(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20240625BHJP
【FI】
G06Q40/03
(21)【出願番号】P 2022194912
(22)【出願日】2022-12-06
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100216367
【氏名又は名称】水谷 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】山下 智彦
(72)【発明者】
【氏名】呉 垠
(72)【発明者】
【氏名】オシュ スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】梅田 卓志
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-140712(JP,A)
【文献】特開2020-160497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0402162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに係る属性データ群に基づいて、該ユーザに設定される信用スコアを推定する信用スコア推定手段と、
共通する電子的バリューのユーザへの付与又はユーザによる利用が可能な複数のサービスにより構成される所定のエコシステムにおける前記ユーザによるサービス利用状況に基づいて、該ユーザの該エコシステムに係るロイヤルティスコアを算出するロイヤルティスコア算出手段と、
対象ユーザについて推定された前記信用スコア、及び該対象ユーザについて算出された前記ロイヤルティスコアに基づいて、該対象ユーザの総合スコアを算出する総合スコア算出手段と、
を備える、情報処理システム。
【請求項2】
前記対象ユーザの総合スコア又は該対象ユーザの信用スコアに基づいて、該対象ユーザへの特典内容を決定する特典決定手段を更に備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記特典決定手段は、前記対象ユーザの信用スコアに基づいて、与信に関する該対象ユーザへの特典内容を決定し、該対象ユーザの総合スコアに基づいて、与信に関係しない該対象ユーザへの特典内容を決定する、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記対象ユーザについて決定された前記特典内容を該対象ユーザに通知する通知手段を更に備える、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記対象ユーザの前記総合スコア
、及び該総合スコアに基づく指標
のいずれかを、該対象ユーザに通知する通知手段を更に備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記エコシステムにおいて前記ユーザが利用可能なサービスのうち、前記対象ユーザが利用した場合に該対象ユーザの前記ロイヤルティスコア及び前記総合スコアを向上させることが可能なサービスを特定するサービス特定手段と、
前記サービス特定手段によって特定された前記サービスを前記対象ユーザに通知する通知手段と、
を更に備える、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記対象ユーザの総合スコアに基づいて、該対象ユーザへの特典内容を決定する特典決定手段と、
前記エコシステムにおいて前記ユーザが利用可能なサービス毎に、前記対象ユーザが該サービスを利用したと仮定した場合の該対象ユーザの前記総合スコアを算出するスコア更新予測手段を更に備え、
前記サービス特定手段は、前記スコア更新予測手段による予測結果に基づいて、前記対象ユーザが利用した場合に該対象ユーザへの前記特典内容を増やすことが可能なサービスを特定する、
請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記属性データ群には、前記ユーザが前記エコシステムにおいて前記サービスを利用したことによって収集された属性データが含まれる、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記総合スコア算出手段は、前記総合スコアに占める前記ロイヤルティスコアの重みが、前記総合スコアに占める前記信用スコアの重みに比べて小さくなるように、前記対象ユーザの総合スコアを算出する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記信用スコア推定手段は、前記属性データ群を入力値とし、該属性データ群が共通するユーザに係る後払い決済の支払履歴に基づいて決定された前記信用スコアを出力値とする教師データを用いて生成及び/又は更新された信用スコア推定モデルを用いて、前記ユーザに設定される信用スコアを推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記信用スコア推定モデルの出力値は、前記ユーザが後払い決済を利用した場合に後払い決済の精算が該ユーザによって正しく履行されない後払いリスクに応じて変化するスコアである、
請求項10に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記信用スコア推定手段は、勾配ブースティング決定木に基づく機械学習フレームワークを用いて生成及び/又は更新された前記信用スコア推定モデルを用いて、前記信用スコアを推定する、
請求項10に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記ユーザ自身から提供されたユーザ提供データ又は該ユーザの履歴データに基づいて、該ユーザについて事実であると確認可能な事実属性を決定する事実属性決定手段と、
少なくとも該ユーザに係る前記事実属性に基づいて、該ユーザについて推定された推定属性を決定する推定属性決定手段と、を更に備え、
前記信用スコア推定手段は、前記対象ユーザに係る前記事実属性及び推定属性を含む属性データ群に基づいて、前記対象ユーザの信用スコアを推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記ロイヤルティスコア算出手段は、前記エコシステムにおいて前記ユーザが利用可能なサービス毎に予め設定された計算式を用いて、該ユーザのロイヤルティスコアを算出する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項15】
コンピュータが、
ユーザに係る属性データ群に基づいて、該ユーザに設定される信用スコアを推定する信用スコア推定ステップと、
共通する電子的バリューのユーザへの付与又はユーザによる利用が可能な複数のサービスにより構成される所定のエコシステムにおける前記ユーザによるサービス利用状況に基づいて、該ユーザの該エコシステムに係るロイヤルティスコアを算出するロイヤルティスコア算出ステップと、
対象ユーザについて推定された前記信用スコア、及び該対象ユーザについて算出された前記ロイヤルティスコアに基づいて、該対象ユーザの総合スコアを算出する総合スコア算出ステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項16】
コンピュータを、
ユーザに係る属性データ群に基づいて、該ユーザに設定される信用スコアを推定する信用スコア推定手段と、
共通する電子的バリューのユーザへの付与又はユーザによる利用が可能な複数のサービスにより構成される所定のエコシステムにおける前記ユーザによるサービス利用状況に基づいて、該ユーザの該エコシステムに係るロイヤルティスコアを算出するロイヤルティスコア算出手段と、
対象ユーザについて推定された前記信用スコア、及び該対象ユーザについて算出された前記ロイヤルティスコアに基づいて、該対象ユーザの総合スコアを算出する総合スコア算出手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザスコアを算出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの行動を示す行動情報を取得するユーザ情報取得部と、行動情報に基づいて、将来のユーザの融資に対する返済能力に関する信用度を判定する信用度判定部と、を備える判定装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、従来、入力された審査申込情報と本人確認資料とに基づきユーザに対するローン審査を実行するローン審査装置が提案されている(特許文献2を参照)。更に、従来、ユーザから金銭の貸付に関する要求を受け付け、ユーザ属性情報及びユーザ行動情報の少なくとも1つに基づいて審査を行うことで貸付条件を決定し、決定した貸付条件をユーザに通知し、ユーザが貸付条件を受け入れたことを示す通知を受けた場合に、ユーザに対して貸付条件に従って金銭の貸付を行う、情報処理方法が提案されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-174039号公報
【文献】特開2020-003869号公報
【文献】特開2020-102007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ユーザの履歴データに基づいてユーザの信用度等を表すユーザスコアを算出する技術が提案されている。しかし、互いに異なる様々な種類のサービスが集積されたエコシステム(経済圏)において、信用スコアのみに基づくユーザ評価には改善の余地があった。
【0006】
本開示は、上記した問題に鑑み、エコシステムにおけるユーザ評価の手法を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例は、ユーザに係る属性データ群に基づいて、該ユーザに設定される信用スコアを推定する信用スコア推定手段と、所定のエコシステムにおける前記ユーザによるサービス利用状況に基づいて、該ユーザの該エコシステムに係るロイヤルティスコアを算出するロイヤルティスコア算出手段と、対象ユーザについて推定された前記信用スコア、及び該対象ユーザについて算出された前記ロイヤルティスコアに基づいて、該対象ユーザの総合スコアを算出する総合スコア算出手段と、を備える、情報処理システムである。
【0008】
本開示は、情報処理装置、システム、コンピュータによって実行される方法又はコンピュータに実行させるプログラムとして把握することが可能である。また、本開示は、そのようなプログラムをコンピュータその他の装置、機械等が読み取り可能な記録媒体に記録したものとしても把握できる。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、エコシステムにおけるユーザ評価の手法を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態における信用スコア、ロイヤルティスコア及び総合スコアの関係を示す図である。
【
図3】実施形態に係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
【
図4】実施形態に係る信用スコア推定処理の簡略図である。
【
図5】実施形態において信用スコア推定モデル等として採用される機械学習モデルの決定木の概念を簡略図である。
【
図6】実施形態において対象ユーザのユーザ端末に表示される第一の通知画面の一例である。
【
図7】実施形態において対象ユーザのユーザ端末に表示される第二の通知画面の一例である。
【
図8】実施形態に係る機械学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係るスコア算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】バリエーションに係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る情報処理装置、方法及びプログラムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は、実施形態を例示するものであって、本開示に係る情報処理装置、方法及びプログラムを以下に説明する具体的構成に限定するものではない。実施にあたっては、実施の態様に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。本発明は、後述する実施形態、バリエーションの夫々における構成の少なくとも一部を適宜、互いに採用することができる。
【0012】
本実施形態では、本開示に係る技術を、複数のオンラインサービスを利用可能な所定のエコシステムのユーザに対して特典を提示したりサービスの利用を促したりするために実施した場合の態様について説明する。但し、本開示に係る技術は、ユーザのスコアを決定するための技術について広く用いることが可能であり、本開示の適用対象は、実施形態において示した例に限定されない。
【0013】
<システムの構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。本実施形態に係る情報処理システムでは、情報処理装置1と、1又は複数のサービス提供システム5と、が互いに通信可能に接続されている。ユーザは、サービス提供システム5によって提供される、所定のエコシステムに属するサービスの利用者であり、ユーザ端末からサービス提供システム5にアクセスすることでサービスの提供を受ける。ここで、本実施形態におけるエコシステムとは、共通するユーザIDでログイン可能な複数のサービスにより構成されるサービス群であってよく、共通するポイント等の電子的バリューのユーザへの付与又はユーザによる利用が可能な複数のサービスにより構成されるサービス群であってよい。
【0014】
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置14、NIC(Network Interface Card)等の通信ユニット15、等を備えるコンピュータである。但し、情報処理装置1の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の態様に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、情報処理装置1は、単一の筐体からなる装置に限定されない。情報処理装置1は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0015】
サービス提供システム5は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、通信ユニット、入力装置、出力装置等(図示は省略する)を備えるコンピュータである。また、これらのシステム及び端末は、いずれも、単一の筐体からなる装置に限定されない。これらのシステム及び端末は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0016】
サービス提供システム5によって提供されるサービスは、例えば、オンラインショッピングサービス、オンライン予約サービス、銀行サービス、クレジットカード/後払い決済サービス、電子マネー決済サービス、広告サービス、オペレーションセンターサービス、又は地図情報サービス等である。なお、「後払い決済」には、所謂Buy Now Pay Later(BNPL)と称されるサービスに限定されず、あらゆる後払いによる商品/サービスの購入が含まれてよいものとする。また、銀行サービスには、口座開設サービス、預貯金管理サービス、マネーサポート(資産管理)サービス、及び給与振込サービス等の、銀行によって提供可能な各種サービスが含まれる。
【0017】
サービス提供システム5によって提供されるサービスは本実施形態における例示に限定されない。そして、サービス提供システム5は、サービスの提供に際してユーザ関連データを情報処理装置1に通知する。ここで、ユーザ関連データには当該ユーザによるサービスの利用履歴データが含まれる。サービスの利用履歴データの内容はサービスの内容に応じて様々であり、例えば、ユーザの位置情報の履歴データ、クレジットカード利用額/後払い決済利用額の支払履歴データ、電子マネー利用履歴データ、取引履歴データ(商品等の購入履歴データを含む)、予約履歴データ、オペレーションセンターからのユーザに対するオペレーション履歴データ等が含まれてよい。
【0018】
図2は、本実施形態における信用スコア、ロイヤルティスコア及び総合スコアの関係を示す図である。情報処理装置1は、サービス提供システム5に対して、対象ユーザを所定のサービスや特典の提供対象とするか否かを判断するためのデータを提供する。従来、対象ユーザを所定のサービスや特典の提供対象とするか否かを判断するためのデータとして信用スコアが用いられており、信用スコアの決定方法や利活用について多くの試みがなされてきた。しかし、互いに異なる様々な種類のサービスが集積されたエコシステムにおいて、信用スコアに関するユーザエクスペリエンスには改善の余地があった。このため、本実施形態では、対象ユーザを所定のサービスや特典の提供対象とするか否かを判断するためのデータとして、信用スコア及び総合スコアを提供することとしている。ここで、信用スコアは、対象ユーザの信用力の程度を示すスコアであり、総合スコアは、信用スコア及びロイヤルティスコアに基づいて算出されるスコアである。ロイヤルティスコアは、本実施形態に係るエコシステムに対するユーザのロイヤルティ(loyalty)を示すスコアであり、例えば、ユーザによるサービス利用状況に基づいて算出される。
【0019】
サービス提供システム5は、情報処理装置1から提供されたデータに応じて、対象ユーザに対して提供されるサービスの内容や特典の内容をカスタマイズすることが可能である。例えば、情報処理装置1は、サービス提供システム5からの要求に応じてサービス提供システム5に対して対象ユーザの信用スコア又は総合スコアを提供することが出来る。情報処理装置1からサービス提供システム5に対してデータを提供する具体的な形式や手法は限定されない。例えば、情報処理装置1は、サービス提供システム5に対してスコアのリスト等を提供する方式でデータを提供することが出来る。また、例えば、情報処理装置1は、サービス提供システム5からのユーザIDを指定した個別の問い合わせに応じて対象ユーザのスコアを返す方式でデータを提供することとしてもよい。
【0020】
ここで、情報処理装置1は、サービス提供システム5に対して提供されるスコアの種類を、サービスの性格に応じて異ならせることが出来る。具体的には、本実施形態では、情報処理装置1は、与信に関するサービスについては、サービス提供システム5に対して信用スコアを提供し、与信に関係しないサービスについては、サービス提供システム5に対して総合スコアを提供することとしている。また、本実施形態では、ロイヤルティスコアは単独ではサービス提供システム5に対して提供されない。これは、ユーザスコアのベースは原則として信用スコアであり、ロイヤルティスコアは、総合スコア内での信用スコアへの加点要素として機能するためである。但し、実施の形態によっては、ロイヤルティスコアを単独でサービス提供システム5に対して提供することとしてもよい。
【0021】
また、情報処理装置1は、サービス提供システム5から、後述するユーザ属性データを得る。得られたユーザ属性データは、信用スコアを算出するためのモデルの生成又は更新に用いられることで、算出される信用スコアの精度を向上させることが出来る。また、各ユーザが利用したサービスの情報を得ることで、各ユーザについて、総合スコアの一部であるロイヤルティスコア(ユーザによるサービスの利用に応じて蓄積されるスコア)を更新することが出来る。
【0022】
更に、情報処理装置1は、ユーザに対して、当該ユーザの総合スコアを通知する。この際、ユーザには、情報処理装置1又はサービス提供システム5から、当該ユーザに対して提供される特典の内容、及び/又は当該ユーザが利用した場合にスコアが上昇するサービスの内容、を通知してもよい。なお、情報処理装置1は、ユーザに対して、当該ユーザの信用スコアを通知しない。原則として信用スコアはシステム内部でのみ参照され、ユーザに対して開示されないスコアであるためである。
【0023】
本開示に係る情報処理装置では、ユーザ属性データ等を入力として信用スコア(本実施形態では、後払いリスクを示すスコア)を出力する機械学習モデルを用いる。なお、ここで入力として用いられる属性データにはデフォルト(債務不履行)を示すデータも含まれてよい。様々な属性データを入力として用いることで、本開示に係る情報処理装置1によれば、ユーザの属性全般が統一的に反映されることで生成された普遍的(universal)且つ一般化された(generalized)信用スコアを算出する。算出された信用スコアは、後払い決済サービス等における与信審査(後払い決済の承認又は却下を伴う判定)に用いることが可能であるが、上述の通り、本実施形態では、算出された信用スコアを、ユーザを所定の特典の提供対象とするか否かの判定についても用いることとしている。
【0024】
ここで、ユーザ属性データには、事実属性データ及び推定属性データが含まれる。属性データは、例えば、スコア(例えば、0以上1以下の連続的な値)又はラベル(例えば、有無や是非に応じた二値)等のデータ形式で表されるデータが含まれる。但し、属性データのフォーマットは本開示における例示に限定されない。また、属性データには、例えば、オンラインサービス利用状況、ポイントを含む電子的バリューの利用状況が含まれてよい。また、オンラインサービス利用状況には、オンラインショッピングサービス又はオンライン予約サービスにおけるキャンセル数、キャンセル率、及びオーダー数の少なくともいずれかが含まれてよい。
【0025】
事実属性データは、ユーザ自身から提供されることで得られたユーザ提供データやユーザについて収集された履歴データ等に基づいて、当該ユーザについて事実であると確認可能な事実属性(factual attribute)を示すデータである。ユーザ提供データとしては、例えば、ユーザ自身によって登録された氏名やメールアドレス、電話番号、住所、勤務先、就学先等を含む登録データや、アンケート等にユーザ自身が回答した結果得られたデータが挙げられる。履歴データとしては、例えば、上述した、サービス提供システム5によって提供される電子商取引サービスの利用履歴データが挙げられる。事実属性データは、先述のユーザ提供データや履歴データが、マーケティング及び/又は分析目的に適したデータ形式に変換されたデータであることが好ましい。例えば、利用履歴データに基づいて得ることができる事実属性データとして、ユーザが頻繁に利用する商品/サービスのジャンル/カテゴリやブランドの他、ユーザが頻繁に訪れる商業地や行楽地、観光地等が挙げられる。
【0026】
また、推定属性データは、ユーザ提供データや履歴データ、事実属性データ等に基づいて推定されることで得られる推定属性(inferred attribute)を示すデータである。本実施形態において、推定属性データは、機械学習技術を用いて推定又は予測されたユーザの性格等を含む。推定属性データは、ターゲティングに用いられた場合にユーザの行動(振る舞い)に影響する属性についてのデータであることが好ましい。
【0027】
本実施形態において、各属性データには、重みが設定される。重みは、信用スコアの算出にあたって属性データが用いられる際の、属性データと信用スコアとの相関性の高さを示すものであり、後述する機械学習部24によって信用スコアの適切性が評価される毎に、モデルのパラメータが、信用スコアがより適切な値となるように調整される。各属性データと対応する重みは、例として、後述の決定モデル等の信用スコア算出のためのモデルにおける各ノード(各回帰木)と対応する重みに相当し、信用スコアが算出される過程で適宜、決定される。なお、信用スコアは、例として、各ノードの重みに基づいて決定される。
【0028】
ここで、属性データ群には、デモグラフィック属性、ビヘイビオラル属性、又はサイコグラフィック属性が含まれてよい。デモグラフィック属性は、例えば、ユーザの性別(ジェンダー)、家族構成、年齢等であり、ビヘイビオラル属性は、サービスの利用履歴データに基づいてよく、例えば、キャッシング利用有無、リボ払い利用有無、所定の口座に係る入出金履歴、賭博又はくじを含む何らかの商品/サービスに係る商取引履歴(オンラインマーケットプレイス等におけるオンライン取引履歴を含んでよい)、位置情報や場所情報を用いたユーザの移動履歴等であり、サイコグラフィック属性は、例えば、賭博又はくじに係る趣向等である。但し、利用可能なユーザの属性は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、オペレーションセンターサービス等からの「オペレーション(架電等)に要する時間」、「クレジットカード利用額/後払い決済利用額」も、属性として用いられてよい。デモグラフィック属性及びビヘイビオラル属性は、事実属性として扱われてよい。サイコグラフィック属性は、推定属性として扱われてよい。なお、デモグラフィック属性に類する属性がユーザ提供データ又は履歴データを根拠とする事実属性に基づいて推定された推定属性であってよい。同様に、ビヘイビオラル属性に類する属性がユーザ提供データ又は履歴データを根拠とする事実属性に基づいて推定された推定属性であってよい。サイコグラフィック属性は、ユーザによる意思入力の結果を一例として含むユーザ提供データを根拠とする事実属性であってよい。
【0029】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成の概略を示す図である。情報処理装置1は、記憶装置14に記録されているプログラムが、RAM13に読み出され、CPU11によって実行されて、情報処理装置1に備えられた各ハードウェアが制御されることで、事実属性決定部21、推定属性決定部22、信用スコア推定部23、機械学習部24、ロイヤルティスコア算出部25、総合スコア算出部26、特典決定部27、サービス特定部28、及び通知部29を備える情報処理装置として機能する。なお、本実施形態及び後述する他の実施形態では、情報処理装置1の備える各機能は、汎用プロセッサであるCPU11によって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサによって実行されてもよい。
【0030】
事実属性決定部21は、ユーザ自身から提供されたユーザ提供データ及び/又は当該ユーザの履歴データに基づいて、当該ユーザについて事実であると確認可能な事実属性データを決定する。本実施形態において、事実属性決定部21は、ユーザ提供データ及び/又は履歴データを集計する、マップ等の他のデータを参照して該当する属性を決定する、ユーザ提供データ及び/又は履歴データをそのまま用いる、等の手法を用いて、当該ユーザに係る事実属性データを決定する。なお、本実施形態では、ユーザに係る事実属性データをユーザ提供データ及び/又は該ユーザの履歴データに基づいて決定する方法を採用しているが、ユーザに係る事実属性データはその他の方法で取得されてもよい。
【0031】
推定属性決定部22は、少なくとも、事実属性決定部21によって対象ユーザについて決定された1又は複数の事実属性データを含むユーザ関連データに基づいて、当該ユーザについて推定された推定属性データを決定する。本実施形態において、推定属性決定部22は、対象ユーザに係る1又は複数の事実属性データを含むユーザ関連データを機械学習モデルである属性推定モデルに入力して得られた出力値に基づいて、推定属性を決定する。なお、本実施形態において、属性推定モデルからの出力値は対象ユーザが所定の推定属性を有する蓋然性を示す値であり、推定属性決定部22は、属性推定モデルから得られた出力値が所定の範囲内にある場合に、対象ユーザが当該推定属性を有すると決定する。対象ユーザが所定の推定属性を有すると決定された場合、推定属性決定部22は、対象ユーザについて推定された属性データのラベルを、属性の有無又は属性の種類を示す値に設定する。また、推定属性データはラベルではなくスコアで示されてもよい。この場合、推定属性決定部22は、対象ユーザについて推定された属性データのスコアに、推定された属性が適用され得る度合い(確率)を示す値を設定する。当該度合いは、属性推定モデルの出力値であってよい。
【0032】
信用スコア推定部23は、対象ユーザに係る事実属性及び推定属性を含む属性データ群に基づいて、対象ユーザの信用スコア(本実施形態では、後払いリスクに基づいて算出された信用スコア)を推定する。ここで、後払いリスクとは、対象ユーザが後払い決済を利用した場合に後払い決済の精算が当該対象ユーザによって正しく履行されないリスクを何らかの指標(本実施形態では、後払いリスクの大きさに応じて変化する信用スコア)で表したものである。この際、信用スコア推定部23は、決定された事実属性及び/又は推定属性に対して何らかの加工(正規化やランク化、ラベル化等)を施して属性データ群の一部としてもよいし、決定された事実属性及び/又は推定属性を用いて算出された他の種類のスコア(例えば、所謂信用スコア等)又はラベルを属性データ群の全部又は一部としてもよい。ここで、他の種類のスコア又はラベルの算出には、他の機械学習モデルが介在してもよい。
【0033】
図4は、本実施形態に係る信用スコア推定処理の簡略図である。本実施形態において、信用スコア推定部23は、ユーザの属性データ群を信用スコア推定モデルに入力することで、当該ユーザの信用スコアを推定(算出)する。本実施形態において、信用スコア推定モデルの出力値は、例として、400を最小値、800を最大値として正規化/規格化された信用スコアである。
【0034】
機械学習部24は、信用スコア推定部23による信用スコア推定に用いられる信用スコア推定モデルを生成及び/又は更新する。信用スコア推定モデルは、対象ユーザに係る1又は複数の属性データ(属性データ群)が入力された場合に、対象ユーザが後払い決済を利用した場合に後払い決済の精算が当該対象ユーザによって正しく履行されないリスクの程度を示す信用スコアを出力する機械学習モデルである。このような機械学習モデルを用いることで、本実施形態では、単なる信用スコアではなく、後払いに特化したファクターが考慮された出力を、信用スコアとして得ることが出来る。また、本実施形態では、信用スコアの値が小さいほどリスクが高く、信用スコアの値が大きいほどリスクが低い信用スコアを採用する例を示して説明するが、スコアの値の大小とリスクの高低との関係は逆であってもよい。
【0035】
信用スコア推定モデルの生成及び/又は更新にあたって、機械学習部24は、ユーザ毎に、当該ユーザの属性データ群を入力値とし当該ユーザに係る信用スコアを出力値として定義した教師データを作成する。そして、機械学習部24は、当該教師データに基づいて、信用スコア推定モデルを生成及び/又は更新する。上述の通り、信用スコア推定モデルに入力される属性データ群には、事実属性決定部21によって決定された事実属性データと、事実属性データを含むユーザ関連データに基づいて推定属性決定部22によって推定された推定属性データが含まれ、対応するユーザの信用スコアと組み合わせられて、教師データとして機械学習部24に入力される。本実施形態において、教師データに設定される信用スコアは、入力値としてのユーザ属性の組み合わせに相当するユーザの、後払い決済の支払い履歴データに基づいて決定された信用スコアであある。ここで、後払い決済の支払い履歴データは、後払い決済におけるデフォルト(債務不履行)の有無やデフォルト額を示すデータ等を含む。この際、信用スコアは、ルールベースで決定された信用スコアであってよく、マニュアルで設定された(アノテーションがなされた)信用スコアであってもよい。また、信用スコア推定モデルによって過去に出力された後で、管理者等によって修正された信用スコアであってもよい。
【0036】
本開示に係る技術を実装するにあたり信用スコア推定モデル等として採用可能な機械学習モデル生成/更新のフレームワークは、例として、アンサンブル学習アルゴリズムに基づく。当該フレームワークには、例えば、勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree:GBDT)に基づく機械学習フレームワーク(例えば、LightGBM)が採用されてよい。換言すると、当該フレームワークは、前後の弱学習器(弱分類器)間で正解と予測値との誤差を引き継がせるような決定木モデルに基づく機械学習フレームワークが採用されてよい。ここでの予測値とは、例として、信用スコアの予測値を指す。なお、当該フレームワークは、LightGBMの他、XGBoostやCatBoost等のブースティング手法を採用してよい。決定木を用いるフレームワークによれば、ニューラルネットワークを用いるフレームワークと比較して少ないパラメータ調整の手間で、比較的高い性能を有する機械学習モデルを生成/更新することができる。但し、本開示に係る技術を実装するにあたり採用可能な機械学習モデル生成/更新のフレームワークは、本実施形態における例示に限定されない。例えば、学習器として勾配ブースティング決定木に代えてランダムフォレスト等の他の学習器が採用されてよいし、ニューラルネットワーク等の所謂弱学習器とは称されない学習器が採用されてもよい。また、特にニューラルネットワーク等の所謂弱学習器とは称されない学習器が採用される場合には、アンサンブル学習が採用されなくてもよい。
【0037】
図5は、本実施形態において信用スコア推定モデル等として採用される機械学習モデルの決定木の概念を簡略図である。決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークを採用する場合、決定木の各ノードの分岐条件の最適化が行われる。具体的には、決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークでは、一つの親のノードから分岐した二つの子のノードの夫々が示す属性を有するユーザ群について信用スコアを夫々算出し、この信用スコアの差分が大きくなるように(例えば、差分が最大になるように、又は所定の閾値以上になるように)、即ち、二つの子のノードがきれいに分岐するように、親のノードの分岐条件が最適化される。例えば、ノードの分岐条件として示される属性が年齢である場合、分岐の閾値に設定される年齢を変更したり、分岐条件を年齢以外の属性に変更したりしてもよい。このようにして、決定木の全ノードの分岐条件を再帰的に最適化することで、属性データ群に基づく信用スコアの推定精度を向上させることができる。
【0038】
ロイヤルティスコア算出部25は、本実施形態に係るエコシステムにおけるユーザによるサービス利用状況に基づいて、当該ユーザの当該エコシステムに係るロイヤルティスコアを算出する。本実施形態において、ロイヤルティスコアは、0を最小値、200を最大値とするスコアであり、対象のエコシステムに対するユーザのロイヤルティが高いほど大きな値として出力される。ここで、サービス利用状況は、ユーザによるサービス利用の有無に限らず、ユーザによるサービス毎の取引額及び/又はログイン頻度等のビジネスメトリクスを含んでいてもよい。ロイヤルティスコア算出部25は、例えば、所定のしきい値に基づいて、サービス毎のビジネスメトリクスに応じて、最終的にロイヤルティスコアを算出してよい。
【0039】
具体的には、本実施形態において、ロイヤルティスコア算出部25は、エコシステムにおいてユーザが利用可能なサービス毎に予め設定された計算式を用いて、当該ユーザのロイヤルティスコアを算出する。例えば、ロイヤルティスコア算出部25は、設定された対象期間内に対象ユーザの利用履歴が記録されているサービスに対して設定されているポイントを加算していくことで、対象ユーザのロイヤルティポイントを算出する。より具体的には、サービス(1)に「10ポイント加算」が、サービス(2)に「20ポイント加算」が、サービス(3)に「30ポイント加算」が設定されており、対象ユーザがサービス(1)とサービス(3)とを対象期間内に利用したことがユーザデータベースに記録されている場合、ロイヤルティスコア算出部25は、ユーザの利用履歴が記録されているサービス(1)に設定された10ポイントと、サービス(3)に設定された30ポイントとを加算し、当該ユーザのロイヤルティスコアを40とする。
【0040】
また、ロイヤルティスコアの算出方法は、上記の例示に限定されない。例えば、現在のスコア(信用スコア、ロイヤルティスコア又は総合スコア)に基づいて算出されたポイントが加算されることとしてもよい。具体的には、サービス(4)に「総合スコアの1%」が設定されており、ユーザがサービス(4)を利用したことがユーザデータベースに記録されている場合、ロイヤルティスコア算出部25は、ユーザの現在の総合スコアに1%を乗じて算出された値を、ロイヤルティスコアに加算する。
【0041】
また、例えば、加算されるポイントの値又は割合が、ユーザ毎に異なっていてもよい。具体的には、サービス(5)に「初回利用ユーザは10ポイント加算、2回目以降利用ユーザは1ポイント加算」が設定されており、ユーザが初めてサービス(5)を利用した場合、ロイヤルティスコア算出部25はユーザのロイヤルティスコアに10ポイントを加算し、ユーザが再度サービス(5)を利用した場合、ロイヤルティスコア算出部25はユーザのロイヤルティスコアに1ポイントを加算する。その他、ロイヤルティスコアの算出方法には様々な方法が採用可能であり、上記の例示に限定されない。
【0042】
総合スコア算出部26は、対象ユーザについて推定された信用スコア、及び当該対象ユーザについて算出されたロイヤルティスコアに基づいて、当該対象ユーザの総合スコアを算出する。この際、総合スコア算出部26は、総合スコアに占めるロイヤルティスコアの重み(割合)が、総合スコアに占める信用スコアの重み(割合)に比べて小さくなるように、対象ユーザの総合スコアを算出する。本実施形態では、対象ユーザについて、信用スコアとロイヤルティスコアとを単純に足し合わせることで、総合スコアを算出する。このため、本実施形態では、信用スコア(本実施形態の例では、400)の下限の所定割合を上回らないような値に、ロイヤルティスコアの上限(例えば、200)を設定することで、総合スコアに占めるロイヤルティスコアの重みが、総合スコアに占める信用スコアの重みに比べて小さくなるように、対象ユーザの総合スコアを算出する。但し、総合スコアを算出するための具体的な方法は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、信用スコア及びロイヤルティスコアの夫々に対して互いに異なる重みC及びLを乗算して総合スコアを算出することとし(総合スコア=信用スコア*重みC+ロイヤルティスコア*重みL)、この重みC及びLを、総合スコアに占めるロイヤルティスコアの割合が総合スコアに占める信用スコアの割合に比べて小さくなるように設定することとしてもよい。
【0043】
特典決定部27は、対象ユーザの総合スコア又は当該対象ユーザの信用スコアに基づいて、当該対象ユーザへの特典内容を決定する。また、本実施形態では、特典の種類に応じて、判定に用いられるスコアが使い分けられる。即ち、本実施形態において、特典決定部27は、対象ユーザの信用スコアに基づいて、与信に関する当該対象ユーザへの特典内容を決定し、当該対象ユーザの総合スコアに基づいて、与信に関係しない当該対象ユーザへの特典内容を決定する。このようにすることで、ユーザの信用力のみに基づいて付与の可否を決定すべき種類の特典(代金後払いの許可、及び金利優遇等の、与信に関する特典)については、信用スコアに基づいて特典付与の可否を決定し、ユーザの意思が反映されてよい(ユーザによって意図的に変動されたスコアが用いられてよい)種類の特典(銀行手数料無料等の、与信に関係しない特典)については、総合スコアに基づいて特典付与の可否を決定することができる。
【0044】
具体的には、特典決定部27は、特典毎に予め設定された閾値と、対象ユーザの現在のスコアとを比較し、スコアが閾値以上である場合に、当該対象ユーザに対して、当該閾値に係る特典を提供可能であると決定する。例えば、金利優遇の特典に設定された閾値が「信用スコア700」である場合、信用スコアが700以上であるユーザに、金利優遇の特典が提供される。ここでは、参照されるスコアが信用スコアであるため、ユーザが意図的にスコアアップ対象のサービスを利用したとしても、そのことのみでは信用スコアは向上しないため、ユーザはその他の方法で信用スコアを向上させる必要がある。また、例えば、銀行手数料無料の特典に設定された閾値が「総合スコア700」である場合、総合スコアが700以上であるユーザに、銀行手数料無料の特典が提供される。ここでは、参照されるスコアが総合スコアであるため、ユーザが意図的にスコアアップ対象のサービスを利用することで、ユーザが意図的に総合スコアを操作し、特典を受けることが出来る。
【0045】
サービス特定部28は、エコシステムにおいてユーザが利用可能なサービスのうち、対象ユーザが利用した場合に当該対象ユーザのロイヤルティスコア及び総合スコアを向上させることが可能なサービスを特定する。具体的には、サービス特定部28は、予めデータベースに保持されているサービスリストから、当該ユーザが利用条件を満たしており、且つ利用によってロイヤルティスコアが付与されることが設定されているサービスを抽出する。ここで、利用条件の具体的な内容は限定されないが、例えば、ユーザの年齢、居住地、及びサービス利用登録の状況等のユーザ属性が、利用条件として参照されてよい。また、利用条件には、ユーザ属性以外の条件(例えば、サービス提供期間)が含まれていてもよい。また、信用スコアとロイヤルティスコアとは互いに異なる手法で算出されるスコアであるため、サービス毎に設定されるロイヤルティスコアに加算される値は、サービス提供者やシステム管理者によって、予め設定された値の範囲内で任意に設定されてよい。例えば、ユーザに特に利用して欲しい(プロモーションに力を入れている)サービスについては、ロイヤルティスコアの付与量を大きい値に設定することで、ユーザへのサービスの訴求を高めることが出来る。
【0046】
通知部29は、対象ユーザの総合スコア、対象ユーザについて決定された特典内容、及びサービス特定部28によって特定されたサービスを、対象ユーザに通知する。
【0047】
図6は、本実施形態において対象ユーザのユーザ端末に表示される第一の通知画面の一例である。第一の通知画面は、エコシステムにログインしたユーザによって使用されるアプリ又はブラウザによって表示され、対象ユーザのスコア(図に示された例では、765点)、及び優遇(特典)を受けられるサービスの一覧(図に示された例では、銀行サービス及び電子マネー決済サービス)を含む。なお、ユーザに通知されるスコアは、総合スコアのみであり、その内訳(即ち、信用スコア及びロイヤルティスコア)は通知されない。例えば、図に示されたスコア765は点の内訳は、例えば信用スコア750点とロイヤルティスコア15点との合計であるが、ユーザに対してその内訳は知らされない。そして、第一の通知画面において、ユーザは、一覧にあるサービス表示部分をタップ操作やクリック操作等で選択することで、選択されたサービスにおいて受けられる特典及びスコアアップサービスを閲覧するための第二の通知画面を表示させることが出来る。
【0048】
図7は、本実施形態において対象ユーザのユーザ端末に表示される第二の通知画面の一例である。第二の通知画面についても、第一の通知画面同様、エコシステムにログインしたユーザによって使用されるアプリ又はブラウザによって表示される。但し、ここで表示に用いられるアプリは、第一の通知画面を表示させたアプリとは異なるアプリ(優遇内容に対応するアプリ)であってもよい。具体的には、
図7には、
図6の第一の通知画面において、銀行サービスの表示部分が選択操作されたことでアプリが銀行サービス用アプリに遷移し、銀行サービス用アプリによって表示された第二の通知画面を示している。
【0049】
第二の通知画面は、対象ユーザのスコア、対象ユーザに提供される特典(図中では項目「優遇内容」として表示)、及び、対象ユーザのスコアを向上させることが可能なサービス(図中では項目「スコアアップするには?」として表示)を含む。図に示された例では、項目「優遇内容」として、銀行サービスの金利優遇特典及び銀行サービスの手数料無料特典が対象ユーザに提供されていることが表示されている。更に、項目「スコアアップするには?」として、マネーサポート(資産管理)サービス(図では「マネサポ」と表示)、又は、宝くじ購入サービスを利用することが提案されている。提案されたサービスを利用することで対象ユーザのスコアが増え、当該対象ユーザに提供される特典が増える可能性があるため、このような表示は、特典が増えることを欲するユーザへのプロモーションとなる。また、通知画面において、ユーザは、特典(優遇内容)やスコアアップのためのサービス表示部分をタップ操作やクリック操作等で選択することで、特典やサービスの詳細案内画面、又は特典やサービスを利用するための画面を表示させることが出来る(図示は省略する)。
【0050】
なお、本実施形態では、通知部29がユーザに対して総合スコアの値をそのまま通知する例を挙げて説明したが、通知部29は、総合スコアの値に代えて、対象ユーザの総合スコアに基づく指標を、当該対象ユーザに通知することとしてもよい。ここで用いられる指標には、例えばスコアの値の範囲毎に設定されたユーザランクを用いることが出来る。ユーザランクの表現についても実施形態に応じて適宜選択されてよく、例えば、星の数、数値、文字、単語(例えば、ブロンズ、シルバー、ゴールド等)等を用いることができる。
【0051】
<処理の流れ>
次に、本実施形態に係る情報処理装置によって実行される処理の流れを説明する。なお、以下に説明する処理の具体的な内容及び処理順序は、本開示を実施するための一例である。具体的な処理内容及び処理順序は、本開示の実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0052】
図8は、本実施形態に係る機械学習処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、定期的に、又は管理者によって指定されたタイミングで実行される。
【0053】
本実施形態において、機械学習処理では、信用スコア推定モデルが生成及び/又は更新される。機械学習部24は、過去に蓄積されたユーザ毎の属性データ群と、対応するユーザについて予め決定された信用スコアと、の組み合わせを含む教師データを作成する(ステップS101)。そして、機械学習部24は、作成された教師データを信用スコア推定モデルに入力し、信用スコア推定部23による信用スコア推定に用いられる信用スコア推定モデルを生成及び/又は更新する(ステップS102)。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0054】
図9は、本実施形態に係るスコア算出処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、定期的に、又は指定されたタイミングで、対象ユーザ毎に実行される。
【0055】
ステップS201及びステップS202では、事実属性データ及び推定属性データが決定される。事実属性決定部21は、対象ユーザのユーザ提供データ及び/又は履歴データに基づいて、対象ユーザに係る事実属性データを決定する(ステップS201)。そして、推定属性決定部22は、少なくともステップS201で決定された事実属性データに基づいて、対象ユーザに係る推定属性データを決定する(ステップS202)。その後、処理はステップS203へ進む。
【0056】
ステップS203及びステップS204では、信用スコアが決定され、出力される。信用スコア推定部23は、ステップS201で決定された事実属性データ及びステップS202で決定された推定属性データを含む属性データ群を決定する(ステップS203)。そして、信用スコア推定部23は、ステップS203で決定された属性データ群を信用スコア推定モデルに入力し、出力された値を、対象ユーザが後払い決済を利用した場合に後払い決済の精算が当該対象ユーザによって正しく履行されないリスクに応じて変化する信用スコアとして取得する(ステップS204)。但し、信用スコアの推定方法は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、信用スコアは、属性データ群を機械学習モデルではない所定の関数や統計モデル等に入力して算出された値を含むものであってもよい。その後、処理はステップS205へ進む。
【0057】
ステップS205及びステップS206では、ロイヤルティスコア及び総合スコアが算出される。ロイヤルティスコア算出部25は、エコシステムにおけるユーザによるサービス利用状況に基づいて、当該ユーザの当該エコシステムに係るロイヤルティスコアを算出する(ステップS205)。そして、総合スコア算出部26は、対象ユーザについてステップS204で推定された信用スコア、及び当該対象ユーザについてステップS205で算出されたロイヤルティスコアに基づいて、当該対象ユーザの総合スコアを算出する(ステップS206)。本実施形態では、対象ユーザについて、信用スコアとロイヤルティスコアとを単純に足し合わせることで、総合スコアを算出する。その後、処理はステップS207へ進む。
【0058】
ステップS207及びステップS208では、対象ユーザに対して提供される特典が決定される。特典決定部27は、対象ユーザの信用スコアに基づいて、当該対象ユーザに対して提供可能な、与信に関する特典内容を決定する(ステップS207)。更に、特典決定部27は、対象ユーザの総合スコアに基づいて、当該対象ユーザに対して提供可能な、与信に関係しない特典内容を決定する(ステップS208)。その後、処理はステップS209へ進む。
【0059】
ステップS209では、対象ユーザのスコアアップに貢献するサービスが特定される。サービス特定部28は、対象ユーザが利用可能なサービスのうち、対象ユーザが利用した場合に当該対象ユーザのロイヤルティスコア及び総合スコアを向上させることが可能なサービスを特定する。その後、処理はステップS210へ進む。
【0060】
ステップS210では、対象ユーザに対する通知が行われる。通知部29は、対象ユーザに対して、ステップS206で算出された当該対象ユーザの総合スコア、ステップS207及びステップS208で当該対象ユーザについて決定された特典内容、及びステップS209で当該ユーザについて特定されたサービスを、対象ユーザの端末に送信し、当該ユーザ端末に表示させることで、対象ユーザに通知する。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0061】
<効果>
本実施形態によれば、互いに異なる様々な種類のサービスが集積されたエコシステム(経済圏)において、ユーザ評価の手法、及びユーザエクスペリエンスを改善することが可能となる。
【0062】
<バリエーション>
上記説明した実施形態では、ユーザのスコアアップに貢献するサービスを特定し、対象ユーザに通知する例を説明したが、ユーザに対してよりサービスの利用を訴求するために、ユーザが利用した場合に対象ユーザへの特典内容を増やすことが可能なサービスを特定し、これをユーザに通知することとしてもよい。なお、本バリエーションでは、上記説明した実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違点について説明する。
【0063】
図10は、本バリエーションに係る情報処理装置1bの機能構成の概略を示す図である。情報処理装置1bは、記憶装置14に記録されているプログラムが、RAM13に読み出され、CPU11によって実行されて、情報処理装置1に備えられた各ハードウェアが制御されることで、ロイヤルティスコア算出部25、総合スコア算出部26、特典決定部27、サービス特定部28b、通知部29、及びスコア更新予測部30を備える情報処理装置として機能する。即ち、実施形態に係る情報処理装置1bは、情報処理装置1が備える構成に加えてスコア更新予測部30を更に備えており、また、サービス特定部28bの処理内容が上記実施形態と一部異なる。
【0064】
スコア更新予測部30は、エコシステムにおいてユーザが利用可能なサービス毎に、対象ユーザが当該サービスを利用したと仮定した場合の当該対象ユーザのロイヤルティスコア及び総合スコア(以下、「見込み総合スコア」と称する。)を算出する。見込み総合スコアの算出方法は、上記説明した実施形態における総合スコアの算出方法と概略同様であるが、スコア更新予測部30は、ユーザが未利用のサービスの夫々について、ユーザが当該サービスを利用したと仮定した場合の対象ユーザの見込み総合スコアを算出する。
【0065】
サービス特定部28bは、スコア更新予測部30による予測結果に基づいて、対象ユーザが利用した場合に当該対象ユーザへの特典内容を増やすことが可能なサービスを特定する。サービス特定部28bは、ユーザに現在提供されていない特典について、特典毎に予め設定された閾値と、対象ユーザの見込み総合スコアとを比較する。そして、サービス特定部28bは、見込み総合スコアが閾値以上である場合に、当該見込み総合スコアに係るサービスを、対象ユーザが利用した場合に当該対象ユーザへの特典内容を増やすことが可能なサービスとして特定する。例えば、銀行手数料無料の特典に設定された閾値が「見込み総合スコア700」である場合、総合スコアが現在700未満であるが、あるサービスを利用したと仮定した場合の見込み総合スコアが700以上となるユーザに、当該サービスを、ユーザが利用した場合に当該ユーザへの特典内容を増やすことが可能なサービスとして特定する。
【0066】
通知部29は、上記のようにしてサービス特定部28bによって特定されたサービスを、対象ユーザに通知する。このようにすることで、ユーザは利用すると特典が得られる具体的なサービスを知ることが可能となり、ユーザに対して、サービスの利用をより効果的に訴求することが出来る。
【0067】
また、上記説明した実施形態では、信用スコアとして後払いリスクを示すスコアを用いる例を説明したが、信用スコアはユーザの信用力を示すスコアであればよく、後払いリスクではないその他の指標(例えば、クレジットカードのデフォルトリスクやローンのデフォルトリスク等)に基づいてユーザの信用力を示すスコアであってよい。
【符号の説明】
【0068】
1 情報処理装置