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特許7509768インテグリンリガンドを有する新規な細胞増殖抑制コンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】インテグリンリガンドを有する新規な細胞増殖抑制コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/093 20060101AFI20240625BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240625BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C07K5/093
A61P35/00
A61K47/65
A61K38/06
A61P27/02
A61K31/4745
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021523599
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079601
(87)【国際公開番号】W WO2020094471
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】18204423.0
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520168745
【氏名又は名称】バイエル ファーマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーチェン,ハンス-ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ステルテ-ルートヴィッヒ,ベアトリクス
(72)【発明者】
【氏名】コーピッツ,シャーロット,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ケルデニヒ,イェルク
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-529118(JP,A)
【文献】特表2011-523415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/083
A61P 35/00
A61K 47/65
A61K 31/4745
A61K 38/06
A61P 27/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の構造、
【化1】
を有する化合物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物。
【請求項2】
ジナトリウム塩である、請求項1に記載の化合物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物。
【請求項3】
【化2】
である、請求項1に記載の化合物のジナトリウム塩。
【請求項4】
疾患を処置するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物の使用。
【請求項5】
過剰増殖性障害を処置するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物の使用。
【請求項6】
(i)請求項1に記載の化合物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物を、(ii)1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて含む、薬剤。
【請求項7】
前記薬剤は、過剰増殖性障害の処置に使用される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
眼科疾患処置に使用される薬剤の製造における、請求項1-3のいずれか1つで定義される化合物、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物の使用。
【請求項9】
前記薬剤は、眼科疾患の処置に使用される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項10】
前記過剰増殖性障害は乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頚部、甲状腺、または副甲状腺癌の固形癌、および/あるいはそれらの遠隔転移癌である、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
前記過剰増殖性障害は乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頚部、甲状腺、または副甲状腺癌の固形癌、および/あるいはそれらの遠隔転移癌である、請求項7に記載の薬剤。
【請求項12】
前記過剰増殖性障害は癌である、請求項5に記載の使用。
【請求項13】
前記過剰増殖性障害は癌である、請求項7に記載の薬剤。
【請求項14】
前記は乳癌、結腸癌、肺癌、または腎癌である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記癌は乳癌、結腸癌、肺癌、または腎癌である、請求項13に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、αβインテグリンアンタゴニスト、エラスターゼで切断可能なL-Val-L-Pro-L-Aspを含む連結単位、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサー、および細胞毒性要素を含む新規医薬化合物、その調製のためのプロセス、ヒトおよび他の哺乳動物における癌などの過剰増殖性障害を含む疾患および状態を処置、予防、または管理するためのその使用に関する。
【0002】
癌の化学療法には、通常、重篤な副作用が伴うが、これは化学療法剤が腫瘍組織以外の他の組織の増殖細胞に毒性を及ぼすことに起因している。長年にわたり、科学者たちは、使用される活性化合物の選択性を向上させるという問題に取り組んできた。頻繁に行われるアプローチは、例えば、pHの変化(特許文献1)、酵素(例えば、グルクロニダーゼ、特許文献2および特許文献3)、または抗体-酵素コンジュゲート(特許文献4、特許文献5、特許文献3)によって、標的組織内で多かれ少なかれ選択的に放出されるプロドラッグの合成である。これらのアプローチにおける問題点は、とりわけ、他の組織および臓器におけるコンジュゲートの安定性の欠如であり、特に、腫瘍組織における活性化合物の細胞外放出に続く活性化合物のユビキタスな分布である。
【0003】
20(S)-カンプトテシンは、1966年にWallらによって単離された五環式アルカロイドである(非特許文献1)。これは多くのインビトロとインビボの試験で高活性な抗腫瘍性を示している。しかしながら、残念なことに、この有望な可能性を臨床研究の段階で実現することは、毒性や溶解性の問題で失敗に終わった。
【0004】
E環のラクトンを開環してナトリウム塩を形成することで、閉環型とpH依存的な平衡状態にある水溶性化合物が得られた。この場合も、臨床試験はまだ成功していない。
【0005】
【化6】
【0006】
約20年後、生物学的活性はトポイソメラーゼIの酵素阻害に起因することが明らかになった。それ以来、より水溶性で許容性が高く、インビボで活性を示すカンプトテシン誘導体を見つけるために、研究活動が再び盛んになっている。
【0007】
水溶性を改善するために、A-環とB-環で修飾されたカンプトテシン誘導体の塩、およびイオン化可能な基を有する20-O-アシル誘導体の塩が記載されている(特許文献6)。後者のプロドラッグの概念は、後に修飾カンプトテシン誘導体にも引き継がれた(特許文献7)。しかしながら、記載された20-O-アシルプロドラッグは、インビボの半減期が非常に短く、非常に迅速に切断されて親構造が生成される。
【0008】
インテグリンは、細胞の表面で見られるヘテロ二量体膜貫通タンパク質であり、細胞外マトリックスへの細胞の接着に重要な役割を果たしている。インテグリンは、細胞外マトリックス上のフィブロネクチンやビトロネクチンなどの細胞外の糖タンパク質を、これらのタンパク質中で発生するRGD配列(RGDとは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸のアミノ酸配列を表す一文字のコード)を介して認識する。
【0009】
一般に、インテグリン、例えば、αβ受容体、代替的に、αβ受容体、またはGpIIb/IIIa受容体とも呼ばれるビトロネクチン受容体は、細胞移動、血管新生、および細胞とマトリックスの接着などの生物学的プロセスで重要な役割を果たしており、したがって、これらのプロセスが重要なステップである疾患にも関与している。例えば、癌、骨粗鬆症、動脈硬化症、再狭窄、および眼病などが例として挙げられる。
【0010】
例えば、αβ受容体は、成長中の内皮細胞に多量に存在し、細胞外マトリックスへの接着を可能にしている。このように、αβ受容体は、血管新生、つまり、腫瘍の成長と癌性疾患の転移形成の決定的な前提条件である新しい血管の形成に重要な役割を果たしている。
【0011】
上記の受容体を遮断することが、この種の障害の処置の重要な出発点であることを示すことができた。成長している内皮細胞の細胞外マトリックスへの接着が、対応するインテグリン受容体を、例えば、環状ペプチドまたはモノクローナル抗体でブロックすることにより抑制されると、血管新生が起こらず、腫瘍の成長が停止または退縮する(例えば、非特許文献2を参照)。
【0012】
特許文献8は、腫瘍を標的とする分子が、例えば、細胞増殖抑制剤などの機能単位、または、例えば、放射性核種などの検出可能な標識に連結されたコンジュゲートについて記載している。とりわけ、例えば、上記のRGD配列を有するペプチドなどのインテグリンアンタゴニストは、腫瘍や腫瘍間質を標的とする分子として記載されている。ドキソルビシンは、腫瘍に対応するこのタイプの分子に連結される細胞増殖抑制剤の例として記載されている。
【0013】
特許文献8の化合物の場合、連結は、腫瘍に対応する分子と機能単位とが、それぞれの特性を保持したまま互いに直接結合するように行われる(例えば、p.56、l.17~p.58、l.10、およびEx.6を参照)。これにより、結果として、これらの化合物は、腫瘍に対応する部分との結合により(αβインテグリン拮抗作用を有するラジカルの場合、特に血管新生により新たに形成される内皮細胞で発現するαβインテグリン受容体との結合により)、腫瘍細胞のすぐ近くに選択的に集中するが、直接的な結合であることから、例えば、細胞増殖抑制剤などの機能単位は腫瘍組織の細胞内空間に放出できない。
【0014】
基本的に、コンジュゲートは、一方ではコンジュゲートに見られるαβまたはαβインテグリン受容体に対応する部分の効果によって腫瘍組織に選択的に集中し、他方ではコンジュゲートから放出され得る細胞増殖抑制剤を含み、コンジュゲートは、特許文献8に記載されたコンジュゲートと比較して、細胞増殖抑制剤が腫瘍細胞により直接的に作用する可能性があるため、腫瘍組織に対する増加した毒性効果を有するはずである。特に、細胞増殖抑制剤の放出が腫瘍組織のすぐ近く、または、腫瘍細胞内で行われる場合には、このような毒性効果および腫瘍選択性はさらに高くなるはずである。
【0015】
特許文献9では、コラゲナーゼ(IV)およびエラスターゼによって特異的に切断可能な酵素活性化抗腫瘍プロドラッグ化合物が開示されている。エラスターゼで切断可能な連結単位に関しては、本出願では、特定のテトラペプチド配列Ala-Ala-Pro-ValとAla-Ala-Pro-Nvaが適していると記載している。さらに、この文献では、αβインテグリン受容体に対応する部分と細胞増殖抑制剤とを含むいかなるコンジュゲートも言及されていない。
【0016】
Y.Liuら(非特許文献3)は、レグメイン切断可能なリンカーを介してαβインテグリン標的化部分と連結したオーリスタチンのコンジュゲートについて記載している。
【0017】
特許文献10では、αβインテグリンを標的とし、エラスターゼによって特異的に切断され得るペプチドリンカーを有する細胞毒性剤を有するコンジュゲートが開示されている。エラスターゼで切断可能な連結単位に関しては、本出願ではPro-ValとPro-Leuを含むペプチド配列が記載されており、これが適切である。担毒体部分としては、カンプトテシンとキノロンカルボン酸が例示されている。
【0018】
このようなコンジュゲートには、以下のような課題がある。
●適切なビヒクルで静脈内投与を可能にする十分な溶解性、
●インタクトなコンジュゲートの高腫瘍浸透性、
●全身的な脱共役を避けるための血漿中での高い安定性、
●腫瘍微小環境における標的受容体への効率的な結合、
●腫瘍微小環境に存在する酵素による効率的な切断、
●腫瘍細胞への取り込み対再分布を向上させるための、切断された担毒体部分の高い安定性と細胞透過性。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】DE-A 42 29 903
【文献】EP-A 511 917
【文献】EP-A 595 133
【文献】WO 88/07378
【文献】US 4 975 278
【文献】US 4 943 579
【文献】WO 96/02546
【文献】WO 98/10795
【文献】WO 00/69472
【文献】EP 1 238 678
【非特許文献】
【0020】
【文献】J.Am.Chem.Chem.Soc.88,3888(1966)
【文献】Brooks et al. in Cell 79, 1157-1164 (1994)
【文献】Mol.Pharmaceutics 2012,9,168
【発明の概要】
【0021】
【0022】
本発明は、αβインテグリンアンタゴニスト、エラスターゼによって選択的に切断され得る連結単位、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサー、および細胞毒性要素(担毒体)を含むコンジュゲートである医薬化合物に関する。コンジュゲートは、エラスターゼによって、つまり、特に腫瘍間質で見ることができる酵素によって、選択的に切断され得る好ましい連結単位を介してαβインテグリンアンタゴニストへの連結の結果として、腫瘍特異的に作用する。好ましい連結単位は、生物学的媒体、例えば、培養培地または血清中での細胞増殖抑制剤とαβインテグリンアンタゴニストのコンジュゲートの十分な安定性を提供し、同時に、細胞増殖抑制剤の放出を伴うその特異的な酵素的または加水分解的な切断性の結果として、腫瘍組織内での所望の細胞内作用を提供する。
【0023】
特に、本発明の化合物は好ましい特徴を示している:
●チオ尿素を尿素結合により置換した後のコンジュゲートの安定性の向上
●特に適切な担毒体部分としての7-エチルカンプトテシンの採用
例えば、ラクトン環の安定性に対する有益な影響(Drugs Fut 2002,27(9),869)
高い細胞透過性と低い排出性(例えば、SN38との比較)
●溶解性、インテグリン結合親和性、エラスターゼ切断性に対する有益な影響を与える修飾されたスペーサー
●コンジュゲート投与対直接投与後の担毒体の腫瘍への蓄積
●様々な腫瘍モデルにおける優れた治療効果
【0024】
この目的のために、7-エチルカンプトテシンは、上述のコンジュゲートにおける担毒体部分として特に好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、式(I)の化合物、および、その塩、溶媒和物、ならびにその塩の溶媒和物を提供し、
【0026】
【化7】
ここで、
CTは、それぞれヒドロキシル基、カルボキシル基、またはアミノ基を追加的に運ぶことができる、細胞毒性ラジカル、細胞増殖抑制剤のラジカル、および細胞増殖抑制剤誘導体のラジカルの群からの一価ラジカルであり、
LIは、式-L-Val-L-Pro-L-Asp-の二価ペプチドラジカルであり、
SPは、式-C=O-(CH-O-(CH-CH-O)-CH-CH-NH-C=O-の基であり、x=1-5であり、および、y=0-15であり、
IAは、αβインテグリン受容体に対応する一価ラジカルである。
【0027】
二価ペプチドラジアルLIは、そのN-末端位置またはC-末端位置を介してCTまたはSPに結合することができる。好ましくは、LIは、そのC-末端位置を介してCTに結合し、そのN-末端位置を介してSPに結合する。
【0028】
本発明はさらに式(Ia)の化合物、および、その塩、溶媒和物、ならびにその塩の溶媒和物を提供し、
【0029】
【化8】
ここで、xは1-5であり、および、y=0-15である。
【0030】
xが1-4である式(I)または(Ia)の化合物が好ましく、xが1-2である式(Ia)の化合物がより好ましく、xが2である式(Ia)の化合物が最も好ましい。
【0031】
yが0-10である式(I)または(Ia)の化合物が好ましく、yが0-5である式(Ia)の化合物がより好ましく、yが2である式(Ia)の化合物が最も好ましい。
【0032】
式(II)の化合物、および、その塩、溶媒和物、ならびにその塩の溶媒和物が好ましい。
【0033】
【化9】
【0034】
本発明の文脈の好ましい塩は、本発明の化合物の生理学的に許容可能な塩である。同様に、それ自体は医薬用途に適さないが、例えば、本発明の化合物の単離、精製、または保存などに使用できる塩も包含される。
【0035】
本発明の化合物の生理的に許容可能な塩としては、とりわけ、鉱酸、カルボン酸、およびスルホン酸の酸付加塩が挙げられ、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、安息香酸、およびエンボン酸の塩が挙げられる。
【0036】
さらに、本発明の化合物の生理学的に許容可能な塩としては、従来の塩基に由来する塩も挙げられ、例として、および、好みに応じて、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、亜鉛塩、およびアンモニアまたは1~20の炭素原子を有する有機アミン、例として、および、好みに応じて、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、コリン、ベンザルコニウム、プロカイン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、アルギニン、リジン、および、1,2-エチレンジアミンに由来するアンモニウム塩が挙げられる。
【0037】
好ましい塩は、式(II)の化合物の二ナトリウム塩である。
【0038】
本発明の文脈における溶媒和物は、溶媒分子との配位によって固体または液体の状態で複合体を形成する本発明の化合物の形態として記載される。水和物は、配位が水によるものである溶媒和物の特定の形態である。本発明の文脈で好ましい溶媒和物は水和物である。
【0039】
本発明は、本発明の化合物のすべての適切な同位体変異体も包含する。本発明の化合物の同位体変異体は、本明細書では、本発明の化合物内の少なくとも1つの原子が、同じ原子番号の別の原子と交換されているが、自然界に通常または優勢的に発生する原子質量とは異なる原子質量を有する化合物を意味するものと理解される。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素の同位体、例えば、H(重水素)、H(トリチウム)、13C、14C、15N、17O、18O、32P、33P、33S、34S、35S、36S、18F、36Cl、82Br、123I、124I、129I、および131Iなどが挙げられる。本発明の化合物の特定の同位体変異体、特に、1つ以上の放射性同位体が組み込まれている同位体変異体は、比較的容易に調製できて検出可能であることから、例えば、作用機序または体内での有効成分の分布を調べるのに有益なこともあり、特にH、14C、および/または18Fの同位体で標識された化合物がこの目的には適している。加えて、例えば、重水素などの同位体を組み込むことで、化合物の代謝安定性が著しく向上して、特定の治療効果、例えば、体内での半減期の延長または必要な有効投与量の減少が得られ、ゆえに、本発明の化合物のこのような修飾は、本発明の好ましい実施形態を構成することができる。本発明の化合物の同位体変異体は、当業者に知られている一般に使用されるプロセス、例えば、さらに下に記載された方法および実施例に記載された手順によって、それぞれの試薬および/または出発化合物の対応する同位体修飾を使用して、調製可能である。
【0040】
本発明(例えば、実施例1)のコンジュゲートの合成は、以下のスキームで概説される。
【0041】
スキーム1:αβインテグリンリガンドの合成:
【0042】
【化10】
【0043】
エナンチオマーの分離は、キラルカラムを使用して、クロマトグラフィーによって様々な工程で遂行することもできる。
【0044】
スキーム2:7-エチルカンプトテシンを用いるαβインテグリンコンジュゲートの合成:
【0045】
【化11】
【0046】
処置の方法:
本発明は、哺乳動物の過剰増殖性障害を処置するために、本化合物とその組成物を使用するための方法にも関する。この方法は、ヒトを含むそれを必要とする哺乳動物に、上記障害を処置するのに有効な量の化合物を投与する工程を含む。過剰増殖性障害としては、限定されないが、乳癌、呼吸器癌、脳癌、生殖器癌、消化器癌、尿路癌、眼癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、およびそれらの遠隔転移癌などの固形癌が挙げられる。これらの障害は、リンパ腫、肉腫、および白血病も含む。
【0047】
乳癌の例としては、限定されないが、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌、および非浸潤性小葉癌が挙げられる。
【0048】
呼吸器系の癌の例としては、限定されないが、小細胞肺癌および非小細胞肺癌のほか、気管支腺腫および胸膜肺胞腫などが挙げられる。
【0049】
脳癌の例としては、限定されないが、脳幹および下垂体の神経膠腫、小脳および大脳の星細胞腫、髄芽腫、上衣腫のほか、神経外胚葉腫瘍および松果体腫瘍が挙げられる。
【0050】
男性生殖器の腫瘍としては、限定されないが、前立腺癌および精巣癌が挙げられる。
【0051】
女性の生殖器の腫瘍としては、限定されないが、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌、および外陰癌のほか、子宮肉腫が挙げられる。
【0052】
消化管の腫瘍としては、限定されないが、肛門癌、結腸癌、大腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌、および唾液腺癌が挙げられる。
【0053】
尿路系の腫瘍としては、限定されないが、膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌、および尿道癌が挙げられる。
【0054】
眼癌としては、限定されないが、眼内黒色腫および網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0055】
肝臓癌の例としては、限定されないが、肝細胞癌(フィブロラメラ変種を含むまたは含まない肝細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、および混合肝細胞性胆管癌が挙げられる。
【0056】
皮膚癌としては、限定されないが、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、および非黒色腫皮膚癌が挙げられる。
【0057】
頭頸部癌としては、限定されないが、喉頭癌/下咽頭癌/上咽頭癌/中咽頭癌、および口唇癌と口腔癌が挙げられる。
【0058】
リンパ腫としては、限定されないが、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫が挙げられる。
【0059】
肉腫としては、限定されないが、軟部肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫が挙げられる。
【0060】
白血病としては、限定されないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリーセル白血病が挙げられる。
【0061】
これらの障害は、ヒトにおいてよく特徴づけられているが、他の哺乳動物においても同様の病因で存在しており、本発明の医薬組成物を投与することにより処置することができる。
【0062】
過剰増殖性障害の処置に有用な化合物を評価するために知られている標準的な実験技術に基づいて、標準的な毒性試験によって、および、哺乳動物における上記で特定された状態の処置を決定するための標準的な薬理学的アッセイによって、および、これらの結果を、上記の状態の処置に使用される既知の薬剤の結果と比較することによって、本発明の化合物の有効な投与量を、それぞれの所望の適応症の処置のために容易に決定することができる。これらの状態の1つの処置において投与されるべき有効成分の量は、採用される特定の化合物と投与単位、投与方法、処置の期間、処置される患者の年齢と性別、および処置される状態の性質および程度などの考慮事項に応じて、大きく変化し得る。
【0063】
投与される有効成分の総量は一般に、1日あたり約0.001mg/kg~約200mg/kg体重、好ましくは1日あたり約0.01mg/kg~約20mg/kg体重の範囲となる。臨床的に有用な投与スケジュールは、1日1~3回の投与から4週間に1回の投与までの範囲となる。加えて、患者が一定期間薬物を投与されない「休薬期間」は、薬理学的な効果と耐容性の全体的なバランスをとる上で有益であると考えられる。1回の単位投与量は、約0.5mg~約1500mgの有効成分を含むことが可能であり、1日1回以上または1日1回未満で投与可能である。静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、および非経口注射を含む注射による投与、および注入技術の使用のための1日の平均投与量は、好ましくは全体重の0.01~200mg/kgである。1日の平均直腸投与レジメンは、好ましくは全体重の0.01~200mg/kgである。1日の平均膣内投与レジメンは、好ましくは全体重の0.01~200mg/kgである。1日の平均局所投与レジメンは、好ましくは0.1~200mgを1日1~4回投与される。経皮濃度は、好ましくは0.01~200mg/kgの1日投与量を維持するのに必要な濃度である。1日の平均吸入投与量は、好ましくは全体重の0.01~100mg/kgである。
【0064】
もちろん、各患者の初期および継続的な投与レジメンは、担当の診断医が判断した状態の性質と重症度、使用する特定の化合物の活性、患者の年齢と一般的な状態、投与時間、投与経路、薬物の排泄率、薬物の組み合わせなどによって異なる。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩あるいはエステルまたは組成物の所望の処置モードおよび投与回数は、当業者が従来の処置試験を用いて確認することができる。
【0065】
本発明はさらに、前述障害の処置のための医薬組成物の調製のための本発明の化合物の使用を提供する。
【0066】
投与
本発明に係る化合物は、全身的および/または局所的な活性を有することが可能である。この目的のために、例えば、経口、非経口、肺、鼻、舌下、舌、頬、直腸、膣、皮膚、経皮、結膜、耳の経路を介して、またはインプラントやステントなどとして、適切な方法で投与することができる。
【0067】
これらの投与経路では、本発明に係る化合物を適切な投与形態で投与することが可能である。
【0068】
経口投与の場合、本発明に係る化合物を、本発明の化合物を迅速におよび/または変更された手法で送達する当該技術分野で知られている剤形に製剤化することが可能であり、例えば、錠剤(コーティングされていない錠剤、または、例えば、遅延して溶解するか、不溶性の腸溶性コーティングまたは制御放出コーティングが施されたコーティングされた錠剤)、口腔崩壊錠剤、フィルム/ウエハ、フィルム/凍結乾燥物(lyophylisates)、カプセル(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒、ペレット、粉末、エマルジョン、懸濁液、エアロゾル、または溶液などが挙げられる。結晶および/または非晶質および/または溶解した形態の本発明に係る化合物を、前記剤形に組み込むことが可能である。
【0069】
非経口投与は、吸収工程を避けて(例えば、静脈内、動脈内、心腔内、脊髄内、または腰椎内)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮、または腹腔内)行うことができる。非経口投与に適した投与形態は、とりわけ、溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥物、または滅菌粉末の形態の注射および注入用調合物である。
【0070】
他の投与経路に適した例としては、吸入用の医薬品形態[とりわけ、粉末吸入器、ネブライザー]、点鼻薬、点鼻液、鼻腔噴霧剤;舌、舌下、または頬への投与のための錠剤/フィルム/ウエハ/カプセル;坐薬;点眼薬、眼軟膏、眼浴、眼球挿入物、点耳薬、耳用噴霧剤、耳用粉末、耳洗浄剤、耳タンポン;膣カプセル、水性懸濁液(ローション、撹拌混合物(mixturae agitandae))、親油性懸濁液、エマルジョン、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチなど)、ミルク、ペースト、フォーム、散布剤(dusting powders)、インプラント、またはステントである。
【0071】
本発明に係る化合物は、規定された投与形態に組み込まれ得る。これは、薬学的に適切な賦形剤と混合することによって、それ自体既知の手法で実現することができる。薬学的に適切な賦形剤としては、とりわけ、以下のものが挙げられる:
●充填剤および担体(例えば、セルロース、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標)など)、ラクトース、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム(例えば、Di-Cafos(登録商標)など))。
●軟膏基剤(例えば、ワセリン、パラフィン、トリグリセリド、ワックス、羊毛ワックス、羊毛ワックスアルコール、ラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール)。
●坐薬の基剤(例えば、ポリエチレングリコール、カカオバター、固い脂肪)。
●溶媒(例えば、水、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール、中鎖長トリグリセリド脂肪油、液体ポリエチレングリコール、パラフィン)。
●界面活性剤、乳化剤、分散剤、または湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、レシチン、リン脂質、脂肪アルコール(例えば、Lanette(登録商標))、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Span(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ツイーン(Tween)(登録商標))、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド(例えば、クレモフォール(Cremophor)(登録商標)など)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、グリセロール脂肪酸エステル、ポロキサマー(プルロニック(Pluronic)(登録商標)など)。
●緩衝剤、酸および塩基(例えば、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム溶液、炭酸アンモニウム、トロメタモール、トリエタノールアミン)。
●等張剤(例えば、グルコース、塩化ナトリウム)。
●吸着剤(例えば、高分散シリカ)。
●粘度増加剤、ゲル形成剤、増粘剤および/または結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル-セルロース、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム、デンプン、カルボマー、ポリアクリル酸(カーボポール(Carbopol)(登録商標))、アルギン酸塩、ゼラチン)。
●崩壊剤(例えば、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、エキスプロタブ(Explotab)(登録商標)など)、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース-ナトリウム(例えば、AcDiSol(登録商標)など))。
●流量制御因子、潤滑剤、滑剤、および離型剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、高分散シリカ(例えば、アエロジル(Aerosil)(登録商標)など)。
●コーティング材料(例えば、砂糖、セラック)、および急速にまたは変更された手法で溶解するフィルム膜または拡散膜のためのフィルム形成剤(例えば、ポリビニルピロリドン(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)など)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)など))。
●カプセル材料(例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)。
●合成ポリマー(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)など)、ポリビニルピロリドン(例えば、コリドン(Kollidon)(登録商標)など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、およびそれらのコポリマーならびにブロックコポリマー)。
●可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリアセチル、フタル酸ジブチル)。
●浸透促進剤。
●安定剤(例えば、酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなど)。
●防腐剤(例えば、パラベン、ソルビン酸、チオメルサール、塩化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、安息香酸ナトリウム)。
●着色料(例えば、無機顔料、例えば、酸化鉄、二酸化チタンなど)。
●香料、甘味料、フレーバーマスキング剤、および/または臭気マスキング剤。
【0072】
本発明はさらに、本発明に係る少なくとも1つの化合物を、従来は1つ以上の薬学的に適切な賦形剤と一緒に含む医薬組成物、および本発明に係るその使用に関するものである。
【0073】
組み合わせ
別の態様によれば、本発明は、特に過剰増殖性障害の処置および/または予防のための、本発明の一般式(I)または(Ia)の少なくとも1つの化合物と少なくとも1つ以上のさらなる有効成分とを含む、特定の薬剤での医薬的な組み合わせを包含する。
【0074】
本発明における「組み合わせ」という用語は、当業者に知られているように使用され、前記組み合わせは、固定された組み合わせ、固定されていない組み合わせ、またはキットオブパーツ(kit-of-parts)であることが可能である。
【0075】
本発明における「固定された組み合わせ」は、当業者に知られているように使用され、例えば、本発明の一般式(I)の1つ以上の化合物などの第1の有効成分と、さらなる有効成分とが、1つの単位投与量または1つの単一の実体で一緒に存在する組み合わせとして定義される。「固定された組み合わせ」の一例は、第1の有効成分とさらなる有効成分が、製剤中などでの同時投与のために混和して存在する医薬組成物である。「固定された組み合わせ」の別の例は、第1の有効成分とさらなる有効成分が、混和されることなく1つの単位で存在する医薬的な組み合わせである。
【0076】
本発明における固定されていない組み合わせまたは「キットオブパーツ」は、当業者に知られているように使用され、第1の有効成分とさらなる有効成分が1を超える単位で存在する組み合わせとして定義される。固定されていない組み合わせまたはキットオブパーツの一例は、第1の有効成分とさらなる有効成分が別々に存在する組み合わせである。固定されていない組み合わせまたはキットオブパーツの構成要素は、別々に、順次に、一斉に、同時に、または時系列的にずらして投与されることが可能である。
【0077】
本発明の化合物は、唯一の医薬品として、または、その組み合わせが許容できない副作用を引き起こさない1つ以上の他の薬学的な有効成分と組み合わせて、投与可能である。本発明は、そのような医薬的な組み合わせも包含している。例えば、本発明の化合物は、過剰増殖性障害の処置および/または予防のために、既知の有効成分と組み合わせることができる。
【0078】
過剰増殖性障害の処置および/または予防のための有効成分の例としては、以下のものが挙げられる:131I-chTNT、アバレリックス、アベマシクリブ、アビラテロン、アカラブチニブ、アクラルビシン、アダリムマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルデスロイキン、アレクチニブ、アレムツズマブ、アレンドロン酸、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸ヘキシル、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アンセスチム、アネトールジチオレチオン、アネツマブラブタンシン、アンギオテンシンII、アンチトロンビンIII、アパルタミド、アプレピタント、アルシツモマブ、アルグラビン、三酸化二ヒ素、アスパラギナーゼ、アテゾリズマブ、アベルマブ、アキシカブタゲン・シロリューセル(axicabtagene ciloleucel)、アキシチニブ、アザシチジン、バシリキシマブ、ベロテカン、ベンダムスチン、ベシレソマブ、ベリノスタット、ベバシズマブ、ベクサロテン、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブセレリン、ブレンツキシマブ・ベドチン、ブリガチニブ、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カルシトニン、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、カペシタビン、カプロマブ、カルバマゼピン・カルボプラチン、カルボコン、カルフィルゾミブ、カルモフール、カルムスチン、カツマキソマブ、セレコキシブ、セルモロイキン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルマジノン、クロルメチン、シドフォビル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、クロファラビン、コビメチニブ、コパンリシブ、クリサンタスパーゼ、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダルベポエチンアルファ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デプレオチド、デスロレリン、ジアンヒドロガラクチトール、デクスラゾキサン、塩化ジブロスピジウム、ジアンヒドロガラクチトール、ジクロフェナク、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン+エストロン、ドロナビノール、デュルバルマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、酢酸エリプチニウム、エロツズマブ、エルトロンボパグ、エナシデニブ、エンドスタチン、エノシタビン、エンザルタミド、エピルビシン、エピチオスタノール、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンゼータ、エプタプラチン、エリブリン、エルロチニブ、エソメプラゾール、エストラジオール、エストラムスチン、エチニルエストラジオール、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、ファドロゾール、フェンタニル、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フロクスリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ホルメスタン、ホスアプレピタント、ホテムスチン、フルベストラント、ガドブトロール、ガドテリドール、ガドテリク酸メグルミン、ガドベセタミド、ガドキセト酸、硝酸ガリウム、ガニレリクス、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、グルカルピダーゼ、グルトキシム、GM-CSF、ゴセレリン、グラニセトロン、顆粒球コロニー刺激因子、ヒスタミン二塩酸塩、ヒストレリン、ヒドロキシカルバミド、I-125シード、ランソプラゾール、イバンドロン酸、イブリツモマブ・チウキセタン、イブルチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イミキモド、インプロスルファン、インジセトロン、インカドロン酸、インゲノールメブテート、イノツズマブ・オゾガマイシン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、イオビトリドール、イオベングアン(123I)、イオメプロール、イピリムマブ、イリノテカン、イトラコナゾール、イクサベピロン、イクサゾミブ、ランレオチド、ランソプラゾール、ラパチニブ、イアソコリン、レナリドミド、レンバチニブ、レノグラスチム、レンチナン、レトロゾール、リュープロレリン、レバミゾール、レボノルゲストレル、レボチロキシンナトリウム、リスリド、ロバプラチン、ロムスチン、ロニダミン、ルテチウムLu 177ドータテート、マソプロコール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メラルソプロール、メルファラン、メピチオスタン、メルカプトプリン、メスナ、メサドン、メトトレキサート、メトクサレン、アミノレブリン酸メチル、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチロシン、ミドスタウリン、ミファムルチド、ミルテフォシン、ミリプラチン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モガムリズマブ、モルグラモスチム、モピダモール、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、ムバシ、ナビロン、ナビキシモール、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトレキソン、ナルトグラスチム、ネシツムマブ、ネダプラチン、ネララビン、ネラチニブ、ネリドロン酸、ネツピタント/パロノセトロン、ニボルマブ、ペンテトレオチド、ニロチニブ、ニルタミド、ニモラゾール、ニモツズマブ、ニムスチン、ニンテダニブ、ニラパリブ、ニトラクリン、ニボルマブ、オビナツズマブ、オクトレオチド、オファツムマブ、オラパリブ、オラツマブ、オマセタキシンメペスクシネート、オメプラゾール、オンダンセトロン、オプレルベキン、オルゴテイン、オリロチモド、オシメルチニブ、オキサリプラチン、オキシコドン、オキシメトロン、オゾガマイシン、p53遺伝子治療、パクリタキセル、パルボシクリブ、パリフェルミン、パラジウム-103シード、パロノセトロン、パミドロン酸、パニツムマブ、パノビノスタット、パントプラゾール、パゾパニブ、ペガスパルガーゼ、PEG-エポエチンベータ(メトキシPEG-エポエチンベータ)、ペムブロリズマブ、ペグフィルラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、ペンタゾシン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルフルブタン、ペルホスファミド、ペルツズマブ、ピシバニール、ピロカルピン、ピラルビシン、ピキサントロン、プレリキサフォー、プリカマイシン、ポリグルサム、リン酸ポリエストラジオール、ポリビニルピロリドン+ヒアルロン酸ナトリウム、ポリサッカライド-K、ポマリドマイド、ポナチニブ、ポルフィマーナトリウム、プララトレキサート、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロカルバジン、プロコダゾール、プロプラノロール、キナゴリド、ラベプラゾール、ラコツモマブ、塩化ラジウム-223、ラドチニブ、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラモセトロン、ラムシルマブ、ラニムスチン、ラスブリカーゼ、ラゾキサン、レファメチニブ、レゴラフェニブ、リボシクリブ、リセドロン酸、レニウム-186エチドロネート、リツキシマブ、ロラピタント、ロミデプシン、ロミプロスチム、ロムルチド、ルカパリブ、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、サリルマブ、サツモマブ、セクレチン、シルツキシマブ、シプロイセル-T、シゾフィラン、ソブゾキサン、グリシダゾールナトリウム、ソニデギブ、ソラフェニブ、スタノゾロール、ストレプトゾシン、スニチニブ、タラポルフィン、タリモジンラヘルパレプベク、タミバロテン、タモキシフェン、タペンタドール、タソネルミン、テセロイキン、テクネチウム(99mTc)ノフェツモマブ・メルペンタン、99mTc-HYNIC-[Tyr3]-オクトレオチド、テガフール、テガフール+ギメラシル+オテラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、テトロホスミン、サリドマイド、チオテパ、チマルファシン、チロトロピンアルファ、チオグアニン、チサゲンレクルユーセル、トシリズマブ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラベクテジン、トラメチニブ、トラマドール、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トレオスルファン、トレチノイン、トリフルリジン+チピラシル、トリロスタン、トリプトレリン、トラメチニブ、トロホスファミド、トロンボポエチン、トリプトファン、ウベニメックス、バラチニブ、バルビシン、バンデタニブ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、ボロゾール、イットリウム-90ガラスマイクロスフィア、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ゾレドロン酸、ゾルビシン。
【0079】
略語:
以下の表は、本明細書で使用される略語を表記する。
Abu - γ-アミノ酪酸
ACN - アセトニトリル
Boc - tert.-ブチルオキシカルボニル
Bzl - ベンジル
DCM - ジクロロメタン
DIEA - ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)
DMAP - ジメチルアミノピリジン
DMF - ジメチルホルムアミド
DMSO - ジメチルスルホキシド
EDCI - 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ee - 鏡像体過剰率
FCS - ウシ胎仔血清
Fmoc - フルオレニル-9-メトキシカルボニル
HATU - 2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC - 高速液体クロマトグラフィー
MTBE - メチルtert.-ブチルエーテル
NMP - N-メチルピロリドン
RP - 逆相
rt - 室温
RTV - 相対腫瘍体積
TFA - トリフルオロ酢酸
THF - テトラヒドロフラン
TLC - 薄層クロマトグラフィー
【0080】
本出願において記載される本発明の様々な態様は、決して本発明を限定することを目的としない以下の例によって例示される。
【0081】
本明細書で説明される例示的な試験実験は、本発明を例示するのに役立ち、本発明は与えられた例に限定されない。
【0082】
実験の部
合成が実験部分に記載されていないすべての試薬は、市販されているか、または既知の化合物であるか、または当業者によって既知の方法で既知の化合物から形成されてもよい。
【0083】
本発明の方法に従って生成された化合物および中間体は、精製を必要とする場合がある。有機化合物の精製は、当業者には周知であり、同じ化合物を精製する方法がいくつか存在する場合がある。場合によっては、精製を必要としない場合もある。場合によっては、化合物は結晶化によって精製されてもよい。場合によっては、不純物は適切な溶媒を用いて撹拌されてもよい。場合によっては、化合物は、例えば、プレパックされたシリカゲルカートリッジ、例えば、Biotage autopurifier system(SP4(登録商標)またはIsolera Four(登録商標))を、Biotage SNAP cartidges KP-Sil(登録商標)またはKP-NH(登録商標)、およびヘキサン/酢酸エチルあるいはDCM/メタノールの勾配などの溶離液と組み合わせて使用する、クロマトグラフィー、具体的には、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製される場合がある。場合によっては、化合物は、例えば、ダイオードアレイ検出器および/またはオンラインエレクトロスプレーイオン化質量分析計を備えたWaters自動精製装置を、適切なプレパックされた逆相カラム、およびトリフルオロ酢酸、ギ酸、またはアンモニア水などの添加剤を含有し得る水およびアセトニトリルの勾配などの溶離液と組み合わせて使用する、分取HPLCによって精製される場合がある。
【0084】
場合によっては、上述される精製方法は、塩の形態で十分に塩基性または酸性の官能性を有する本発明の化合物、例えば、十分に塩基性である本発明の化合物の場合、例えば、トリフルオロ酢酸塩あるいはギ酸塩を、または、十分に酸性である本発明の化合物の場合、例えば、アンモニウム塩を提供し得る。この種類の塩は、当業者には知られているさまざまな方法で、それぞれその遊離塩基形態あるいは遊離酸形態に変換することができるか、または、その後の生物学的アッセイにおいて塩として使用することができる。本明細書中に記載され、および、単離される本発明の化合物の特定の形態(例えば、塩、遊離塩基など)は、必ずしも、前記化合物が具体的な生物学的活性を定量化するために生物学的アッセイに適用することができる唯一の形態とは限らないことが理解されるべきである。
【0085】
UPLC-MSの標準的手順:
以下に説明されるように、分析UPLC-MSを実施した。質量(m/z)は、ネガティブモードを示さない限り(ESI-)、ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化から報告する。大部分で方法1を使用する。そうでない場合は指示する。
【0086】
HPLC-MS方法およびLC-MS方法:
方法0:
質量決定を、電子スプレーイオン化(ESI)法を使用する高速液体クロマトグラフィー質量分析法(HPLC-MS)によって、または、FABあるいはMALDI質量分析法によって実行した。
【0087】
方法1(LC-MS):
装置:Waters ACQUITY SQD UPLC System;カラム:Waters Acquity UPLC HSS T3 1.8μ 50×1mm;溶離液A:1Lの水+0.25mLの99%のギ酸、溶離液B:1Lのアセトニトリル+0.25mLの99%のギ酸;勾配:0.0分 90% A → 1.2分 5% A → 2.0分 5% A;ストーブ:50℃;流量:0.40mL/分;UV検出:208~400nm。
【実施例
【0088】
間体1
(3R)-3-(3-アミノフェニル)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]プロパン酸
【0089】
【化12】
【0090】
151gの3-ニトロベンズアルデヒド、94gの酢酸アンモニウム、127gのマロン酸、および1Lの2-プロパノールの混合物を、還流下で5時間加熱した。溶液を濾過し、沈殿物を0.7Lの熱2-プロパノールで洗浄した。粗製生成物を真空内で乾燥させ、1.5Lの水に懸濁し、1Nの塩酸で処理し、濾過した。濾液を濃縮して146gを得た。NMR(400MHz、D -メタノール):δ=3.09(m,2H),4.88(m,1H),7.74(t,1H),7.90(d,1H),8.33(d,1H),8.43(s,1H)。
【0091】
【0092】
20g(95mmol)のこの中間体および31.2gのジ-tert-ブチルジカルボネートを、150mLのジオキサン/水の混合物(1:1)に溶解し、33mLのDIEAを添加した。完全な溶解が観察されるまで、混合物を約90分撹拌した。溶媒を蒸発させた後、残りの残渣を1LのDCMに溶解し、500mLの5%のクエン酸で3回抽出した。有機相を濃縮し、生成物をDCM/ジエチルエーテル/石油エーテル(petrolether)(1:1:1)の混合物を用いて沈殿させ、濾過した。乾燥させた後、23.5g(80%)の所望の生成物を得た。
【0093】
5g(16.1mmol)のこの中間体および3.095g(23mmol)の(2R)-2-アミノ-2-フェニルエタノールをアセトニトリルに溶解し、0℃で3日間放置した。沈殿物を濾過し、DCMに溶解し、5%のクエン酸で2回抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。この手順を2回繰り返した。1.52g(30%)の所望の生成物を、95%のeeおよび[α] 25=+34.4°/メタノールで得た。
【0094】
1500mg(0.243mmol)のこの中間体を、100mLのメタノールに溶解し、常圧下でパラジウム/炭素上で30分間水素化した。触媒を分離し、溶液を濃縮し、ジエチルエーテルで温浸し、濾過し、残渣を真空中で乾燥させた。1334mg(98%)の表題化合物を得た。[DC:(ジクロロメタン/メタノール/アンモニア(17%)(15:4:0.5);R =0.18]。
【0095】
【0096】
中間体2
(3R)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸
【0097】
【化13】
【0098】
8300mg(29.6mmol)の中間体1および9843mg(44.4mmol)の3-ニトロベンゼンスルホニルクロリドを、400mlのDCM/DMF(1:1)に溶解し、7.2mLのピリジンを添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。その後、混合物を、200mLのDCMで希釈し、50mLの5%のクエン酸で3回抽出した。有機相を濃縮した。残りの残渣を乾燥させた後に、13.8g(定量的)の(3R)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3-{[(3-ニトロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパン酸を得た。[DC:(ジクロロメタン/メタノール/アンモニア(17%)(15:4:0.5);R =0.2]。
【0099】
【0100】
13800mg(29.65mmol)のこの中間体を1000mLのメタノールに溶解し、常圧でパラジウム/炭素上で5時間水素化した。触媒を分離し、溶液を濃縮し、残渣をジエチルエーテルで2回洗浄し、その後、真空中で乾燥させた。12240mg(95%)の(3R)-3-(3-{[(3-アミノフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]プロパン酸を得た。
【0101】
12200mg(28mmol)のこの中間体を600mLのジオキサンに溶解し、5722mg(67mmol)の1-イソシアナトプロパンを添加し、混合物を一晩撹拌した。溶液を真空中で濃縮し、残りの残渣を、DCM/メタノール/NH4OH(17%)(15/4/0.5)の溶離液混合物を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。関連する画分を集めて、真空中で濃縮した。真空中で残渣を乾燥させた後、11220mg(67%)の表題化合物を得た。LC-MS(方法1):Rt=0.9分;MS(ESIpos):m/z=521(M+H)
【0102】
【0103】
中間体3
(3R)-3-{[(4-アミノフェニル)カルバモイル]アミノ}-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸
【0104】
【化14】
【0105】
400mg(0.768mmol)の中間体2を10mLのDCMに溶解し、2mLのトリフルオロ酢酸を添加した。室温で90分間撹拌した後、反応混合物を真空中で濃縮した。残渣を5%の炭酸ニナトリウムの溶液で処理し、その後、DCM/メタノールの混合物に溶解した。ジエチルエーテルで沈澱させ、濾過し、真空中で乾燥させた後、260mg(81%)の(3R)-3-アミノ-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸を得た。LC-MS(方法0):Rt=4.11分;MS:m/z=421=(M+H)
【0106】
【0107】
250mg(0.595mmol)のこの中間体を15mLのDMFに溶解し、117mg(0.713mmol)の1-イソシアネート-4-ニトロベンゼンを添加し、溶液を室温で30分間撹拌した。さらに30mgの1-イソシアネート-4-ニトロベンゼンを添加し、撹拌を30分間継続した。溶液を真空中で濃縮し、残りの残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。関連する画分を真空中で濃縮した後、160mg(46%)の(3R)-3-{[(4-ニトロフェニル)カルバモイル]アミノ}-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸を得た。LC-MS(方法0):Rt=5.61分;MS:m/z=585=(M+H)
【0108】
【0109】
142mg(0.243mmol)のこの中間体を20mLのメタノール/DCM(10:1)に溶解し、常圧下で、パラジウム/炭素上で30分間水素化した。触媒を分離し、溶液を濃縮し、ジエチルエーテルで温浸し、濾過し、残渣を真空中で乾燥させた。103mg(76%)の表題化合物を得た。LC-MS(方法0):Rt=4.31分;MS:m/z=555=(M+H) H-NMR(500MHz、D -メタノール):δ=0.93(t,3H),1.5(m,2H),2.74(d,2H),3.1(dt,2H),5.15(t,1H),6.68(d,2H),6.85(d,1H),7.05(d,1H),7.1(d,1H),7.13(t,1H),7.28-7.4(m,3H),7.6(s,1H),7.66(d,1H).
【0110】
【0111】
【0112】
中間体4
(4S)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イルL-バリネートトリフルオロアセテート(1:1)
【0113】
【化15】
【0114】
2.59g(10.6mmol)のN-(tert-ブトキシカルボニル)-バリン-N-カルボキシ無水物および0.5gの4-(N,N-ジメチルアミノ)-ピリジンを、150mlの無水ジクロロメタン中の2g(5.3mmol)の(4S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン(S.Sawada et al.in Chem.Phar.Bull 1991-39(6)-1445によって説明されるように合成された、7エチルカンプトテシン)の撹拌懸濁液に添加した。混合物を室温で20時間攪拌し、その後、真空中で濃縮した。8mlのACNを残渣に添加し、その後、5mLのジエチルエーテルを添加した。混合物を濾過し、残りの残渣を真空中で乾燥させた。2964mg(92%)の保護中間体を得た。LC-MS(方法1):Rt=1.19分;MS(ESIpos):m/z=576(M+H)
【0115】
【0116】
6mlのジクロロメタンおよび60mlの無水トリフルオロ酢酸中の2964mg(5.15mmol)のこのBoc保護中間体化合物を、室温で30分間撹拌し、その後、1時間、超音波処理した。真空中で濃縮した後、生成物をアセトニトリル/水の混合物から凍結乾燥した。3.622g(定量的)の表題化合物を得た。LC-MS(方法1):Rt=0.68分;MS(ESIpos):m/z=476(M+H)
【0117】
【0118】
中間体5
(2S)-1-[(19S)-19-(2-tert-ブトキシ-2-オキソエチル)-2,2-ジメチル-4,17,20-トリオキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5,18-ジアザイコサン-20-イル]ピロリジン-2-カルボン酸
【0119】
【化16】
【0120】
この中間体5を、ペプチド化学において知られている古典的方法に従って合成し、この合成では、初めに、DIEAの存在下において、DMF中で、ベンジルL-プロリネート塩酸塩と、4-tert-ブチル1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-アスパルテートとのカップリング(1:1)を行い、その後、パラジウム/炭素上の水素化によるベンジルエステルの切断を行った。次に、15mLのTFAおよび100mLのDCMの混合物において、(2S)-1{(2S)-4-tert-ブトキシ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-オキソブタノイル}ピロリジン-2-カルボン酸の溶液を15分間撹拌することによって、tert.-ブトキシカルボニル保護基を除去し、その後、溶離液としてDCM/メタノール3:1を使用して、フラッシュクロマトグラフィーを介して精製した。この中間体をDMFに溶解し、DIEAの存在下において、tert-ブチル{2-[2-(2-{3-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-3-オキソプロポキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}カルバメート(1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオンおよびEDCIを有するDMF中で、2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5-アザヘプタデカン-17-オイック酸(oic acid)から活性化エステルへの形質転換によって以前に得られた)とカップリングした。LC-MS(方法1):Rt=0.86分;MS(ESIpos):m/z=590(M+H)
【0121】
【0122】
中間体6
(3R)-3-{[(4-{[(4-ニトロフェノキシ)カルボニル]アミノ}フェニル)カルバモイル]アミノ}-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸
【0123】
【化17】
【0124】
8.99g(43.3mmol)の4-ニトロフェニルカルボノクロリデートを、1300mLのTHFに溶解し、12g(21.64mmol)の(3R)-3-{[(4-アミノフェニル)カルバモイル]アミノ}-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸を添加した。混合物を還流下で45分間加熱および撹拌し、その後、室温に冷却し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、100mLの体積にした。この溶液をジエチルエーテルに注ぎ、沈殿物を濾過した。真空中で一晩乾燥させた後、11.6gの表題化合物を得た。LC-MS(方法1):Rt=0.97分;MS(ESIpos):m/z=720(M+H)
【0125】
【0126】
中間体7
インテグリンリガンドに対する基準化合物(中間体3のSエピマー):
(3S)-3-{[(4-アミノフェニル)カルバモイル]アミノ}-3-{3-[({3-[(プロピルカルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}プロパン酸
【0127】
【化18】
【0128】
この化合物を、光学分割工程の間に母液で見られた中間体1のエピマーを使用して、上述の中間体3と同様に合成した。
【0129】
実施例1:αβインテグリンコンジュゲート
二ナトリウム(4S)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル1-{(2S)-2-(カルボキシラトメチル)-17-[4-({[(1R)-2-カルボキシラト-1-{3-[({3-[(プロピル-カルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}エチル]カルバモイル}アミノ)アニリノ]-4,17-ジオキソ-7,10,13-トリオキサ-3,16-ジアザヘプタデカン-1-オイル}-L-プロリル-L-バリネート
【0130】
【化19】
【0131】
40mg(68μmol)の中間体4および48mg(81μmol)の中間体5を6.4mLのDMFに溶解し、33.5mg(88μmol)のHATUおよび35μLのDIEAを添加した。混合物を室温で30分間撹拌した。上記混合物を蒸発させ、残りの残渣をHPLCによって精製した。28mg(39%)の保護中間体を得た。LC-MS(方法1):Rt=1.15分;MS(ESIpos):m/z=1047(M+H)
【0132】
【0133】
28mgのこの中間体を2mlのジクロロメタンに溶解した。2mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し、混合物を室温で30分間撹拌し、その後、1時間超音波処理した。真空中で濃縮した後、生成物をアセトニトリル/水の混合物から凍結乾燥した。オレンジ色固形物として、30mg(定量的)の脱保護中間体を得た。LC-MS(方法1):Rt=0.72分;MS(ESIpos):m/z=891(M+H)
【0134】
【0135】
1900mg(1.89mmol)のこの中間体を60mLのDMFに溶解し、1361mg(1.89mmol)の中間体6を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。溶液を真空中で濃縮し、残りの残渣を水および5%のクエン酸を用いて処理し、濾過した。残りの残渣をDCM/メタノールに溶解し、ジエチルエーテルを添加した。沈殿物を濾過し、DCM/メタノール/NH4OH(17%)(15/2/0.2->15/4/0.4)の溶離液混合物を用いてフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。関連する画分を集め、真空中で濃縮した。真空中で残渣を乾燥させた後、942mg(34%)の表題化合物を得た。LC-MS(方法1):Rt=0.97分;MS(ESIpos):m/z=1471(M+H)
【0136】
【0137】
20mg(14μmol)のこの中間体を4mLのジオキサン/水(1:1)に溶解し、30μL(30μmol)の1nの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、混合物を室温で5分間超音波処理し、凍結乾燥させた。21mg(定量的)の表題化合物を得た。LC-MS(方法1):Rt=0.97分;MS(ESIpos):m/z=1471(M-2Na +2H +H)
【0138】
【0139】
実施例2:実施例1の基準化合物(Sエピマー):
二ナトリウム(4S)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル1-{(2S)-2-(カルボキシラトメチル)-17-[4-({[(1S)-2-カルボキシラト-1-{3-[({3-[(プロピル-カルバモイル)アミノ]フェニル}スルホニル)アミノ]フェニル}エチル]カルバモイル}アミノ)アニリノ]-4,17-ジオキソ-7,10,13-トリオキサ-3,16-ジアザヘプタデカン-1-オイル}-L-プロリル-L-バリネート
【0140】
【化20】
【0141】
この化合物を、中間体7のαβリガンドのエピマーを使用して、実施例1と同様に合成した。
【0142】
好ましい担毒体である7-エチルカンプトテシンおよび実施例1のコンジュゲートの生物的評価
細胞透過性を決定するためのインビトロ試験
【0143】
【0144】
Caco-2:
物質の細胞透過性を、Caco-2細胞を使用するフラックスアッセイ(flux assay)でのインビトロ試験によって調べることができる。[M.D.Troutman and D.R.Thakker,Pharm.Res.20(8),1210-1224(2003)]。この目的のために、細胞を24ウェルのフィルタープレート上で15~16日間培養した。透過を決定するために、それぞれの試験物質をHEPES緩衝液中で細胞の頂端(A)または基底(B)のいずれかに適用し、2時間インキュベートした。0時間後および2時間後、試料をシス区画とトランス区画から採取した。試料を、逆相カラムを使用して、HPLC(Agilent 1200,Boblingen,Germany)によって分離した。HPLCシステムを、Turbo Ion Spray Interfaceを介してトリプル四重極質量分析計API 4000(AB SCIEX Deutschland GmbH,Darmstadt,Germany)に連結した。Schwabらによって公開された式を使用して計算されたPapp値に基づいて、透過性を評価した[D.Schwab et al.,J.Med.Chem.46,1716-1725(2003)]。Papp(B-A)対Papp(A-B)(排出比)の比が、>2または<0.5である場合、物質が能動的に輸送されたと分類した。
【0145】
このアッセイでは、実施例1のコンジュゲートで使用された坦毒体(4S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン(7-エチル-カンプトテシン)は、PappA->B=171nm/sという非常に優れた透過性と、1という低い排出比を示した。これは、PappA->B=8nm/sという著しく低い透過性と、36という排出比が示される、イリノテカンから放出された坦毒体であるSN38のプロファイルと好意的に比較される。SN38に関する新しいデータ:PappA->B=20nm/sという透過性と、9という排出比。
【0146】
P-糖タンパク質(p-GP)アッセイ:
多くの腫瘍細胞が薬物のための輸送タンパク質を発現し、これはしばしば細胞増殖抑制剤に対する耐性の発達を伴う。したがって、例えば、P-糖タンパク質(P-gp)またはBCRPなどのそのような輸送タンパク質の基質ではない物質は、改善された活性プロファイルを示す可能性がある。
【0147】
P-gp(L-MDR1細胞)を過剰発現するLLC-PK1細胞を使用したフラックスアッセイによって、P-gp(ABCB1)の物質の基質特性を決定した[A.H.Schinkel et al.,J.Clin.Invest.96,1698-1705(1995)]。この目的のために、LLC-PK1細胞またはL-MDR1細胞を、96ウェルフィルタープレート上で3~4日間培養した。透過を決定するために、それぞれの試験物質を、単独でまたは阻害剤(例えば、イベルメクチンあるいはベラパミル)の存在下で、HEPES緩衝液中で細胞の頂端(A)または基底(B)のいずれかに適用し、2時間インキュベートした。0時間後および2時間後、試料をシス区画とトランス区画から採取した。試料を、逆相カラムを使用して、HPLCによって分離した。HPLCシステムを、Turbo Ion Spray Interfaceを介してトリプル四重極質量分析計API 3000(Applied Biosystems Applera,Darmstadt,Germany)に連結した。Schwabらによって公開された式を使用して計算されたPapp値に基づいて、透過性を評価した[D.Schwab et al.,J.Med.Chem.46,1716-1725(2003)]。Papp(B-A)対Papp(A-B)の排出比が>2である場合、物質をP-gp基質として分類した。
【0148】
このアッセイでは、実施例1のコンジュゲートで使用された坦毒体(4S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン(7-エチル-カンプトテシン)は、PappA->B=196nm/sという非常に優れた透過性と、0.6という低い排出比を示した。これは、PappA->B=10nm/sという有意に低い透過性と、16という排出比を示す、イリノテカンから放出された坦毒体であるSN38のプロファイルと好意的に比較される。
【0149】
NCI-H1975およびその輸送体変異体(transporter mutants)に対するインビトロの細胞毒性
腫瘍細胞NCI-H1975が、薬物輸送体p-糖タンパク質(P-gp)および乳癌耐性タンパク質(BCRP)でトランスフェクトされる場合、7-エチルカンプトテシンの細胞毒性活性は悪影響を受けず、SN38とは明確に対照的である。
【0150】
【表1】
【0151】
αβ結合試験
ヒトA375細胞からのαβを、Wong et al.in Molecular Pharmacology 50,529-537(1996)によって説明される手順と同様に精製した。いずれの場合にも、TBS(pH7.6)、2mMのCaCl、1mMのMgCl、1%のn-オクチルグルコピラノシド(Sigma)中の10μLのαβ(5ng);TBS(pH7.6)、0.1%のDMSO中の10μLの試験物質、および45μLのTBS(pH7.6)、2mMのCaCl、1mMのMgCl、1mMのMnClを、室温で1時間インキュベートした。いずれの場合にも、その後、25μLのWGA SPAビーズ(Amersham、4mg/ml)および10μLのエキスタチン(0.1μCi、Amersham、クロラミンT標識された)を添加した。16時間後、室温で、試料をシンチレーション測定器(Wallac 1450)で測定した。試験結果を以下の表2に示す。
【0152】
【表2】
【0153】
エラスターゼ切断性
エラスターゼの存在下または非存在下でのインビトロでの細胞毒性
細胞の培養を、プロバイダーによって推奨される培地を用いて、標準手順に従って実施した。総体積100μLの細胞を、白色底の96ウェルプレート(#3610)に播種した。37℃および5%のCOでの24時間のインキュベーション期間後、培地を、90μLの新鮮な培地を添加することによって変更した。10μlの培地中の細胞に試験化合物を添加することにより、処理を開始する。10-5M~10-13Mの濃度を3つ組で選択し、その後、37℃および5%の二酸化炭素でインキュベートした。1セットの試料を試験化合物のみで処理し、それ以外は同じ処理をした2つ目のセットの試料にさらに、10nMのエラスターゼをピペッティングした。72時間後、MTTアッセイ(ATCC)を使用して増殖を検出する。インキュベーション期間の終わりに、MTT試薬を4時間にわたりすべての試料に添加し、その後、界面活性剤の添加によって細胞を一晩溶解した。形成された色素を570nmで検出した。試験物質で処理しなかったが、その他の点では同じように処理した細胞の増殖を、100%の値として定義した。用量反応曲線により、それぞれのIC50値を決定することができ、それらの値を表3に要約する。(図1および表4)。
【0154】
【表3】
【0155】
【0156】
【表4】
【0157】
好中球エラスターゼの存在は、腎癌細胞株786-Oを使用して、化合物の細胞毒性の有意な改善を引き起こす。化合物はさらに、結腸癌細胞株HT29を使用して、エラスターゼに対する明白な依存性を明らかにする。さらに、エラスターゼ誘発性切断により、化合物の細胞毒性効果の劇的な増大が引き起こされる。
【0158】
特許文献10(EP 1 238 678)の実施例1のコンジュゲートと比較した、実施例1のコンジュゲートの溶解性:
方法:試験する各ビヒクルのために、0.5~1.0mgの試験化合物を秤量し、2mlのエッペンドルフバイアルに入れた。2~3のグラスパール(Glas perls)(Φ3mm)および1.0mlのビヒクルを添加した。上記バイアルを、1400rpmで、室温(25℃)で24時間振盪した。この期間の後に、上清(およそ230μl)を遠心管に移した。42000rpmで30分後、溶質を別のバイアルに移し、DMSOで希釈した(1:5および1:50)。これらの2つの希釈した液体を、HPLCによって分析した(読み出し:領域)。
【0159】
HPLC方法:
溶離液A:1mlのトリフルオロ酢酸/Lの水
溶離液B:1mlのトリフルオロ酢酸/Lのアセトニトリル
勾配:
時間[分] A[%] B[%] 流量:[ml/分]
0.0 98 2 1.5
0.2 98 2 1.5
3.3 10 90 1.5
4.0 10 90 1.5
4.1 98 2 2.5
4.7 98 2 2.5
5.0 98 2 1.5
カラム:ZORBAX Extend-C18、3.0×50mm、3,5μm
オーブン温度:30℃
検出:214および254nm
注入量:20μL
【0160】
定量化のために、同じHPLC方法を使用することによって、試験化合物のDMSO溶液(100μl/ml、20μg/ml、および2.5μg/ml)から検量線を得た。
【0161】
【表5】
【0162】
特許文献10(EP 1 238 678)の実施例1のコンジュゲートと比較した、実施例1のコンジュゲートのpH4のクエン酸緩衝液における安定性:
方法:0.15mgの試験化合物を、0.1mlのジメチルスルホキシドおよび0.4mlのアセトニトリルに溶解した。完全な溶解のために、試料溶液を含むHPLCバイアルを振盪し、超音波処理した。その後、1.0mlのそれぞれの緩衝溶液(クエン酸緩衝液pH4;クエン酸/水酸化ナトリウム/塩化ナトリウム Fluka 33643)を添加し、試料を攪拌した。試料溶液をHPLCによって分析し、37℃で24時間にわたって、特定の時間(0、1、2、4、および24時間)で試験化合物および最大2つの副生成物の量を決定した。t(0)値は、室温で緩衝液を用いてボルテックスした直後に採取した試料から得られたものである。ピーク面積(パーセンテージ)を使用して定量化した。
LC&LC/MSの純度分析:LCによって、出発物質を純度について分析した;24時間の試料を、LC/MS(Waters Quattro Micro)によってさらに分析した。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
実施例1のコンジュゲートの血漿安定性
ラット血漿における親化合物の放出の測定:
実施例1の1mgの試験化合物を、1.5mLのジメチルスルホキシドおよび1mlの水の混合物に溶解した。完全な溶解のために、HPLCバイアルを振盪し、超音波で処理した。500μlのこの溶液を、37℃の温度でボルテックスしながら、0.5mLのラット血漿に添加した。アリコート(各10μL)をそれぞれの時点で採取し、HPLCによって分析して、試験化合物の量を決定した。すべてのデータは、t0での初期化合物のパーセント面積として示される。
【0166】
実施例1の化合物は、>24時間にわたりラット血漿において安定している。
【0167】
mgの試験化合物を、0.5mlのアセトニトリル/ジメチルスルホキシド(1:1)に溶解した。完全な溶解のために、HPLCバイアルを振盪し、超音波処理した。20μlのこの溶液をボルテックスしながら、1mlの37℃の温かい血漿に添加した。0.17、0.5、1、1.5、2、および4時間後、300μlのアセトニトリル/緩衝液pH3(80:20)を含有するバイアルに、100μlの化合物の血漿溶液を室温で添加することによって、酵素反応を止めた。混合物を10分間、5000rpmで遠心分離した。上清をHPLCによって分析して、試験化合物および最大2つの副生成物の量を決定した。t(0)値は、室温で血漿を用いてボルテックスした直後に採取した、処理された試料から得られたものである。ピーク面積(パーセント)を使用して定量化した。
【0168】
アッセイ条件下では、7-エチルカンプトテシンは少なくとも4時間安定しているが、同じ期間に、カンプトテシンは約50%程度まで分解される。
【0169】
【0170】
【0171】
薬物動態学
実施例1の4mgのコンジュゲートを生理食塩水に溶解し、メスの786-O担癌NMRI nu/nuマウスにiv投与した。腫瘍および血漿の試料を様々な時点で採取し、インタクトなコンジュゲートのレベル、およびそのコンジュゲートから切断された坦毒体7-エチル-カンプトテシンのレベルを決定した。
【0172】
比較のために、1mg/kgの7-エチルカンプトテシンを、5%の水性デキストロース/solutol/DMSO(85/10/5)の混合物に溶解し、メスの786-O担癌NMRI nu/nuマウスにiv投与した。さらに、腫瘍および血漿の試料を様々な時点で採取し、7-エチル-カンプトテシンのレベルを決定した。
【0173】
最後に、比較のために、実施例23の4mgのエピマー基準コンジュゲート(弱いαβ結合親和性を有する)を、生理食塩水に溶解し、メスの786-O担癌NMRI nu/nuマウスにiv投与した。腫瘍および血漿の試料を様々な時点で採取し、インタクトなコンジュゲートのレベル、およびそのコンジュゲートから切断された坦毒体7-エチル-カンプトテシンのレベルを決定した。
【0174】
では、これらの実験の各々において検出された7-エチルカンプトテシンの腫瘍/血漿の比を要約する。αβインテグリンコンジュゲートによる腫瘍への7-エチルカンプトテシンの増強された送達が、坦毒体の直接投与および弱く結合するエピマー対照コンジュゲートの投与と比較して実証される。
【0175】
【表8】
【0176】
インビボの異種移植試験
実施例1の抗腫瘍活性を、ヒト癌のマウスの異種移植モデルにおいて試験した。この目的のために、免疫無防備状態のマウスの皮下に、腫瘍細胞または腫瘍断片を移植した。20~40mmの平均腫瘍サイズのときに、マウスを処置群と対照群とに無作為化し(n=8マウス/群)、およびビヒクルのみあるいは実施例1で処置を開始した(製剤:リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」);投与経路:尾静脈に静脈内(「i.v」))。静脈内の処置を1日1回、連続3日間実施し、その後4日間は処置を行わない休薬日とした。腫瘍サイズおよび体重を、少なくとも毎週測定した。腫瘍面積を、電子ノギスによって検出した[長さ(mm)x幅(mm)]。実験群は、ドイツおよびヨーロッパの動物福祉規則に基づいてあらかじめ定義された倫理的エンドポイントに達したときに終了した。インビボの抗腫瘍効果を、ビヒクル対照が試験に残っていた最終日に、処置群および対照群について測定された平均腫瘍面積のT/C比として示した(処置/対照;処置群の平均腫瘍面積/対照群の平均腫瘍面積)。0.5より下のT/Cを有する化合物を、活性(つまり、効果的)であると定義する。SigmaStatソフトウェアを使用して統計分析を評価した。一元配置分散分析を実施し、対照との差を対比較手順(ダンの方法(Dunn’s method))によって比較した。
【0177】
結果:
実施例1は、単独療法での処置時に、ヒト腫瘍の様々な異種移植片モデルにおいて強力な抗腫瘍効果を示した。具体的には、実施例1は、乳癌、結腸癌、肺癌、および腎癌のモデルにおいて、腫瘍面積の減少に効果的であった。
【0178】
【表9】
図1
図2
図3