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特許7509767乳成分不含有の食品組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】乳成分不含有の食品組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240625BHJP
   A23L 13/00 20160101ALN20240625BHJP
   A23D 9/00 20060101ALN20240625BHJP
   A23J 3/00 20060101ALN20240625BHJP
   A23J 3/16 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L5/00 L
A23L5/00 M
A23L13/00 Z
A23D9/00 518
A23J3/00 505
A23J3/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021523343
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019079942
(87)【国際公開番号】W WO2020089444
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】62/754,297
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス, ファレス, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ジョイディープ
(72)【発明者】
【氏名】ショーバー, ティルマン ヨハネス
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/172718(WO,A1)
【文献】特表2016-508716(JP,A)
【文献】特表2005-535349(JP,A)
【文献】特開平01-148149(JP,A)
【文献】国際公開第2017/070303(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107440102(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0056346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00 - 9/06
A23J 1/00 - 7/00
A23L 2/00 - 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質結晶中に分散したエマルションゲルの粒子を含む、乳成分不含有の食品組成物であって、前記エマルションゲルは食物繊維、植物性タンパク質、脂質、及びカルシウムの組み合わせを含み、
前記脂質結晶が30重量%~95重量%の範囲の量で連続相中に存在し、前記エマルションゲルが5重量%~70重量%の範囲の量で分散相中に存在し、
前記エマルションゲルが、0.5重量%~30重量%の食物繊維、2重量%~15重量%の植物性タンパク質、5重量%~30重量%の脂質、及び0.5重量%~5重量%のカルシウム塩を含み、
前記組成物は添加剤を含まず、
前記添加剤が、加工デンプン、親水コロイド、乳化剤、白色付与剤、可塑剤、及び固結防止剤であり、
前記親水コロイドが、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩、グアーガム、カラヤガム、アラビアガム、コンニャクガム、アガー、及び、ゼラチンである、乳成分不含有の食品組成物。
【請求項2】
前記脂質結晶が、炭素数12~24の飽和脂肪酸を(総脂肪含有量の)少なくとも35重量%の量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂質結晶がシアステアリンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
20℃にて、5重量%の前記食物繊維を含む水溶液が、以下の粘弾性特性、1)8Pa・s超のゼロせん断速度粘度を有するシアシニング挙動、及び2)周波数1HzでG’(貯蔵弾性率)が65Pa超、かつG’’(損失弾性率)が25Pa未満、を示す、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記食物繊維が総食物繊維の50重量%超の可溶性多糖類画分を含み、前記可溶性多糖類画分の量が0.5重量%~15重量%の範囲である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
柑橘類の濃縮果汁を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
スパイス、ハーブ、乾燥野菜、果実、並びに調味塩及び糖を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記食物繊維が0.5重量%~15重量%の範囲のジャガイモ繊維である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記植物性タンパク質が、2重量%~15重量%の範囲の分離エンドウ豆タンパク質である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂質が、5重量%~30重量%の範囲の高オレイン酸ヒマワリ油及び/又はシアステアリンを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記カルシウム塩が0.5重量%~5重量%の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
代替肉、又はエアレーションされた食品組成物、又は積層生地を製造するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
乳成分不含有の組成物を製造する方法であって、
(a)
(i)食物繊維、カルシウム、及び植物性タンパク質を乾式混合する工程と;
(ii)均質な混合物になるまで、せん断下で水を添加する工程と;
(iii)前記混合物に脂質を添加して乳化する工程と;
(iv)工程(iii)で得られたエマルションのpHを4~6に調整し、続いて前記エマルションを80℃~90℃の範囲の温度に加熱する工程と;
(v)工程(iv)から得られた前記エマルションを10℃~25℃の範囲の温度まで冷却することにより固化させて、エマルションゲルの固体を得る工程と;
(vi)前記エマルションゲルの固体をより小さな粒子に粉砕する工程と;
を含む、エマルションゲル粒子を調製する工程、並びに、
(b)
(vii)前記粉砕されたエマルションゲル粒子に、溶融させた脂質を添加して連続相を形成する工程と;
(viii)工程(vii)で添加した前記脂質が部分的に結晶化するまで混合物を混合して、前記混合物をある形状に成形する工程と;
(ix)更に硬化させるために分散したエマルションゲル粒子を4℃~6℃の冷蔵条件で保管する工程と;
を含む、工程(a)から得られた前記粉砕されたエマルションゲルを分散させる工程、
を含み、
前記エマルションゲルが、0.5重量%~30重量%の食物繊維、2重量%~15重量%の植物性タンパク質、5重量%~30重量%の脂質、及び0.5重量%~5重量%のカルシウム塩を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景技術]
乳製品不使用の製品の供給が増加傾向にある。消費者が乳製品不使用の製品を選択するようになっている最大の要因は、乳製品不使用の製品の方が好ましいと考えるミレニアル世代の認識の変化である。この世代が、健康及び持続可能性(動物福祉及び環境フットプリントなど)についての認識を主な動機として乳製品の摂取を制限するようになっている。現在、乳製品不使用の代替肉は、ビーガン及びベジタリアンだけではなく、場面により植物ベースの食事を喫食する「フレキシタリアン」による人気も高まっている。この人気は、肉製品、特に加工肉にまつわる持続可能性の問題、及び健康に関する否定的な連想によるものである。テクスチャー付けした代替肉を生産する方法は既に数多くあるものの、それらの代替肉は、本物の肉製品の栄養、テクスチャー、外観、味、及び/又は口当たりを再現してはいない。したがって、そのような食品製品の大半は、消費者にとって魅力がなく、かつ口に合わないものである。ひき肉、ハンバーグ、及びケーシングに詰められていない状態のソーセージ(ground sausages)などの肉及び/又は加工肉は、加熱調理すると、脂肪が、とろける口当たりとジューシーさを与えるだけでなく、テクスチャー属性にも寄与する。肉の脂肪には弾力のあるテクスチャーがあり、高温で調理すると、やや滑りやすくなって噛み応えが出る。現在、代替肉の製造には、提供する温度でジューシーさを出すために植物性の脂肪が使用されている。しかしながら、植物性の脂肪を使用して製造した食品では、脂肪組織の外観及び固有のテクスチャーを再現できない。
【0002】
国際公開第2016/150834号は、肉の外観及びテクスチャーを有する代替肉食品製品を製造する方法に関し、更に、この方法により得られる代替肉食品製品に関する。国際公開第2003/007729号には、タンパク質素材(動物及び/又は植物由来)により改めてテクスチャー付けされた食品製品を製造する押出成形方法が記載されている。この製品の脂肪含有量は、レシチン又はカゼイン塩を含む脂肪原材料を、タンパク質、繊維、及びデンプン、並びに多量の水と共に混合した後に混合物を混錬することで実現され、加熱工程、ゲル化工程、及び成形工程に連続的に供することでペースト状の食品が得られる。しかしながら、肉の炭水化物量は0重量%~0.5重量%であるため、デンプンなどの炭水化物を多量に含む代替肉組成物は、肉の栄養価を有するとは認識されていない。デンプンなどの炭水化物量が更に多くなると、消費者は口当たりが悪いと感じるようになる。更に、これらは穀物の味及び香気を帯びているとして知覚され、これは好ましいことではない。国際公開第2012/158023号には、大豆タンパク質などの植物性タンパク質組成物を繊維質の肉様構造物に変えるための押出成形方法が記載されている。この方法では、押出成形の出口温度が水の沸点よりも高く、その結果、所望の脂肪含有量まで注入液を注入することができるオープンな構造となることが記載されている。しかしながら、この注入法は加工工程が追加されることを意味し、また消費者はこの製品を脂っぽいと感じる場合がある。
【0003】
肉の外観、テクスチャー、及び味を有する代替肉食品製品を製造する方法が依然として必要とされている。更に、得られる組成物において所望量の油、脂肪、又はこれらの組み合わせを含み、肉の外観、テクスチャー、及び味を有する、代替肉食品製品を生産する必要がある。
【0004】
本発明の目的は、従来技術を改良することにより、コレステロールを含まず、飽和脂肪が少なく、乳成分不含有である食品組成物を生産するための、特に代替肉用の動物性脂肪の代用品となり、味が良好で、天然の原材料から作られた食品組成物に関する、よりよい解決策を提供することである。更に、ゲル化剤、増粘剤、乳化剤、及び白色付与剤などの添加剤の使用を必要としない解決策を見出せば有利であろう。
【0005】
[発明の概要]
一態様では、本発明は、脂質結晶中に分散したエマルションゲルの粒子を含む、乳成分不含有の食品組成物であって、エマルションゲルは食物繊維、植物性タンパク質、脂質、及びカルシウムの組み合わせを含み、組成物は添加剤を含まない、乳成分不含有の食品組成物に関する。一実施形態では、脂質結晶は、炭素数12~24の飽和脂肪酸を(総脂肪含有量の)少なくとも35重量%の量で含む。脂質結晶は30重量%~95重量%の範囲の量で連続相中に存在し、エマルションゲルは5重量%~70重量%の範囲の量で分散相中に存在する。
【0006】
別の態様では、本発明は、代替肉、又はエアレーションされた食品組成物、又は積層生地を製造するための、上記のような組成物の使用に関する。
【0007】
別の態様では、本発明は、
(a)
(i)食物繊維、カルシウム、及び植物性タンパク質を、室温で乾式混合する工程と;
(ii)均質な混合物になるまで、せん断下で水を添加する工程と;
(iii)上記混合物に脂質を添加して、高せん断下で乳化する工程と;
(iv)工程(iii)で得られたエマルションのpHを4~6に調整し、続いてエマルションを80℃~90℃の範囲の温度に加熱する工程と;
(v)工程(iv)から得られたエマルションを10℃~25℃の範囲の温度まで冷却することにより固化させて、エマルションゲルの固体を得る工程と;
(vi)エマルションゲルの固体をより小さな粒子に粉砕する工程と;
を含む、エマルションゲル粒子を調製する工程、並びに、
(b)
(vii)粉砕したエマルションゲル粒子に、溶融させた脂質を添加して連続相を形成する工程と;
(viii)工程(vii)で添加した脂質が部分的に結晶化するまで上記混合物を混合して、前記混合物をある形状に成形したり、又は任意選択的にエアレーションしたりすることができるようにする工程と;
(ix)更に硬化させるために分散したエマルションゲル粒子を4℃~6℃の冷蔵条件で保管する工程と;
を含む、工程(a)から得られた粉砕されたエマルションゲルを分散させる工程、
を含む、乳成分不含有の組成物を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】エマルションゲル粒子が油脂結晶により分散している様子の略図を表す。
図1B】エマルションゲルマトリックスのフレーク(レシピC)が油脂結晶中に分散している様子を示す。
図2A】(図1Bに示す)レシピCのフレークを肉の脂肪分の代替として組み込んだ生のビーガン・バーガーパティを示す。
図2B】レシピCの加熱調理済みのビーガン・バーガーパティを示す。
【0009】
[発明を実施するための形態]
本明細書で開示される組成物には、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素が存在しない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いた実施形態の開示は、特定された成分「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」及び「を含有する(containing)」実施形態の開示を含む。同様にして、本明細書で開示の方法には、本明細書において具体的に開示されない任意のステップが存在しない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いた実施形態の開示は、特定された工程「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」及び「を含有する(containing)」実施形態の開示を含む。別途記載のない限り及び直接的に明言のない限り、本明細書に開示される任意の実施形態を、任意の他の実施形態と組み合わせることもできる。
【0010】
別途記載のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語、並びにいかなる略語も、本発明の属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同様な意味を有する。本明細書に記載のものに類似又は等価の任意の組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料を本発明の実施に使用できるが、好ましい組成物、方法、製品、又はその他の手法若しくは材料が本明細書に記載される。
【0011】
以下の説明を通して使用される用語「重量%」は、最終製品の総重量%を指す。最終組成物は、特に指定しない限り、水を含む。実施例におけるレシピは、当業者が重量%をどのように解釈すべきかの実例を示す。
【0012】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトを含む動物による摂取を意図した製品又は組成物を意味し、動物又はヒトに少なくとも1種の栄養を提供する。本開示は、特定の動物用に限定されるものではない。
【0013】
「代替肉」はまた、肉代替物、肉代用品、モックミート、人工肉、模造肉、又は(適用可能な場合)ベジタリアン肉若しくはビーガン肉とも称される。代替肉は、乳製品などその他の動物性製品を含まない、肉以外から作られた食品を意味すると理解される。したがって、動物由来のタンパク質は全く含まれない。動物由来のタンパク質は、動物の肉タンパク質及び/又は乳タンパク質である。代替肉食品製品は、肉(すなわち、哺乳動物、魚類、及び家禽由来の骨格組織及び非骨格筋)、並びに肉副産物(すなわち、屠畜処理された哺乳動物、家禽、又は魚類から得られる、レンダリング処理されておらず汚染のない、肉以外の部分)を全く含まない組成物である。肉模造品市場には、ベジタリアン、ビーガン、健康又は倫理的理由から自身が肉を消費する量を減らそうとしている非ベジタリアン、及び宗教上の食事規定に従っている人々が含まれる。
【0014】
用語「添加剤を含まない」は、加工デンプン、親水コロイド(例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩、グアーガム、カラヤガム、アラビアガム、コンニャクガム、アガー、ゼラチン);乳化剤(例えば、レシチン、モノ及びジグリセリド、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR));白色付与剤(例えば、二酸化チタン);可塑剤(例えば、グリセリン);固結防止剤(例えば、二酸化ケイ素)を含まない組成物を指す。
【0015】
用語「食物繊維」は、ヒト消化管系内の酵素では完全には消化されない、植物性の原材料を指す。この用語は、野菜、種子、果実、ナッツ、パルスから得られる植物性繊維が豊富な画分を含み得る。食物繊維は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、β-グルカン、ガム、粘質物、及びリグニンを含み得る。一実施形態では、食物繊維は、可溶性多糖類画分が50%超であるジャガイモ由来の繊維画分であり、可溶性画分の主な多糖類成分としてはペクチンを含み、残存しているデンプン及びタンパク質を含有し得る。一実施形態では、植物性素材は、ジャガイモの肉及び皮の断片である。本発明の一実施形態では、食物繊維は50重量%超の可溶性多糖類画分を含み、可溶性多糖類画分は少なくとも50重量%のペクチンを含む。
【0016】
20℃にて、5重量%の食物繊維を含む水溶液は、以下の粘弾性特性を示す。
【0017】
8Pa・s超のゼロせん断速度粘度を有するシアシニング挙動、及び
周波数1HzでG’(貯蔵弾性率)が65Pa超、かつG’’(損失弾性率)が25Pa未満。
【0018】
一実施形態では、20℃にて、5重量%の食物繊維を含む水溶液は、以下の粘弾性特性、1)8Pa・s超のゼロせん断速度粘度を有するシアシニング挙動、及び2)周波数1HzでG’(貯蔵弾性率)が65Pa超、かつG’’(損失弾性率)が25Pa未満、を示す。
【0019】
本発明の一実施形態では、乳成分不含有の組成物の製造に使用される食物繊維の量は、0.5重量%~30重量%の範囲である。一実施形態では、食物繊維は、0.5重量%~15重量%の範囲の量で存在するジャガイモ繊維である。
【0020】
用語「植物性タンパク質」は、「分離植物性タンパク質」若しくは「濃縮植物性タンパク質」、又はこれらの組み合わせを含み、野菜、種子、ナッツ、藻類、及びパルスに由来する任意のタンパク質素材を指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「濃縮植物性タンパク質」は、植物性タンパク質が約65重量%~約90重量%未満であるタンパク質含有量を有する、植物性材料である。濃縮植物性タンパク質は更に、典型的には約3.5重量%~最大で約20重量%の植物繊維を含有する。
【0022】
本明細書で使用する場合、分離植物性タンパク質という用語は、無水ベースで植物性タンパク質が少なくとも約80重量%であるタンパク質含有量を有する、植物性材料である。
【0023】
植物性タンパク質としては、エンドウ豆タンパク質、トウモロコシタンパク質(例えば、粉砕トウモロコシ若しくはトウモロコシグルテン)、小麦タンパク質(例えば、粉砕小麦若しくは活性小麦グルテンなどの小麦グルテン)、ジャガイモタンパク質、大豆タンパク質(例えば、大豆ミール、濃縮大豆タンパク質、若しくは分離大豆タンパク質)などの豆科植物タンパク質、米タンパク質(例えば、粉砕米若しくは米グルテン)、大麦タンパク質、藻類タンパク質、キャノーラタンパク質、又はこれらの組み合わせに由来するタンパク質濃縮物又はタンパク質分離物が挙げられる。好ましくは、植物性タンパク質は小麦グルテンであり、より好ましくは、植物性タンパク質は大豆タンパク質と小麦グルテンとの混合物であり、より好ましくは、植物性タンパク質は大豆タンパク質である。
【0024】
一実施形態では、植物性タンパク質は分離エンドウ豆タンパク質であり、少なくとも50重量%はタンパク質画分である。一実施形態では、植物性タンパク質は、分離エンドウ豆タンパク質であり、少なくとも80重量%はタンパク質画分である。
【0025】
本発明の一実施形態では、乳成分不含有の組成物の製造に使用される分離エンドウ豆タンパク質の量は、2重量%~15重量%の範囲である。
【0026】
用語「脂質」は、油、脂肪、及び油と脂肪との組み合わせ、特にトリグリセリドを指す。用語「脂質」は更に、野菜、種子、ナッツ、及び藻類から得られる油も含む。好ましい実施形態では、油は、ヒマワリ油、菜種油、キャノーラ油、綿実油、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、モリンガ油、藻類油、サフラワー油、トウモロコシ油、米ぬか油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、アーモンド油、クルミ油、又は上記油の高オレイン酸タイプを含むこれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、脂質は、少なくとも65重量%のモノ不飽和脂肪酸と10重量%未満の多価不飽和脂肪酸とを含む高オレイン酸植物油であり、0℃で示す固形脂肪含有量は5重量%未満であり、不飽和脂肪酸はC18又はC18超の炭素数を有する。脂質という用語はまた、飽和脂肪酸含有量が20重量%超である固形脂肪、例えば、パーム(果肉及び核の両方)、シア、ココア、ココナッツ、綿実、モリンガ、並びに藻類のステアリン画分及び中融点画分を指す場合がある。一実施形態では、固形脂肪は、シアバターのステアリン画分であってもよい。
【0027】
用語「脂質結晶」は、20℃における固形脂肪含有量が20重量%超であるような油若しくは脂肪、又はこれらの組み合わせを指す。本発明の一実施形態では、脂質結晶はシアステアリンであり、連続相中に少なくとも50重量%の量で存在する。
【0028】
本発明の一実施形態では、乳成分不含有の組成物のためのエマルションゲルの調製に使用される脂質の量は、5重量%~30重量%の範囲である。
【0029】
用語「カルシウム」は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムなど、及びこれらの混合物などのカルシウムの塩を指す。一実施形態では、カルシウムはリン酸カルシウム塩である。エマルションゲルの調製に使用されるカルシウムの量は、0.5重量%~5重量%の範囲である。
【0030】
用語「柑橘類の濃縮果汁」は、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、ベリー果汁、ライム果汁、及びこれらの組み合わせを含む。この用語には、清澄化した果汁も含む。一実施形態では、「柑橘類の濃縮果汁」は、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される柑橘系果実由来の濃縮果汁である。一実施形態では、柑橘類の濃縮果汁はライムジュースであり、エマルションゲルの調製に0重量%~5重量%の範囲で使用される。
【0031】
本発明の一実施形態では、エマルションゲルは、0.5重量%~30重量%の食物繊維、2重量%~15重量%の植物性タンパク質、及び5重量%~30重量%の脂質を含み、エマルションゲルには、加工デンプン、親水コロイド、乳化剤、白色付与剤、可塑剤、及び固結防止剤を含む添加剤は含まれない。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、総食物繊維の少なくとも50重量%の可溶性多糖類画分を有する食物繊維を含む。別の実施形態では、この可溶性画分はペクチンである。
【0032】
一実施形態では、乳成分不含有の組成物は、代替肉を製造するために使用される。例えば、図2Aは、このような乳成分不含有の組成物の、バーガーパティへの組み込みを示す。一実施形態では、乳成分不含有の組成物は、(a)食物繊維と植物性タンパク質とを室温で混合する工程と;均質な混合物になるまで、せん断下で水を添加する工程と;上記混合物に脂質を添加して高せん断下で乳化する工程と;上記工程で得られたエマルションのpHを4~6に調整し、続いてエマルションを80℃~90℃の範囲の温度に加熱する工程と;上記工程から得られたエマルションを10℃~25℃の範囲の温度まで冷却することにより固化させて、エマルションゲルの固体を得る工程と;エマルションゲルの固体をより小さな小片に粉砕する工程と;を含む、エマルションゲル粒子を調製する工程、並びに、(b)溶融させた脂質を添加して連続相を形成する工程と;混合物をエアレーションして、エアレーションされた製品を得ることができるように、工程(vii)で添加した脂質が部分的に結晶化するまで上記混合物を混合する工程と;を含む、工程(a)から得られた粉砕されたエマルションゲルを分散させる工程、を含む方法により、エアレーションされた食品組成物を製造するために使用される。一実施形態では、エアレーションは泡立てにより達成され、脂質結晶が気泡を安定化させる。
【0033】
別の実施形態では、乳成分不含有の組成物は、乳成分不含有の組成物を生地間に層の形態で組み込んだ後に、この積層生地を焼成することにより、積層生地を製造するために使用される。
【0034】
[実施例]
実施例1a:エマルションゲル粒子の調製
切れ刃を備えたラボスケールの二重ジャケット式ステファンミキサーを使用して、表1に概説するような、以下のエマルションゲル(レシピA及びレシピB)を生成した。最初に、粉末原材料の計量及び乾式混合を実施した。次に、粉末混合物に水をゆっくり添加し、ステファンミキサー内で高せん断下(サンプルT=20℃/t=5~10分)で混合した。次いで、高オレイン酸ヒマワリ油(HOSO)を低せん断下(サンプルT=20℃/t=10~15分)で添加して、分散したHOSO液滴を繊維-タンパク質ネットワーク内で安定化させたエマルションゲル構造を得た。次いでなめらかなテクスチャーになるまで高せん断下で混合しながらサンプルを加熱した(サンプルT=85℃)。最後にエマルションを10℃~25℃に冷却し、エマルションゲルマトリックスを形成させた。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1b:脂質中へのエマルションゲル粒子の分散
表2は、様々な濃度の脂肪により分散させたエマルションゲル粒子の組成(レシピC及びレシピD)を概説するものである。最初に、実施例1aに記載のエマルションゲルを、切れ刃を使用してステファンミキサーで粉砕し、より小さな小片を得た。次いで、溶融させた脂肪の追加分としてシアステアリンを添加し、脂肪分散液が部分的に結晶化するまで高せん断混合下でゲル粒子を均一に分散させた。最後に、この分散させたゲル粒子を所望の形状に成形し、更に硬化させるために冷蔵条件(4℃~6℃、好ましくは一晩)で保管した。図1Aは、エマルションゲルマトリックスが油脂結晶により分散している様子の略図を表す。硬化後に、更なる用途のためサンプルをより小さなフレークに切断した(図1B)。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例2:ビーガン・バーガーパティの製造
表3は、ココナッツ脂肪フレーク(レシピE)及び脂肪を分散させたエマルションゲルフレーク(レシピF)を含有する、ビーガン・バーガーパティのレシピを概説するものである。ココナッツ脂肪フレークを含有するビーガン・バーガーパティを比較例として使用した。脂肪を分散させたエマルションゲルフレークは、前述の実施例(レシピC)に記載されているように製造した。本発明のビーガン・バーガーパティのレシピFは、レシピEよりもおよそ62%少ないSFAを含有していた。
【0039】
バーガーパティを製造するため、最初に、テクスチャー付けした大豆タンパク質小片を水で戻した後、乾燥している原材料(すなわち、メチルセルロース、食塩、調味料、着色剤粉末)を加えて均質に混合した。次に、ココナッツ脂肪フレーク、及び脂肪を分散させたエマルションゲルフレークを残りの原材料に添加し、パティの形状に成形した。レシピEの場合、製造プロセス中にココナッツ脂肪フレークが溶融しないよう、バーガーパティ混合物の温度を約15℃に維持した。パティを一晩冷蔵した後、熱した平なべで12分間(両面を含む)調理した。図2A及び図2Bは、脂肪を分散させたエマルションゲルフレークをそれぞれ含有する、生の及び調理後の、ビーガン・バーガーパティのレシピFを示す。調理後のレシピE及びレシピFのバーガーパティはいずれも視覚的な外観は同等であったが、レシピFのバーガーパティは脂肪及びSFAの含有量が減少していた。
【0040】
【表3】
図1A
図1B
図2A
図2B