(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240625BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240625BHJP
H01M 50/547 20210101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/547 101
(21)【出願番号】P 2021507330
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011337
(87)【国際公開番号】W WO2020189599
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019048907
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 一正
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-1600(JP,A)
【文献】特開2010-140725(JP,A)
【文献】特開2007-80812(JP,A)
【文献】特開2004-273436(JP,A)
【文献】国際公開第2007/135790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体層と正極活物質層とを有する正極層と、負極集電体層と負極活物質層とを有する負極層と、が固体電解質層を介して積層された積層体と、第1外部端子と、第2外部端子と、を含み、
前記積層体は、積層方向と平行な第1側面と、前記積層方向と平行でかつ前記第1側面に直交する第2側面と、を有し、
前記第1側面には、それぞれ前記第1外部端子及び前記第2外部端子が接続され、
前記積層体は、前記積層方向に反った、式(1)及び(2)を満たす反りを有する、全固体二次電池;
0.5°≦((A1+A2)/2)≦5°…(1)
A1≦8.0°…(2)
ここで、A1は、前記第1側面側から見たときの前記積層体の反りの角度であり、A2は、前記第2側面側から見たときの前記積層体の反りの角度である。
【請求項2】
式(3)を満たす、請求項1に記載の全固体二次電池;
0.5°≦((A1+A2)/2)≦4°…(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池に関する。
本願は、2019年3月15日に、日本に出願された特願2019-048907号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス技術の発達はめざましく、携帯電子機器の小型軽量化、薄型化、多機能化が図られている。それに伴い、電子機器の電源となる電池に対しては、小型軽量化、薄型化、信頼性の向上が強く望まれている。現在、汎用的に使用されているリチウムイオン二次電池は、従来から、イオンを移動させるための媒体として有機溶媒等の電解質(電解液)が使用されている。しかし、上記の構成の電池では、電解液が漏出するおそれがある。
【0003】
電解液に用いられる有機溶媒等は可燃性物質であるため、電池の安全性をさらに高めることが求められている。そこで、電池の安全性を高めるための一つの対策は、電解質として、電解液に代えて、固体電解質を用いることが提案されている。さらに、電解質として固体電解質を用いるとともに、その他の構成要素も固体で構成されている全固体電池の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、不燃性の固体電解質を用いてすべての構成要素を固体で構成した全固体リチウム二次電池が提案されている。この全固体リチウム二次電池用積層体は、活物質層と、活物質層に焼結接合された固体電解質層を含み、活物質層がリチウムイオンを放出及び吸蔵し得る結晶性の第1物質を含み、固体電解質層がリチウムイオン伝導性を有する結晶性の第2物質を含む。特許文献1には、固体電解質層の充填率は70%を超えることが好ましいと記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、無機粉体を含む成形体を焼成してなり、気孔率が10vol%以下であるリチウムイオン伝導性固体電解質が記載されている。
【0006】
特許文献1と特許文献2に記載されているように、全固体電池を構成する固体電解質は緻密であることが一般的に好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-5279号公報
【文献】特開2007-294429号公報
【文献】国際公開第2013/175993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1と特許文献2に記載されているように、固体電解質層を緻密化した全固体電池では、全固体電池の充放電時に発生する電極層の体積膨張収縮によって、内部応力が固体電解質層に集中し、クラックが発生する場合があった。その結果、内部抵抗が増大し、サイクル特性が悪くなることがわかった。
【0009】
このような課題に対し、特許文献3には、固体電解質層の電極層に近い領域に空隙率が低い部分を形成し、電極層から離れた領域に空隙率が高い部分を形成した固体電解質層が記載されている。しかし、発明者の検討では、特許文献3のように、固体電解質層において空孔率の高い部分と低い部分を形成すると、固体電解質層の内部抵抗がかえって増大し、十分なサイクル特性が得られなかった。
【0010】
本発明は、所定の角度の反りを有することによって良好なサイクル特性を有する全固体二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様に係る全固体二次電池は、正極集電体層と正極活物質層とを有する正極層と、負極集電体層と負極活物質層とを有する負極層と、が固体電解質層を介して積層された積層体と、第1外部端子と、第2外部端子と、を含み、前記積層体は、積層方向と平行な第1側面と、前記積層方向と平行でかつ前記第1側面に直交する第2側面と、を有し、前記第1側面には、それぞれ前記第1外部端子及び前記第2外部端子が接続され、前記積層体は、前記積層方向に反った、式(1)及び(2)を満たす反りを有する、全固体二次電池;
0.5°≦((A1+A2)/2)≦5°…(1)
A1≦8.0°…(2)
ここで、A1は、前記第1側面側から見たときの前記積層体の反りの角度であり、A2は、前記第2側面側から見たときの前記積層体の反りの角度である。
【0013】
(2)(1)に記載の全固体二次電池は、式(3)を満たすものでもよい;
0.5°≦((A1+A2)/2)≦4°…(3)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定の角度の反りを有することによって良好なサイクル特性を有する全固体二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る全固体二次電池の断面模式図である。
【
図3】反りの角度A1の定義を説明するための模式図であり、第1側面の側から見たときの積層体を模式的に示す図である。
【
図4】反りの角度A2の定義を説明するための模式図であり、第2側面の側から見たときの積層体を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される物質、寸法等は一例であって、本実施形態はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
全固体二次電池としては、全固体リチウムイオン二次電池、全固体ナトリウムイオン二次電池、全固体マグネシウムイオン二次電池等が挙げられる。以下、全固体リチウムイオン二次電池を例として説明するが、本発明は全固体二次電池一般に適用可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池の要部を拡大した断面模式図である。
図1に示す全固体リチウムイオン二次電池は、第1電極層と第2電極層と固体電解質層とを有する積層体を備える。以下、第1電極層と、第2電極層は、いずれか一方が正極として機能し、他方が負極として機能する。電極層の正負は、外部端子にいずれの極性を繋ぐかによって変化する。以下、理解を容易にするために、第1電極層を正極層とし、第2電極層を負極層として説明する。
【0019】
全固体リチウムイオン二次電池100は、正極集電体層1Aと正極活物質層1Bとを含む正極層1と、負極集電体層2Aと負極活物質層2Bとを含む負極層2と、固体電解質を含む固体電解質層3と、を有すると共に、正極層1及び負極層2が固体電解質層3を介して交互に積層された積層体20を備えている。
【0020】
正極層1はそれぞれ第1外部端子6に接続され、負極層2はそれぞれ第2外部端子7に接続されている。第1外部端子6と第2外部端子7は、外部との電気的な接点である。
【0021】
(積層体)
積層体20は、正極層1と、負極層2と、固体電解質層3とを有する。
【0022】
積層体20において正極層1と負極層2は、固体電解質層3(より詳細には層間固体電解質層3A)を介して交互に積層されている。正極層1と負極層2の間で固体電解質層3を介したリチウムイオンの授受により、全固体リチウムイオン二次電池100の充放電が行われる。
正極層1及び負極層2の積層数に特に限定はないが、正極層1と負極層2の合計数で、一般に10層以上200層以下の範囲内にあり、好ましくは20層以上100層以下の範囲内である。
【0023】
積層体20は、ほぼ6面体であり、積層方向(
図2のZ方向)に対して平行な面として形成された4つの側面(第1側面21、第2側面22、第1側面23、第2側面24)と、積層方向とほぼ直交する面として上方に形成された上面及び下方に形成された下面とを有する。
第1側面は電極層が露出する面であり、
図1及び
図2に示した例では、第1側面21には正極層1が露出し、第1側面23には負極層1が露出している。第2側面は電極層が露出しない側面である。第2側面22は、上面を上にして第1側面21側から見て右側の側面であり、積層方向と平行でかつ第1側面21及び第1側面23にほぼ直交する側面である。また、第2側面24は、上面を上にして第1側面21側から見て左側の側面であり、積層方向と平行でかつ第1側面21及び第1側面23にほぼ直交する側面である。
ここで、以下に説明する積層体の反りにおいて、第1側面として第1側面21と第1側面23のいずれを選定してもよく、また、第2側面として第2側面22と第2側面24のいずれを選定してもよい。
【0024】
(積層体の反り)
積層体20は、積層方向と平行な第1側面21(あるいは第1側面23)と、積層方向(z方向)と平行でかつ第1側面21に直交する第2側面22(あるいは第2側面24)と、を有するとともに、積層方向に反った、式(1)及び(2)を満たす反りを有する;
0.5°≦((A1+A2)/2)≦5°…(1)
A1≦8.0°…(2)
ここで、A1は、第1側面21(あるいは第1側面23)の側から見たときの積層体20の反りの角度であり、A2は、第2側面22(あるいは第2側面24)の側から見たときの積層体20の反りの角度である。
【0025】
図3は、反りの角度A1の定義を説明するための模式図であり、第1側面21の側から見たときの積層体20を模式的に示す図である。
図3を用いて、第1側面21の側から見たときの積層体20の反りの角度A1について説明する。積層体20は、Z方向において凸になる側を平坦な台S側に向くように静置する。
P1は、第1側面21において平坦な台Sの表面Saに接している点、又は、第1側面21において、平坦な台Sの表面Saに最も近い点であり、P2は、第1側面21と第2側面22とが共有する辺L1のうち、平坦な台Sの表面Saに最も近い点である。
平坦な台Sの表面Saと、P1とP2とを結ぶ線分とが作る角度が積層体20の反りの角度A1である。
【0026】
P2の代わりに、第1側面21と第2側面24とが共有する辺L2のうち、最も平坦な台Sの表面Saに近い点P3を使って、平坦な台Sの表面Saと、P1とP3とを結ぶ線分とが作る角度を積層体20の反りの角度A1としてもよい。P1とP2とを結ぶ線分とが作る角度と、P1とP3とを結ぶ線分とが作る角度とが異なる場合には、より大きい角度を有する線分が作る角度を積層体20の反りの角度A1とする。
【0027】
図4は、反りの角度A2の定義を説明するための模式図であり、第2側面22の側から見たときの積層体20を模式的に示す図である。
図4を用いて、第2側面22の側から見たときの積層体20の反りの角度A2について説明する。積層体20は、Z方向において凸になる側を平坦な台S側に向くように静置する。
Q1は、第2側面22において平坦な台Sの表面Saに接している点、又は、第2側面22において、平坦な台Sの表面Saに最も近い点であり、Q2は、第2側面22と第1側面23とが共有する辺L3のうち、最も平坦な台Sの表面Saに近い点である。
平坦な台の表面Saと、Q1とQ2とを結ぶ線分とが作る角度が積層体20の反りの角度A2である。
【0028】
Q2の代わりに、第2側面22と第1側面21とが共有する辺L1のうち、最も平坦な台Sの表面Saに近い点Q3を使って、平坦な台Sの表面Saと、Q1とQ3とを結ぶ線分とが作る角度が積層体20の反りの角度A2としてもよい。Q1とQ2とを結ぶ線分とが作る角度と、Q1とQ3とを結ぶ線分とが作る角度とが異なる場合には、より大きい角度を有する線分が作る角度を積層体20の反りの角度A2とする。
【0029】
本発明者は、積層体の反りが上記の式(1)及び(2)を満たす場合には、良好なサイクル特性を有する全固体電池を製造できることを見いだした。積層体の反りが所定の範囲である構成が良好なサイクル特性につながるメカニズムは現時点では明らかではないが、積層体が予め、所定の範囲の反りを有すると、全固体電池の充放電時に発生する電極層の体積膨張収縮がその反りの方向に追従することによって、体積の膨張収縮の応力が緩和され、その結果、良好なサイクル特性が得られることが考えられる。
【0030】
積層体20の反りは式(3)を満たすことが好ましい;
0.5°≦((A1+A2)/2)≦4°…(3)
積層体20の反りが式(3)を満たすことによって、より良好なサイクル特性が得られる。
【0031】
積層体20の反りは式(4)を満たすことがより好ましい;
A1≦4.5°…(4)
積層体20の反りが式(4)を満たすことによって、さらに良好なサイクル特性が得られる。
【0032】
(正極層及び負極層)
正極層1は、正極集電体層1Aと、正極活物質を含む正極活物質層1Bとを有する。負極層2は、負極集電体層2Aと、負極活物質を含む負極活物質層2Bとを有する。
【0033】
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、それぞれ導電率が高い正極集電体または負極集電体を含む。導電性が高い正極集電体及び負極集電体としては、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、及びニッケル(Ni)の少なくともいずれか一つの金属元素を含む金属又は合金、カーボン(C)の非金属が挙げられる。これらの金属元素のうち、導電性の高さに加えて、製造コストも考慮すると、銅、ニッケルが好ましい。更に、銅は正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応し難い。そのため、正極集電体層1A及び負極集電体層2Aに銅を用いると、全固体リチウムイオン二次電池100の内部抵抗を低減することができる。正極集電体層1Aと負極集電体層2Aを構成する物質は、同一でもよいし、異なってもよい。正極集電体層1A及び負極集電体層2Aの厚さは限定するものではないが、目安を例示すれば、0.5μm以上30μm以下の範囲にある。
【0034】
正極活物質層1Bは、正極集電体層1Aの片面又は両面に形成される。例えば、全固体リチウムイオン二次電池100の積層方向の最上層に位置する正極層1には、積層方向上側において対向する負極層2が無い。そのため、全固体リチウムイオン二次電池100の最上層に位置する正極層1において正極活物質層1Bは、積層方向下側の片面のみにあればよいが、両面にあっても特に問題はない。負極活物質層2Bも正極活物質層1Bと同様に、負極集電体層2Aの片面又は両面に形成される。正極活物質層1B及び負極活物質層2Bの厚さは、0.5μm以上5.0μm以下の範囲にあることが好ましい。正極活物質層1B及び負極活物質層2Bの厚さを0.5μm以上とすることによって、全固体リチウムイオン二次電池の電気容量を高くすることででき、一方、厚さを5.0μm以下とすることによって、リチウムイオンの拡散距離が短くなるため、さらに全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減させることができる。
【0035】
正極活物質層1B及び負極活物質層2Bは、それぞれリチウムイオンと電子を授受する正極活物質または負極活物質を含む。この他、導電助剤等を含んでもよい。正極活物質及び負極活物質は、リチウムイオンを効率的に挿入、脱離できることが好ましい。
【0036】
正極活物質層1B又は負極活物質層2Bを構成する活物質には明確な区別がなく、2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質として用いることができる。そのため、以下、まとめて活物質について説明する。
【0037】
活物質には、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物等を用いることができる。例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物としては、リチウムマンガン複合酸化物Li2MnaMa1-aO3(0.8≦a≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、一般式:LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV2O5)、オリビン型LiMbPO4(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3又はLiVOPO4)、Li2MnO3-LiMcO2(Mc=Mn、Co、Ni)で表されるLi過剰系固溶体正極、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LisNitCouAlvO2(0.9<s<1.3、0.9<t+u+v<1.1)で表される複合金属酸化物等が挙げられる。
【0038】
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、それぞれ正極活物質及び負極活物質を含んでもよい。それぞれの集電体層に含まれる活物質の含有比は、集電体として機能する限り特に限定はされない。例えば、正極集電体/正極活物質、又は負極集電体/負極活物質が体積比率で90/10から70/30の範囲であることが好ましい。
【0039】
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aがそれぞれ正極活物質及び負極活物質を含むことにより、正極集電体層1Aと正極活物質層1B及び負極集電体層2Aと負極活物質層2Bとの密着性が向上する。
【0040】
(固体電解質層)
図1に示されるように、固体電解質層3は、正極活物質層1Bと負極活物質層2Bとの間に位置する層間固体電解質層3Aを有する。
固体電解質層3は、正極層1(正極集電体層1A)及び負極層2(負極集電体層2A)のいずれか一方又は両方(
図1においては両方)の外側に位置する最外固体電解質層3Bを更に有してもよい。ここで、「外側」とは、積層体20の表面5A、5Bに最も近い正極層1あるいは負極層2の外側を意味する。
なお、固体電解質層3は、最外固体電解質層3Bを有さなくてもよく、この場合、積層体20の表面5A、5Bは、正極層1、負極層2となる。
【0041】
固体電解質層3には、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い物質を用いるのが好ましい。固体電解質層3は、例えば、La0.5Li0.5TiO3などのペロブスカイト型化合物や、Li14Zn(GeO4)4などのリシコン型化合物、Li7La3Zr2O12などのガーネット型化合物、LiZr2(PO4)3、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3やLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3などのナシコン型化合物、Li3.25Ge0.25P0.75S4やLi3PS4などのチオリシコン型化合物、Li2S-P2S5やLi2O-V2O5-SiO2などのガラス化合物、Li3PO4やLi3.5Si0.5P0.5O4やLi2.9PO3.3N0.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも一種であることが望ましい。
【0042】
固体電解質層3は、正極層1及び負極層2に用いられる活物質に合わせて選択することが好ましい。例えば、固体電解質層3は、活物質を構成する元素と同一の元素を含むことがより好ましい。固体電解質層3が、活物質を構成する元素と同一の元素を含むことで、正極活物質層1B及び負極活物質層2Bと固体電解質層3との界面における接合が、強固なものになる。また正極活物質層1B及び負極活物質層2Bと固体電解質層3との界面における接触面積を広くできる。
【0043】
層間固体電解質層3Aの厚さは、0.5μm以上20.0μm以下の範囲にあることが好ましい。層間固体電解質層3Aの厚さを0.5μm以上とすることによって、正極層1と負極層2との短絡を確実に防止することができ、また厚さを20.0μm以下とすることによって、リチウムイオンの移動距離が短くなるため、さらに全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減させることができる。
【0044】
最外固体電解質層3Bの厚さは、特に制限されないが、例えば、積層体20の厚みに対して1~40%の厚さであればよい。後述するマージン層と同様に、最外固体電解質層を備えることで、固体電解質層3と各電極層とを物理的、化学的に保護することができ、耐久性や耐湿性を向上させることができる。
【0045】
(マージン層)
積層体20は、
図1に示すように、固体電解質を含むと共に、正極層1及び負極層2のそれぞれに並んで配置するマージン層4を備えてもよい。マージン層4が含む固体電解質は、固体電解質層3が含む固体電解質と同じでも異なっていてもよい。
マージン層4は、層間固体電解質層3Aと正極層1との段差、ならびに層間固体電解質層3Aと負極層2との段差を解消するために設けることが好ましい。したがってマージン層4は、固体電解質層3の主面において、正極層1ならびに負極層2以外の領域に、正極層1または負極層2と略同等の高さで(すなわち、正極層1及び負極層2のそれぞれに並んで配置するように)形成される。マージン層4の存在により、固体電解質層3と正極層1ならびに固体電解質層3と負極層2との段差が解消されるため、固体電解質層3と各電極層との緻密性が高くなり、全固体電池の焼成による層間剥離(デラミネーション)や反りが生じにくくなる。
【0046】
マージン層4を構成する材料は、例えば、La0.5Li0.5TiO3などのペロブスカイト型化合物や、Li14Zn(GeO4)4などのリシコン型化合物、Li7La3Zr2O12などのガーネット型化合物、LiZr2(PO4)3、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3やLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3などのナシコン型化合物、Li3.25Ge0.25P0.75S4やLi3PS4などのチオリシコン型化合物、Li2S-P2S5やLi2O-V2O5-SiO2などのガラス化合物、Li3PO4やLi3.5Si0.5P0.5O4やLi2.9PO3.3N0.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも一種であることが望ましい。
【0047】
(端子)
全固体リチウムイオン二次電池100の第1外部端子6及び第2外部端子7には、導電率が高い材料を用いることが好ましい。例えば、銀(Ag)、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)を用いることができる。端子は、単層でも複数層でもよい。
【0048】
(保護層)
全固体リチウムイオン二次電池100は、積層体20や端子を電気的、物理的、化学的に保護する保護層(図示せず)を積層体20の外周に有してもよい。保護層を構成する材料としては絶縁性、耐久性、耐湿性に優れ、環境的に安全であることが好ましい。例えば、ガラスやセラミックス、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いるのが好ましい。保護層の材料は1種類だけでも良いし、複数を併用してもよい。また、保護層は単層でもよいが、複数層備えていた方が好ましい。その中でも熱硬化性樹脂とセラミックスの粉末を混合させた有機無機ハイブリットが特に好ましい。
【0049】
(全固体リチウムイオン二次電池の製造方法)
全固体リチウムイオン二次電池100の製造方法は、同時焼成法を用いることができる。積層体20を構成する活物質層、集電体層、及び固体電解質層の異種材料を一括焼成により積層体を作製する方法である。同時焼成法を用いた場合、全固体リチウムイオン二次電池100の作業工程を少なくすることができる。また同時焼成法を用いた方が、得られる積層体20が緻密になる。以下、同時焼成法を用いる場合を例に説明する。
【0050】
同時焼成法は、積層体20を構成する各材料のペーストを作製する工程と、固体電解質用のペーストを塗布乾燥して固体電解質層シートを作製する工程と、固体電解質シートに正極層及び負極層を形成し、正極ユニット及び負極ユニットを作製する工程と、正極ユニット及び負極ユニットを交互に積層して積層体を作製する工程と、作製した積層体を同時焼成する工程とを有する。以下、各工程をより詳細に説明する。
【0051】
まず積層体20を構成する正極集電体層1A、正極活物質層1B、固体電解質層3、負極活物質層2B、及び負極集電体層2A、マージン層4の各材料をペースト化する。
【0052】
ペースト化の方法は、特に限定されない。例えば、ビヒクルに各材料の粉末を混合してペーストが得られる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。かかる方法により、正極集電体層1A用のペースト、正極活物質層1B用のペースト、固体電解質層3用のペースト、負極活物質層2B用のペースト、及び、負極集電体層2A用のペースト、マージン層4用のペーストを作製する。
【0053】
積層体20を作製するに際し、以下に説明する正極ユニット及び負極ユニットを準備し、積層体を作製することができる。
【0054】
まずPETフィルム上に固体電解質層3用ペーストをドクターブレード法でシート状に形成し、乾燥して固体電解質層シートを形成する。得られた固体電解質層シート上に、スクリーン印刷により正極活物質層1B用ペーストを印刷、乾燥し、正極活物質層1Bを形成する。
【0055】
次いで、作製された正極活物質層1B上に、スクリーン印刷により正極集電体層1A用ペーストを印刷、乾燥し、正極集電体層1Aを形成する。更にその上に、スクリーン印刷により正極活物質層1B用ペーストを再度印刷し、乾燥する。そして、正極層以外の固体電解質層シートの領域に、マージン層用ペーストをスクリーン印刷し、乾燥することで正極層と略同等の高さのマージン層を形成する。そして、PETフィルムを剥離することで、固体電解質層3の主面に、正極活物質層1B/正極集電体層1A/正極活物質層1Bがこの順で積層された正極層1とマージン層4とが形成された正極ユニットが得られる。
【0056】
同様の手順にて、固体電解質層3の主面に、負極活物質層2B/負極集電体層2A/負極活物質層2Bがこの順に積層された負極層2とマージン層4とが形成された負極ユニットが得られる。
【0057】
そして正極ユニットと負極ユニットを交互にそれぞれの一端が一致しないようにオフセットを行い積層し、全固体電池の積層体が作製される。なお、積層体の積層方向の両端において、固体電解質層を設けてもよい。配置する正極ユニットあるいは負極ユニットについては、固体電解質層3はそれぞれ、最外固体電解質層3Bを用い、その間に配置する正極ユニットあるいは負極ユニットについては、固体電解質層3はそれぞれ、層間固体電解質層3Aを用いる。
【0058】
前記製造方法は、並列型の全固体電池を作製するものであるが、直列型の全固体電池の製造方法は、正極層1の一端と負極層2の一端とが一致するように、つまりオフセットを行わないで積層すれば良い。
【0059】
さらに、作製した積層体を一括して金型プレス、温水等方圧プレス(WIP)、冷水等方圧プレス(CIP)、静水圧プレスなどで加圧し、密着性を高めることができる。加圧は加熱しながら行う方が好ましく、例えば40~95℃で実施することができる。
【0060】
作製した積層体は、ダイシング装置を用いてチップに切断し、次いで脱バインダー及び焼成することにより全固体電池の積層体が製造される。
【0061】
脱バインダー工程は、焼成前に積層体20に含まれるバインダー成分を予め加熱分解させておくことで、焼成工程におけるバインダー成分の過剰及び急激な分解を抑制することができる。脱バインダー工程は、作製した積層体20を台座用のセラミックスセッターに載置し、例えば、窒素雰囲気下で300℃~800℃の温度範囲で、0.1~10時間にて実施することができる。還元雰囲気であれば、窒素雰囲気の代わりに、例えば、アルゴン雰囲気、窒素水素混合雰囲気で脱バインダー工程を行ってもよい。また、金属の集電体層が酸化しなければ、微少の酸素を含む還元雰囲気でも構わない。
【0062】
焼成は、例えば、窒素雰囲気下で600℃~1000℃の温度範囲で熱処理することで焼結体を得ることができる。焼成時間は、例えば、0.1~3時間とする。還元雰囲気であれば、窒素雰囲気の代わりに、例えば、アルゴン雰囲気、窒素水素混合雰囲気で焼成を行ってもよい。
【0063】
ここで、所望の反りを有する積層体20を作製するためには、種々の方法をとり得る。例えば、焼成工程において急速な焼成を行うと反りが発生しやすくなることを利用して、焼成前の積層体の側面の高さ(上記の台座用のセラミックスセッターから積層体の側面の高さh0)に対して、焼成後の所望の反り角度に相当する高さの上昇分Δhを足した高さ位置h1に、反り量を制御するための蓋用のセラミックスセッターを配置して、積層体をそれ以上反らせないようにするという方法を用いることができる。この方法は、蓋用のセラミックスセッターと積層体との間に所望の反り角度を形成するためのギャップを設けるものである。なお、蓋用のセラミックスセッターを配置する高さ位置h1は、焼成後の積層体の収縮率を考慮した高さ位置とする。蓋用のセラミックスセッターの高さ位置は、台座用のセラミックスセッターの四隅に高さ調整用の積層体を配置することで、容易に調製することができる。例えば、焼成前の積層体と蓋用セラミックスセッターとの隙間を10μmにしたい場合は、焼成前の積層体よりも10μm厚みの大きい高さ調整用の積層体を用意すれば良い。また急速な焼成とは、例えば昇温速度を1000℃/時間以上で焼成するものである。また、台座用及び蓋用に用いるセラミックスセッターは、反りをより制御するために、平滑なセラミックスセッターが好ましい。例えばセラミックスセッターの主面が研磨されたセラミックスセッターを用いることができる。さらにセラミックスセッターは、緻密な基板でもよく、孔を有する多孔な基板でもよい。材質としては、積層体の焼成温度よりも焼結温度の高い材質が好ましく、例えば、ジルコニア、アルミナ等が好ましい。
その他、積層体20の最外固体電解質層3Bの厚みを、側面5Aと側面5B側で変えることで、側面5Aと側面5Bの最外固体電解質層の焼成縮率に差を生じさせ、所望の反りを有する積層体20を作製してもよい。
【0064】
焼結体をアルミナなどの研磨材とともに円筒型の容器に入れ、バレル研磨してもよい。これにより積層体の角の面取りをすることができる。そのほかの方法としてサンドブラストにて研磨しても良い。
【0065】
(端子形成)
焼結した積層体20(焼結体)に第1外部端子6と第2外部端子7をつける。第1外部端子6及び第2外部端子7は、正極層1と負極層2にそれぞれ電気的に接触するよう形成する。例えば、焼結体の側面から露出した正極層1と負極層2に対しスパッタリング、ディップコート、スクリーン印刷、スプレーコート等の公知の手段により形成できる。
所定の部分にのみ形成する場合は、例えばテープにてマスキング等を施してから形成する。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0067】
例えば、
図2に示す積層体20では、第2側面に電極層が露出していないが、第2側面に正極層1及び負極層2の少なくとも一方を露出させてもよい。
【実施例】
【0068】
[実施例1]
(固体電解質層用ペーストの作製)
Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3の粉末100部に対して、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部を加えてボールミルで湿式混合した。その後、バインダーとしてバインダー16部と、可塑剤としてフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して最外固体電解質層ペーストとして調製した。
この固体電解質層用ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、最外固体電解質層シート、及び、層間固体電解質層シートを得た。最外固体電解質層シート及び層間固体電解質層シートの厚さはいずれも20μmとした。
【0069】
(正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストの作製)
正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストは、Li3V2(PO4)3を、所定の重量比率で混合した後、この粉末100部に対して、バインダー15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、混合・分散して正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストを作製した。
【0070】
(正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストの作製)
正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストは、集電体としてCu100部、バインダー10部、溶媒ジヒドロターピネオール50部を加えて混合・分散して正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストを作製した。
【0071】
(電極ユニットの作製)
正極ユニット及び負極ユニットを以下の通り作製した。
上記の層間固体電解質層シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで活物質用ペーストを印刷した。次に、印刷した活物質用ペーストを乾燥し、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで集電体用ペーストを印刷した。次に、印刷した集電体用ペーストを乾燥し、更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで活物質用ペーストを再度印刷した。印刷した活物質ペーストを乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、層間固体電解質層シート上に、活物質用ペースト、集電体用ペースト、活物質用ペーストがこの順に印刷・乾燥された電極ユニットのシートを得た。
【0072】
(積層体の作製)
最外固体電解質層シートを重ね、その上に電極ユニット30枚(正極ユニット15枚、負極ユニット15枚)を、層間固体電解質3Aを介するようにして交互に積み重ねた。このとき、奇数枚目の電極ユニットの集電体ペースト層が一方の端面にのみ延出し、偶数枚目の電極ユニットの集電体ペースト層が反対側の端面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねた。この積み重ねられたユニットの上に、最外固体電解質層3B用の固体電解質層シートを積み重ねた。その後、これを熱圧着により成形した後、切断して積層チップを作製した。チップサイズは、第1側面(W)×第2側面(L)×高さ(H)=4.1mm×6.0mm×2.0mmであった。従って、チップの縦横比である、W:Lは、1:1.5であった。
次に、台座用のセラミックスセッター上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が0.5°になる高さ位置に蓋用のセラミックスセッターを設置し、その後、積層チップを同時焼成して積層体20を得た。なお、蓋用のセラミックスセッターは、台座用のセラミックスセッターの四隅に、焼成後の積層チップよりも厚みが14μm大きい高さ調整用の積層体を配置し、この上に設置した。同時焼成は、窒素雰囲気中で昇温速度1000℃/時間で焼成温度840℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。
【0073】
(反り量の評価)
得られた積層体(焼結体)を
図3のように、平坦な台に置き、x方向から写真撮影を行い、画像処理により、反り角度A1を取得した。同様に
図4のように、y方向から写真撮影を行い、画像処理により、反り角度A2を取得した。
【0074】
(全固体二次電池の作製、及び、評価)
公知の方法により、焼結した積層体(焼結体)に第1外部端子及び第2外部端子をつけて、全固体二次電池を作製した。
第1外部端子及び第2外部端子を対向するようにスプリングプローブで挟み込み、充放電試験を行うことで全固体二次電池の初回放電容量及び1000サイクル後の容量維持率(サイクル特性)を測定した。測定条件は、充電及び放電時の電流はいずれも0.2C、充電時及び放電時の終止電圧をそれぞれ1.6V、0Vとした。その結果を表1に示す。なお、1回目の放電時の容量を初回放電容量とした。また容量維持率は、1000サイクル目の放電容量を初回の放電容量で割って求めた。
結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
[実施例2~実施例8]
実施例2~実施例8はそれぞれ、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が1.0°、1.8°、2.1°、2.5°、3.3°、3.5°、4.0°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製した。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0077】
[実施例9~実施例10]
実施例9~実施例10はそれぞれ、縦横比W:Lが1:3.5、1:4.0となるチップを用いる共に、それぞれ、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が4.5°、5.0°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製した。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0078】
[実施例11~実施例13]
実施例11~実施例13はいずれも、縦横比W:Lが1:1となるチップ用いると共に、それぞれ、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が1.5°、2.0°、3.0°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製した。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0079】
[実施例14~実施例18]
実施例14~実施例18はいずれも、第1側面(W)×第2側面(L)×高さ(H)=3.0mm×4.4mm×1.1mm(従って、チップの縦横比W:Lは1:1.5)のチップサイズのチップを用いると共に、それぞれ、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が1.0°、1.8°、2.3°、2.5°、3.0°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製した。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0080】
[比較例1~比較例2]
比較例1~比較例2はそれぞれ、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が0°、0.2°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例1と同様の条件で行った。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0081】
[比較例3~比較例4]
比較例3~比較例4はそれぞれ、縦横比W:Lが1:1.2、1:9.0となるチップを用いる共に、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が6.5°、5.0°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例1と同様にして全固体二次電池を作製した。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0082】
[比較例5]
比較例5は、実施例11~13で用いたチップと同じチップを用いる共に、セラミック台上に積層チップを静置し、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が6.0°になる高さ位置に高さ調整用の積層体、及び、蓋用のセラミックスセッターを設置した以外は、実施例11と同様にして全固体二次電池を作製した。第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2は表1に記載した通りである。
【0083】
表1に示した結果に基づくと、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が0.5°以上、5.0°以下であり、かつ、第1側面側から見た反りの角度が8.0°以下である実施例1~18では、86%以上のサイクル特性が得られた。
これに対して、第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が0.5°未満の場合(比較例1及び2)、あるいは、平均角度が5.0を超えている場合(比較例3及び5)は、サイクル特性は82%以下であった。
また、平均角度が5.0°あっても、かつ、第1側面側から見た反りA1の角度が8.0°を超えている比較例4では、サイクル特性は72%であった。
【0084】
第1側面側から見た反りA1、及び第2側面側から見た反りA2の平均角度が0.5°以上、4.0°以下である実施例1~8、実施例11~18では、90%以上のサイクル特性が得られた。なお、これらの実施例では、第1側面側から見た反りの角度A1が4.5°以下であった。
【0085】
実施例1~6、実施例11~13、及び、実施例14~18は互いに、チップサイズ、及び/又は、縦横比が異なるが、反りの平均角度が同程度のものは同程度のサイクル特性が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、所定の角度の反りを有することによって良好なサイクル特性を有する全固体二次電池を提供できる。
【符号の説明】
【0087】
1 正極層
1A 正極集電体層
1B 正極活物質層
2 負極層
2A 負極集電体層
2B 負極活物質層
3 固体電解質層
6 第1外部端子
7 第2外部端子
20 積層体
100 全固体二次電池