(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20240625BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20240625BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01R31/08 Q
H01R43/24
H01R4/64 C
(21)【出願番号】P 2022130187
(22)【出願日】2022-08-17
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 浩三
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知由
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-110713(JP,A)
【文献】特開2016-212982(JP,A)
【文献】特開平9-7671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 31/08
H01R 43/24
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアース部位にねじ止め固定される板状固定部と、前記板状固定部に延設された本体水平板部と、前記本体水平板部に対して折り曲げ部で立上り方向に折り曲げ形成された本体立上り板部と、前記本体立上り板部の上方に設けられて相手側端子が電気的に接続される複数の端子接続部が形成された端子連設部と、前記本体立上り板部における前記端子連設部の近傍でクランク状に折り曲げられたクランク状折り曲げ部とが一体形成された導電金属製のアース端子部材と、
前記本体立上り板部の外周表面における前記クランク状折り曲げ部よりも前記本体水平板部側に施されたプライマー処理部と、
前記端子連設部に対応した前記端子接続部の突出方向と反対側の表面には溶融樹脂が充填されたゲート痕を有し、前記アース端子部材がインサート成形されたハウジングと、
を備えたジョイントコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のジョイントコネクタを製造するジョイントコネクタの製造方法であって、
前記ハウジングを成形する金型に前記アース端子部材を保持させ、前記金型における前記端子連設部に対向する位置に配置されたゲートから前記金型内に溶融樹脂を充填して前記ハウジングを成形する、
ジョイントコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントコネクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の電線を一括して車両のアース部位に接続するジョイントコネクタとしては、車両のボディ(アース部位)にねじ止め固定される固定板部(板状固定部)を有すると共に、相手側コネクタの端子(相手側端子)が電気的に接続される複数のタブ部(端子接続部)が形成されたベース部(端子連設部)を固定板部の一端に有する接続部材(アース端子部材)と、接続部材がインサート成形された樹脂製のハウジングと、を備えたものが知られている。
このような接続部材を備えたジョイントコネクタは、接続部材を金型内にセットした状態で、金型内に溶融樹脂を射出してハウジングを成形する樹脂と一体成形することで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のジョイントコネクタが一体成形された状態では、接続部材のベース部等の外周表面は、ハウジングの樹脂と密着している。しかし、一体成形を行う際、所定の成形条件で成形したとしても、場合によっては外気温の影響等により、接続部材のベース部等の外周表面とハウジングの樹脂とが密着せず、隙間を生じる可能性がある。
そこで、上記のようなジョイントコネクタを防水コネクタとして用いる場合には、接続部材のベース部等の外周表面とハウジングの樹脂との間に生じる隙間により、水がコネクタ内に浸入することが懸念される。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタ内に水が浸入することを抑制できるジョイントコネクタ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るジョイントコネクタは、下記(1)を特徴としている。
(1) 車両のアース部位にねじ止め固定される板状固定部と、前記板状固定部に延設された本体水平板部と、前記本体水平板部に対して折り曲げ部で立上り方向に折り曲げ形成された本体立上り板部と、前記本体立上り板部の上方に設けられて相手側端子が電気的に接続される複数の端子接続部が形成された端子連設部と、前記本体立上り板部における前記端子連設部の近傍でクランク状に折り曲げられたクランク状折り曲げ部とが一体形成された導電金属製のアース端子部材と、
前記本体立上り板部の外周表面における前記クランク状折り曲げ部よりも前記本体水平板部側に施されたプライマー処理部と、
前記端子連設部に対応した前記端子接続部の突出方向と反対側の表面には溶融樹脂が充填されたゲート痕を有し、前記アース端子部材がインサート成形されたハウジングと、
を備えたジョイントコネクタ。
【0007】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係るジョイントコネクタの製造方法は、下記(2)を特徴としている。
(2) 上記(1)に記載のジョイントコネクタを製造するジョイントコネクタの製造方法であって、
前記ハウジングを成形する金型に前記アース端子部材を保持させ、前記金型における前記端子連設部に対向する位置に配置されたゲートから前記金型内に溶融樹脂を充填して前記ハウジングを成形する、
ジョイントコネクタの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るジョイントコネクタ及びその製造方法によれば、アース端子部材がインサート成形されたハウジングの樹脂とアース端子部材の外周表面との間に生じる隙間を防止して、コネクタ内に水が浸入することを抑制できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、相手側コネクタが嵌合された本発明の一実施形態に係るジョイントコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したジョイントネクタ及び相手側コネクタの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したジョイントコネクタを前方側から視た斜視図である。
【
図4】
図4は、アース端子部材がハウジングにインサート成形されたジョイントコネクタの背面図である。
【
図5】
図5は、アース端子部材を後方上側から視た斜視図である。
【
図6】
図6は、アース端子部材を前方下側から視た斜視図である。
【
図7】
図7は、
図4におけるVII-VII断面矢視図である。
【
図8】
図8は、車両のアース部位にねじ止め固定されたジョイントコネクタ及び相手側コネクタの縦断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るジョイントコネクタの製造方法を説明する金型の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は、相手側コネクタ51が嵌合された本発明の一実施形態に係るジョイントコネクタ1の斜視図である。
図2は、
図1に示したジョイントコネクタ1及び相手側コネクタ51の分解斜視図である。
【0012】
なお、本明細書中、ジョイントコネクタ1の前後方向、上下方向および左右方向は、
図1に示した矢印の方向に従うものとする。即ち、前後方向とは、ジョイントコネクタ1のコネクタ嵌合方向に沿う方向であり、相手側ハウジング52が嵌合される側をハウジング31の前方とする。また、上下方向とは、扁平直方体状のジョイントコネクタ1のコネクタ嵌合方向と直交するハウジング31の短手方向であり、ハウジング31のロック部39側を上方とする。更に、左右方向とは、ジョイントコネクタ1のコネクタ嵌合方向と直交するハウジング31の長手方向である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るジョイントコネクタ1には、相手側コネクタ51が嵌合される。
ジョイントコネクタ1は、導電金属製のアース端子部材11と、プライマー処理部29と、絶縁樹脂製のハウジング31とを備えている。相手側コネクタ51は、端子付き電線61と、絶縁樹脂製の相手側ハウジング52と、環状パッキン41とを備えている。
【0014】
ハウジング31には、相手側コネクタ51との嵌合方向前方側である先端側が開口された嵌合凹部33が形成されている(
図3、参照)。相手側ハウジング52には、
図2に示すように、ジョイントコネクタ1に嵌合される先端側に相手側嵌合部53が形成されている。そして、ハウジング31の嵌合凹部33に相手側ハウジング52の相手側嵌合部53を嵌合させることで、ジョイントコネクタ1に相手側コネクタ51が嵌合される。
【0015】
図2に示すように、相手側ハウジング52の相手側嵌合部53には、複数の端子収容室55が形成されている。これら端子収容室55は、ジョイントコネクタ1との嵌合方向に沿って形成されている。これら端子収容室55は、相手側ハウジング52の左右幅方向に配列されており、その配列が上下2段とされている。相手側嵌合部53は、それぞれの端子収容室55に突出するランス部(図示せず)を有している。また、相手側ハウジング52の上面には、ロックアーム57が形成されている。
【0016】
相手側ハウジング52は、相手側嵌合部53の周囲にフード部54を有しており、このフード部54内に、環状パッキン41が嵌め込まれている。この環状パッキン41は、ハウジング31の嵌合凹部33に相手側ハウジング52の相手側嵌合部53が嵌合された際に、嵌合凹部33と相手側嵌合部53との間を止水する。
【0017】
端子収容室55には、端子付き電線61の相手側端子63が相手側ハウジング52の後方側から収容される。相手側端子63は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料から形成されたもので、導体の周囲を外被で覆った電線62の端末に圧着されて導通接続されている。
【0018】
この相手側端子63は、端子収容室55に対して、相手側ハウジング52の後方側から挿入されることで、ランス部に係止される。これにより、相手側端子63は、端子収容室55内に収容された状態に保持される。
また、電線62の端末には、円筒状のパッキンである防水栓64が嵌着されている。防水栓64は、電線62の端末が端子収容室55内に挿入された時に、端子収容室55の内周面に密着して電線62との間を水密に止水する。
【0019】
図3は、
図2に示したジョイントコネクタ1を前方側から視た斜視図である。
図4は、アース端子部材11がハウジング31にインサート成形されたジョイントコネクタ1の背面図である。
図5は、アース端子部材11を後方上側から視た斜視図である。
図6は、アース端子部材11を前方下側から視た斜視図である。
図7は、
図4におけるVII-VII断面矢視図である。
【0020】
図3及び
図4に示すように、ジョイントコネクタ1は、ハウジング31にアース端子部材11がインサート成形されている。
図5及び
図6に示すように、アース端子部材11は、板状固定部12と、板状固定部12に延設された本体水平板部15と、本体水平板部15に延設された本体立上り板部19と、本体立上り板部19の上方に設けられた端子連設部21と、本体立上り板部19における端子連設部21の近傍に設けられたクランク状折り曲げ部28と、本体水平板部15の左右側縁に連設されて上方に突出した連結片16とが一体形成されている。
【0021】
板状固定部12には、ボルト挿通孔13が形成されている。板状固定部12は、ボルト挿通孔13へ挿通させたスタッドボルト71をナット73で車両のアース部位であるボディ100に締結することでボディ100にねじ止め固定される。これにより、アース端子部材11は、ボディ100に接地される。板状固定部12の一部には、回り止め片14が形成されている。回り止め片14は、板状固定部12をねじ止め固定する接地面の周囲の段差や孔部に係合することで、接地面に対する板状固定部12の回動を規制する。
【0022】
板状固定部12の前方に延設された本体水平板部15の左右側縁には、上方に折り曲げ形成された一対の連結片16が連設されている。連結片16には、連結片16を覆うハウジング31の樹脂部38との連結強度を高めるための係止部である貫通孔18が形成されている。
【0023】
本体立上り板部19は、本体水平板部15に対して折り曲げ部20で立上り方向に90°に折り曲げ形成されている。なお、折り曲げ部20の折り曲げ角度は、90°に限るものではなく、板状固定部12をねじ止め固定する接地面の周囲の形状や相手側コネクタ51の嵌合方向に応じて適宜変更することができる。
また、折り曲げ部20には、本体水平板部15と本体立上り板部19に渡って打ち出し部27が設けられている。
【0024】
本体立上り板部19における端子連設部21の近傍には、板厚方向に沿ってクランク状に折り曲げられたクランク状折り曲げ部28が形成されている。クランク状折り曲げ部28は、本体立上り板部19における端子連設部21から本体水平板部15までの沿面距離を稼ぐことができる。
【0025】
更に、本体立上り板部19の外周表面におけるクランク状折り曲げ部28よりも本体水平板部15側には、プライマー処理部29が塗布等により施されている。プライマー処理部29は、
図7に示すように、アース端子部材11がハウジング31にインサート成形された際、本体立上り板部19の外周表面にハウジング31の樹脂を密着させることができる。
【0026】
端子連設部21の左右両端部には、折り返し板部22がそれぞれ連設されており、前方へ折り返された折り返し板部22が端子連設部21に重ね合わされた状態となっている。
折り返し板部22には、ダボ出し加工により端子連設部21側に突出するダボ25が形成されている。そして、折り返し板部22は、端子連設部21に形成した穴24にダボ25を嵌め込むことで、端子連設部21に対するズレが規制される。
【0027】
そして、折り返し板部22の上下縁部からは、複数の端子接続部26が同一方向へ向けて突出されている。そして、アース端子部材11では、本体立上り板部19に対して、その面と直交する前方へ突出する複数の端子接続部26が上下2段に配列されている。
【0028】
図3及び
図4に示すように、アース端子部材11がインサート成形されるハウジング31は、相手側ハウジング52の相手側嵌合部53が嵌合される嵌合凹部33及びロック部39を備えたハウジング本体部32と、一対の補強リブ部35とが一体成形される。
【0029】
即ち、ハウジング本体部32には、複数の端子接続部26を嵌合凹部33の内部に突出させた状態で本体立上り板部19及び端子連設部21がインサート成形される。また、一対の補強リブ部35は、連結片16を覆う樹脂部38と端子連設部21を覆う樹脂部36とをそれぞれ連結するようにハウジング本体部32に一体成形される。連結片16を覆う樹脂部38は、連結片16の貫通孔18内に流入し固化することで、連結片16との連結強度が高められている。
【0030】
また、
図4及び
図7に示すように、ジョイントコネクタ1は、ハウジング31における端子連設部21に対応した端子接続部26の突出方向と反対側の表面31aに、アース端子部材11をインサート成形した際にハウジング31の溶融樹脂が充填された痕跡であるゲート痕30を有している。
【0031】
次に、ジョイントコネクタ1に相手側コネクタ51を嵌合する場合について説明する。
図8は、車両のボディ100にねじ止め固定されたジョイントコネクタ1及び相手側コネクタ51の縦断面図である。
車両のボディ100にねじ止め固定されたジョイントコネクタ1に相手側コネクタ51を嵌合すべく、ジョイントコネクタ1のハウジング31の先端に相手側コネクタ51の相手側ハウジング52の先端を向けて近接させる。そして、ハウジング31の嵌合凹部33に、相手側ハウジング52の相手側嵌合部53を挿し込む。
【0032】
すると、ジョイントコネクタ1のアース端子部材11に形成された端子接続部26が、相手側ハウジング52の端子収容室55に収容された相手側端子63に導通接続され、電線62がアース端子部材11に導通される。また、各電線62同士もアース端子部材11を介して互いに導通される。また、この状態で、ロックアーム57がロック部39を係止し、ハウジング31と相手側ハウジング52とが嵌合された状態にロックされる。
【0033】
次に、インサート成形によってアース端子部材11がハウジング31に一体化された上記ジョイントコネクタ1を製造する場合について説明する。
図9は、本実施形態に係るジョイントコネクタ1の製造方法を説明する金型の概略断面図である。
【0034】
図9に示すように、インサート成形によってハウジング31を成形してジョイントコネクタ1を製造するには、例えば金型81A,81B,81Cを用いる。金型81Aは、ハウジング31の前方側の成形用金型であり、金型81Bは、ハウジング31の後方側の成形用金型であり、金型81Cは、ハウジング31の下面側の成形用金型である。
【0035】
これらの金型81A,81B,81Cでインサート成形する際、アース端子部材11における本体立上り板部19及び端子連設部21等がハウジング31を成形するための成形空間であるキャビティ85内に配置されるように、金型81A,81B,81Cにアース端子部材11が保持される。この状態において、金型81Bに設けられたゲート83から溶融樹脂を射出する。このゲート83は、アース端子部材11の端子連設部21における端子接続部26の突出方向と反対側の面21aに対向する位置に設けられている。
【0036】
金型81Bのゲート83から溶融樹脂を射出すると、その溶融樹脂は、
図9中の矢印で示すように、端子連設部21における端子接続部26の突出方向と反対側の面21aにあたり、その後、キャビティ85内に行きわたる。具体的には、ゲート83から射出された溶融樹脂は、端子連設部21の面21aの上下左右へ流動し、本体立上り板部19及び端子連設部21における端子接続部26の突出方向側へ回り込み、ハウジング本体部32や補強リブ部35等の成形空間内へ流れ込む。
【0037】
ここで、本体立上り板部19における端子連設部21の近傍には、クランク状折り曲げ部28が設けられている。クランク状折り曲げ部28が形成されたことによって、本体立上り板部19における端子連設部21からプライマー処理部29までの沿面距離が延び、端子連設部21の面21aの下方へ流動した溶融樹脂がプライマー処理部29に達するまでの勢いを弱めることができる。また、端子連設部21の面21aの下方へ流動した溶融樹脂は、クランク状折り曲げ部28の水平部28aにあたり、勢いが弱められた状態で本体立上り板部19の外周表面に施されたプライマー処理部29に達する。
即ち、ゲート83から射出された溶融樹脂がプライマー処理部29に直接流れ込むことはなく、プライマー処理部29が本体立上り板部19の外周表面から剥がされるのを防止することができる。
【0038】
また、例えばクランク状折り曲げ部28の曲げ方向が反対に形成された場合には、プライマー処理部29を施された本体立上り板部19の外周表面が、端子連設部21の面21aよりも端子接続部26の突出方向側へオフセットされる。そこで、端子連設部21の面21aの下方へ流動した溶融樹脂は、金型81Bの内壁にあたり、勢いが弱められた状態で本体立上り板部19の外周表面に施されたプライマー処理部29に達する。即ち、ゲート83から射出された溶融樹脂がプライマー処理部29に直接流れ込むことはなく、プライマー処理部29が本体立上り板部19の外周表面から剥がされるのを防止することができる。
【0039】
その後、金型81A,81B,81C内のキャビティ85に充填させた樹脂が硬化したら、金型81A,81B,81Cを型開きして、ジョイントコネクタ1を離型する。これにより、アース端子部材11がハウジング31にインサート成形されて一体化されたジョイントコネクタ1が得られる。
【0040】
従って、上述した本実施形態に係るジョイントコネクタ1及びその製造方法では、アース端子部材11がハウジング31にインサート成形されてジョイントコネクタ1を製造する際、ゲート83から射出された溶融樹脂が、キャビティ85内に配置された端子連設部21にあたり、その後、キャビティ85内に行きわたる。即ち、ゲート83から射出された溶融樹脂は、クランク状折り曲げ部28の水平部28aにあたり、勢いが弱められた状態で本体立上り板部19の外周表面に施されたプライマー処理部29に達する。
そこで、ゲート83から射出された溶融樹脂がプライマー処理部29に直接流れ込むことはなく、プライマー処理部29が本体立上り板部19の外周表面から剥がされるのを防止することができる。
【0041】
従って、上述した本実施形態に係るジョイントコネクタ1では、アース端子部材11がインサート成形されたハウジング31の樹脂とアース端子部材11における本体立上り板部19の外周表面とが、プライマー処理部29により確実に密着した状態となり、隙間が生じるのを防止される。そこで、ジョイントコネクタ1を防水コネクタとして用いる場合にも、アース端子部材11における本体立上り板部19の外周表面とハウジング31の樹脂との間に生じる隙間から水がコネクタ内に浸入することを抑制できる。
【0042】
従って、本実施形態のジョイントコネクタ1及びその製造方法によれば、アース端子部材11がインサート成形されたハウジング31の樹脂とアース端子部材11の外周表面との間に生じる隙間を防止して、コネクタ内に水が浸入することを抑制できる。
【0043】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
上記実施形態のハウジング31は、相手側端子63がそれぞれ複数の端子収容室55に収容された相手側ハウジング52の相手側嵌合部53が嵌合される嵌合凹部33をハウジング本体部32に備えている。そして、嵌合凹部33の内部に突出する複数の端子接続部26が相手側ハウジング52の相手側端子63に電気的に接続されるように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ハウジングが、相手側端子63を保持するランス部やリテーナ等の端子保持機構をハウジング本体部に有し、複数の端子接続部が、端子保持機構に保持された相手側端子に電気的に接続されるように構成することもできる。
【0045】
ここで、上述した本発明に係るジョイントコネクタ及びその製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両のアース部位(ボディ100)にねじ止め固定される板状固定部(12)と、前記板状固定部(12)に延設された本体水平板部(15)と、前記本体水平板部(15)に対して折り曲げ部(20)で立上り方向に折り曲げ形成された本体立上り板部(19)と、前記本体立上り板部(19)の上方に設けられて相手側端子(63)が電気的に接続される複数の端子接続部(26)が形成された端子連設部(21)と、前記本体立上り板部(19)における前記端子連設部(21)の近傍でクランク状に折り曲げられたクランク状折り曲げ部(28)とが一体形成された導電金属製のアース端子部材(11)と、
前記本体立上り板部(19)の外周表面における前記クランク状折り曲げ部(28)よりも前記本体水平板部(15)側に施されたプライマー処理部(29)と、
前記端子連設部(21)に対応した前記端子接続部(26)の突出方向と反対側の表面(31a)には溶融樹脂が充填されたゲート痕(30)を有し、前記アース端子部材(11)がインサート成形されたハウジング(31)と、
を備えたジョイントコネクタ(1)。
【0046】
[2] 上記[1]の構成のジョイントコネクタ(1)を製造するジョイントコネクタの製造方法であって、
前記ハウジング(31)を成形する金型(81A,81B,81C)に前記アース端子部材(11)を保持させ、前記金型(81A,81B,81C)における前記端子連設部(21)に対向する位置に配置されたゲート(83)から前記金型(81A,81B,81C)内に溶融樹脂を充填して前記ハウジング(31)を成形する、
ジョイントコネクタの製造方法。
【0047】
上記[1]の構成のジョイントコネクタ(1)及び上記[2]の構成のジョイントコネクタの製造方法によれば、アース端子部材(11)がハウジング(31)にインサート成形されてジョイントコネクタ(1)を製造する際、ゲート(83)から射出された溶融樹脂が、金型(81A,81B,81C)内に配置された端子連設部(21)にあたり、その後、金型(81A,81B,81C)内に行きわたる。
そして、クランク状折り曲げ部(28)が形成されたことによって、本体立上り板部(19)における端子連設部(21)からプライマー処理部(29)までの沿面距離が延び、ゲート(83)から射出された溶融樹脂がプライマー処理部(29)に達するまでの勢いを弱めることができる。また、ゲート(83)から射出された溶融樹脂は、クランク状折り曲げ部(28)の水平部(28a)、又は、金型(81B)の内壁にあたり、勢いが弱められた状態で本体立上り板部(19)の外周表面に施されたプライマー処理部(29)に達する。
即ち、ゲート(83)から射出された溶融樹脂がプライマー処理部(29)に直接流れ込むことはなく、プライマー処理部(29)が本体立上り板部(19)の外周表面から剥がされるのを防止することができる。
従って、アース端子部材(11)がインサート成形されたハウジング(31)の樹脂とアース端子部材(11)における本体立上り板部(19)の外周表面とは、プライマー処理部(29)により確実に密着した状態となり、隙間が生じるのを防止される。そこで、ジョイントコネクタ(1)を防水コネクタとして用いる場合にも、アース端子部材(11)における本体立上り板部(19)の外周表面とハウジング(31)の樹脂との間に生じる隙間から水がコネクタ内に浸入することを抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
1…ジョイントコネクタ
11…アース端子部材
12…板状固定部
15…本体水平板部
16…連結片
19…本体立上り板部
20…折り曲げ部
21…端子連設部
26…端子接続部
28…クランク状折り曲げ部
29…プライマー処理部
31…ハウジング
32…ハウジング本体部
63…相手側端子