80 229.5gと、アクトコールED-56 698.3gと、1,4-ブタンジオール7.2gと、イルガノックス1010 5gと、ネオスタンU-600H(触媒、オクチル酸ビスマスとオクチル酸の混合物、オクチル酸ビスマス93質量%、オクチル酸7質量%、日東化成社製)60gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤4を得た。硬化剤4の粘度(25℃)は440mPa・s、液比重は1.03であった。
【0160】
準備例5(硬化剤5)
DETDA80 254.7gと、ED-56 643.0gと、1,4-ブタンジオール26.7gと、イルガノックス1010 5.8gと、ネオスタンU-600 69.8gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤5を得た。硬化剤5の粘度(25℃)は450mPa・s、液比重は1.03であった。
【0161】
準備例6(硬化剤6)
DETDA80 199.0gと、ED-56 727.5gと、1,4-ブタンジオール9.8gと、イルガノックス1010 4.9gと、ネオスタンU-600 58.8gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤6を得た。硬化剤6の粘度(25℃)は380mPa・s、液比重は1.03であった。
【0162】
準備例7(硬化剤7)
DETDA80 185.7gと、ED-56 740.9gと、1,4-ブタンジオール7.1gと、イルガノックス1010 5.1gと、ネオスタンU-600 61.2gとを1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、40℃で1時間攪拌して硬化剤7を得た。硬化剤7の粘度(25℃)は370mPa・s、液比重は1.03であった。
【0163】
4.2成分型硬化吹付材
実施例1~5および比較例1~4
表1~表2に従って、主剤と硬化剤とを組み合わせて、主剤と硬化剤とを備える2成分型硬化吹付材を調製した。
【0164】
5.評価
(1)スプレー成形
各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材を用いて、スプレー成形を実施した。具体的には、リアクターにプロブラーガンを備える2液高圧スプレーマシン(グラコ社製)に、主剤および硬化剤のそれぞれを送液した。なお、ミキシングチャンバーはNo.1を使用した。そして、主剤および硬化剤の温度を、約70℃にし、液圧力をそれぞれ10.3N/mmとして、主剤および硬化剤をミキシングチャンバー内で混合した。そして、主剤および硬化剤の混合物を、スプレーガンから、常温のポリプロピレン板(厚み約2mm)上にスプレーした。なお、主剤および硬化剤の混合比(当量比、質量比および体積比)は、表1~表2に従って、変更した。
【0165】
(2)臭気性
上記したスプレー条件に基づいて、2成分型硬化吹付材をスプレーした時の臭気性を評価した。具体的には、スプレーブース内でのスプレー噴霧時の雰囲気を官能評価し、臭気性について、以下の基準で評価した。
〇:臭気が気にならなかった。
×:臭気が気になった。
【0166】
(3)ゲルタイム
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、指触でゲルタイムを測定した。
【0167】
(4)液だれ
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材を、垂直に立てたポリプロピレン板(厚み約2mm)上にスプレーした。そして、以下の基準で、液だれの有無を評価した。
○:液だれが確認されなかった。
×:液だれが確認された。
【0168】
(5)硬さ(ショアA)
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、1週間常温で養生し、硬化膜を得た。その後、硬化膜の硬さ(ショアA)を、テクロック社製のShore A型デュロメータGS-719Nを用いて測定した。
【0169】
(6)引張強度、引裂強度および破断時伸び
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、1週間常温で養生し、硬化膜を得た。その後、硬化膜の引張強度、引裂強度および破断時伸びを、島津製作所社製の万能引張試験装置オートグラフAGS-X型を用い、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
【0170】
(7)耐熱性
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、1週間常温で養生し、硬化膜を得た。その後、硬化膜を5cm×5cmに切り出し、これをサンプルとした。次いで、このサンプルを、120±℃に温度調節できるSPH-202型恒温器(エスペック社製)に入れ、120℃で1週間静置した後、目視および指触で表面を確認した。耐熱性について、以下の基準で評価した。
〇:サンプルが融解しなかった。
×:サンプルの表面が融解した。
【0171】
(8)貯蔵安定性
各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材の主剤を、ガラス瓶に100g取り、50℃に2週間静置した後、目視で状態を確認した。貯蔵安定性について、以下の基準で評価した。
○:液中に濁りまたは沈降物が確認された。
○:液中に濁りまたは沈降物が確認されなかった。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】