(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】アリール官能化ポリシロキサンにおけるアリール切断阻害
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20240625BHJP
C08K 5/19 20060101ALI20240625BHJP
C08K 5/56 20060101ALI20240625BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240625BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/19
C08K5/56
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2021510361
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019046985
(87)【国際公開番号】W WO2020060702
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、シャンチン
(72)【発明者】
【氏名】スウィアー、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ビュークマ、マーティン エー.
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017195(JP,A)
【文献】特開2014-122306(JP,A)
【文献】特表2010-519584(JP,A)
【文献】特開2015-134851(JP,A)
【文献】Gelest Inc.,SST-3PM1,2023年08月28日,URL: https://www.gelest.com/product/SST-3PM1/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール官能化ポリシロキサンと第四級アンモニウム化合物と、を含む組成物であって、
前記アリール官能化ポリシロキサンが、シラノール官能基及びTシロキサン単位を有し、
前記第四級アンモニウム化合物が、ハロゲン化物、サリチル酸塩、オクタン酸塩、クエン酸二水素、マレイン酸塩、水素グルタル酸アニオン、及びビス酒石酸アニオンからなる群から選択されるアニオンを有し、かつ、N,N,N-トリメチルエタノールアンモニウムカチオンを有する化合物である、又は、
前記第四級アンモニウム化合物が
、1:2のモル比のアミノエチルアミノイソブチル末端ポリジメチルシロキサンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応生成物、ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、デカメトニウムブロマイド、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、1:2のモル比のアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応生成物、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシクロトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、1-アリル-3-メチルイミジゾリウムクロライド、1:2のモル比のエチルアミノイソブチル末端ポリジメチルシロキサンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応生成物
及び、2:1のモル比のコリンヒドロキシドと無水コハク酸末端ポリジメチルシロキサン(75から100cStを有する)との反応生成
物からなる群から選択される化合物である、組成物。
【請求項2】
第四級アンモニウム化合物の濃度が、アリール官能化ポリシロキサン重量に対して、0.01~20重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、チタン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、ビスマス、コバルト、鉄、バナジウム、及びカドミウムからなる群から選択される金属を含有する有機金属化合物からなる群から選択される、いずれか1つの有機金属触媒又は2つ以上の有機金属触媒の組み合わせを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、無機微粒子を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アリール官能化ポリシロキサンが、架橋されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、コーティング、封入剤、エラストマー、接着剤、及びゲルからなる群から選択される1つ以上の形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を120℃以上の温度まで加熱すること、を含む、方法。
【請求項8】
前記組成物を基材に適用することと、次いで120℃以上の温度まで加熱することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の分野
本発明は、アリール官能化ポリシロキサンと、アリール官能化ポリシロキサンのアリール切断を阻害する特定の第四級アンモニウム化合物と、を含有する組成物に関する。
【0002】
序論
アリール官能化ポリシロキサン、例えばフェニル官能化ポリシロキサン及び置換フェニル官能化ポリシロキサンは、熱的に不安定になる傾向があり、高温で熱的に誘起されるアリール切断を受ける性質がある。アリール官能化ポリシロキサンがシラノール官能基を有する場合、熱的に誘起されるアリール切断が起こる性質が強くなる。このような熱的に誘起されるアリール切断は望ましくないものであり、アリール官能化ポリシロキサンの多くの用途にとっての課題である。
【0003】
アリール官能化ポリシロキサンは、摂氏120度(℃)以上、150℃以上、180℃以上、更には200℃以上の温度にさらされることがある用途において、コーティング、封入剤、及び接着剤として有用である。これらの温度では、アリール切断により、芳香族副生成物、例えばベンゼンが望ましくなく生成されること、並びに/又はアリール官能化ポリシロキサンが黄変すること、及び/若しくは空気環境において硬くて脆くなることがある。
【0004】
多くの場合、エラストマー、コーティング、封入剤、及び接着剤として使用されるアリール官能化ポリシロキサンは、アリール官能化ポリシロキサンとして適用され、硬化して架橋アリール官能化ポリシロキサンを形成する。アリール切断は、このようなアリール官能化ポリシロキサンの硬化前、硬化中、及び硬化後の懸念事項である。硬化は、シラノール官能化されているアリール官能化ポリシロキサンの縮合反応による架橋によって起こすことができる。硬化はまた、アリール官能化ポリシロキサンがシラノール官能基を有するか否かにかかわらず、不飽和炭素-炭素結合によるヒドロシリル化反応による架橋によっても起こすことができる。シラノールの存在により、熱的に誘起されるアリール切断の性質が高まる傾向がある。
【0005】
アリール官能化ポリシロキサンの熱的に誘起されるアリール切断を阻害する方法が見出されれば、アリール官能化ポリシロキサンテクノロジーの技術分野が進歩することとなる。シラノール官能化されているアリール官能化ポリシロキサンの熱的に誘起されるアリール切断を阻害する方法について特定することが特に望ましい。同時に、120℃以上、150℃以上、特に180℃以上、更には200℃以上の温度で、シラノール官能基の有無にかかわらず、アリール官能化ポリシロキサンのアリール切断を阻害する方法が存在すれば更により望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の発見の一部として、更なる問題点は、アリール官能化ポリシロキサンが無機微粒子の存在下にあるとき、アリール官能化ポリシロキサンの熱的に誘起されるアリール切断がより容易に起こることが、驚くべきことに、また予想外に発見された。すなわち、アリール官能化ポリシロキサンにおいて起こるアリール切断の程度は、アリール官能化ポリシロキサンが、無機微粒子、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、及び粘土粒子の存在下にあるときに高まる。
【0007】
本発明は、アリール官能化ポリシロキサン、例えばフェニル官能化ポリシロキサン及び置換フェニル官能化ポリシロキサンの熱的に誘起されるアリール切断を阻害する上での問題点の解決策を提供する。また、本発明は、シラノール官能化されているアリール官能化ポリシロキサンの熱的に誘起されるアリール切断を阻害する上での問題点の解決策も提供する。同時に、本発明は、120℃以上、150℃以上、特に180℃以上、更には200℃以上の温度で、このようなアリール官能化ポリシロキサンをアリール切断する上での問題点に対する解決策を提供する。更にまた、上記問題点を解決することに加えて、本発明は、無機微粒子、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、及び粘土粒子の存在下でのアリール官能化ポリシロキサンのアリール切断を阻害する上での問題点を解決するものである。
【0008】
本発明は、ポリシロキサンがシラノール官能化されている場合であっても、またこれが金属触媒を含む無機微粒子の存在下にある場合であっても、全てではないが特定の第四級アンモニウム化合物が、アリール官能化ポリシロキサンと混合されたときに、アリール官能化ポリシロキサンの熱的に誘起されるアリール切断を阻害するということを、驚くべきことに、また予想外に発見した結果である。第四級アンモニウム化合物は、最も広い範囲では、任意のカチオン性窒素成分を有することができる。ただし、第四級アンモニウム化合物のアニオンは、ハロゲン化物(例えば塩化物及び臭化物)、サリチル酸塩(2-ヒドロキシベンゾエート)、オクタン酸塩(CH
3(CH
2)
6COO
-)、酢酸塩(CH
3COO
-)、クエン酸二水素(C
6H
7O
7
-、
【化1】
)、マレイン酸塩(-O
2CCHCHCO
2
-)、水素グルタル酸アニオン(HO
2C(CH
2)
3)CO
2
-)、及びビス酒石酸アニオン(HOOC(CHOH)
2COO
-)からなる群から選択される必要がある。120℃以上、150℃以上、180℃以上の温度、更には200℃以上の温度であっても、アリール官能化ポリシロキサンがシラノール官能基を有する場合であっても、また無機微粒子の存在下にある場合であっても、このような第四級アンモニウム化合物をアリール官能化ポリシロキサンと混合すると、アリール切断は劇的に低減する。
【0009】
第1の態様では、本発明は、アリール官能化ポリシロキサンと第四級アンモニウム化合物と、を含む組成物であって、第四級アンモニウム化合物が、ハロゲン化物、サリチル酸塩、オクタン酸塩、酢酸塩、クエン酸二水素、マレイン酸塩、水素グルタル酸アニオン、及びビス酒石酸アニオンからなる群から選択されるアニオンを有する、組成物である。
【0010】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を、120℃以上、150℃以上、180℃以上、又は更には200℃以上の温度まで加熱すること、を含む、方法である。
【0011】
本発明は、硬化、非硬化、又は硬化しつつあるときのいずれであっても、アリール官能化シリコーン系ポリマーにおける熱的に誘起されるアリール切断を阻害するのに、ひいてはアリール官能化コーティング、封入剤、及び接着剤の熱安定性を強化するのに、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法は、日付が試験方法番号で示されていない場合、本文書の優先日における直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。以下の試験方法の略語及び識別名が本明細書に適用される:ASTMは米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)を指し、ENは欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fuer Normung)を指し、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standardization)を指す。
【0013】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。分子量は、特に明記しない限り、重量平均分子量を指す。分子量については、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィによって求める。
【0014】
本発明は、組成物である。組成物は、必須成分を含有する限り、任意の形態であってもよい。例えば、組成物は、大量の液体、コーティング、封入剤、及びエラストマー、並びに/又はフィルムであってもよい。組成物は、縮合及び/又はヒドロシリル化によって硬化するのに有用な組成物であってもよい。更に、又は代替的に、組成物は、縮合及び/又はヒドロシリル化によって硬化されたポリシロキサンを含んでもよい。組成物により、物品を少なくとも部分的に、更には完全に覆うことができる。例えば、組成物は、発光ダイオードの周囲の封入剤であってもよく、又は別の材料上のフィルムであってもよい。組成物はまた、2つの構成要素間の接着剤としても有用である。
【0015】
組成物は、アリール官能化ポリシロキサンを含む。アリール官能化ポリシロキサンは、シリコーン原子に結合したアリール官能基を有する。アリール官能基は、例えば、フェニル基又は置換フェニル基であってもよい。置換フェニル基は、フェニル基の水素のうちの1つ又は2つ以上が水素以外のもので置換されている、フェニル基である。アリール官能化ポリシロキサンは、M、D、T、及びQシロキサン単位の任意の組み合わせを含んでもよく、又はこれらからなってもよい。「M」単位は、以下の構造、R1R2R3SiO1/2を有する単位に相当し、「D」単位は、以下の構造、R3R4SiO2/2を有する単位に相当し、「T」単位は、以下の構造、R5SiO3/2を有する単位に相当し、「Q」単位は、以下の構造、SiO4/2を有する単位に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、各々の存在が独立して、水素、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル、ハロゲン、又は任意の他のペンダント基から選択され、ただし、アリール基(すなわち、アリール官能基)である少なくとも1つのR基が存在する。好ましくは、アリール官能化ポリシロキサンは、シロキサン単位の総モルに対して、30モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上のアリール置換シロキサン単位を有する。アリール置換シロキサン単位のモル%については、ケイ素-29核磁気共鳴分光法(29Si NMR)によって求める。望ましくは、アリール官能化ポリシロキサンは、シロキサン単位の総モルに対して、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上のT単位を有する。T単位モル%については、29Si NMRによって求める。好ましくは、アリール官能化ポリシロキサンは、30モル%以上のアリール官能化T単位(R基がアリールであるT単位)を有する。アリール官能化T単位モル%については、29Si NMRによって求める。
【0016】
アリール官能化ポリシロキサンは、シラノール官能基を含んでもよく、又はシラノール官能基を含まなくてもよい。シラノール官能基を有するアリール官能化ポリシロキサンは、シロキサン単位のR基のうちの1つ又は2つ以上がヒドロキシル(-OH)である上記のようなM、D、及び/又はTシロキサン単位を有する。アリール切断は、概して、シラノール官能基を有するアリール官能化ポリシロキサンにおいて、より多く起こる。更に、驚くべきことに、本発明の組成物によると、シラノール官能基を有する一定のアリール官能化ポリシロキサンにおいて、アリール切断の劇的な低減を示す。本発明のアリール官能化ポリシロキサンは、アリール官能化ポリシロキサンに対して、1重量パーセント(重量%)以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、更には10重量%以上のヒドロキシル基を有してもよいのと同時に、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、更には4重量%以下のヒドロキシル基を有してもよい。ヒドロキシル基の、アリール官能化ポリシロキサンに対する重量%については、29Si NMRによって平均値として求める。
【0017】
アリール官能化ポリシロキサンについては、当該技術分野において公知の標準的な方法によって調製する。例えば、本発明に使用するためのポリシロキサンは、米国特許第7649059号、同第9550866号、及び/又は米国特許出願公開第20140191161号に教示されている全般手順を使用して作製することができる。
【0018】
本発明の組成物のアリール-ポリシロキサンは、硬化(すなわち、架橋)していても、非硬化(非架橋)であってもよい。アリール-ポリシロキサンの硬化は、アリール官能化ポリシロキサンがシラノール官能基を有する場合、ヒドロシリル化によって行うことができる。アリール官能化ポリシロキサンの硬化は更に、又は代替的に、アリール官能化ポリシロキサンが不飽和炭素-炭素結合を含むという条件では、アリール官能化ポリシロキサンがシラノール官能基を有するか否かと無関係に、ヒドロシリル化によって行うことができる。これらの硬化反応について、以下で更に記載する。
【0019】
組成物は、特定の第四級アンモニウム化合物を含む。驚くべきことに、また予想外に、選択による第四級アンモニウム化合物がアリール官能化ポリシロキサンのアリール切断を阻害することが発見された。第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウムカチオン成分及びアニオン成分を有する。本発明の最も広い範囲では、カチオンは、任意の第四級アンモニウムカチオンであってもよい。N,N,N-トリメチルエタノールアンモニウムカチオン(「コリン」とも呼ばれる)を有する第四級アンモニウム化合物は、アリール切断を阻害するのに特に効果的である。第四級アンモニウム化合物のアニオンは、ハロゲン化物、サリチル酸塩(2-ヒドロキシベンゾエート)、オクタン酸塩(CH3(CH2)6COO-)、酢酸塩(CH3COO-)、クエン酸二水素、マレイン酸塩、水素グルタル酸アニオン(HO2C(CH2)3)CO2
-)、及びビス酒石酸アニオンからなる群から選択される。ハロゲン化物は、望ましくは塩化物及び臭化物から選択される。組成物は、単一の種類の第四級アンモニウム化合物又は複数の異なる種類の第四級アンモニウム化合物を含んでもよい。
【0020】
組成物中の第四級アンモニウム化合物の濃度は、概して、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、なおより好ましくは0.5重量%以上、更により好ましくは1.0重量%以上であり、また2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上であってもよく、また10重量%以上、更には15重量%以上であってもよく、同時に、概して、20重量%以下、典型的には15重量%以下であり、また14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9.0重量%以下、8.0重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、更には5.0重量%以下であってもよく、ただし重量%は、アリール含有ポリシロキサン重量に対する全第四級アンモニウム化合物の重量%である。
【0021】
組成物は、無機微粒子を更に含んでもよい。無機微粒子は、無機材料の微粒子である。無機微粒子がアリール官能化ポリシロキサンの組成物中に存在する場合、組成物を加熱する際に起こるアリール切断の程度は、無機微粒子が存在しない場合よりも大きいことが発見された。したがって、無機微粒子は、アリール官能化ポリシロキサンのアリール切断を促進する傾向がある。それにもかかわらず、驚くべきことに、また予想外に、本発明の特定の第四級アンモニウム化合物は、無機微粒子の存在下であってもアリール官能化ポリシロキサンのアリール切断を阻害することが更に発見された。任意の無機微粒子が、アリール切断を促進すると予想される。
【0022】
無機微粒子としては、以下の材料のうちの2つ以上の微粒子のいずれか1つ又は組み合わせが挙げられる:硫化物、スルホ塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、塩化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、珪灰石(ケイ酸カルシウム)、ガラス、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、三酸化アンチモン、バリウムフェライト、バライト(硫酸バリウム)、硫酸カルシウム、シリカ、粘土、フランキン繊維、ケイ酸鉄、リサージ、リトポン、パイロフィライト、石膏、パーライト、フィロケイ酸塩、バーミキュライト、バライト、及び無機蛍光体の材料。無機微粒子としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ及び粘土(例えばカオリン粘土)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の無機充填剤が挙げられる。
【0023】
無機蛍光体は、組成物が発光半導体構成要素の製造に使用されるとき一般的に含まれる、無機微粒子である。無機蛍光体充填剤としては、イットリウム(Y)、ルテチウム(Le)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、及びサマリウム(Sm)から選択される少なくとも1つの元素と、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択される少なくとも1つの元素と、を含有する、セリウム(Ce)ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)蛍光体、セリウムドープされたガーネット蛍光体が挙げられる。無機蛍光体はまた、希土類でドープされた他のガーネット、例えば、Y3Ga5O12:Ce3+、Y(Al、Ga)5O12:Ce3+、及び、Y(Al、Ga)5O12:Tb3+、並びに希土類でドープされたアルカリ土類金属硫化物、例えば、SrS:Ce3+、Na、SrS:Ce3+、Cl、Srs:CeCl3、CaS:Ce3+、及びSrSe:Ce3+、希土類でドープされたチオガレート、例えば、CaGa2S4:Ce3+、及びSrGa2S4:Ce3+、並びに希土類でドープされたアルミン酸塩、例えばYAlO3:Ce3+、YGaO3:Ce3+、Y(Al、Ga)O3Ce3+など、並びに希土類でドープされたオルトシリケートM2SiO5:Ce3+(M:Sc、Y、Sc)、例えばY2SiO5:Ce3+など、並びにイットリウム化合物、スカンジウム化合物、又はランタン化合物の全て、であってもよい。
【0024】
有機金属触媒もまた、組成物中に含まれてもよく、無機微粒子の形態である。有機金属触媒は、アリール官能化ポリシロキサンのヒドロシリル化などの反応を促進することができる。有機金属触媒としては、白金、チタン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、ビスマス、コバルト、鉄、バナジウム、及びカドミウムからなる群から選択される金属を含有する、有機金属化合物が挙げられる。
【0025】
無機微粒子は、組成物中に、アリール官能化ポリシロキサンの重量に対して、0重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、2.0重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上、6.0重量%以上、7.0重量%以上、8.0重量%以上、更には9.0重量%以上、10重量%以上、25重量%以上、50重量%、更には100重量%以上の濃度で存在してもよく、同時に、アリール官能化ポリシロキサンの重量に対して、概して、500重量%以下、300重量%以下、250重量%以下、200重量%以下、150重量%以下、100重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、又は更には10重量%以下の濃度で存在する。
【0026】
本発明の組成物の望ましい特徴点は、それが、予想外に、また驚くべきことに、第四級アンモニウム化合物を含まない、又は異なる第四級アンモニウム化合物を含む、同じ組成物よりも、少ししかアリール切断しないということである。具体的には、この予想外の、また驚くべき結果は、120℃以上、150℃以上、180℃以上の温度、更には200℃以上の温度において当てはまる。したがって、本発明はまた、本発明の組成物を、120℃以上、150℃以上、180℃以上、更には200℃以上の温度まで加熱すること、を含む、方法も含む。本方法は、本発明の組成物を基材に適用すること(例えば、基材を組成物でコーティング又は封入又は接着すること)と、組成物を基材に適用する前、適用中、及び/又は適用後に、120℃以上、150℃以上、180℃以上、更には200℃以上まで加熱することと、を更に含んでもよい。有利には、本方法は、本発明の組成物用に指定された第四級アンモニウム化合物を含有しない組成物を使用する同一の方法に比べて、アリール官能化ポリシロキサンのアリール切断が少ない。アリール切断の低減は、多くの場合、本発明用に指定された第四級アンモニウム化合物を含まない同一の配合物に対して、1桁分以上、2桁分以上、更には3桁分以上になる。
【0027】
本発明の組成物は、例えば、接着剤、コーティング、封入剤、エラストマー、又はゲルとして使用することができる。本発明の方法は、組成物を基材に適用すること、を含んでもよい。本方法は、アリール官能化ポリシロキサンの架橋を、組成物を基材に適用する前、適用中、及び/又は後に誘起すること、を更に含んでもよい。例えば、本発明の方法は、縮合及びヒドロキシル化から選択される、1つ以上の方法であってもよい。
【0028】
本発明の組成物におけるアリール官能化ポリシロキサンの架橋は、アリール官能化ポリシロキサンがまたシラノール官能基も含むとき、縮合反応によって達成することができる。概して、シラノールヒドロキシルの濃度は、縮合を達成するためにアリール官能化ポリシロキサンの1重量%を超える必要があり、さもなければ、ヒドロキシルは、縮合に効果的に関与するのに十分な程にはポリマーの表面で露出されない。組成物は、縮合の前、縮合中、又は縮合後、120℃以上、150℃以上、180℃以上、更には200℃以上の温度にさらされることがあり、そのことから、アリール官能化ポリシロキサンの縮合反応中にアリール切断を防止することは重要である。
【0029】
本発明の組成物におけるアリール官能化ポリシロキサンの架橋は、シラノール官能基を有していない、又はシラノール官能基を有する、アリール官能化ポリシロキサンによるヒドロシリル化反応によって達成することができる。ヒドロシリル化は、水素-ケイ素(ヒドリド、Si-H)基と不飽和炭素-炭素結合との間の、有機金属触媒による反応である。したがって、本発明の組成物は、1つ又は2つ以上の不飽和炭素-炭素結合を有する化合物を含んでもよい(又はヒドロシリル化反応に使用しない場合、それを含まなくてもよい)。不飽和炭素-炭素結合としては、炭素-炭素二重結合及び炭素-炭素三重結合が挙げられる。ヒドロシリル化反応に使用される本発明の組成物は、有機金属触媒と、1つ又は2つ以上の不飽和炭素-炭素結合を有する成分との両方を含む。有機金属触媒は、上記のとおりである。好ましくは、有機金属触媒は、白金触媒である。組成物は、ヒドロシリル化反応の前、ヒドロシリル化反応中、又はヒドロシリル化反応後、120℃以上、150℃以上、180℃以上、更には200℃以上の温度にさらされることがあり、そのことから、アリール官能化ポリシロキサンのヒドロシリル化反応中にアリール切断を防止することは重要である。
【0030】
本発明の組成物の用途では、120℃以上、150℃以上、180℃以上、更には200℃以上の温度、また更には250℃以上の温度への曝露を必要とすることがある。既に述べたように、組成物は、縮合反応又はヒドロシリル化反応中、これらの温度にさらされることがある。このような架橋反応が行われた後であっても、又はそれらが起こらない場合であっても、用途では、このような温度への曝露を必要とすることがある。例えば、本発明の組成物は、発光ダイオード(LED)の上のコーティング又は封入剤又はエラストマーデバイスとして有用であり、このような用途では、組成物は、このような温度にさらされることがある。本発明の組成物は、本発明の組成物でのアリール切断がこれらの温度での低減されるため、このような用途に特に十分に好適である。
【実施例】
【0031】
以下の実施例(Ex)及び比較例(Comp Ex)は、調製し、次いで、アリール切断の程度について試験した、組成物を構成するものである。試験結果により、本発明の組成物は、本発明の範囲外の組成物よりも、アリール官能化ポリシロキサンのアリール切断が著しく少なくしか示されないことについてが明らかにしている。
【0032】
本実施例に使用されるポリシロキサンは、米国特許第7649059号、同第9550866号、及び/又は米国特許出願公開第20140191161号に教示されているものなどの公知の方法によって特定の特性に調製することができる。
【0033】
アリール切断の特性評価
実施例及び比較例の組成物は、アリール切断時にベンゼンを生成する、フェニル官能化ポリシロキサンを含有する。実施例及び比較例からの試料組成物のアリール切断に対する熱安定性については、組成物を180℃で30分間保持しながら、水素炎イオン化検出によるガスクロマトグラフィ(GC-FID)でベンゼン発生の程度を評価することによって求める。0.05~0.10グラム(g)の試料組成物をガスクロマトグラフィ装置(GC,Agilent HP6890 FID Gas Chromatograph System(Hewlett Packard))の閉じた10mLヘッドスペースに送り入れる。水素炎イオン化検出によるガスクロマトグラフィ(GC-FID)によって分析するために、試料を180℃まで30分間かけて加熱して、ベンゼンの存在を確認する。試料の上方のヘッドスペース内のベンゼンの濃度については、完全蒸発法(full evaporation technique)を使用して、GCを較正することによって求めた。試料の百万重量部当たりの重量部(ppm)でのベンゼン発生については、GC-FIDヘッドスペースで試験した量を試料重量で除算することによって計算した。この試験からのベンゼン発生が多くなることは、アリール切断に対する熱安定性が悪くなること(すなわち、より広範なアリール切断)を示すものであった。アリール官能化ポリシロキサン以外の他のアリール官能化ポリシロキサンについての同様の分析は、フェニル官能化ポリシロキサンについてベンゼンの量を定量化するのと同様の要領で発生したアリール材料の量を定量化することにより、同様の方法によって行うことができる。
【0034】
シラノールを有するアリール官能化ポリシロキサン
シラノールを有するアリール官能化ポリシロキサンは、縮合反応において一般的に使用されている。以下の実施例は、本発明の範囲内の第四級アンモニウム化合物がこのようなポリシロキサンにおけるアリール切断を低減することについて示すものであり、これは、縮合反応におけるポリシロキサン及び反応生成物の熱安定性にとって望ましい。
【0035】
試料調製
試料組成物については、歯科用カップ内で組成物の成分を組み合わせ、回転ミキサ(SPEEDMIXER(商標)DAC 150 FVZ(FlackTek Inc.))を使用して2,500回転/分の回転速度で1分間混合することによって調製した。2枚の積層フィルムをプレスし、次いで通気オーブン内で70℃にて30分間乾燥させて、溶媒を除去して試料組成物を製造することによって、約2gの得られたペーストを形成する。
【0036】
比較例A:シラノール官能基、充填剤なし
比較例Aについては、10.0gの樹脂A1及び3.0gのエタノールを組み合わせることによって調製する。樹脂A1は、以下の式、TPh
0.45T0.40D0.15を特徴とするポリシロキサンであり、樹脂重量に基づいて6.5重量%の-OH基を有し、ポリスチレン標準(例えば、Dow Performance Siliconesから入手可能なRSN-0249フレーク樹脂)を使用するゲル浸透クロマトグラフィによって求めて3.055g/モルの重量平均分子量を有する。ここで、「TPh」は「PhSiO3/2」単位を指し、「T」は「CH3SiO3/2」単位を指し、Dは「(CH3)2SiO2/2」単位を指す。十分な単位がヒドロキシル置換されており、特定の量のヒドロキシルをもたらす。下付き字は、ポリシロキサン樹脂中の異なる単位のモル比を指す。
【0037】
特性評価結果により、アリール切断特性評価において27ppmのベンゼン生成を明らかにしている。アリール切断特性評価結果を表1に比較目的のために含める。
【0038】
比較例B:シラノール官能基、並びに炭酸カルシウム及びタルク充填剤
比較例Bについては、20gの炭酸カルシウム(Sigma-Aldrich製、カタログ番号239216)及び20gのタルク(3MgO*4SiO2*H2O、約350のメッシュによる粉末、Sigma-Aldrich製、カタログ番号420433)を10.0gの樹脂A1及び3.0gのエタノールと組み合わせること以外、比較例Aと同様の要領で調製し特性評価する。
【0039】
特性評価結果により、アリール切断特性評価において4868ppmのベンゼン生成を明らかにしている。結果により、無機微粒子よって、アリール切断の程度が2桁分超で劇的に増加したことについて明らかにしている。特性評価結果を表1に比較目的のために含める。
【0040】
比較例C~F:シラノール官能基、無機微粒子及び更なる添加剤
比較例C~Fについては、表1の「説明」に記載されるように、組成物に無機微粒子を含むこと以外、比較例Bと同様の要領で調製し特性評価する。特性評価結果は表1中にある。コメントは、アリール切断の比較例Bに対する変化を示す。
【0041】
比較例G~I:シラノール官能基、無機微粒子及び「範囲外」第四級アンモニウム第四級化合物(quat)
比較例C~Fについては、表1の「説明」に記載されるように、組成物に第四級アンモニウム化合物を含むこと以外、比較例Bと同様の要領で調製し特性評価する。特性評価結果は表1中にある。コメントは、アリール切断の比較例Bに対する変化を示す(比較例Bは、比較例Aに対する変化を示す)。10×の低減は、1桁分の低減に相当し、100×の低減は、2桁分の低減に相当する。
【表1】
表1.
【0042】
実施例1~31:シラノール官能基、無機微粒子及び「範囲内」第四級アンモニウム第四級化合物
実施例1~31については、表2の「説明」に記載されるように、組成物に第四級アンモニウム化合物を含むこと以外、比較例Bと同様の要領で調製し特性評価する。特性評価結果は表2中にあり、アリール切断はベンゼンppmを報告し、フェニル切断の変化は、比較例Bの基準からのアリール切断の低減の程度を示している。アリールの10×の低減は、1桁分の低減に相当し、100×の低減は、2桁分の低減に相当し、1000×の低減は、3桁分の低減に相当する。
【0043】
表2の結果により、特定の第四級アンモニウム化合物が存在する場合、第四級アンモニウム化合物の不在(比較例B)又は更には「範囲外」第四級化合物の存在(比較例G~I)と対照的に、アリール切断の広範な低減について明らかにしている。
【表2】
表2.
1 1:2のモル比のコリン二水素塩シトレートとバリウムヒドロキシド八水和物との反応生成物
。
2 2:1のモル比のコリンヒドロキシドとマレイン酸との反応生成物。
3 1:1のモル比のコリンヒドロキシドとグルタル酸との反応生成物。
4 1:2のモル比のコリン二水素塩シトレート塩とカリウムヒドロキシドとの反応生成物。
5 1:2のモル比のアミノエチルアミノイソブチル末端ポリジメチルシロキサンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応生成物。
6 1:2のモル比のアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応生成物
7 1:2のモル比のエチルアミノイソブチル末端ポリジメチルシロキサンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応生成物。
8 2:1のモル比のコリンヒドロキシドとGelest DMS-Z21との反応生成物。
【0044】
実施例32~36及び比較例J~M:シラノール官能基を有する様々なフェニル官能化ポリシロキサン
以下の対の実施例及び比較例は、本発明の範囲内の第四級アンモニウム化合物の、シラノール官能基を有する異なるアリール官能化ポリシロキサンでのアリール切断を阻害する能力について示すものである。
【0045】
比較例A及び実施例32.実施例32については、0.147gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Aと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Aでは27ppmのベンゼン、実施例32では4ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0046】
比較例J及び実施例33.比較例Jについては、樹脂A2をポリシロキサンとして使用すること以外、比較例Aと同様の要領で調製し、ただし、樹脂A2は、以下の式、D0.19DPh2
0.19T0.25TPh
0.37を有し、樹脂の1重量%の-OHを有し、200,000g/モルの重量平均分子量を有する(例えば、Dow Performance Silicones製のDowsil(商標)RSN-0806フレーク樹脂)。「DPh2」は、(Ph)2SiO2/2単位に相当する。実施例33については、0.106gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Jと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Jでは547ppmのベンゼン、実施例33では30ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0047】
比較例K及び実施例34.比較例Kについては、樹脂A3をポリシロキサンとして使用すること以外、比較例Aと同様の要領で調製し、ただし、樹脂A3は、以下の式、D0.19DPh2
0.19T0.25TPh
0.37を有し、樹脂の3重量%の-OHを有し、3,000g/モルの重量平均分子量を有する(例えば、Dow Performance Silicones製のDowsil(商標)RSN-0840フレーク樹脂)。実施例34については、0.104gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Kと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Kでは3751ppmのベンゼン、実施例34では89ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0048】
比較例L及び実施例35.比較例Lについては、樹脂A4をポリシロキサン(下記の合成を参照されたい)として使用し、4gのトルエンを溶媒として3gのエタノールの代わりに使用し、Aldrich製の0.002gのジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含むこと以外、比較例Aと同様の要領で調製する。実施例35については、0.106gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Lと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Lでは1199ppmのベンゼン、実施例35では2ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0049】
樹脂A4の合成:5Lの4ツ口丸底フラスコに、2,600g/モルの重量平均分子量及び樹脂重量の8.5重量%の-OH含有量を有する、450.0gのTPh樹脂(例えば、Dowsil(商標)RSN-0217Flake)、並びに703.8gのトルエンを添加する。このフラスコに、温度計と、テフロン撹拌パドルと、水冷凝縮器に取り付けたDean Stark装置とを備え付ける。窒素ブランケットを適用する。Dean Stark装置に、トルエンを予め入れる。フラスコ内容物を加熱するための使用及び油浴。反応フラスコの内容物を加熱し、30分間還流させ、次いで108℃まで冷却し、ジアセトキシ末端PhMeシロキサンの溶液を素早く添加する。ジアセトキシ末端PhMeシロキサンについては、50/50w/wのMTA/ETA(12.1g、0.0523モルのSi)混合物を、トルエン(296.2g)に溶解した140の重合度(DP)を有するα,ω-シラノール末端ポリ(メチルフェニルシロキサン)(550.0g、4.04モルのSi)の溶液に添加することによって調製する。溶液を窒素雰囲気下で23℃にて2時間混合する。ジアセトキシ末端PhMeシロキサンを添加した後、混合物を加熱し、2時間還流させる。79.9gの、50/50重量%のMTA/ETA(79.9g、0.346モルのSi)を108℃にて添加する。反応混合物を1時間還流させながら加熱する。90℃まで冷却し、120mLの脱イオン水を添加する。温度を上昇させて還流させ、共沸蒸留によって水を除去する。反応混合物を再び90℃まで冷却し、別の120mLの脱イオン水を添加する。加熱して還流させ、共沸蒸留によって再び水を除去する。569.0gのトルエンを除去して、固形分含有量を増加させる。23℃まで冷却し、5.0μmのフィルターを通して濾過して、樹脂A4を得る。樹脂A4は、以下の組成、DPh
0.55TPh
0.45を有し、18,600g/モルの重量平均分子量及び樹脂重量に対して2.4重量パーセント(重量%)の-OH含有量を有する。
【0050】
比較例M及び実施例36.比較例Mについては、0.002gのジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの代わりに0.018gのアルミニウムアセチルアセトネートを使用すること以外、比較例Lと同様の要領で調製する。実施例36については、0.100gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Mと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Mでは5700ppmのベンゼン、実施例36では3ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0051】
比較例N及びO、並びに実施例37及び38:異なる無機微粒子
以下の対の実施例及び比較例は、本発明の範囲内の第四級アンモニウム化合物の、炭酸カルシムに対して異なる特性を包含する無機微粒子の存在下で、アリール切断を阻害する能力について示すものである。
【0052】
比較例N及び実施例37.比較例Nについては、25gの沈降非晶質シリカ(例えば、Solvay製のZeosil 1165MP)を更に含むこと以外、比較例Aと同様の要領で調製する。実施例37については、0.152gのコリンサリチレートを更に含むこと以外、比較例Nと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Nでは1177ppmのベンゼン、実施例37では94ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0053】
比較例O及び実施例38.比較例Oについては、沈降非晶質シリカの代わりにカオリンクレイム(例えばKamin製のPolyplate HTM)を使用すること以外、比較例Nと同様の要領で調製する。実施例38については、0.137gのコリンサリチレートを更に含むこと以外、比較例Oと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Oでは6747ppmのベンゼン、実施例38では33ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0054】
比較例P~W及び実施例39~46:異なる架橋剤の存在
以下の群の比較例及び実施例は、カオリン粘土無機微粒子ありにて、及びカオリン粘土無機微粒子なしにて、異なる架橋剤の存在下でも、アリール切断の低減が起こることを示すものである。
【0055】
比較例P及びQ並びに実施例39及び40.比較例Pについては、エタノールの代わりに3gの2-ブタノンを使用し、0.67gのエチルトリアセトキシランを含むこと以外、比較例Aと同様の要領で調製する。実施例39については、0.129gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Pと同様の要領で調製する。比較例Q及び実施例40については、19.2gのカオリン粘土(Polyplate HMT)を含むこと以外、それぞれ比較例P及び実施例39と同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Pでは14ppmのベンゼン、実施例39では7ppmのベンゼン、及び比較例Qでは13,207ppmのベンゼン、実施例40では40ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0056】
比較例R及びS並びに実施例41及び42.比較例R及びS並びに実施例41及び42については、0.67gのエチルトリアセトキシシランの代わりに0.62gのメチルトリメトキシシランを使用うること以外、それぞれ比較例P及びQ並びに実施例39及び40と同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Rでは39ppmのベンゼン、実施例41では14ppmのベンゼン、及び比較例Sでは693ppmのベンゼン、実施例42では59ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0057】
比較例T及びU並びに実施例43及び44.比較例T及びU並びに実施例43及び44については、0.67gのエチルトリアセトキシシランの代わりに0.69gのビニルトリイソプロペノキシシランを使用すること以外、それぞれ比較例P及びQ並びに実施例39及び40と同様の要領で調製する。また、実施例43では0.27gのコリンサリチレートを、実施例44では0.224gのコリンサリチレートを、使用する。アリール切断特性評価により、比較例Tでは10ppmのベンゼン、実施例4431では6ppmのベンゼン、及び比較例Uでは3682ppmのベンゼン、実施例44では55ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0058】
比較例V及びW並びに実施例45及び46.比較例V及びW並びに実施例45及び46については、0.67gのエチルトリアセトキシシランの代わりに0.0.98gのメチルトリス(メチルエチルケトキシムを使用すること以外、それぞれ比較例P及びQ並びに実施例39及び40と同様の要領で調製する。また、実施例45では0.184gのコリンサリチレートを、実施例46では0.186gのコリンサリチレートを、使用する。アリール切断特性評価により、比較例Vでは20ppmのベンゼン、実施例45では11ppmのベンゼン、及び比較例Wでは1850ppmのベンゼン、実施例46では28ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0059】
炭素-炭素不飽和を有するアリール官能化ポリシロキサン
炭素-炭素不飽和(炭素-炭素不飽和結合)を有するアリール官能化ポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応において有用である。以下の実施例は、本発明の範囲内の第四級アンモニウム化合物がこのようなポリシロキサンにおけるアリール切断を低減することについて示すものであり、これは、ヒドロシリル化反応におけるポリシロキサン及び反応生成物の熱安定性にとって望ましい。
【0060】
以下の実施例及び比較例は、炭素-炭素不飽和を有するアリール官能化ポリシロキサンを用いる、白金触媒によるヒドロシリル化配合物におけるアリール切断阻害を調べるものである。
【0061】
試料調製
全ての含有成分を歯科用カップに添加する。回転ミキサ(SPEEDMIXER(商標)DAC 150 FVZ(FlackTek Inc.(Landrum,SC))を使用して、2,500回転/分の回転速度で1分間、含有成分を一緒に混合する。得られた液体混合物をアルミニウムパンに注ぎ、130℃で15分間固体エラストマーに硬化させる。上記のように、アリール切断について評価する。
【0062】
表3では、ヒドロシリル化試料に使用されるポリマー、樹脂、及び架橋剤を特定する。ポリマー及び樹脂を特定する場合、「Vi」はビニル基を指し、「Ep」はグリシドキシプロピル基を指す。分子式中のカッコ付き単位での下付き字は、これらの単位の分子当たりの平均モル比を示す。
【表3】
表3.
【0063】
比較例X及び実施例47:第四級アンモニウム化合物なし及びありの基準配合物
試料については、2.5gのポリマー1、4.93gの樹脂HS1、0.65gの樹脂HS2、0.25gの樹脂HS3、1.4gの架橋剤1、0.16gの架橋剤2、0.2gの環状(ViSiMeO1/2)4、阻害剤として0.002gの1-エチニル-1-シクロヘキサノール、及び触媒として0.00002gのPt(1,3-ジビニルテトラメチルシロキサン)錯体を用いて調製する。アリール切断特性評価により、519ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0064】
試料組成物については、0.150gのコリンサリチレートを更に含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、11ppmのベンゼンであると明らかにしており、これは、コリンサリチレートなしの同じ配合物に対してアリール切断が低減したことを示すものである。
【0065】
比較例Y~II及び実施例48~58:異なる充填剤の効果
以下の対の実施例及び比較例は、炭素-炭素不飽和を有するアリール官能化ポリシロキサンでの範囲内第四級アンモニウム成分の、様々な充填剤の存在下でのアリール切断低減効果を示すものである。
【0066】
比較例Y及び実施例48.比較例Yについては、3.33gのタルク及び3.33gの炭酸カルシウムを含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例48については、0.161gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Yと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Yでは911ppmのベンゼン、実施例48では25ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0067】
比較例Z及び実施例49.比較例Zについては、1.98gの酸化チタン(TiO2、Sigma-Aldrich、カタログ番号634662)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例49については、0.125gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例Zと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例Zでは835ppmのベンゼン、実施例49では7ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0068】
比較例AA及び実施例50.比較例AAについては、3.33gの沈降非晶質シリカ(Solvay製のZeosil 1165MP)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例50については、0.151gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例AAと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例AAでは2177ppmのベンゼン、実施例50では69ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0069】
比較例BB及び実施例51.比較例BBについては、4.32gの酸化亜鉛(Zinc Corporation of America(Monaca,PA)製のKadox920)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例51については、0.125gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例BBと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例BBでは190ppmのベンゼン、実施例51では37ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0070】
比較例CC及び実施例52.比較例CCについては、3.33gの水酸化マグネシウム(Sigma-Aldrich製、カタログ番号310093)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例52については、0.109gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例CCと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例BBでは44ppmのベンゼン、実施例51では14ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0071】
比較例DD及び実施例53.比較例DDについては、4.56gの酸化鉄(II)(Sigma-Aldrich製、カタログ番号310050)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例53については、0.142gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例DDと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例DDでは113ppmのベンゼン、実施例53では2ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0072】
比較例EE及び実施例54.比較例EEについては、10gの酸化セリウム(IV)(Sigma-Aldrich製、カタログ番号211575)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例54については、0.131gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例EEと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例EEでは114ppmのベンゼン、実施例54では5ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0073】
比較例FF及び実施例55.比較例FFについては、6.66gのアルミナ(住友化学製のAA-3)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例55については、0.126gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例FFと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例FFでは404ppmのベンゼン、実施例55では6ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0074】
比較例GG及び実施例56.比較例GGについては、6.66gのカオリン粘土(Kamin製のpolyplate HMT)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例56については、0.135gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例GGと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例GGでは516ppmのベンゼン、実施例56では11ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0075】
比較例HH及び実施例57.比較例HHについては、7.45gのシリカコーティング窒化アルミニウム(Dow Chemical Company製のSCAN71)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例57については、0.116gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例HHと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例HHでは710ppmのベンゼン、実施例57では5ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0076】
比較例II及び実施例58.比較例IIについては、4.47gのカーボンブラック(Darco G-60)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。実施例58については、0.181gのコリンサリチレートを含むこと以外、比較例IIと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例IIでは1797ppmのベンゼン、実施例58では23ppmのベンゼンであると明らかにしている。
【0077】
比較例JJ~LL及び実施例59~67:異なる微粒子の効果
以下の対の実施例及び比較例は、炭素-炭素不飽和を有するアリール官能化ポリシロキサンでの範囲内第四級アンモニウム成分の、他の充填剤がアリール切断低減効果を有していない場合の、アリール切断低減効果を示すものである。
【0078】
比較例Xは、基準配合物を構成し、アリール切断特性評価中に519ppmのベンゼンを生成する。
【0079】
比較例JJ.比較例JJについては、0.343gのテトラプロピルアンモニウムバイサルフェートを含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例JJでは15,306ppmのベンゼンであり、テトラプロピルアンモニウムバイサルフェートによる劇的な増加であると明らかにしている。
【0080】
比較例KK.比較例KKについては、0.418gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例KKでは2983ppmのベンゼンであり、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物による劇的な増加であると明らかにしている。
【0081】
実施例59.実施例59については、0.421gのデカメトニウムブロマイドを含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例59では1230ppmのベンゼンであり、比較例Xと比較してフェニル切断が増加していることを明らかにしている。この実施例は、デカメトニウムブロマイドが、アリール官能化シロキサン中にシラノール官能基を有する系においてフェニル切断を低減するのに非常に効果的である(例えば、実施例16を参照されたい)が、アリール官能化シロキサンがシラノール官能基を有していないこのヒドロシリル化系においてフェニル切断を増加させることについて示すものである。この結果は、この第四級アンモニウム化合物が、フェニル切断を低減するのにシラノール官能化シロキサンによってより効果的になることについて示唆するものである。
【0082】
実施例60.実施例60については、0.447gのコリン二水素シトレート塩を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例60では439ppmのベンゼンであると明らかにしており、これは、コリン二水素シトレート塩によるフェニル切断のわずかな低減に相当している。とりわけ、コリン二水素シトレート塩によると、シラノール官能化されているアリール官能化シロキサン(実施例1を参照されたい)におけるフェニル切断を最小限に抑えるのに非常に効果的であることが認められており、この第四級アンモニウム化合物は、シロキサンがシラノール官能化されているとき、アリール切断を低減するのにより効果的になることを示唆している。
【0083】
実施例61.実施例61については、0.242gのN-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(3-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドとも呼ばれる)を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例61では325ppmのベンゼンであると明らかにしており、これは、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドによるフェニル切断の低減に相当している。とりわけ、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドによると、シラノール官能化されているアリール官能化シロキサン(実施例17を参照されたい)におけるフェニル切断が3桁分低減されており、この第四級アンモニウム化合物は、シロキサンがシラノール官能化されているとき、アリール切断を低減するのにより効果的いなることを示唆している。
【0084】
実施例62.実施例62については、0.494gのテトラメチルアンモニウムブロマイドを含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例62では80ppmのベンゼンであり、テトラブチルアンモニウムブロマイドによる減少であると明らかにしている。
【0085】
実施例63.実施例63については、0.304gのコリンオクトエートを含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例63では20ppmのベンゼンであり、コリンオクトエートによる減少であると明らかにしている。
【0086】
実施例64.実施例64については、1.165gの、実施例9からの第四級アンモニウム官能性シリコーン1を含むこと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例64では80ppmのベンゼンであり、第四級アンモニウム官能性シリコーン1による減少であると明らかにしている。
【0087】
比較例LL.比較例LLについては、0.00002gではなく0.0002gの触媒を使用する(触媒濃度を1桁分増加させる)こと以外、比較例Xと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、比較例LLでは7.122ppmのベンゼンであると明らかにしており、触媒もまたフェニル切断を劇的に増加させることを示している。
【0088】
実施例64.実施例64については、0.907gのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)を含むこと以外、比較例LLと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例64では4375ppmのベンゼンであると明らかにしており、これは、フェニル切断のほぼ50%の低減に相当している。とりわけ、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)によると、シラノール官能化されているアリール官能化シロキサン(実施例13を参照されたい)を含有する組成物におけるフェニル切断が2桁分低減されており、この第四級アンモニウム化合物は、シロキサンがシラノール官能化されているとき、アリール切断を低減するのにより効果的になることを示唆している。
【0089】
実施例65.実施例65については、0.922gのN-トリメトキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドを含むこと以外、比較例LLと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例65では932ppmのベンゼンであり、アリール切断のほぼ1桁分の低減を明らかにしている。とりわけ、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドによると、シラノール官能化されているアリール官能化シロキサン(実施例17を参照されたい)におけるフェニル切断が3桁分低減されており、この第四級アンモニウム化合物は、シロキサンがシラノール官能化されているとき、アリール切断を低減するのにより効果的になることを示唆している。
【0090】
実施例66.実施例66については、0.137gのDPSコリンオクトエートを含むこと以外、比較例LLと同様の要領で調製し、アリール切断の特性評価により、実施例66では15ppmのベンゼンであり、コリンオクトエートによるアリール切断の2桁分超の減少を明らかにしている。
【0091】
実施例67.実施例67については、1.067gの、実施例9からの第四級アンモニウム官能性シリコーン1を含むこと以外、比較例LLと同様の要領で調製する。アリール切断特性評価により、実施例67では6ppmのベンゼンであり、第四級アンモニウム官能性シリコーン1によるアリール切断の3桁分超の減少を明らかにしている。