(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】アッパー、及びアッパーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A43B 1/04 20220101AFI20240625BHJP
A43B 23/04 20060101ALI20240625BHJP
A43C 7/00 20060101ALI20240625BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20240625BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20240625BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20240625BHJP
D04B 15/22 20060101ALI20240625BHJP
D04B 7/06 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A43B1/04
A43B23/04
A43C7/00
D04B1/22
D04B1/14
D04B1/00 Z
D04B1/00 C
D04B15/22
D04B7/06
(21)【出願番号】P 2021564835
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2020062769
(87)【国際公開番号】W WO2020244884
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】102019000007821
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】597009471
【氏名又は名称】ロナティ エッセ.ピ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ロナティ,エットーレ
(72)【発明者】
【氏名】ロナティ,ファウスト
(72)【発明者】
【氏名】ロナティ,フランチェスコ
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124228(JP,A)
【文献】特許第6479689(JP,B2)
【文献】特表2017-522129(JP,A)
【文献】特開2016-198481(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163008(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/04-23/04
A43C 7/00
A43D
D04B 1/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編成されたアッパ
ーを製造するための半完成
品であって、
平編部
分及びパール編部
分を有しており、
前記平編部
分によって形成された面と前記パール編部
分によって形成された面との間の編成品内に形成された少なくとも1つの長手チャネ
ルが設けられており
、
前記少なくとも1つの長手チャネ
ルは、ひ
もを形成する細長い係合要
素、又はひもと係合するように構成されている補強要
素と係合可能
に構成されており、
前記少なくとも1つの長手チャネルでは、前記パール編部分の行方向の延長部分は一定であり、前記平編部分の行方向の延長部分では、編成品の外側に向かって前記少なくとも1つの長手チャネルの三次元の延長部分を作製するようにパール編の編目毎に平編の編目が複数ある、半完成品。
【請求項2】
前記少なくとも1つの長手チャネルは、編成品の少なくとも1つの編目に沿って延びている、請求項1に記載の半完成
品。
【請求項3】
前記少なくとも1つの長手チャネ
ルは、編成行
と平行に延びている、請求項1又は2に記載の半完成
品。
【請求項4】
管状要素
の形態である、請求項1~3のいずれか1つに記載の半完成
品。
【請求項5】
前記半完成
品 は、前記アッパ
ーの締付領
域を形成しており、
前記半完成
品は、前記締付領
域に対して反対側に配置された少なくとも1つの第1の長手チャネ
ル及び少なくとも1つの第2の長手チャネ
ルを有している、請求項1~4のいずれか1つに記載の半完成
品。
【請求項6】
前記少なくとも1つの長手チャネ
ルは、前記締付領
域が延びている方向
と垂直な延長方
向に延びている、請求
項5に記載の半完成
品。
【請求項7】
前記補強要
素は、ひ
ものための係合ルー
プに関連付けられている、請求項1~6のいずれか1つに記載の半完成
品。
【請求項8】
編成されたアッパ
ーを製造するための半完成
品の製造方法であって、
平編部
分及びパール編部
分を有する半完成
品を作製する工程を有し、
前記平編部
分によって形成された面と前記パール編部
分によって形成された面との間の編成品内に形成された少なくとも1つの長手チャネ
ルを作製する工程を有
し、
前記少なくとも1つの長手チャネルは、ひもを形成する細長い係合要素、又はひもと係合するように構成されている補強要素と係合可能に構成されており、
前記少なくとも1つの長手チャネルでは、前記パール編部分の行方向の延長部分は一定であり、前記平編部分の行方向の延長部分では、編成品の外側に向かって前記少なくとも1つの長手チャネルの三次元の延長部分を作製するようにパール編の編目毎に平編の編目が複数ある、方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの長手チャネ
ルを作製する工程は、所定の横断面を有す
る少なくとも1つの長手チャネ
ルを得るために、夫々の針によってパール編の編目を保持して、平編を編成するための針で所定数の編成行を同時的に作製する工程を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
編成品の製造を続行するために、パール編の編目を保持する針を編成のために戻す工程を有する、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパー、及びアッパーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アッパーが編成によって作製されている靴、特にスポーツシューズが商業的に知られている。
【0003】
実際、アッパーを編成により作製することによって、色及び使用される編地のタイプの両方に関して前記アッパーを簡単且つ安価に変えることができると共にかなり低い製造コストで靴を製造することが可能であることが確認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
編成されたアッパーを作製するために使用される方法は、直線状の編地を作成するように構成された編機の使用を必然的に伴い、この場合、ソール、後部分及び/又はインソールの領域の側部を結合により閉じるために、その後の工程が設けられている。或いは、編成されたアッパーを作製するために使用される方法は、管状要素を作製することが可能な円型機械の使用を必然的に伴い、場合によっては、適切な形状を得るために管状要素を続いて先端で閉じて熱で硬化する。
【0005】
国際公開第2015/068108号パンフレットには、例えば、ソールが後で適用される従来の靴下構造の製造を必然的に伴う、円型機械による靴の作製方法が記載されている。
【0006】
国際公開第2014/096561号パンフレットは、後方端部から前方端部に長手方向に、側方縁部と中央縁部との間で横方向に、基部から上端部に垂直方向に延びている第1の囲い部分を備えた靴に関する。
【0007】
特に、第1の囲い部分は相互に機械的に連結された糸を有し、前記糸の少なくとも一部は、第1の囲い部分の全てに分散している少なくとも1本の熱で硬化可能な糸を含むため、第1の囲い部分の形状は、熱で硬化可能な糸の熱硬化性に応じて決定される。
【0008】
典型的には、編成されたアッパーの製造方法とは無関係に、ひもを通すためのループ又は孔を締付のための領域に有するアッパーを作製する必要がある。
【0009】
ある既知の解決策は、編成によって前記ループ又は孔を作製することを必然的に伴うが、この場合、ひもが前記ループに応力を加えると、前記ループはその力を隣接する編目に及ぼし、その結果、編目の破断又は一定の変形を引き起こすことが確認されている。
【0010】
本発明の意図は、上記に示した態様の内の一又は複数で背景技術を改善することができるアッパー、及びアッパーの製造方法を提供することである。
【0011】
この意図の範囲内で、本発明の目的は、頑丈で実用的である、ひものための係合要素を設けることを可能にするアッパー、及びアッパーの製造方法を考案することである。
【0012】
本発明の別の目的は、より履きやすい靴の作製を可能にするが、かなりの応力を受ける靴にもアッパーの有効な使用を可能にし得る補強された構造を得ることが更にできるアッパー、及びアッパーの製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、高い信頼性があり、比較的作製し易く、競争力のある価格でアッパー、及びアッパーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この意図、並びにこれらの目的及び以下でより明らかとなる他の目的は、任意に従属請求項の特徴の一又は複数を有する、独立請求項に係るアッパー、及びアッパーの製造方法によって達成される。
【0015】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面の非限定例として例証された、本発明に係るアッパー、及びアッパーの製造方法の好ましいが排他的でない実施形態の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る半完成品の第1の実施形態で得られた靴を示す側面略図である。
【
図2】本発明に係る半完成品の第2の実施形態で得られた靴を示す側面略図である。
【
図3】本発明に係る半完成品の第3の実施形態で得られた靴を示す側面略図である。
【
図4】ひもと係合する長手チャネルを埋め込む編成品の本発明に係る半完成品の一部を示す拡大図である。
【
図5】
図4に示されている一部の構造的変形例を示す図である。
【
図6】本発明に係る半完成品の第1の実施例を示す概略図である。
【
図7】本発明に係る半完成品の第2の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照すると、一般に参照番号1 で示されている本発明に係る半完成品は、編成されたアッパー10を製造するための半完成品1 を含んでいる。
【0018】
半完成品1 は、平編部分21及びパール編部分22を有している。
【0019】
本発明によれば、半完成品1 は、平編部分21によって形成された面とパール編部分22によって形成された面との間の編成品内に形成された、長手方向に延びている少なくとも1つのチャネル30を有している。
【0020】
好都合なことに、長手方向に延びている前記チャネル又は各チャネル30が延びている方向は、編成品の編成方向を実質的に横断している(編成方向は
図4及び
図5に参照番号200 で示されている)。
【0021】
実際、長手方向に延びているチャネル30は、編成行と平行に延びている。
【0022】
具体的には、長手方向に延びている前記チャネル又は各チャネル30は、ひも40を形成する細長い係合要素31、又はひも40と係合するように構成されている補強要素50と係合することが可能である。
【0023】
前記長手チャネル又は各長手チャネル30は、少なくとも1つの編目で行の延長方向に延びていることが好ましい。
【0024】
この点について、特に、良好な構造特性を有する長手方向に延びているチャネル30を得ることを望む場合、編成品の少なくとも3つの連続した編目で、長手方向に延びている一又は複数のチャネル30が行の延長方向に延びていることが有利であることが確認されている。
【0025】
尚、
図4及び
図5に示されている編成パターンを参照すると、パール編の編目の行方向の延長部分は、長手方向に延びているチャネル30の位置にあるパール編の編目の行方向の延長部分であっても一定であるが、パール編の編目毎に平編の複数の編目が、ここでも行の延長方向に沿って設けられていることにより、平編側で編成品の外側に向かって長手方向に延びている夫々のチャネル30の三次元の延長部分が作製される。
【0026】
しかしながら、編成方向を横切る方向に沿って相互に離隔した個々の編目を作製することにより、長手方向に延びているチャネル30を設けること、及び平編部分21によって形成された面とパール編部分22によって形成された面との間に夫々のチャネル部分を設けることが更に可能である。
【0027】
長手方向に延びているチャネル30に隣り合って、編成行及び編成列の両方に沿って、様々なタイプの編成パターン、例えばストッキングのステッチ編み又は横編みを作製することが可能である。
【0028】
好都合なことに、半完成品1 は管状要素を有している。
【0029】
半完成品1 は、
図6に示されているような単層タイプ、又は
図7に示されているような二層タイプとすることができる。
【0030】
好ましい実用的な実施形態によれば、半完成品1 はアッパー10の締付領域10a を形成している。
【0031】
1つの可能な実施形態では、半完成品1 は、少なくとも1つの第1の長手チャネル30及び少なくとも1つの第2の長手チャネル30を有しており、これらの長手チャネルは、締付領域10a に対して反対側に配置されている。
【0032】
好都合なことに、前記長手チャネル又は各長手チャネル30は、締付領域10a が延びている方向に対して実質的に垂直な延長方向100 に延びている。
【0033】
図2に示されている実施形態を特に参照すると、補強要素50は、ひも40のための係合ループ51に関連付けられている。
【0034】
本発明は、編成されたアッパー10を製造するための半完成品1 の製造方法に更に関する。
【0035】
本方法は、平編部分21及びパール編部分22を有する半完成品1 を作製する工程を有する。
【0036】
本発明に係る半完成品1 を作製する工程は、平編部分21によって形成された面とパール編部分22によって形成された面との間の編成品内に形成された少なくとも1つの長手チャネル30を作製する工程を有する。
【0037】
好都合なことに、長手方向に延びているチャネル30は、編成行と平行に延びている。
【0038】
実際、少なくとも1つの長手チャネル30を作製する工程は、所定の横断面を有するチャネルを得るために、夫々の針の一部でパール編の編目を保持して、平編を編成するための針で所定数の編成行を同時的に作製する工程を有する。
【0039】
続いて、編成品の製造を続行するために、パール編の編目を保持すべく割り当てられた針を編成のために戻す工程を有する。
【0040】
実際、本発明は、半完成品、及び頑丈で実用的である、ひものための一体化された係合要素を有するアッパーのための半完成品の製造方法を提供することにより、対象とする意図及び目的を達成することが分かっている。
【0041】
更に、本発明に従って得られる半完成品1 によって、編成によって作製されるアッパーの典型的な快適性を維持しながら、長手チャネル30の存在により、より優れた構造剛性を有する、靴のためのアッパーを提供することが可能になり、前記構造剛性は、スポーツシューズなどの分野又はいわゆるトレイルランニングのためにも有効な使用を可能にする。
【0042】
このようにして考案された本発明は、その全てが添付した請求項の範囲内にある多くの修正及び変更を加えることができ、また細部の全ては、更に他の技術的に等価な要素に置き換えられてもよい。
【0043】
従って、例えば、直線状の機械を使用する場合、長手方向に延びている一又は複数のチャネル30は、第1の針床及び第2の針床によって夫々作製される平編の面とパール編の面との間に作製され得る。
【0044】
実際、用いられる材料が特定の用途に適合する限り、用いられる材料、付随する形状及び寸法は、要件及び現状の技術に応じて如何なるものであってもよい。
【0045】
本出願が優先権を主張するイタリア特許出願第102019000007821 号明細書における開示内容は、参照として本明細書に盛り込まれる。
【0046】
任意の請求項に記載されている技術的特徴の後には参照符号が続いているが、これらの参照符号は、請求項の明瞭性を高めるためだけに含まれているものであり、このような参照符号により一例として識別される各要素の解釈をいかなる形においても限定するものではない。