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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車載電源供給システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/03 20060101AFI20240625BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20240625BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20240625BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60R16/03 S
B60R16/033 C
H02M3/00 Z
H02J7/00 303C
H02J7/00 302C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021123529
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023019063
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小湊 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】奥田 定治
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/136380(WO,A1)
【文献】特開2007-307931(JP,A)
【文献】特表2004-518079(JP,A)
【文献】特開2015-009792(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076303(WO,A1)
【文献】特開2008-029058(JP,A)
【文献】特表2012-515116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0000785(US,A1)
【文献】特開2016-173957(JP,A)
【文献】特開2018-064388(JP,A)
【文献】特開2018-148733(JP,A)
【文献】特開2019-193517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00 - 17/02
H02M 3/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリと、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部と、
比較的低圧の第1電圧の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ラインと、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部と、
キャパシタと、
前記キャパシタと前記第2電源ラインとの間を開閉するスイッチ部と、
前記スイッチ部を制御する制御部と、
を備え、前記第1電源ラインに前記メインバッテリ、前記上位電源部、及び前記電圧変換部が接続され、前記第2電源ラインに前記キャパシタ及び前記電圧変換部が接続され
前記制御部は、車両のイグニッションオフへの切り替わりに連動して、前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの放電を実施し、イグニッションオンの状態で少なくとも大電力負荷への電源電力供給が必要な時に、前記スイッチ部を制御して前記キャパシタが蓄積している電荷を放電させる、
車載電源供給システム。
【請求項2】
車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリと、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部と、
比較的低圧の第1電圧の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ラインと、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部と、
キャパシタと、
前記キャパシタと前記第1電源ラインとの間を開閉するスイッチ部と、
前記スイッチ部を制御する制御部と、
を備え、前記第1電源ラインに前記上位電源部、前記電圧変換部、及び前記キャパシタが接続され、前記第2電源ラインに前記メインバッテリ及び前記電圧変換部が接続され
前記制御部は、車両のイグニッションオフ中に所定の条件を満たすと前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの充電を実施し、イグニッションオン中に前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの放電を実施する、
車載電源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電源供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般的な車両の補機系統においては、電圧が12[V]の電源電力を供給可能なオルタネータ(発電機)や車載バッテリを含む電源から、車両各部に配索されているワイヤハーネスを経由して、様々な電装品に対してそれらが必要とする電源電力を供給している。
【0003】
また、例えば特許文献1の電源冗長システムにおいては、12[V]及び48[V]の2種類の電圧を扱う複数の電源を備えている。また、電源に備わっているDC/DCコンバータを利用して電源電圧を変換できるので、一方の電源システムで地絡あるいは短絡が発生した場合にも負荷に電力を供給可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-193517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両上の補機系統には様々な種類の多数の電装品が備わっている。これらの電装品の中には、消費する電流が非常に大きい大電力負荷と、消費する電流が小さい小電力負荷とが混在している。車両上の大電力負荷としては、例えば電動スタビライザー装置や、電動パワーステアリング装置などがある。
【0006】
また、小電力負荷が必要とする電源電圧は12[V]が一般的であるが、大電力負荷が必要とする電源電圧は12[V]よりも大きい場合が多い。したがって、12[V]の電源だけを有する一般的な車両においては、大電力負荷の機器毎に搭載したDC/DCコンバータで12[V]の電源電圧を昇圧して必要な48[V]等の電源電圧を得ている。また、各大電力負荷に流れる大電流の影響で生じる電力損失の増大を避けるために、ワイヤハーネスの電源線には断面積が大きい太い電線を使用する必要がある。したがって、大電力負荷が必要とする電源が車両全体のコストアップの要因になっている。
【0007】
一方、特許文献1のように2種類の電源系統を有する車両の場合には、定常時はそれぞれの電装品が必要とする電源電圧に合わせた電圧を所定の電源系統から供給することができる。すなわち、12[V]の電源電圧を必要とする電装品に対しては12[V]の車載バッテリから電力を供給し、48[V]の電源電圧を必要とする電装品に対しては48[V]の車載バッテリから電力を供給することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1のようなシステムの場合は補機系統のために車載バッテリなどの電源部を12[V]、48[V]の電圧毎にそれぞれ搭載する必要があるので車両全体のコストが大幅に上昇するのは避けられない。
【0009】
しかし、電圧が異なる2種類の電源系統が存在する場合に、搭載する車載バッテリを1つだけにすると、車載バッテリが直接接続されていない電源系統において電源の電力供給能力が不足することが予想される。そして、大電力負荷を使用する場合に電源電圧に大きな変動が生じ、車載機器の動作が不安定になることが懸念される。
【0010】
また、大電力負荷に電源電力を供給する際に大きな電力損失が生じるのを避けるためには、ワイヤハーネスの電源線を太い電線で構成する必要がある。また、大電力負荷に流れる大電流の影響で電源電圧に比較的大きい電圧変動が生じる可能性があるので、12[V]系の負荷側回路に電源電圧変動に対する余裕を持たせる必要があり、これが電力損失の増大に繋がる。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両全体のコストアップを抑制すると共に、ワイヤハーネスにおける電源線の細径化および電力損失の低減が可能な車載電源供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリと、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部と、
比較的低圧の第1電圧の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ラインと、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部と、
キャパシタと、
前記キャパシタと前記第2電源ラインとの間を開閉するスイッチ部と、
前記スイッチ部を制御する制御部と、
を備え、前記第1電源ラインに前記メインバッテリ、前記上位電源部、及び前記電圧変換部が接続され、前記第2電源ラインに前記キャパシタ及び前記電圧変換部が接続され
前記制御部は、車両のイグニッションオフへの切り替わりに連動して、前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの放電を実施し、イグニッションオンの状態で少なくとも大電力負荷への電源電力供給が必要な時に、前記スイッチ部を制御して前記キャパシタが蓄積している電荷を放電させる、
車載電源供給システム。
【0013】
車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリと、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部と、
比較的低圧の第1電圧の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ラインと、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ラインと、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部と、
キャパシタと、
前記キャパシタと前記第1電源ラインとの間を開閉するスイッチ部と、
前記スイッチ部を制御する制御部と、
を備え、前記第1電源ラインに前記上位電源部、前記電圧変換部、及び前記キャパシタが接続され、前記第2電源ラインに前記メインバッテリ及び前記電圧変換部が接続され
前記制御部は、車両のイグニッションオフ中に所定の条件を満たすと前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの充電を実施し、イグニッションオン中に前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの放電を実施する、
車載電源供給システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車載電源供給システムによれば、車両全体のコストアップを抑制可能であり、ワイヤハーネスにおける電源線の細径化および電力損失の低減も可能である。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態-1における車載電源供給システムの主要部を示すブロック図である。
図2図2は、図1の車載電源供給システムにおける主要な制御を示すフローチャートである。
図3図3は、車両各部に設置した各構成要素の接続例を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態-2における車載電源供給システムの主要部を示すブロック図である。
図5図5は、図4の車載電源供給システムにおける主要な制御を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態-3における車載電源供給システムの主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態-1における車載電源供給システム10Aの主要部を示すブロック図である。
【0020】
図1に示した車載電源供給システム10Aは、例えばハイブリッドカー、電気自動車、あるいはエンジンのみを駆動源とする一般的な車両に搭載され、車両上の補機系統の様々な電装品に対して電源電力を供給するために利用できる。
【0021】
図1の車載電源供給システム10Aは、車両駆動系に属さない補機系の各種負荷に対して電源電力を供給可能な補機系バッテリ13を備えている。この補機系バッテリ13は、この車両の補機系のメインバッテリであり、充放電が可能な二次電池である。補機系バッテリ13の正極側はスイッチ回路SWを介して第1電源ライン51と接続されている。補機系バッテリ13の負極側は車両のグランド(アース)19と接続されている。
【0022】
第1電源ライン51の上流側は、電源制御ユニットPCUの出力と接続されている。電源制御ユニットPCUの入力側は、駆動系高圧電源線12aと接続されている。この駆動系高圧電源線12aは、車両を駆動する電気モータに大電力を供給できるように、数百[V]程度の直流高電圧の電源電力を出力できる。電源制御ユニットPCUは、DC/DCコンバータ12を内蔵している。このDC/DCコンバータ12は、駆動系高圧電源線12aの高電圧を降圧して電圧が12[V]の直流電源電力を生成することができる。
【0023】
なお、駆動系高圧電源線12aが存在しない一般的な車両の場合には、DC/DCコンバータ12の代わりにオルタネータ(ALT)が第1電源ライン51の上流側に接続される。
【0024】
電源制御ユニットPCUが出力する電源電力は、補機系バッテリ13を充電するため、及び車両上の各負荷が必要とする電源電力を供給するために利用できる。但し、車両のイグニッションがオフの時には電源制御ユニットPCUは第1電源ライン51側に電源電力を供給しない。
【0025】
図1に示すように、電源制御ユニットPCUの出力と、補機系バッテリ13、小電力負荷18、及びゾーンECU15の入力15aが第1電源ライン51に接続されている。
【0026】
小電力負荷18は、補機系統に属している各種電装品の中で、電力消費が比較的少ない電装品に相当する。例えば、各種ECU、各種照明機器、オーディオ装置、ナビゲーション装置などの電装品は小電力負荷18として扱うことができる。
【0027】
ゾーンECU15は、車両上の特定のゾーンにおいて負荷に対する電源供給を管理するための装置であって、DC/DCコンバータ16及び内部電源回路15cを内蔵している。なお、ゾーンECU15が管理するゾーンについては、車両上の空間における特定の領域を表す場合もあるし、機能上のグループ分けにおける特定グループを表す場合もある。したがって、通常は複数の互いに独立したゾーンECU15が車両上に設置される。
【0028】
ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16は、第1電源ライン51側から供給される電圧が12[V]の直流電源電力に基づいて、電圧が48[V]に昇圧された直流電源電力を生成できる。DC/DCコンバータ16が生成した48[V]の直流電源電力がゾーンECU15の出力15bから第2電源ライン52に供給される。
【0029】
図1に示すように、ゾーンECU15の出力側の第2電源ライン52に、キャパシタ20及び大電力負荷14が接続されている。また、第2電源ライン52とキャパシタ20との間にスイッチ回路SW1が配置されている。
【0030】
大電力負荷14は、補機系統に属している各種電装品の中で、非常に大きな電力を消費する電装品である。例えば、車両に搭載される電動スタビライザ装置や、電動パワーステアリング装置は、それらが動作する際に非常に大きい電源電力を消費するので、大電力負荷14として扱う必要がある。
【0031】
一般的な車両の場合には、大電力負荷であっても標準的な電源線を経由して電圧が12[V]の電源電力が供給される場合が多く、大電力負荷に大きな電流が流れる。そのため、大電力負荷に電力を供給する電源線を非常に太くする必要がある。
【0032】
一方、図1に示した車載電源供給システム10Aにおいては、第2電源ライン52から電圧が48[V]の電源電力を大電力負荷14に供給するので大電力負荷14に流れる電流を大幅に減らすことができる。したがって、第2電源ライン52の電源線を細径化できる。また、大電力負荷14の内部に昇圧回路を設置する必要もない。
【0033】
しかし、大電力負荷14を使用する場合にはそれが一時的に非常に大きい電源電力を消費するので、車両のイグニッションがオンの場合であっても、ゾーンECU15の出力から大電力負荷14に供給される電源電力が不足する場合がある。この電源電力の不足を補うために、キャパシタ20が車載電源供給システム10Aに備わっている。
【0034】
すなわち、事前にキャパシタ20に電荷を蓄積しておき、大電力負荷14が動作する時にキャパシタ20が蓄積している電荷を放出することで、大電力負荷14が必要とする電源電力が不足するのを回避可能になる。また、大電力負荷14の通電に伴う第1電源ライン51側の電源電圧変動も抑制できる。
【0035】
このキャパシタ20は、補機系バッテリ13などの蓄電池と比べると、大電流を比較的短い時間だけ供給する用途で使用する場合に適した特性を有している。一方、キャパシタ20の内部に電荷を常時溜めた状態にしておくと、特性の劣化が生じやすい。
【0036】
そこで、キャパシタ20が劣化するのを防止するために、図1の車載電源供給システム10Aにおいては上位ECU30Aが状況に応じてスイッチ回路SW1の開閉制御を行い、キャパシタ20における電荷の充放電を適切なタイミングで実施する。
【0037】
図2は、図1の車載電源供給システム10Aにおける主要な制御を示すフローチャートである。すなわち、図1中の上位ECU30Aが図2の制御を実施することで、車両の状況に応じてスイッチ回路SW1を制御し、キャパシタ20の充放電を適切なタイミングで行うことができる。図2の制御について以下に説明する。
【0038】
車両のイグニッション(IG)がオンの場合には、上位ECU30AはS11からS12の処理に進む。そして、キャパシタ20が未充電であれば、スイッチ回路SW1を閉じてキャパシタ20の充電を実施する。
【0039】
キャパシタ20を充電する場合には、補機系バッテリ13から供給される電源電力に基づき、ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16が48[V]の電源電力を生成する。この電源電力がスイッチ回路SW1を介してキャパシタ20に供給される。
【0040】
キャパシタ20の充電が完了すると、上位ECU30Aはスイッチ回路SW1を開きキャパシタ20の回路接続を遮断する。なお、キャパシタ20の充電が完了したか否かは、例えば第2電源ライン52の電圧、又は電流を監視するか、あるいは充電時間を管理することで把握できる。
【0041】
また、上位ECU30Aは大電力負荷14の通電開始を指示する所定の信号の状態をS15で監視し、大電力負荷14が通電開始する時にS16の処理に進む。そして、上位ECU30Aがスイッチ回路SW1を閉じてキャパシタ20の回路を第2電源ライン52に接続する。これにより、キャパシタ20に蓄積されている電荷が放電され、第2電源ライン52を介して大電力負荷14に電源電力が供給される。また、ゾーンECU15から第2電源ライン52に出力される電源電力も同時に大電力負荷14に供給される。
【0042】
S16の実行によりキャパシタ20の蓄積電荷が空になるので、大電力負荷14の通電が終了した後で、上位ECU30Aは次のS17の処理に進み、キャパシタ20を充電する。実際には、スイッチ回路SW1を閉じたままに維持することで、ゾーンECU15が出力する電源電力によりキャパシタ20が充電される。
【0043】
キャパシタ20の充電が終了すると、上位ECU30Aはスイッチ回路SW1を開きキャパシタ20の回路接続を遮断する(S18)。
【0044】
一方、車両を駐車する場合のように、車両のイグニッションがオンからオフに変化した場合には、上位ECU30AはS11からS19を通り、S20の処理に進む。そして、上位ECU30Aはスイッチ回路SW1を閉じてキャパシタ20を第2電源ライン52に接続する。
【0045】
イグニッションがオフの場合は、車両上の様々な機器はほとんど停止状態になるが、一部の機器の回路は暗電流として僅かな電源電力を消費する。S20でスイッチ回路SW1を閉じている状態では、キャパシタ20が蓄積している電荷が、暗電流として第2電源ライン52に放出される。
【0046】
したがって、キャパシタ20が蓄積している電荷は徐々に減少し、S20の処理を開始してからしばらくの時間を経過すると0になる。キャパシタ20の蓄積電荷が0、すなわち放電終了状態になると、上位ECU30AはS21からS22の処理に進み、スイッチ回路SWを開く。つまり、キャパシタ20の回路を第2電源ライン52から遮断する。
【0047】
つまり、図2に示した制御を実施することで、大電力負荷14に通電する時には、キャパシタ20が蓄積している電荷を効率よく利用でき、大電力負荷14が消費する電源電力の不足や第2電源ライン52における電圧変動を防止できる。
【0048】
更に、車両が駐車する場合のようにイグニッションがオフの時にはキャパシタ20が蓄積した電荷を自動的に放電させるので、キャパシタ20の特性が劣化するのを避けることができる。
【0049】
図3は、車両各部に設置した各構成要素の接続例を示すブロック図である。すなわち、本発明の実施形態における車載電源供給システム10Aの具体的な構成例を図3に示す。なお、図3は車両を上方から視た状態における主要な構成要素の配置例の概要を表している。
【0050】
図3に示した車両の車体50は、エンジンルーム50a、車室インパネ領域50b、及びトランクルーム50cを有している。エンジンルーム50aの内部には、ウォータポンプ31、オイルポンプ32、クーリングファン33、エアコン(A/C)用コンプレッサ34、ブレーキのアクチュエータ(ACT)35、触媒ヒータ37、デアイサ38、電動スタビライザ39、EPS(電動パワーステアリング)アクチュエータ40、エアコン用ブロア41などの補機系の各種電装品が装備されている。
【0051】
また、車室内にはPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ42、シートヒータ43、パワーシート44などの補機系の各種電装品が装備されている。また、トランクルーム50cの内部にはEPB(電動パワーアシストブレーキ)アクチュエータ45、電動スタビライザ46、デフォッガ47などの補機系の各種電装品が装備されている。
【0052】
図3に示した車載電源供給システム10Aの例では、エンジンルーム50aに割り当てられたゾーンを管理するためにゾーンECU15Aがエンジンルーム50aに設置されている。また、車室インパネ領域50bの左側ゾーン及び右側ゾーンを管理するために、ゾーンECU15B及び15Dがそれぞれ車室インパネ領域50bの左右の部位に設置されている。また、トランクルーム50c内に割り当てられたゾーンを管理するために、ゾーンECU15Cがトランクルーム50cに設置されている。
【0053】
また、ゾーンECU15A、15Bの間は電源幹線11Cで互いに接続され、ゾーンECU15B、15Cの間は電源幹線11Dで互いに接続され、ゾーンECU15B、15Dの間は電源幹線11Eで互いに接続されている。
【0054】
また、DC/DCコンバータ12及び補機系バッテリ13が、それぞれ電源幹線11A及び11Bを介してゾーンECU15Aと接続されている。DC/DCコンバータ12の入力側は高圧バッテリ21の出力と接続されている。高圧バッテリ21は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池により構成され、例えば数百[V]程度の高電圧を蓄電し、蓄電した電力を車両走行用の電気モータなどに供給することができる。
【0055】
DC/DCコンバータ12は、高圧バッテリ21が出力する数百[V]程度の直流高電圧の電源電力を、12[V]の直流電源電力に変換し、図1中の第1電源ライン51に相当する電源幹線11Aに供給する。補機系バッテリ13は、DC/DCコンバータ12から供給される12[V]の直流電源電力により充電し、この充電により蓄積した12[V]の直流電源電力を電源幹線11Bに出力できる。
【0056】
電源幹線11A、11B、及び11CはゾーンECU15Aの内部で互いに電気的に接続されている。また、電源幹線11C及び11DはゾーンECU15Bの内部で互いに電気的に接続されている。したがって、DC/DCコンバータ12又は補機系バッテリ13が出力する12[V]の直流電源電力が電源幹線11C及び11Dに供給される。各電源幹線11C及び11Dは、少なくとも12[V]の直流電源電力を配電するための電源線を含んでいる。
【0057】
また、各ゾーンECU15A、15B、及び15Cは、それぞれDC/DCコンバータ16を内蔵している。また、ゾーンECU15Dが管理するゾーンには大電力を消費する負荷が存在しないので、ゾーンECU15DはDC/DCコンバータ16を搭載していない。また、ゾーンECU15B、15Dの間を接続する電源幹線11Eは、12[V]の直流電源電力を配電するための電源線を含んでいる。
【0058】
図3に示すように、ゾーンECU15Aの下流側に接続された電源枝線17Aは、48V電源線22及び12V電源線23を備えている。48V電源線22は、ゾーンECU15A内のDC/DCコンバータ16から出力される電源電力(48[V])を出力するための電源線である。DC/DCコンバータ16は12[V]の電源電力の昇圧変換により48[V]の電源電力を生成する。12V電源線23は、電源幹線11A又は11Bから供給される12[V]の直流電源電力を分配又は分岐した電源電力(12[V])を出力するための電源線である。
【0059】
図3に示した例では、48V電源線22にウォータポンプ31、オイルポンプ32、クーリングファン33、エアコン用コンプレッサ34、ブレーキアクチュエータ35、触媒ヒータ37、デアイサ38、電動スタビライザ39、EPSアクチュエータ40、及びエアコン用ブロア41が接続されている。
【0060】
特に、電動スタビライザ39及びEPSアクチュエータ40は消費電力が非常に大きいので、48[V]の電圧が供給される48V電源線22に接続することは、48V電源線22や幹線等の電線を細径化する目的のために効果的である。12V電源線23には、12[V]の電源電圧を必要とする様々な小電力負荷を接続することができる。
【0061】
一方、車室内に設置されているPTCヒータ42、シートヒータ43、及びパワーシート44は、電源枝線17Bを介してゾーンECU15Bの下流側に接続されている。電源枝線17Bは、電源幹線11Cに供給される12[V]の電源電力をゾーンECU15B内で分配又は分岐した12[V]の電力を配電する電源線を含んでいる。
【0062】
また、電源幹線11Eに含まれる12[V]の電源線に対しては、ゾーンECU15B内で分岐した12[V]の電源電力が供給される。ゾーンECU15Dの下流側に接続されている電源枝線17Dには、電源幹線11Eの12[V]の電源線の電力から分配又は分岐した12[V]の電源電力が供給される。
【0063】
一方、トランクルーム50cに設置されているゾーンECU15Cの電源枝線17Cは、48V電源線24、及び12V電源線25を備えている。48V電源線24は、電源幹線11Dから供給される12[V]の電源電力をゾーンECU15C内のDC/DCコンバータ16で昇圧して得られる48[V]の電源電力を出力できる。また、12V電源線25は電源幹線11Dから供給される12[V]の電源電力をゾーンECU15C内部で分配又は分岐して得られる12[V]の電源電力を出力できる。
【0064】
トランクルーム50cに設置されているEPBアクチュエータ45、電動スタビライザ46、及びデフォッガ47は、48V電源線24にそれぞれ接続されている。特に、電動スタビライザ46は消費電力が非常に大きいので、48[V]の電圧が供給される48V電源線24に接続することは、48V電源線24や幹線等の電線を細径化する目的のために効果的である。12V電源線25には、12[V]の電源電圧を必要とする様々な小電力負荷を接続することができる。
【0065】
図3の車載電源供給システム10Aにおいて、ゾーンECU15Dが管理している車室インパネ右側のゾーンについては大電力負荷が少ないので、電源幹線11Eに12[V]の電源線を含め、DC/DCコンバータ16を含まないゾーンECU15Dを設置してある。なお、大電力負荷もゾーンECU15Dの下流側に接続できるように、電源幹線11Eの中には48[V]の電源線も含めることが望ましい。
【0066】
<第2実施形態>
図4は、本発明の実施形態-2における車載電源供給システム10Bの主要部を示すブロック図である。図4に示した車載電源供給システム10Bは図1の車載電源供給システム10Aの変形例である。図4において、車載電源供給システム10Aと同一の構成要素は同一の符号を付けて示してある。
【0067】
図4の車載電源供給システム10Bは、車両駆動系に属さない補機系の各種負荷に対して電源電力を供給可能な補機系バッテリ13Bを備えている。この補機系バッテリ13Bは、48[V]の電圧に対応した補機系のメインバッテリであり、充放電が可能な二次電池である。補機系バッテリ13Bは、例えばリチウムイオン電池として構成される。補機系バッテリ13Bの正極側はスイッチ回路SW0を介して第2電源ライン52と接続されている。補機系バッテリ13Bの負極側は車両のグランド19と接続されている。
【0068】
一方、12[V]の電圧を扱う第1電源ライン51の上流側は、電源制御ユニットPCUの出力と接続されている。電源制御ユニットPCUの入力側は、駆動系高圧電源線12aと接続されている。この駆動系高圧電源線12aは、車両を駆動する電気モータに大電力を供給できるように、数百[V]程度の直流高電圧の電源電力を出力できる。電源制御ユニットPCUは、DC/DCコンバータ12を内蔵している。このDC/DCコンバータ12は、駆動系高圧電源線12aの高電圧を降圧して電圧が12[V]の直流電源電力を生成することができる。
【0069】
なお、駆動系高圧電源線12aが存在しない一般的な車両の場合には、DC/DCコンバータ12の代わりにオルタネータが第1電源ライン51の上流側に接続される。
【0070】
電源制御ユニットPCUが出力する電源電力は、車載電源供給システム10B及びその下流側に接続された各負荷が必要とする電源電力を供給するために利用できる。但し、車両のイグニッションがオフの時には電源制御ユニットPCUは第1電源ライン51側に電源電力を供給しない。
【0071】
図4に示すように、電源制御ユニットPCUの出力と、キャパシタ20Aの回路と、小電力負荷18と、ゾーンECU15の入力15aとが第1電源ライン51に接続されている。
【0072】
キャパシタ20Aは、一端(高電位側)がスイッチ回路SW2を介して第1電源ライン51と接続され、他端(低電位側)がグランド19と接続されている。また、キャパシタ20Aと並列にスイッチ回路SW3が接続されている。スイッチ回路SW3は、1つのスイッチと直列に接続された抵抗器とで構成されている。
【0073】
スイッチ回路SW2及びSW3は、それぞれ上位ECU30Bが出力する制御信号により個別に開閉することができる。スイッチ回路SW2は、キャパシタ20Aに電荷を蓄積するための充電動作を行う場合、並びにキャパシタ20Aが蓄積した電荷を負荷側に供給する場合に閉じ、それ以外の場合に開くように制御される。また、キャパシタ20Aに蓄積されている電荷が不要になった場合に、その電荷を放電させるためにスイッチ回路SW3を閉じるように制御される。
【0074】
小電力負荷18は、補機系統に属している各種電装品の中で、電力消費が比較的少ない電装品に相当する。例えば、各種ECU、各種照明機器、オーディオ装置、ナビゲーション装置などの電装品は小電力負荷18として扱うことができる。
【0075】
ゾーンECU15は、DC/DCコンバータ16及び内部電源回路15cを内蔵している。ゾーンECU15は、入力15aが第1電源ライン51と接続され、出力15bが第2電源ライン52と接続されている。
【0076】
ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16は、第1電源ライン51側から供給される電圧が12[V]の直流電源電力に基づいて、電圧が48[V]に昇圧された直流電源電力を生成できる。DC/DCコンバータ16が生成した48[V]の直流電源電力がゾーンECU15の出力15bから第2電源ライン52に供給される。
【0077】
また、図4の車載電源供給システム10Bにおいては、ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16は、上記と逆方向の電圧変換動作もできる。すなわち、DC/DCコンバータ16は第2電源ライン52側から供給される電圧が48[V]の直流電源電力に基づいて、電圧が12[V]に降圧された直流電源電力を生成できる。その場合、DC/DCコンバータ16が生成した12[V]の直流電源電力はゾーンECU15の入力15aから第1電源ライン51に供給される。
【0078】
図4に示すように、ゾーンECU15の出力15bと、大電力負荷14と、補機系バッテリ13Bとが第2電源ライン52に接続されている。また、補機系バッテリ13Bと第2電源ライン52との間にスイッチ回路SW0が接続されている。
大電力負荷14は、補機系統に属している各種電装品の中で、非常に大きな電力を消費する電装品である。
【0079】
図4に示した車載電源供給システム10Bにおいては、第2電源ライン52から電圧が48[V]の電源電力を大電力負荷14に供給するので大電力負荷14に流れる電流を大幅に減らすことができる。したがって、第2電源ライン52の電源線を細径化できる。また、大電力負荷14の内部に昇圧回路を設置する必要もない。
【0080】
補機系バッテリ13Bが蓄積している48[V]の電源電力は、第2電源ライン52を介して大電力負荷14に供給できる。また、補機系バッテリ13Bが蓄積している電源電力をゾーンECU15内で12[V]に降圧して、第1電源ライン51から小電力負荷18に供給することもできる。更に、補機系バッテリ13Bが蓄積している電源電力をゾーンECU15内で12[V]に降圧して、第1電源ライン51からキャパシタ20Aに供給して充電することもできる。
【0081】
一方、車両のイグニッションがオンの時には、電源制御ユニットPCUが出力する電源電力を第1電源ライン51を介してゾーンECU15に供給できる。また、ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16が昇圧して生成した48[V]の電源電力で補機系バッテリ13Bを充電することもできるし、大電力負荷14に不足する電力を供給することもできる。
【0082】
一方、車両のイグニッションがオフの時には、電源制御ユニットPCUが電源電力を出力しないので、補機系バッテリ13Bが蓄積している電源電力を利用する。また、キャパシタ20Aが電荷を蓄積している場合には、その電力も利用できる。
【0083】
但し、イグニッションがオフの時には、様々な負荷のうち一部の回路が必要に応じて僅かな電源電力を暗電流として消費するだけなので、必要な消費電力は非常に小さい。しかし、補機系バッテリ13Bの電源電力を第1電源ライン51側に供給するためには、DC/DCコンバータ16を使用する必要があり、DC/DCコンバータ16が常時動作する場合にはDC/DCコンバータ16の内部で比較的大きな電力損失が常時発生することが予想される。
【0084】
しかし、本実施形態ではイグニッションがオフの時にキャパシタ20Aが蓄積した電荷を利用することができる。これにより、DC/DCコンバータ16を常時動作させる必要がなくなり、電力損失の増大を抑制できる。また、キャパシタ20Aが蓄積する電荷については、イグニッションがオフの時に補機系バッテリ13Bの電力を利用して間欠的に充電する。これにより、必要な時にキャパシタ20Aから小電力負荷18等に対して電源電力(暗電流)を供給できる。つまり、イグニッションオフ時のDC/DCコンバータ16の動作を一時的な動作だけに制限し、電力損失の増大を抑制できる。
【0085】
ところで、キャパシタ20Aは、補機系バッテリ13Bなどの蓄電池と比べると、大電流を比較的短い時間だけ供給する用途で使用する場合に適した特性を有している。一方、キャパシタ20Aの内部に電荷を常時溜めた状態にしておくと、特性の劣化が短期間で進行しやすい。
【0086】
そこで、キャパシタ20Aが劣化するのを防止するために、図4の車載電源供給システム10Bにおいては上位ECU30Bが状況に応じてスイッチ回路SW2、SW3の開閉制御を行い、キャパシタ20Aにおける電荷の充放電を適切なタイミングで実施する。例えば、イグニッションがオンの時にはスイッチ回路SW3を閉じてキャパシタ20Aが蓄積した電荷を放出する。
【0087】
図5は、図4の車載電源供給システム10Bにおける主要な制御を示すフローチャートである。すなわち、図4中の上位ECU30Bが図5の制御を実施することで、キャパシタ20Aを適切な状態に維持する。図5の制御について以下に説明する。
【0088】
上位ECU30Bは、車両のイグニッション(IG)のオンオフをS31で識別し、イグニッションがオフの時はS31からS32に進み、イグニッションがオンの時はS31からS34に進む。
【0089】
本実施形態では、イグニッションがオフの時には事前に定めた一定の時間間隔で、「間欠充電」としてキャパシタ20Aの充電処理を実行する。すなわち、間欠充電のタイミングになる毎に上位ECU30BはS32からS33の処理に進む。そして、スイッチ回路SW2を閉じて第1電源ライン51からキャパシタ20Aに電流を流し、キャパシタ20Aを充電する(S33)。この時、スイッチ回路SW3は開いた状態にしておく。
【0090】
また、キャパシタ20Aを充電する際には、DC/DCコンバータ16を一時的に動作させて、補機系バッテリ13Bから供給される48[V]の電源電力をDC/DCコンバータ16内で12[V]に降圧して第1電源ライン51に供給する。
【0091】
なお、暗電流の供給を必要とする負荷が第1電源ライン51に接続されている場合には、イグニッションがオフの時に必要に応じてスイッチ回路SW2を閉じ、キャパシタ20Aが蓄積した電荷を第1電源ライン51に向けて放出し、暗電流を負荷に供給する。
【0092】
一方、イグニッションがオンの時には、上位ECU30Bは、スイッチ回路SW2を開き、スイッチ回路SW3を閉じる(S34)。これにより、キャパシタ20Aに蓄積されていた電荷はスイッチ回路SW3内の抵抗器を通って少しずつ放電する。そして、時間の経過に伴ってキャパシタ20Aの蓄積電荷量は0になる。これにより、キャパシタ20Aにおける特性の劣化を防止できる。
【0093】
<第3実施形態>
図6は、本発明の実施形態-3における車載電源供給システム10Cの主要部を示すブロック図である。図6に示した車載電源供給システム10Cは図4の車載電源供給システム10Bの変形例である。図6において、車載電源供給システム10Bと同一の構成要素は同一の符号を付けて示してある。
【0094】
図6の車載電源供給システム10Cは、車両駆動系に属さない補機系の各種負荷に対して電源電力を供給可能な補機系バッテリ13Bを備えている。この補機系バッテリ13Bは、48[V]の電圧に対応した補機系のメインバッテリであり、充放電が可能な二次電池である。補機系バッテリ13Bは、例えばリチウムイオン電池として構成される。補機系バッテリ13Bの正極側はスイッチ回路SW0を介して第2電源ライン52と接続されている。補機系バッテリ13Bの負極側は車両のグランド19と接続されている。
【0095】
一方、12[V]の電圧を扱う第1電源ライン51の上流側は、電源制御ユニットPCUの出力と接続されている。電源制御ユニットPCUの入力側は、駆動系高圧電源線12aと接続されている。この駆動系高圧電源線12aは、車両を駆動する電気モータに大電力を供給できるように、数百[V]程度の直流高電圧の電源電力を出力できる。電源制御ユニットPCUは、DC/DCコンバータ12を内蔵している。このDC/DCコンバータ12は、駆動系高圧電源線12aの高電圧を降圧して電圧が12[V]の直流電源電力を生成することができる。
【0096】
なお、駆動系高圧電源線12aが存在しない一般的な車両の場合には、DC/DCコンバータ12の代わりにオルタネータが第1電源ライン51の上流側に接続される。
電源制御ユニットPCUが出力する電源電力は、車載電源供給システム10C及びその下流側に接続された各負荷が必要とする電源電力を供給するために利用できる。但し、車両のイグニッションがオフの時には電源制御ユニットPCUは第1電源ライン51側に電源電力を供給しない。
【0097】
図6に示すように、電源制御ユニットPCUの出力と、小電力負荷18と、ゾーンECU15の入力15aとが第1電源ライン51に接続されている。
【0098】
小電力負荷18は、補機系統に属している各種電装品の中で、電力消費が比較的少ない電装品に相当する。例えば、各種ECU、各種照明機器、オーディオ装置、ナビゲーション装置などの電装品は小電力負荷18として扱うことができる。
【0099】
ゾーンECU15は、入力15aが第1電源ライン51と接続され、出力15bが第2電源ライン52と接続されている。また、ゾーンECU15は、DC/DCコンバータ16及び内部電源回路15cを内蔵している。また、車載電源供給システム10Cの内部電源回路15cは暗電流用レギュレータ15dを備えている。
【0100】
暗電流用レギュレータ15dの入力側はスイッチ回路SW4を介して第2電源ライン52と接続され、暗電流用レギュレータ15dの出力側はダイオードD1を介して第1電源ライン51と接続されている。ダイオードD1は電流の逆流を防止する。また、スイッチ回路SW4を制御するために上位ECU30Cが備わっている。
【0101】
ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16は、第1電源ライン51側から供給される電圧が12[V]の直流電源電力に基づいて、電圧が48[V]に昇圧された直流電源電力を生成できる。DC/DCコンバータ16が生成した48[V]の直流電源電力がゾーンECU15の出力15bから第2電源ライン52に供給される。
【0102】
また、図6の車載電源供給システム10Cにおいては、ゾーンECU15内の暗電流用レギュレータ15dが、第2電源ライン52側から供給される電圧が48[V]の直流電源電力に基づいて、電圧が12[V]に降圧された直流電源電力を生成できる。また、暗電流用レギュレータ15dが生成した12[V]の直流電源電力はダイオードD1を通り、ゾーンECU15の入力15aから第1電源ライン51に供給される。
【0103】
なお、暗電流用レギュレータ15dは生成可能な電源電力の容量が他の電源回路と比べて非常に小さい。したがって、暗電流のように非常に小さい電源電力を必要とする負荷に対してのみ12[V]の電源電力を供給できる。その代わり、暗電流用レギュレータ15dを使用する場合に発生する電力損失も他の回路と比べて非常に小さい。
【0104】
具体的には、DC/DCコンバータ16を用いて第2電源ライン52側の48[V]の電圧を12[V]に降圧して第1電源ライン51側に供給すると、DC/DCコンバータ16の内部で比較的大きい電力損失の発生が見込まれる。しかし、DC/DCコンバータ16の動作を止めて、暗電流用レギュレータ15dを使用すると、第2電源ライン52側の48[V]の電源電力を低損失で降圧して生成した12[V]の電源電力を第1電源ライン51に供給できる。
【0105】
また、イグニッションがオフの時には第1電源ライン51側に接続されている小電力負荷18が待機状態になり僅かな暗電流のみを消費する状態になるので、暗電流用レギュレータ15dが供給する電源電力だけで十分である。
【0106】
上位ECU30Cは、イグニッションがオンの時にはスイッチ回路SW4を開き、イグニッションがオフの時にスイッチ回路SW4を閉じる。また、イグニッションがオフの時にはDC/DCコンバータ16の動作を止める。
【0107】
スイッチ回路SW4を閉じると、補機系バッテリ13Bに蓄積されている電源電力が、スイッチ回路SW0、第2電源ライン52、スイッチ回路SW4を通って暗電流用レギュレータ15dの入力に供給されるので、暗電流用レギュレータ15dが12[V]の電源電力を生成する。そして、暗電流用レギュレータ15dの生成した12[V]の電源電力がダイオードD1及び第1電源ライン51を通って小電力負荷18に供給される。
【0108】
図6に示すように、ゾーンECU15の出力15bと、大電力負荷14と、補機系バッテリ13Bとが第2電源ライン52に接続されている。また、補機系バッテリ13Bと第2電源ライン52との間にスイッチ回路SW0が接続されている。
【0109】
図6に示した車載電源供給システム10Cにおいては、第2電源ライン52から電圧が48[V]の電源電力を大電力負荷14に供給するので大電力負荷14に流れる電流を大幅に減らすことができる。したがって、第2電源ライン52の電源線を細径化できる。また、大電力負荷14の内部に昇圧回路を設置する必要もない。
【0110】
車両のイグニッションがオンの時には、電源制御ユニットPCUが出力する電源電力を第1電源ライン51を介してゾーンECU15に供給できる。また、ゾーンECU15内のDC/DCコンバータ16が昇圧して生成した48[V]の電源電力で補機系バッテリ13Bを充電することもできるし、大電力負荷14に不足する電力を供給することもできる。また、補機系バッテリ13Bが蓄積している48[V]の電源電力は、第2電源ライン52を介して大電力負荷14に供給できる。
【0111】
一方、車両のイグニッションがオフの時には、電源制御ユニットPCUが電源電力を出力しないので、第1電源ライン51側の負荷が必要とする暗電流程度の電源電力を補機系バッテリ13Bが蓄積している電源電力に基づいて生成する。すなわち、補機系バッテリ13Bが蓄積している電源電力をゾーンECU15内の暗電流用レギュレータ15dで12[V]に降圧し、第1電源ライン51から小電力負荷18に供給する。
【0112】
上記のように、本実施形態ではイグニッションがオフの時に暗電流用レギュレータ15dを利用するので、DC/DCコンバータ16は停止することができる。これにより、電力損失の増大を抑制できる。
【0113】
以上のように、図1に示した車載電源供給システム10Aにおいては、第1電源ライン51の12[V]の電源電力をDC/DCコンバータ16で昇圧して生成した48[V]の電源電力を大電力負荷14側に供給するので、第2電源ライン52等の箇所の電線を細径化したり端子を小型化することが容易である。また、補機系バッテリ13を第1電源ライン51側だけに接続することで、コスト上昇を抑制できる。また、キャパシタ20を第2電源ライン52に接続することで、大電力負荷14に通電する場合の一時的な電力不足や電源電圧の変動を抑制することが容易になる。
【0114】
また、上位ECU30Aが図2に示した制御を実施することで、イグニッションのオフ時にキャパシタ20が蓄積している電荷を自動的に放出することができる。これにより、キャパシタ20の特性が劣化するのを防止できる。
【0115】
また、図4に示した車載電源供給システム10Bにおいては、補機系バッテリ13Bを第2電源ライン52側のみに接続することで、コスト上昇を抑制できる。また、キャパシタ20Aを第1電源ライン51に接続することで、DC/DCコンバータ16を常時動作させることなく、イグニッションオフ時に小電力負荷18が必要とする電源の暗電流を、キャパシタ20Aから供給可能になる。これにより、イグニッションオフ時にDC/DCコンバータ16内で生じる電力損失を低減できる。
【0116】
また、上位ECU30Bが図5の制御を実施することで、イグニッションオフ時にキャパシタ20Aを間欠的に充電し、充電した電荷を利用することが可能になる。更に、イグニッションオン時にキャパシタ20Aの蓄積している電荷を自動的に放電するので、キャパシタ20Aの特性劣化を抑制できる。
【0117】
図6に示した車載電源供給システム10Cにおいても、補機系バッテリ13Bを第2電源ライン52側のみに接続することで、コスト上昇を抑制できる。また、ゾーンECU15内の暗電流用レギュレータ15dを利用することで、DC/DCコンバータ16を止めたまま、イグニッションオフ時に小電力負荷18が必要とする電源の暗電流を供給可能になる。また、専用の暗電流用レギュレータ15dを利用することで、イグニッションオフ時に発生する電力損失を、DC/DCコンバータ16を利用する場合と比べて大幅に低減できる。
【0118】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0119】
上述の車載電源供給システムに関する特徴的な事項について、以下の[1]~[5]に簡潔に纏めて列挙する。
[1] 車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システム(10A)であって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリ(補機系バッテリ13)と、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部(電源制御ユニットPCU)と、
比較的低圧の第1電圧(例えば12[V])の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ライン(51)と、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧(例えば48[V])の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ライン(52)と、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部(DC/DCコンバータ16)と、
キャパシタ(20)と、
を備え、前記第1電源ラインに前記メインバッテリ、前記上位電源部、及び前記電圧変換部が接続され、前記第2電源ラインに前記キャパシタ及び前記電圧変換部が接続されている、
車載電源供給システム。
【0120】
上記[1]の構成の車載電源供給システムによれば、第1電源ラインの電源電力を電圧変換部で昇圧して生成した電源電力を大電力負荷に供給するので、第2電源ラインの箇所の電線を細径化したり端子を小型化することが容易である。また、メインバッテリを第1電源ライン側だけに接続することで、コスト上昇を抑制できる。
【0121】
[2] 前記キャパシタと、前記第2電源ラインの回路接続を制御するスイッチ部(スイッチ回路SW1)と、
前記スイッチ部を制御する制御部(上位ECU30A)と、
を備え、
前記制御部は、車両のイグニッションオフへの切り替わりに連動して、前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの放電を実施し(S20)、イグニッションオンの状態で少なくとも大電力負荷への電源電力供給が必要な時に、前記スイッチ部を制御して前記キャパシタが蓄積している電荷を放電させる(S16)、
上記[1]に記載の車載電源供給システム。
【0122】
上記[2]の構成の車載電源供給システムによれば、キャパシタに長時間に亘って電荷が蓄積されるのを防止できるので、キャパシタの劣化を抑制できる。
【0123】
[3] 車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリ(補機系バッテリ13B)と、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部(電源制御ユニットPCU)と、
比較的低圧の第1電圧(例えば12[V])の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ライン(51)と、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧(例えば48[V])の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ライン(52)と、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部(DC/DCコンバータ16)と、
キャパシタ(20A)と、
を備え、前記第1電源ラインに前記上位電源部、前記電圧変換部、及び前記キャパシタが接続され、前記第2電源ラインに前記メインバッテリ及び前記電圧変換部が接続されている、
車載電源供給システム(10B)。
【0124】
上記[3]の構成の車載電源供給システムによれば、イグニッションオフ時に小電力負荷が必要とする電源の暗電流を、キャパシタから供給可能になる。これにより、イグニッションオフ時に電圧変換部内で生じる電力損失を低減できる。
【0125】
[4] 前記キャパシタと、前記第1電源ラインの回路接続を制御するスイッチ部(スイッチ回路SW2、SW3)と、
前記スイッチ部を制御する制御部(上位ECU30B)と、
を備え、
前記制御部は、車両のイグニッションオフ中に所定の条件を満たすと前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの充電を実施し(S32、S33)、イグニッションオン中に前記スイッチ部を制御して前記キャパシタの放電を実施する(S34)、
上記[3]に記載の車載電源供給システム。
【0126】
上記[4]の構成の車載電源供給システムによれば、イグニッションオフ時にキャパシタを間欠的に充電し、充電した電荷を利用することが可能になる。更に、イグニッションオン時にキャパシタの蓄積している電荷を自動的に放電するので、キャパシタの特性劣化を抑制できる。
【0127】
[5] 車両上で、負荷となる車載機器に対して車両側の電源電力を供給する車載電源供給システムであって、
電源電力の充電及び放電が可能なメインバッテリ(補機系バッテリ13B)と、
前記メインバッテリに対して電源電力を供給可能な上位電源部(電源制御ユニットPCU)と、
比較的低圧の第1電圧(例えば12[V])の電源電力の通電に割り当てられた第1電源ライン(51)と、
前記第1電圧よりも電圧が高い第2電圧(例えば48[V])の電源電力の通電に割り当てられた第2電源ライン(52)と、
前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間で電源電力の電圧を変換する電圧変換部(DC/DCコンバータ16)と、
前記電圧変換部と並列に接続された暗電流供給回路(暗電流用レギュレータ15d)と、
を備え、前記第1電源ラインに前記上位電源部、前記電圧変換部、及び前記暗電流供給回路が接続され、前記第2電源ラインに前記メインバッテリ、前記電圧変換部、及び前記暗電流供給回路が接続され、
前記暗電流供給回路は、車両のイグニッションがオフの時に、前記第1電源ラインの電圧を降圧して生成した電源電力を暗電流として前記第1電源ラインに供給する、
車載電源供給システム(10C)。
【0128】
上記[5]の構成の車載電源供給システムによれば、専用の暗電流供給回路を利用することで、イグニッションオフ時に発生する電力損失を、電圧変換部を利用する場合と比べて大幅に低減できる。
【符号の説明】
【0129】
10A,10B,10C 車載電源供給システム
11,11A,11B,11C,11D,11E 電源幹線
12 DC/DCコンバータ
12a 駆動系高圧電源線
13,13B 補機系バッテリ
14 大電力負荷
15,15A,15B,15C,15D ゾーンECU
15a 入力
15b 出力
15c 内部電源回路
15d 暗電流用レギュレータ
16 DC/DCコンバータ
17,17A,17B,17C,17D 電源枝線
18 小電力負荷
19 グランド
20,20A キャパシタ
21 高圧バッテリ
22,24 48V電源線
23,25 12V電源線
30A,30B,30C 上位ECU
31 ウォータポンプ
32 オイルポンプ
33 クーリングファン
34 エアコン用コンプレッサ
35 ブレーキアクチュエータ
37 触媒ヒータ
38 デアイサ
39,46 電動スタビライザ
40 EPSアクチュエータ
41 エアコン用ブロア
42 PTCヒータ
43 シートヒータ
44 パワーシート
45 EPBアクチュエータ
47 デフォッガ
50 車体
50a エンジンルーム
50b 車室インパネ領域
50c トランクルーム
51 第1電源ライン
52 第2電源ライン
D1 ダイオード
PCU 電源制御ユニット
SW,SW0,SW1,SW2,SW3,SW4 スイッチ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6