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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】分散型フィードバックレーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/12 20210101AFI20240625BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20240625BHJP
   H01S 5/0234 20210101ALI20240625BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20240625BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01S5/12
H01S5/022
H01S5/0234
H01S5/40
H01S5/343
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021557000
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020057875
(87)【国際公開番号】W WO2020193433
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】62/822,635
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517112498
【氏名又は名称】ロックリー フォトニクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Rockley Photonics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アルアルシ マジン
(72)【発明者】
【氏名】マスダ ケビン
(72)【発明者】
【氏名】スリニバサン プラディープ
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-329927(JP,A)
【文献】特開2002-134842(JP,A)
【文献】特開2015-088626(JP,A)
【文献】特開2006-108370(JP,A)
【文献】特表2019-500753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0168821(US,A1)
【文献】特開2011-049346(JP,A)
【文献】特開平11-163464(JP,A)
【文献】特開平08-264897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンフォトニック集積回路(Si PIC)に実装される分散フィードバック(DFB)レーザであって、前記DFBレーザの第1の端部から前記DFBレーザの第2の端部まで延びる長手方向の長さを有し、
前記DFBレーザは、エピスタックを備え、
前記エピスタックは、
1又は複数の活性媒質層と、
前記DFBレーザの第2の端部から延在し、前記DFBレーザの第1の端部まで延在しないように、前記DFBレーザの長手方向の長さに沿って部分的にのみ延在する部分格子と、
前記DFBレーザの前記第1の端部に配置される高反射媒体と、
前記DFBレーザの前記第2の端部に配置される背面ファセットとを有する層を有し、
電力を消費する冷却装置を設けずに動作可能であって、
前記部分格子によって定められるレーザ波長は、エピスタックの材料利得ピークより短い波長を有することを特徴とする分散フィードバックレーザ。
【請求項2】
請求項1に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記高反射媒体は、高反射率(HR)バックファセットである分散フィードバックレーザ。
【請求項3】
請求項1に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記高反射媒体は、広帯域グレーティングミラーである分散フィードバックレーザ。
【請求項4】
請求項3に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記広帯域グレーティングミラーは、チャープ格子である分散フィードバックレーザ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の分散フィードバックレーザであって、
前記エピスタックは、PIC上に取り付けられたフリップチップである分散フィードバックレーザ。
【請求項6】
請求項5に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記Si PICは、前記エピスタックの少なくとも一つの前記活性媒質層と整列する1又は複数のシリコン導波路を含む分散フィードバックレーザ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の分散フィードバックレーザであって、
前記エピスタックの活性媒質層は、アルミニウムベースのInPエピタキシーから形成される分散フィードバックレーザ。
【請求項8】
請求項7に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記エピスタックは、Al(x)GaIn(y)Asで形成された活性層を含む分散フィードバックレーザ。
【請求項9】
請求項8に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記エピスタックは、PIN接合を含む分散フィードバックレーザ。
【請求項10】
請求項9に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記エピスタックの活性媒質層はドープされておらず、PIN接合の固有部分を形成する分散フィードバックレーザ。
【請求項11】
請求項10に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記部分格子は、前記活性媒質層の片側に配置され、
前記エピスタックは、前記活性媒質層の前記部分格子と同じ側にPドープ層を含む分散フィードバックレーザ。
【請求項12】
請求項11に記載の分散フィードバックレーザであって、
前記エピスタックは、前記活性媒質層の前記部分格子から反対側にNドープ層を含む分散フィードバックレーザ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一つに記載の分散フィードバックレーザを配列したDFBレーザアレイ。
【請求項14】
請求項13に記載のDBFレーザアレイであって、
前記アレイのDBFレーザの各々は、他のDFBレーザによって形成される他のチャネルの波長と異なる波長を有する別のチャネルを提供するDFBレーザアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態の1又は複数の態様は、分散フィードバック(DFB)レーザ、より具体的には、シリコンフォトニック集積回路(Si PIC)に取り付けられたDFBレーザに関する。
【背景技術】
【0002】
DFBレーザは、空洞内に光フィードバックを有し、それによってレーザのレーザ波長を選択するように作用する回折格子などの周期的に作成された要素を含む共振器空洞を含むレーザである。図1に示すようなDFBレーザの典型的な従来技術の例では、共振器空洞は、一端に後面及び他端に前面を有する周期的な格子から構成される。レーザが特定のモードでのみ発生するようにするために、二つのファセット間のある点に1/4波長シフト(QWS)又はアイソレータが適用される。ファセットで大きな電力損失が発生するため、通常、前面と背面の両方のファセットは反射防止コーティングで覆われる。一般に、多くの場合、アイソレータ要素が存在するため、DFBレーザは安定性のためにかなりの量の光学部品を必要とする可能性がある。また、安定性と信頼性を向上させながら、DFBレーザを簡素化したいという要望がある。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の実施形態は、第1の態様の提供によって前述の問題の解決を目的としており、第1の態様は、シリコンフォトニック集積回路(Si PIC)に実装される分散フィードバックレーザ(DFB)であって、DFBレーザの第1の端部からDFBレーザの第2の端部まで延びる長手方向の長さを有し、DFBレーザは、エピスタックを備え、エピスタックは、1又は複数の活性媒質層と、DFBレーザの第2の端部から延在し、DFBレーザの第1の端部まで延在しないように、DFBレーザの長手方向の長さに沿って部分的にのみ延在する部分格子と、DFBレーザの第1の端部に位置する高反射媒体と、DFBレーザの第2の端部に位置する背面ファセットを有する層を有する。
【0004】
本発明のある実施形態は、光アイソレータ及びそのようなアイソレータに関連する任意の追加の光学系の必要性を排除する。これによって、必要な部品が少なくなるため、製品の価格が低減する。必要なパッケージを小さくし、従って、本発明はパッケージ効率をより高くする。
【0005】
分散型フィードバックレーザは、以下の任意の特徴のいずれか一つ、又はそれらが互換性のある範囲で任意の組み合わせを有してもよい。
【0006】
本発明の1又は複数の実施形態では、DFBレーザは、いかなる形態の冷却装置も含まない。有利なことに、これは、請求範囲に記載のレーザの特徴の組み合わせが、温度冷却を必要とせずに安定して信頼できる方法で機能できるレーザをもたらすためである。つまり、TEC(熱電冷却器又はペルチェ素子)は必要ない。結果として得られる非冷却レーザは、使用中にTECによって消費される電力を排除できるため、ランニングコストを低減する。
【0007】
1又は複数の実施形態では、高反射媒体は、高反射(HR)バックファセットである。
【0008】
1又は複数の実施形態では、高反射媒体は、広帯域グレーティングミラーである。
【0009】
任意であるが、広帯域グレーティングミラーは、チャープ格子でもよい。
【0010】
エピスタックは、DFBレーザの利得特性及び帯域幅を制御する。ある実施形態では、利得帯域幅は、少なくとも80nmのFWHMを有する。ある実施形態では、利得帯域幅は、少なくとも40nmのFWHMを有する。
【0011】
1又は複数の実施形態では、部分格子によって定められるレーザ波長は、エピスタックの材料利得ピークより短い波長を有する。
【0012】
このようにして、「青方離調」として知られる効果を利用できる。これは、レーザのレーザ発振波長がレーザの材料利得ピークの青色側(つまり、短波長側)に位置する。この青方離調によって、後方反射耐性が高くなる。
【0013】
1又は複数の実施形態では、エピスタックは、Si PIC上に取り付けられたフリップチップである。
【0014】
1又は複数の実施形態では、Si PICは、エピスタックの少なくとも一つの活性媒質層と同調する1又は複数のシリコン導波路を含む。
【0015】
ある実施形態では、エピスタックの活性媒質層は、アルミニウムベースのInPエピタキシーから形成される。このようにして、アルミニウムベースのInPエピタキシーがレーザの利得媒質を形成する。この材料システムの選択によって、レーザは冷却せずに動作できる。
【0016】
任意であるが、エピスタックは、Al(x)GaIn(y)Asで形成された活性層を含んでもよい。
【0017】
1又は複数の実施形態では、エピスタックはPIN接合を含む。
【0018】
1又は複数の実施形態では、エピスタックの活性媒質層はドープされておらず、PIN接合の固有部分を形成する。
【0019】
1又は複数の実施形態では、部分格子は活性媒質層の片側に配置され、エピスタックは活性媒質層の部分格子と同じ側にPドープ層を含む。
【0020】
1又は複数の実施形態では、エピスタックは、活性媒質層の部分格子から反対側にNドープ層を含む。
【0021】
ある実施形態では、格子は利得媒質の上に配置される。他の実施形態では、格子は利得媒質の下に配置される。いずれにせよ、グレーティングがエッチングされた場所ではレーザ発振は発生しない。
【0022】
ある実施形態では、利得媒質(すなわち、活性領域)及び格子は、単一のエピスタックの一部である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来技術の一部を構成しない既知のDFBレーザの例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態のDFBレーザの概略図である。
図3】本発明の追加の実施形態による代替のDFBレーザの概略図である。
図4】青方離調の概念を描いたグラフである。
図5】本発明のある実施形態のDFBレーザアレイの概略図である。
図6】本発明の実施形態のDFBレーザのエピスタックの例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴及び利点は、明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を参照して認識され、理解されるであろう。
【0025】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、本発明に従って提供されるDFBレーザの例示的な実施形態の説明を意図しており、本発明が構成又は利用される唯一の形態を表すことを意図しない。明細書は、例示された実施形態に関連して本発明の特徴を説明する。しかし、同じ又は同等の機能及び構造が、本発明の思想及び範囲内に包含されることが意図される異なる実施形態によって達成され得ることが理解されるべきである。本明細書の他の場所で示されているように、同様の参照番号は、同様の要素又は特徴を示すことを意図している。
【0026】
以下に、図2及び図6を参照して、本発明によるDFBレーザの第1の実施形態を説明する。DFBレーザは、DFBレーザ10の第1の端部からDFBレーザ10の第2の端部まで延在する長手方向の長さを有する共振器空洞(レーザ空洞)から形成される。部分格子21は、DFBレーザの一部に沿って、すなわち、第1の端部11から始まり、DFBレーザの共振器空洞の長手方向の長さの一部に沿って延在する。つまり、部分格子はレーザの第2の端部までは延在しない。代わりに、格子を含まない第1の端部10に隣接するレーザの部分が延在する。DFBレーザ10の共振器キャビティの第1の端部に、高反射コーティングが配置される。反射防止(AR)コーティングは、DFBレーザの共振器キャビティの第2の端部を形成する部分格子の端に設けられる。ARコーティングは、ファセットで発生する反射の量を低減し、それによってレーザキャビティからの出力量を増加するために、この技術分野で知られている任意のコーティングから形成できる。DFBレーザ1の共振器空洞の第1の端部10に、共振器空洞の「格子なし」領域に隣接して、高反射(HR)コーティングが設けられる。
【0027】
DFBレーザ1が製造された構造は、図6を参照して、よりよく理解できる。図6は、DFBレーザのエピスタック20を示す。特に、エピスタックは、1又は複数の活性媒質層20Dを含む。エピスタックは、アルミニウムベースのInPエピタキシーを含む層から作製してもよい。アルミニウムベースのInPエピタキシーは、他の材料と比べて、特に高温動作で温度変化の影響を受けにくいという利点があり、非冷却システムに特に魅力的である。活性層は、量子井戸構造を含んでもよく、Al(x)GaIn(y)Asなどの材料から製造されてもよい。典型的には、エピスタック20の層は、活性層が接合の固有領域に配置されるPIN接合を形成する。図6の実施形態では、格子21は、pドープ領域に配置され、GaIn(x)As(y)Pなどの材料で製造できる。格子21は、エピスタック内の活性層の上又は下に配置できる。この場合、「上」は、活性媒質層20Dと比べて、エピスタック積層プロセスの後のステップで積層された層を指し、「下」は、、アクティブレイヤー20D積層プロセスの前の積層ステップで積層された層を指す。
【0028】
図6に示す実施形態では、部分格子21を含む共振器空洞の部分の拡大されたもののみが図示されることに留意されたい。
【0029】
図6に示すエピスタックは、シリコンなどのNドーパントでドープされたInPなどの材料から形成され得る初期のNドープエピ層20Aを含む。積層の順序によって以下のように続く:シリコンなどのNドーパントでドープされたInPなどの材料から形成される中間Nドープ層20B、シリコンなどのN型ドーパントでドープされたAl(x)GaIn(y)Asなどの材料で形成された追加の中間Nドープ層20C。次に、活性媒質層20Dが続き、亜鉛などのP型ドーパントでドープされたAl(x)GaIn(y)Asなどの材料で形成された中間Pドープ層20Eが設けられる。活性媒質層に直接隣接する直接層20C及び20Eは、活性層と同じ材料を使用して意図的に製造されているが、ドープされている(一方、活性層20D自体はドープされていない)。次に、亜鉛などのP型ドーパントでドープされたInPなどの材料から形成された別のPドープ層20Fが配置される。次に、格子21が積層され、続いて、別のPドープ層20Gが積層され、このPドープ層20Gは、亜鉛がドープされたInPなどの材料から作製されてもよい。複数の層の目的は、格子不整合の影響が最小限に抑制されるように、最外層(InPなど)と活性媒質層(Al(x)GaIn(y)Asなど)の間の材料をゆっくりと順応することである。
【0030】
代替的な実施形態が図3に示され、同様の参照番号が、図2の実施形態にも見られる特徴を示すために使用される。図6の実施形態と同様に、部分格子21は、図6に示すようなエピスタック20の一部を形成してもよい。
【0031】
図3のDFBレーザ3は、共振器キャビティの第1の端部10のHRファセットが広帯域グレーティングミラー41に置き換えられる点で、図2のものと異なる。これにより、第2の端部11の背面ファセットがARコーティングされており、第1の端部10の広帯域グレーティング41がHRファセットとの相互作用を回避するので、アイソレータが設けられず、非常に正確な波長を有するDFBレーザをもたらす。つまり、共振器キャビティは、HRファセットの形成に通常含まれる製造切断によって導入される位相エラーの影響を受けない。
【0032】
図4は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに適用できる「青方離調」の原理を示す。この背景となる原理は、レーザのゲイン材料の利得ピークの青色側(つまり短波長側)にある(部分格子21によって決定される)レーザ波長を選択であり、この場合、活性媒質層20Dの材料によって決定される。常に材料利得ピークの短波長側にあるようにグレーティングを設計することによって、より小さな線幅増強係数を確保でき、これによって、DFBレーザは不要な後方反射効果に対してより堅牢になる。これにより、信頼性と安定性が高く、温度依存性の少ないレーザが得られる。
【0033】
図5にDFBレーザのアレイを示す。DFBレーザ51、52、53、54、55のそれぞれは、図2又は図3のDFBレーザの形態をとってもよい。DFBアレイは、単一のチップ57、この場合はInPチップから形成される。これは、シリコンフォトニック集積回路(Si PIC)にフリップチップマウントされている。シリコン導波路56は、各DFBレーザのそれぞれの出口導波路として機能するために、反転したDFBレーザに結合されるように配置される。通常、各レーザの部分格子は、アレイ内のレーザ毎に異なり、各DFBレーザは異なる波長を持つ異なるチャネルを提供する。パッシブアライメントが使用される。追加的又は代替的に、テーパを使用してもよく、導波路からDFBレーザにテーパを付してもよい。このようにして、結合効率を最大化し、ミスアライメントに対する感度を低下できる。
【0034】
本明細書では、分散型フィードバックレーザ(DFB)の例示的な実施形態を具体的に説明及び図示したが、多くの修正及び変形が当業者には明らかである。従って、本発明の原理に従って構成された分散フィードバックレーザ(DFB)は、本明細書に具体的に記載されている以外の形態でも具体化されてもよいことが理解されるべきである。また、本発明は、特許請求の範囲、及びその同等物においても定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6