(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】加熱手段が組み込まれた固体酸化物型電気化学システムの温度制御のための方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/042 20210101AFI20240625BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20240625BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20240625BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240625BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20240625BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240625BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20240625BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/77
C25B9/67
C25B9/00 A
C25B15/021
C25B9/23
H01M8/2465
H01M8/04007
H01M8/04701
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04302
H01M8/04225
H01M8/248
H01M8/12 102
H01M8/2475
(21)【出願番号】P 2021522040
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 FR2019052533
(87)【国際公開番号】W WO2020084257
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャルロット・ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・エカール
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・ムージャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・パルクー
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0112436(US,A1)
【文献】国際公開第2017/102657(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090772(US,A1)
【文献】特表2019-500498(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01271684(EP,A2)
【文献】国際公開第2014/156314(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056492(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105103358(CN,A)
【文献】特開2015-022852(JP,A)
【文献】特開2007-311081(JP,A)
【文献】特開2008-192425(JP,A)
【文献】特開2015-207510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-9/77
C25B 13/00-15/08
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学システムの熱調節のための方法であって、前記電気化学システムは、nを2以上の整数とするn個の電気化学セルであって、前記電気化学セルは固体酸化物型電解セルまたは固体酸化物型燃料電池である、電気化学セルと、前記電気化学セルの間に介装されている少なくともn-1枚の相互接続板のスタックと、前記電気化学セルにガスを供給するための手段と、前記電気化学セルによって生成されるガスを回収するための手段と、前記システムを外部に電気的に接続するための手段とを備え、前記電気化学
システムは、前記スタック内に組み込まれている加熱手段(H、H1、H2、H3)をさらに備え、前記加熱手段は少なくとも第1および第2の加熱素子を備え、前記第1および第2の加熱素子は電気式であり、前記第1の加熱素子は前記スタック内の第1の配置に配設され、前記第2の加熱素子は前記スタック内の第2の配置に配設され、
前記電気化学システムは、前記第1の加熱素子および前記第2の加熱素子を別々に制御し、前記第1の配置と前記第2の配置との間で熱の異なる追加に対応できる、制御手段をさらに備え、
第1のコマンドを前記第1の加熱素子に、第2のコマンドを前記第2の加熱素子に適用するステップであって、前記第1のコマンドおよび第2のコマンドは前記スタックの方向における前記スタック内の熱勾配を実質的に所与の値に維持するように決定される、ステップを含
み、
第1および第2の電気式加熱素子は、ジュール効果型である、方法。
【請求項2】
前記第1のコマンドおよび第2のコマンドは、前記システムの動作中に変化する、請求項
1に記載の調節方法。
【請求項3】
前記第1の配置は、前記セルにガスを供給する管が貫通する前記スタックの一方の端部に位置し、前記ガスは前記システムの動作温度より低い温度であり、前記第1のコマンドは、前記第1の素子が、前記ガスの供給に起因して生じた温度低下を補償するのに十分な量の熱を発生させて、前記熱勾配を実質的に前記所与の値に維持するようなコマンドである方法である、請求項1
または2に記載の調節方法。
【請求項4】
前記第1のコマンドの決定には、供給ガスの1つもしくは複数の温度および/またはその流量が考慮される、請求項
3に記載の調節方法。
【請求項5】
少なくとも前記システムの起動段階では、前記第1のコマンドおよび第2のコマンドは、前記システムがその動作温度に達するまで、前記第1および第2の加熱素子が同じ温度であるようなコマンドである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の調節方法。
【請求項6】
前記第1のコマンドおよび/または第2のコマンドは、前記システムの動作特性の測定に従って決定され、かつ/または修正される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の調節方法。
【請求項7】
前記スタックの少なくとも2つの異なる領域内の温度を測定するステップと、
前記2つの領域の温度の差を閾値と比較するステップと、
前記比較するステップに照らして前記第1のコマンドおよび/または第2のコマンドを決定するかまたは修正するステップとを含む、請求項
6に記載の調節方法。
【請求項8】
少なくとも1つの電気化学デバイスを備える電気化学システムであって、前記電気化学デバイスは、nを2以上の整数とするn個の電気化学セルであって、前記電気化学セルは固体酸化物型電解セルまたは固体酸化物型燃料電池である、電気化学セルと、前記電気化学セルの間に介装されている少なくともn-1枚の相互接続板のスタックと、前記電気化学セルにガスを供給するための手段と、前記電気化学セルによって生成されるガスを回収するための手段と、前記システムを外部に電気的に接続するための手段とを備え、前記電気化学デバイスは、前記スタック内に組み込まれている加熱手段(H、H1、H2、H3)をさらに備え、前記加熱手段は少なくとも第1および第2の加熱素子を備え、前記加熱素子は電気式であり、前記第1の加熱素子は前記スタック内の第1の配置に配設され、前記第2の加熱素子は前記スタック内の第2の配置に配設され、前記システムは、前記第1の加熱素子および前記第2の加熱素子を別々に制御し、前記第1の配置と前記第2の配置との間で熱の異なる追加に対応できるようにし、前記スタックの方向における前記スタック内の熱勾配を所与の値に実質的に維持するように構成されている制御手段をさらに備え
、
第1および第2の電気式加熱素子は、ジュール効果型である、電気化学システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記電気化学システムの設計時に予め決定されているモードで前記加熱素子を制御するように構成される、請求項
8に記載の電気化学システム。
【請求項10】
前記スタックの少なくとも第1および第2の異なる領域内の温度を測定するための手段を備え、前記制御手段は、前記スタックの方向における熱勾配を低減するように前記加熱素子を制御するように構成される、請求項
8または9に記載の電気化学システム。
【請求項11】
前記第1および第2の加熱素子
の各々は
、前記スタック内または前記スタック上に配設されてい
る加熱
板に配設される、請求項
8から
10のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項12】
前記加熱板は、各々、前記スタックの方向における前記スタックの端部に配設される、請求項
11に記載の電気化学システム。
【請求項13】
前記スタックの方向における前記スタックの端部に各々配設されている2つの締付板(S1、S2、S101、S102、S201、S301)と、前記n個のセルおよびn-1個の相互接続部に締付力を加えるために前記板と協働する手段とを備える、請求項
8から
11のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項14】
各加熱板は、締付板によって形成される、請求項
12または
13に記載の電気化学システム。
【請求項15】
各加熱板は、締付板に対し
て当接する、請求項
12または
13に記載の電気化学システム。
【請求項16】
前記電気化学デバイスを収容する内部空間を画成し、それを外部から断熱する断熱筐体(17)を備える、請求項
8から
15のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば高温で動作する固体酸化物型の電気化学セルのスタックを備える少なくとも1つの電気化学デバイスと、スタック内に組み込まれている加熱手段とを備える電気化学システムの温度制御のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスは、高温電気分解に使用され、固体酸化物型電解セル(SOEC)のスタックを含むか、または燃料電池としてのスタックを含むことができ、固体酸化物型燃料電池もしくはSOFCのスタックを含むことができる。
【0003】
このようなデバイスは、2つの締付板の間に把持された電気化学セルのスタックを含む。
【0004】
各セルは、2つの電極の間に電解質を備える。相互接続板は、セルの間に介装され、セル間の電気的接続を提供する。さらに、相互接続板は、セルへのガス供給および各セルで生成されたガスの回収の機能を提供する。
【0005】
動作時に、アノードおよびカソードは、電気化学反応の場であり、電解質は、電気化学デバイスが電解槽モードで動作しているか、燃料電池モードで動作しているかに応じて、カソードからアノードへ、またはその逆に、アノードからカソードへ、イオンが輸送されることを可能にする。
【0006】
したがって、電解槽モードでは、カソード区画は、水蒸気の追加、および水還元生成物、特に水素の放出を可能にし、一方、アノード区画は、排出ガスを介して、カソードからアノードに移動するO2-イオンの酸化によって生成された酸素の放出をもたらす。
【0007】
基本電気化学セル(elementary electrochemical cell)による水蒸気の電気分解の機序(「SOEC」モード)は以下に説明されている。この電気分解の際に、基本電気化学セルは、カソードからアノードに流れる電流の供給を受ける。次いで、カソード区画によって分配される水蒸気は、電流の効果の下で、次の半反応
2H2O+4e-→2H2+2O2-
に従って還元される。
【0008】
次いで、この反応で生成された水素は排出され、還元で生成されたO2-イオンはカソードから電解質を介してアノードに移動し、そこで次の半反応
2O2-→O2+4e-
に従って酸素に酸化される。
【0009】
こうして形成される酸素と同様に、これはアノード区画内を循環する排出ガスによって放出される。
【0010】
水蒸気の電気分解は、次の反応
2H2O→2H2+O2
に対応する。
【0011】
燃料電池モード(「SOFC」)では、空気がカソード区画内に注入され、O2-イオンに分解する。後者はアノードの方へ移動し、アノード区画内を循環する水素と反応して水を形成する。
【0012】
燃料電池モードでの動作は、電流の発生を可能にする。
【0013】
締付板は、スタックに締付け力を及ぼし、相互接続板とセルとの間の良好な電気的接触およびスタックの不浸透性を確実にする。
【0014】
SOEC/SOFCシステムの動作温度は、一般的に600℃から1000℃の間である。
【0015】
これらの温度は、スタックを高出力オーブン内に配設することによって得られる。オーブンは、筐体と、たとえば筐体の壁の内面に電気素子とを備える。したがって、これは一定の嵩を有する。電気素子とスタックとの間の熱伝達は、対流または輻射によって行われる。温度を監視し、調節するために、計測器がオーブンとデバイスとの間に区切られた空間内に設けられる。
【0016】
したがって、水素を生成するための、または発電するためのシステムは、オーブンと電気化学デバイスを備える。
【0017】
オーブンでの加熱は、スタックの温度を細かく調節することを可能にすることをせず、また、電気化学セルの動作の性能の違いを考慮することを可能にすることもしない。
【0018】
さらに、安全上の理由からオーブン内でガスフラッシングが実施されるが、これは対流による伝達を妨げる。さらに、輻射による熱伝達は、筐体の寸法に依存しており、筐体が大きければ大きいほど、輻射による熱伝達はその影響を受けやすい。
【0019】
国際公開第WO2017/102657号では、「プラグアンドプレイ」型の、すなわちガス供給および回収面に容易に接続可能である締付システムによって保持される固体酸化物型セルのスタックを備える電気化学デバイスの一例を説明している。締付システムは、温度の変化にかかわらず、実質的に一定の締付レベルをもたらすように設計されている。電気化学デバイスは、オーブン内に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第2017/102657号
【文献】仏国特許第3045215号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
その結果、本発明の1つの目的は、電気化学セルのスタックを備える電気化学システムを調節し、スタックの温度の最適化された調節を可能にするための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的は、電気化学セルおよびセルの間に介装されている相互接続板のスタックを含む電気化学デバイスを備えるシステムを調節するための方法、ならびにスタック内に組み込まれている加熱手段であって、加熱手段は少なくとも2つの加熱素子を含み、各々、スタック内の異なる配置に配設される、加熱手段によって達成される。調節方法は、各加熱素子を別々に制御する。たとえば、加熱素子のうちの少なくとも1つは、1つまたは複数のセルの動作性能の低下を補償するために、または熱漏出を補償するために、他の加熱素子に比べて多くまたは少なく熱を供給する。別の例によれば、加熱素子のうちの少なくとも1つは、セルに供給するガスを加熱するためにより多くの熱を供給するように制御され得る。本発明により、スタック内での熱勾配が制御される。
【0023】
この調節方法は、スタックの均質な温度をより容易に達成することを可能にし、これはシステム全体の動作を最適化する。
【0024】
言い換えると、スタック内に分配されている加熱素子を個別に管理することによってスタック内の局所的熱調節を達成することが可能である。次いで、要件に従ってスタック内の様々な地点に熱を加えることが可能である。
【0025】
加熱素子は、有利には、電気式であり、たとえば電気ケーブルまたはリードを含む。次いで、加熱素子の差別化された調節は、各ケーブルに供給する電流の強度を管理することによって行うことができる。
【0026】
次いで、本発明の一主題は、nを1以上の整数とするn個の電気化学セルと、電気化学セルの間に介装されている少なくともn-1枚の相互接続板のスタックと、電気化学セルにガスを供給するための手段と、電気化学セルによって生成されるガスを回収するための手段と、システムを外部に電気的に接続するための手段とを備える電気化学システムの熱調節のための方法である。電気化学デバイスは、スタック内に組み込まれている加熱手段も備え、前記加熱手段は少なくとも第1および第2の加熱素子を備え、第1の加熱素子はスタック内の第1の配置に配設され、第2の加熱素子はスタック内の第2の配置に配設され、これは
第1のコマンドを第1の加熱素子に、第2のコマンドを第2の加熱素子に適用することであって、前記第1および第2のコマンドはスタックの方向のスタック内の熱勾配を実質的に所与の値に維持するように決定される、適用することを含む。
【0027】
好ましくは、第1および第2のコマンドは、システムの動作中に変化する。コマンドを形成する所与の値は、動作の途中で変化することもある。
【0028】
たとえば、第1の配置が、セルにガスを供給する管が貫通するスタックの端部に置かれ、ガスはシステムの動作温度である温度にある場合、第1のコマンドは、第1の素子が、ガスの供給に起因して生じた温度低下を補償し、熱勾配を実質的に所与の値に維持するのに十分な量の熱を発生するようなコマンドであってよい。
【0029】
好ましくは、第1のコマンドを決定することは、供給ガスの1つもしくは複数の温度および/またはその流量を考慮する。
【0030】
有利な実施形態において、少なくともシステムの起動段階では、第1および第2のコマンドは、システムがその動作温度に達するまで、第1および第2の加熱素子が同じ温度であるような、コマンドである。
【0031】
追加の特徴により、第1および/または第2のコマンドは、システムの動作特性の測定に従って決定され、および/または修正される。
【0032】
調節方法は、
スタックの少なくとも2つの別々の領域内の温度を測定するステップと、
2つの領域の温度の差を所与の値と比較するステップと、
比較ステップに照らして第1および/または第2のコマンドを決定するか、または修正するステップとを含んでもよい。
【0033】
本発明の別の目的は、nを1以上の整数とするn個の固体酸化物型電気化学セルと、電気化学セルの間に介装されている少なくともn-1枚の相互接続板のスタックと、電気化学セルにガスを供給するための手段と、電気化学セルによって生成されるガスを回収するための手段と、システムを外部に電気的に接続するための手段とを備える少なくとも1つの電気化学デバイスを備える電気化学システムである。電気化学デバイスは、また、スタック内に組み込まれている加熱手段も備え、前記加熱手段は少なくとも第1および第2の加熱素子を備え、第1の加熱素子はスタック内の第1の配置に配設され、第2の加熱素子はスタック内の第2の配置に配設され、前記システムはまた第1の加熱素子および第2の加熱素子を別々に制御し、第1の配置と第2の配置との間の熱の異なる追加に対応できるように構成されている制御手段も備える。
【0034】
たとえば、n個の電気化学セルは、固体酸化物型電気化学セルである。
【0035】
有利には、加熱素子は、ジュール効果素子である。
【0036】
制御手段は、電気化学システムの設計時に予め決定されているモードに従って加熱素子を制御することができる。
【0037】
電気化学システムは、有利には、スタックの少なくとも第1および第2の異なる領域内の温度を測定するための手段を含む。制御手段は、スタックの方向における熱勾配を低減するように加熱素子を制御する。
【0038】
第1および第2の加熱素子は、各々、たとえば、スタック内またはスタック上に配設されている、加熱板と称される、板に配設される。有利には、加熱板は、各々、スタックの方向におけるスタックの端部に配設される。
【0039】
システムは、各々、スタックの方向でスタックの端部に配設されている2つの締付板と、n個のセルおよびn-1個の相互接続部に締付力を加えるために板と協働する手段とを備えてもよい。
【0040】
例示的な一実施形態において、各加熱板は、締付板によって形成される。
【0041】
別の例示的な実施形態において、各加熱板は、締付板に対して、有利には、その外面に対して、当接する。
【0042】
電気化学システムは、有利には、電気化学デバイスを収容する内部空間を画成し、それを外部から熱的に絶縁する熱絶縁筐体を備え得る。
【0043】
本発明は、次の説明および添付図面に基づきより詳しく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明による熱調節方法によって制御され得る、電気化学システムの分解図である。
【
図2】本発明による熱調節方法によって制御され得る、例示的な一実施形態による電気化学システムの斜視図である。
【
図3A】単独で示されている、
図2のシステムにおいて使用される締付板の斜視図である。
【
図3B】導電体のところの
図3Aの締付板の断面の詳細図である。
【
図4A】
図2のシステムにおいて使用できる一変更実施形態による締付板の斜視図である。
【
図4B】
図2のシステムにおいて使用できる一変更実施形態による締付板の斜視図である。
【
図5】
図2のシステムにおいて使用できる別の例示的な実施形態による締付板の斜視図である。
【
図6】本発明による熱調節方法によって制御され得る、別の例示的な一実施形態による電気化学システムの斜視図である。
【
図7A】
図6のシステムの加熱手段の様々な概略図である。
【
図7B】
図6のシステムの加熱手段の様々な概略図である。
【
図7C】
図6のシステムの加熱手段の様々な概略図である。
【
図8】本発明によるシステムを使用する電気化学的装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次の説明では、本発明による熱調節方法で制御できる電気化学システムの例を詳細に説明しているが、以下で説明されるように、本発明は他の電気化学システムにも適用可能である。
【0046】
図1は、本発明による熱調節方法によって制御され得る、電気化学システムの例示的な一実施形態の分解図である。
【0047】
電気化学システムは、高温電気分解(「SOEC」モード)に使用されるか、または燃料電池(「SOFC」モード)として使用されることを意図されている電気化学デバイスD1を備える。
【0048】
電気化学デバイスD1は、固体酸化物型電気化学セルのスタックを含む。
【0049】
スタックは、カソード、アノード、およびアノードとカソードとの間に配設されている電解質によって各々形成される複数の基本電気化学セルCLを備える。電解質は、高強度、高密度のイオン導電性材料から作られており、アノードおよびカソードは多孔質層である。
【0050】
スタックは、2つの連続する基本セルの間に各々介装され、基本セルのアノードと隣接する基本セルのカソードとの間の電気的接続を提供する相互接続板またはインターコネクタIをさらに備える。インターコネクタIは、一続きの基本セルに接続をもたらす。
【0051】
スタックは、1個のセルから数百個のセル、好ましくは25個のセルから75個のセルを含み得る。
【0052】
中間インターコネクタは、また、接触している電極の表面のところで流体区画を区切る。
【0053】
基本電気化学セルCLのアノードと接触する中間インターコネクタIの面は、アノード区画と称される、区画を区切り、基本電気化学セルCLのカソードと接触するインターコネクタIの面は、カソード区画と称される、区画を区切る。
【0054】
アノード区画およびカソード区画の各々は、前記ガスの分配および回収を可能にする。
【0055】
たとえば、水の電気分解では、カソード区画は、カソードへの水蒸気の供給および生成された水素の放出をもたらす。アノード区画は、排出ガスの循環およびアノードで生成された酸素の放出をもたらす。
【0056】
電気化学デバイスは、スタックのいずれかの側に配設されている端板Pを備え得る。端板は、導電性である。
【0057】
デバイスは、ガスを分配するためのチューブ(図示せず)と、ガスを回収するためのチューブとも備える。
【0058】
図示されている例において、電気化学デバイスD1は、スタックの方向でスタックのいずれかの側に配設され、タイロッドTによってスタックに締付力を及ぼすことを意図されている第1の締付板または頂部締付板S1および第2の締付板または底部締付板S2とそれぞれ称される2つの締付板を設けられた締付システムS1、S2も備える。
【0059】
この構成により、各端板Pは、各締付板と各端板との間に、たとえば雲母から作られた、電気絶縁板Mを介装することによって、隣接する締付板から電気的に絶縁される。
【0060】
タイロッドTは、たとえば、締付板を通過する締付ロッドによって形成され、その端部にはナットが装着される。これらの手段は、この点に関して、仏国特許第3045215号において説明されている。
【0061】
有利には、締付板S1、S2は、ステンレス鋼から、非常に有利には、20℃から800℃の間で18.5×10-6の熱膨張係数を有する、たとえば、AISI 310Sタイプの耐火性オーステナイト鋼から生産され得る。さらに、この鋼鉄は、1000℃まで良好な機械的強度を備える。
【0062】
タイロッドは、たとえば、インコネル625タイプのニッケル系超合金から作られる。
【0063】
これらの材料を組み合わせることで、締付板の高い膨張率を通じて締付ロッドと電気化学セルとの間の膨張の差を補償する。有利には、締付板と同じ材料のワッシャが、締付板とナットとの間に介装される。
【0064】
締付板S1、S2の一方もしくは他方または両方は、固体酸化物スタックにガスを供給するか、または固体酸化物スタックからガスを放出するために、ガスがガス入口部からガス出口部に流れることを可能にするガスを流すための少なくとも1つの管を設けられている。
【0065】
ガス入口部およびガス出口部は、締付板S1、S2の最大表面積を有する面の各々にそれぞれ配設される。
【0066】
電気化学デバイスは、スタック内に組み込まれている加熱手段Hも備える。
図1では、これらの手段Hは、概略図に示されている。
【0067】
本明細書において、「組み込まれている加熱手段」は、スタックと直接機械的に接触する加熱手段を意味する。これらは、スタック上および/またはスタック内に配設される。加熱手段は、スタックのすでに存在している要素またはスタックに追加された要素内に装着される。
【0068】
この例では、加熱手段H1は、ジュール効果による電気加熱手段である。これらは、スタックの高さの少なくとも2つの別個の配置のところで組み込まれる少なくとも2つの加熱素子E1、E2を備える。
【0069】
たとえば、加熱素子E1、E2は、スタック内に組み込まれている導電性ケーブルまたはリード2であり、放熱により熱を発生する。説明の残りの部分において、「ケーブル」、「電気ケーブル」、または「加熱ケーブル」は、加熱手段を形成する導電性ケーブルを指示するために使用される。たとえば、加熱手段は、インコネル600のシースの中の鉱物性絶縁体であるマグネシアMgO(96~99%)および組み込まれた低温端子を有する加熱コアを備える。加熱コアは、たとえば、6.5m±5%の長さにわたって2.0mm±0.05mmの直径を有し、7.0Ω/m±10%の内部抵抗を有する。
【0070】
好ましくは、加熱素子E1、E2は、スタック全体にわたって1つまたは複数の温度を円滑に制御することを可能にするように、スタック内に位置決めされる。好ましくは、これらはスタックの方向でスタックの端部に配設され、これは、スタックの高さ全体にわたって熱勾配を制御することが可能にする。
【0071】
各加熱素子は、他のケーブルとは独立して制御できるように電源50に接続され、したがって各加熱素子による熱の差別化された供給を可能にする。たとえば、2つの加熱素子が同じ電源に接続され、電流を変調する手段が各加熱素子のところに設けられることも想定され得る。一変更形態において、各加熱素子は、調節される、それ専用の電源に接続される。
【0072】
加熱手段は、以下に説明されるように、制御ユニットVC、たとえばコンピュータによって、たとえば、熱電対によって供給される測定値、設定された1つもしくは複数の温度値、および/または予め決定されている動作モードに基づき制御される。
【0073】
図2、
図3A、および
図3Bは、電気化学デバイスD2を含む電気化学システムの有利な実用的例示的実施形態を示している。この例では、加熱手段H1は、2つの締付板S101、S102内に存在する。
【0074】
締付板は、スタックの方向で熱を伝導することができる材料から生産される。好ましくは、材料は良好な熱伝導性を有し、好ましくは少なくとも10W/m.Kに等しい。AISI 310S鋼は、有利には、良好な熱伝導性を有し、20℃で15W/m.K、500℃で19W/m.Kである。
【0075】
この例では、
図3Bに示されているように、締付板S101の最大の表面積を有する面の1つに陥凹部4が形成され、その深さは電気ケーブル2を受け入れるのに十分な深さである。好ましくは、陥凹部4の深さは、ケーブル2が板から突出しない十分な深さである。ケーブルは、材料、たとえば、ハンダ5を加えることによって陥凹部4内に固定化され、これはたとえば真空下で実装される。好ましくは、ハンダの材料は、差動膨張の危険性を回避するために締付板の材料と同じである。
【0076】
好ましくは、ハンダは、スタックの側部に配設される。したがって、加熱ゾーンは、スタックにできるだけ近い位置に置かれる。
【0077】
この例では、導体は正方形の螺旋状に配設される。
【0078】
高度に有利には、電気ケーブルは、デバイスの加熱を最適化するように、電気化学セルの表面に対応する表面の上に載るように分配される。図示されている例では、加熱板S101は、正方形の形状の主要部分6、およびタイロッドが通る主要部分の両側に突出するアーム部8を備える。電気ケーブルは、主要部分の表面全体にほぼその縁の範囲まで広がっている。この例では、電気ケーブルは表面の上に一様に分配され、スタックの表面全体に均一な加熱分布をもたらす。
【0079】
ケーブルの接続端2.1、2.2は、システムの残りの部分に電気的に接続するために、締付板から横方向に出ている。
【0080】
図4Aおよび
図4Bにおいて、締付板S201の一変形形態は見えているものとしてよく、電気ケーブル2は別の分配を有する。
【0081】
電気ケーブルの任意の他の分配も想定され得る。
【0082】
吸熱動作では、熱の高い損失がスタックのコアのところに現れる。好ましくは、板は、その縁に関してプレートの中心でより高い熱量を供給するために板の中心に高い密度の導体を有する。
【0083】
陥凹部は、たとえば、機械加工によって形成される。
【0084】
たとえば、締付板は、たとえば数百mmの、たとえば200mm×200mmの平面内の寸法と、1から数十mm、たとえば、10mmの厚さとを有する。
【0085】
図示されている例では、板毎に単一の電気ケーブルが使用され、電流源との接続が簡素化される。しかしながら、板毎に複数のケーブルを1つの平面または複数の平面内に分配することも想定され得る。複数のケーブルを使用することには、ケーブルに欠陥がある場合に、スタックに熱を供給し続けることを可能にするという利点があるが、一般に締付板を取り外すことは可能でなく、タイロッドを介してこれらによって加えられる荷重はデバイスを停止せずには取り除けないのでなおさらである。
【0086】
有利には、1つまたは複数の温度センサー10、11、たとえば
図4Bに示されている熱電対は、各締付板に配設される。2つの温度センサーが好ましくは使用され、一方の安全温度センサー10は加熱ケーブルの温度を監視し、その過熱および劣化を回避するために加熱ケーブルにできる限り近い位置に配設され、もう一方の温度センサー11は調節を意図され、板の温度を測定するために配設され、調節センサーは、加熱ケーブルからさらに遠くに、たとえば、数ミリメートル離して配設される。
【0087】
加熱手段をセルにできる限り近い位置に組み込むことで、スタックに実際に供給されるエネルギーを制御することが可能になる。さらに、オーブンとデバイスとの間の輻射による熱損失もなくなる。したがって、加熱はより効果的になる。
【0088】
さらに、
図2の特定の例において、1つまたは複数のケーブルを締付板に組み込めば、電気化学デバイスの全体的なサイズを変えることがないので、すでに適所にあるデバイスを交換することができる。
【0089】
しかしながら、加熱手段を組み込むことで得られるスタックの加熱の有効性が高いにもかかわらず、スタック内に熱勾配が現れ、システムの正しい動作に悪影響を及ぼし得る。
【0090】
本発明により、締付板内に組み込まれている各加熱素子は、たとえば、スタック内の加熱素子の配置および/または選択された動作モードおよび/または電気化学システムの動作特性に従って熱の所与の追加を可能にするように別々に制御され得る。
【0091】
したがって、システムは、締付板S101内の加熱素子によって供給される熱の量が、締付板S102の加熱素子によって供給される熱の量と異なるか、または同じになるように制御され得る。
【0092】
たとえば、システムが起動されたときに、2つの加熱素子は、スタックの全高にわたって均一な温度を有し、2つの端板の間の熱勾配を排除するために、同量の熱を供給するように制御される。この動作モードは、スタックが動作温度に達するまで維持され得る。
【0093】
別の例により、2つの加熱素子は、セルの動作中に出現した温度勾配を補償するために異なる量の熱を供給し、スタック内に温度勾配を確立するように制御される。
【0094】
最大温度勾配は、数十度、たとえば50℃、さらには100℃程度である。
【0095】
たとえば、スタック内のセルの1つまたは複数が他のセルと比較して性能が低下している場合、このまたはこれらのセルの温度は、より効率的なセルでの温度とは異なることがあり、効率の低い1つまたは複数のセルにおける1つまたは複数の加熱素子は、温度の差を補償し、スタック全体にわたって均一な温度を達成することを可能にするように制御される。
【0096】
加熱素子による異なる量の熱の供給は、スタックの一部が他の部分よりも熱損失が大きいときにも制御され得る。
【0097】
さらに、システムは、ガスを電気化学セルに供給するための管Cを備える。しかしながら、システムに入るガスは、一般に、システムの動作温度よりも低い温度、たとえば約500℃である。管は、一般に、一端からスタック内に入り、ガスの投入はスタック内に温度勾配を引き起こす傾向がある。本発明による調節方法は、供給ガスの投入部に最も近い位置にある加熱素子を制御して、供給ガスがスタックに入る前に供給ガスを加熱することによってこの熱勾配の出現を抑制することを可能にする。
【0098】
図2では、管Cは締付板S102を通過する。この締付板内に配設されている加熱素子E1は、供給ガスによって形成される熱井戸を補償するために、締付板S101の加熱素子よりも多くの熱を発生するように制御される。
【0099】
このように加熱素子の差別化された管理は、スタックの温度をより細かく均一化すること、したがって第一に、セルの性能を均一化することによってシステムの効率を最適化し、第二に、熱勾配によって引き起こされる機械的応力からスタックを保護することを可能にする。
【0100】
差別化された管理は、さらに、加熱素子の制御において特定の動作モードの発熱特性を考慮することを可能にする。これらの動作モードでは、温度勾配がスタック内に出現し、これは有利には好適な方式で加熱素子を制御することによって補償され得る。
【0101】
さらに、スタックそれ自体の中で、ゾーンは吸熱動作を有するものとしてよく、他は発熱動作を有する可能性があり、たとえば、スタックの上側端部が発熱動作を有し、スタックの下側端部が吸熱動作を有し得ることが分かっている。各加熱素子を別々に制御することによって、熱供給をスタックの局所的要求条件に合わせることが可能である。
【0102】
加熱素子の各々を調節するための方法は、スタックの完全性を維持しながらシステムの効率を最大化するように実験および/またはシミュレーションによって事前に確立され得る。たとえば、供給ガスを加熱するための加熱素子に対するコマンドは、システムが設計されるときに確立されるものとしてよく、供給ガスの流量および温度は実質的に一定である。次いで、制御ユニットは、加熱素子を制御して、加熱素子が他の加熱素子よりも大きい所与の量の熱をシステマティックに発生するようにプログラムされ得る。
【0103】
別の例では、調節モードは、スタックの動作中のスタックの動作特性のリアルタイム測定を考慮し、これに基づき加熱素子への指令を生成してもよい。
【0104】
たとえば、スタック内の温度を測定することで、熱勾配の存在を検出することが可能になる。次いで、加熱素子は、この熱勾配を補償するように制御される。加熱素子の制御については、システムの他の特性も考慮され得る。たとえば、これらは、スタック内の1つの、いくつかの、またはすべてのセルの電流/電圧特性であってよい。次いで、温度測定手段が、スタック内に組み込まれる。
【0105】
ガスを加熱するために、コマンドを供給ガスの流量および/またはその入口部温度にリンクするように設定され得る。
【0106】
したがって、スタック上の様々な位置における熱の供給は、システムの動作中に予め確立されている方式で、および/または連続的に調整することができる。最初に、たとえば、動作温度に到達するための事前確立モード、次に、測定された特性による調整可能モードを、適用する管理を企図することが可能である。
【0107】
さらに、調節モードは、有利には、システムの動作モード、すなわちSOFCモードで動作しているのか、SOECモードで動作しているのかに依存する。
【0108】
それに加えて、動作中に、特に、
図8に関連して以下で説明されるように、電気化学デバイスが隔離されている熱絶縁筐体を有するシステムの場合に、加熱素子のうちの1つのみを動作させることが想定され得る。たとえば、水素を生成するシステム(SOEC)の動作の場合、その動作は吸熱性であり、熱を加えることは、一般に、システムの動作全体にわたってなされ、これは静止動作で底部締付板内に組み込まれている加熱素子によって提供される。
【0109】
動作が発熱性である発電するシステムの動作の場合、動作温度に達するために2つの締付板の電熱線に給電し、次にガスを加熱するために底部締付板のみを連続的に加熱するように設定され得る。
【0110】
非常に効果的な熱絶縁筐体の場合、静止または安定した動作において、加熱素子による熱の供給を中断することが想定され得る。
【0111】
図5では、加熱手段H2を備えた締付板S302の概略を示している別の例示的実施形態を見ることができる。加熱手段H2は、フィンガーまたはピン12の形態の導電性要素を含み、これらは、そのまま締付板内に横方向に挿入される。板は、その外側縁において、放熱する導電性要素が装着されているハウジング14、たとえば非貫通孔を備える。好ましくは、ピンまたはフィンガーは、板の周縁部全体にわたって一様に分配される。好ましくは、フィンガーは、フィンガーと板との間に良好な熱的接触を形成し、熱損失を低減するように、ハウジング14内に強制的に装着される。一変更形態において、特に、頂部加熱板では、フィンガーの少なくともいくつかを締付板の中央平面に垂直に配設することが企図され得る。
【0112】
電気化学デバイスは、締付板S301と同一の第2の締付板を備える。次いで、2つの締付板の差別化された管理が可能である。
【0113】
締付板の中央平面は、締付板の最大表面積を有する面が実質的に平行である平面である。
【0114】
好ましくは、
図5において、すべての加熱フィンガーまたはピンが締付平面S301内に規則的に分配され、加熱フィンガーまたはピンは、好ましくは、締付板の断面全体にわたって均一な加熱を確実にするために同じ量の熱を発生するように制御される。
【0115】
フィンガーまたはピンの分配が一様でない場合、様々なピンの差別化された管理が企図され得る。
【0116】
図6において、電気化学デバイスD3の別の有利な例示的実施形態を見ることができ、加熱手段H3はそのようなものの外側で締付板に取り付けられている。加熱手段は、
図7A~
図7Cに単独で示されている少なくとも1つの加熱板16を含む。このようにして配設されている加熱素子は、スタックの高さ全体にわたって熱勾配を制御することを可能にする。
【0117】
加熱板16は、たとえば、
図2、
図3A、および
図3Bの締付板と同じ方法により製造される。加熱板16は、最大の主要表面を有するその面の1つに形成されている陥凹部16.1を備え、陥凹部16.1およびハンダ16.3内に配設されている破線で示されている電気ケーブル16.2は、ケーブル上の陥凹部16.1内に堆積され、リードを陥凹部内に固定する。
図7Bにおいて、ハンダはまだ盛られていない。
【0118】
次いで、このようにして形成された板16は、締付板S1の最も外側の表面である面に対して直接接触するように装着され得る。好ましくは、加熱板16と締付板S2との間の非常に良好な熱伝達を確実にするために、接触している面は、非常に良好な平坦さを有する。たとえば、加熱板は、スタック内に組み込まれている加熱手段を利用しながら容易に取り外し可能であるように、すなわち、確実に固定されないまま、締付板と接触する。一変更形態において、良好な熱伝導性をもたらす延性材料の層、たとえば金ペーストが、締付板と加熱板との間に介装され、これは、加熱板と締付板との間の熱的接触を改善し、平坦さにおけるいかなる欠陥をも補償する。
【0119】
一変更形態において、
図5に示されている例のように、加熱板は加熱フィンガーまたはピンを備える。フィンガーまたはピンは、加熱板の外側縁内、および/または加熱板の外部主要面を通して装着され得る。
【0120】
締付板に取り付けられている1つまたは複数の加熱板16を使用することで、すでに製造されており、締付板を取り外して、組み込まれている加熱手段を備える締付板に交換すること、または中間加熱板を導入することのいずれかが可能でない、電気化学デバイスを装備することが可能になる。
【0121】
図6では、ガス供給管およびガス回収管Cならびに端板Tに電気的に接続するためのケーブル15を見ることができる。
【0122】
一変更形態において、加熱手段は、スタック内に取り付けられた板の形態でスタック内に組み込まれ得る。たとえば、加熱手段は、加熱ケーブルが組み込まれている中間板を備え、これらの板は、締付板と端板との間に配設される。
【0123】
別の変更形態により、中間板は、各々、2つの基本電気化学セルの間に配設される。中間加熱板を挿入することで、スタック内の垂直熱勾配を下げることが可能である。この変更形態では、中間板がインターコネクタの代わりになるか、または外部電気接続手段がセルの間の電気接続を提供する。
【0124】
1つまたは複数の安全および/または調節温度センサーが、有利には、加熱板に配設され得る。
【0125】
熱電対は、有利には、1つもしくは複数の加熱板16、または1つもしくは複数の中間板内に配設される。
【0126】
生産された電気化学デバイスにより、後者がスタックの方向に締付力を加えることを必要としない場合に、締付板は省かれ得る。
【0127】
図1から
図6の様々な例は、組み合わされ得ることは理解されるであろう。たとえば、加熱手段は、1つの締付板のみまたは中間板内に1つまたは複数の導体を備え得る。またはここでもまた、加熱手段は、加熱板16と、加熱導体が組み込まれた締付板とを備える。
【0128】
好ましくは、電気化学デバイスは、エネルギー損失、特に熱損失を低減し、デバイスの動作を最適化するように、筐体内に配設される。たとえば、筐体の壁は、SiO2、CaO、およびMgOを含む1つもしくは複数の繊維性絶縁材料、または軽量コンクリートタイプの材料のうちの1つを含む。
【0129】
図8において、筐体17内に配設されている、本発明による電気化学デバイス、たとえばデバイスD2を備える設備の概略図を見ることができ、筐体は断面で図示されている。
【0130】
筐体は、電気化学デバイスが配置されているハース18と、電気化学デバイスを外部環境から熱的に絶縁する閉鎖容積を画成する側壁20および頂部壁22とを備える。
【0131】
筐体、特に側壁20および頂部壁22は、一体品として生産されるか、または互いに組み付けられた複数の部品で生産され得る。筐体には、チューブおよび電気コネクタを通すための開口部24が設けられている。開口部の輪郭とチューブおよびコネクタとの間のクリアランスは、有利には、熱絶縁材料を充填される。高度に有利には、流体接続および電気接続はハース18を通して行われ、熱漏出をさらに低減する。
【0132】
好ましくは、筐体の内部輪郭は、電気化学デバイスの外部形態に形状適合し、デバイスの外面により、小さなクリアランスを定める。これは、筐体の内壁が前記組み立て方向に電気化学デバイスによって放射される熱をより効果的に反射することを可能にし、その結果、従来このタイプの用途で使用されていたものと比べて低出力の加熱手段を使用することが可能になる。
【0133】
さらに、組み込まれた電気的加熱手段と電気的絶縁筐体を組み合わせることで、スタックの方向の熱勾配を下げることも助け、電気化学デバイス内の温度を均一化して、したがって、電気化学デバイスの効率を改善することが可能になる。
【0134】
温度のこの均一化は、スタックに必要な加熱温度に近い設定の加熱値を組み込まれている外部導体に適用することが可能になる。したがって、特にスタックの頂部にある要素を過熱することによってデバイスの要素への損傷の危険性が限定される。
【0135】
筐体の内壁に反射材が設けられ得る。
【0136】
自由空間が、好ましくは、電気化学デバイスと筐体の内壁との間に保持され、これにより、スタック上の任意の漏出を検出することを可能にする。一般に、スタックからの水素の任意の漏出を希釈して放出するために、空気で筐体をフラッシングする。さらに、短絡の危険性を減らすために、筐体とスタックとの間の任意の接触を回避することが好ましい。
【0137】
1つまたは複数のセンサーが、筐体に搭載されるか、または筐体と電気化学デバイスとの間の空間内に配設されてよく、これはデバイスの温度を調節するための温度センサー、デバイス内の漏出を検知するためのガスセンサーなどの場合であってよい。
【0138】
本発明による電気化学デバイスは、オーブン内に配設される必要がないので、非常にコンパクトであるという利点を有する。さらに、これは、4つのガス供給および回収管、ならびに組み込まれている加熱システムおよび端板に対する電源に容易に接続され得るので、非常に使いやすい。そこで、このデバイスは、「プラグアンドプレイ」タイプである。
【0139】
デバイスが筐体内に収納されている場合、後者は、有利には、容易に達成され得るデバイスの形状に合わせて形成されているので小型である。筐体は、その内壁に電気的要素を備える、オーブンとは異なり、デバイスの周りに組み立てられ得る。それに加えて、壁は電気的要素を含まないので、厚さが低減される。
【0140】
筐体のないシステムの加熱素子の差別化された管理についての説明は、筐体のあるシステムの加熱素子の差別化された管理にも適用される。
【0141】
図2、
図5、および
図6の例では、加熱素子は締付板内に配設される。一変更形態において、締付板内の加熱素子に加えて、電気化学セルの間に1つまたは複数の加熱素子が配設され、スタック内の温度をなおいっそう細かく管理することを可能にする。加熱素子の数を選択する際に、厚みの追加を伴うこと、その結果生じる電気の消費、故障発生原因となり得ることを考慮する。
【0142】
説明されているシステムの例では、加熱素子は電気的要素である。ジュール効果型の加熱素子を使用することには、発生する熱エネルギーの容易な制御に対応できるという利点がある。他の加熱手段は、たとえばガスの循環を用いる加熱などが企図され得る。しかしながら、このタイプの加熱は、電気的手段に比べて反応性が劣る。
【0143】
加熱素子は、異なる出力および異なる発熱能力を有し得る。たとえば、加熱素子を備える締付板および中間加熱板を具備するスタックでは、中間板内の加熱素子が要件に適合した異なる出力を有することが想定され得る。
【0144】
説明されている調節の例では、熱勾配を減少させるか、またはそれを無効にすることでさえ求められる。それにもかかわらず、スタック内に熱勾配を形成するように加熱素子にコマンドを課すことも企図され得る。このような勾配を確立することを可能にする調節方法は、本出願の範囲から逸脱しない。たとえば、スタックの端部のうちの一方の端部が他方の端部よりもうまく働く場合またはうまく働かないときに、このような調節が使用されてよく、そのとき、この端部の温度は、スタックのセルの性能を均一にするために、それぞれ、加減され得る。
【符号の説明】
【0145】
2 導電性ケーブルまたはリード、電気ケーブル
2.1、2.2 接続端
4 陥凹部
5 ハンダ
6 主要部分
8 アーム部
10、11 温度センサー
12 フィンガーまたはピン
14 ハウジング
15 ケーブル
16 加熱板
16.1 陥凹部
16.2 電気ケーブル
16.3 ハンダ
17 筐体
18 ハース
20 側壁
22 頂部壁
24 開口部
50 電源
C 管、ガス供給管およびガス回収管
CL 基本電気化学セル
D1、D2、D3 電気化学デバイス
E1、E2 加熱素子
H 加熱手段
H1 加熱手段
H2 加熱手段
I インターコネクタ、中間インターコネクタ
M 電気絶縁板
P 端板
S1 締付システム、第1の締付板または頂部締付板
S2 締付システム、第2の締付板または底部締付板
S101、S102 締付板
S201 締付板
S301、S302 締付板
T タイロッド、端板
VC 制御ユニット