(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
(21)【出願番号】P 2021542189
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003917
(87)【国際公開番号】W WO2020162390
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019018088
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019174039
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今東 孝之
(72)【発明者】
【氏名】田中 薫
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 雅志
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0114987(US,A1)
【文献】特開2010-278139(JP,A)
【文献】特開2003-174055(JP,A)
【文献】特開2005-217147(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114751(WO,A1)
【文献】特開2018-160589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
H01S 5/00
B22F 9/00
B22F 1/00
H01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
熱膨張率が前記半導体基板とは異なるチップと、
前記半導体基板および前記チップの対向する主面に設けられた接続パッド同士を接続する多孔質金属層を含む接続部と
を有
し、
前記チップは、
半導体レーザであり、
前記半導体基板は、
温度センサを有する電子機器。
【請求項2】
前記チップは、
熱膨張率が前記半導体基板とは0.1ppm/℃以上異なる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
半導体基板と、
熱膨張率が前記半導体基板とは異なるチップと、
前記半導体基板および前記チップの対向する主面に設けられた接続パッド同士を接続する多孔質金属層を含む接続部と
を有し、
前記チップは、
半導体レーザであり、
前記半導体基板は、
前記半導体レーザを駆動する駆動回路を有
し、
前記半導体レーザは、
レーザ光を出射する2次元に配列された複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子のそれぞれは、
アノード電極およびカソード電極が同一平面上に設けられ、
前記半導体基板は、
スイッチを有し、
前記スイッチは、
前記アノード電極または前記カソード電極と接続され、
複数の前記発光素子のグループ毎に接続されており、
前記発光素子は、
前記グループ毎に発光制御される
電子機器。
【請求項4】
前記スイッチは、
前記発光素子毎に接続されており、
前記発光素子は、
個別に発光制御される
請求項
3に記載の電子機器。
【請求項5】
各前記アノード電極または各前記カソード電極と各前記スイッチとは、前記接続部によって接続される
請求項
3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記発光素子は、
共通の基板上に形成されている
請求項
3に記載の電子機器。
【請求項7】
前記発光素子は、
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)構造を有する
請求項
3に記載の電子機器。
【請求項8】
前記半導体基板と前記チップとの間および前記接続部の間には、絶縁性樹脂が充填されている
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記多孔質金属層は、
粒子径が0.005μm~1.0μmの金属粒子を含む
請求項1
または請求項3に記載の電子機器。
【請求項10】
前記接続部は、
前記多孔質金属層と前記半導体基板側の接続パッドとの間、および前記多孔質金属層と前記チップ側の接続パッドとの間のうち、少なくともいずれか一方に前記多孔質金属層と同一成分の金属膜を有する
請求項1
または請求項3に記載の電子機器。
【請求項11】
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%以下である
請求項
10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が5%未満である
請求項
11に記載の電子機器。
【請求項13】
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さの半分に対する膜厚の比率が10%以下である
請求項
10に記載の電子機器。
【請求項14】
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さの半分に対する膜厚の比率が5%未満である
請求項
13に記載の電子機器。
【請求項15】
前記多孔質金属層
の厚みまたは縦方向の伸びと、前記接続部
の厚みまたは縦方向の伸びとの比率は、90%
以上である
請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は、2019年2月4日に出願された日本国特許出願番号2019-018088および2019年9月25日に出願された日本国特許出願番号2019-174039の優先権の利益を享受し、それら日本国特許出願の全内容は本出願において援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体基板上に電子部品のチップを実装する技術として、例えば、半導体基板の上面に凸設される金属製のバンプと、チップの下面に設けられる接続パッドとを圧接しながら過熱して接続するフリップチップ実装がある(例えば、特開2011-077308号公報参照)。バンプの材料としては、一般にバルク状の金、銅、および、はんだ等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バンプの材料としてバルク状の金または銅を使用して、半導体基板に半導体基板とは熱膨張率が異なるチップをフリップチップ実装する場合、高温高圧でバンプによる接続を行う必要があり、チップがダメージを受けて電子機器の信頼性が低下する。
【0006】
また、バンプの材料としてはんだを使用した場合、比較的低温低圧で半導体基板とチップとを接続することはできるが、接続強度が金や銅のバンプに比べて低いため、半導体基板とチップとの熱膨張率が異なる場合に、接続強度の点で信頼性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、電子機器が提供される。電子機器は、半導体基板と、チップと、接続部とを有する。前記チップは、熱膨張率が前記半導体基板とは異なる。前記接続部は、前記半導体基板および前記チップの対向する主面に設けられた接続パッド同士を接続する多孔質金属層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のより完全な認識やそれに伴う利点は、以下の発明の詳細な説明を添付図面と照らし合わせて読めば、容易に理解できよう。
【0009】
【
図1】本開示に係る電子機器の断面を示す説明図である。
【
図2A】本開示に係る半導体基板にバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図2B】本開示に係る半導体基板にバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図2C】本開示に係る半導体基板にバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図2D】本開示に係る半導体基板にバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図3A】本開示に係るチップにバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図3B】本開示に係るチップにバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図3C】本開示に係るチップにバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図3D】本開示に係るチップにバンプを形成する工程を示す説明図である。
【
図4】実施形態に係る測距装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る測距装置における構成要素の配置例を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る駆動回路の等価モデルを示す回路図である。
【
図7】実施形態に係る発光素子に流れる電流の立ち上がり時間および立ち下がり時間の説明図である。
【
図8】実施形態に係る光源装置の断面構造の説明図である。
【
図9A】実施形態に係る光源装置の組み立て工程の説明図である。
【
図9B】実施形態に係る光源装置の組み立て工程の説明図である。
【
図9C】実施形態に係る光源装置の組み立て工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号および同一のハッチングを付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
[1.電子機器の断面構造]
図1に示すように、本開示に係る電子機器1は、半導体基板2と、チップ3と、半導体基板2およびチップ3の対向する主面に設けられた接続パッド21,31同士を接続する接続部(以下、バンプ4と記載する)とを備える。以下では、半導体基板2、チップ3、および接続パッド21,31について詳細に説明する。他の実施形態は、他の例示的な詳細を含みうる。
【0012】
チップ3は、例えば、半導体レーザであり、GaAs(ヒ化ガリウム)の基材の内部に、接続パッド31や半導体レーザの発光部32等が形成される。発光部32は、レーザ光を出射する2次元に配置された複数の発光素子321を備える。なお、チップ3の機材に形成される電子部品は、半導体レーザの発光部32以外の任意の電子部品であってもよい。また、チップ3の基材は、例えば、InP(リン化インジウム)等の半絶縁性基材であってもよい。
【0013】
半導体基板2は、例えば、Si(シリコン)基板であり、内部に半導体レーザを駆動する駆動回路22が形成される。なお、半導体基板2の内部に形成される電子回路は、半導体レーザの駆動回路22以外の任意の電子回路であってもよい。
【0014】
電子機器1は、半導体基板2にチップ3がフリップチップ実装され、バンプ4によって半導体基板2内の駆動回路22と、半導体レーザであるチップ3とが電気的に接続される。
【0015】
ここで、一般的なフリップチップ実装では、半導体基板またはチップの対向する主面に設けられるバルク状のAu(金)、Cu(銅)、および、はんだ等の金属製のバンプを圧接しながら加熱することによって、半導体基板にチップを実装する。
【0016】
しかしながら、半導体基板とチップとの熱膨張率が、例えば、0.1ppm/℃以上異なる場合に、バンプの材料としてバルク状のAu、Cu、および、はんだ等が用いられると以下のような問題が発生する。
【0017】
例えば、バンプの材料としてバルク状のAuを用いる場合、熱膨張率が異なる半導体基板とチップとをバンプによって安定して接続するためには、300℃以上の高温に加熱し、半導体基板とチップとの間に100MPa以上の高圧を掛ける必要がある。
【0018】
また、バンプの材料としてバルク状のCuを用いる場合には、380℃以上の加熱が必要である。このように、バンプの材料としてバルク状のAuやCuを用いる場合には、高温高圧でバンプによる接続を行う必要があり、かかる高温高圧がチップにダメージを与えることがあり、電子機器の信頼性が低下することがある。
【0019】
一方、バンプの材料としてはんだを用いる場合、AuやCuに比べて低温低圧でバンプによる接続を行うことはできるが、はんだは耐熱性および接続強度がAuやCuに劣る。このため、はんだ製のバンプは、例えば、チップに搭載される半導体レーザ等の電子部品の発熱によってチップが熱膨張すると、半導体基板とチップとの熱膨張率の違いによってオープン故障が発生し、電子機器の信頼性を低下させるおそれがある。
【0020】
ここで、上記したように、本開示に係る半導体基板2は、Si基板であり、熱膨張率が5.7ppm/℃である。一方、本開示に係るチップ3の基材は、GaAsであり、熱膨張率が2.6ppm/℃である。
【0021】
このように、電子機器1は、半導体基板2とチップ3との熱膨張率の差が0.1ppm/℃よりも遥かに大きい。このため、電子機器1は、バンプの材料がバルク状のAu、Cu、または、はんだであった場合、上記のような問題が発生して信頼性が低下するおそれがある。
【0022】
そこで、電子機器1のバンプ4は、例えば、Auの多孔質金属層41を含む。多孔質金属層41は、粒子径が0.005μm~1.003μmのAu粒子を含む。なお、多孔質金属層41の成分は、例えば、Cu、Ag(銀)、またはPt(プラチナ)であってもよい。
【0023】
粒子径が0.005μm~1.0μmの金属粒子を含む多孔質金属層41は、粒子径のサイズ効果により、バルク状の金属の融点よりも低い温度で金属接合が可能である。例えば、多孔質金属層41は、成分がAuの場合では100℃程度、Agの場合では250℃程度、Cuの場合では150℃程度の温度で半導体基板2とチップ3とを接続することができる。これにより、電子機器1は、熱によるチップ3のダメージを低減することができるので、信頼性を向上させることができる。
【0024】
たとえば、多孔質金属層41およびバンプ4の高さの比率、たとえば、多孔質金属層41の厚みまたは縦方向の伸びとバンプ4の厚みまたは縦方向の伸びとの比率は90%以上であってよく、また、95%以上であってもよい。ここで、縦方向の伸びとは、縦方向に沿った伸びであり、縦方向は半導体基板2およびチップ3の積層方向であってよく、たとえば、半導体基板2またはチップ3の主面に垂直な方向である。多孔質金属層41に加えて、バンプ4は、無孔質または多孔質金属層41よりも小さい気孔率を有する1または複数の層を含んでいてよく、たとえば、かかる気孔率は空隙の体積分率である。金属層の例について、たとえば金属膜42、43を参照しながら以下に説明する。また、多孔質金属層41は、弾性があるため、例えば、半導体レーザの発熱によりチップ3が半導体基板2とは異なる熱膨張率で膨張しても弾性変形するので、オープン故障の発生を抑制することができる。これにより、上述した多孔質金属層41およびバンプ4の高さの比率を有する電子機器1は、例えば、はんだ製のバンプを使用する場合に比べて信頼性を向上させることができる。
【0025】
かかる電子機器1は、上面にバンプ4が設けられた半導体基板2にチップ3を積層し、バンプ4の多孔質金属層41を溶融させずに接続パッド31と接続させて半導体基板2にチップ3をフリップチップ実装することによって製造される。
【0026】
また、電子機器1は、下面に多孔質金属層41を含むバンプが設けられたチップ3を半導体基板2に積層し、バンプの多孔質金属層41を溶融させずに接続パッド21と接続させて半導体基板2にチップ3を、たとえばフリップチップ実装することによって製造されてもよい。なお、バンプは、積層前の半導体基板2およびチップ3の双方に設けられてもよい。
【0027】
バンプ4は、半導体基板2側に設けられる場合、多孔質金属層41と半導体基板2側の接続パッド21との間に、金属膜42を備える。また、バンプは、チップ3側に設けられる場合、多孔質金属層41とチップ3側の接続パッド31との間に、金属膜を備える。
【0028】
本開示では、バンプ4における半導体基板2の主面と直交する方向の厚さに対する金属膜42の膜厚の比率を2%~10%以下にすることで、バンプ4のピッチを20μm以下にするファインピッチ化を可能にした。かかるファインピッチ化については、バンプ4の形成工程と合わせて後述する。
【0029】
[2.バンプの形成工程]
次に、
図2A~
図3Dを参照し、本開示に係るバンプの形成工程について説明する。
図2A~
図2Dは、本開示に係る半導体基板2にバンプ4を形成する工程を示す説明図である。
図3A~
図3Dは、本開示に係るチップ3にバンプ4a(
図3D参照)を形成する工程を示す説明図である。
【0030】
図2Aに示すように、半導体基板2にバンプ4を形成する場合には、まず、半導体基板2の接続パッド21が設けられた側の表面にフォトレジスト層51を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術によって、フォトレジスト層51における後にバンプ4を形成する位置に貫通孔を形成して、接続パッド21の表面を露出させる。
【0031】
このとき、隣設する貫通孔の中心間の間隔が20μm(20μmピッチ)となるように、貫通孔を形成する。かかる貫通孔は、後の工程で多孔質金属層41の材料となる金属粒子を含むペースト40が充填されるが、20μmピッチという微細な構造であるため、このままの状態でペースト40が充填されると、微細な構造がダメージを受けて崩れるおそれがある。
【0032】
そこで、
図2Bに示すように、フォトレジスト層51および接続パッド21の上面に、例えば、スパッタリングによって、金属膜42を形成する。金属膜42の材料としては、後に貫通孔に充填するペースト40に含まれる金属粒子と同一成分の金属を選択する。なお、ここでは、Auの金属膜42を形成する。
【0033】
これにより、フォトレジスト層51は、表面が金属膜42によってコーティングされることにより硬化するので、貫通孔に金属粒子を含むペースト40が充填される場合に、微細な構造が崩れることを防止することができる。
【0034】
また、ここで形成する金属膜42の膜厚が厚すぎると貫通孔の開口が狭くなり、貫通孔に金属粒子を含むペースト40を充填することが困難になる。そこで、ここでは、貫通孔の深さD、換言すれば、後に形成されるバンプ4における半導体基板2の主面と直交する方向の厚さ(バンプ4の高さD)に対する金属膜42の膜厚の比率が10%以下となる薄い金属膜42を形成する。
【0035】
例えば、20μmピッチで並ぶ高さ10μmのバンプ4を形成する場合には、金属膜42の膜厚を0.2μmとする。これにより、金属膜42を形成しても貫通孔の開口が狭くなることを防止することができるため、後の工程で貫通孔に金属粒子を含むペースト40を十分に充填することができる。
【0036】
続いて、
図2Cに示すように、フォトレジスト層51に形成した貫通孔に、例えば、純度が99.9重量%以上で粒子径が0.005μm~1.0μmのAu粒子を含むペースト40を充填する。貫通孔にペースト40を充填する方法としては、例えば、スクリーン印刷、滴下したペースト40をヘラで広げる方法等、任意の方法を用いることができる。
【0037】
その後、ペースト40を乾燥および焼結させた後、剥離液等によってフォトレジスト層51を剥離する。これにより、
図2Dに示すように、接続パッド21の表面に、Auの金属膜42と、粒子径が0.005μm~1.0μmのAu粒子を含む多孔質金属層41とが順次積層された2層構造のバンプ4が完成する。
【0038】
このように、バンプ4は、バンプ4の高さに対する膜厚の比率が10%以下の金属膜42を備える。かかる金属膜42は、フォトレジスト層51にパターニングされるバンプ4の微細な構造の崩れを防止するために、フォトレジスト層51および接続パッド21の表面に形成されるものである。これにより、バンプ4は、ピッチを20μm以下にするファインピッチ化が可能となった。
【0039】
また、金属膜42は、スパッタリングによって接続パッド21の表面に形成されるので、接続パッド21が金属膜42とは異なる成分の金属であっても、接続パッド21と強固に接合される。
【0040】
また、金属膜42は、表面に積層される多孔質金属層41とは異なる成分の金属により形成されてもよいが、同一成分のAuによって形成された場合、多孔質金属層41は、成分が異なる他の金属膜上に設けられる場合よりも、強固な接合力で金属膜42と接合される。なお、バンプ4がAu以外の成分(例えば、Cu,Ag(銀)またはPt(プラチナ))の場合、金属膜42も同様に、Au以外の成分(例えば、Cu,Ag(銀)またはPt(プラチナ))が用いられ得る。
【0041】
次に、チップ3に
図3Dに示すバンプ4aを形成する工程について説明する。
図3Aに示すように、チップ3にバンプ4aを形成する場合には、まず、チップ3の接続パッド31が設けられた側の表面にフォトレジスト層52を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術によって、フォトレジスト層52における後にバンプ4aを形成する位置に貫通孔を形成して、接続パッド31の表面を露出させる。
【0042】
その後、
図3Bに示すように、フォトレジスト層52および接続パッド31の上面に、例えば、スパッタリングによって、金属膜43を形成する。金属膜43の材料としては、後に貫通孔に充填するペースト40に含まれる粒子と同一成分が選択され、たとえばAuである。
【0043】
これにより、フォトレジスト層52は、表面が金属膜43によってコーティングされることにより硬化するので、貫通孔に粒子、たとえばAu粒子、を含むペースト40が充填される場合に、微細な構造が崩れることを防止することができる。
【0044】
また、ここでも、貫通孔の深さD、換言すれば、後に形成されるバンプ4aにおけるチップ3の主面と直交する方向の厚さ(バンプ4aの高さD)に対する金属膜43の膜厚の比率が10%以下となる薄い金属膜43を形成する。
【0045】
例えば、半導体基板2側のバンプ4と同じく、20μmピッチで並ぶ高さ10μmのバンプを形成する場合には、金属膜43の膜厚を0.2μmとする。これにより、金属膜43を形成しても貫通孔の開口が狭くなることを防止することができるため、後の工程で貫通孔にAu粒子を含むペースト40を十分に充填することができる。
【0046】
続いて、
図3Cに示すように、フォトレジスト層52に形成した貫通孔に、例えば、純度が99.9重量%以上で粒子、たとえば粒子径が0.005μm~1.0μmのAu粒子、を含むペースト40を充填する。
【0047】
その後、ペースト40を乾燥および焼結させた後、剥離液等によってフォトレジスト層52を剥離する。これにより、
図3Dに示すように、接続パッド31の表面に、たとえば、Auの金属膜43と、粒子径が0.005μm~1.0μmのAu粒子を含む多孔質金属層41とが順次積層された2層構造のバンプ4aが完成する。
【0048】
このように、バンプ4aは、バンプ4aの高さに対する膜厚の比率が10%以下の金属膜43を備える。これにより、バンプ4aは、半導体基板2側のバンプ4と同様に、ピッチを20μm以下にするファインピッチ化が可能となる。
【0049】
また、バンプ4aによれば、半導体基板2側のバンプ4と同様に、金属膜43と接続パッド31とを強固に接合させることができ、金属膜43と多孔質金属層41とを強固に接合させることができる。
【0050】
上述した実施形態では、バンプ4が設けられた半導体基板2にバンプ4aが設けられていないチップ3が実装される場合と、バンプ4が設けられていない半導体基板2にバンプ4aが設けられたチップ3が実装される場合とについて説明したがこれは一例にすぎない。
【0051】
本開示に係る電子機器は、バンプ4が設けられた半導体基板2に、バンプ4aが設けられたチップ3が実装される構成であってもよい。かかる構成の場合、金属膜42,43は、半導体基板2とチップ3とを接続する接続部となるバンプ4およびバンプ4aの積層体における半導体基板2およびチップ3の主面と直交する方向の厚さの半分に対する膜厚の比率が10%以下、好ましくは5%以下となる。
【0052】
また、上述した実施形態では、チップ3の基材がSi以外の基材である場合について説明したが、チップ3の基材は、熱膨張率が半導体基板2と異なるものであれば、Siに不純物がドープされたものであってもよい。
【0053】
上述した半導体レーザの発光部32を備えるチップ3、および、半導体レーザの駆動回路22を備える半導体基板2は、例えば、ToFセンサやストラクチャードライト等の測距装置に搭載される。半導体レーザの発光部32は、測距装置に搭載される場合、例えば、ToFセンサの光源やストラクチャードライトの光源として機能する。
【0054】
次に、
図4を参照し、実施形態に係る電子機器1が搭載される測距装置について説明する。
図4は、実施形態に係る測距装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、測距装置100は、光源装置110と、撮像装置120と、制御部130とを備える。
【0055】
光源装置110は、発光部32が設けられたチップ3と、駆動回路22が設けられた半導体基板2と、電源回路111と、発光側光学系112とを備える。撮像装置120は、撮像側光学系121と、イメージセンサ122と、画像処理部123とを備える。
【0056】
制御部130は、測距部131を備える。制御部130は、光源装置110に含まれる場合、撮像装置120に含まれる場合、或いは、光源装置110や撮像装置120とは別体に構成される場合がある。
【0057】
発光部32は、レーザ光を出射する2次元に配列された複数の発光素子321(
図1参照)を備える。各発光素子321は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)構造を有する。
【0058】
駆動回路22は、発光部32を駆動するための電気回路を有する。電源回路111は、例えば、測距装置100に設けられたバッテリ(図示略)等から供給される入力電圧から駆動回路22の電源電圧を生成する。駆動回路22は、電源電圧によって発光部32を駆動する。
【0059】
発光部32から出射される光は、発光側光学系112を介して測距対象となる被写体Sに照射される。そして、このように照射された光の被写体Sからの反射光は、撮像側光学系121を介してイメージセンサ122の撮像面に入射する。
【0060】
イメージセンサ7は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を有し、上記のように撮像側光学系121を介して入射する被写体Sからの反射光を受光し、電気信号に変換して出力する。
【0061】
イメージセンサ122は、受光した光を光電変換して得た電気信号に対して、例えば、CDS(Correlated Double Sampling)処理、AGC(Automatic Gain Control)処理などを実行し、さらにA/D(Analog/Digital)変換処理を行う。
【0062】
そして、イメージセンサ122は、デジタルデータとしての画像信号を、後述する画像処理部123に出力する。また、イメージセンサ122は、フレーム同期信号を駆動回路22に出力する。これにより、駆動回路22は、発光部32における発光素子321をイメージセンサ122のフレーム周期に応じたタイミングで発光させることが可能となる。
【0063】
画像処理部123は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等の画像処理プロセッサによって構成される。画像処理部123は、イメージセンサ122から入力されるデジタル信号(画像信号)に対して、各種の画像信号処理を施す。
【0064】
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイクロコンピュータ、或いはDSP等の情報処理装置によって構成される。制御部130は、発光部32による発光動作を制御するための駆動回路22の制御や、イメージセンサ122による撮像動作に係る制御を行う。
【0065】
また、制御部130は、測距部131としての機能を有する。測距部131は、画像処理部123を介して入力される画像信号(つまり被写体Sからの反射光を受光して得られる画像信号)に基づき、被写体Sまでの距離を測定する。
【0066】
また、測距部131は、被写体Sの三次元形状の特定を可能とするために、被写体Sの各部について距離の測定を行う。また、制御部130は、電源回路111に対する制御を行う構成とされる場合もある。
【0067】
ここで、測距装置100における具体的な測距の手法について説明する。測距装置100における測距手法としては、例えばSTL(Structured Light:構造化光)方式やToF(Time of Flight:光飛行時間)方式による測距手法を採用することができる。
【0068】
STL方式は、例えばドットパターンや格子パターン等の所定の明/暗パターンを有する光を照射された被写体Sを撮像して得られる画像に基づいて距離を測定する方式である。
【0069】
STL方式では、ドットパターンによるパターン光を被写体Sに照射する。パターン光は、複数のブロックに分割されており、各ブロックにはそれぞれ異なるドットパターンが割当てられており、ブロック間でドットパターンが重複しないようにされている。STL方式を採用する場合、発光部32は、STLの光源として機能する。
【0070】
また、ToF方式は、発光部32より発された光が対象物で反射されてイメージセンサ122に到達するまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで、対象物までの距離を測定する方式である。
【0071】
ToF方式として、いわゆるダイレクトToF方式を採用する場合、イメージセンサ122としてはSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を用い、また発光部32はパルス駆動する。
【0072】
この場合、測距部131は、画像処理部123を介して入力される画像信号に基づき、発光部32より発せられイメージセンサ122により受光される光について発光から受光までの時間差を計算し、該時間差と光の速度とに基づいて被写体Sの各部までの距離を計算する。
【0073】
なお、ToF方式として、いわゆるインダイレクトToF方式(位相差法)を採用する場合、イメージセンサ7としては、例えば、IR(赤外光)イメージセンサが用いられる。ToF方式を採用する場合、発光部32は、ToFセンサの光源として機能する。
【0074】
次に、
図5を参照し、実施形態に係る測距装置100における構成要素の配置例について説明する。
図5は、実施形態に係る測距装置100における構成要素の配置例を示す説明図である。
【0075】
図5に示すように、測距装置100は、実装基板101における同一平面上に光源装置110と撮像装置120とが搭載される。なお、
図5では、制御部130の図示を省略している。撮像装置120は、複数の撮像素子124が配列されたイメージセンサ122と、画像処理部123とを有し、イメージセンサ122は、画像処理部123上に積層して設けられる。
【0076】
また、光源装置110は、発光部32を備えるチップ3と、駆動回路22を備える半導体基板2とを有し、チップ3は半導体基板2上にフリップチップ実装される。このように、半導体基板2およびチップ3は、積層構造となっている。
【0077】
このため、光源装置110は、例えば、半導体基板2およびチップ3が同一平面上に並べて搭載される場合に比べて、実装基板101における専有面積を小さくすることで小型化が可能となる。
【0078】
なお、光源装置110は、温度センサが設けられた半導体基板上に発光部32を備えるチップ3が積層されてフリップチップ実装され、実装基板101上における半導体基板2と同一平面上に、駆動回路22を備える半導体基板2が搭載される構成であってもよい。
【0079】
かかる構成の場合、温度センサは、発光部32近傍の温度を検出する。駆動回路22は、温度センサによって検出される発光部32近傍の温度に応じて、発光部32を駆動制御する。これにより、駆動回路22は、温度の変化によって生じる発光部32の発光特性の変動を抑制することができる。
【0080】
また、半導体基板2とチップ3とは、前述したAuの多孔質金属層41を含むバンプ4によって接続される。これにより、半導体基板2とチップ3とは、比較的低温低圧の条件の下で接続することができるので、熱によるダメージを低減することができる。
【0081】
また、半導体基板2がシリコンであり、チップ3にGaAsの機材が用いられている場合、チップ3が発熱して半導体基板2とは異なる熱膨張率で膨張しても、多孔質金属層41が弾性変形するので、バンプ4でオープン故障が発生することを抑制することができる。
【0082】
また、光源装置110は、半導体基板2上にチップ3が積層されてAuの多孔質金属層41を含むバンプ4によってフリップチップ実装される。かかる構成によれば、半導体基板2およびチップ3が同一平面上に並べて搭載される場合に比べて、発光の高速化を図ることができる。これにより、測距部131は、測距精度を向上させることが可能となる。次に、かかる発光の高速化および測距精度の向上について、
図6および
図7を参照して説明する。
【0083】
図6は、実施形態に係る駆動回路22の等価モデルを示す回路図である。
図7は、実施形態に係る発光素子321に流れる電流の立ち上がり時間および立ち下がり時間の説明図である。
図6に示すように、駆動回路22は、発光素子321に電流を流して発光させる場合、活性抵抗Rとなる発光素子321に大電流の発光電流I1を流す。
【0084】
このとき、駆動回路22と発光部32とを接続するバンプ4の寄生容量Cにも分流電流I2が流れ、寄生インダクタンスLにも駆動電流I3が流れるが、寄生インダクタンスLには、逆起電流I4が流れる。
【0085】
このため、
図7に一点鎖線で示すように、発光素子321に流れる電流は、瞬時に立ち上がり、瞬時に立ち下がることが理想的であるが、実際には太実線で示すように、逆起電流I4の影響により、大電流駆動時に発光電流I1が鈍る。
【0086】
これにより、発光素子321に流れる発光電流I1の立ち上がり時間(ライズタイム:Tr)および立ち下がり時間(フォールタイム:Tf)が長くなる。このライズタイムTrおよびフォールタイムTfは、駆動回路22と発光部32とを接続する接続線が長くなるほど長くなる。
【0087】
このため、半導体基板2およびチップ3が同一平面上に並べて搭載される光源装置の場合、半導体基板2内の駆動回路22とチップ3内の発光部32とが長いボンディングワイヤによって接続されるため、ライズタイムTrおよびフォールタイムTfが長くなる。
【0088】
これに対して、実施形態に係る光源装置110は、駆動回路22と発光部32とがボンディングワイヤよりも短いバンプ4によって接続されるので、ライズタイムTrおよびフォールタイムTfが長くなることを抑制することができる。したがって、光源装置110は、半導体基板2およびチップ3が同一平面上に並べて搭載される光源装置よりも発光の高速化が可能となる。
【0089】
また、測距部131は、半導体基板2およびチップ3が同一平面上に並べて搭載される光源装置の場合、ライズタイムTrが長くなり、測距精度が低下することがある。例えば、測距装置100がToFセンサの場合、測距部131は、発光素子321の発光輝度がピークになったタイミングからイメージセンサ122による受光輝度がピークになるタイミングまでの時間に基づいて被写体Sまでの距離を測定する。
【0090】
このとき、半導体基板2およびチップ3が同一平面上に並べて搭載される光源装置は、前述したように、ライズタイムTrが長くなる。これに伴って発光素子321の発光輝度が緩やかに高くなるため、イメージセンサ122による受光輝度も緩やかに上昇する。
【0091】
このため、測距部131は、イメージセンサ122による受光輝度が本来のピークに達する前に、受光輝度がピークに達したと誤判定し、被写体Sまでの距離を実際の距離よりも短く測定してしまい測距精度が低下する。
【0092】
これに対して、実施形態に係る光源装置110は、発光の高速化が可能であるため、発光素子321の発光輝度を俊敏に上昇させることができる。このため、イメージセンサ122による受光輝度も俊敏に上昇する。
【0093】
したがって、測距部131は、イメージセンサ122による受光輝度が本来のピークに達するタイミングをより正確に判定することにより、被写体Sまでの距離を正しく測定することができるので、測距精度を向上させることができる。
【0094】
次に、
図8を参照し、光源装置110の断面構造の一例について説明する。
図8は、実施形態に係る光源装置110の断面構造の説明図である。
図8に示すように、光源装置110は、駆動回路22(
図1参照)が形成されたSiの半導体基板2上に、チップ3が積層されてフリップチップ実装された構造である。
【0095】
チップ3は、例えば、GaAs基板141の表面(
図8では下面)に複数の発光素子321が形成されている。複数の発光素子321のそれぞれは、GaAs基板141側がカソードであり、半導体基板2側がアノードであり、カソード同士が接続される。なお、発光素子321のそれぞれは、GaAs基板141側がアノードとなり、半導体基板2側がカソードとなってもよい。この場合、アノード同士が接続される。
【0096】
また、複数の発光素子321のそれぞれは、アノード電極142およびカソード電極143が同一平面上に並べて設けられる。複数の発光素子321は、アノード電極142からカソード電極143へ電流が流れることで発光し、
図8に白抜き矢印で示すように、GaAs基板141の表面(下面)から裏面(上面)へ向かう方向へレーザ光を出射する。
【0097】
半導体基板2は、チップ3と面する側の表面に、複数の接続パッド150が設けられる。複数の接続パッド150は、積層されるチップのアノード電極142およびカソード電極143と対向する位置にそれぞれ設けられる。
【0098】
接続パッド150と、アノード電極142およびカソード電極143とは、Auの多孔質金属層41を含むバンプ4によって接続される。また、カソード電極143と接続される接続パッド150は、配線151を介してグランド(図示略)と接続される。
【0099】
また、各アノード電極142と接続される接続パッド150には、それぞれ、スイッチ154の一端と接続パッド150との間に設けられた、配線152およびパッド153を介して、スイッチ154の一端が接続される。スイッチ154の他端には、発光電流I1を供給する電流源に接続される。なお、電極142がカソード電極となり、電極143がアノード電極となる場合、スイッチ154は、カソードとなる各電極に接続される。
【0100】
各スイッチ154は、駆動回路22によって、それぞれ個別に制御される。これにより、駆動回路22は、各発光素子321を、それぞれ個別に独立制御することができる。その結果、光源装置110は、測距装置100がSTL方式によって測距を行う場合に、様々な種類のドットパターンによるパターン光を被写体Sに照射することができる。なお、各スイッチ154は、複数の発光素子321で共有して、いくつかの発光素子321のグループ毎に制御してもよい。
【0101】
次に、
図9A~
図9Cを参照し、光源装置110の組み立て工程について説明する。
図9A~
図9Cは、実施形態に係る光源装置110の組み立て工程の説明図である。ここでは、チップ3と半導体基板2との接続工程について説明する。
【0102】
また、ここでは、
図9A~
図9Cに示す構成要素のうち、
図8に示す構成要素と同一の構成については、
図8に示す符号と同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。なお、ここでは、発光素子321のアノード電極142側にバンプ4a(
図3D参照)が設けられている場合について説明するが、半導体基板2の接続パッド150側にバンプ4(
図2D参照)が設けられていてもよい。
【0103】
図9Aに示すように、バンプ4aは、発光素子321のアノード電極142側、つまり、チップ3側に設けられる場合、例えば、Auを含む多孔質金属層41とアノード電極142との間にAuの金属膜43を備える。
【0104】
金属膜43は、バンプ4aの高さに対する膜厚の比率が10%未満、より好ましくは5%未満の厚さである。例えば、金属膜43は、高さ(厚さ)が10μmの多孔質金属層41が形成される場合、膜厚が0.2μmとなるように形成される。
【0105】
また、半導体基板2の接続パッド150側にバンプ4(
図2D参照)が設けられる場合も同様に、金属膜42は、バンプ4の高さに対する膜厚の比率が10%未満、より好ましくは5%未満の厚となるように形成される。例えば、金属膜42は、高さ(厚さ)が10μmの多孔質金属層41が形成される場合、膜厚が0.2μmとなるように形成される。
【0106】
かかる金属膜43は、チップ3にバンプ4aを形成するためのパターニングが施されたフォトレジスト層52(
図3B参照)の微細な構造を強固にするために形成される。これにより、バンプ4aは、高さを略10μmとする場合、ピッチを20μm以下にするファインピッチ化が可能となる。
【0107】
また、ここでは、半導体基板2側の接続パッド150の成分が多孔質金属層41と同じAuであるものとして説明するが、接続パッド150の成分がAu以外の場合、接続パッド150の表面に多孔質金属層41の成分と同じAuの膜を形成しておく。これにより、接続パッド150と多孔質金属層41との接続強度を高めることができる。
【0108】
かかるチップ3と半導体基板2とを接続する場合には、
図9Aに示すように、まず、半導体基板2上にチップ3を配置し、半導体基板2上面に設けられる接続パッド150と、チップ3側のアノード電極142に設けられるバンプ4aとの位置合わせを行う。
【0109】
続いて、
図9Bに示すように、チップ3を降下させてバンプ4aの下面を接続パッド150の上面に当接させて所定の圧力を掛ける。その後、100℃程度の比較的低い温度に加熱し、バンプ4aにおけるAuの多孔質金属層41を溶融させずに、バンプ4aによって接続パッド150とアノード電極142とを接続させる。
【0110】
このとき、多孔質金属層41は、過熱される温度および掛けられる圧力によって厚さ方向に若干つぶされて高さ(厚さ)が小さくなる。その結果、バンプ4aによってチップ3と半導体基板2とが接続された後の状態では、金属膜43は、バンプ4aの高さに対する膜厚の比率が20%未満となる。
【0111】
また、半導体基板2の接続パッド150側にバンプ4(
図2D参照)が設けられる場合も同様に、バンプ4によってチップ3と半導体基板2とが接続された後の状態では、金属膜42は、バンプ4の高さに対する膜厚の比率が20%未満となる。
【0112】
ここで、チップ3に設けられる発光素子321の側面および発光素子321のアノードに設けられるアノード電極142の側面および下面の周縁部は、絶縁膜144によって被覆されている。かかる絶縁膜144は、例えば、SiO2(酸化シリコン)およびSiN(窒化シリコン)の少なくとも一つを含んでいてよい。
【0113】
また、半導体基板2の上面に設けられる接続パッド150の側面および上面の周縁部は、絶縁膜155によって被覆されている。かかる絶縁膜155は、例えば、SiO2およびSiNの少なくとも一つを含んでいてよい。接続パッド150の上面における絶縁膜155によって被覆されていない部分、換言すれば、絶縁膜155における上部開口部の径は、バンプ4aの径よりも大きく形成される。
【0114】
これにより、接続パッド150の位置とバンプ4aの位置とに若干のズレが生じていても、バンプ4aによって接続パッド150と発光素子321のアノード電極142とを確実に接続することができる。
【0115】
その後、
図9Cに示すように、半導体基板2とチップ3との間、および半導体基板2とチップ3との接続部の間に、絶縁性樹脂102を充填することにより、隣接するバンプ4a間を絶縁して光源装置110の組み立てが完了する。
【0116】
これにより、光源装置110は、隣接するバンプ4a同士が絶縁性樹脂102によって絶縁されるので、バンプ4a間のショート故障を防止することができると共に、衝撃によるバンプ4aのオープン故障を防止することができる。
【0117】
[3.効果]
電子機器1は、半導体基板2と、チップ3と、接続部(バンプ4)とを有する。チップ3は、熱膨張率が半導体基板2とは異なる。バンプ4は、半導体基板2およびチップ3の対向する主面に設けられた接続パッド21,31同士を接続する多孔質金属層41を含む。
【0118】
これにより、電子機器1は、バルク状の金属製のバンプによって半導体基板2およびチップ3の接続パッド21,31同士を接続する場合に比べて、低温低圧の処理で半導体基板2およびチップ3の接続パッド21,31同士を接続することができる。したがって、電子機器1は、高温高圧によるダメージを低減することができるので、信頼性を向上させることができる。
【0119】
また、チップ3は、熱膨張率が半導体基板2とは0.1ppm/℃以上異なる。これにより、電子機器1は、例えば、チップ3が発熱して半導体基板2とは異なる熱膨張率で膨張しても、多孔質金属層41が弾性変形するので、バンプ4でオープン故障が発生することを抑制することができる。
【0120】
また、チップ3は、半導体レーザであり、半導体基板2は、半導体レーザを駆動する駆動回路22を有する。これにより、電子機器1は、半導体レーザの発光に伴う発熱により、チップ3が半導体基板2とは異なる熱膨張率で膨張しても、多孔質金属層41が弾性変形するので、バンプ4でオープン故障が発生することを抑制することができる。
【0121】
また、チップ3は、半導体レーザである。半導体基板は、温度センサを有する。これにより、半導体レーザを駆動する駆動回路22は、温度センサによって検出される発光部32近傍の温度に応じて発光部32を駆動制御することで、温度の変化によって生じる発光部32の発光特性の変動を抑制することができる。
【0122】
また、半導体レーザは、レーザ光を出射する2次元に配列された複数の発光素子321を有する。複数の発光素子321は、アノード電極142およびカソード電極143が同一平面上に設けられている。これにより、半導体レーザは、駆動回路22との接続を容易に行うことができる。
【0123】
また、半導体基板2は、スイッチ154を有する。スイッチ154は、アノード電極142またはカソード電極143と接続されている。これにより、駆動回路22は、測距装置100がSTL方式によって測距を行う場合に、各スイッチ154を個別に制御することによって、様々な種類のドットパターンによるパターン光を被写体Sに照射することができる。
【0124】
また、スイッチ154は、複数の発光素子321毎に接続されている。発光素子321は、グループ毎に発光制御される。これにより、測距装置100は、発光素子321のグループ毎に発光パターンを変化させることによって、様々な種類のパターン光を被写体Sに照射することができる。
【0125】
また、スイッチ154は、発光素子321毎に接続されている。発光素子321は、個別に発光制御される。これにより、測距装置100は、任意の発光パターンのパターン光を被写体Sに照射することができる。
【0126】
また、発光素子321は、共通の基板上に形成されている。これにより、半導体レーザは、複数の発光素子321によって1つのアノード電極142またはカソード電極143を共用することができる。
【0127】
また、各アノード電極142または各カソード電極143と各スイッチ154とは、接続部(バンプ4)によって接続される。これにより、光源装置110は、バルク状の金属製のバンプによって半導体基板2およびチップ3を接続する場合に比べて、低温低圧の処理で半導体基板2およびチップ3を接続することができる。したがって、光源装置110は、高温高圧によるダメージを低減することができるので、信頼性を向上させることができる。
【0128】
発光素子321は、VCSEL構造を有する。これにより、光源装置110は、消費電力を低減することができ、大量生産が可能となる。
【0129】
また、半導体基板2とチップ3との間および接続部(バンプ4)の間には、絶縁性樹脂102が充填されている。これにより、光源装置110は、隣接するバンプ4同士が絶縁性樹脂102によって絶縁されるので、バンプ4間のショート故障を防止することができると共に、衝撃によるバンプ4のオープン故障を防止することができる。
【0130】
また、多孔質金属層41は、粒子径が0.005μm~1.0μmの金属粒子を含む。かかる多孔質金属層41は、金属粒子のサイズ効果により、バルク状の金属の融点よりも低い温度で金属接合が可能である。これにより、電子機器1は、半導体基板2およびチップ3の接続パッド21,31同士が比較的低温で金属接合可能な多孔質金属層41によって接続されるので、熱によるダメージが低減されることで信頼性を向上させることができる。
【0131】
また、バンプ4は、多孔質金属層41と半導体基板2側の接続パッド21との間、および多孔質金属層41とチップ3側の接続パッド31との間のうち、少なくともいずれか一方に多孔質金属層41と同一成分の金属膜42,43を有する。
【0132】
これにより、接続パッド21,31と多孔質金属層41との成分が異なる場合であっても、金属膜42,43と多孔質金属層41とによって、接続パッド21,31間を強固に接続することができる。
【0133】
また、金属膜42,43は、バンプ4,4aを形成する工程で使用されるパターニング後のフォトレジスト層51,52の表面を硬化させるために形成された薄膜である。これにより、微細な構造のバンプ4,4aを形成することができるので、バンプ4,4aのファインピッチ化を図ることができる。
【0134】
また、金属膜42は、バンプ4における半導体基板2の主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%未満、好ましくは5%未満である。また、金属膜43は、バンプ4aにおけるチップ3の主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%未満、好ましくは5%未満である。
【0135】
これにより、フォトレジスト層51,52にパターニングされるバンプ4,4a形成用の貫通孔が金属膜42,43の形成によって狭くなることを防止することができる。その結果、フォトレジスト層51,52にパターニングされる貫通孔に、バンプ4,4aの材料となる金属粒子を含むペースト40を適切に充填することができる。
【0136】
また、半導体基板2およびチップ3がバンプ4とバンプ4aとによって接続された電子機器の場合、金属膜42,43は、バンプ4,4aの積層体における半導体基板2およびチップ3の主面と直交する方向の厚さの半分に対する膜厚の比率が10%未満、好ましくは5%未満である。
【0137】
これにより、フォトレジスト層51,52にパターニングされるバンプ4,4a形成用の貫通孔が金属膜42,43の形成によって狭くなることを防止することができる。その結果、フォトレジスト層51,52にパターニングされる貫通孔に、バンプ4,4aの材料となる金属粒子を含むペースト40を適切に充填することができる。
【0138】
また、電子機器1は、半導体基板2と、バンプ4とを有する。バンプ4は、半導体基板2の主面に設けられた接続パッド21の表面に順次積層される金属膜42および多孔質金属層41を含む。そして、金属膜42は、バンプ4における半導体基板2の主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%未満である。
【0139】
これにより、半導体基板2は、バンプ4のファインピッチ化が可能になると共に、バルク状の金属製バンプを用いる場合に比べて低温低圧の処理により、熱膨張率が半導体基板2とは異なるチップ3のフリップチップ実装が可能になる。
【0140】
また、半導体基板2は、たとえば、フリップチップ実装される半導体レーザを駆動する駆動回路22を有する。駆動回路22は、半導体レーザが備える複数の発光素子321における各アノード電極142と電流源との間を接続する各スイッチ154を制御して各発光素子を独立制御する。これにより、駆動回路22は、測距装置100がSTL方式によって測距を行う場合に、光源装置110によって様々な種類のドットパターンによるパターン光を被写体Sに照射させることができる。
【0141】
また、電子機器1は、チップ3と、バンプ4aとを有する。バンプ4aは、チップ3の主面に設けられた接続パッド31の表面に順次積層される金属膜43および多孔質金属層41を含む。そして、金属膜43は、バンプ4aにおけるチップ3の主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%以下である。
【0142】
これにより、チップ3は、バンプ4aのファインピッチ化が可能になると共に、バルク状の金属製バンプを用いる場合に比べて低温低圧の処理により、熱膨張率がチップ3とは異なる半導体基板2へのフリップチップ実装が可能となる。
【0143】
また、チップ3は、半導体レーザである。半導体レーザは、レーザ光を出射する2次元に配列された複数の発光素子321を有する。複数の発光素子321は、アノード電極142およびカソード電極143が同一平面上に設けられている。これにより、半導体レーザは、駆動回路22との接続を容易に行うことができる。
【0144】
また、チップ3は、駆動回路22上にバンプ4を介して接合することができるため、実装基板101の面積を小さくすることができる。
【0145】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0146】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
半導体基板と、
熱膨張率が前記半導体基板とは異なるチップと、
前記半導体基板および前記チップの対向する主面に設けられた接続パッド同士を接続する多孔質金属層を含む接続部と
を有する電子機器。
(2)
前記チップは、
熱膨張率が前記半導体基板とは0.1ppm/℃以上異なる
前記(1)に記載の電子機器。
(3)
前記チップは、
半導体レーザであり、
前記半導体基板は、
前記半導体レーザを駆動する駆動回路を有する
前記(1)または(2)に記載の電子機器。
(4)
前記チップは、
半導体レーザであり、
前記半導体基板は、
温度センサを有する
前記(1)から(3)に記載の電子機器。
(5)
前記半導体レーザは、
レーザ光を出射する2次元に配列された複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子のそれぞれは、
アノード電極およびカソード電極が同一平面上に設けられている
前記(3)または(4)に記載の電子機器。
(6)
前記半導体基板は、
スイッチを有し、
前記スイッチは、
前記アノード電極または前記カソード電極と接続されている
前記(5)に記載の電子機器。
(7)
前記スイッチは、
複数の前記発光素子のグループ毎に接続されており、
前記発光素子は、
前記グループ毎に発光制御される
前記(6)に記載の電子機器。
(8)
前記スイッチは、
前記発光素子毎に接続されており、
前記発光素子は、
個別に発光制御される
前記(6)に記載の電子機器。
(9)
各前記アノード電極または各前記カソード電極と各前記スイッチとは、前記接続部によって接続される
前記(6)~(8)のいずれか一つに記載の電子機器。
(10)
前記発光素子は、
共通の基板上に形成されている
前記(5)~(9)のいずれか一つに記載の電子機器。
(11)
前記発光素子は、
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)構造を有する
前記(5)~(10)のいずれか一つに記載の電子機器。
(12)
前記半導体基板と前記チップとの間および前記接続部の間には、絶縁性樹脂が充填されている
前記(1)~(11)のいずれか一つに記載の電子機器。
(13)
前記多孔質金属層は、
粒子径が0.005μm~1.0μmの金属粒子を含む、前記(1)~(12)のいずれかに記載の電子機器。
(14)
前記接続部は、
前記多孔質金属層と前記半導体基板側の接続パッドとの間、および前記多孔質金属層と前記チップ側の接続パッドとの間のうち、少なくともいずれか一方に前記多孔質金属層と同一成分の金属膜を有する、前記(1)~(13)のいずれかに記載の電子機器。
(15)
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%以下である、前記(14)に記載の電子機器。
(16)
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が5%未満である、前記(15)に記載の電子機器。
(17)
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さの半分に対する膜厚の比率が10%以下である、前記(14)に記載の電子機器。
(18)
前記金属膜は、
前記接続部における前記主面と直交する方向の厚さの半分に対する膜厚の比率が5%未満である、前記(17)に記載の電子機器。
(19)
前記多孔質金属層および前記接続部における前記主面と直交する方向の高さの比率は、90%よりも大きい、前記(1)~(18)のいずれかに記載の電子機器。
(20)
半導体基板と、
前記半導体基板の主面に設けられた接続パッドの表面に順次積層される金属膜および多孔質金属層を含むバンプと
を有し、
前記金属膜は、
前記バンプにおける前記主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%以下である
電子機器。
(21)
前記半導体基板は、
フリップチップ実装される半導体レーザを駆動する駆動回路を有し、
前記駆動回路は、
前記半導体レーザが備える複数の各発光素子と電流源との間を接続する各スイッチを制御して各前記発光素子を独立制御する
前記(20)に記載の電子機器。
(22)
チップと、
前記チップの主面に設けられた接続パッドの表面に順次積層される金属膜および多孔質金属層を含むバンプと
を有し、
前記金属膜は、
前記バンプにおける前記主面と直交する方向の厚さに対する膜厚の比率が10%以下である、電子機器。
(23)
前記チップは、
半導体レーザであり、
前記半導体レーザは、
レーザ光を出射する2次元に配列された複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子のそれぞれは、
アノード電極およびカソード電極が同一平面上に設けられている
前記(22)に記載の電子機器。
【0147】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。以前に説明した少なくとも1つの例示や図とともに上述した側面および特徴は、他の例示と組み合わせることが可能であり、かかる他の例示の好ましい特徴と置き換えたり、かかる他の例示の好ましい特徴を付加的に導入したりしてもよい。たとえば、上述した構造的および/または機能的な詳細は、(19)~(23)の記載のように構成された電子機器へ同様に適用されてよい。