(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】金属部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240625BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20240625BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/067
B23K26/073
(21)【出願番号】P 2022066132
(22)【出願日】2022-04-13
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391009833
【氏名又は名称】株式会社ナ・デックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 光
(72)【発明者】
【氏名】神永 尚典
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-179582(JP,A)
【文献】特開2000-317667(JP,A)
【文献】特開2012-110905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品の製造方法であって、
レーザ発振器によってレーザ光を発生させ、
ビームスプリッタによって前記レーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光とに分岐させ、
反射ミラーによって前記第2レーザ光を反射させ、
第1集光レンズを有する第1集光光学系を通じて、前記第1レーザ光を金属製のワークの表面に照射するとともに、第2集光レンズを有する第2集光光学系を通じて、前記反射ミラーによって反射された前記第2レーザ光を前記ワークの表面のうちの前記第1レーザ光の照射位置に照射し、
前記第1レーザ光の照射位置および前記第2レーザ光の照射位置を移動させることによって前記ワークを溶接し、
前記第1集光光学系と前記第2集光光学系とのうちの少なくとも一方の集光光学系は、前記ワークの表面におけるスポット径を変更可能に構成されており、
前記第1レーザ光のスポット径と前記第2レーザ光のスポット径との比は、前記少なくとも一方の集光光学系を用いて調節され
、
前記ワークの溶接中において、
前記第1レーザ光のスポット径は、前記第2レーザ光のスポット径の5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下であり、
前記ワークの表面における前記第2レーザ光のエネルギ密度は、前記ワークの表面における前記第1レーザ光のエネルギ密度の1.5パーセント以下であり、
前記第1レーザ光の焦点位置は、前記ワークの表面から前記第1集光光学系とは反対側に0.0ミリメートル以上かつ2.0ミリメートル以下の範囲内に配置されており、
前記第2レーザ光の焦点位置は、前記ワークの表面から前記第1集光光学系側に10.0ミリメートル以上かつ20.0ミリメートル以下の範囲内に配置されている、
金属部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属部品の製造方法であって、
前記第2集光光学系は、前記第2集光レンズを含む複数のレンズを有し、
前記第1レーザ光のスポット径と前記第2レーザ光のスポット径との比は、前記第2集光光学系のレンズの間隔の変更によって前記第2レーザ光のスポット径を変更することで調節される、金属部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の金属部品の製造方法であって、
前記ワークの表面における前記第1レーザ光の中心は、前記ワークの表面における前記第2レーザ光の中心に対して、前記第1レーザ光の照射位置および前記第2レーザ光の照射位置の移動方向の後方に配置される、金属部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2本のレーザ光を同時にワークに照射することによってスパッタの発生を抑制しつつワークを溶接するレーザ溶接方法が開示されている。このレーザ溶接方法では、2本のレーザ光は同じ光軸に沿ってワークに照射され、2本のレーザ光のうちの一方のレーザ光が照射されるワークの部分の中央部に他方のレーザ光が照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したレーザ溶接方法では、2本のレーザ光が同じ光軸に沿ってワークに照射されるので、例えば、2本のレーザ光を集光するための集光光学系の焦点距離を変更することで2本のレーザ光のスポット径を一度に変更することができる。しかしながら、上述したレーザ溶接方法では、集光光学系の焦点距離を変更したとしても2本のレーザ光のスポット径の比を変更することはできない。そのため、ワークの材料や要求される溶接品質などに応じて2本のレーザ光のスポット径の比を容易に調節可能な技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、金属部品の製造方法が提供される。この金属部品の製造方法は、レーザ発振器によってレーザ光を発生させ、ビームスプリッタによって前記レーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光とに分岐させ、反射ミラーによって前記第2レーザ光を反射させ、第1集光レンズを有する第1集光光学系を通じて、前記第1レーザ光を金属製のワークの表面に照射するとともに、第2集光レンズを有する第2集光光学系を通じて、前記反射ミラーによって反射された前記第2レーザ光を前記ワークの表面のうちの前記第1レーザ光の照射位置に照射し、前記第1レーザ光の照射位置および前記第2レーザ光の照射位置を移動させることによって前記ワークを溶接し、前記第1集光光学系と前記第2集光光学系とのうちの少なくとも一方の集光光学系は、前記ワークの表面におけるスポット径を変更可能に構成されており、前記第1レーザ光のスポット径と前記第2レーザ光のスポット径との比は、前記少なくとも一方の集光光学系を用いて調節され、前記ワークの溶接中において、前記第1レーザ光のスポット径は、前記第2レーザ光のスポット径の5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下であり、前記ワークの表面における前記第2レーザ光のエネルギ密度は、前記ワークの表面における前記第1レーザ光のエネルギ密度の1.5パーセント以下であり、前記第1レーザ光の焦点位置は、前記ワークの表面から前記第1集光光学系とは反対側に0.0ミリメートル以上かつ2.0ミリメートル以下の範囲内に配置され、前記第2レーザ光の焦点位置は、前記ワークの表面から前記第1集光光学系側に10.0ミリメートル以上かつ20.0ミリメートル以下の範囲内に配置される。
なお、本開示は以下の形態としても実現できる。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、金属部品の製造方法が提供される。この金属部品の製造方法は、レーザ発振器によってレーザ光を発生させ、ビームスプリッタによって前記レーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光とに分岐させ、反射ミラーによって前記第2レーザ光を反射させ、第1集光レンズを有する第1集光光学系を通じて、前記第1レーザ光を金属製のワークの表面に照射するとともに、第2集光レンズを有する第2集光光学系を通じて、前記反射ミラーによって反射された前記第2レーザ光を前記ワークの表面のうちの前記第1レーザ光の照射位置に照射し、前記第1レーザ光の照射位置および前記第2レーザ光の照射位置を移動させることによって前記ワークを溶接する。前記第1集光光学系と前記第2集光光学系とのうちの少なくとも一方の集光光学系は、前記ワークの表面におけるスポット径を変更可能に構成されており、前記第1レーザ光のスポット径と前記第2レーザ光のスポット径との比は、前記少なくとも一方の集光光学系を用いて調節される。
この形態の金属部品の製造方法によれば、レーザ発振器からのレーザ光がビームスプリッタによって第1レーザ光と第2レーザ光とに分岐され、第1レーザ光と第2レーザ光とが互いに異なる集光光学系を通じてワークに照射される。さらに、第1レーザ光を集光する第1集光光学系と第2レーザ光を集光する第2集光光学系とのうちの少なくとも一方は、ワークの表面におけるスポット径を変更可能に構成されている。そのため、ワークの材料や要求される溶接品質などに応じて、第1レーザ光のスポット径と第2レーザ光のスポット径との比を容易に調節することができる。
(2)上記形態の金属部品の製造方法において、前記第2集光光学系は、前記第2集光レンズを含む複数のレンズを有し、前記第1レーザ光のスポット径と前記第2レーザ光のスポット径との比は、前記第2集光光学系のレンズの間隔の変更によって前記第2レーザ光のスポット径を変更することで調節されてもよい。
この形態の金属部品の製造方法によれば、第2集光光学系のレンズの間隔の変更によって、第1レーザ光のスポット径と第2レーザ光のスポット径との比を容易に調節することができる。
(3)上記形態の金属部品の製造方法において、前記第1レーザ光のスポット径は、前記第2レーザ光のスポット径の5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下であってもよい。
この形態の金属部品の製造方法によれば、ワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。特に、スチール製のワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
(4)上記形態の金属部品の製造方法において、前記第1レーザ光の焦点位置は、前記ワークの表面のうちの前記第1レーザ光の照射位置と前記第1集光光学系との間に配置され、前記第2レーザ光の焦点位置は、前記ワークの表面のうちの前記第2レーザ光の照射位置に対して前記第2集光光学系とは反対側に配置されてもよい。
この形態の金属部品の製造方法によれば、ワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。特に、スチール製のワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
(5)上記形態の金属部品の製造方法において、前記ワークの表面における前記第2レーザ光のエネルギ密度は、前記ワークの表面における前記第1レーザ光のエネルギ密度の1.5パーセント以下であってもよい。
この形態の金属部品の製造方法によれば、ワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。特に、スチール製のワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
(6)上記形態の金属部品の製造方法において、前記ワークの表面における前記第1レーザ光の中心は、前記ワークの表面における前記第2レーザ光の中心に対して、前記第1レーザ光の照射位置および前記第2レーザ光の照射位置の移動方向の後方に配置されてもよい。
この形態の金属部品の製造方法によれば、ワークを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
本開示は、金属部品の製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、レーザ溶接方法や、レーザ溶接装置や、レーザヘッドなどの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のレーザ溶接装置の概略構成を模式的に示す説明図。
【
図2】第1レーザ光と第2レーザ光とがワークに照射される様子を示す斜視図。
【
図3】第1レーザ光の照射位置と第2レーザ光の照射位置との関係を示す平面図。
【
図4】一般的なキーホール溶接の様子を模式的に示す参考図。
【
図5】第1実施形態の金属部品の製造方法の内容を示すフローチャート。
【
図6】金属部品の製造方法のうちのレーザ溶接工程の内容を示すフローチャート。
【
図7】第1レーザ光の焦点位置とスパッタ発生量との関係を示すグラフ。
【
図8】第2レーザ光の焦点位置とスパッタ発生量との関係を示すグラフ。
【
図9】スポット径比とスパッタ発生量との関係示すグラフ。
【
図10】エネルギ密度比とスパッタ発生量との関係を示すグラフ。
【
図11】スポット径比とエネルギ密度比との関係を示す説明図。
【
図12】溶け込み深さとスパッタ発生量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における金属部品の製造方法に用いられるレーザ溶接装置10の概略構成を模式的に示す説明図である。本実施形態では、レーザ溶接装置10は、ステージ15と、レーザ発振器20と、光ファイバ25と、レーザヘッド30と、溶接位置変更部40と、制御部50とを備えている。
【0009】
ステージ15には、ワークWKが固定される。
図1には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。X軸およびY軸は、ステージ15のうちのワークWKに接する面に平行な座標軸であり、Z軸は、ステージ15のうちのワークWKに接する面に垂直な座標軸である。X,Y,Z軸を表す矢印は、他の図においても、矢印の指し示す方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。
【0010】
ワークWKは、互いに溶接される複数の金属製の部材によって構成されている。複数の金属製の部材が互いに溶接されることによって金属部品が製造される。本実施形態では、ワークWKの各部材は、スチール製である。なお、他の実施形態では、ワークWKの各部材は、スチール製ではなく、例えば、アルミニウム合金製やチタン合金製でもよい。ワークWKの各部材の材料は、互いに異なってもよい。例えば、スチール製の部材とアルミニウム合金製の部材とによってワークWKが構成されてもよい。
【0011】
レーザ発振器20は、レーザ光LSを発生させる。本実施形態では、レーザ発振器20の発生させるレーザ光LSは、ファイバレーザである。なお、他の実施形態では、レーザ発振器20の発生させるレーザ光LSは、例えば、ディスクレーザや半導体レーザやYAGレーザなどのファイバレーザ以外の固体レーザでもよいし、炭酸ガスレーザなどの気体レーザでもよい。
【0012】
光ファイバ25の一端は、レーザ発振器20に接続されており、光ファイバ25の他端は、レーザヘッド30に接続されている。光ファイバ25は、レーザ発振器20の発生させるレーザ光LSをレーザヘッド30に伝送する。なお、レーザ発振器20の発生させるレーザ光LSが炭酸ガスレーザである形態では、光ファイバ25ではなくベンドミラーによってレーザ発振器20からレーザヘッド30にレーザ光LSが伝送されてもよい。
【0013】
レーザヘッド30は、第1ハウジング31と、第2ハウジング32と、固定部材33と、ビームスプリッタ110と、第1集光光学系120と、反射ミラー130と、第2集光光学系140と、レンズ間隔変更部35とを備えている。
【0014】
第1ハウジング31は、筒状部材である。第1ハウジング31の先端部は、ステージ15に向けられている。第1ハウジング31の後端部には、光ファイバ25が接続されており、光ファイバ25から射出されたレーザ光LSは、第1ハウジング31内に導入される。第1ハウジング31の側面部には、開口部が設けられている。
【0015】
第2ハウジング32は、第1ハウジング31に隣り合って配置されており、固定部材33を介して第1ハウジング31に固定されている。第2ハウジング32は、鋭角に屈曲した筒状部材である。第2ハウジング32の後端部は、第1ハウジング31の側面部に設けられた開口部に向けられている。第2ハウジング32の後端部には、第1ハウジング31の側面部に設けられた開口部に向かい合って配置された開口部が設けられている。第2ハウジング32の先端部は、ステージ15に向けられている。
【0016】
ビームスプリッタ110は、第1ハウジング31のうちの先端部と後端部との間の部分に配置されており、第1ハウジング31に固定されている。ビームスプリッタ110は、第1ハウジング31内に導入されたレーザ光LSのうちの一部を反射させるとともに、レーザ光LSのうちの残りの一部を透過させる。以下の説明では、レーザ光LSのうちのビームスプリッタ110を透過した部分のことを第1レーザ光L1と呼び、レーザ光LSのうちのビームスプリッタ110によって反射した部分のことを第2レーザ光L2と呼ぶ。つまり、ビームスプリッタ110は、レーザ光LSを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐させる。本実施形態では、ビームスプリッタ110として、平板状のガラスに光学薄膜が蒸着されたプレート型のビームスプリッタが用いられる。なお、他の実施形態では、ビームスプリッタ110として、例えば、2つの直角プリズムが組み合わされたキューブ型のビームスプリッタが用いられてもよい。
【0017】
本実施形態では、ビームスプリッタ110は、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が65:35になるようにレーザ光LSを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐させる。なお、他の実施形態では、ビームスプリッタ110は、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が50:50になるようにレーザ光LSを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐させてもよい。第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比がほぼ50:50になるようにレーザ光LSを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐させるビームスプリッタ110のことをハーフミラーと呼ぶことがある。
【0018】
第1集光光学系120は、第1ハウジング31の先端部に配置されている。第1集光光学系120は、ビームスプリッタ110を透過した第1レーザ光L1を集光してワークWKに照射する。本実施形態では、第1集光光学系120は、第1コリメートレンズ121と、第1集光レンズ122とを有している。第1コリメートレンズ121と第1集光レンズ122とは、第1ハウジング31の後端部から先端部に向かって、この順で配置されている。
【0019】
第1コリメートレンズ121は、第1ハウジング31に固定されている。第1コリメートレンズ121は、ビームスプリッタ110を透過した第1レーザ光L1を平行光に変換する機能を有している。
【0020】
第1集光レンズ122は、第1ハウジング31に固定されている。第1集光レンズ122は、第1コリメートレンズ121によって平行光に変換された第1レーザ光L1を集光する機能を有している。第1集光レンズ122によって集光された第1レーザ光L1は、ワークWKに照射される。
【0021】
反射ミラー130は、第2ハウジング32の屈曲部に配置されており、第2ハウジング32に固定されている。ビームスプリッタ110によって反射された第2レーザ光L2は、第1ハウジング31の側面部に設けられた開口部を通って、第2ハウジング32の後端部に設けられた開口部から第2ハウジング32内に導入される。反射ミラー130は、第2ハウジング32内に導入された第2レーザ光L2を反射させる。
【0022】
第2集光光学系140は、第2ハウジング32の先端部に配置されている。第2集光光学系140は、ワークWKのうちの第1レーザ光L1を照射されている部分に向けて、反射ミラー130によって反射された第2レーザ光L2を集光してワークWKに照射する。本実施形態では、第2集光光学系140は、第2コリメートレンズ141と、第2集光レンズ142とを有している。第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142とは、第2ハウジング32の屈曲部から先端部に向かって、この順で配置されている。
【0023】
第2コリメートレンズ141は、後述するレンズ間隔変更部35のスライド部材37に固定されている。第2コリメートレンズ141は、反射ミラー130によって反射した第2レーザ光L2を平行光に変換する機能を有している。
【0024】
第2集光レンズ142は、第2ハウジング32に固定されている。第2集光レンズ142は、第2コリメートレンズ141によって平行光に変換された第2レーザ光L2を集光する機能を有している。第2集光レンズ142によって集光された第2レーザ光L2は、ワークWKに照射される。
【0025】
レンズ間隔変更部35は、第2ハウジング32に設けられている。レンズ間隔変更部35は、第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142との間隔を変更することによって、第2集光光学系140の焦点距離、換言すれば、第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142とによる合成焦点距離を変更する。本実施形態では、レンズ間隔変更部35は、ネジ部36と、スライド部材37とを有している。ネジ部36は、第2ハウジング32の外側に設けられている。スライド部材37は、第2ハウジング32の内壁面に沿って設けられている。上述したとおり、スライド部材37には、第2コリメートレンズ141が固定されている。スライド部材37は、ネジ部36の回転に応じて、第2ハウジング32の内壁面上をスライド移動することによって、第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142との間隔を変更する。第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142との間隔が変更されることによって、第2集光光学系140の焦点距離が変更される。本実施形態では、ネジ部36は、手動で回転される。なお、他の実施形態では、制御部50の制御下で駆動されるモータがレーザヘッド30に設けられて、ネジ部36は、モータによって回転されてもよい。
【0026】
溶接位置変更部40は、X,Y,Z軸におけるワークWKに対するレーザヘッド30の相対位置を変更する。本実施形態では、溶接位置変更部40は、レーザヘッド30を移動させることによって、X,Y,Z軸におけるワークWKに対するレーザヘッド30の相対位置を変更する。溶接位置変更部40は、例えば、垂直多関節ロボットなどのロボットアームによって構成されており、このロボットアームの先端部には、レーザヘッド30の固定部材33が固定されている。なお、他の実施形態では、溶接位置変更部40は、レーザヘッド30を移動させずにステージ15を移動させることによって、X,Y,Z軸におけるワークWKに対するレーザヘッド30の相対位置を変更してもよい。溶接位置変更部40は、レーザヘッド30とステージ15との両方を移動させることによって、X,Y,Z軸におけるワークWKに対するレーザヘッド30の相対位置を変更してもよい。
【0027】
制御部50は、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを備えたコンピュータとして構成されている。本実施形態では、制御部50は、レーザ発振器20を制御してレーザヘッド30からワークWKに対して第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とを照射させつつ、溶接位置変更部40を制御してワークWKに対するレーザヘッド30の相対位置を変更することによって、ワークWKを溶接する。なお、制御部50は、コンピュータではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0028】
図2は、本実施形態のレーザ溶接装置10によってワークWKに第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とが照射される様子を示す斜視図である。
図2には、ワークWKとして、互いに端面を突き合わせて配置された第1部材MB1と第2部材MB2とが表されている。本実施形態では、第1レーザ光L1は、ワークWKの表面に対して垂直に照射される。第2レーザ光L2は、ワークWKの表面に対して斜めに照射される。第2レーザ光L2は、第1レーザ光L1に対して溶接方向WDの後方からワークWKの表面に照射される。以下の説明では、ワークWKの表面のうちの第1レーザ光L1を照射されている部分のことを第1スポットS1と呼び、ワークWKの表面のうちの第2レーザ光L2を照射されている部分のことを第2スポットS2と呼ぶ。本実施形態では、第1レーザ光L1の焦点位置F1は、第1スポットS1と第1集光レンズ122との間に配置されている。第2レーザ光L2の焦点位置F2は、第2スポットS2とステージ15との間、換言すれば、第2スポットS2に対して第2集光レンズ142とは反対側に配置されている。
【0029】
図3は、第1レーザ光L1の照射位置と第2レーザ光L2の照射位置との関係を示す平面図である。
図3には、Z軸に平行に視たワークWK、第1スポットS1、および、第2スポットS2が表されている。本実施形態では、第1レーザ光L1の中心軸に垂直な第1レーザ光L1の断面は円形であり、かつ、第1レーザ光L1はワークWKの表面に対して垂直に照射されるので、第1スポットS1は、円形状を有している。第2レーザ光L2の中心軸に垂直な第2レーザ光L2の断面は円形であり、かつ、第2レーザ光L2はワークWKの表面に対して斜めに照射されるので、第2スポットS2は、楕円形状を有している。以下の説明では、第1スポットS1の直径のことを第1レーザ光L1のスポット径D1と呼び、第2スポットS2の短径のことを第2レーザ光L2のスポット径D2と呼ぶ。第1スポットS1は、第2スポットS2内に配置されている。第1スポットS1の中心点CP1は、第2スポットS2の中心点CP2に対して溶接方向WDの後方に配置されている。本実施形態では、第1スポットS1の中心点CP1から第2スポットS2の中心点CP2までの距離は、第1スポットS1の半径以上である。
【0030】
本実施形態のレーザ溶接装置10では、第1集光レンズ122から射出された第1レーザ光L1の中心軸に沿ってレーザヘッド30を移動させることで、第1レーザ光L1の焦点位置F1と第2レーザ光L2の焦点位置F2とを同時に変更することができる。さらに、本実施形態のレーザ溶接装置10では、レンズ間隔変更部35を用いて第2集光光学系140の焦点距離を変更することで、第1レーザ光L1の焦点位置F1を変更せずに、第2レーザ光L2の焦点位置F2を変更することができる。第1レーザ光L1の焦点位置F1が変更されることによって、第1レーザ光L1のスポット径D1が変更される。第2レーザ光L2の焦点位置F2が変更されることによって、第2レーザ光L2のスポット径D2が変更される。つまり、第1レーザ光L1の焦点位置F1と第2レーザ光L2の焦点位置F2とのうちの少なくとも一方を変更することによって、第1レーザ光L1のスポット径D1と第2レーザ光L2のスポット径D2との比であるスポット径比D1/D2を変更することができる。本実施形態のレーザ溶接装置10では、スポット径比D1/D2を5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下に調整することができる。
【0031】
図4は、一般的なキーホール溶接の様子を模式的に示す参考図である。レーザ溶接では、溶け込み深さを大きく確保するために、キーホール溶接が実施されることがある。キーホール溶接では、ワークのうちのレーザ光を照射された部分が蒸発してキーホールが形成され、キーホールの周囲に溶融池が形成される。溶融池の壁面のうちの溶接方向の前側の壁面である前壁とキーホールとの間において、溶融した金属がキーホールからの蒸発反力によって押し出されるので、前壁から溶接方向の前方に向かって飛散する比較的大きなサイズのスパッタが発生する。さらに、キーホール内から溶接方向の後方に向かって飛散する比較的小さなサイズのスパッタが発生する。スパッタが発生すると、スパッタがレーザヘッドなどに付着する問題や、ワークの溶接部分の厚みが減少することによってワークの強度が低下する問題などが生じることがある。
【0032】
図5は、本実施形態の金属部品の製造方法の内容を示すフローチャートである。まず、ステップS100のスポット径比調節工程にて、第1集光光学系120を通じてワークWKの表面に照射される第1レーザ光L1のスポット径D1と第2集光光学系140を通じてワークWKの表面に照射される第2レーザ光L2のスポット径D2との比であるスポット径比D1/D2が調節される。本実施形態では、レンズ間隔変更部35を用いた第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142との間隔の変更によって第2レーザ光L2のスポット径D2が変更されることで、スポット径比D1/D2が調節される。次に、ステップS200のレーザ溶接工程にて、ワークWKが溶接される。レーザ溶接工程の具体的な内容については後述する。レーザ溶接工程にてワークWKが溶接されることにより、金属部品が製造される。その後、この方法は終了される。なお、レーザ溶接工程の後に、金属部品に仕上げ処理が施されてもよい。例えば、同じ種類の金属部品を繰り返し製造する場合のように、スポット径比D1/D2の調節が不要な場合には、ステップS100のスポット径比調節工程がスキップされてもよい。
【0033】
図6は、上述した金属部品の製造方法のうちのレーザ溶接工程の内容を示すフローチャートである。まず、ステップS210にて、レーザ発振器20は、レーザ光LSの発振を開始する。レーザ発振器20によって発振されたレーザ光LSは、光ファイバ25を通じてレーザヘッド30に伝送される。次に、ステップS220にて、ビームスプリッタ110は、レーザヘッド30に導入されたレーザ光LSを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐させる。ステップS230にて、反射ミラー130は、第2レーザ光L2を反射して、第2レーザ光L2の進行方向を変更する。ステップS240にて、第1集光光学系120は、ワークWKに第1レーザ光L1を集光し、第2集光光学系140は、ワークWKのうちの第1レーザ光L1が集光される部分に第2レーザ光L2を集光する。ステップS210からステップS240までは、ほぼ同時に実行される。ワークWKの表面に第1レーザ光L1が照射されることによって、ワークWKにキーホールが形成されるとともに、ワークWKの表面に第2レーザ光L2が照射されることによって、キーホールを囲むようにワークWKに溶融池が形成される。ステップS250にて、溶接位置変更部40は、ワークWKに対してレーザヘッド30を相対移動させることによって、ワークWKの表面に照射されている第1レーザ光L1の照射位置、および、ワークWKの表面に照射されている第2レーザ光L2の照射位置を予め定められた経路に沿って移動させる。第1レーザ光L1の照射位置および第2レーザ光L2の照射位置が上記経路に沿って移動することによって、上記経路に沿ってワークWKが溶接される。ステップS260にて、レーザ発振器20は、レーザ光LSの発振を終了する。その後、この工程は終了される。
【0034】
本実施形態のレーザ溶接装置10では、第1レーザ光L1によってキーホールを形成するとともに第2レーザ光L2によって溶融池を形成することによって、スパッタの発生を抑制することができる。スパッタの発生を効果的に抑制するためには、ワークWKの材料や要求される溶け込み深さなどに応じて、スポット径比D1/D2が予め調整されることが好ましい。
【0035】
図7は、第1レーザ光L1の焦点位置F1とスパッタ発生量との関係に関する試験結果を示すグラフである。
図7において、横軸は、Z軸における第1レーザ光L1の焦点位置F1を表しており、縦軸は、スパッタ発生量を表している。スパッタ発生量は、スパッタの数によって表されている。この試験では、第1レーザ光L1の焦点位置F1を異ならせて複数のサンプルを溶接して、第1レーザ光L1の焦点位置F1とスパッタ発生量との関係を調べた。各サンプルの溶接には、上述したレーザ溶接装置10が用いられた。スパッタ発生量の計測には、ハイスピードカメラが用いられた。各サンプルの材料はスチールである。各サンプルを溶接したときの溶接速度は10.0m/min以下である。各サンプルの溶接長は100.0mmである。この試験では、Z軸における第2レーザ光L2の焦点位置F2がZ=15.0mmの位置に固定された状態で、各サンプルが溶接された。Z=0.0mmはサンプルの表面の位置であり、Z>0.0mmはサンプルの表面に比べてレーザヘッド30に近い位置であり、Z<0.0mmはサンプルの表面に比べてステージ15に近い位置である。
図7には、試験結果が丸印で表されている。
図7に示すとおり、Z軸における第1レーザ光L1の焦点位置F1がZ=-2.0mm以上かつZ=0.0mm以下の位置のときには、スパッタ発生量は比較的少ない。
【0036】
図8は、第2レーザ光L2の焦点位置F2とスパッタ発生量との関係に関する試験結果を示すグラフである。
図8において、横軸は、Z軸における第2レーザ光L2の焦点位置F2を表しており、縦軸は、スパッタ発生量を表している。この試験では、第2レーザ光L2の焦点位置F2を異ならせて複数のサンプルを溶接することによって、第2レーザ光L2の焦点位置F2とスパッタ発生量との関係を調べた。各サンプルの溶接に用いられるレーザ溶接装置10、スパッタ発生量の計測方法、サンプルの材料、溶接速度、溶接長については、上述した試験と同じである。この試験では、第1レーザ光L1の焦点位置F1がZ=-2.0以上かつZ=0.0mm以下の位置に固定された状態で、各サンプルが溶接された。
図8において、丸印、三角印、バツ印、および、四角印は、第1レーザ光L1の焦点位置F1の互いに異なる試験結果を表している。
図8に示すとおり、第2レーザ光L2の焦点位置F2がZ=10.0mm以上かつZ=20.0mm以下の位置のときには、スパッタ発生量は比較的少ない。
【0037】
図9は、スポット径比D1/D2とスパッタ発生量との関係に関する試験結果を示すグラフである。
図9において、横軸は、第1レーザ光L1のスポット径D1と第2レーザ光L2のスポット径D2との比であるスポット径比D1/D2を表しており、縦軸は、スパッタ発生量を表している。この試験では、スポット径比D1/D2を異ならせて複数のサンプルを溶接することによって、スポット径比D1/D2とスパッタ発生量との関係を調べた。各サンプルの溶接に用いられるレーザ溶接装置10、スパッタ発生量の計測方法、サンプルの材料、溶接速度、溶接長については、上述した各試験と同じである。
図9には、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が65:35のビームスプリッタ110が用いられたときの試験結果が丸印で表されており、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が50:50のビームスプリッタ110が用いられたときの試験結果が四角印で表されている。
図9に示すとおり、スポット径比D1/D2が5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下のときには、スパッタ発生量は比較的少ない。
図9にはスポット径比D1/D2が0.0パーセントを超えかつ5.0パーセント未満のときの試験結果が表されていないが、スポット径比D1/D2が小さいほどスパッタ発生量が少ないので、スポット径比D1/D2が0.0パーセントを超えかつ5.0パーセント未満のときにも、スパッタ発生量は比較的少ないと考えられる。
【0038】
図10は、エネルギ密度比u2/u1とスパッタ発生量との関係に関する試験結果を示すグラフである。
図10において、横軸は、サンプルの表面における第2レーザ光L2のエネルギ密度u2とサンプルの表面における第1レーザ光L1のエネルギ密度u1との比であるエネルギ密度比u2/u1を表しており、縦軸は、スパッタ発生量を表している。この試験では、エネルギ密度比u2/u1を異ならせて複数のサンプルを溶接することによって、エネルギ密度比u2/u1とスパッタ発生量との関係を調べた。各サンプルの溶接に用いられるレーザ溶接装置10、スパッタ発生量の計測方法、サンプルの材料、溶接速度、溶接長については、上述した各試験と同じである。
図10には、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が65:35のビームスプリッタ110が用いられたときの試験結果が丸印で表されており、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が50:50のビームスプリッタ110が用いられたときの試験結果が三角印で表されている。
図10に示すとおり、エネルギ密度比u2/u1が0.0パーセントを超えかつ1.5パーセント以下のときには、スパッタ発生量は比較的少ない。
【0039】
図11は、スポット径比D1/D2とエネルギ密度比u2/u1との関係を示すグラフである。
図11において、横軸は、スポット径比D1/D2を表しており、縦軸は、エネルギ密度比u2/u1を表している。
図11には、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が65:35のビームスプリッタ110が用いられたときのスポット径比D1/D2とエネルギ密度比u2/u1との関係が丸印で表されており、第1レーザ光L1の強度と第2レーザ光L2の強度との比が50:50のビームスプリッタ110が用いられたときのスポット径比D1/D2とエネルギ密度比u2/u1との関係が三角印で表されている。
図11には、スポット径比D1/D2が0.0パーセントを超えかつ15.0パーセント以下であり、エネルギ密度比u2/u1が0.0パーセントを超えかつ1.5パーセント以下である領域Aと、スポット径比D1/D2が15パーセントを超えており、エネルギ密度比u2/u1が1.5パーセントを超えている領域Bとが表されている。
図9に示したとおり、スポット径比D1/D2が0.0パーセントを超えかつ15.0パーセント以下のときのスパッタ発生量の方が、スポット径比D1/D2が15.0パーセントを超えるときのスパッタ発生量よりも少ない。さらに、
図10に示したとおり、エネルギ密度比u2/u1が0.0パーセントを超えかつ1.5パーセント以下のときのスパッタ発生量の方が、エネルギ密度比u2/u1が1.5パーセントを超えるときのスパッタ発生量よりも少ない。つまり、領域Aでは領域Bに比べてスパッタ発生量が少ない。
【0040】
図12は、溶け込み深さとスパッタ発生量との関係に関する試験結果を示すグラフである。
図12において、横軸は、溶け込み深さを表しており、縦軸は、スパッタ発生量を表している。この試験では、溶け込み深さを異ならせて複数のサンプルを溶接することによって、溶け込み深さとスパッタ発生量との関係を調べた。各サンプルの溶接に用いられるレーザ溶接装置10、スパッタ発生量の計測方法、サンプルの材料、溶接速度、溶接長については、上述した各試験と同じである。
図12には、
図11に示した領域Aの条件で溶接したときのスパッタ量が三角印で表されており、
図11に示した領域Bの条件で溶接したときのスパッタ量が丸印で表されている。
図12に示すとおり、溶け込み深さが同じであるときには、領域Aの条件で溶接したときのスパッタ発生量は、領域Bの条件で溶接したときのスパッタ発生量よりも少ない。
【0041】
以上で説明した本実施形態における金属部品の製造方法によれば、レーザ発振器20からのレーザ光LSがビームスプリッタ110によって第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐され、第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とが互いに異なる集光光学系120,140を通じてワークWKに照射される。第1レーザ光L1を集光する第1集光光学系120と第2レーザ光L2を集光する第2集光光学系140とのうちの少なくとも一方は、ワークWKの表面におけるスポット径D1,D2を変更可能に構成されているので、ワークWKの材料や要求される溶接品質などに応じて、第1レーザ光L1のスポット径D1と第2レーザ光L2のスポット径D2との比であるスポット径比D1/D2を容易に調節することができる。特に、本実施形態では、第2集光光学系140の第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142との間隔を変更することによって第2集光光学系140の焦点距離を変更するレンズ間隔変更部35がレーザヘッド30に設けられている。そのため、レンズ間隔変更部35を用いて第2レーザ光L2のスポット径D2を変更することで、スポット径比D1/D2を容易に調節することができる。さらに、本実施形態では、1つのレーザ発振器20によって発振されたレーザ光LSがビームスプリッタ110によって第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分岐されるので、第1レーザ光L1を発振するためのレーザ発振器と第2レーザ光L2を発振するためのレーザ発振器とが別々に設けられた形態に比べてレーザ溶接装置10を小型化できる。
【0042】
また、本実施形態では、レーザ溶接装置10は、スポット径比D1/D2を5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下に調整することができる。そのため、ワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。特に、スチール製のワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、レーザ溶接装置10は、エネルギ密度比u2/u1を0.0パーセントを超えかつ1.5パーセント以下に調整することができる。そのため、ワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。特に、スチール製のワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、レーザ溶接装置10は、第1スポットS1と第1集光レンズ122との間に第1レーザ光L1の焦点位置F1を配置し、第2スポットS2に対して第2集光レンズ142とは反対側に第2レーザ光L2の焦点位置F2を配置することができる。第1スポットS1と第1集光レンズ122との間に第1レーザ光L1の焦点位置F1を配置することによって、キーホールの深さを確保しやすくできる。第2スポットS2に対して第2集光レンズ142とは反対側に第2レーザ光L2の焦点位置F2を配置することによって、溶融池の広さを確保しやすくできる。そのため、ワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。特に、スチール製のワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
【0045】
さらに、レーザ溶接装置10は、第2スポットS2の中心点CP2対して溶接方向WDの後方に第1スポットS1の中心点CP1を配置することができる。そのため、溶融池の前壁とキーホールとの間隔を確保して、ワークWKを溶接するときのスパッタの発生を抑制できる。
【0046】
B.他の実施形態:
(B1)上述した実施形態の金属部品の製造方法に用いられるレーザ溶接装置10には、レーザヘッド30の第2ハウジング32にレンズ間隔変更部35が設けられている。これに対して、レーザ溶接装置10にレンズ間隔変更部35が設けられずに、第1集光光学系120が第1ハウジング31に着脱可能に固定され、第2集光光学系140が第2ハウジング32に着脱可能に固定されてもよい。この場合、ワークWKの材料や要求される溶接品質などに応じて、第1集光光学系120と第2集光光学系140とのうちの少なくとも一方を異なる焦点距離を有する集光光学系に交換することによって、第1レーザ光L1のスポット径D1と第2レーザ光L2のスポット径D2とのうちの少なくとも一方を変更することができる。つまり、第1集光光学系120と第2集光光学系140とのうちの少なくとも一方を異なる焦点距離を有する集光光学系に交換することによって、スポット径比D1/D2を容易に変更することができる。
【0047】
(B2)上述した実施形態の金属部品の製造方法に用いられるレーザ溶接装置10には、第2コリメートレンズ141と第2集光レンズ142との間隔を変更することによってワークWKの表面における第2レーザ光L2のスポット径D2を変更するレンズ間隔変更部35が設けられている。これに対して、レーザ溶接装置10には、第2レーザ光L2のスポット径D2を変更するレンズ間隔変更部35が設けられずに、第1コリメートレンズ121と第1集光レンズ122との間隔を変更することによってワークWKの表面における第1レーザ光L1のスポット径D1を変更するレンズ間隔変更部が設けられてもよい。レーザ溶接装置10には、第2レーザ光L2のスポット径D2を変更するレンズ間隔変更部35と第1レーザ光L1のスポット径D1を変更するレンズ間隔変更部とが設けられてもよい。
【0048】
(B3)上述した実施形態の金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、ワークWKの表面における第1レーザ光L1のスポット径D1がワークWKの表面における第2レーザ光L2のスポット径D2の5.0パーセント以上かつ15.0パーセント以下の状態でワークWKが溶接される。これに対して、金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、ワークWKの表面における第1レーザ光L1のスポット径D1がワークWKの表面における第2レーザ光L2のスポット径D2の5.0パーセント未満の状態でワークWKが溶接されてもよいし、ワークWKの表面における第1レーザ光L1のスポット径D1がワークWKの表面における第2レーザ光L2のスポット径D2の15.0パーセントを超える状態でワークWKが溶接されてもよい。
【0049】
(B4)上述した実施形態の金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、第1レーザ光L1の焦点位置F1が第1スポットS1と第1集光レンズ122との間に配置されており、第2レーザ光L2の焦点位置F2が第2スポットS2に対して第2集光レンズ142とは反対側に配置されている状態でワークWKが溶接される。これに対して、金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、第1レーザ光L1の焦点位置F1が第1スポットS1に対して第1集光レンズ122とは反対側に配置されている状態でワークWKが溶接されてもよいし、第2レーザ光L2の焦点位置F2が第2スポットS2と第2集光レンズ142との間に配置されている状態でワークWKが溶接されてもよい。
【0050】
(B5)上述した実施形態の金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、ワークWKの表面における第2レーザ光L2のエネルギ密度u2がワークWKの表面における第1レーザ光L1のエネルギ密度u1の1.5パーセント以下の状態でワークWKが溶接される。これに対して、金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、ワークWKの表面における第2レーザ光L2のエネルギ密度u2がワークWKの表面における第1レーザ光L1のエネルギ密度u1の1.5パーセントを超えている状態でワークWKが溶接されてもよい。
【0051】
(B6)上述した実施形態の金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、第1スポットS1の中心点CP1が第2スポットS2の中心点CP2に対して溶接方向WDの後方に配置されている状態でワークWKが溶接される。これに対して、金属部品の製造方法におけるレーザ溶接工程では、第1スポットS1の中心点CP1と第2スポットS2の中心点CP2とが重なった状態でワークWKが溶接されもよいし、第1スポットS1の中心点CP1が第2スポットS2の中心点CP2に対して溶接方向WDの前方に配置されている状態でワークWKが溶接されもよい。
【0052】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…レーザ溶接装置、15…ステージ、20…レーザ発振器、25…光ファイバ、30…レーザヘッド、31…第1ハウジング、32…第2ハウジング、33…固定部材、35…レンズ間隔変更部、36…ネジ部、37…スライド部材、40…溶接位置変更部、50…制御部、110…ビームスプリッタ、120…第1集光光学系、121…第1コリメートレンズ、122…第1集光レンズ、130…反射ミラー、140…第2集光光学系、141…第2コリメートレンズ、142…第2集光レンズ