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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両用ペダル
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20240625BHJP
   G05G 1/50 20080401ALI20240625BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G1/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021167413
(22)【出願日】2021-10-12
(65)【公開番号】P2023057749
(43)【公開日】2023-04-24
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】永松 崇志
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-90525(JP,A)
【文献】特開2015-11511(JP,A)
【文献】特開2008-231707(JP,A)
【文献】中国実用新案第205311578(CN,U)
【文献】中国実用新案第206958227(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
G05G 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空アームとペダルシートとを備え、
前記中空アームは、定められた長さの二つの成形体を、それら成形体の長手方向に沿うように形成された凹部同士を向かい合わせた状態で接合したものであって、前記中空アームにおける長手方向の端部の開口を形成する壁を有しており、
前記ペダルシートは、前記中空アームにおける長手方向の端部に位置し、その端部の開口を形成する前記壁に対し溶接されている車両用ペダルにおいて、
前記壁には、その壁の内部を下方に向けて開放する開放部が前記開口と繋がるように形成され、
前記壁は、前記開口の中心線に対し平行になる直線部と、その直線部に繋がるとともに稜線が前記中心線に対し平行に延びるコーナー部と、を有しており、
前記直線部に対し前記ペダルシートが溶接され、
前記コーナー部にはユーザーによる踏力が前記ペダルシートに作用したときに前記コーナー部が歪むことを抑制する補強部が形成されている車両用ペダル。
【請求項2】
前記補強部は、前記コーナー部の稜線をまたぐように前記壁に形成されるビードである請求項1に記載の車両用ペダル。
【請求項3】
前記中空アームにおける前記ペダルシートが位置する端部とは反対側の端部には、前記中空アームを回転可能に支持する支持軸を挿通するための穴が形成されており、
前記中空アームにおける前記ペダルシートが位置する端部は、前記穴が形成されている端部に対し、前記穴の中心線の延びる方向にずれるように位置している請求項1又は2に記載の車両用ペダル。
【請求項4】
前記中空アームにおける前記ペダルシートが位置する端部とは反対側の端部には、前記中空アームを回転可能に支持する支持軸を挿通するための穴が形成されており、
前記中空アームにおける前記ペダルシートが位置する端部は、その端部の開口が前記ペダルシートの裏面に向かうように湾曲している請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ペダル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ペダルとして、ブレーキペダル、クラッチペダル、及びアクセルペダルといったものが知られている。特許文献1に示される車両用ペダルは、中空アームとペダルシートとを備えている。中空アームは、車両のボディに対し回転可能に支持されており、定められた長さの二つの成形体によって形成されている。詳しくは、板状の成形体には、その成形体の長手方向に沿うように凹部が屈曲形成されている。そして、二つの成形体の凹部同士を向かい合わせた状態で、それら成形体を接合することによって中空アームが形成されている。中空アームにおける長手方向の端部には開口が形成されている。中空アームは、その長手方向の端部に上記開口を形成する壁を有している。ペダルシートは、中空アームにおける長手方向の端部に位置し、その端部の開口を形成する上記壁に対し溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-102892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中空アームの上記壁は、直線部とコーナー部とを有している。こうした壁のコーナー部に対しペダルシートを溶接することは、溶接作業に必要とされるスペースの関係から困難である。このため、ペダルシートは、上記壁における直線部に対し溶接される。
【0005】
しかし、ユーザーが車両用ペダルを踏むことに基づき、ペダルシートにユーザーの踏力が作用すると、次のようなことが生じる。すなわち、中空アームに対しペダルシートがねじられるように、上記踏力に基づく荷重がペダルシートに作用する。こうした荷重がペダルシートに作用した結果、中空アームにおける上記壁のコーナー部、すなわちペダルシートと溶接されていない上記コーナー部が拡開する方向に歪むおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用ペダルは、中空アームとペダルシートとを備える。中空アームは、定められた長さの二つの成形体を、それら成形体の長手方向に沿うように形成された凹部同士を向かい合わせた状態で接合したものであって、中空アームにおける長手方向の端部の開口を形成する壁を有している。ペダルシートは、中空アームにおける長手方向の端部に位置し、その端部の開口を形成する上記壁に対し溶接されている。この壁は直線部とコーナー部とを有している。そして、壁の直線部に対しペダルシートが溶接される。また、壁のコーナー部には、ユーザーによる踏力がペダルシートに作用したときに、コーナー部が歪むことを抑制する補強部が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両用ペダルを示す斜視図である。
図2】上記車両用ペダルの中空アームを図1の矢印II-II方向から見た状態を示す断面図である。
図3】上記中空アームにおける下端部の開口を示す正面図である。
図4】上記車両用ペダルの下端部を示す斜視図である。
図5】上記中空アームにおける下端部の開口を示す斜視図である。
図6】上記車両用ペダルを示す正面図である。
図7】上記車両用ペダルを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、車両用ペダルの一実施形態について、図1図7を参照して説明する。
図1に示すように、車両用ペダルは、中空アーム11とペダルシート12とを備えている。中空アーム11は、定められた長さに形成されている。中空アーム11の上端部には穴13が形成されている。この穴13には支持軸14が挿通されている。支持軸14は車両のボディに固定されている。中空アーム11は、支持軸14によって回転可能に支持されている。
【0009】
ペダルシート12は、中空アーム11の下端部、言い換えれば穴13が位置する端部とは反対側の端部に位置し、その端部に溶接されている。ペダルシート12には、ユーザーが車両用ペダルを踏むことによる踏力が作用する。そして、ペダルシート12に対しユーザーの踏力が作用することにより、車両用ペダルが穴13及び支持軸14の中心線L1周りに回転する。
【0010】
図2は、図1の中空アーム11を矢印II-II方向から見た状態を示している。図2から分かるように、中空アーム11は、二つの成形体11a,11bによって形成されている。成形体11a,11bは、定められた長さの板状とされている。成形体11a,11bには、その成形体11a,11bの長手方向(図2の紙面と交差する方向)に沿って延びるように、凹部15,16が屈曲形成されている。そして、二つの成形体11a,11bの凹部15,16同士を向かい合わせた状態で、それら成形体11a,11bを接合することによって中空アーム11が形成されている。
【0011】
図3に示すように、中空アーム11の下端部には開口17が形成されている。中空アーム11は、その長手方向の端部に上記開口17を形成する壁18を有している。壁18の下端には、壁18の内部を下方に向けて開放する開放部18aが形成されている。これにより、塗装のために車両用ペダルを塗料に投入したり引き上げたりするとき、中空アーム11の内部に対する塗料の行き来が上記開放部18aを通じて生じやすくなる。
【0012】
壁18は、直線部19,20とコーナー部21,22とを有している。直線部19,20は、成形体11a,11bにおける凹部15,16の底に対応して位置している。コーナー部21,22は、凹部15,16における底の隅に対応して位置し、直線部19,20に繋がっている。
【0013】
図4に示すペダルシート12は、壁18の直線部19,20に対し溶接されており、壁18のコーナー部21,22に対しては溶接されていない。これは、コーナー部21,22に対しペダルシート12を溶接することは、溶接作業に必要とされるスペースを確保することが難しいためである。
【0014】
上記壁18には、図3及び図5に示すように、コーナー部21,22の稜線(頂点)をまたぐようにビード23,24が形成されている。ビード23,24は、開口17の中央に向けて膨らむ形状に形成されるとともに、壁18の縁(開口17に対応する端面)に寄せて位置するように形成されている。ビード23,24は、ユーザーによる踏力がペダルシート12に作用したとき、コーナー部21,22が歪むことを抑制する補強部として機能する。
【0015】
図6及び図7はそれぞれ、図1の車両用ペダルを正面及び側面から見た状態を示している。図6から分かるように、中空アーム11におけるペダルシート12が位置する端部(下端部)は、穴13が形成されている端部(上端部)に対し、穴13の中心線L1に沿った方向(図6の右方向)にずれるように位置している。これは、車両のボディに対する車両用ペダルの取り付け位置とユーザーが着座する車両のシートの位置とにはそれぞれ制約があり、そうした制約のもとで車両用ペダルをユーザーが適正に操作できるようにするためである。
【0016】
また、図7から分かるように、中空アーム11におけるペダルシート12が位置する端部(下端部)は、その端部の開口17(図6)の中心線L2が中空アーム11における穴13の中心線L1(図6)に向けて倒れるように湾曲している。
【0017】
次に、本実施形態の車両用ペダルの作用効果について説明する。
(1)ユーザーが車両用ペダルを踏むと、ペダルシート12にはユーザーの踏力が作用する。その結果、中空アーム11に対しペダルシート12がねじられるように、上記踏力に基づく荷重がペダルシート12に作用する。このときの荷重が作用する方向を図4に矢印で示す。こうした荷重がペダルシート12に作用することに基づき、中空アーム11における上記壁18のコーナー部21,22が拡開する方向に歪むことは、コーナー部21,22に形成されたビード23,24によって抑制される。
【0018】
(2)ビード23,24は、コーナー部21,22の稜線をまたぐように壁18に形成される。こうしたビード23,24をコーナー部21,22に形成することにより、ユーザーの踏力に基づく荷重がペダルシート12に作用したとき、コーナー部21,22が拡開する方向に歪むことを効果的に抑制することができる。
【0019】
(3)中空アーム11におけるペダルシート12が位置する端部(下端部)は、穴13が形成されている端部(上端部)に対し、その穴13の中心線L1の延びる方向にずれるように位置している。このため、ユーザーの踏力に基づく荷重がペダルシート12に作用するとき、中空アーム11に対しペダルシート12がねじれやすくなる。その結果、中空アーム11における壁18のコーナー部21,22が拡開する方向に歪みやすくなる。しかし、そうしたコーナー部21,22の歪みをビード23,24によって効果的に抑制できる。
【0020】
(4)中空アーム11におけるペダルシート12が位置する端部(下端部)は、その端部の開口17の中心線L2が穴13の中心線L1に向けて倒れるように湾曲している。中空アーム11の移動スペースを小さく抑えるためには、中空アーム11におけるペダルシート12が位置する端部を小さくするとともに、中空アーム11における上記湾曲をきつくすることが好ましい。ただし、このように中空アーム11を形成すると、ユーザーの踏力に基づく荷重がペダルシート12に作用するとき、中空アーム11に対しペダルシート12がねじれやすくなる。その結果、中空アーム11における壁18のコーナー部21,22が拡開する方向に歪みやすくなる。しかし、そうしたコーナー部21,22の歪みをビード23,24によって効果的に抑制できる。
【0021】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ビード23,24は、開口17の中央に対し離れる方向に膨らむ形状に形成されていてもよい。
【0022】
・ビード23,24は、必ずしも壁18の縁に寄せて位置するように形成されている必要はない。
・中空アーム11におけるペダルシート12が位置する端部は、穴13が形成されている端部に対し、必ずしも穴13の中心線L1に沿った方向にずれるように位置している必要はない。
【符号の説明】
【0023】
11…中空アーム
11a,11b…成形体
12…ペダルシート
13…穴
14…支持軸
15,16…凹部
17…開口
18…壁
18a…開放部
19,20…直線部
21,22…コーナー部
23,24…ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7