IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レンク・アクティエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7509827調節可能である可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置及び駆動装置を動作させるための方法
<>
  • 特許-調節可能である可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置及び駆動装置を動作させるための方法 図1
  • 特許-調節可能である可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置及び駆動装置を動作させるための方法 図2
  • 特許-調節可能である可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置及び駆動装置を動作させるための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】調節可能である可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置及び駆動装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/72 20060101AFI20240625BHJP
   F16H 3/66 20060101ALI20240625BHJP
   F16H 48/10 20120101ALI20240625BHJP
【FI】
F16H3/72 A
F16H3/66 A
F16H48/10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022102593
(22)【出願日】2022-06-27
(65)【公開番号】P2023007489
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10 2021 206 701.8
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598113922
【氏名又は名称】レンク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ボイガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ハイダー
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0282820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
F16H 3/66
F16H 48/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節可能な可変の回転数で駆動されるべき作業機械(4)の駆動装置であって、
差動歯車装置(1)と、
前記差動歯車装置(1)の第1の要素に連結された第1の駆動ユニット(2)と、
前記差動歯車装置(1)の第2の要素に連結された作業機械(4)と、
前記差動歯車装置(1)の第3の要素に連結された第2の駆動ユニット(3)であって、回転数が、前記第1の駆動ユニット(2)の回転数に依存する回転数に重ね合わせられ得る第2の駆動ユニット(3)と、
を有しており、
前記第1の駆動ユニット(2)又は前記第2の駆動ユニット(3)は、調節可能な可変の回転数で駆動され得る駆動装置において、
補助歯車段(12)、及び、前記補助歯車段(12)と協働するスイッチ(13)を有しており、
前記スイッチ(13)が閉じている場合、前記補助歯車段(12)は負荷を伝達しており、前記第1の駆動ユニット(2)の回転数と前記第2の駆動ユニット(3)の回転数とは、前記補助歯車段(12)の少なくとも1つの歯車比に依存して連結されており、
前記スイッチ(13)が開いている場合、前記補助歯車段(12)は負荷を有さず、前記第1の駆動ユニット(2)の回転数と前記第2の駆動ユニット(3)の回転数とは、連結を解除されており、
前記第2の駆動ユニット(3)が、前記補助歯車段(12)の一方の要素と持続的に、回転しないように連結されており、
前記補助歯車段(12)の他方の要素は、前記第1の駆動ユニット(2)と共に、前記差動歯車装置(1)の前記第1の要素と持続的に、回転しないように連結されているか、又は、
前記補助歯車段(12)の他方の要素は、前記作業機械(4)と共に、前記差動歯車装置(1)の前記第2の要素と持続的に、回転しないように連結されており、
前記スイッチ(13)は、閉じた状態において、前記補助歯車段(12)の他方の要素をハウジングと連結し、
前記差動歯車装置(1)が、前記第1の駆動ユニット(2)が連結された第1の遊星歯車セット(5)を有しており、
前記差動歯車装置(1)が、前記作業機械(4)が連結された第2の遊星歯車セット(6)を有しており、
前記第1の遊星歯車セット(5)と前記第2の遊星歯車セット(6)とはそれぞれ、遊星歯車(5b、6b)を有しており、前記遊星歯車は、遊星キャリア(8)内に取り付けられた少なくとも2つの共通の遊星シャフト(7)上に配置されており、
前記遊星キャリア(8)は、ハウジング(9)内に回転可能に取り付けられており、前記第2の駆動ユニット(3)によって駆動され得ることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記補助歯車段(12)が、補助遊星歯車セットとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記スイッチ(13)が、フリーホイール又は同期クラッチであることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記スイッチ(13)が、自動的に切り替わること、すなわち自動的に閉じ、自動的に開くことを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記スイッチ(13)が、摩擦接続的な継手であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記スイッチ(13)が、閉じた状態において、前記第2の駆動ユニット(3)を前記補助歯車段(12)の一方の要素と回転しないように連結するか、又は、前記補助歯車段(12)の他方の要素を、前記差動歯車装置(1)の第1の要素若しくは第2の要素と回転しないように連結することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第1の遊星歯車セット(5)が、前記第1の駆動ユニット(2)が連結された太陽歯車(5a)を有しており、前記第1の遊星歯車セット(5)の前記太陽歯車(5a)は、前記遊星シャフト(7)上に配置された前記第1の遊星歯車セット(5)の前記遊星歯車(5b)と噛み合っているか、又は、
前記第1の遊星歯車セット(5)は、前記第1の駆動ユニット(2)が連結された内歯車を有しており、前記第1の遊星歯車セット(5)の前記内歯車は、前記遊星シャフト(7)上に配置された前記第1の遊星歯車セット(5)の前記遊星歯車(5b)と噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第2の遊星歯車セット(6)が、前記作業機械(4)が連結された太陽歯車(6a)を有しており、前記第2の遊星歯車セット(6)の前記太陽歯車(6a)は、前記遊星シャフト(7)上に配置された前記第2の遊星歯車セット(6)の前記遊星歯車(6b)と噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1の駆動ユニット(2)が一定の回転数で駆動可能であり、前記第2の駆動ユニット(3)が可変の回転数で駆動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の駆動装置を動作させるための方法であって、
前記駆動装置の始動のために、スイッチ(13)が閉じ、未だ電流が流れていない第1の駆動ユニット(2)は、第2の駆動ユニット(3)によって、前記第1の駆動ユニットの公称回転数まで加速されるステップと、
前記第1の駆動ユニット(2)において公称回転数に到達すると共に、前記第1の駆動ユニット(2)が給電され、前記スイッチ(13)が開くステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を調節可能な可変の回転数で駆動するための、作業機械の駆動装置に関する。本発明はさらに、当該駆動装置を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実践からは、例えば圧縮機又はポンプ等の作業機械を、調節可能な可変の回転数で動作させなければならない使用が知られている。このために、実践によると、駆動ユニットとして電動機が周波数変換器と共に用いられるか、又は、必要とされる範囲において可変の歯車比を供給し得る、油圧若しくは電気で駆動される重ね合わせ機構(Ueberlagerungszweig)を有する歯車装置が用いられる。作業機械を調節可能な可変の回転数で駆動するための実践から知られた両方の可能性は、複雑かつ高価であり、駆動に必要な高い出力ゆえに、中電圧周波数変換器が必要である。
【0003】
特許文献1は、調節可能である可変の回転数で作業機械を駆動するための作業機械の駆動装置を開示しており、当該駆動装置は、作業機械の他に、差動歯車装置と2つの駆動ユニットとを含んでいる。第1の駆動ユニットは、差動歯車装置の第1の要素に連結されている。作業機械は、差動歯車装置の第2の要素に連結されている。差動歯車装置の第3の要素には、第2の駆動ユニットが連結されており、その回転数に、第1の駆動ユニットの回転数に依存する回転数が重ね合わせられ得る。第1の駆動ユニット又は第2の駆動ユニットは、調節可能な可変の回転数で駆動され得る。当該駆動装置は、容易かつ安価な手段で、調節可能な可変の回転数で作業機械を駆動することを可能にする。
【0004】
調節可能な可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置を創出する必要があり、好ましくは容易かつ安全に、公称回転数まで加速し得る駆動装置を創出する必要がある。好ましくは、回転数を制御できない駆動ユニットを電力供給網に接続する際に、供給網の障害又は加速の際の過熱をもたらし得る高すぎる突入電流が引き起こされることは、回避すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102015006084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、新式の駆動装置及び当該駆動装置を動作させるための方法を創出することにある。本課題は、請求項1に記載の、調節可能な可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置によって解決される。当該駆動装置を動作させるための方法は、請求項17において特定されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
駆動装置は、差動歯車装置と、差動歯車装置の第1の要素と連結された第1の駆動ユニットと、差動歯車装置の第2の要素と連結された作業機械と、差動歯車装置の第3の要素と連結された第2の駆動ユニットと、を有しており、第2の駆動ユニットの回転数は、第1の駆動ユニットの回転数に依存する回転数に重ね合わせられ得る。第1の駆動ユニット又は第2の駆動ユニットは、調節可能な可変の回転数で駆動され得る。
【0008】
駆動装置はさらに、補助歯車段、及び、当該補助歯車段と協働するスイッチを有しており、スイッチが閉じている場合、補助歯車段は負荷を伝達しており、第1の駆動ユニットの回転数と第2の駆動ユニットの回転数とは、補助歯車段の少なくとも1つの歯車比に依存して連結されており、スイッチが開いている場合、補助歯車段は負荷を有さず、第1の駆動ユニットの回転数と第2の駆動ユニットの回転数とは、連結を解除されている。補助歯車段によって、駆動装置は、有利には容易かつ確実に、第2の駆動ユニットの回転数の可変性を利用して、公称回転数まで加速され得る。
【0009】
好ましくは、スイッチは、フリーホイール又は同期継手等の、自動的に切り替わる、すなわち自動的に閉じ、自動的に開くスイッチである。第1の駆動ユニットが加速によって公称回転数にもたされた場合、及び、第2の駆動ユニットの回転数が、安全性に関わる超過回転数に到達した場合、スイッチは自動的に閉じ、駆動装置の安全性を脅かす破損を回避することができる。第1の駆動ユニットの回転数が第2の駆動ユニットの回転数よりも大きい場合、スイッチは自動的に開く。第2の駆動ユニットの制御装置が故障し、その回転数が、補助歯車段の歯車比を考慮して、第1の駆動ユニットの回転数よりも大きい場合、スイッチは自動的に閉じる。自動的に切り替わるスイッチを使用することによって、制御ユニットが不要になり、機械的コンポーネントの使用による安全性にとって重大な保護が、容易かつ確実に保証され得る。
【0010】
代替的に、スイッチは、多板クラッチのような能動的に切り替わるスイッチであってもよい。
【0011】
補助歯車段は、補助遊星歯車セットとして構成されていてもよい。これは、構造的に単純で好ましい。
【0012】
スイッチは、一態様において閉じた状態では、第2の駆動ユニットを補助歯車段の一方の要素と回転しないように連結するか、補助歯車段の他方の要素を、差動歯車装置の第1の要素若しくは第2の要素と回転しないように連結する。
【0013】
スイッチが閉じている場合、差動歯車装置はもはや、差動歯車装置としては動作できず、差動歯車装置は固定した歯車比を有している。
【0014】
好ましくは、スイッチは、閉じた状態において、第2の駆動ユニットを補助歯車段の一方の要素と回転しないように連結し、補助歯車段の他方の要素は、第1の駆動ユニットと共に、差動歯車装置の第1の要素と持続的に、回転しないように連結されている。
【0015】
別の好ましい実施形態では、第2の駆動ユニットが補助歯車段の一方の要素と持続的に、回転しないように連結されており、スイッチは閉じた状態において、補助歯車段の他方の要素を、差動歯車装置の第1の要素と回転しないように連結する。
【0016】
本発明のこれら両方の有利な実施形態は、特に好ましい。スイッチが閉じている場合、第2の駆動ユニットを用いて公称回転数まで加速されるべき第1の駆動ユニットの回転数は、第2の駆動ユニットの回転数の他に、専ら補助歯車段の歯車比に依存している。
【0017】
この際、補助歯車段の歯車比は、好ましくは、第2の駆動ユニットの最大回転数において、第1の駆動ユニットがその公称回転数に到達するように選択されている。
【0018】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び以下の記載から明らかになる。本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明するが、これに限定されるべきではない。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第1の駆動装置のブロック図である。
図2】本発明に係る第2の駆動装置のブロック図である。
図3】本発明に係る第3の駆動装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、調節可能な可変の回転数で駆動されるべき作業機械の駆動装置に関するものであり、作業機械とは、例えば圧縮機又はポンプであり得る。
【0021】
図1は、差動歯車装置1、第1の駆動ユニット2、第2の駆動ユニット3及び作業機械4を有する当該駆動装置の第1の好ましい実施例を示している。第1の駆動ユニット2は、主駆動ユニットとも呼ばれ、第2の駆動ユニット3は、重ね合わせ駆動ユニットとも呼ばれる。これらの駆動ユニット2、3は、それぞれ好ましくは電気機械である。差動歯車装置1は、図示された好ましい実施例では、太陽歯車5aと少なくとも2つの遊星歯車5bとを備えた第1の遊星歯車セット5を有しており、遊星歯車5bは、第1の遊星歯車セット5の太陽歯車5aと噛み合っている。差動歯車装置1はさらに、太陽歯車6aと少なくとも2つの遊星歯車6bとを備えた第2の遊星歯車セット6を有しており、遊星歯車6bは、太陽歯車6aと噛み合っている。両方の遊星歯車セット5、6のそれぞれ2つの遊星歯車5b、6bは、それぞれ共通の遊星シャフト7に配置されており、これによって、遊星シャフト7はそれぞれ、第1の遊星歯車セット5の遊星歯車5bと、及び、第2の遊星歯車セット6の遊星歯車6bと、回転しないように連結されている。図1に係る差動歯車装置1の場合、遊星シャフト7は、遊星キャリア8内に回転可能に取り付けられており、遊星キャリア8は、詳細には示されていない、回転しないハウジング9内において、好ましくは図示されていない滑り軸受を通じて、回転可能に取り付けられている。
【0022】
本発明に係る駆動装置では、主電動機とも呼ばれる第1の駆動ユニット2は、差動歯車装置1の第1の要素に連結されており、具体的には、第1の駆動ユニット2は、シャフト10を通じて、持続的に、直接、回転しないように、差動歯車装置1の第1の要素と連結されており、図1の実施例では、第1の駆動ユニット2が連結されている差動歯車装置1の第1の要素は、第1の遊星歯車セット5の太陽歯車5aである。
【0023】
第1の遊星歯車セット5は、太陽歯車5aの代わりに、内歯車を有することも可能であり、第1の駆動ユニット2は、シャフト10を通じて、第1の遊星歯車セット5の内歯車と連結されており、内歯車は、径方向外側において、遊星歯車5bと噛み合っている。
【0024】
作業機械4は、差動歯車装置1の第2の要素と連結されており、具体的には、図1によると、作業機械4は、シャフト11を通じて、持続的に、直接、回転しないように、第2の遊星歯車セット6の太陽歯車6aと連結されている。
【0025】
第2の駆動ユニット3は、差動歯車装置1の第3の要素に係合しており、第2の駆動ユニット3が係合している差動歯車装置1の第3の要素は、図示された実施例では、差動歯車装置1の遊星キャリア8である。従って、遊星キャリア8の駆動は、第2の駆動ユニット3によって行われ、その回転数又は駆動出力は、第1の駆動ユニット2の回転数又は駆動出力に重ねられる。この際、第1の駆動ユニット2は、好ましくは固定した、又は、一定の回転数で駆動されるが、第2の駆動ユニット3は、好ましくは可変の回転数で駆動される。第1の駆動ユニット2が一定の回転数で動作する場合、作業機械4において可変の回転数を設定するために、第2の駆動ユニット3を始点として、第1の駆動ユニット2の回転数に依存する回転数に、回転数を無段階に重ねることが可能である。
【0026】
本発明に係る駆動装置は、差動歯車装置1、両方の駆動ユニット2、3及び作業機械4に加えて、補助歯車段12、及び、補助歯車段12と協働するスイッチ13を有している。スイッチ13が閉じている場合、補助歯車段12は、負荷を伝達しており、第1の駆動ユニット2の回転数と第2の駆動ユニット3の回転数とは連結されており、具体的には、補助歯車段12の歯車比に依存して連結されている。
【0027】
スイッチ13が閉じている場合、両方の駆動ユニット2及び3の回転数は、固定した比を有している。作業機械4も、依然として駆動ユニット2、3の回転数に依存する回転数を有している。第2の駆動ユニット3にのみ電流が供給される場合、第2の駆動ユニット3の回転数が、駆動装置の他の全ての回転数に関して基準となり、第2の駆動ユニット3は、駆動装置を単独で駆動する。
【0028】
これに対して、スイッチ13が開いている場合、補助歯車段12は負荷を有さず、第1の駆動ユニット2の回転数と第2の駆動ユニット3の回転数とは、連結を解除されている。第2の駆動ユニット3は、出力と回転数とが重なり合う部分のみを供給する。
【0029】
スイッチ13は、閉じた状態では、差動歯車装置1の自由度を停止するために、差動歯車装置1に関するブロックとして作用する。これは特に、停止している第1の駆動ユニット2を始点として、駆動装置を加速させるために用いられ、これによって、第1の駆動ユニット2は、第2の駆動ユニット3を始点として、その公称回転数にもたらされる。
【0030】
このように、スイッチ13が閉じている際に、第2の駆動ユニット3を始点として、第1の駆動ユニット2を加速させる場合、第1の駆動ユニット2には電流が流れておらず、第1の駆動ユニット2が公称回転数に到達した後で初めて、まず第1の駆動ユニット2が給電され、続いてスイッチ13が開く。
【0031】
補助歯車段12は、太陽歯車12a、遊星歯車12b及び内歯車12cを有している。遊星歯車12bは、遊星キャリア14に回転可能に取り付けられている。
【0032】
図1では、補助歯車段12の要素、すなわち太陽歯車12aが、第1の駆動ユニット2と共に、持続的に、直接、回転しないように、シャフト10と、及び、差動歯車装置1の第1の要素、図1では差動歯車装置1の第1の遊星歯車セット5の太陽歯車5aと係合している。
【0033】
スイッチ13が閉じている場合、スイッチ13は、図1において第2の駆動ユニット3を、回転しないように補助歯車段12の第2の要素と、具体的には図1の遊星キャリア14と連結している。
【0034】
図1の実施例では、第1の駆動ユニット2は、太陽歯車5a及び遊星シャフト7を通じて太陽歯車6aを駆動し、太陽歯車6aを通じて作業機械4を駆動する。差動歯車装置1の回転可能に取り付けられた遊星キャリア8を通じて、通常の動作において、作業機械4で可変の回転数を設定するために、第2の駆動ユニット3を始点として、シャフト11における第1の駆動ユニット2の回転数に依存する回転数に、回転数が重ねられ得る。
【0035】
通常の動作において、つまり、第1の駆動ユニット2がその公称回転数で動作する場合、スイッチ13は開いている。しかしながら、駆動装置を加速させるために、特に第1の駆動ユニット2が停止している状態から加速させるために、スイッチ13は閉じ、第2の駆動ユニット3は、スイッチ13を通じて、補助歯車段12及びシャフト10に連結されるか、又は、回転しないように取り付けられる。これによって、差動歯車装置1の自由度が停止され、第2の駆動ユニット3によって駆動装置を、加速の際に電流が流れていない第1の駆動ユニット2の公称回転数まで加速させることが可能になる。補助歯車段12の歯車比は、第2の駆動ユニット3の最大回転数において、第1の駆動ユニット2がその公称回転数に達するように選択されている。
【0036】
スイッチ13は、例えば多板クラッチ等の摩擦クラッチの形状を有する摩擦接続的スイッチであるか、又は、噛み合いクラッチの形状を有する形状接続的スイッチであり得る。スイッチ13が摩擦クラッチとして構成されている場合、摩擦クラッチは、第2の駆動ユニット3が動作中に故障するような場合における、第2の駆動ユニット3に対するブレーキの機能を担い得る。
【0037】
特に好ましい態様において、スイッチ13は、自動的に閉じ、自動的に開くスイッチ13として、特にフリーホイール又は同期継手として構成されており、トルクは、専ら回転方向において伝達可能である。これによって、スイッチ13が、駆動装置2の加速の際に自動的に閉じ、同様に、第2の駆動ユニット3が動作中に安全性にとって重大な破損を生じた場合に、自動的に閉じることが可能になる。第1の駆動ユニット2の回転数が、第2の駆動ユニット3の回転数よりも大きい場合、スイッチ13は、自動的に開き、通常の重ね合わせが開始し得る。
【0038】
第2の駆動ユニット3によって引き上げられ、スイッチを入れる際にピーク電圧を生じさせずに既にその公称回転数で稼働している第1の駆動ユニット2の回転数が、その公称回転数に到達すると同時に、スイッチ13が開き得る。
【0039】
これは、好ましく用いられるスイッチ13が自動で切り替わる態様において、第2の駆動ユニット3の回転数が、好ましくは補助遊星歯車セットとして構成された補助歯車段12の歯車比を考慮して、クラッチの開放によるクラッチカップリングの場合、第1の駆動ユニット2の回転数に対して減少させられることによって行われる。しかしながら、同期継手又はフリーホイールとしての、スイッチ13の自動で切り替わる態様が好ましい。
【0040】
スイッチ13は、通常運転全体を通して、つまり第1の駆動ユニット2が公称回転数で稼働している場合、開いたままである。自動に切り替わるスイッチ13を用いる場合、安全性に関する制御ユニットは不要である。安全性にとって重要な機能は、機械的コンポーネントによって、すなわち自動で閉じるスイッチ13によって調達され得る。差動歯車装置1の連結に関して、アクチュエータは不要である。差動歯車装置1の連結は、自動で行われる。差動歯車装置1の連結解除にも、アクチュエータは不要である。第1の駆動ユニット2の回転数が、第2の駆動ユニット3の回転数よりも大きい場合、スイッチ13は自動的に開く。補助遊星セット12は、常に、第1の駆動ユニット2の回転数で回転する。
【0041】
図2は、本発明に係る駆動装置の変型例を示しており、当該変型例では、第2の駆動ユニット3は、持続的かつ回転しないように、補助歯車段12の要素、すなわち遊星キャリア14と連結されている。図2では、スイッチ13を通じて、遊星歯車セット12の太陽歯車12aが、差動歯車装置1の第1の要素、つまり図2の差動歯車装置1の第1の遊星歯車セット5の太陽歯車5aと、回転しないように連結されていてよい。従って、図2では、スイッチ13は、太陽歯車12aとシャフト10との間に接続されている。補助遊星セット12は、常に、第2の駆動ユニット3の回転数で回転している。
【0042】
図3は、本発明に係る駆動装置の別の実施例を示している。図1及び図2では、補助歯車段12の内歯車12cがそれぞれ、ハウジング9に持続的に固定して取り付けられているが、図3では、スイッチ13は、ハウジング9と補助歯車段12の内歯車12cとの間に接続されている。図3では、補助歯車段12の太陽歯車12aは、持続的に、回転しないようにシャフト10と連結されており、電気機械3は、持続的に、回転しないように補助歯車段12の遊星キャリア14と連結されている。補助遊星セット12のコンポーネントの回転数は、両方の駆動ユニット2、3によって決定された回転数である。
【0043】
スイッチ13が閉じることによって、補助歯車段12の内歯車12cがハウジング9に連結され、これによって、差動歯車装置1の自由度が制限され、第1の駆動ユニット2の加速のために、第2の駆動ユニット3が使用され、このために、負荷が、補助歯車段12を通じて、第2の駆動ユニット3を始点として第1の駆動ユニット2の方向に伝達される。
【0044】
図1から図3の実施例は、補助歯車段12の要素が第2の駆動ユニット3に、持続的に(図1及び図3を参照)、又は、切り替え可能に(図2を参照)連結されているという点で共通している。
【0045】
これとは異なり、補助歯車段12が、作業機械4が係合しているシャフト11と協働すること、具体的には、補助歯車段12の要素がシャフト11と持続的に回転しないように、又は、切り替え可能に連結されているように協働することも可能である。この際、第2の駆動ユニット3は、補助歯車段と共に、差動歯車装置1の、シャフト11が延在する他方の側に変位していてよい。第2の駆動ユニット3と補助歯車段12とは、差動歯車装置1の異なる側に配置されていてよい。
【0046】
本発明は、駆動装置が第2の駆動ユニット3によって加速し、具体的には、第1の駆動ユニット2がその公称回転数に到達するまで加速することを可能にする。第2の駆動ユニット3は、ただ変換器のみを必要とする。第1の駆動ユニット2において、動作開始のための支援は省かれる。スイッチ13が自動的に閉じる場合、スイッチ13を作動させるための、安全性に関する制御装置は不要である。
【0047】
これは、好ましくは、駆動装置の加速のために、自動的に閉じ、自動的に開く同期継手又はフリーホイールを用いることによって得られる。
【0048】
本発明はさらに、本発明に係る駆動装置を動作させるための方法に関するものである。駆動装置の始動のために、スイッチ13は、好ましくは自動的に閉じ、未だに電流の流れていない第1の駆動ユニット2は、第2の駆動ユニット3を通じて、スイッチ13が閉じている場合に、その公称回転数まで加速され、この際、補助歯車段12は、回転数を、第1の駆動ユニット2の方向に伝達する。第1の駆動ユニット2において公称回転数に到達すると、まず第1の駆動ユニット2が給電され、次に、スイッチ13が開く。第2の駆動ユニット3の回転数は減少し、スイッチ13は、好ましくは自動的に開く。
【0049】
第2の駆動ユニット3を設計する際には、作業機械4が、第2の駆動ユニット3の回転数と既知の関数の関係にある、用途に固有の加速トルクを生じさせることに注意した方がよい。当該トルク又は必要な出力は、第2の駆動ユニット3によって、第1の駆動ユニット2の給電までの短時間のみであっても、確実に供給されなければならない。
【符号の説明】
【0050】
1 差動歯車装置
2 第1の駆動ユニット
3 第2の駆動ユニット
4 作業機械
5 第1の遊星歯車セット
5a 太陽歯車
5b 遊星歯車
6 第2の遊星歯車セット
6a 太陽歯車
6b 遊星歯車
7 遊星シャフト
8 遊星キャリア
9 ハウジング
10 シャフト
11 シャフト
12 補助歯車段
12a 太陽歯車
12b 遊星歯車
12c 内歯車
13 スイッチ
14 遊星キャリア
図1
図2
図3