(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】低摩擦トロカールバルブ
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
(21)【出願番号】P 2021512551
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 IB2019057491
(87)【国際公開番号】W WO2020058795
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ニールス アレクサンダー アプト
(72)【発明者】
【氏名】レト グリューエブラー
(72)【発明者】
【氏名】ニッコロ マシオ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ユング
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0310165(US,A1)
【文献】国際公開第2016/186905(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01671597(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0234293(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0280437(US,A1)
【文献】特開2004-283592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロカールカニューレと、
前記トロカールカニューレの端部に接続可能なバルブハウジングと、
前記バルブハウジングの開口部に形成されたバルブと、
を含み、
前記バルブは、環状に配置されており、器具を挿入するための入口点を画定するシートセットを含み、前記シートセットの各シートは、前記シートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含み、
前記シートセットの各前記シートは、第1の弧長を有する半円部分と、第2の弧長を有する円弧部分とからなり、各前記シートの前記半円部分は、前記半円部分の半径の2倍に等しい長さを有する直線に沿って、各前記シートの前記円弧部分に接続し、
前記シートセットが円形に配置されるとき、前記円弧部分の外周が合わさって、
前記半円部分の高さH1に前記円弧部分の高さH2を加えたものと等しい半径の外接円を形成する、トロカールデバイス。
【請求項2】
前記バルブハウジングは、前記シートセットの上に配置された、前記シートセットが折れ曲がることを防止するための円形キャップを更に含む、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項3】
前記バルブは、前記バルブハウジング内の前記シートセットの下に配置された追加のシートセットを更に含み、前記追加のシートセットと前記シートセットは間隙によって分離されており、前記追加のシートセットは、環状に配置されており、前記追加のシートセットの各シートが、前記追加のシートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含むように、追加の入口点を画定する、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項4】
前記シートセットは、ポリイミドフィルム又はガラスフィルムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項5】
前記シートセットは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料を含む、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項6】
前記シートセットは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を含む、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項7】
前記シートセットの各シートは、第1の弧長を有する半円及び第2の弧長を有する弧を含む、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項8】
前記バルブハウジングは、前記トロカールカニューレの一部として形成されている、請求項1に記載のトロカールデバイス。
【請求項9】
バルブハウジングに取り付けられたトロカールバルブであって、環状に配置されており、器具を挿入するための入口点を画定するシートセットを含み、前記シートセットの各シートは、前記シートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含み、
前記シートセットの各前記シートは、第1の弧長を有する半円部分と、第2の弧長を有する円弧部分とからなり、各前記シートの前記半円部分は、前記半円部分の半径の2倍に等しい長さを有する直線に沿って、各前記シートの前記円弧部分に接続し、
前記シートセットが円形に配置されるとき、前記円弧部分の外周が合わさって、
前記半円部分の高さH1に前記円弧部分の高さH2を加えたものと等しい半径の外接円を形成する、トロカールバルブ。
【請求項10】
前記バルブハウジングは、トロカールカニューレに接続可能である、又は前記トロカールカニューレの一部として形成されている、請求項9に記載のトロカールバルブ。
【請求項11】
前記シートセットの上に配置された、前記シートセットが折れ曲がることを防止するための円形キャップを更に含む、請求項9に記載のトロカールバルブ。
【請求項12】
前記バルブハウジング内の前記シートセットの下に配置された追加のシートセットを更に含み、前記追加のシートセットと前記シートセットは間隙によって分離されており、前記追加のシートセットは、環状に配置されており、前記追加のシートセットの各シートが、前記追加のシートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含むように、追加の入口点を画定する、請求項9に記載のトロカールバルブ。
【請求項13】
前記シートセットは、ポリイミドフィルム、ガラスフィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のトロカールバルブ。
【請求項14】
トロカールカニューレに接続可能なトロカールバルブアセンブリであって、
バルブハウジングと、
前記バルブハウジングに結合されたバルブと、
を含み、前記バルブは、環状に配置されており、器具を挿入するための入口点を画定するシートセットを含み、前記シートセットの各シートは、前記シートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含み、
前記シートセットの各前記シートは、第1の弧長を有する半円部分と、第2の弧長を有する円弧部分とからなり、各前記シートの前記半円部分は、前記半円部分の半径の2倍に等しい長さを有する直線に沿って、各前記シートの前記円弧部分に接続し、
前記シートセットが円形に配置されるとき、前記円弧部分の外周が合わさって、
前記半円部分の高さH1に前記円弧部分の高さH2を加えたものと等しい半径の外接円を形成する、トロカールバルブアセンブリ。
【請求項15】
前記トロカールカニューレの一部を構成する、請求項14に記載のトロカールバルブアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に、トロカールに関し、より具体的には、トロカールに適用可能なシールに関する。
【背景技術】
【0002】
外科用器具は、眼の手術(例えば、硝子体、血液、瘢痕組織、又は水晶体を除去する処置)などにおいて、人体の繊細且つ制限された空間から組織を切離及び除去するために外科医によって使用され得る。外科医は、処置中にいくつかの外科用器具を使用することがあり、これらの器具を切開に挿入することと切開から取り出すことを必要とする場合がある。この取り出しと挿入の繰り返しにより、眼の切開部位に外傷を生じさせる可能性がある。トロカールデバイスは、この懸念に対処するために開発されたものであり、現在では一般的に使用されている。
【0003】
トロカールデバイスは、身体部分の切開に挿入することができる細いトロカールカニューレを含む。外科用器具は、トロカールカニューレを通して身体部分に挿入することができ、トロカールカニューレは、器具による繰り返しの接触から切開側壁を保護することができる。いくつかの場合では、トロカールデバイスは、加圧物質又は流体を含む身体領域に導入される。流体は、血液などの液体又は送気ガスなどのガスであり得る。トロカールデバイスが眼に関連する手術を行うために使用される場合、流体は、硝子体液を含み得る。加圧された球体である眼は、トロカールデバイスが眼に挿入されるとトロカールカニューレから硝子体を排出し得る。これらの例では、加圧流体が漏れるのを防止しながら、身体部分へのトロカールデバイスの挿入を可能にすることが望ましい。
【0004】
トロカールカニューレを通した加圧流体の喪失を防止するために、トロカールカニューレは、トロカールデバイスの先端部で、シールを含むシールハウジングに接続され得る。トロカールカニューレとシールハウジングは、ワーキングチャネルを共に形成する。ワーキングチャネルを通して、身体部分にアクセスするための様々な器具を挿入することができる。シールは、一般に、器具が挿入されている時及び器具が取り出された後にワーキングチャネルを密封するバルブを含む。現在、トロカールバルブは、バルブに挿入された外科用器具との高い摩擦を生じさせる材料から作製されている。既存のバルブの幾何学的構成もまた、バルブと外科用器具との間の高い摩擦に寄与する。いくつかの場合では、これは、バルブ又はバルブのフラップが、バルブに挿入された外科用器具と接触する量が多いことが原因である。摩擦は、外科用器具をバルブに挿入中及びバルブから取り出し中に、バルブの密封構成要素が折れ曲がる又はそうでなければ損傷する原因となり得る。この折れ曲がりは、外科用器具の急な動きやジャーキングをもたらし、外科医の邪魔になるおそれがある。折れ曲がり及び摩擦はまた、器具を操作する外科医に一貫性のないフィードバックを提供するスリップスティック運動の原因となる。更には、器具とバルブの密封構成要素との間の摩擦は、バルブに器具を挿入すること及びバルブから器具を取り出すことを非常に困難にする場合があり、より煩雑でより効率の低い処置となる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、トロカールデバイス及びトロカールデバイスと共に使用するためのバルブアセンブリに関する。ある実施形態は、トロカールカニューレと、トロカールカニューレの端部に接続可能なバルブハウジングと、バルブハウジングの開口部に形成されたバルブと、を含むトロカールデバイスを提供する。ある実施形態においては、バルブは、環状に配置されており、器具を挿入するための入口点を画定するシートセットを含み、シートセットの各シートは、シートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含む。
【0006】
ある実施形態は、環状に配置されており、器具を挿入するための入口点を画定するシートセットを含み、シートセットの各シートは、シートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含むトロカールバルブを提供する。
【0007】
ある実施形態は、トロカールカニューレに接続可能なトロカールバルブアセンブリであって、バルブハウジングと、バルブハウジングに結合されたバルブと、を含み、バルブは、環状に配置されており、器具を挿入するための入口点を画定するシートセットを含み、シートセットの各シートは、シートセットの2つの隣接するシートと重なり合う領域を含む、トロカールバルブアセンブリを提供する。
【0008】
以下の説明及び関連する図面は、1つ以上の実施形態の特定の例証的特徴を詳述する。
【0009】
添付の図は、1つ以上の実施形態の特定の態様を示しており、それゆえ、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による、バルブハウジングの開口部に形成された例示的な低摩擦トロカールバルブの頂面図を示す。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態による、例示的なトロカールデバイス及びトロカールカニューレに挿入された外科用器具の断面図を示す。
【
図3A】
図3Aは、いくつかの実施形態による、いくつかのシートを含む例示的な波形ストリップを示す。
【
図3B】
図3Bは、いくつかの実施形態による、
図3Aの波形ストリップを使用して形成した例示的なトロカールバルブを示す。
【
図4A】
図4Aは、いくつかの実施形態によるトロカールの例示的な断面図を示す。
【
図4B】
図4Bは、いくつかの実施形態による、下方に押されている又はトロカールバルブへの外科用器具の挿入方向に動いているトロカールバルブの例示的な可動部品を示す。
【
図4C】
図4Cは、いくつかの実施形態による、キャップとバルブハウジングとの間にクランプされている例示的なトロカールバルブを示す。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態による、第1のシートセットを含む第1層と第2のシートセットを含む第2層とを含む2層のシートを有するトロカールバルブを含む例示的なトロカールデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易にする目的で、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り、同一の参照符号が使用されている。一実施形態の要素及び特徴は、更なる説明を伴わずに他の実施形態に有益に組み込むことができると考えられる。
【0012】
本開示の態様は、(例えば、ヒト、動物等の)身体部分にトロカールデバイスを挿入後、身体部分からの加圧流体の漏れを防止するための低摩擦トロカールバルブを有するトロカールデバイスを提供する。
【0013】
上述のように、既存のトロカールは、外科用器具に対して高い摩擦を示す材料から作製されたトロカールバルブを含む。より具体的には、トロカールバルブは、シリコンエラストマーなどのエラストマー材料から出来ている。シリコンエラストマーは、ステンレス鋼に対して高い摩擦係数を有する。ステンレス鋼は、外科用器具が一般的に作製される材料である。材料に加えて、既存のシリコンエラストマーバルブの幾何学的構成は、挿入された外科用器具との周囲接触(circumferential contact)を生じさせる開口部を含む。この周囲接触は接触表面積を増加させ、それゆえ、シリコンエラストマーバルブと外科用器具との間の摩擦の一因となる。
【0014】
摩擦により、シリコンバルブのフラップが外科用器具の移動の方向に折れ曲がる。シリコンエラストマーバルブのフラップが折れ曲がると、器具に作用するフラップの圧力が増加する。この折れ曲がり作用がわずかな跳ねとスリップスティック運動を生じさせ、上に言及したように、外科医を妨害する可能性があり、且つ外科医に一貫性のないフィードバックを提供する可能性がある。これに加えて、器具とシリコンバルブとの間の摩擦の増加は、シリコンバルブに器具を効率的且つ容易に挿入し、シリコンバルブから器具を効率的且つ容易に取り出す外科医の能力を妨げるおそれがある。したがって、本明細書中に記載されるある実施形態は、外科用器具との低い摩擦を有しながら加圧流体の漏れも防止するトロカールバルブをもたらす材料及び幾何学的構成を用いて作製されたトロカールバルブを提供することに関する。
【0015】
図1は、バルブハウジング110の開口部115に形成された例示的な低摩擦トロカールバルブ100の頂面図を示す。示されるように、トロカールバルブ100は、バルブハウジング110内に環状に配置されており、外科用器具を挿入するための中心入口点125を画定するシート120を含む。
図1の例では、バルブは、4つのシート1201~1204を含み、そのそれぞれは、2つの隣接するシートと重なり合う領域を含む。例えば、シート1201は、領域1221及び領域1222を含む。示されるように、領域1221はシート1202と重なり合っており、領域1222はシート1204と重なり合っている。いくつかの実施形態では、シート120の構成は、カメラの絞りの構成に類似している。
図1に示すように、各シート120は、隣接するシート120の下に配置された領域と、異なる隣接するシートの上に配置された別の領域とを含む。例えば、シート1201の領域1221はシート1202の下に配置されており、シート1201の領域1222はシート1204の上に配置されている。
【0016】
示されるように、シート120は、トロカールバルブ100の中心で重なり合っておらず、それにより、外科用器具を挿入することを可能にするための入口点125を形成している。シート120の幾何学的構成により、外科用器具がトロカールバルブ100に挿入されていないときでも入口点125にシールを提供する。シールは、シート1201~1204の全てが交わる場所に形成され、それにより、入口点125におけるあらゆる開口を閉鎖し、又は少なくとも大幅に最小化し、加圧流体の漏れを防止する。
【0017】
トロカールバルブ100を含むトロカールデバイスが身体部分に挿入された後で、且つトロカールバルブ100に外科用器具を挿入する前に、身体部分の流体の内圧(例えば、眼の内圧)がシート120に力を作用させる。この力は、シート120間の摩擦を増加させ、また、シート120を中心で押し付け合い、入口点125における任意の潜在的な開口の閉鎖をもたらす。換言すると、身体部分の流体の内圧に応答して、シート120は中心においてロック効果を生成し、身体部分の流体の漏れを防止するのを助ける。したがって、トロカールバルブ100の幾何学的構成は、トロカールバルブ100を既存のトロカールバルブに比べてより効果的で信頼性の高いシールとして機能することを可能にする。
【0018】
入口点125におけるシート120の形状及びトロカールバルブ100の全体的な幾何学的構成もまた、トロカールバルブ100と外科用器具との間の低い摩擦をもたらす。入口点125におけるシート120の湾曲した形状は、外科用器具と各シート120との間に最小限の接触をもたらす。より具体的には、挿入された外科用器具に接触するのは、それぞれの湾曲したシート120の先端だけである。これに対し、既存のシリコンエラストマーバルブは、挿入点において外科用器具と周囲接触する。トロカールバルブ100と外科用器具との間の摩擦が低下した結果、シート120は、外科用器具の上方移動及び下方移動の方向に折れ曲がる可能性が低くなる。
【0019】
トロカールバルブ100の幾何学的構成に加えて、いくつかの実施形態では、トロカールバルブ100は、上述の摩擦の減少にも大きく寄与する材料を含む。いくつかの実施形態では、シート120は、低摩擦係数を有する材料を含む。例えば、外科用器具に対するシート120の材料の摩擦係数は、外科用器具に対するシリコンエラストマーの摩擦係数よりも低くなり得る。使用される外科用器具がステンレス鋼(例えば、研磨されたステンレス鋼)で製造されたものである場合、シート120は、ステンレス鋼に対する摩擦係数が、ステンレス鋼に対するシリコンエラストマー(又は任意の他のエラストマー材料)の摩擦係数よりも低い材料を含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、シート120はポリイミドフィルムを含んでもよく、他のいくつかの実施形態では、シート120はガラスフィルムを含んでもよい。また、いくつかの実施形態では、シート120は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料を含んでもよく、他のいくつかの実施形態では、シート120は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を含んでもよい。上述の材料の任意の組み合わせも使用してよい。
【0021】
図1のトロカールバルブ100は4つのシート120を含むが、他のいくつかの実施形態では、より多数のシートを使用して、類似の幾何学的構成を持つトロカールバルブを形成する。例えば、いくつかの実施形態では、18枚のシートを使用してトロカールバルブを作製してもよい。別の例では、10枚のシートを使用してトロカールバルブを作製してもよい。他のいくつかの実施形態では、より少数のシートを使用して、類似の幾何学的構成を持つトロカールバルブを形成する。例えば、いくつかの実施形態では、3枚のシートを使用してトロカールバルブを作製してもよい。
【0022】
図2は、トロカールデバイス240及びトロカールデバイス240に挿入された外科用器具260の断面図を示す。トロカールデバイス240は、トロカールカニューレ230と、バルブハウジング110及びトロカールバルブ100を含むトロカールバルブアセンブリ250とを含む。
図2の例では、トロカールバルブアセンブリ250は、トロカールカニューレ230の一部として形成されている。示されるように、トロカールカニューレ230は、身体部分に挿入される一端と、トロカールバルブ100を収容するためのバルブハウジング110を含む他端とを有する。
【0023】
バルブハウジング110はまた、トロカールデバイス240の全体が身体部分に挿入されることを防止するオーバーキャップ(overcap)として機能することにより停止機構を提供する。
図2に示すように、外科用器具260は、トロカールバルブ100の入口点(例えば、
図1の入口点125)を通ってトロカールバルブ100に、及びトロカールカニューレ230に挿入される。外科用器具260の挿入に応答して、トロカールバルブ100のシート120は漏斗状構造に変化する。外科医がトロカールデバイス240から外科用器具260を抜去し始めると、シート120の外向きの動きは、トロカールバルブ100の上に配置され得るキャップによって妨げられ得る。
【0024】
図2は、トロカールデバイス240の一実施形態を示す。他のいくつかの実施形態では、トロカールバルブアセンブリ250は、トロカールカニューレ230の一部として形成されるのではなく、トロカールカニューレ230に接続可能なトロカールデバイス240の別個の構成要素である。このような実施形態では、トロカールバルブアセンブリ250とトロカールカニューレ230は、トロカールバルブアセンブリ250がトロカールカニューレ230に対して回転するのを防止するように、互いに結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、トロカールバルブアセンブリ250とトロカールカニューレ230は、ねじ接続を使用して互いに結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、トロカールバルブアセンブリ250とトロカールカニューレ230は、スナップ接続機構を使用して互いに結合されていてもよい。
【0025】
図3Aは、シート320を含む例示的な波形ストリップ300を示す。波形ストリップ300は、一片の材料(例えば、ポリイミドフィルム、ガラスフィルム、PTFE材料、又はPEEK材料)を切り取り、互いに取り付けられたシート320を形成することによって形成される。
図3Aに示すように、各シート320は、弧322及び弧324を含む。点線は、
図3Aの第1のシート320の2つの弧322と弧324との間で区別するために使用される。弧322は、弧324の弧長よりも長い弧長を有する半円である。いくつかの実施形態では、バルブ100の直径(例えば、
図3bの外側の円の直径)は、約0.6ミリメートル(mm)~2.75mmの範囲であってもよい。他の直径も考えられる(例えば、異なる眼科用カニューレゲージサイズ又は異なる身体部位用のカニューレは、これらの寸法よりも大きくても小さくてもよい)。いくつかの実施形態では、これにより、1つの垂足に対する破線(
図3Aの弧322と弧324との間)の長さが約0.42mm~1.94mmの範囲になり得る。他の長さ(例えば、約0.3mm~2.5mmの範囲)も考えられる。いくつかの実施形態では、高さ(H1)は、約0.21mm~0.97mmの範囲であってもよい。他の高さ(H1)(例えば、約0.15mm~1.25mmの範囲)も考えられる。いくつかの実施形態では、高さ(H2)は、約0.09mm~0.97mmの範囲であってもよい。他の高さ(H1)(例えば、約0.062mm~0.52mmの範囲)も考えられる。いくつかの実施形態では、H2に対するH1の比率(
図3Aにおける)は、約1~0.4であってもよい。H2に対するH1の他の比率も考えられる。
【0026】
図3Bに示される幾何学的構成を有するトロカールバルブ100を形成するために、波形ストリップ300は巻かれる。
図3Bは、
図3Aのシート320を巻いた結果として形成される例示的なトロカールバルブ100を示す。
図3Bのトロカールバルブ100は、その後、バルブハウジング(例えば、
図1~
図2に示されるバルブハウジング110)上にクランプされる。いくつかの実施形態では、トロカールバルブ100は、バルブハウジング110に接着剤を使用して取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、トロカールバルブ100は、バルブハウジング110とキャップ(例えば、
図4A~
図4Bに示されるキャップ415)との間にクランプされている。
【0027】
図4Aは、トロカールデバイス400の例示的な断面図を示す。示されるように、トロカールバルブ100は、キャップ415とバルブハウジング110との間にクランプされている。上述のように、キャップ415はトロカールバルブ100を拘束し(即ち、トロカールバルブ100を所定の位置に保持し)、器具の取り出し(即ち、上方移動)中のシート420の外向きの屈曲も防止する。トロカールバルブ100は、外側縁部402及び内側縁部404を含む。外側縁部402は、キャップ415とバルブハウジング110との間にクランプされることにより、トロカールバルブ100を所定の位置に保持し、トロカールバルブ100が回転すること等を防止する部分である。内側縁部404は、トロカールバルブ100に挿入された器具の移動に応じてたわむ又は動く部分である。特定の実施形態においては、キャップ415は、外側縁部402の長さだけでなく内側縁部404の特定部分も覆うように、シート420に沿って(入口点125に向かって)更に遠くまで水平に延びてもよい。このような態様では、細長いキャップ415は、器具の取り出し中のシート420の外向きの屈曲に対して更により良好な保護を提供することができる。
【0028】
図4Aに示すように、トロカールバルブ100のシートの外側縁部402は、トロカールバルブ100の上面に配置され、シートの上面を覆って配置されたキャップ415によって所定の位置に保持されている。シートは、トロカールバルブの開口部を横切って水平方向に(例えば、0°で)延びる。シート420の材料の剛性及びそれらの重ね合わせ構成により、シート420が水平方向に真直のままであることを確実とし、それにより、シート420の最内縁部(即ち、内側縁部404の先端)が入口点125において接触することを可能にする。
【0029】
図4Bは、トロカールバルブ100に器具260を挿入する方向にたわんでいるトロカールバルブ100の内側縁部404の一例を示す。トロカールバルブ100の外側縁部402は、トロカールバルブ100への器具の挿入又はトロカールバルブ100からの器具の取り出しに応じ、静止したままである。
【0030】
図4Cは、バルブシートがキャップ415とバルブハウジング110との間にクランプされたトロカールバルブ100の別の実施形態を示す。示されるように、
図4Cのトロカールバルブ100は、外側縁部406及び外側縁部408を含む。
図4Aの外側縁部402と同様に、
図4Cの外側縁部406は、キャップ415とバルブハウジング110との間に水平にクランプされている。
図4Cのトロカールバルブ100は、外側縁部406に加えて、外側縁部408も含む。外側縁部408は、キャップ415とバルブハウジング110間に垂直にクランプされている。トロカールバルブ100の外側縁部408をキャップ415とバルブハウジング110との間にクランプすると、トロカールバルブ100がバルブハウジング110から離れる又はバルブハウジング110に対して回転する可能性が低下する。
【0031】
他の実施形態では、トロカールバルブ100は、1つより多いシート層を含んでもよい。例えば、トロカールバルブ100は、更なる密封効果を有するラビリンスシールを設けるために、2つ以上のシート層の積層体を含んでもよい。
【0032】
図5は、第1のシートセットを含む第1層560と第2のシートセットを含む第2層570とを含む2層のシートを有するトロカールバルブ500を含む例示的なトロカールデバイス540を示す。示されるように、第1層560と第2層570は、間隙565によって分離されている。
図5の例では、トロカール540は、最初にバルブハウジング510上に第2層570をクランプすることにより組み立てられる。その後、構成要素535が第2層570上にクランプされる。いくつかの実施形態では、構成要素535はリング状の構成要素であり、第1層560及び第2層570の直径と同じ直径を有する。いくつかの実施形態では、第1層560と第2層570も同じ直径を有する。いくつかの実施形態では、構成要素535は、バルブハウジング510の製造に使用される材料と同じ材料を含む。トロカールデバイス540は、構成要素535上に第1層560をクランプし、その後、第1層560の上にキャップ415をクランプすることによって引き続き組み立てられ得る。
【0033】
したがって、低摩擦トロカールバルブは、トロカールカニューレからの加圧流体の漏れを防止するために、トロカールカニューレに結合された又はトロカールカニューレの一部として形成されたバルブハウジングの開口部内に配置されるようになっている。
【0034】
本明細書で使用される場合、項目のリスト「の少なくとも1つ」を指す語句は、単一の要素を含む、それらの項目の任意の組み合わせを指す。例として、「a、b、又はcの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、及びa-b-c、並びに複数の同じ要素の任意の組み合わせ(例えば、a-a、a-a-a、a-a-b、a-a-c、a-b-b、a-c-c、b-b、b-b-b、b-b-c、c-c、並びにc-c-c又はa、b、及びcの他の任意の順序)を網羅することが意図される。
【0035】
前述の説明は、本明細書で説明した様々な実施形態を当業者が実施できるようにするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正は、当業者に容易に明らかになり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用されることがある。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す態様に限定されることが意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言に一致する全範囲が認められるべきである。
【0036】
特許請求の範囲において、単数形での要素への言及は、具体的にそのような定めがない限り、「1つ及び1つのみ(one and only one)」を意味することを意図するものではなく、むしろ「1つ以上(one or more)」を意味するものである。具体的に別段の定めがない限り、「いくつかの(some)」という用語は、1つ以上を指す。当業者に知られている又は後に知られることになる、本開示全体を通して説明した様々な態様の要素に対する全ての構造的及び機能的等価物は、本明細書に参照により明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。その上、本明細書に開示したものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されているか否かにかかわらず公衆に献呈されることが意図されるものではない。特許請求の範囲のいかなる要素も、「するための手段(means for)」という語句を使用して明示的に列挙されない限り、米国特許法第112条(f)の規定に基づいて解釈されるべきではなく、又は方法請求項の場合には、要素は「ためのステップ(step for)」という語句を使用して列挙される。本明細書中で使用する場合、「例示的」という語は、「例、事例、又は実例として機能すること」を意味する。本明細書で「例示的」として記載される任意の態様は、必ずしも他の態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。