(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】バインダ配合物の希釈水の量を調節するための方法、及び対応する計算ユニット
(51)【国際特許分類】
C03C 25/1095 20180101AFI20240625BHJP
C03C 25/14 20180101ALI20240625BHJP
C03C 25/64 20060101ALI20240625BHJP
D04H 1/4218 20120101ALI20240625BHJP
【FI】
C03C25/1095
C03C25/14
C03C25/64
D04H1/4218
(21)【出願番号】P 2021535180
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2019086377
(87)【国際公開番号】W WO2020127784
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ディアナ プラトン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク デリン ビトネール
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-173153(JP,A)
【文献】特表2008-507466(JP,A)
【文献】特表2014-505003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
D04H 1/4218
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維のマット(M)を製造するための設備(10)の繊維化ステーション(12)で、繊維(F)に適用されることが意図されているバインダ配合物の希釈水の量を調節する方法であって、
前記製造設備(10)が、
- 前記繊維を形成するための手段(20)と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を前記繊維(F)に適用するための手段(40)と、を含む、繊維化ステーション(12)、
- 繊維受容表面、及び前記受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有する、受容チャンバ(50)、
- 前記マット(M)の加熱処理のための手段(16)、
を有しており、
前記方法が、少なくとも、下記の工程:
- 前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度を決定すること、
- 前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における、吸入空気の湿度、及び吸入空気の流量を、決定すること、
- 少なくとも、前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度、前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに、前記受容チャンバ(50)の出口での前記マット(M)中における水の所望の量、の関数として、希釈水の最適な量を決定すること、並びに、
- このようにして決定された前記最適な量の関数として、希釈水の量を調節すること、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記繊維化ステーション(12)が、空気、水、又は他の物を加熱又は供給するための複数の部材、特には、少なくとも1つの、バーナー(30)、及び/又は、前記バインダ配合物を適用するための手段(40)、及び/又は、少なくとも1つの、吹付けリング(36)、及び/又はエアガン(38)、及び/又は、リサイクルされた物の断片を供給するための少なくとも1つの装置(68)、及び/又は、リサイクルされた吸入空気を供給するための少なくとも1つの装置(94a、…、94d)、を有しており、
希釈水の最適な量を、前記部材のうちの1又は複数からもたらされる、使用可能な水として言及される、水の
量を、更に考慮に入れることによって、決定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維化ステーション(12)が、少なくとも1つのバーナー(30)を有しており、使用可能な水の量が、前記少なくとも1つのバーナー(30)からもたらされる水の量と、前記バインダ組成物からもたらされる水の量との合計に少なくとも等しい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維化ステーション(12)が、少なくとも1つのバーナー(30)を有しており、使用可能な水の量が、前記少なくとも1つのバーナー(30)からもたらされる水の量、前記バインダ組成物からもたらされる水の量、及び、リサイクルされた吸入空気を供給するための前記少なくとも1つの装置(94a、…、94d)からもたらされる水の量、の合計に少なくとも等しい、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維化ステーションが、空気、水、又は他の物を加熱又は供給するための複数の部材、特には、少なくとも1つの、バーナー(30)、及び/又は、前記バインダ配合物を適用するための手段(40)、及び/又は、少なくとも1つの、吹付けリング(36)、及び/又はエアガン(38)、及び/又は、リサイクルされた物の断片を供給するための少なくとも1つの装置(68)、及び/又は、リサイクルされた吸入空気を供給するための少なくとも1つの装置(94a、…、94d)、を有しており、
希釈水の最適な量を、前記部材のうちの1又は複数からもたらされる、使用可能な
空気として言及される、
空気の量を、更に考慮に入れることによって、決定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における前記吸入空気の流量を、一定値に維持する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度を決定するために、空気の湿度の計測を、前記繊維化ステーション(12)の種々の場所で実行し、そのようにして計測された値の平均を算出する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バインダ配合物における希釈水の量の前記調節を、無機繊維の前記マット(M)の製造の間に連続的に行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バインダ配合物における水の量の前記調節を、定期的
に行い、又は、製品のそれぞれの変更の後に行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
無機繊維のマット(M)を製造する方法であって、
- 繊維化ステーション(12)において、繊維(F)を形成し、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を、前記繊維(F)に適用し、
- 前記バインダ配合物で含侵された前記繊維(F)を、繊維受容表面及びこの表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッド、を有する、受容チャンバ(50)において、回収し、
- 前記マットを、加熱処理し、
前記方法が、さらに、請求項1~9のいずれか一項の方法に記載されているようにして、バインダ配合物の希釈水の量を監視することを含む、
方法。
【請求項11】
無機繊維のマット(M)を製造する設備(10)の繊維化ステーション(12)において繊維(F)に適用されることが意図されているバインダ配合物の希釈水の量を計算するためのユニット(70)であって、
前記製造設備(10)が、
- 前記繊維(F)を形成するための手段(20)と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を前記繊維(F)に適用するための手段(40)とを含む、繊維化ステーション(12)、
- 繊維受容表面、及び前記受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有する、受容チャンバ(50)、並びに、
- 前記マットの加熱処理のための手段(16)、
を有しており、
前記計算ユニットが、さらに、
- 前記繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定するための手段(72、74)、
- 前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における、吸入空気の湿度を決定するための手段(78)、及び吸入空気の流量を決定するための手段(76)、
- 少なくとも、前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度、前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに、前記受容チャンバ(50)の出口での前記マット(M)中における水の所望の量、の関数として、希釈水の最適な量を計算するための手段、並びに、
- 前記計算手段によって決定される前記最適な量の関数として、希釈水の量を調節するための手段
を有している、
ユニット。
【請求項12】
無機繊維のマット(M)を製造するための設備(10)であって、
- 前記繊維を形成するための手段(20)と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を前記繊維に適用するための手段(40)とを含む、繊維化ステーション(12)、
- 繊維受容表面、及び前記受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有する、受容チャンバ(50)、
- 前記マットの加熱処理のための手段(16)、
を有しており、
前記製造設備が、さらに、請求項11に記載の計算ユニット(70)を有していることを特徴とする、
設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維、例えばガラス繊維に基づく物の製造に関し、特には、バインダによって結合された繊維のマットを用いて製造されたそのような物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、さらに特定的には、無機繊維のマットを製造する方法に関し、対応する製造設備に関する。
【0003】
現在市販されている遮断製品(絶縁製品)は、典型的に、有機バインダ又は無機バインダによって統合されたガラス繊維等の無機繊維のマットから得られた、パネル、ボード、ロール、又はチューブ状若しくは他の形状の製品からなる。
【0004】
そのような繊維のマットを製造する方法は、公知であり、一般に、下記の一連の工程を含む:
- ガラス炉内における、無機材料の溶融、
- 繊維への成形
- 繊維への、バインダ配合物の添加
- バインダ配合物で含侵された繊維の、受容チャンバでの回収、この受容チャンバは、繊維化装置の下方かつ軸内において、穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有しており、このコンベヤ又はグリッドは、その下方部分に、1又は複数の吸引ダクトを備えている、
- 受容表面の上における、マットとして言及される比較的厚い層又は比較的薄い層の形状での、繊維の搬送、
- 乾燥炉の中での、バインダ配合物の、一般的に架橋熱処理又は重合熱処理である、熱処理、この熱処理は、マットにまとまりを付与することを意図している、並びに、
- 結果として得られる製品の、最終的な製造。
【0005】
上記で記載した製造方法の監視に関して、製造の少なくとも一部にわたって、好ましくは製造の全体にわたって、連続的に監視操作を行うことが必要であり、そのようにして、マットの良好な品質を保証する。
【0006】
特許出願に係る国際公開第2006/023137号は、例えば、乾燥炉内での熱処理の前での、バインダ配合物で含侵された繊維のマット中に存在する水分の分光学的手段による計測に基づいた、方法の監視のための方法を記載している。計測された水分含有量を参照値と比較することによって、少なくとも1つのパラメータの調節が、方法の連続的な制御を可能にする。しかしながら、この方法は、マットの水分のばらつきを防止することを可能にしない。この方法は、ばらつきを修正するのみである。
【0007】
無機繊維のマットを製造するための方法における効果的な監視方法の重要性及び必要性が、現在用いられているフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の代替物としてのバイオ系代替バインダの開発への要求に起因して、現在さらに大きくなっていることに注目すべきである。これらのバイオ系バインダでは、フェノール-ホルムアルデヒドバインダの場合よりもさらに、未硬化の製品中での水分の量及びその分布の監視及び最適化が、方法の制御のために必要であり、それによって、最終製品の所望の品質が保証される。
【0008】
具体的には、これらの代替バインダの粘度を低減するためには、フェノール-ホルムアルデヒドバインダと比較して、繊維に添加される溶液中に存在する水の割合を実質的に増加することが必要であり、これは、ラインから取り出す際に最終製品中に存在し得る残留水の排除に関して、増加した困難性をもたらし、したがって、正確な監視手段の存在が、よりさらに必須となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、未硬化の製品中での水の量のさらに効果的な監視によって、マットの熱処理の質を向上させることを可能にする、無機繊維のマットを製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、無機繊維のマットを製造するための設備(工場)の繊維化ステーションにおいて繊維に適用されることが意図されているバインダ配合物の希釈水の量を調節するための、下記である方法によって達成される:
この製造設備が、
- 繊維を製造するための手段と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物をこの繊維に適用するための手段とを含む、繊維化ステーション、
- 繊維受容表面と、この受容表面の下の少なくとも1つの吸引ダクトとを備える、穿孔された受容装置、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッド、を含む、受容チャンバ、
- マットの加熱処理のための手段
を含み、
この方法が、少なくとも下記の工程を含む:
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定すること、
- 少なくとも1つの吸引ダクトにおける、吸入空気の湿度及び吸入空気流量を決定すること、
- 少なくとも、繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度、少なくとも1つの吸引ダクトにおける吸入空気の湿度及び吸入空気流量、並びに、受容チャンバの出口におけるマット中の所望の水の量の関数として、希釈水の最適な量を決定すること、
- このようにして決定された上記の最適な量の関数として、希釈水の量を調節すること。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の例示的な実施態様に係る、無機繊維のマットを製造するための設備の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の例示的な実施態様に係る、無機繊維のマットを製造するための設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願では、吸入空気は、受容チャンバの穿孔されたコンベヤ又はグリッドを通して、1又は複数の吸引ダクトによって実際に取り入れられる空気として、定義される。
【0013】
さらに、繊維化ステーションは、受容チャンバの穿孔されたコンベヤ又はグリッドの上流に位置する装置又は部材の全てを含むものとして定義される。
【0014】
最後に、誘導された空気は、吸引ダクトによって取り入れられる空気のうち、繊維化ステーションの部材に由来しない部分として定義され、この部材は、特には、空気、水、又は他の物を加熱又は供給するための部材(特には、バーナー、バインダ配合物を適用するための手段、吹き付けリング、エアガン、リサイクルされた物(再生された物)の断片を供給するための随意の装置、リサイクルされた吸入空気(再生された吸入空気)を供給するための随意の装置)である。
【0015】
下記において、量は、通常、質量流として解釈することができ、製造方法は、連続的な手順(マットが動いている)である。
【0016】
繊維化ステーションから乾燥炉の上流までの熱力学モデルの詳細な研究を経て、誘導された空気が、上述の繊維のマットを製造するための手順の最も決定的なパラメータの1つであることが、確立された。マットの水分に貢献するすべてのもののうち、この誘導された空気の水の寄与は、最も大きい変動を伴うパラメータである。したがって、誘導された空気は、マットの水分の目標を維持するために、制御されるべき主要なパラメータである。
【0017】
誘導された空気の量は、それ自体で定量することはできない。しかしながら、出願人らは、吸入空気は、一般に、大部分が、誘導された空気に由来し、多くの場合80%超になることを確かめた。本発明の主題である方法は、誘導された空気の量を計算又は概算することによって、この結果を利用しており、吸入空気の量を計測することの可能性も利用している。誘導された空気の湿度を知ることによって、マットの水分へのそれの影響を知ることが可能となる。この影響が大きすぎる場合、換言すると、誘導された空気が水分を多量に含む場合、この水は、部分的にマットに存在することとなり、バインダ配合物中に含有される水の量を低減することが可能となる。他方で、誘導された空気が蒸発を過剰にもたらす場合には、この量を増加させる必要がある。
【0018】
誘導された空気によって提供される水の関数としての、バインダ配合物中の水の量の制御は、正確であるという利点を有しており、既存の製造設備の大規模な変更を要求しないという利点を有する。
【0019】
これは、単一のパラメータの単純な調節によって実行することができ、究極的には、欠陥品を防止し、かつラインでの調節操作を限定することによって、製品生産量の改善を可能にする。
【0020】
本発明に係る方法は、特には、ガラス繊維のマットの製造に適している。
【0021】
バインダ配合物中で用いられるバインダは、ガラスウールに基づく遮断製品の分野で慣用的に使用される任意の有機バインダであってよい。
【0022】
これは、水に可溶又は分散可能なモノマー、オリゴマー又はポリマーの重合及び/又は架橋によって得られる不溶性かつ不溶解性の熱硬化バインダであってよい。
【0023】
そのようなバインダの例として、下記に言及することができる:
- フェノール-ホルムアルデヒドレゾール樹脂に基づいており、好ましくは尿素で変性されている、バインダ、
- メイラード試薬(還元糖及びアミン)に基づくバインダ、
- アクリルポリマー及び架橋剤、例えばポリヒドロキシル化された試薬及びポリアミノ試薬、に基づくバインダ、
- 非還元糖及び/又は水素化糖、並びにポリカルボキシル化された試薬、例えばクエン酸、に基づく、バインダ、
- カルボン酸無水物及びアルカノールアミンの反応によって得られるアミノアミドに基づくバインダ。
【0024】
本方法は、特に、ホルムアルデヒド非含有であって、かつ/又はバイオ系有機化合物に基づいている、熱硬化性バインダ又は熱硬化バインダ(「グリーンバインダ」としても言及されるバインダ)で結合される無機繊維に適している。
【0025】
マットのための水の量の目標値は、好ましくは、15重量%未満、より好ましくは0.5重量%と10重量%との間、さらにより好ましくは、2重量%と10重量%との間であることが、確かめられた。この量は、マットに用いられるバインダの種類によって変わりうる。例えば、バイオ系有機バインダを含有するマットのための水の量の目標値は、1重量%と15重量%との間、好ましくは2重量%と10重量%との間である。フェノール-ホルムアルデヒド樹脂のタイプのバインダを含有するマットに関しては、水の量のこの目標値は、0.5重量%と15重量%との間であり、好ましくは、1重量%と5重量%との間である。アクリルポリマーに基づくバインダを含有するマットに関しては、水の量の目標値は、1重量%と15重量%との間であり、好ましくは、2重量%と10重量%との間である。
【0026】
繊維化ステーションは、典型的には、空気、水、又は他の物を加熱又は供給するための複数の部材を有しており、特には、少なくとも1つの、バーナー、並びに/又は、バインダ配合物を適用するための手段、並びに/又は、少なくとも1つの、吹付けリング及び/若しくはエアガン(空気ガン)、並びに/又は、リサイクルされた物の断片を供給するための、特にはマットの切れ端を供給するための、少なくとも1つの装置、並びに/又は、少なくとも1つの、リサイクルされた吸入空気を供給するための装置を、有する。
【0027】
吸入空気に寄与するものは、特には、下記である:
- 1又は複数のエアリング(空気リング)に由来する空気、
- 1又は複数のバーナーに由来する空気、
- バインダ配合物を適用するための手段に由来する空気、
- エアガン(空気銃)に由来する空気、
- 端部断片を導入するための、存在しうる1又は複数の装置に由来する、空気、
明らかに一定の水の量を含有しているものは、無視されるか、又は、希釈水の最適な量の決定における定数の形態で、考慮される。これらの寄与は、事前に計測又は計算することができる。
【0028】
1又は複数の吸引ダクトによって取り入れられた空気の一部を再生して(リサイクルして)繊維化ステーションに再導入する特定の場合には、リサイクルされた吸入空気を供給するための、存在し得る1又は複数の装置に由来する空気を、希釈水の量の計算において考慮する必要がありうる。リサイクルされた吸入空気の量は、実際には、吸入空気の量の50%までの範囲の値に達し得るので、このパラメータは重要でありうる。
【0029】
1つの例では、繊維化ステーションの1又は複数の部材からもたらされる、使用可能な水(有効な水)として言及される、水の量が、希釈水の最適な量の決定において考慮される。使用可能な水のこの量は、事前に、テスト(試験)によって計測することができ、又は、計算によって決定することができる。
【0030】
1つの例によれば、使用可能な水の量が、少なくとも1つのバーナーからもたらされる水の量と、バインダ組成物からもたらされる水の量との合計に、少なくとも等しい。換言すると、使用可能な水の量が、この合計に少なくとも等しい値によって、近似される。
【0031】
1又は複数の吸引ダクトによって取り入れられる空気の一部を繊維化ステーションに再導入するために再生(リサイクル)する場合には、使用可能な水の量は、少なくとも1つのバーナーからもたらされる水の量、バインダ組成物からもたらされる水の量、及び、リサイクルされた吸引空気を供給するための少なくとも1つの装置からもたらされる水の量、の合計に、少なくとも等しくてよい。換言すると、使用可能な水の量は、この合計に少なくとも等しい値によって、近似化することができる。
【0032】
1つの例によれば、バインダ配合物中の水の量の調節を、無機繊維のマットの製造の間にわたって、連続的に実行する。この場合、希釈は、リアルタイムで、周囲湿度条件の関数として適合され、そのようにして、マット中の水分における変動が、その原因において防止される結果として、非常に小さくなり、又はさらには、完全に存在しなくなる。
【0033】
別の例によれば、バインダ配合物中の水分の量の調節を、定期的に、例えば1時間ごとに行ってよく、又は、製品の変更ごとに行ってもよい。
【0034】
1つの例示的な実施態様では、上述の少なくとも1つの吸引ダクトでの吸入空気流量が、一定値で維持される。
【0035】
別の例では、吸入空気流量が計測され、このようにして計測された値を、希釈水の最適な量の決定において、変数として考慮する。
【0036】
1又は複数の吸引ダクトにおける吸入空気流量は、1つの又はそれぞれの吸引ダクトの内部での空気の速度を直接に計測することによって、又は、空気の速度に直接的に関係する圧力差を計測することによって、得ることができる。
【0037】
例えば、圧力の測定のために、1又は複数のピトー管システム、又は、アニューバ(Annubar)を用いることができ、速度の計測のために、流速計又は任意の他の同等のシステムを用いることができる。
【0038】
1つの例によれば、繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定するために、空気の湿度の計測を、繊維化ステーションの種々の場所で行い、そのようにして計測された値の平均、随意に加重平均、を、計算する。
【0039】
本発明は、無機繊維のマットを製造する方法にも関し、この方法では、
- 繊維化ステーションにおいて、繊維を形成し、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を、この繊維に適用し、
- バインダ配合物で含侵された繊維を、繊維受容表面及びこの表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクトを備えている穿孔された受容装置、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッド、を含む受容チャンバで、回収し、
- マットを、加熱処理し、
この方法が、さらに、下記の点で特徴づけられる:
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定し、
- 少なくとも1つの吸引ダクトにおける、吸入空気の湿度、及び吸入空気の流量を決定し、かつ、
- 少なくとも、繊維化ステーションにおける空気の湿度、少なくとも1つの吸引ダクトにおける吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに、受容チャンバの出口におけるマット中で所望される水の量の目標値、の関数として、希釈水の最適な量を決定し、
- このようにして決定された上記の最適な量の関数として、希釈水の量を調節する。
【0040】
監視方法との関係で上述した全ての特徴を、本製造方法にも適用することができることに留意すべきである。
【0041】
本発明は、また、無機繊維のマットを製造するための設備の繊維化ステーションにおいて繊維に適用されることが意図されているバインダ配合物の希釈水の量を計算するためのユニットにも関し、
この製造設備が:
- 繊維を形成するための手段と、バインダ組成物と希釈水との混合から得られるバインダ配合物をこの繊維に適用するための手段とを含む、繊維化ステーション、
- 繊維受容表面及びこの受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクトを備えている、穿孔された受容装置、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッド、を有する、受容チャンバ、
- マットを加熱処理するための手段、
を含み、
計算ユニットが、さらに:
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定するための手段、
- 少なくとも1つの吸引ダクトにおいて、吸入空気の湿度を決定するための手段、及び、吸入空気の流量を決定するための手段、
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度、少なくとも1つの吸引ダクトにおける吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに受容チャンバの出口でマット中に所望される水の量、の関数として、希釈水の最適な量を計算するための手段、並びに、
- 上記計算手段によって決定された上記最適な量の関数として、希釈水の量を調節するための手段。
【0042】
本発明は、最後に、無機繊維のマットを製造するための設備に関し、
これは:
- 繊維を形成するための手段、及び、バインダ組成物と希釈水との混合から得られるバインダ配合物をこの繊維に適用するための手段、を含む繊維化ステーション、
- 繊維受容表面及びこの受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクトを備えている穿孔された受容装置、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッド、を有する、受容チャンバ、
- マットを加熱処理するための手段、
を含み、
この設備は、下記をさらに含む点で、特徴づけられる:
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定するための手段、
- 少なくとも1つの吸引ダクトにおいて、吸入空気の湿度を決定するための手段、及び、吸入空気の流量を決定するための手段、
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度、少なくとも1つの吸引ダクトにおける吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに受容チャンバの出口でマット中に所望される水の量、の関数として、希釈水の最適な量を計算するための手段、並びに、
- 上記計算手段によって決定された上記最適な量の関数として、希釈水の量を調節するための手段。
【0043】
本明細書において、いくつかの実施態様又は例示的な実施態様を記載する。しかしながら、別段の特定がない限り、いずれかの実施態様又は例示的な実施態様に関して記載される特徴は、他の実施態様又は例示的な実施態様に適用することができる。
【0044】
本発明は、非制限的な例示として示される下記のいくつかの実施態様の詳細な記載を読むことによって、更によく理解され、その利点がさらに明確になるであろう。
【0045】
図1は、第1の例示的な実施態様に係るガラス繊維のマットMを製造するための設備10の概略図であり、製造手順の順番で、繊維化ステーション12、形成ステーション14、及び乾燥炉16を有する。
【0046】
繊維化ステーション12は、
図1に示されているように、少なくとも1つの繊維化装置20、好ましくは、直列に配列されている複数のそのような装置20a…、20nを有する。
【0047】
そのような繊維化装置20を、
図2A及び
図2Bでさらに詳細に示している。
【0048】
繊維を製造するために、装置20が、繊維化スピナーとしても知られるスピナー22を有しており、このスピナーは、特には垂直である軸Aの周りを高速で回転することができ、複数のオリフィス26で穿孔されている環状壁24、及び随意に底部を有している。スピナー22に導入される溶融ガラスの流れが、遠心力の影響の下で、複数のオリフィス26によって投射され、複数のフィラメントが形成される。
【0049】
それぞれの繊維化装置20は、スピナー22の環状壁24に対して実質的に接線方向に、高温減衰ガスジェット32を生成する、少なくとも1つの環状バーナー30も有しており、これは、スピナーから出てくる上述のフィラメントを加熱し細くすることを意図しており、そのようにして、それらを、繊維Fへと変化させる。
【0050】
随意に、繊維化装置20が、磁気誘導リング34の形態で、スピナーの下方部分を加熱するための装置も、有することができる。
【0051】
それぞれの繊維化装置20は、さらに、吹付けリング又はエアリング36を有し、これは、バーナー30の下方に位置しており、これは、繊維がスピナー22の回転軸Aから過度に遠くに分散することを防止することを意図している。
【0052】
それぞれの繊維化装置20は、最後に、繊維Fにバインダ配合物を適用するための装置40を有する。この適用装置40は、典型的には、噴霧ノズル44を保持している環状リング42の形態であり、ガラス繊維Fが、このリングの内部を逐次的に通過する。リング42は、バインダ配合物タンク46に接続されており、このリングに関連付けられているそれぞれの噴霧ノズル44が、一方では、ある量のバインダ配合物を受容し、他方では、ある量の圧縮空気を、(図示されていない)独立の供給部を介して、受容するように構成されており、それによって、ガラス繊維が通過することに伴って、バインダ配合物を投射する。
【0053】
バインダ配合物タンク46では、バインダ組成物が、比較的多量の又は比較的少量の希釈水と混合され、この希釈水は、典型的には制御バルブである調節手段49を備えている水供給ライン48を介してバインダ配合物タンク46に接続されている水タンク47から、もたらされる。
【0054】
バインダ組成物は、水溶液であり、その固形分は、一定であり、典型的には、約15重量%である。その固形物は、乾燥炉16での加熱処理の際の重合を介して反応することが意図されている化学前駆体からなる。
【0055】
希釈水の量は、それ自体、調節手段49によって調節することができるパラメータであり、そのようにして、繊維Fに最終的に適用されるバインダ配合物の水含有量を制御することが可能となる。
【0056】
随意に、繊維化装置20が、さらに、バインダ配合物を適用するための装置40の下流に、エアガンとしても知られ、ここでは概略的に矢印手示されている、エアノズル38を有することができ、これは、繊維Fを分散させることを可能にする。必要な場合に、繊維Fの分散が、ノズルの方向、及び、それから生じる空気の圧力を変更することによって、調節される。
【0057】
このようにして、それぞれの繊維化装置20のガラス繊維Fが、落下し、形成ステーション14に達する。ここで、繊維が、受容チャンバ50において、穿孔されたコンベヤ52の上で、マットMの形態で、回収される。図で示されているように、1又は複数の吸引ダクト54(
図1で示されている例では、3つのダクト、それぞれ54a、54b、54c)は、マットMを受容するコンベヤ52の受容表面52aの下方での陰圧を生成しかつ維持することを意図している。このために、それぞれの吸引ダクト54が、コンベヤ52の受容表面52aの下方で、その「上流側」末端部を介して、開いており、吸引力を生成する(
図2Aで見られる)1又は複数の抽出ファン56に接続されている。このようにして取り入れられる空気は、形成空気又は吸入空気として言及される。
【0058】
受容チャンバ50は、典型的には、4つの壁によって画定されており、これらは、一対で直交しており、すなわち、コンベヤの輸送方向に横断する2つの前方固定壁58及び後方固定壁60、並びに、フード壁としても知られ、動くエンドレスベルト(無端ベルト)からなる、2つの側方壁62、64である。2つの側方壁の外側部分62a、64aは、水によって連続的に洗浄される。フード壁の内側表面62b、64bは、受容チャンバ50の内側で、チリ及びバインダを回収する。このチリは、回転を介してそれが外側へと通過するときに、上述の表面の洗浄の間に、外側に排出される。
【0059】
変形態様として、受容チャンバの4つの壁が、上述の動くエンドレスベルトから形成されていてもよいことに留意すべきである。
【0060】
そして、マットMを、架橋ステーションを形成している乾燥炉16の方向へと送り、ここにおいて、乾燥すると同時に、繊維の表面に存在するバインダの樹脂の重合(又は「硬化」)を生じる特定の加熱処理に供する。
【0061】
そして、無機繊維のマットMを、
- 一般的にはのこぎりによる、長さ方向での、その不揃いな端部の、長さ方向の切断、及び、
- 横断方向での切断、随意に厚み方向での切断(分割)、
に供し、それにより、ブロックを得、そして、このブロックを、一般的にはのこぎり又はギロチン(裁断機)によって、シート又はロールとして準備することができ、
それによって、例えば、熱遮断性かつ/又は音遮断性のパネル又はロールを、形成する。
【0062】
特定の製造設備では、パネルの不揃いな端部を回収し、粉砕し、そして、方法の上流に、再導入する。この場合、繊維化ステーション12は、上記に加えて、リサイクルされた物の断片を供給するための1又は複数の装置68を有することができる。リサイクルされた物の断片を供給するためのそれぞれの装置68は、例えば、
図3で示されているように、2つの繊維化装置20の間に位置しており、好ましくは、2つのスピナー22の間に位置している。
【0063】
本発明によれば、製造方法が:
方法の異なるレベルで計測され、他のパラメータに関しては事前に計算又は設定される、複数のパラメータの関数として、希釈水の最適な量を計算する工程、
を有する。
【0064】
この計算は、希釈水の最適な量を計算するためのユニット70によって実行される。このユニット70は、下記で記載される複数の計測装置に接続されており、それによって、下記が決定される:
- 繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度、
- 少なくとも1つの吸引ダクトにおける吸入空気の湿度、及び、
- 少なくとも1つの吸引ダクトにおける吸入空気の流量。
【0065】
これらの計測されたデータ、及び、事前に計算され又は設定される方法の他のパラメータを用いて、計算ユニットが、下記のタイプの式を用いて、希釈水の最適な量を決定する。
Dd=Dm+Daa
*(Haa-Hai)+Ca
*Hai-Ce (1)
式中、
Ddは、バインダ配合物に添加される水の(kg/hで表される)質量流量であり、
Dmは、受容チャンバの出口でかつ乾燥炉の上流で移動しているマット中において所望される水の(kg/hで表される)質量流量の目標値であり、
Daaは、上記少なくとも1つの吸引ダクトによって取り入れられる空気の(kg/hで表される)質量流量であり、
Haaは、上記少なくとも1つの吸引ダクトにおける空気の(kgでの水/kgでの乾燥空気、で表される)絶対湿度であり、
Haiは、繊維化ステーションでの空気の(kgでの水/kgでの乾燥空気、で表される)平均的な絶対湿度であり、
Caは、繊維化ステーションの部材からもたらされる空気の量の代表値であり、
Ceは、繊維化ステーションの部材からもたらされる水の量の代表値である。
【0066】
繊維化ステーション12における周囲空気の絶対湿度は、少なくとも1つの相対湿度計測装置72及び少なくとも1つの温度計測装置74を用いて計測される空気の相対湿度及び温度から計算によって得ることができ、これらの装置は、繊維化ステーションの全体的な湿度及び温度の条件の代表となる区域に、配置される。
【0067】
湿度及び温度は、局所的に種々の値となりうるため、設備は、好ましくは、繊維化ステーション12において、テスト区域として言及される種々の区域にそれぞれ配置される、複数の相対湿度計測装置72a、…、72n、及び、複数の温度計測装置74a、…、74nを、有する。これらの湿度及び温度の計測装置が、すべて、希釈水の最適な量を計算するためのユニット70に接続され、このユニットが、上記のようにして得られる測定値に基づいて、湿度及び温度の平均値を計算し、この値から、上述の式においてHaiとして用いることができる平均的な絶対湿度を演繹する。
【0068】
テスト区域は、例えば、事前に、繊維化ステーションの全体にわたって分布された湿度計測プローブを用いて、誘導された空気の湿度のマップを作成することによって、決定される。これらのプローブは、空気流、及び湿度における差異を検出することができ、そのようにして、平均周囲湿度の決定において考慮する必要のある区域を規定することが可能になる。
【0069】
マット中で所望される水の質量流量の目標値Dm(kg/h)は、試験によって決定され、硬化されたマットの要求される特性に依存する。これは、特には、繊維Fの密度、バインダ配合物の組成、及びバインダの量に、依存する。
【0070】
少なくとも1つの吸引ダクトによって取り入れられる空気の質量流量Daa(kg/h)は、容易に計測可能であり、かつ調節可能である。
【0071】
ダクト54bの内部での流量を計測するための装置76が、ここで、
図2Aにおいて、概略的に示されている。有利には、計測装置76によって流量における変化を検出する場合には、これに従って、制御装置80が、1又は複数の抽出ファン56の速度を調節して、流量を、その通常の値又は所望の値に戻す。このようにして、上述の少なくとも1つの吸引ダクト54における吸入空気の流量が、一定値に維持される。
【0072】
計測装置76は、希釈水の最適な量を計算するためのユニット70と直接通信することができる(
図2Aでは、通信は示されていない)。
【0073】
別の実施の例によれば、吸入空気の流量を、上述したようにして計測することができ、このようにして計測された値を、希釈水の最適な量の決定において、変数として考慮することができる。この正確な場合には、計測装置76と計算ユニット70との間の直接の通信が、特に有利である。
【0074】
少なくとも1つの吸引ダクト54bでの空気の絶対湿度H
aaは、それ自体、
図2Aにおいて78で示されている、ダクトの内部に提供されている任意の適切な手段(又は手段の組み合わせ)によって計測又は取得することができ、この手段も、計算ユニット70と通信している。
【0075】
値Ceは、好ましくは、バーナー30からもたらされる水の量と、バインダ組成物からもたらされる水の量との合計に少なくとも等しい値によって近似され、これらは、それぞれ、焼却される空気の流量及び組成、並びに、調節によって規定されるバインダ組成物の流量及びバインダ組成物の水含有量を知ることによって、計算することができる。
【0076】
さらにより好ましくは、値Ceは、バーナー30からもたらされる水の量、バインダ組成物からもたらされる水の量とともに、エアリング36、及び/又はエアガン38、及び/又はバインダ配合物を適用するための装置40、及び/又は端部断片を導入するための存在し得る1又は複数の装置68、からもたらされる水の量、の合計に等しい値によって近似される。
【0077】
値Caは、好ましくは、エアガン38からもたらされる空気の量と、端部断片を導入するための1又は複数の存在し得る装置68からもたらされる空気の量の合計に少なくとも等しい値によって、近似される。
【0078】
さらにより好ましくは、値Caは、エアガン38からもたらされる空気の量、及び、端部断片を導入するための存在し得る1又は複数の装置68からもたらされる空気の量とともに、バーナー30及びエアリング36からもたらされる空気の量、の合計に等しい値によって、近似される。
【0079】
計算ユニット70によって希釈水の最適な量が算出されると、この量を、対象としている時点での希釈水の実際の量と比較し、必要な場合には、計算ユニット70が、希釈水の量を調節するための手段、ここでは制御バルブ49、を制御し、それにより、上述の最適な値に到達するようにする。
【0080】
図3は、本発明の第2の実施の例に係る、無機繊維のマットを製造するための設備の概略図である。
【0081】
この設備は、
図1及び2に関連して記載したこととは、下記の点で異なる。すなわち、
図3の設備は、吸入空気の一部を繊維化ステーション12に再循環させるための回路90を有しており、この空気が、再導入される。
図3で示されているように、再循環ライン92が、それぞれの吸引ダクト54a、54b、54cを、リサイクルされた吸入空気を供給するための、2つの繊維化装置20の間にそれぞれ配置されている装置94a、…、94dに、接続している。
【0082】
リサイクルされた空気の流量は、例えば、吸入空気の流量の、X=20%~70%である。
【0083】
この場合、希釈水の最適な量の決定は、下記のタイプの式を用いて、実行される。
Dd=Dm+Daa
*(Haa-Hai-X*Har)+Ca
*Hai-Ce (2)
式中、
Ddは、バインダ配合物に添加される水の(kg/hで表される)質量流量であり、
Dmは、受容チャンバの出口でかつ乾燥炉の上流で、移動しているマットにおいて所望される水の(kg/hで表される)質量流量の目標値であり、
Daaは、少なくとも1つの吸引ダクトによって取り入れられる空気の(kg/hで表される)質量流量であり、
Haaは、少なくとも1つの吸引ダクトでの吸入空気の(kgでの水/kgでの乾燥空気、で表される)絶対湿度であり、
Haiは、繊維化ステーションでの空気の(kgでの水/kgでの乾燥空気、で表される)平均的な絶対湿度であり、
Harは、リサイクルされた空気の(kgでの水/kgでの乾燥空気、で表される)絶対湿度であり、
Xは、リサイクルされた空気の質量流量/吸入空気の質量流量、の比であり、
Caは、繊維化ステーションの部材からもたらされる空気の量の代表値であり、
Ceは、繊維化ステーションの部材からもたらされる水の量の代表値である。
【0084】
リサイクルされた空気の絶対湿度Harは、吸入空気の絶対湿度Haaに等しくてもよく、等しくなくてもよいことに、留意すべきである。
【0085】
好ましくは、再循環ライン92の内部におけるリサイクルされた空気の湿度を、(図示されていない)少なくとも1つの、相対湿度計測装置、及び温度計測装置によって計測し、これらの装置は、それぞれ、希釈水の最適な量を計算するためのユニット70に接続されている。
本開示は下記の態様を不含む。
<態様1>
無機繊維のマット(M)を製造するための設備(10)の繊維化ステーション(12)で、繊維(F)に適用されることが意図されているバインダ配合物の希釈水の量を調節する方法であって、
前記製造設備(10)が、
- 前記繊維を形成するための手段(20)と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を前記繊維(F)に適用するための手段(40)と、を含む、繊維化ステーション(12)、
- 繊維受容表面、及び前記受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有する、受容チャンバ(50)、
- 前記マット(M)の加熱処理のための手段(16)、
を有しており、
前記方法が、少なくとも、下記の工程:
- 前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度を決定すること、
- 前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における、吸入空気の湿度、及び吸入空気の流量を、決定すること、
- 少なくとも、前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度、前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに、前記受容チャンバ(50)の出口での前記マット(M)中における水の所望の量、の関数として、希釈水の最適な量を決定すること、並びに、
- このようにして決定された前記最適な量の関数として、希釈水の量を調節すること、
を含む、
方法。
<態様2>
前記繊維化ステーション(12)が、空気、水、又は他の物を加熱又は供給するための複数の部材、特には、少なくとも1つの、バーナー(30)、及び/又は、前記バインダ配合物を適用するための手段(40)、及び/又は、少なくとも1つの、吹付けリング(36)、及び/又はエアガン(38)、及び/又は、リサイクルされた物の断片を供給するための少なくとも1つの装置(68)、及び/又は、リサイクルされた吸入空気を供給するための少なくとも1つの装置(94a、…、94d)、を有しており、
希釈水の最適な量を、前記部材のうちの1又は複数からもたらされる、使用可能な水として言及される、水の量、好ましくは事前に試験によって計測され又は計算によって決定される水の量を、更に考慮に入れることによって、決定する、
態様1に記載の方法。
<態様3>
使用可能な水の量が、前記少なくとも1つのバーナー(30)からもたらされる水の量と、前記バインダ組成物からもたらされる水の量との合計に少なくとも等しい、態様2に記載の方法。
<態様4>
使用可能な水の量が、前記少なくとも1つのバーナー(30)からもたらされる水の量、前記バインダ組成物からもたらされる水の量、及び、リサイクルされた吸入空気を供給するための前記少なくとも1つの装置(94a、…、94d)からもたらされる水の量、の合計に少なくとも等しい、態様2に記載の方法。
<態様5>
前記繊維化ステーションが、空気、水、又は他の物を加熱又は供給するための複数の部材、特には、少なくとも1つの、バーナー(30)、及び/又は、前記バインダ配合物を適用するための手段(40)、及び/又は、少なくとも1つの、吹付けリング(36)、及び/又はエアガン(38)、及び/又は、リサイクルされた物の断片を供給するための少なくとも1つの装置(68)、及び/又は、リサイクルされた吸入空気を供給するための少なくとも1つの装置(94a、…、94d)、を有しており、
希釈水の最適な量を、前記部材のうちの1又は複数からもたらされる、使用可能な水として言及される、水の量、好ましくは事前に試験によって計測され又は計算によって決定される水の量を、更に考慮に入れることによって、決定する、
態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における前記吸入空気の流量を、一定値に維持する、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
<態様7>
前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度を決定するために、空気の湿度の計測を、前記繊維化ステーション(12)の種々の場所で実行し、そのようにして計測された値の平均を算出する、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
<態様8>
前記バインダ配合物における希釈水の量の前記調節を、無機繊維の前記マット(M)の製造の間に連続的に行う、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
前記バインダ配合物における水の量の前記調節を、定期的に、例えば一時間ごとに行い、又は、製品のそれぞれの変更の後に行う、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様10>
無機繊維のマット(M)を製造する方法であって、
- 繊維化ステーション(12)において、繊維(F)を形成し、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を、前記繊維(F)に適用し、
- 前記バインダ配合物で含侵された前記繊維(F)を、繊維受容表面及びこの表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッド、を有する、受容チャンバ(50)において、回収し、
- 前記マットを、加熱処理し、
前記方法が、さらに、態様1~9のいずれか一項の方法に記載されているようにして、バインダ配合物の希釈水の量を監視することを含む、
方法。
<態様11>
無機繊維のマット(M)を製造する設備(10)の繊維化ステーション(12)において繊維(F)に適用されることが意図されているバインダ配合物の希釈水の量を計算するためのユニット(70)であって、
前記製造設備(10)が、
- 前記繊維(F)を形成するための手段(20)と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を前記繊維(F)に適用するための手段(40)とを含む、繊維化ステーション(12)、
- 繊維受容表面、及び前記受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有する、受容チャンバ(50)、並びに、
- 前記マットの加熱処理のための手段(16)、
を有しており、
前記計算ユニットが、さらに、
- 前記繊維化ステーションにおける周囲空気の湿度を決定するための手段(72、74)、
- 前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における、吸入空気の湿度を決定するための手段(78)、及び吸入空気の流量を決定するための手段(76)、
- 少なくとも、前記繊維化ステーション(12)における周囲空気の湿度、前記少なくとも1つの吸引ダクト(54)における吸入空気の湿度及び吸入空気の流量、並びに、前記受容チャンバ(50)の出口での前記マット(M)中における水の所望の量、の関数として、希釈水の最適な量を計算するための手段、並びに、
- 前記計算手段によって決定される前記最適な量の関数として、希釈水の量を調節するための手段
を有している、
ユニット。
<態様12>
無機繊維のマット(M)を製造するための設備(10)であって、
- 前記繊維を形成するための手段(20)と、バインダ組成物と希釈水との混合から生じるバインダ配合物を前記繊維に適用するための手段(40)とを含む、繊維化ステーション(12)、
- 繊維受容表面、及び前記受容表面の下方の少なくとも1つの吸引ダクト(54)を備えている、穿孔された受容装置(52)、特には穿孔されたコンベヤ又はグリッドを有する、受容チャンバ(50)、
- 前記マットの加熱処理のための手段(16)、
を有しており、
前記製造設備が、さらに、態様11に記載の計算ユニット(70)を有していることを特徴とする、
設備。